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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115319
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】立体物印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240819BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240819BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240819BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20240819BHJP
   B05B 13/04 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B41J2/01 109
B41J2/01 203
B05C11/10
B05C5/00 101
B05B12/00 A
B05B13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020955
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 光平
【テーマコード(参考)】
2C056
4F035
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C056EA01
2C056EA04
2C056EA08
2C056EC07
2C056EC11
2C056EC74
2C056FA15
2C056FB01
2C056FB09
4F035AA03
4F035BC02
4F035CA01
4F035CA05
4F035CD06
4F035CD18
4F035CD19
4F041AA01
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA22
4F041BA38
4F042AA01
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA10
4F042BA27
4F042DH09
4F042ED02
(57)【要約】
【課題】立体的なワークに対する印刷において、2つの印刷動作による印刷領域が互いに重複する領域を有する場合、印刷画質の低下を抑制する。
【解決手段】立体物印刷装置は、第1印刷動作の実行時にワーク上の液体の付与される領域を第1印刷領域とし、第2印刷動作の実行時にワーク上の液体の付与される領域を第2印刷領域とし、第1印刷領域と第2印刷領域との重複する領域を重複領域とし、重複領域において第1印刷動作の実行時の複数のノズルから重複領域への液体の吐出距離が第2印刷動作の実行時の複数のノズルから重複領域への液体の吐出距離よりも小さい領域を第1重複領域としたとき、第1重複領域において、第1印刷動作による記録画素の比率が第2印刷動作による記録画素の比率よりも高い。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルが設けられたヘッドと、立体的なワークに対して前記ヘッドを相対的に移動させるロボットと、を有し、前記ロボットを動作させつつ、前記ヘッドから前記ワークの印刷領域に向けて液体を吐出させる印刷動作として第1印刷動作と第2印刷動作とを順に実行する立体物印刷装置において、
前記第1印刷動作の実行時に前記ワーク上の液体の付与される領域を第1印刷領域とし、
前記第2印刷動作の実行時に前記ワーク上の液体の付与される領域を第2印刷領域とし、
前記第1印刷領域と前記第2印刷領域との重複する領域を重複領域とし、
前記重複領域において前記第1印刷動作の実行時の前記複数のノズルから前記重複領域への液体の吐出距離が前記第2印刷動作の実行時の前記複数のノズルから前記重複領域への液体の吐出距離よりも小さい領域を第1重複領域としたとき、
前記第1重複領域において、前記第1印刷動作による記録画素の比率が前記第2印刷動作による記録画素の比率よりも高い、
ことを特徴とする立体物印刷装置。
【請求項2】
前記複数のノズルがノズル列を構成しており、
前記複数のノズルのうち前記ノズル列の中央よりも端部に近いノズルを第1ノズルとし、
前記複数のノズルのうち前記第1ノズルよりも前記ノズル列の中央に近いノズルを第2ノズルとしたとき、
前記ロボットは、前記第1印刷動作および前記第2印刷動作のそれぞれの実行時において、前記第2ノズルから前記印刷領域への液体の吐出距離を前記第1ノズルから前記印刷領域への液体の吐出距離よりも短くするように動作する、
ことを特徴とする請求項1に記載の立体物印刷装置。
【請求項3】
前記重複領域において前記第2印刷動作の実行時の前記複数のノズルから前記重複領域への液体の吐出距離が前記第1印刷動作の実行時の前記複数のノズルから前記重複領域への液体の吐出距離よりも小さい領域を第2重複領域としたとき、
前記第2重複領域において、前記第2印刷動作による記録画素の比率が前記第1印刷動作による記録画素の比率よりも高い、
ことを特徴とする請求項1に記載の立体物印刷装置。
【請求項4】
前記複数のノズルのうちの少なくとも1つのノズルから前記印刷領域への液体の吐出距離は、前記印刷動作の実行中に変化する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の立体物印刷装置。
【請求項5】
複数のノズルが設けられたヘッドと、立体的なワークに対して前記ヘッドを相対的に移動させるロボットと、を有し、前記ロボットを動作させつつ、前記ヘッドから前記ワークの印刷領域に向けて液体を吐出させる印刷動作として第1印刷動作と第2印刷動作とを順に実行する立体物印刷装置において、
前記第1印刷動作の実行時に前記ワーク上の液体の付与される領域を第1印刷領域とし、
前記第2印刷動作の実行時に前記ワーク上の液体の付与される領域を第2印刷領域とし、
前記第1印刷領域と前記第2印刷領域との重複する領域を重複領域とし、
前記重複領域において前記第1印刷動作の実行時の前記複数のノズルから前記重複領域への液体の着弾角度が前記第2印刷動作の実行時の前記複数のノズルから前記重複領域への液体の着弾角度よりも90°に近い領域を第1重複領域としたとき、
前記第1重複領域において、前記第1印刷動作による記録画素の比率が前記第2印刷動作による記録画素の比率よりも高い、
ことを特徴とする立体物印刷装置。
【請求項6】
前記重複領域において前記第2印刷動作の実行時の前記複数のノズルから前記重複領域への液体の着弾角度が前記第1印刷動作の実行時の前記複数のノズルから前記重複領域への液体の着弾角度よりも90°に近い領域を第2重複領域としたとき、
前記第2重複領域において、前記第2印刷動作による記録画素の比率が前記第1印刷動作による記録画素の比率よりも高い、
ことを特徴とする請求項5に記載の立体物印刷装置。
【請求項7】
前記複数のノズルのうちの少なくとも1つのノズルから前記印刷領域への液体の着弾角度は、前記印刷動作の実行中に変化する、
ことを特徴とする請求項5または6に記載の立体物印刷装置。
【請求項8】
前記第1印刷動作または前記第2印刷動作の実行時に前記ヘッドと前記ワークとの相対位置を変化させる方向を主走査方向とし、
前記主走査方向において互いに異なる2つの位置を第1主走査位置および第2主走査位置としたとき、
前記第2主走査位置における前記重複領域の幅は、前記第1主走査位置における前記重複領域の幅よりも狭い、
ことを特徴とする請求項2または請求項5に記載の立体物印刷装置。
【請求項9】
前記ワークの表面において前記第1主走査位置に対応する部分における曲率は、前記ワークの表面において前記第2主走査位置に対応する部分における曲率よりも大きい、
ことを特徴とする請求項8に記載の立体物印刷装置。
【請求項10】
前記ワークの表面において前記第1主走査位置に対応する部分における曲率は、前記ワークの表面において前記第2主走査位置に対応する部分における曲率よりも小さい、
ことを特徴とする請求項8に記載の立体物印刷装置。
【請求項11】
前記第1印刷動作および前記第2印刷動作のそれぞれの実行時において、前記ワークの表面において前記第2主走査位置に対応する部分における記録画素の比率の単位幅あたりの変化量は、前記ワークの表面において前記第1主走査位置に対応する部分における記録画素の比率の単位幅あたりの変化量よりも大きい、
ことを特徴とする請求項8に記載の立体物印刷装置。
【請求項12】
前記第1印刷動作および前記第2印刷動作のそれぞれの実行時の記録画素の比率は、前記第1主走査位置および前記第2主走査位置のうちの一方の位置から他方の位置へ印刷位置が移動するのに伴って、漸次的に変化する、
ことを特徴とする請求項11に記載の立体物印刷装置。
【請求項13】
前記ヘッドおよび前記ロボットのそれぞれの動作を制御する制御部をさらに有し、
前記第1印刷動作または前記第2印刷動作の実行時に前記ヘッドと前記ワークとの相対位置を変化させる方向を主走査方向とし、
前記主走査方向における任意の位置を第1主走査位置としたとき、
前記制御部は、前記第1印刷動作および前記第2印刷動作のうちの一方または両方の実行時の前記第1主走査位置における前記印刷領域への液体の吐出距離に基づいて、前記第1主走査位置における前記第1印刷動作による記録画素と前記第2印刷動作による記録画素との比率を設定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の立体物印刷装置。
【請求項14】
前記主走査方向における前記第1主走査位置とは異なる位置を第2主走査位置としたとき、
前記制御部は、前記第1印刷動作および前記第2印刷動作のうちの一方または両方の実行時の前記第2主走査位置における前記印刷領域への液体の吐出距離に基づいて、前記第2主走査位置における前記第1印刷動作による記録画素と前記第2印刷動作による記録画素との比率を設定する、
ことを特徴とする請求項13に記載の立体物印刷装置。
【請求項15】
前記ヘッドおよび前記ロボットのそれぞれの動作を制御する制御部をさらに有し、
前記第1印刷動作または前記第2印刷動作の実行時に前記ヘッドと前記ワークとの相対位置を変化させる方向を主走査方向とし、
前記主走査方向における任意の位置を第1主走査位置としたとき、
前記制御部は、前記第1印刷動作および前記第2印刷動作のうちの一方または両方の実行時の前記第1主走査位置における前記印刷領域への液体の着弾角度に基づいて、前記第1主走査位置における前記第1印刷動作による記録画素と前記第2印刷動作による記録画素との比率を設定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の立体物印刷装置。
【請求項16】
前記主走査方向における前記第1主走査位置とは異なる位置を第2主走査位置としたとき、
前記制御部は、前記第1印刷動作および前記第2印刷動作のうちの一方または両方の実行時の前記第2主走査位置における前記印刷領域への着弾角度に基づいて、前記第2主走査位置における前記第1印刷動作による記録画素と前記第2印刷動作による記録画素との比率を設定する、
ことを特徴とする請求項15に記載の立体物印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、立体物印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットを用いて立体的なワークの表面にインクジェット方式により印刷を行う装置が知られている。例えば、特許文献1には、ワークの表面の第1領域に対して印刷を行う第1印刷動作の後に、ワークの表面の第1領域とは異なる第2領域に対して印刷を行う第2印刷動作を行う印刷動作が記載される。ここで、第1印刷動作では、ロボットが液体吐出ヘッドを第1移動経路に沿って移動させつつ、液体吐出ヘッドが第1領域に向けてインクを吐出する。第2印刷動作では、ロボットが液体吐出ヘッドを第1移動経路とは異なる第2移動経路に沿って移動させつつ、液体吐出ヘッドが第2領域に向けてインクを吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-70443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、第1領域および第2領域が互いに重なる領域について、第1印刷動作および第2印刷動作による記録比率をどのように設定するかが開示されていない。このような状況のもと、印刷画質の低下を抑制するため、適切な記録比率で印刷を行うことが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本開示の立体物印刷装置の一態様は、複数のノズルが設けられたヘッドと、立体的なワークに対して前記ヘッドを相対的に移動させるロボットと、を有し、前記ロボットを動作させつつ、前記ヘッドから前記ワークの印刷領域に向けて液体を吐出させる印刷動作として第1印刷動作と第2印刷動作とを順に実行する立体物印刷装置において、前記第1印刷動作の実行時に前記ワーク上の液体の付与される領域を第1印刷領域とし、前記第2印刷動作の実行時に前記ワーク上の液体の付与される領域を第2印刷領域とし、前記第1印刷領域と前記第2印刷領域との重複する領域を重複領域とし、前記重複領域において前記第1印刷動作の実行時の前記複数のノズルから前記重複領域への液体の吐出距離が前記第2印刷動作の実行時の前記複数のノズルから前記重複領域への液体の吐出距離よりも小さい領域を第1重複領域としたとき、前記第1重複領域において、前記第1印刷動作による記録画素の比率が前記第2印刷動作による記録画素の比率よりも高い。
【0006】
本開示の立体物印刷装置の他の一態様は、複数のノズルが設けられたヘッドと、立体的なワークに対して前記ヘッドを相対的に移動させるロボットと、を有し、前記ロボットを動作させつつ、前記ヘッドから前記ワークの印刷領域に向けて液体を吐出させる印刷動作として第1印刷動作と第2印刷動作とを順に実行する立体物印刷装置において、前記第1印刷動作の実行時に前記ワーク上の液体の付与される領域を第1印刷領域とし、前記第2印刷動作の実行時に前記ワーク上の液体の付与される領域を第2印刷領域とし、前記第1印刷領域と前記第2印刷領域との重複する領域を重複領域とし、前記重複領域において前記第1印刷動作の実行時の前記複数のノズルから前記重複領域への液体の着弾角度が前記第2印刷動作の実行時の前記複数のノズルから前記重複領域への液体の着弾角度よりも90°に近い領域を第1重複領域としたとき、前記第1重複領域において、前記第1印刷動作による記録画素の比率が前記第2印刷動作による記録画素の比率よりも高い。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る立体物印刷装置の概略を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る立体物印刷装置の電気的な構成を示すブロック図である。
図3】ヘッドユニットの概略構成を示す斜視図である。
図4】第1実施形態に係る立体物印刷装置の印刷動作設定方法の流れを示す図である。
図5】候補経路作成ステップの第1ステップを説明するための図である。
図6】仮想空間におけるワークの表面の詳細を説明するための図である。
図7】副走査基準線の詳細を説明するための図である。
図8】候補経路作成ステップの第2ステップを説明するための図である。
図9】候補経路作成ステップの第3ステップを説明するための図である。
図10】候補経路の設定方法を説明するための図である。
図11】吐出条件取得ステップおよび吐出幅情報取得ステップを説明するための図である。
図12】印刷経路選択ステップを説明するための図である。
図13】吐出条件情報および印刷幅情報に基づく印刷経路の選択を説明するための図である。
図14】印刷経路を説明するための図である。
図15】印刷データ生成ステップを説明するための図である。
図16】第1実施形態における印刷領域を説明するための図である。
図17】記録比率の設定方法の第1例を示すフローチャートである。
図18】記録比率の設定方法の第2例を示すフローチャートである。
図19】印刷データとマスクとの関係を示す模式図である。
図20図19に示すマスクを用いた記録比率の設定を説明するための図である。
図21】重複領域での記録比率を説明するための図である。
図22】重複領域で各パスの記録比率が変化する場合の副走査方向での位置と各パスの記録比率との関係の一例を示す図である。
図23】重複領域で各パスの記録比率が変化する場合の副走査方向での位置と全パスの記録比率との関係を示す図である。
図24】重複領域で各パスの記録比率が一定である比較例の副走査方向での位置と各パスの記録比率との関係の一例を示す図である。
図25】重複領域で各パスの記録比率が一定である比較例の副走査方向での位置と全パスの記録比率との関係を示す図である。
図26】主走査方向での各位置の記録比率を説明するための図である。
図27】第2実施形態における印刷経路を説明するための図である。
図28】第2実施形態における印刷経路を説明するための図である。
図29】第2実施形態における印刷領域を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0009】
以下では、説明の便宜上、互いに交差するX軸、Y軸およびZ軸を適宜に用いて説明を行う。また、以下では、X軸に沿う一方向がX1方向であり、X1方向と反対の方向がX2方向である。同様に、Y軸に沿って互いに反対の方向がY1方向およびY2方向である。また、Z軸に沿って互いに反対の方向がZ1方向およびZ2方向である。
【0010】
ここで、X軸、Y軸およびZ軸は、後述のロボット2が設置される空間に設定されるワールド座標系の座標軸に相当する。典型的には、Z軸が鉛直な軸であり、Z2方向が鉛直方向での下方向に相当する。当該ワールド座標系には、ロボット2の後述の基部210の位置を基準とするベース座標系がキャリブレーションにより対応付けられる。以下では、便宜上、ワールド座標系をロボット座標系として用いてロボット2の動作を制御する場合が例示される。
【0011】
なお、Z軸は、鉛直な軸でなくともよい。また、X軸、Y軸およびZ軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、直交しない場合もある。例えば、X軸、Y軸およびZ軸が80°以上100°以下の範囲内の角度で互いに交差すればよい。
【0012】
1-1.立体物印刷装置の概略
図1は、第1実施形態に係る立体物印刷装置1の概略を示す斜視図である。立体物印刷装置1は、立体的なワークWの表面にインクジェット方式により印刷を行う装置である。
【0013】
ワークWは、印刷対象となる面WFを有する。図1に示す例では、ワークWが半球体であり、面WFが凸状の半球面である。印刷時のワークWは、必要に応じて、例えば、所定の設置台、後述のロボット2以外のロボットのハンド、またはコンベアー等の構造体により支持される。なお、ワークWの大きさ、形状または設置姿勢は、図1に示す例に限定されず、任意である。ただし、面WFが曲面である場合、後述の本開示による効果が顕著となる。
【0014】
図1に示すように、立体物印刷装置1は、ロボット2とヘッドユニット3とコントローラー5と配管部10とを有する。以下、まず、これらを順に簡単に説明する。
【0015】
ロボット2は、ワールド座標系でのヘッドユニット3の位置および姿勢を変化させるロボットである。図1に示す例では、ロボット2は、いわゆる6軸の垂直多関節ロボットである。
【0016】
図1に示すように、ロボット2は、基部210と腕部220とを有する。
【0017】
基部210は、腕部220を支持する台である。図1に示す例では、基部210は、Z1方向を向く床面または基台等の設置面にネジ止め等により固定される。なお、基部210が固定される設置面は、いかなる方向を向く面でもよく、図1に示す例に限定されず、例えば、壁、天井、移動可能な台車等が有する面でもよい。
【0018】
腕部220は、基部210に取り付けられる基端と、当該基端に対して3次元的に位置および姿勢を変化させる先端と、を有する6軸のロボットアームである。具体的には、腕部220は、リンクとも称されるアーム221、222、223、224、225および226を有し、これらがこの順に連結される。
【0019】
アーム221は、基部210に対して回動軸O1まわりに回動可能に関節230_1を介して連結される。アーム222は、アーム221に対して回動軸O2まわりに回動可能に関節230_2を介して連結される。アーム223は、アーム222に対して回動軸O3まわりに回動可能に関節230_3を介して連結される。アーム224は、アーム223に対して回動軸O4まわりに回動可能に関節230_4を介して連結される。アーム225は、アーム224に対して回動軸O5まわりに回動可能に関節230_5を介して連結される。アーム226は、アーム225に対して回動軸O6まわりに回動可能に関節230_6を介して連結される。
【0020】
関節230_1~230_6のそれぞれは、基部210およびアーム221~226のうち互いに隣り合う2つの部材の一方を他方に対して回動可能に連結する機構である。なお、以下では、関節230_1~230_6のそれぞれを「関節230」という場合がある。
【0021】
図1では図示しないが、関節230_1~230_6のそれぞれには、対応する当該互いに隣り合う2つの部材の一方を他方に対して回動させる駆動機構が設けられる。当該駆動機構は、例えば、当該回動のための駆動力を発生させるモーターと、当該駆動力を減速して出力する減速機と、当該回動の角度等の動作量を検出するロータリーエンコーダー等のエンコーダーと、を有する。なお、関節230_1~230_6の当該駆動機構の集合体は、後述の図2に示すアーム駆動機構2aに相当する。
【0022】
回動軸O1は、基部210が固定される図示しない設置面に対して垂直な軸である。回動軸O2は、回動軸O1に対して垂直な軸である。回動軸O3は、回動軸O2に対して平行な軸である。回動軸O4は、回動軸O3に対して垂直な軸である。回動軸O5は、回動軸O4に対して垂直な軸である。回動軸O6は、回動軸O5に対して垂直な軸である。
【0023】
なお、これらの回動軸について、「垂直」とは、2つの回動軸のなす角度が厳密に90°である場合のほか、2つの回動軸のなす角度が90°から±5°程度の範囲内でずれる場合も含む。同様に、「平行」とは、2つの回動軸が厳密に平行である場合のほかに、2つの回動軸の一方が他方に対して±5°程度の範囲内で傾斜する場合も含む。
【0024】
以上のロボット2のアーム221~226のうち最も先端に位置するアーム226には、エンドエフェクターとして、ヘッドユニット3がネジ止め等により固定された状態で装着される。
【0025】
ヘッドユニット3は、「液体」の一例であるインクをワークWに向けて吐出するヘッド3aを有するアセンブリーである。本実施形態では、ヘッドユニット3は、ヘッド3aのほか、圧力調整弁3bとエネルギー出射部3cとを有する。なお、ヘッドユニット3の詳細については、後に図3に基づいて説明する。
【0026】
当該インクとしては、特に限定されず、例えば、水系溶媒に染料または顔料等の色材を溶解させた水系インク、紫外線硬化型等の硬化性樹脂を用いた硬化性インク、および、有機溶剤に染料または顔料等の色材を溶解させた溶剤系インク等が挙げられる。中でも、硬化性インクが好適に用いられる。硬化性インクは、特に限定されず、例えば、熱硬化型、光硬化型、放直線硬化型および電子線硬化型等のいずれでもよいが、紫外線硬化型等の光硬化型が好適である。なお、当該インクは、溶液に限定されず、分散媒に色材等を分散質として分散させたインクでもよい。また、当該インクは、色材を含むインクに限定されず、例えば、配線等を形成するための金属粒子等の導電性粒子を分散質として含むインクでもよいし、クリアインクでもよいし、ワークWの表面処理のための処理液でもよい。
【0027】
ヘッドユニット3には、配管部10と図示しない配線部とのそれぞれが接続される。配管部10は、図示しないインクタンクからのインクをヘッドユニット3に供給する配管または配管群である。当該配線部は、ヘッド3aを駆動する電気信号を供給する配線または配線群である。なお、当該配線部の引き回しは、配管部10の引き回しと同じであっても異なってもよい。
【0028】
コントローラー5は、ロボット2の駆動を制御するロボットコントローラーである。コンピューター7は、プログラムをインストールしたデスクトップ型またはノート型等のコンピューターであり、ヘッドユニット3の駆動を制御する。以下、図2に基づいて、立体物印刷装置1の電気的な構成について、コントローラー5およびコンピューター7の詳細な説明を含めて説明する。
【0029】
1-2.立体物印刷装置の電気的な構成
図2は、第1実施形態に係る立体物印刷装置1の電気的な構成を示すブロック図である。図2では、立体物印刷装置1の構成要素のうち、電気的な構成要素が示される。図2に示すように、立体物印刷装置1は、前述の図1に示す構成要素のほか、コントローラー5に通信可能に接続される制御モジュール6と、コントローラー5および制御モジュール6に通信可能に接続されるコンピューター7と、を有する。ここで、コントローラー5、制御モジュール6およびコンピューター7は、制御部8を構成する。
【0030】
なお、図2に示す電気的な各構成要素は、適宜に分割されてもよいし、一部が他の構成要素に含まれてもよいし、他の構成要素と一体で構成されてもよい。例えば、コントローラー5または制御モジュール6の機能の一部または全部は、コンピューター7により実現されてもよいし、LAN(Local Area Network)またはインターネット等のネットワークを介してコントローラー5に接続されるPC(personal computer)等の他の外部装置により実現されてもよい。
【0031】
コントローラー5は、ロボット2の駆動を制御する機能と、ヘッドユニット3でのインクの吐出動作をロボット2の動作に同期させるための信号D3を生成する機能と、を有する。
【0032】
コントローラー5は、記憶回路5aと処理回路5bとを有する。
【0033】
記憶回路5aは、処理回路5bが実行する各種プログラムと、処理回路5bが処理する各種データと、を記憶する。記憶回路5aは、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリーとROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)またはPROM(Programmable ROM)等の不揮発性メモリーとの一方または両方の半導体メモリーを含む。なお、記憶回路5aの一部または全部は、処理回路5bに含まれてもよい。
【0034】
記憶回路5aには、印刷経路情報Daが記録される。
【0035】
印刷経路情報Daは、ロボット2の動作の制御に用いられ、印刷動作の実行時にヘッド3aの移動すべき経路におけるヘッド3aの位置および姿勢に対応する情報であって、ツールセンターポイントTCPの位置を示す位置情報成分と、ツールセンターポイントTCPの姿勢を示す姿勢情報成分と、を含んでいる。ツールセンターポイントTCPとは、ヘッド3aとの位置関係が固定された仮想的な点であるため、印刷経路情報Daは、印刷動作の実行時におけるワークWに対するヘッド3aの相対的な位置の変化を示す情報と、印刷動作の実行時におけるワークWに対するヘッド3aの相対的な姿勢の変化を示す情報と、を含む。つまり、印刷経路情報Daは、後述の印刷経路RUを示す情報を含んでいる。なお、詳細は後述するが、本実施形態においては、印刷経路情報Daの示す印刷経路RUは、ワークWの表面に設定される一方で、ツールセンターポイントTCPがヘッド3aから所定の間隔を隔てた空間に配置されるため、実際の印刷動作において、ヘッド3aは、印刷経路情報Daの示す印刷経路RUが設定されるワークWの表面から所定の間隔を隔てた経路を通過する。以下では、冗長な表現を避ける観点から、ヘッド3aから所定の間隔を隔てた空間に配置されたツールセンターポイントTCPが印刷経路情報Daの示す印刷経路RUを通過しつつ姿勢を変化させることを、単にヘッド3aが印刷経路RUに沿って移動する等と表現する場合がある。印刷経路情報Daは、例えば、ワークWの位置を基準とするワーク座標系、ベース座標系またはワールド座標系の座標値を用いて表される。印刷経路情報Daは、処理回路7bにより生成され、処理回路7bから記憶回路5aに入力される。なお、印刷経路情報Daは、ワーク座標系の座標値を用いて表される場合、ワーク座標系の座標値からベース座標系またはワールド座標系の座標値に変換した後にロボット2の動作の制御に用いられる。
【0036】
処理回路5bは、印刷経路情報Daに基づいてロボット2のアーム駆動機構2aの動作を制御するとともに、信号D3を生成する。処理回路5bは、例えば、1個以上のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを含む。なお、処理回路5bは、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0037】
ここで、アーム駆動機構2aは、前述の関節230_1~230_6の駆動機構の集合体であり、関節230ごとに、ロボット2の関節を駆動するためのモーターと、ロボット2の関節の回転角度を検出するエンコーダーと、を有する。
【0038】
処理回路5bは、印刷経路情報Daをロボット2の各関節230の回転角度および回転速度等の動作量に変換する演算である逆運動学計算を行う。そして、処理回路5bは、各関節230の実際の回転角度および回転速度等の動作量が印刷経路情報Daに基づく前述の演算結果となるように、アーム駆動機構2aの各エンコーダーからの出力D1に基づいて、制御信号Sk1を出力する。制御信号Sk1は、アーム駆動機構2aのモーターの駆動を制御するための信号である。ここで、制御信号Sk1は、必要に応じて、図示しない距離センサーからの出力に基づいて処理回路5bにより補正される。
【0039】
また、処理回路5bは、アーム駆動機構2aの有する複数のエンコーダーのうちの少なくとも1つからの出力D1に基づいて、信号D3を生成する。例えば、処理回路5bは、当該複数のエンコーダーのうちの1つからの出力D1が所定値となるタイミングのパルスを含むトリガー信号を信号D3として生成する。
【0040】
制御モジュール6は、コントローラー5から出力される信号D3とコンピューター7からの印刷データImgとに基づいて、ヘッドユニット3でのインクの吐出動作を制御する回路である。制御モジュール6は、タイミング信号生成回路6aと電源回路6bと制御回路6cと駆動信号生成回路6dとを有する。
【0041】
タイミング信号生成回路6aは、信号D3に基づいてタイミング信号PTSを生成する。タイミング信号生成回路6aは、例えば、信号D3の検出を契機としてタイミング信号PTSの生成を開始するタイマーで構成される。
【0042】
電源回路6bは、図示しない商用電源から電力の供給を受け、所定の各種電位を生成する。生成した各種電位は、制御モジュール6およびヘッドユニット3の各部に適宜に供給される。例えば、電源回路6bは、電源電位VHVとオフセット電位VBSとを生成する。オフセット電位VBSは、ヘッドユニット3に供給される。また、電源電位VHVは、駆動信号生成回路6dに供給される。
【0043】
制御回路6cは、タイミング信号PTSに基づいて、制御信号SIと波形指定信号dComとラッチ信号LATとクロック信号CLKとチェンジ信号CNGとを生成する。これらの信号は、タイミング信号PTSに同期する。これらの信号のうち、波形指定信号dComは、駆動信号生成回路6dに入力され、それ以外の信号は、ヘッドユニット3のスイッチ回路3eに入力される。
【0044】
制御信号SIは、ヘッドユニット3のヘッド3aが有する駆動素子の動作状態を指定するためのデジタルの信号である。具体的には、制御信号SIは、印刷データImgに基づいて、当該駆動素子に対して後述の駆動信号Comを供給するか否かを指定するための信号である。この指定により、例えば、当該駆動素子に対応するノズルからインクを吐出するか否かを指定したり、当該ノズルから吐出されるインクの量を指定したりする。波形指定信号dComは、駆動信号Comの波形を規定するためのデジタル信号である。ラッチ信号LATおよびチェンジ信号CNGは、制御信号SIと併用され、当該駆動素子の駆動タイミングを規定することにより、当該ノズルからのインクの吐出タイミングを規定するための信号である。クロック信号CLKは、タイミング信号PTSに同期した基準となるクロック信号である。
【0045】
以上の制御回路6cは、例えば、1個以上のCPU等のプロセッサーを含む。なお、制御回路6cは、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0046】
駆動信号生成回路6dは、ヘッドユニット3のヘッド3aの有する各駆動素子を駆動するための駆動信号Comを生成する回路である。具体的には、駆動信号生成回路6dは、例えば、DA変換回路と増幅回路とを有する。駆動信号生成回路6dでは、当該DA変換回路が制御回路6cからの波形指定信号dComをデジタル信号からアナログ信号に変換し、当該増幅回路が電源回路6bからの電源電位VHVを用いて当該アナログ信号を増幅することで駆動信号Comを生成する。ここで、駆動信号Comに含まれる波形のうち、当該駆動素子に実際に供給される波形の信号が駆動パルスPDである。駆動パルスPDは、ヘッドユニット3のスイッチ回路3eを介して、駆動信号生成回路6dから当該駆動素子に供給される。
【0047】
ここで、スイッチ回路3eは、制御信号SIに基づいて、駆動信号Comに含まれる波形のうちの少なくとも一部を駆動パルスPDとして供給するか否かを切り替えるスイッチング素子を含む回路である。
【0048】
コンピューター7は、印刷経路情報Daを生成する機能と、コントローラー5に印刷経路情報Da等の情報を供給する機能と、制御モジュール6に印刷データImg等の情報を供給する機能と、を有する。本実施形態のコンピューター7は、これらの機能のほか、エネルギー出射部3cの駆動を制御する機能を有する。
【0049】
コンピューター7は、記憶回路7aと処理回路7bとを有する。そのほか、図示しないが、コンピューター7は、ユーザーからの操作を受け付けるキーボートまたはマウス等の入力装置を有する。なお、コンピューター7は、印刷経路情報Daの生成に必要な情報を表示する液晶パネル等の表示装置を有してもよい。
【0050】
記憶回路7aは、処理回路7bが実行する各種プログラムと、処理回路7bが処理する各種データと、を記憶する。記憶回路7aは、例えば、RAM等の揮発性のメモリーとROM、EEPROMまたはPROM等の不揮発性メモリーとの一方または両方の半導体メモリーを含む。なお、記憶回路7aの一部または全部は、処理回路7bに含まれてもよい。
【0051】
記憶回路7aには、印刷経路情報Daと候補経路情報Dbとワーク情報Dcと印刷領域情報Ddと吐出条件情報Deと有効ノズル情報Dfとヘッド情報Dgと印刷データImgとプログラムPRとが記録される。
【0052】
候補経路情報Dbは、印刷経路情報Daの生成に用いられ、現実空間を模した仮想的な空間である仮想空間SVにおいて、印刷経路情報Daとなり得る複数の候補経路を示す情報であり、ヘッド3aの移動すべき経路におけるヘッド3aの位置および姿勢に対応する情報であって、ツールセンターポイントTCPの位置を示す位置情報成分と、ツールセンターポイントTCPの姿勢を示す姿勢情報成分と、を含んでいる。つまり、候補経路情報Dbは、ワークWに対するヘッド3aの相対的な位置の変化を示す情報と、ワークWに対するヘッド3aの相対的な姿勢の変化を示す情報と、を含む。候補経路情報Dbは、例えば、ワーク座標系、ベース座標系またはワールド座標系の座標値を用いて表される。候補経路情報Dbは、処理回路7bにより生成され、処理回路7bから記憶回路5aに入力される。ここで、候補経路情報Dbの示す複数の候補経路のうちの少なくとも1つの候補経路は、印刷経路情報Daの示す印刷経路として選択される。
【0053】
ワーク情報Dcは、ワークWの少なくとも一部の形状を表すデータである。具体的には、ワーク情報Dcは、ワークWの形状を複数のポリゴンによって表すSTL(Standard Triangulated Language)形式等の3次元データである。ワーク情報Dcは、ポリゴンの各頂点の座標に関する情報である座標情報と、ポリゴン面の表裏を示す法線ベクトルに関する情報であるベクトル情報と、を含む。ワーク情報Dcは、ワークWの3次元形状を示すCAD(computer-aided design)データを必要に応じて変換処理することにより得られる。なお、ワーク情報Dcは、ワーク座標系の座標値を用いて表されてもよいし、ベース座標系またはワールド座標系の座標値を用いた点群データによって表されてもよい。また、ワーク情報Dcは、数式等によって表されてもよく、ワーク情報Dcの形式は必要に応じて適宜変換され得る。
【0054】
印刷領域情報Ddは、ワークWの面WFの印刷対象となる領域である印刷領域を示す情報であり、当該印刷領域の形状および大きさを示す情報を含む。本実施形態では、印刷領域情報Ddは、当該印刷領域の形状および大きさを示す情報のほか、当該印刷領域に印刷されるべき理想的な印刷画像を示す3次元画像情報を含む。当該3次元画像情報は、例えば、画素ごとに色データまたは階調データを含む。3次元画像情報は、平面的な画像データである2次元画像情報を3次元的な物体に対してテクスチャとして張り付けることによって得られる。印刷領域情報Ddは、例えば、ワーク座標系、ベース座標系またはワールド座標系の座標値を用いて表される。なお、当該3次元画像情報は、印刷領域情報Ddに含まれずに、印刷領域情報Ddとは別途の情報であってもよい。また、印刷領域情報Ddは、ワーク情報Dcに含まれてもよい。
【0055】
吐出条件情報Deは、候補経路情報Dbの示す複数の候補経路の経路ごとに、ヘッド3aの有する複数のノズルと印刷領域情報Ddの示す印刷領域RPとの位置関係に関する情報である。本実施形態では、吐出条件情報Deは、吐出距離情報De1と角度情報De2とを含む。吐出距離情報De1は、印刷領域情報Ddの示す印刷領域とヘッド3aの有する複数のノズルとの間の距離に関する情報である。角度情報De2は、印刷領域情報Ddの示す印刷領域とヘッド3aの有する複数のノズルから吐出されるインクの飛翔方向とのなす角度に関する情報である。
【0056】
有効ノズル情報Dfは、候補経路情報Dbの示す複数の候補経路の経路ごとに、ヘッド3aの有する複数のノズルのうちインクの吐出に用いるノズル群を示す情報である。有効ノズル情報Dfは、吐出距離情報De1および角度情報De2の位置の一方または両方に基づいて処理回路7bにより生成される。
【0057】
ヘッド情報Dgは、ヘッド3aに関する情報である。具体的には、ヘッド情報Dgは、ヘッド3aの有する複数のノズルを仮想空間SVに仮想的なオブジェクトとして表すための情報であり、当該複数のノズルの数、間隔および吐出方向、後述するツールセンターポイントTCPの位置等を示す情報を含む。
【0058】
印刷データImgは、印刷経路情報Daの示す印刷経路の経路(パス)ごとにワークW上に印刷すべき画像を示す情報である。
【0059】
プログラムPRは、印刷経路情報Daを生成するためのプログラムである。
【0060】
処理回路7bは、プログラムPR等のプログラムの実行により前述の各機能を実現する。処理回路7bは、例えば、1個以上のCPU等のプロセッサーを含む。なお、処理回路7bは、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0061】
処理回路7bは、プログラムPRの実行により、印刷経路情報Daの生成等を含む後述の印刷動作設定方法のための各種機能を実現する。当該印刷動作設定方法の詳細については、後に図4から図15に基づいて説明する。
【0062】
以上のように、印刷経路情報Daに基づいてロボット2の駆動が制御されるとともに、印刷データImgおよび信号D3に基づいてヘッド3aの駆動が制御されることにより、印刷動作が行われる。印刷動作では、ロボット2が印刷経路情報Daに基づいてヘッド3aの位置および姿勢を変化させつつ、ヘッド3aが印刷データImgおよび信号D3に基づく適宜のタイミングでヘッド3aからワークWに向けてインクを吐出させる。これにより、ワークW上に印刷データImgに基づく画像が形成される。
【0063】
以上のコントローラー5、制御モジュール6およびコンピューター7で構成される制御部8は、ヘッド3aおよびロボット2のそれぞれの動作を制御する。具体的には、後に詳述するが、制御部8は、ワークWの表面へのインクの吐出距離および着弾角度のうちの一方または両方に基づいて、印刷領域の互いに重複する印刷動作の記録比率を設定する。「記録比率」とは、2つの印刷動作のうちの一方の印刷動作による記録画素と他方の印刷動作による記録画素との比率である。ここで、各印刷動作の記録比率に関する情報は、印刷データImgに含まれる。
【0064】
1-3.ヘッドユニットの構成
図3は、ヘッドユニット3の概略構成を示す斜視図である。以下の説明は、便宜上、互いに交差するa軸、b軸およびc軸を適宜に用いて行う。また、以下の説明では、a軸に沿う一方向がa1方向であり、a1方向と反対の方向がa2方向である。同様に、b軸に沿って互いに反対の方向がb1方向およびb2方向である。また、c軸に沿って互いに反対の方向がc1方向およびc2方向である。
【0065】
ここで、a軸、b軸およびc軸は、ヘッドユニット3に設定されるツール座標系の座標軸に相当し、前述のロボット2の動作により前述のワールド座標系またはロボット座標系との相対的な位置および姿勢の関係が変化する。図3に示す例では、c軸が前述の回動軸O6に平行な軸である。なお、a軸、b軸およびc軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、例えば、80°以上100°以下の範囲内の角度で交差すればよい。なお、ツール座標系とベース座標系またはロボット座標系とは、キャリブレーションにより対応付けされる。
【0066】
なお、以下では、a軸を「ロール軸」、b軸を「ピッチ軸」、c軸を「ヨー軸」という場合がある。また、a軸まわりの回転を「ロール」、b軸まわりの回転を「ピッチ」、c軸まわりの回転を「ヨー」という場合がある。
【0067】
ツール座標系は、ツールセンターポイントTCPを基準として設定される。したがって、ヘッド3aの位置および姿勢は、ツールセンターポイントTCPを基準として規定される。本実施形態では、図3に示すように、ツールセンターポイントTCPは、ヘッド3aのb軸方向におけるノズル列NLの中心からインクの吐出方向DEに所定の間隔を隔てた空間に配置される。なお、ツールセンターポイントTCPの位置は、図3に示す例に限定されず、例えば、ノズル面FNの中心でもよい。
【0068】
ヘッドユニット3は、前述のように、ヘッド3aと圧力調整弁3bとエネルギー出射部3cとを有する。これらは、図3中の二点鎖線で示される支持体3fに支持される。なお、図3に示す例では、ヘッドユニット3が有するヘッド3aおよび圧力調整弁3bのそれぞれの数が1個であるが、当該数は、図3に示す例に限定されず、2個以上でもよい。また、圧力調整弁3bの設置位置は、アーム226に限定されず、例えば、他のアーム等でもよいし、基部210に対して固定の位置でもよい。
【0069】
支持体3fは、例えば、金属材料等で構成されており、実質的な剛体である。なお、図3では、支持体3fが扁平な箱状をなすが、支持体3fの形状は、特に限定されず、任意である。
【0070】
以上の支持体3fは、前述のアーム226に装着される。したがって、ヘッド3a、圧力調整弁3bおよびエネルギー出射部3cが支持体3fにより一括してアーム226に支持される。このため、アーム226に対するヘッド3a、圧力調整弁3bおよびエネルギー出射部3cのそれぞれの相対的な位置が固定される。図3に示す例では、ヘッド3aに対してc1方向の位置には、圧力調整弁3bが配置される。ヘッド3aに対してa2方向の位置には、エネルギー出射部3cが配置される。
【0071】
ヘッド3aは、ノズル面FNと、ノズル面FNに開口する複数のノズルNと、を有する。ノズル面FNは、ノズルNが開口するノズル面であり、例えば、シリコン(Si)または金属等の材料で構成されるか、または、その板面を延長した平面上に他の部材がヘッドユニット3の構成要素として配置される場合、ノズルプレートの板面と当該他の部材の面とで構成される面である。ここで、ノズルプレートとは、シリコンまたは金属等で構成される板状部材に複数のノズルNを形成した部材である。当該他の部材としては、例えば、固定板およびカバーヘッド等が挙げられる。固定板とは、当該ノズルプレートの固定または保護等の目的でノズルプレートの周囲に設けられる部材である。カバーヘッドとは、ヘッド3aの保護等の目的で設けられる部材であり、ノズルプレートの周囲に配置される部分を有する。なお、固定板およびカバーヘッドは、ヘッド3aの構成によっては設けらない場合もある。また、固定板およびカバーヘッドの面は、ノズルプレートの板面とは、c軸に沿う方向における位置が最大で0.8mm程度異なる場合がある。図3に示す例では、ノズル面FNは、1つのノズルプレートの板面のみで構成されるが、複数のノズルプレートを有していてもよく、その場合は、ノズル面FNは複数のノズルプレートを包含する面として規定される。また、図3に示す例では、ノズル面FNの法線方向、すなわちノズルNからのインクの吐出方向DEがc2方向である。なお、厳密には、ロボット2の動作による慣性または気流等の影響により、吐出方向DEとc2方向とが平行でない場合もあるが、本実施形態においては、そうした誤差は考慮しない。
【0072】
当該複数のノズルNは、a軸に沿う方向に互いに間隔をあけて並ぶ第1ノズル列NL1と第2ノズル列NL2とに区分される。第1ノズル列NL1および第2ノズル列NL2のそれぞれは、b軸に沿う方向であるノズル列方向DNに直線状に配列される複数のノズルNの集合である。ここで、ヘッド3aにおける第1ノズル列NL1の各ノズルNに関連する要素と第2ノズル列NL2の各ノズルNに関連する要素とがa軸に沿う方向で互いに略対称な構成である。
【0073】
ただし、第1ノズル列NL1における複数のノズルNと第2ノズル列NL2における複数のノズルNとのb軸に沿う方向での位置が互いに一致してもよいし異なってもよい。また、第1ノズル列NL1および第2ノズル列NL2のうちの一方の各ノズルNに関連する要素が省略されてもよい。以下では、第1ノズル列NL1における複数のノズルNと第2ノズル列NL2における複数のノズルNとのb軸に沿う方向での位置が互いに一致する構成が例示される。
【0074】
なお、以下では、第1ノズル列NL1および第2ノズル列NL2の全体をノズル列NLという場合がある。ノズル列NLは、第1ノズル列NL1および第2ノズル列NL2を含む。
【0075】
図示しないが、ヘッド3aは、ノズルNごとに、駆動素子である圧電素子と、インクを収容するキャビティと、有する。ここで、当該圧電素子は、当該圧電素子に対応するキャビティの圧力を変化させることにより、当該キャビティに対応するノズルからインクを吐出方向DEに吐出させる。このようなヘッド3aは、例えば、エッチング等により適宜に加工したシリコン基板等の複数の基板を接着剤等により貼り合わせることにより得られる。なお、ノズルからインクを吐出させるための駆動素子として、当該圧電素子に代えて、キャビティ内のインクを加熱するヒーターを用いてもよい。
【0076】
以上のヘッド3aには、配管部10を介して図示しないインクタンクからインクが供給される。ここで、配管部10は、圧力調整弁3bを介してヘッド3aに接続される。
【0077】
圧力調整弁3bは、ヘッド3a内のインクの圧力に応じて開閉する弁機構である。この開閉により、ヘッド3aと前述の図示しないインクタンクとの位置関係が変化しても、ヘッド3a内のインクの圧力が所定範囲内の負圧に維持される。このため、ヘッド3aのノズルNに形成されるインクのメニスカスの安定化が図られる。この結果、ノズルN内に気泡が入り込んだり、ノズルNからインクが溢れ出したりすることが防止される。また、圧力調整弁3bからのインクは、図示しない分岐流路を介してヘッド3aの複数箇所に適宜に分配される。ここで、図示しないインクタンクからのインクは、ポンプ等により所定の圧力で圧力調整弁3bに供給される。
【0078】
エネルギー出射部3cは、ワークW上のインクを硬化または固化させるための光、熱、電子線または放直線等のエネルギーを出射する。例えば、インクが紫外線硬化性を有する場合、エネルギー出射部3cは、紫外線を出射するLED(light emitting diode)等の発光素子等で構成される。また、エネルギー出射部3cは、エネルギーの出射方向または出射範囲等を調整するためのレンズ等の光学部品等を適宜に有してもよい。
【0079】
1-4.印刷動作設定方法
図4は、第1実施形態に係る立体物印刷装置1の印刷動作設定方法の流れを示す図である。図4に示すように、当該印刷動作設定方法は、候補経路作成ステップS10と吐出条件取得ステップS20と吐出幅情報取得ステップS30と印刷経路選択ステップS40と印刷データ生成ステップS50とをこの順で含み、本実施形態では、これらのステップは、コンピューター7の処理回路7bによって実行される。以下、各ステップの概略を説明する。
【0080】
候補経路作成ステップS10は、仮想空間において、ワークWとヘッド3aとの相対的な位置の変化を示す複数の候補経路を作成する。この作成結果を示す情報として候補経路情報Dbが生成される。
【0081】
本実施形態では、候補経路作成ステップS10が第1ステップS11と第2ステップS12と第3ステップS13とをこの順で含む。第1ステップS11は、仮想空間においてワークWの表面に沿う副走査基準線を設定する。第2ステップS12は、仮想空間において副走査基準線上に第1基準点および第2基準点を含む複数の基準点を設定する。第3ステップS13は、仮想空間において印刷動作でのヘッド3aの移動経路である印刷経路を設定する。本実施形態では、第3ステップS13で設定される印刷経路は、仮の印刷経路である候補経路であり、実際の印刷動作の実行時に用いる印刷経路以外の経路を含む場合がある。候補経路作成ステップS10の詳細については、後に図5から図10に基づいて説明する。
【0082】
吐出条件取得ステップS20は、仮想空間において、候補経路情報Dbの示す複数の候補経路の経路ごとに複数のノズルNとワークWの印刷領域との位置関係に関する吐出条件情報Deを取得する。吐出条件取得ステップS20の詳細については、図11に基づいて説明する。
【0083】
吐出幅情報取得ステップS30は、候補経路情報Dbの示す複数の候補経路の経路ごとに、吐出距離情報De1および角度情報De2のうちの一方または両方に基づいて有効ノズル情報Dfを取得する。
【0084】
印刷経路選択ステップS40は、吐出条件情報Deに基づいて、候補経路情報Dbの示す複数の候補経路のうちの少なくとも1つの候補経路を印刷動作の実行時に用いる印刷経路として選択する。この選択結果を示す情報として印刷経路情報Daが生成される。このとき、選択された候補経路情報Dbに含まれていた位置情報成分と姿勢情報成分とは、印刷経路情報Daに含まれる位置情報成分と姿勢情報成分として引き継がれる。本実施形態の印刷経路選択ステップS40は、吐出条件情報Deのほか、有効ノズル情報Dfと印刷領域情報Ddとに基づいて、印刷経路を選択する。吐出幅情報取得ステップS30の詳細については、後に図12および図13に基づいて説明する。
【0085】
印刷データ生成ステップS50は、印刷経路情報Da、印刷領域情報Ddおよびヘッド情報Dgに基づいて、印刷データImgを生成する。印刷データ生成ステップS50の詳細については、後に図14および図15に基づいて説明する。
【0086】
1-5.候補経路作成ステップ
図5は、候補経路作成ステップS10の第1ステップS11を説明するための図である。図5では、仮想空間SVにおけるワークWが示される。仮想空間SVには、互いに交差するx軸、y軸およびz軸を座標軸とする座標系が設定される。ここで、x軸がX軸に対応しており、x軸に沿う一方向がx1方向であり、x1方向と反対の方向がx2方向である。y軸がY軸に対応しており、y軸に沿って互いに反対の方向がy1方向およびy2方向である。z軸がZ軸に対応しており、z軸に沿って互いに反対の方向がz1方向およびz2方向である。なお、x軸、y軸およびz軸は、典型的には互いに直交するが、これに限定されず、80°以上100°以下の範囲内の角度で互いに交差すればよい。
【0087】
第1ステップS11は、図5に示すように、仮想空間SVにおいて、ワークWの表面に沿う副走査基準線LSを設定する。以下では、副走査基準線LSに沿う方向を副走査方向DSという場合がある。より詳細には、副走査方向DSは、後述の副走査仮想平面VPSに平行な方向であり、かつ、副走査基準線LS上の任意の点におけるワークWの表面との接線に平行な方向である。図5に示す例では、z軸に沿う方向にみて、副走査方向DSがy軸に沿う方向である。
【0088】
より具体的に説明すると、第1ステップS11において、まず、仮想空間VSには、ワーク情報Dcに基づいてワークWが配置されるとともに、印刷領域情報Ddに基づいて印刷領域RPが設定される。続いて、第1ステップS11において、印刷領域RPと交差するように副走査仮想平面VPSが設定される。その後、第1ステップS11において、仮想空間SVにおける仮想的な平面である副走査仮想平面VPSとワークWの表面との交点に基づいて副走査基準線LSが設定される。ここで、副走査基準線LSは、副走査仮想平面VPSとワークWの表面との交線または当該交線に沿う線分であり、仮想空間SVに設定される座標系の座標値を用いて表される。印刷領域RPは、ワークWの表面の印刷対象となる領域である。
【0089】
副走査基準線LSは、印刷領域RPを通過する。図5に示す例では、印刷領域RP内での副走査基準線LSの中心は、印刷領域RPの端部よりも印刷領域RPの中心に近い位置にある。すなわち、副走査基準線LSは、副走査方向DSに交差する後述の主走査方向DMにおける印刷領域RPの端よりも印刷領域RPの中心に近い位置で印刷領域RPを通過するように設定される。なお、主走査方向DMは、後述の候補経路LMまたは印刷経路RUに沿う方向である。より詳細には、主走査方向DMは、後述の主走査仮想平面VPMに平行な方向であり、かつ、候補経路LMまたは印刷経路RU上の任意の点におけるワークWの表面との接線に平行な方向である。
【0090】
ここで、印刷領域RPの主走査方向DMでの端部の副走査方向DSに沿う長さは、印刷領域RPの主走査方向DMでの中央の副走査方向DSに沿う長さよりも短い場合がある。このような場合であっても、印刷領域RP内での副走査基準線LSの中心が印刷領域RPの端部よりも印刷領域RPの中心に近い位置にあることにより、後述の候補経路LMおよび印刷経路RUの適切な設定が容易となる。このような観点から、この場合、第1ステップS11において、副走査基準線LSは、副走査方向DSに沿う印刷領域RPの幅の最も長い部分を通ることが好ましい。
【0091】
図6は、仮想空間VSにおけるワークWの表面の詳細を説明するための図である。第1ステップS11は、まず、ワーク情報Dcを取得する。この取得は、処理回路7bが記憶回路7aからワーク情報Dcを読み出すことにより行われる。この取得後、ワークWの面WFが仮想空間VSに配置される。図6では、ワーク情報Dcの表すワークWの面WFの一部が代表的に示される。なお、図6では図示しないが、第1ステップS11は、ワーク情報Dcの取得とともに、印刷領域情報Ddを取得し、印刷領域情報Ddに基づく印刷領域RPが仮想空間VSに設定される。
【0092】
仮想空間SVにおいて、面WFは、複数のポリゴンPOLで構成される。図6に示す例では、各ポリゴンPOLは、3個の辺LEおよび3個の頂点PVを有する三角形をなす。ここで、各辺LEは、2個のポリゴンPOLに共有される。1個の辺LEを共有する2個のポリゴンPOLは、当該1個の辺LEを境界として互いに隣り合う。また、各頂点PVは、3個以上のポリゴンPOLに共有される。1個の頂点PVを共有する3個以上のポリゴンPOLは、当該1個の頂点PVを接点として互いに接する。各ポリゴンPOLの法線ベクトルVpは、ワーク情報Dcに含まれるベクトル情報により得られる。なお、各ポリゴンPOLの形状は、三角形に限定されず、四角形等の他の多角形でもよい。
【0093】
図7は、副走査基準線LSの詳細を説明するための図である。第1ステップS11は、仮想空間VSにおいて、前述のような面WFの配置の後、副走査仮想平面VPSを指定する。副走査仮想平面VPSは、面WFを横断する。副走査仮想平面VPSおよび面WFは、これらの交線として副走査基準線LSで互いに交差する。
【0094】
副走査仮想平面VPSの指定は、ユーザーからの指定に基づき、処理回路7bによって実行される。当該指定は、例えば、コンピューター7に対するユーザーによる入力により行われる。例えば、コンピューター7の入力装置を用いた入力により、仮想空間VSにおける副走査仮想平面VPSの位置および姿勢のうちの一方または両方が設定される。なお、当該指定は、印刷領域RPの形状等に基づいて、予め設定された基準に従い自動的に設定されてもよい。
【0095】
副走査仮想平面VPSは、交差するポリゴンPOL(後述する交差ポリゴンPOL_1)の法線に対してできるだけ平行となるように指定されることが好ましい。例えば、図7に示すように、交差するポリゴンPOLが5つある場合は、各ポリゴンPOLと副走査仮想平面VPSとがなす角と、90°と、の差分の合計値または平均値等が最小になるように指定される。
【0096】
第1ステップS11は、前述のような副走査仮想平面VPSの指定後、仮想空間VSにおいて、複数のポリゴンPOLのうち、副走査仮想平面VPSと交差するポリゴンPOLである複数の交差ポリゴンPOL_1を特定する。前述のように副走査仮想平面VPSが面WFを横断するので、面WFを構成する複数のポリゴンPOLは、副走査仮想平面VPSに交差する複数の交差ポリゴンPOL_1と、副走査仮想平面VPSに交差しない複数のポリゴンPOL_2と、に区分される。図7では、説明の便宜上、交差ポリゴンPOL_1が網掛け表示される。
【0097】
第1ステップS11は、仮想空間VSにおいて、複数の交差ポリゴンPOL_1に基づいて、副走査基準線LSの位置を設定する。具体的には、第1ステップS11は、複数の交差ポリゴンPOL_1の辺LEと副走査仮想平面VPSとの複数の交点Paに基づいて副走査基準線LSの位置を設定する。
【0098】
図7に示す例では、複数の交点Paの間が補間点Pbで補間される。複数の交点Paおよび複数の補間点Pbからなる複数の点は、副走査基準線LSの位置として設定される。このように、複数の交点Paおよび複数の補間点Pbに基づいて副走査基準線LSの位置が設定される。なお、図7に示す例では、隣り合う2つの交点Paの間に配置される補間点Pbの数が1つであるが、当該数は、2つ以上でもよい。複数の交点Paおよび複数の補間点Pbからなる複数の点は、等間隔でなくともよい。
【0099】
なお、副走査基準線LSの位置は、複数の交点Paおよび複数の補間点Pbの少なくとも一方に基づくものであればよく、複数の交点Paおよび複数の補間点Pbの位置と一致しなくともよい。例えば、副走査基準線LSの位置は、複数の交点Paおよび複数の補間点Pbの位置を交差ポリゴンPOL_1から一律に離間させる方向に移動させた位置であってもよい。
【0100】
図7に示す例では、補間点Pbは、副走査仮想平面VPSおよび面WFの交線上に配置される。複数の交点Paおよび複数の補間点Pbからなる複数の点は、典型的には可能な限り等間隔に配置される。ここで、補間点Pbは、複数の交点Paを通過する滑らかな曲線上に配置されることが好ましい。こうした曲線は、例えば、スプライン関数によって表される。なお、複数の交点Paを複数の有効交点と少なくとも1つの無効交点とに選別した後、当該複数の有効交点の間を補間することにより副走査基準線LSの位置が設定されてもよい。
【0101】
図8は、候補経路作成ステップS10の第2ステップS12を説明するための図である。第2ステップS12は、図8に示すように、仮想空間VSにおいて副走査基準線LS上に複数の基準点PMを設定する。この設定は、例えば、前述の交点Paまたは補間点Pbを基準点PMとして選択することにより行うか、または、前述の交点Paまたは補間点Pbに基づいて、副走査基準線LSを表すスプライン関数等の関数を用いて、副走査基準線LS上の適宜の複数の点を基準点PMとして求めることにより行われる。
【0102】
ここで、複数の基準点PMのうち、任意の1つの基準点PMが「第1基準点」の一例であり、第1基準点に隣り合う任意の1つの基準点PMが「第2基準点」の一例であり、第1基準点とは別に第2基準点に隣り合う任意の1つの基準点PMが「第3基準点」の一例である。したがって、複数の基準点PMのうち、「第1基準点」に相当する基準点PMと「第2基準点」に相当する基準点PMと「第3基準点」に相当する基準点PMとは、この順で副走査基準線LS上に並ぶ。なお、基準点PMの数は、2つ以上であればよく、図8に示す例に限定されず、任意である。基準点PMの数が2つである場合、2つの基準点PMのうち、一方の基準点PMが「第1基準点」であり、他方の基準点PMが「第2基準点」である。
【0103】
複数の基準点PMのうちの互いに隣り合う2つの基準点PMの間の副走査基準線LSに沿う距離Dmは、副走査基準線LSの全域にわたり、ノズル列NLのb軸に沿う方向の幅以下であり、より好ましくは、ノズル列NLの幅の1/2以下である。図8に示す例では、複数の基準点PMが等間隔で副走査基準線LS上に並ぶ。したがって、「第1基準点」に相当する基準点PMと「第2基準点」に相当する基準点PMとの間の副走査基準線LSに沿う距離Dmは、「第2基準点」に相当する基準点PMと「第3基準点」に相当する基準点PMとの間の副走査基準線LSに沿う距離Dmに等しい。なお、複数の基準点PMの副走査基準線LSに沿う間隔は、等間隔でなくてもよい。
【0104】
図9は、候補経路作成ステップS10の第3ステップS13を説明するための図である。第3ステップS13は、図9に示すように、仮想空間VSにおいて、基準点PMごとの複数の候補経路LMを設定する。複数の候補経路LMのそれぞれは、対応する基準点PMを通り、かつ、副走査基準線LSに交差する。ここで、複数の候補経路LMのうち、「第1基準点」に相当する基準点PMを通る候補経路LMが「第1印刷経路」の一例であり、「第2基準点」に相当する基準点PMを通る候補経路LMが「第2印刷経路」の一例であり、「第3基準点」に相当する基準点PMを通る候補経路LMが「第3印刷経路」の一例である。
【0105】
図10は、候補経路LMの設定方法を説明するための図である。図10では、説明の便宜上、複数の基準点PMのうち、「第1基準点」に相当する基準点PMである基準点PM_1と「第2基準点」に相当する基準点PMである基準点PM_2と「第3基準点」に相当する基準点PMである基準点PM_1とが代表的に示される。
【0106】
ここで、複数の候補経路LMのうち、「第1印刷経路」に相当する候補経路LMが候補経路LM_1であり、「第2印刷経路」に相当する候補経路LMが候補経路LM_2であり、「第3印刷経路」に相当する候補経路LMが候補経路LM_3である。
【0107】
候補経路LM_1は、仮想空間VSにおいて、基準点PM_1を通過する仮想的な平面である第1主走査仮想平面VPM_1とワークWの表面との交点に基づいて設定される。同様に、候補経路LM_2は、仮想空間VSにおいて、基準点PM_2を通過する仮想定な平面である第2主走査仮想平面VPM_2とワークWの表面との交点に基づいて設定される。また、候補経路LM_3は、仮想空間VSにおいて、基準点PM_3を通過する仮想定な平面である第3主走査仮想平面VPM_3とワークWの表面との交点に基づいて設定される。なお、以下では、第1主走査仮想平面VPM_1、第2主走査仮想平面VPM_2および第3主走査仮想平面VPM_3のそれぞれを主走査仮想平面VPMという場合がある。
【0108】
主走査仮想平面VPMとワークWの表面との交点は、図7に示す前述の副走査仮想平面VPSと面WFとの交点Paおよび補間点Pbと同様に設定される。また、副走査仮想平面VPSおよび主走査仮想平面VPMの両方に平行な方向にみて、副走査仮想平面VPSおよび主走査仮想平面VPMは、互いに直交する。
【0109】
ここで、主走査仮想平面VPMは、ヘッド3aによる理想的なインクの吐出方向とヘッド3aの理想的な移動方向とを大まかに表す平面である。つまり、候補経路LMが後述の印刷経路RUとして用いられる場合の印刷動作の実行中において、ヘッド3aは主走査仮想平面VPMと概して平行にインクを吐出し、ヘッド3aは主走査仮想平面VPMと概して平行な方向に移動する。このように、主走査仮想平面VPMは、印刷時のヘッド3aの位置および姿勢を規定するための基準となる平面である。
【0110】
本実施形態では、第3ステップS13において、主走査仮想平面VPMは、基準点PMにおける面WFの法線と平行である。本実施形態では、ノズル列方向DNにおけるツールセンターポイントTCPの位置がノズル列NLの中心に設定されるため、主走査仮想平面VPMを基準点PMにおける面WFの法線と平行にすることで、比較的多くのノズルNにおいて後述の吐出距離PGを狭くした印刷経路RUを容易に設定することができる。
【0111】
ここで、例えば、第2ステップS12において交点Paまたは補間点Pbを基準点PMとして選択することにより基準点PMの設定を行う場合、基準点PMにおける面WFの法線は、前述の図7に示すベクトルVaまたはベクトルVbに平行である。すなわち、この場合、基準点PM_1~PM_3における面WFの法線ベクトルVpm_1~Vpm_3は、図7に示すベクトルVaまたはベクトルVbである。
【0112】
ベクトルVaは、交点Paにおける面WFの法線ベクトルであり、好ましくは、対応する交点Paを含む辺LEの両端を共有する複数のポリゴンPOLの法線ベクトルVpに基づいて規定される。図7を参照しつつ具体的に説明すると、複数の交点Paのうちの1つの交点を第1交点とすると、第1交点に対応する法線に沿う方向を示すベクトルVaは、第1頂点ベクトルVc_1および第2頂点ベクトルVc_2に基づいて規定されることが好ましい。ここで、複数の交差ポリゴンPOL_1の辺LEのうち第1交点を含む辺LEを第1辺LE_1とし、第1辺LE_1の一端を第1頂点PV_1とし、第1辺LE_1の他端の第2頂点PV_2とすると、第1頂点ベクトルVc_1は、第1頂点PV_1に対応する法線ベクトルであり、第2頂点ベクトルVc_2は、第2頂点PV_2に対応する法線ベクトルである。なお、これらの頂点ベクトルは、ワーク情報Dcに含まれるベクトル情報Db2に基づいて、あらかじめ求めておくことが好ましい。
【0113】
ベクトルVbは、補間点Pbにおける面WFの法線ベクトルであり、好ましくは、隣り合う2個のベクトルVaの平均となるように規定される。
【0114】
候補経路LMの示す位置、すなわち、候補経路情報Dbに含まれる位置情報成分は、主走査仮想平面VPMとワークWの表面との複数の交点に基づくものであればよく、主走査仮想平面VPMとワークWの表面との交点の位置と一致しなくともよい。例えば、印刷を施す際にヘッド3aとワークWとを離間させて互いの衝突を防ぐために、候補経路LMの位置は、主走査仮想平面VPMとワークWの表面との複数の交点をワークWの表面から一律に離間させる方向に移動させた位置であってもよい。この場合、ロボット2のツールセンターポイントTCPは、本実施形態とは異なり、ヘッド3aのノズル面FN上の位置等に配置される。
【0115】
これに対し、本実施形態では、候補経路LMの位置は主走査仮想平面VPMとワークWの表面とが交差する複数の点からなり、面WF上に配置される。一方、ツールセンターポイントTCPは、図11に示すように、ノズル面FNから所定距離だけ離れた位置に設定されているため、印刷を施す際にヘッド3aとワークWとを離間させて互いの衝突を防ぐことができる。また、ツールセンターポイントTCPがb軸方向においてノズル列LNの中心に設定されているため、印刷動作では、ヘッド3aのノズル列NLの中心が概ね主走査仮想平面VPMに沿って動作する。
【0116】
以上のように候補経路LMの位置を設定した後、第3ステップS13は、候補経路情報Dbに含まれる姿勢情報成分、すなわち、候補経路LMの各位置でのヘッド3aのヨー、ロールおよびピッチの姿勢を設定する。具体的には、第3ステップS13は、まず、ワーク情報Dcのベクトル情報に基づいて、ポリゴンPOLの辺LEと主走査仮想平面VPMとの交点に対応する法線に沿う方向を示す複数の交点ベクトルを特定する。そして、第3ステップS13は、当該複数の交点ベクトルに基づいて、候補経路情報Dbに含まれる姿勢情報成分を設定する。より具体的には、第3ステップS13では、当該複数の交点ベクトルとヘッド情報Dgとに基づいて、ヘッド3aの吐出方向DEまたはヘッド3aのc軸が交点ベクトルと平行になるように処理回路7bが候補経路情報Dbの姿勢情報成分を設定する。
【0117】
ここで、当該複数の交点ベクトルのほか、ポリゴンPOLの辺LEと主走査仮想平面VPMとの交点を補間する補間点に対応する法線に沿う方向を示す複数の補間点ベクトルが特定される。当該複数の補間点ベクトルのそれぞれは、例えば、隣り合う2個の交点ベクトルの平均となるように規定される。
【0118】
以上のように、候補経路情報Dbの位置情報成分および姿勢情報成分が設定される。その後、候補経路情報Dbの示す位置に沿うヘッド3aとワークWとの相対的な移動方向が指定される。本実施形態では、ロボット2に近づく方向が移動方向として設定される。なお、ロボット2に近づく方向が移動方向として設定されてもよい。
【0119】
1-6.吐出条件取得ステップおよび吐出幅情報取得ステップ
図11は、吐出条件取得ステップS20および吐出幅情報取得ステップS30を説明するための図である。図11では、1つの候補経路LMに対応するヘッド3aが代表的に示される。なお、図11では、説明の便宜上、ヘッド3aが模式的に示される。
【0120】
吐出条件取得ステップS20は、印刷領域情報Dd、候補経路情報Dbおよびヘッド情報Dgに基づいて、吐出条件情報Deを取得する。この取得は、仮想空間VSにおいて、候補経路情報Dbの示す複数の候補経路LMの経路ごとに、複数のノズルNと印刷領域RPとの位置関係に関する各種数値を算出することにより行われる。
【0121】
吐出条件取得ステップS20について詳述すると、まず、仮想空間VSに、印刷領域情報Ddの示す印刷領域RPと候補経路情報Dbの示す複数の候補経路LMとが設定され、そのうえで、ヘッド情報Dgに基づいて、候補経路情報Dbの示す位置および姿勢でツールセンターポイントTCPが各候補経路LM上に設定されるように、仮想空間VSに複数のノズルNの位置および姿勢が設定される。その後、各ノズルNからヘッド情報Dgの示すノズルNの吐出方向に延びる直線と印刷領域RPとの交点が求められる。そして、各ノズルNについて、当該交点とノズルNとの間の距離が吐出距離PGとして求められる。また、各ノズルNについて、当該交点における印刷領域RPの接平面と当該吐出方向とのなす角が着弾角度θとして求められる。以上から、各ノズルNについて吐出距離PGおよび着弾角度θを示す吐出条件情報Deが得られる。
【0122】
本実施形態では、吐出条件情報Deは、前述のように、吐出距離情報De1と角度情報De2とを含む。吐出距離情報De1は、印刷領域RPと複数のノズルNとの間の吐出方向DEでの距離をノズルNごとに示す。当該距離は、ノズルNから印刷領域RPへのインクの吐出距離PGに相当する。角度情報De2は、印刷領域RPと複数のノズルNから吐出されるインクの飛翔方向とのなす角度をノズルNごとに示す。当該角度は、ノズルNから印刷領域RPへのインクの着弾角度θに相当する。
【0123】
図11に示す例では、印刷領域RPが凸湾曲しているため、吐出距離PGおよび着弾角度θのそれぞれは、ノズルNごとに異なる。ここで、ノズル列NLを構成する複数のノズルNのうちノズル列NLの中央よりも端部に近いノズルNを第1ノズルとし、当該複数のノズルNのうち第1ノズルよりもノズル列NLの中央に近いノズルNを第2ノズルとしたとき、第2ノズルに相当するノズルNと印刷領域RPとの間の吐出距離PGは、第1ノズルに相当するノズルNと印刷領域RPとの間の吐出距離PGよりも大きい。また、第1ノズルに相当するノズルNから吐出されるインクの飛翔方向と印刷領域RPとのなす角度である着弾角度θは、第2ノズルに相当するノズルNから吐出されるインクの飛翔方向と印刷領域RPとのなす角度である着弾角度θに比べて90°に近い。
【0124】
前述のように、ヘッド3aの吐出方向DEが基準点PMにおける面WFの法線と平行になるように候補経路情報Dbの示す姿勢が設定されるとともに、ツールセンターポイントTCPを基準としてヘッド3aの姿勢が設定されるため、印刷領域RPが湾曲している場合、ノズル列NLを構成する複数のノズルNのうちのツールセンターポイントTCPに最も近いノズルNの吐出距離PGおよび着弾角度θが最も理想的になるように設定される。言い換えると、ノズル列NLを構成する複数のノズルNのうち、ツールセンターポイントTCPから離れたノズルNほど、吐出距離PGおよび着弾角度θの理想的な条件からのずれが大きくなる。したがって、前述のように、第2ノズルが第1ノズルに比べてツールセンターポイントTCPに近いため、第2ノズルの吐出距離PGおよび着弾角度θは、第1ノズルの吐出距離PGおよび着弾角度θに比べて理想的である。
【0125】
吐出距離PGが所定距離よりも大きくなったり、着弾角度θが90°よりも所定以上ずれたりすると、ノズルNから印刷領域RPへのインクの着弾精度が悪化してしまう。そこで、吐出幅情報取得ステップS30は、ノズル列NLを構成する複数のノズルNのうち、インクの吐出に用いるノズル群を設定することにより、有効ノズル情報Dfを取得する。
【0126】
有効ノズル情報Dfは、液体の吐出に用いられる有効なノズル群の位置とそれらのノズル群によって形成される幅である吐出幅Wnを示す。図11に示す例では、ノズル列NLを構成する複数のノズルNのうち、ノズル列NLの両端部のそれぞれの2個のノズルNを除く複数のノズルNがインクの吐出に用いるノズル群として設定される。図7では、説明の便宜上、ノズル列NLを構成する複数のノズルNとして7個のノズルが代表的に示されており、当該7個のノズルNのうちノズル列NLの中央に近いほうの4個のノズルNがインクの吐出に用いる有効なノズル群として設定される。このとき、吐出に用いるノズル群のうちb軸方向またはノズル列方向DNにおける一端と他端との距離が吐出幅Wnとなる。なお、吐出幅Wnは、吐出距離PGおよび着弾角度θのうちの一方または両方に基づいて決められ、図11に示す例に限定されない。例えば、吐出距離PGが過度に大きい場合、画質の劣化が生じてしまうため、許容される吐出距離PGの最大値である許容吐出距離を設定する。吐出条件情報Deと比較して、吐出距離PGが許容吐出距離以下となるノズルNがインクの吐出に用いられる有効なノズル群として設定される。
【0127】
1-7.印刷経路選択ステップ
図12は、印刷経路選択ステップS40を説明するための図である。図12では、候補経路情報Dbの示す複数の候補経路LMとして前述の候補経路LM_1、LM_2、LM_3のほか、候補経路LM_0が示される。図12では図示を省略するが、本実施形態では、これらの候補経路LMのほか、後述の図13に示すように、後述の候補経路LM_4~LM_6が候補経路LMとして用いられる。
【0128】
印刷経路選択ステップS40は、図12に示すように、候補経路情報Dbの示す複数の候補経路LMのうちの少なくとも1つの候補経路LMを印刷動作の実行時に用いる印刷経路として選択する。この選択は、吐出条件情報Deと有効ノズル情報Dfと印刷領域情報Ddとに基づいて行う。本実施形態では、後述の図13に示すように、候補経路LM_1、LM_3、LM_5が印刷経路RU_1~RU_3として選択される場合が例示される。なお、以下では、印刷経路RU_1~RU_3のそれぞれを印刷経路RUという場合がある。
【0129】
図13は、吐出条件情報Deおよび有効ノズル情報Dfに基づく印刷経路の選択を説明するための図である。図13では、互いに異なる7個の候補経路LMである候補経路LM_a~LM_gのノズル列NLと印刷領域RPとの関係が示される。図13中、「1」は、ヘッド3aの有する複数のノズルNをノズル列方向DNの所定範囲ごとに区分した複数のノズルNからなるノズル群について、吐出距離PGおよび着弾角度θのそれぞれが所定範囲内にあることを示し、「0」は、ヘッド3aの有する複数のノズルNをノズル列方向DNの所定範囲ごとに区分した複数のノズルNからなるノズル群について、吐出距離PGおよび着弾角度θのうちの一方または両方が所定範囲内にないことを示し、「-」は、ヘッド3aのノズルNが印刷領域RPに対向しないことを示す。
【0130】
印刷経路選択ステップS40は、まず、候補経路情報Dbおよび吐出条件情報Deに基づいて、印刷領域RPを通過する複数の候補経路LMを抽出する。図13に示す例では、候補経路LM_0~LM_6が抽出される。
【0131】
また、印刷経路選択ステップS40は、複数の候補経路LMを抽出した後、各候補経路LMについての有効ノズル情報Dfを取得し、印刷領域RPと吐出幅Wnとの位置関係を求める。図13に示す例では、吐出幅Wnが「1」で示されるノズル群で規定される。
【0132】
さらに、印刷経路選択ステップS40は、印刷領域RPと吐出幅Wnとの位置関係に基づいて、抽出した複数の候補経路LMのうち、印刷経路RUとして最適な候補経路LMの組み合わせを求め、その組み合わせを印刷経路RUとして選択する。ここで、当該組み合わせは、各候補経路LMの吐出幅Wnが副走査方向DSにおいて互いに重なる領域である後述の重複領域OVを有し、かつ、印刷領域RPの全域を満たすことが可能な最小個数の候補経路LMの組み合わせである。
【0133】
当該組み合わせについて図13に基づいて具体的に説明すると、印刷領域RPの副走査方向DSでの一端である図中左端から「1」が始まる候補経路LM_1を印刷経路RU_1として選択し、続いて、印刷経路RU_1の副走査方向DSでの他端である図中右端の「1」と副走査方向DSで同じ位置から「1」が始まる候補経路LM_3を印刷経路RU_2として選択し、さらに、印刷経路RU_2の副走査方向DSでの一端である図中右端の「1」と副走査方向DSで同じ位置から「1」が始まる候補経路LM_5を印刷経路RU_3として選択する。このような演算を印刷経路RUの図中右端の「1」が印刷領域RPの図中右端に到達するまで繰り返すことにより、互いに重なり、かつ、印刷領域RPの全域を満たすことが可能な、複数の候補経路LMの最小個数の組み合わせである経路組LMSが求められる。
【0134】
以上のように、印刷経路選択ステップS40では、有効ノズル情報Dfに基づいて、候補経路情報Dbの示す複数の候補経路LMのうち印刷領域RPの範囲に対応する2つ以上の候補経路LMで構成される経路組LMSが印刷経路RUとして選択される。図13に示す例では、候補経路LM_0~LM_6のうち候補経路LM_1、LM_3、LM_5が経路組LMSを構成する。
【0135】
ここで、経路組LMSを構成する3つの候補経路LMは、「第1経路」、「第2経路」および「第3経路」の一例であり、主走査方向DMに沿って延びる。例えば、候補経路LM_1は、「第1経路」の一例である。候補経路LM_3は、「第2経路」の一例であり、候補経路LM_1に副走査方向DSで隣り合う。候補経路LM_5は、「第3経路」の一例であり、候補経路LM_3に副走査方向DSで隣り合う。
【0136】
なお、経路組LMSを構成する2つ以上の候補経路LMは、印刷領域RPの副走査方向での全範囲をカバーできればよく、図13に示す例に限定されない。また、経路組LMSを構成する候補経路LMの数は、2つ以下または4つ以上であってもよい。
【0137】
ただし、経路組LMSを構成する候補経路LMの数が多いほど、主走査方向DMでのヘッド3aの往復移動回数が多くなるものの、印刷領域RPの曲率が大きくても、ノズル列NLを構成する複数のノズルNのうち吐出距離PGおよび着弾角度θの変動の少ないノズルNのみを用いることができるので、画質を向上させることができる。一方、経路組LMSを構成する候補経路LMの数が少ないほど、主走査方向DMでのヘッド3aの往復移動回数を少なくすることができるので、印刷の生産性を向上させることができる。ここで、印刷領域RPの曲率が小さければ、経路組LMSを構成する候補経路LMの数が少なくすることにより、画質の向上と生産性の向上との両立を図ることができる。このようなことから、印刷領域RPの曲率に応じて、経路組LMSを構成する候補経路LMの数を設定することにより、印刷の生産性の低下を低減しつつ、画質を向上させることができる。
【0138】
このように、印刷の生産性を向上させる観点では、印刷経路選択ステップS40での選択は、経路組LMSを構成する候補経路LMの数が最小となるように行われる。また、印刷領域RPに画像抜けを生じさせない観点から、印刷経路RUとして選択される2つ以上の候補経路LMのうち互いに隣り合う2つの候補経路LMの間隔Drは、有効ノズル情報Dfの示す幅である吐出幅Wnよりも小さい。
【0139】
1-8.印刷データ生成ステップ
まず、印刷データ生成ステップS50の説明に先立ち、前述の印刷経路選択ステップS40で選択された3つの印刷経路RUについて説明する。
【0140】
図14は、印刷経路RUを説明するための図である。図14では、前述の印刷経路選択ステップS40で選択された3つの印刷経路RUが印刷経路RU_1~RU_3として示されるとともに、説明の便宜上、各印刷経路RU_1~RU_3に対応するヘッド3aであるヘッド3a_1~3a_3が二点鎖線で示される。
【0141】
印刷動作では、図14に示すように、ロボット2がヘッド3aを各印刷経路RUに沿って移動させつつヘッド3aがワークWの面WFに向けてインクを吐出する。互いに隣り合う2つの印刷経路RUの印刷動作の間には、ロボット2がヘッド3aを副走査方向DSに移動させる改行動作を実行する。
【0142】
ここで、ロボット2がヘッド3aを印刷経路RU_1に沿って移動させつつヘッド3aがワークWの面WFに向けてインクを吐出する印刷動作は、「第1印刷動作」の一例である。ロボット2がヘッド3aを印刷経路RU_2に沿って移動させつつヘッド3aがワークWの面WFに向けてインクを吐出する印刷動作は、「第2印刷動作」の一例である。ロボット2がヘッド3aを印刷経路RU_3に沿って移動させつつヘッド3aがワークWの面WFに向けてインクを吐出する印刷動作は、「第3印刷動作」の一例である。ここで、第1印刷動作におけるワークWに対するヘッド3aの相対的な移動方向が主走査方向DM_1であり、第2印刷動作におけるワークWに対するヘッド3aの相対的な移動方向が主走査方向DM_2であり、第3印刷動作におけるワークWに対するヘッド3aの相対的な移動方向が主走査方向DM_3である。以下では、主走査方向DM_1、DM_2、DM_3のそれぞれを主走査方向DMという場合がある。
【0143】
なお、「第1印刷動作」は、ロボット2がヘッド3aを印刷経路RU_2に沿って移動させつつヘッド3aがワークWの面WFに向けてインクを吐出する印刷動作であってもよい。この場合、ロボット2がヘッド3aを印刷経路RU_1に沿って移動させつつヘッド3aがワークWの面WFに向けてインクを吐出する印刷動作は、「第2印刷動作」に相当する。また、ロボット2がヘッド3aを印刷経路RU_2に沿って移動させつつヘッド3aがワークWの面WFに向けてインクを吐出する印刷動作と、ロボット2がヘッド3aを印刷経路RU_3に沿って移動させつつヘッド3aがワークWの面WFに向けてインクを吐出する印刷動作と、のうち、一方の印刷動作を「第1印刷動作」とし、他方の印刷動作を「第2印刷動作」として捉えてもよい。
【0144】
以上のように、印刷動作が行われる。ここで、ロボット2は、第1印刷動作および第2印刷動作のそれぞれの実行時において、前述の第2ノズルに相当するノズルNから印刷領域RPへのインクの吐出距離PGを第1ノズルに相当するノズルNから印刷領域RPへのインクの吐出距離PGよりも短くするように動作する。このため、第1ノズルに相当するノズルNから印刷領域RPへの着弾誤差は、第2ノズルに相当するノズルNから印刷領域RPへの着弾誤差に比べて大きい。これは、前述のように、第1ノズルに相当するノズルNでは、第2ノズルに相当するノズルNに比べて、吐出距離PGが大きいことから、ノズルNから吐出されるインクの液滴が飛翔中に気流または吐出方向の誤差の影響を受けやすいためである。
【0145】
また、ロボット2は、第1印刷動作および第2印刷動作のそれぞれの実行時において、前述の第2ノズルに相当するノズルNから印刷領域RPへのインクの着弾角度θを第1ノズルに相当するノズルNから印刷領域RPへのインクの着弾角度θよりも90°に近くするように動作する。このため、第1ノズルに相当するノズルNから印刷領域RPへの着弾誤差は、第2ノズルに相当するノズルNから印刷領域RPへの着弾誤差に比べて大きい。これは、前述のように、第1ノズルに相当するノズルNでは、第2ノズルに相当するノズルNに比べて、着弾角度θの90°との差が大きいことから、ワークWの形状またはノズルNの位置および姿勢の誤差の影響を受けやすいためである。
【0146】
そこで、印刷データ生成ステップS50は、前述のような着弾誤差による画質の低下を低減するように、第1印刷動作および第2印刷動作のそれぞれによる記録比率を調整した印刷データImgを作成する。
【0147】
なお、前述のように、「第1ノズル」は、ノズル列NLを構成する複数のノズルNのうち、ノズル列NLの中央よりも端部に近いノズルNであり、「第2ノズル」は、当該複数のノズルNのうち第1ノズルよりもノズル列NLの中央に近いノズルNである。
【0148】
図15は、印刷データ生成ステップS50を説明するための図である。図15では、ヘッド3a_1~3a_3のそれぞれの複数のノズルNとワークW上のインクの着弾位置との関係が示される。なお、前述のように、ヘッド3a_1は第1印刷動作の実行時のヘッド3aであり、ヘッド3a_2は第2印刷動作の実行時のヘッド3aであり、ヘッド3a_3は第3印刷動作の実行時のヘッド3aである。
【0149】
印刷データ生成ステップS50は、印刷経路情報Da、印刷領域情報Ddおよびヘッド情報Dgに基づいて、印刷データImgを生成する。なお、印刷経路情報Da、印刷領域情報Ddおよびヘッド情報Dgは、必要に応じて、仮想空間VSの座標系の座標値に合わせて変換処理したうえで印刷データ生成ステップS50に用いられる。
【0150】
具体的に説明すると、印刷データ生成ステップS50は、図15に示すように、仮想空間VSにおいて、印刷経路情報Daの示す印刷経路RUごとに、印刷領域情報Ddの示す印刷領域RPと、ヘッド情報Dgの示すヘッド3aの各ノズルNから吐出方向DEに延びる仮想線と、の交点を求め、当該交点に基づいて、印刷経路情報Daの示す印刷経路ごと、つまり、印刷動作ごとの印刷データImgを生成する。
【0151】
当該交点は、ヘッド3aからのインクの着弾位置に相当する。印刷データ生成ステップS50は、印刷領域情報Ddに含まれる3次元画像情報から当該交点に対応する色データまたは階調データを印刷経路RUごとに抽出し、当該3次元画像情報を第1印刷動作、第2印刷動作および第3印刷動作の印刷動作ごとに分割し、分割された3次元画像情報を必要に応じて色変換および二値化することにより、印刷データImgを生成する。
【0152】
ここで、印刷領域RPは、仮想空間VSにおいて、図15に示すように複数のボクセルBXに量子化される。個々のボクセルBXは立方体であって、何れのボクセルも辺の長さが等しく、仮想空間VSにおいて印刷領域RPに沿って連続して3次元的に配置される。なお、ボクセルBXは辺の長さは印刷解像度に応じて適宜調整されることが好ましい。ボクセルBXへの量子化と、インクの着弾位置に相当する前述の交点とに基づき、印刷領域RPは、第1印刷動作の実行時にインクを付与可能な第1印刷領域RP1と、第2印刷動作の実行時にインクを付与可能な第2印刷領域RP2と、第3印刷動作の実行時にインクを付与可能な第3印刷領域RP3と、にボクセルBXを単位として分割される。続いて、印刷データ生成ステップS50は、各ボクセルBXに1つのノズルNからのインクによる1つのドットが所属するように排他的処理を行う。このように、ドット同士の排他処理は、ボクセルBXを単位として実行される。ドット同士の排他処理により、印刷領域情報Ddに含まれる3次元画像情報を第1印刷動作、第2印刷動作および第3印刷動作の印刷動作ごとに分割する。つまり、印刷動作ごとの印刷データImgを生成する。なお、ドット同士の排他処理の詳細については、後に図17から図20に基づいて説明する。
【0153】
なお、ドット同士の排他処理の単位の他の例として、ボクセルBXを用いずに、平面的な画像データである前述の2次元画像におけるピクセルを用いてもよい。この場合、2次元に配列されたピクセルに1つのノズルNからのインクによる1つのドットが所属するように排他的処理を行うことにより、印刷領域情報Ddに含まれる3次元画像情報を印刷動作ごとに分割する。なお、この場合は3次元画像の画素と前述の2次元画像のピクセルとが互いに対応付けられている必要がある。
【0154】
また、ドット同士の排他処理の単位の他の例として、ボクセルBXを用いる代わりに、パーティクルを用いてもよい。この場合、印刷領域RPは、仮想空間VSにおいて、複数のパーティクルによって表される。好ましくは、個々のパーティクルは球体であって、何れのパーティクルも半径が等しく、印刷領域RPに沿って3次元的に配置される。なお、パーティクルの半径は印刷解像度に応じて適宜調整されることがされに好ましい。パーティクルの中心はドットが配置される位置を示しており、パーティクルの中心は仮想空間VSにおいて、印刷領域RPと、ヘッド情報Dgの示すヘッド3aの各ノズルNから吐出方向DEに延びる仮想線と、の交点を求め、当該交点に基づいて配置される。また、あるパーティクルの半径よりも外側においては他のパーティクルの配置が許容される一方で、あるパーティクルの半径よりも内側には他のパーティクルの一部が侵入することは許容されず、他のパーティクルは排他される。つまり、印刷領域RPの表面は複数のパーティクルによって充填され、印刷領域RPの形状や個々の配置順序に応じて個々のパーティクルの位置は動的に変化する。このように規定されるパーティクルは、前述のボクセルBXに比べて、印刷領域RPの曲面を滑らかに表すことが可能であり、立体物印刷装置1によって形成される印刷画像中にモアレが生じることを抑制できる。
【0155】
なお、パーティクル同士の排他関係は半径の内側もしくは外側といった2値的な条件によって規定される前述の例の他にも、パーティクル同士の中心からの距離に応じた連続的な条件によって規定されてもよい。より具体的には、個々のパーティクルの中心において、他のパーティクルを排他する斥力が最も高くなるよう、ガウス関数等によって示される連続的な斥力ポテンシャルを設定する。そして、新たに配置しようとするパーティクルと、既に配置された周辺のパーティクルと、における斥力ポテンシャルの総和を計算し、当該総和が一定の閾値よりも低い場合については、新たにパーティクルを配置する。一方で、当該総和が一定の閾値よりも高い場合については、新たにパーティクルを配置することを保留する。このように斥力ポテンシャルの概念を導入した条件によってパーティクルの排他関係を規定することで、前述の2値的な条件によって排他関係を規定する場合に比べて、さらに印刷領域RPの曲面を滑らかに表すことが可能であり、立体物印刷装置1によって形成される印刷画像中にモアレが生じることを抑制できる。
【0156】
図15に示す例では、印刷領域情報Ddに含まれる3次元画像情報は、ヘッド3a_1からのインクによるドットDt1が所属する複数のボクセルBXに対応する3次元画像情報と、ヘッド3a_2からのインクによるドットDt2が所属する複数のボクセルBXに対応する3次元画像情報と、ヘッド3a_3からのインクによるドットDt3が所属する複数のボクセルBXに対応する3次元画像情報と、に分割される。なお、図15では、説明の便宜上、ドットDt1、Dt2、Dt3が互いに異なる表示態様で示される。
【0157】
ヘッド3a_1からのインクによるドットDt1が所属する複数のボクセルBXに対応する3次元画像情報は、第1印刷動作に用いられる。ヘッド3a_2からのインクによるドットDt2が所属する複数のボクセルBXに対応する3次元画像情報は、第2印刷動作に用いられる。ヘッド3a_3からのインクによるドットDt3が所属する複数のボクセルBXに対応する3次元画像情報は、第3印刷動作に用いられる。
【0158】
また、印刷データ生成ステップS50は、印刷領域RPにドットの所属しないボクセルBXが存在するか否かを確認する。これにより、実際の印刷画像に欠け等の欠陥が生じるか否かが確認される。印刷領域RPにドットの所属しないボクセルBXが存在する場合、印刷経路RUが適宜に追加または変更された後、印刷データ生成ステップS50が再度実行される。
【0159】
1-9.印刷領域
図16は、第1実施形態の印刷領域RPを説明するための図である。図16では、印刷経路RU_1~RU_3を用いた印刷動作の実行時の最大限の印刷領域RPが、理解を容易にするためにXY平面に展開して示される。
【0160】
印刷経路RU_1に沿ってヘッド3aを移動させる第1印刷動作の実行時には、ワークW上の第1印刷領域RP1にインクが付与される。印刷経路RU_2に沿ってヘッド3aを移動させる第2印刷動作の実行時には、ワークW上の第2印刷領域RP2にインクが付与される。印刷経路RU_3に沿ってヘッド3aを移動させる第3印刷動作の実行時には、ワークW上の第3印刷領域RP3にインクが付与される。
【0161】
第1印刷領域RP1および第2印刷領域RP2は、重複領域OV1で互いに重複する。すなわち、第1印刷領域RP1および第2印刷領域RP2のそれぞれは、重複領域OV1を共有する。また、第2印刷領域RP2および第3印刷領域RP3は、重複領域OV2で互いに重複する。すなわち、第2印刷領域RP2および第3印刷領域RP3のそれぞれは、重複領域OV2を共有する。
【0162】
ここで、第1印刷領域RP1は、重複領域OV1のほか、重複領域OV1とは異なる領域である非重複領域NR1を有する。非重複領域NR1は、第1印刷領域RP1内の領域であって、第2印刷領域RP2および第3印刷領域RP3のいずれとも重複しない。第2印刷領域RP2は、重複領域OV1、OV2のほか、重複領域OV1、OV2とは異なる領域である非重複領域NR2を有する。非重複領域NR2は、第2印刷領域RP2内の領域であって、第1印刷領域RP1および第3印刷領域RP3のいずれとも重複しない。第3印刷領域RP3は、重複領域OV2のほか、重複領域OV2とは異なる領域である非重複領域NR3を有する。非重複領域NR3は、第3印刷領域RP3内の領域であって、第1印刷領域RP1および第2印刷領域RP2のいずれとも重複しない。
【0163】
本実施形態では、主走査方向DMにおいて互いに異なる2つの位置を第1主走査位置PMaおよび第2主走査位置PMbとしたとき、第2主走査位置PMbにおける重複領域OV1の幅Wvbは、第1主走査位置PMaにおける重複領域OV1の幅Wvaよりも狭い。同様に、第2主走査位置PMbにおける重複領域OV2の幅Wvbは、第1主走査位置PMaにおける重複領域OV2の幅Wvaよりも狭い。なお、主走査方向DMは、第1印刷動作または第2印刷動作の実行時にヘッド3aとワークWとの相対位置を変化させる方向である。
【0164】
ここで、第1主走査位置PMaは、重複領域OV1または重複領域OV2の主走査方向DMでの中央よりも端に近い位置である。第2主走査位置PMbは、重複領域OV1または重複領域OV2の主走査方向DMでの端よりも中央に近い位置である。
【0165】
本実施形態では、面WFが真球面であるため、ワークWの表面において第1主走査位置PMaに対応する部分における曲率は、ワークWの表面において第2主走査位置PMbに対応する部分における曲率に等しい。
【0166】
本実施形態では、面WFが真球面であるため、印刷動作の実行中では、有効ノズル情報Dfの示すノズル群を構成する複数のノズルNのうちの少なくとも1つのノズルNから印刷領域RPへのインクの吐出距離PGが変化しない。同様に、印刷動作の実行中では、有効ノズル情報Dfの示すノズル群を構成する複数のノズルNのうちの少なくとも1つのノズルNから印刷領域RPへのインクの着弾角度θが変化しない。これに対し、後述する変形例1のように、位置に応じて曲率が一定でないワークWの表面に印刷する場合、つまり、ワークWが楕円体等である場合、印刷動作の実行中において、複数のノズルNのうちの少なくとも1つのノズルNから印刷領域RPへのインクの吐出距離PGが変化し、同様に、複数のノズルNのうちの少なくとも1つのノズルNから印刷領域RPへのインクの着弾角度θが変化する。なお、こうした変化は、意図しない振動等によって生じるものとは異なり、主走査方向に沿ったヘッド3aとワークWとの相対移動に伴って生じるものである。例えば、任意に選択されるノズルNに着目した場合、相対移動の途中の第1のタイミングと、第1のタイミングとは異なる相対移動の途中の第2のタイミングとの間において、吐出距離PGおよび着弾角度θのそれぞれが異なる。
【0167】
ここで、吐出距離PGが所定距離以上となったり、着弾角度θが所定範囲内から外れたりしたノズルNから吐出されるインクは、ワークW上での着弾誤差が大きい。
【0168】
そこで、制御部8は、印刷動作の実行時の吐出距離PGおよび着弾角度θのうちの一方または両方に基づいて、第1印刷動作による記録画素と第2印刷動作による記録画素との記録比率を設定する。前述のように「記録比率」とは、2つの印刷動作のうちの一方の印刷動作による記録画素と他方の印刷動作による記録画素との比率であって、主走査方向DMで互いに異なる複数の位置の位置ごとに設定される。当該複数の位置は、前述の第1主走査位置PMaおよび第2主走査位置PMbを含む。当該設定は、第1印刷動作および第2印刷動作のうちの一方または両方の実行時の吐出距離PGおよび着弾角度θのうちの一方または両方に基づいて行えばよい。
【0169】
以下、記録比率の設定方法の具体例である第1例および第2例を説明する。
(記録比率の設定方法の第1例)
図17は、記録比率の設定方法の第1例を示すフローチャートである。この第1例は、重複領域OV1について、第1印刷動作で記録するか、第2印刷動作で記録するか、を
基本的にはランダムに選択するが、印刷動作ごとの吐出距離PGに応じて選択される確率に重み付けを行う。
【0170】
具体的に説明すると、図17に示すように、まず、ステップS100において、制御部8は、印刷領域RPの対象画素が重複領域OVの画素であるか否かを判断する。すなわち、ステップS100において、制御部8は、当該対象画素を記録可能な印刷動作の数が1つであるか否かを判断する。
【0171】
対象画素が重複領域OVの画素である場合(ステップS100:YES)、すなわち、当該対象画素を記録可能な印刷動作の数が1つでない場合、制御部8は、ステップS101において、第1印刷動作での吐出距離PGである吐出距離PG1を取得した後、ステップS102において、第2印刷動作での吐出距離PGである吐出距離PG2を取得する。なお、ステップS101およびステップS102の順序は、逆でもよいし、同時でもよい。
【0172】
ステップS102の後、制御部8は、ステップS103において、吐出距離PG1と吐出距離PG2との大小を比較する。
【0173】
吐出距離PG1が吐出距離PG2よりも小さい場合、制御部8は、ステップS104において、第1テーブルを適用する。吐出距離PG1が吐出距離PG2に等しい場合、制御部8は、ステップS105において、第3テーブルを適用する。吐出距離PG1が吐出距離PG2よりも大きい場合、制御部8は、ステップS106において、第2テーブルを適用する。
【0174】
当該第1テーブル、当該第2テーブルおよび当該第3テーブルのそれぞれは、第1印刷動作および第2印刷動作のうちの一方を所定の確率で選択するための情報である。図17では、テーブルが2行2列の4個の要素で模式的に表されており、各テーブル中、「1」が対象画素に対応するドットを第1印刷動作において吐出したインク滴で形成を選択する要素を示し、「2」が対象画素に対応するドットを第2印刷動作において吐出したインク滴で形成を選択する要素を示す。これらのテーブルのうち適用したテーブルの4個の要素からランダムに1個の要素を選択することにより、第1印刷動作および第2印刷動作のうちの一方が当該対象画素の記録に用いる印刷動作として選択される。
【0175】
ここで、第1テーブルは、第1印刷動作を選択する確率が第2印刷動作を選択する確率よりも高い。図17に示す例では、当該第1テーブル中、「1」の数が3個であるのに対し、「2」の数が1個であり、第1印刷動作を選択する確率が75%である。第2テーブルは、第2印刷動作を選択する確率が第1印刷動作を選択する確率よりも高い。図17に示す例では、当該第2テーブル中、「1」の数が3個であるのに対し、「2」の数が1個であり、第2印刷動作を選択する確率が75%である。第3テーブルは、第1印刷動作を選択する確率が第2印刷動作を選択する確率に等しい。図17に示す例では、当該第3テーブル中、「1」の数と「2」の数とのそれぞれが2個であり、第1印刷動作または第2印刷動作を選択する確率が50%である。
【0176】
以上のステップS104、ステップS105またはステップS106の後、制御部8は、ステップS107において、前述のように適用した第1テーブル、第2テーブルおよび当該第3テーブルのうちの1つのテーブルを用いて、第1印刷動作および第2印刷動作のうちの一方を選択することにより、印刷動作を決定する。このように、ステップS103において、吐出距離PG1と吐出距離PG2との大小を比較した結果に応じて、適用するテーブルを異ならせることによって、第1印刷動作で記録するか、第2印刷動作で記録するか、が選択される確率に重み付けを行うことが可能である。
【0177】
ステップS107の後、制御部8は、ステップS108において、対象画素が最後の画素であるか否かを判断する。対象画素が最後の画素でない場合(ステップS108:NO)、制御部8は、ステップS109において、対象画素を次の画素賭した後、前述のステップS100に戻る。一方、対象画素が最後の画素である場合(ステップS108:YES)、制御部8は、処理を終了する。
【0178】
これに対し、対象画素が重複領域OVの画素でない場合(ステップS100:NO)、すなわち、当該対象画素を記録可能な印刷動作の数が1つである場合、制御部8は、ステップS110において、その1つの印刷動作を対象画素を記録する印刷動作として決定した後、前述のステップS108に移行する。
【0179】
以上の第1例により、すべての画素について、できるだけ吐出距離PGが短くなる印刷動作が優先されるように重み付けされた確率で、第1印刷動作および第2印刷動作のいずれかが印刷動作として設定される。なお、図17では、吐出距離PGの大小に応じて印刷動作を決定する態様が例示されるが、着弾角度θの90°とのずれに応じてテーブルを適用し、第1印刷動作で記録するか、第2印刷動作で記録するか、が選択される確率に重み付けを行うことが可能である。この場合においても、同様に、すべての画素について第1印刷動作および第2印刷動作のいずれかを印刷動作として設定することができる。
【0180】
(記録比率の設定方法の第2例)
図18は、記録比率の設定方法の第2例を示すフローチャートである。この第2例は、重複領域OV1について、第1印刷動作で記録するか、第2印刷動作で記録するか、を印刷動作ごとの吐出距離PGに応じて選択される入力値と、後述のマスクMSKの閾値と、を比較することによって選択する。
【0181】
具体的に説明すると、図18に示す第2例は、ステップS104~S107に代えてステップS111~S117を行うこと以外は、前述の図17に示す第1例と同様である。
【0182】
図18に示すように、第2例では、ステップS103の後、吐出距離PG1が吐出距離PG2よりも極度に小さい場合、制御部8は、ステップS111において、入力値を「0」に設定する。ステップS103の後、吐出距離PG1が吐出距離PG2よりも極度ではないが小さい場合、制御部8は、ステップS112において、入力値を「1」に設定する。ステップS103の後、吐出距離PG1が吐出距離PG2に等しい場合、制御部8は、ステップS113において、入力値を「2」に設定する。ステップS103の後、吐出距離PG1が吐出距離PG2よりも極度ではないが大きい場合、制御部8は、ステップS114において、入力値を「3」に設定する。ステップS103の後、吐出距離PG1が吐出距離PG2よりも極度に大きい場合、制御部8は、ステップS115において、入力値を「4」に設定する。
【0183】
以上のステップS111、ステップS112、ステップS113、ステップS114またはステップS115の後、制御部8は、ステップS116において、後述のマスクMSKにおける対象画素の閾値が入力値以下であるか否かを判断する。
【0184】
当該閾値が入力値超えである場合(ステップS116:NO)、制御部8は、ステップS117において、対象画素を記録する印刷動作として第1印刷動作を決定する。一方、当該閾値が入力値以下である場合(ステップS116:YES)、制御部8は、ステップS118において、対象画素を記録する印刷動作として第2印刷動作を決定する。
【0185】
以上のステップS117またはステップS118の後、制御部8は、ステップS108に移行する。
【0186】
以上の第2例により、すべての画素について、できるだけ吐出距離PGが短くなる印刷動作が優先されるように、吐出距離PGに応じた入力値と、後述のマスクMSKの閾値と、を比較することで第1印刷動作および第2印刷動作のいずれかが印刷動作として設定される。なお、図18では、吐出距離PGの大小に応じて印刷動作を決定する態様が例示されるが、着弾角度θの大小に応じて入力値を設定しても、同様に、すべての画素について第1印刷動作および第2印刷動作のいずれかを印刷動作として設定することができる。
【0187】
図19は、印刷データImgとマスクMSKとの関係を示す模式図である。マスクMSKは、印刷データImgに対応する複数の画素PXを有する。マスクMSKには、画素PXごとに前述のステップS116の閾値が設定される。図19中、「1」~「4」は当該閾値を示す。マスクMSKは、ブルーノイズ特性を有する閾値マトリクスであることが好ましい。概して述べれば、マスク上において、同じ閾値が互いに隣接しないように分散して配置されることが好ましい。なお、図19に示す閾値、画素PXの数等は、説明の便宜上簡易的に示されており、これに限定されない。また、グリーンノイズ特性など、ブルーノイズ特性以外の特性を有するマスクMSKを採用してもよい。
【0188】
図20は、図19に示すマスクMSKを用いた記録比率の設定を説明するための図である。図20では、第1印刷動作を記録に用いる画素が網掛け表示され、第2印刷動作を記録に用いる画素が白抜き表示される。
【0189】
例えば、図20中の左側上段に示すように、各画素の入力値が「0」である場合、すべての画素の記録に第2印刷動作が用いられる。図20中の左側中段に示すように、各画素の入力値が「1」である場合、閾値「1」の画素の記録に第1印刷動作が用いられるのに対し、閾値「2」、「3」および「4」の画素の記録に第2印刷動作が用いられる。図20中の左側下段に示すように、各画素の入力値が「2」である場合、閾値「1」および「2」の画素の記録に第1印刷動作が用いられるのに対し、閾値「3」および「4」の画素の記録に第2印刷動作が用いられる。図20中の右側上段に示すように、各画素の入力値が「3」である場合、閾値「1」、「2」および「3」の画素の記録に第1印刷動作が用いられるのに対し、閾値「4」の画素の記録に第2印刷動作が用いられる。図20中の右側中段に示すように、各画素の入力値が「4」である場合、すべての画素の記録に第1印刷動作が用いられる。ここで、前述のように、入力値は、ステップS103において、吐出距離PG1と吐出距離PG2との大小を比較して決定され、吐出距離PG1が吐出距離PG2よりも小さいほど入力値が小さくなり、逆に、吐出距離PG1が吐出距離PG2よりも大きいほど、入力値が大きくなる。このため、図20からも理解されるように、吐出距離PG1が吐出距離PG2よりも小さいほど対象画素を第1印刷動作で記録する確率が高くなる。逆に、吐出距離PG1が吐出距離PG2よりも大きいほど対象画素を第2印刷動作で記録する確率が高くなる。
【0190】
図21は、重複領域OV1での記録比率を説明するための図である。以下、図21に基づいて、重複領域OV1について説明するが、以下に述べる事項は、重複領域OV2についても同様である。なお、図21では、印刷領域RPに対応する全ての画素にインク滴を付与する印刷画像である、いわゆる「ベタ画像」を印刷する場合のドットDt1、Dt2の配置の一例が示される。また、図21では、説明の便宜上、ドットDt1、Dt2が互いに異なる表示態様で示される。
【0191】
重複領域OV1では、副走査方向DSでの一端から他端に向けて、第1印刷動作によるドットDt1の単位面積あたりの存在率と第2印刷動作によるドットDt2の単位面積あたりの存在率とのうち、一方の存在率が増加するに従い、他方の存在率が低下する。
【0192】
図22は、重複領域OV1、OV2で各パスの記録比率が変化する場合の副走査方向DSでの位置と各パスの記録比率との関係の一例を示す図である。図22では、第1印刷動作による記録比率が破線で示され、第2印刷動作による記録比率が実線で示され、第3印刷動作による記録比率が一点鎖線で示される。また、図22では、第2印刷動作においてヘッド3aの副走査方向DSでの位置が正規の位置からずれた場合の第2印刷動作による記録比率が二点鎖線で示される。
【0193】
図22に示すように、第1印刷領域RP1の副走査方向DSでの両端の位置は、位置PS_1a、PS_1bである。第2印刷領域RP2の副走査方向DSでの両端の位置は、位置PS_2a、PS_2bである。第3印刷領域RP3の副走査方向DSでの両端の位置は、位置PS_3a、PS_3bである。
【0194】
これらの位置は、位置PS_1a、位置PS_2a、位置PS_1b、位置PS_3a、位置PS_2b、位置PS_3bの順で副走査方向DSに並ぶ。
【0195】
ここで、重複領域OV1の副走査方向DSでの両端の位置は、位置PS_2a、PS_1bである。重複領域OV2の副走査方向DSでの両端の位置は、位置PS_3a、PS_2bである。
【0196】
前述のように、ノズル列LNの両端に近いノズルNほど、吐出距離PGが大きく、かつ、着弾角度θが90°からのずれが大きい。したがって、第1印刷動作で重複領域OV1の印刷に用いる複数のノズルNのうち、位置PS_1bに近いノズルNほど、吐出距離PGが大きく、かつ、着弾角度θが90°からのずれが大きい。また、第2印刷動作で重複領域OV1の印刷に用いる複数のノズルNのうち、位置PS_2aに近いノズルNほど、吐出距離PGが大きく、かつ、着弾角度θが90°からのずれが大きい。
【0197】
そこで、重複領域OV1へのインクの着弾誤差による画質低下を低減する観点から、重複領域OV1では、位置PS_2aから位置PS_1bに向けて、第1印刷動作による記録比率が漸次的に低下するとともに、第2印刷動作による記録比率が漸次的に増加する。言い換えると、重複領域OV1では、位置PS_1bから位置PS_2aに向けて、第1印刷動作による記録比率が漸次的に増加するとともに、第2印刷動作による記録比率が漸次的に低下する。
【0198】
図22に示す例では、重複領域OV1では、位置PS_2aから位置PS_1bに向けて、第1印刷動作による記録比率が100%から0%に連続的に減少するとともに、第2印刷動作による記録比率が0%から100%に連続的に増加する。ここで、副走査方向DSでの同一位置において、第1印刷動作による記録比率と第2印刷動作による記録比率の合計は、100%である。なお、重複領域OV1では、位置PS_2aから位置PS_1bに向けて、第1印刷動作による記録比率が段階的に減少するとともに、第2印刷動作による記録比率が段階的に増加してもよい。
【0199】
同様に、重複領域OV2へのインクの着弾誤差による画質低下を低減する観点から、重複領域OV2では、位置PS_3aから位置PS_2bに向けて、第2印刷動作による記録比率が漸次的に減少するとともに、第3印刷動作による記録比率が漸次的に増加する。言い換えると、重複領域OV2では、位置PS_2bから位置PS_3aに向けて、第2印刷動作による記録比率が漸次的に増加するとともに、第3印刷動作による記録比率が漸次的に減少する。
【0200】
図22に示す例では、重複領域OV2では、位置PS_3aから位置PS_2bに向けて、第2印刷動作による記録比率が100%から0%に連続的に減少するとともに、第3印刷動作による記録比率が0%から100%に連続的に増加する。ここで、副走査方向DSでの同一位置において、第2印刷動作による記録比率と第3印刷動作による記録比率の合計は、100%である。なお、重複領域OV2では、位置PS_3aから位置PS_2bに向けて、第2印刷動作による記録比率が段階的に減少するとともに、第3印刷動作による記録比率が段階的に増加してもよい。
【0201】
以上から理解される通り、重複領域OV1を位置PS_2aに近いほうの第1重複領域V1と位置PS_1bに近いほうの第2重複領域V2とに区分したとき、第1重複領域V1は、重複領域OV1において第1印刷動作の実行時の吐出距離PGが第2印刷動作の実行時の吐出距離PGよりも小さい領域であるか、または、重複領域OV1において第1印刷動作の実行時の着弾角度θが第2印刷動作の実行時の着弾角度θよりも90°に近い領域である。このような第1重複領域V1において、第1印刷動作による記録画素の比率が第2印刷動作による記録画素の比率よりも高い。
【0202】
また、第2重複領域V2は、重複領域OV1において第2印刷動作の実行時の吐出距離PGが第1印刷動作の実行時の吐出距離PGよりも小さい領域であるか、または、重複領域OV1において第2印刷動作の実行時の着弾角度θが第1印刷動作の実行時の着弾角度θよりも90°に近い領域である。このような第2重複領域V2において、第2印刷動作による記録画素の比率が第1印刷動作による記録画素の比率よりも高い。以上のような記録画素の比率つまり記録比率は、前述の記録比率の設定方法の具体例である第1例および第2例を適用することによって比較的容易かつ適切に実現可能である。一方でそれら以外の設定方法を適用することによっても当然ながら実現可能であるため、本発明は、第1例および第2例の具体例に限定されるものではない。
【0203】
図23は、重複領域OV1、OV2で各パスの記録比率が変化する場合の副走査方向での位置と全パスの記録比率との関係を示す図である。図23では、第1印刷動作による記録比率と第2印刷動作による記録比率と第3印刷動作による記録比率との合計が実線で示される。また、図22中の二点鎖線で示すように第2印刷動作においてヘッド3aの副走査方向DSでの位置が正規の位置からずれた場合の当該合計が二点鎖線で示される。
【0204】
図23に示すように、第2印刷動作においてヘッド3aの副走査方向DSでの位置が正規の位置からずれた場合であっても、第1印刷動作による記録比率と第2印刷動作による記録比率と第3印刷動作による記録比率との合計の変動を抑制することができる。
【0205】
図24は、本実施形態とは異なり、重複領域OV1、OV2で各パスの記録比率が一定である比較例の副走査方向DSでの位置と各パスの記録比率との関係を示す図である。なお、図24は、重複領域OV1、OV2での記録比率が一定であること以外は、図22と同様である。
【0206】
図25は、本実施形態とは異なり、重複領域OV1、OV2で各パスの記録比率が一定である比較例の副走査方向DSでの位置と全パスの記録比率との関係を示す図である。図25では、第1印刷動作による記録比率と第2印刷動作による記録比率と第3印刷動作による記録比率との合計が実線で示される。また、図24中の二点鎖線で示すように第2印刷動作においてヘッド3aの副走査方向DSでの位置が正規の位置からずれた場合の当該合計が二点鎖線で示される。
【0207】
図25に示すように、第2印刷動作においてヘッド3aの副走査方向DSでの位置が正規の位置からずれた場合、本実施形態における前述の図23に示す場合と比べて、比較例においては、第1印刷動作による記録比率と第2印刷動作による記録比率と第3印刷動作による記録比率との合計の変動が大きい。
【0208】
図26は、主走査方向DMでの各位置の記録比率を説明するための図である。図26に示すように、第1印刷動作による記録画素と第2印刷動作による記録画素との比率は、主走査方向DMでの位置ごとに設定される。
【0209】
ここで、第1印刷動作および第2印刷動作のそれぞれの実行時において、第2主走査位置PMbでの記録画素の比率の単位幅あたりの変化量は、第1主走査位置PMaでの記録画素の比率の単位幅あたりの変化量よりも大きい。
【0210】
また、図26中の二点鎖線で示すように、第1印刷動作および第2印刷動作のそれぞれの実行時の記録画素の比率は、第1主走査位置PMaおよび第2主走査位置PMbのうちの一方の位置から他方の位置へ印刷位置が移動するのに伴って、漸次的に変化する。
【0211】
以上のように、立体物印刷装置1は、ヘッド3aとロボット2とを有し、印刷動作として第1印刷動作と第2印刷動作とを順に実行する。ヘッド3aには、複数のノズルNが設けられる。ロボット2は、立体的なワークWに対してヘッド3aを相対的に移動させる。当該印刷動作は、ロボット2を動作させつつ、ヘッド3aからワークWの印刷領域RPに向けて、「液体」の一例であるインクを吐出させる。
【0212】
ここで、第1印刷領域RP1、第2印刷領域RP2、重複領域OV1および第1重複領域V1を定義したとき、第1重複領域V1において、第1印刷動作による記録画素の比率が第2印刷動作による記録画素の比率よりも高い。なお、第1印刷領域RP1は、第1印刷動作の実行時にワークW上のインクの付与される領域である。第2印刷領域RP2は、第2印刷動作の実行時にワークW上のインクの付与される領域である。重複領域OV1は、第1印刷領域RP1と第2印刷領域RP2との重複する領域である。第1重複領域V1は、重複領域OV1において第1印刷動作の実行時の複数のノズルNから重複領域OV1へのインクの吐出距離PGが第2印刷動作の実行時の複数のノズルNから重複領域OV1へのインクの吐出距離PGよりも小さい領域である。
【0213】
以上の立体物印刷装置1では、第1重複領域V1において第1印刷動作による記録画素の比率が第2印刷動作による記録画素の比率よりも高いので、第1重複領域V1において着弾誤差の大きい記録画素の比率を相対的に少なくすることができる。この結果、第1重複領域V1において第1印刷動作および第2印刷動作のそれぞれによる記録画素の比率が一定である態様に比べて、画質の低下を低減することができる。
【0214】
また、前述のように、ロボット2は、第1印刷動作および第2印刷動作のそれぞれの実行時において、第2ノズルに相当するノズルNから印刷領域RPへのインクの吐出距離PGを、第1ノズルに相当するノズルNから印刷領域RPへのインクの吐出距離PGよりも短くするように動作する。ここで、複数のノズルNがノズル列NLを構成しており、第1ノズルに相当するノズルNは、複数のノズルNのうちノズル列NLの中央よりも端部に近いノズルNであり、第2ノズルに相当するノズルNは、複数のノズルNのうち当該第1ノズルよりもノズル列NLの中央に近いノズルNである。このようにロボット2を動作させる場合、第1重複領域V1において第1印刷動作による記録画素の比率を第2印刷動作による記録画素の比率よりも高めることによる効果が顕著となる。
【0215】
さらに、前述のように、第2重複領域V2を定義したとき、第2重複領域V2において、第2印刷動作による記録画素の比率が第1印刷動作による記録画素の比率よりも高い。ここで、第2重複領域V2は、重複領域OV1において第2印刷動作の実行時の複数のノズルNから重複領域OV1へのインクの吐出距離PGが第1印刷動作の実行時の複数のノズルNから重複領域OV1へのインクの吐出距離PGよりも小さい領域である。このように、第2重複領域V2において第2印刷動作による記録画素の比率が第1印刷動作による記録画素の比率よりも高いので、第2重複領域V2において着弾誤差の大きい記録画素の比率を相対的に少なくすることができる。この結果、第2重複領域V2において第1印刷動作および第2印刷動作のそれぞれによる記録画素の比率が一定である態様に比べて、画質の低下を低減することができる。
【0216】
また、前述のように、複数のノズルNのうちの少なくとも1つのノズルNから印刷領域RPへのインクの吐出距離PGは、印刷動作の実行中に変化する。このような場合、重複領域OV1において第1印刷動作による記録画素の比率を第2印刷動作による記録画素の比率よりも高めることによる効果が顕著となる。
【0217】
さらに、前述のように、第1重複領域V1は、重複領域OV1において第1印刷動作の実行時の複数のノズルNから重複領域OV1へのインクの着弾角度θが第2印刷動作の実行時の複数のノズルNから重複領域OV1へのインクの着弾角度θよりも90°に近い領域として捉えてもよい。この場合であっても、第1重複領域V1において、第1印刷動作による記録画素の比率が第2印刷動作による記録画素の比率よりも高いことにより、第1重複領域V1において着弾誤差の大きい記録画素の比率を相対的に少なくすることができる。
【0218】
また、前述のように、第2重複領域V2は、重複領域OV1において第2印刷動作の実行時の複数のノズルNから重複領域OV1へのインクの着弾角度が第1印刷動作の実行時の複数のノズルNから重複領域OV1へのインクの着弾角度よりも90°に近い領域として捉えてもよい。この場合であっても、第2重複領域V2において第2印刷動作による記録画素の比率が第1印刷動作による記録画素の比率よりも高いことにより、第2重複領域V2において着弾誤差の大きい記録画素の比率を相対的に少なくすることができる。
【0219】
さらに、前述のように、複数のノズルNのうちの少なくとも1つのノズルNから印刷領域RPへのインクの着弾角度θは、印刷動作の実行中に変化する。このような場合、重複領域OV1において第1印刷動作による記録画素の比率を第2印刷動作による記録画素の比率よりも高めることによる効果が顕著となる。
【0220】
また、前述のように、第1主走査位置PMaおよび第2主走査位置PMbを定義したとき、第2主走査位置PMbにおける重複領域OV1の幅Wvbは、第1主走査位置PMaにおける重複領域OV1の幅Wvaよりも狭い。ここで、第1主走査位置PMaおよび第2主走査位置PMbは、主走査方向DMにおいて互いに異なる2つの位置である。主走査方向DMは、第1印刷動作または第2印刷動作の実行時にヘッド3aとワークWとの相対位置を変化させる方向である。このように、第2主走査位置PMbにおける重複領域OV1の幅Wvbを第1主走査位置PMaにおける重複領域OV1の幅Wvaよりも狭くすることにより、印刷画像において白スジまたはムラの発生を低減しつつ、効率的に印刷を行うことができる。
【0221】
さらに、前述のように、第1印刷動作および第2印刷動作のそれぞれの実行時において、ワークWの表面において第2主走査位置PMbに対応する部分における記録画素の比率の単位幅あたりの変化量は、ワークWの表面において第1主走査位置PMaに対応する部分における記録画素の比率の単位幅あたりの変化量よりも大きい。このため、印刷領域RPの幅に応じて適切な記録比率を設定することができる。
【0222】
また、前述のように、第1印刷動作および第2印刷動作のそれぞれの実行時の記録画素の比率は、第1主走査位置PMaおよび第2主走査位置PMbのうちの一方の位置から他方の位置へ印刷位置が移動するのに伴って、漸次的に変化する。このため、印刷領域RPの幅に応じて適切な記録比率を設定することができる。
【0223】
さらに、前述のように、立体物印刷装置1は、制御部8をさらに有する。制御部8は、ヘッド3aおよびロボット2のそれぞれの動作を制御する。制御部8は、第1印刷動作および第2印刷動作のうちの一方または両方の実行時の第1主走査位置PMaにおける印刷領域RPへのインクの吐出距離PGに基づいて、第1主走査位置PMaにおける第1印刷動作による記録画素と第2印刷動作による記録画素との比率を設定する。このため、第1重複領域V1において第1印刷動作による記録画素の比率を第2印刷動作による記録画素の比率よりも高めることができる。
【0224】
また、前述のように、制御部8は、第1印刷動作および第2印刷動作のうちの一方または両方の実行時の第2主走査位置PMbにおける印刷領域RPへのインクの吐出距離PGに基づいて、第2主走査位置PMbにおける第1印刷動作による記録画素と第2印刷動作による記録画素との比率を設定する。このため、第1重複領域V1において第1印刷動作による記録画素の比率を第2印刷動作による記録画素の比率よりも高めることができる。
【0225】
さらに、前述のように、制御部8は、第1印刷動作および第2印刷動作のうちの一方または両方の実行時の第1主走査位置PMaにおける印刷領域RPへのインクの着弾角度θに基づいて、第1主走査位置PMaにおける第1印刷動作による記録画素と第2印刷動作による記録画素との比率を設定する。このため、第1重複領域V1において第1印刷動作による記録画素の比率を第2印刷動作による記録画素の比率よりも高めることができる。
【0226】
2.第2実施形態
以下、本開示の第2実施形態について説明する。以下に例示する形態において作用および機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0227】
図27および図28は、第2実施形態における印刷経路RU_1~RU_3を説明するための図である。図27では、仮想空間VSにおいて、z2方向にみたワークWおよび印刷経路RU_1~RU_3が示される。図28では、仮想空間VSにおいて、x2方向にみたワークWおよび印刷経路RU_1~RU_3が示される。
【0228】
本実施形態は、印刷経路RU_1~RU_3の形状が異なること以外は、前述の第1実施形態と同様である。本実施形態では、複数の印刷経路RUの互いの間隔が主走査方向DMの全域にわたり一定である。このため、少ない印刷経路RUで広範囲の印刷領域に印刷を行うことができる。このような印刷経路RUを作成する場合、第3ステップS13において、互いに平行な複数の主走査仮想平面VPMが用いられる。
【0229】
図29は、第2実施形態における印刷領域RPを説明するための図である。本実施形態では、第2主走査位置PMbにおける重複領域OV1の幅Wvbは、第1主走査位置PMaにおける重複領域OV1の幅Wvaよりも広い。同様に、第2主走査位置PMbにおける重複領域OV2の幅Wvbは、第1主走査位置PMaにおける重複領域OV2の幅Wvaよりも広い。
【0230】
以上の第2実施形態によっても、印刷の生産性を高めつつ適切な印刷動作を設定することができる。本実施形態では、前述のように、第3ステップS13において、第1主走査仮想平面VPM_1および第2主走査仮想平面VPM_2は、互いに平行である。このため、印刷経路RU_1を用いた印刷動作による印刷領域と印刷経路RU_2を用いた印刷動作による印刷領域とを少ない面積で重複させることができる。この結果、少ない印刷経路で広範囲の印刷領域に印刷を行うことができる。
【0231】
3.変形例
以上の例示における各形態は多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。なお、以下の例示から任意に選択される2以上の態様は、互いに矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0232】
3-1.変形例1
前述の形態では、印刷領域RPが真球面に沿う形状である態様が例示されるが、この態様に限定されない。
【0233】
例えば、ワークWがラグビーボールのような楕円体である場合、ワークWの表面において第1主走査位置PMaに対応する部分における曲率は、ワークWの表面において第2主走査位置PMbに対応する部分における曲率よりも大きくてもよい。この場合、第2主走査位置PMbにおける重複領域OV1の幅Wvbを第1主走査位置PMaにおける重複領域OV1の幅Wvaよりも狭くすることにより、印刷画像において白スジの発生を低減することができる。
【0234】
また、この場合、ワークWの表面において第1主走査位置PMaに対応する部分における曲率は、ワークWの表面において第2主走査位置PMbに対応する部分における曲率よりも小さくてもよい。この場合、第2主走査位置PMbにおける重複領域OV1の幅Wvbを第1主走査位置PMaにおける重複領域OV1の幅Wvaよりも狭くすることにより、印刷画像においてムラの発生を低減することができる。
【0235】
3-2.変形例2
前述の形態では、複数の候補経路LMのうちの一部の候補経路LMを印刷経路RUとして選択する態様が例示されるが、この態様に限定されない。例えば、複数の候補経路LMのすべてが印刷経路RUとして設定されてもよい。すなわち、候補経路作成ステップS10では、候補経路LMが印刷経路RUとして作成される。この場合、吐出条件取得ステップS20および印刷経路選択ステップS40が省略されてもよい。
【0236】
3-3.変形例3
前述の形態では、候補経路作成ステップS10が第1ステップS11、第2ステップS12および第3ステップS13を含む態様が例示されるが、候補経路作成ステップS10での複数の候補経路LMの作成方法は、当該態様に限定されない。例えば、第1ステップS11および第2ステップS12が省略されてもよい。この場合、例えば、候補経路作成ステップS10は、第3ステップS13において、主走査仮想平面VPMを適宜に設定することにより、候補経路LMを設定すればよい。
【0237】
3-4.変形例4
前述の形態では、ロボットとして6軸の垂直多軸ロボットを用いる構成が例示されるが、当該構成に限定されない。ロボットは、例えば、6軸以外の垂直多軸ロボットでもよいし、水平多軸ロボットでもよい。また、ロボットの腕部は、回動機構で構成される関節に加えて、伸縮機構または直動機構等を有してもよい。ただし、印刷動作での印刷品質と非印刷動作でのロボットの動作の自由度とのバランスの観点から、ロボットは、6軸以上の多軸ロボットであることが好ましい。
【0238】
3-5.変形例5
前述の形態では、ロボットに対するヘッドの固定方法としてネジ止め等を用いる構成が例示されるが、当該構成に限定されない。例えば、ロボットのエンドエフェクターとして装着されるハンド等の把持機構によりヘッドを把持することにより、ロボットに対してヘッドを固定してもよい。
【0239】
3-6.変形例6
また、前述の形態では、ヘッドを移動させる構成のロボットが例示されるが、当該構成に限定されず、例えば、液体吐出ヘッドの位置が固定されており、ロボットがワークを移動させ、ヘッドに対してワークの位置および姿勢を3次元的に変化させる構成でもよい。この場合、例えば、ロボットアームの先端に装着されるハンド等の把持機構によりワークが把持される。
【0240】
3-7.変形例7
前述の形態では、1種類のインクを用いて印刷を行う構成が例示されるが、当該構成に限定されず、2種以上のインクを用いて印刷を行う構成にも本開示を適用することができる。
【0241】
3-8.変形例8
本開示の立体物印刷装置の用途は画像の印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する立体物印刷装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する立体物印刷装置は、配線基板の配線や電極を形成する製造装置として利用される。また、立体物印刷装置は、接着剤等の液体を媒体に塗布するジェットディスペンサーとしても利用できる。
【符号の説明】
【0242】
1…立体物印刷装置、2…ロボット、2a…アーム駆動機構、3…ヘッドユニット、3a…ヘッド、3a…ヘッド、3a_1…ヘッド、3a_2…ヘッド、3a_3…ヘッド、3b…圧力調整弁、3c…エネルギー出射部、3e…スイッチ回路、3f…支持体、5…コントローラー、5a…記憶回路、5b…処理回路、6…制御モジュール、6a…タイミング信号生成回路、6b…電源回路、6c…制御回路、6d…駆動信号生成回路、7…コンピューター、7a…記憶回路、7b…処理回路、8…制御部、10…配管部、210…基部、220…腕部、221…アーム、222…アーム、223…アーム、224…アーム、225…アーム、226…アーム、230…関節、230_1…関節、230_2…関節、230_3…関節、230_4…関節、230_5…関節、230_6…関節、BX…ボクセル、CLK…クロック信号、CNG…チェンジ信号、Com…駆動信号、D1…出力、D3…信号、DE…吐出方向、DM…主走査方向、DM_1…主走査方向、DM_2…主走査方向、DM_3…主走査方向、DN…ノズル列方向、DS…副走査方向、Da…印刷経路情報、Db…候補経路情報、Dc…ワーク情報、Dd…印刷領域情報、De…吐出条件情報、De1…吐出距離情報、De2…角度情報、Df…吐出幅情報、Dg…ヘッド情報、Dm…距離、Dr…間隔、Dt1…ドット、Dt2…ドット、Dt3…ドット、FN…ノズル面、Img…印刷データ、LAT…ラッチ信号、LE…辺、LM…候補経路、LMS…経路組、LM_1…候補経路、LM_2…候補経路、LM_3…候補経路、LM_a…候補経路、LM_b…候補経路、LM_c…候補経路、LM_d…候補経路、LM_e…候補経路、LS…副走査基準線、N…ノズル、NL…ノズル列、NL1…第1ノズル列、NL2…第2ノズル列、O1…回動軸、O2…回動軸、O3…回動軸、O4…回動軸、O5…回動軸、O6…回動軸、OV1…重複領域、OV2…重複領域、PD…駆動パルス、PG…吐出距離、PM…基準点、PM_1…基準点、PM_2…基準点、PM_3…基準点、PMa…第1主走査位置、PMb…第2主走査位置、POL…ポリゴン、POL_1…交差ポリゴン、POL_2…ポリゴン、PR…プログラム、PS_1a…位置、PS_1b…位置、PS_2a…位置、PS_2b…位置、PS_3a…位置、PS_3b…位置、PTS…タイミング信号、PV…頂点、Pa…交点、Pb…補間点、RP…印刷領域、RP1…第1印刷領域、RP2…第2印刷領域、RP3…第3印刷領域、RU…印刷経路RU_1…印刷経路RU_2…印刷経路RU_3…印刷経路、S10…候補経路作成ステップ、S11…第1ステップ、S12…第2ステップ、S13…第3ステップ、S20…吐出条件取得ステップ、S30…吐出幅情報取得ステップ、S40…印刷経路選択ステップ、S50…印刷データ生成ステップ、SI…制御信号、SV…仮想空間、Sk1…制御信号、TCP…ツールセンターポイント、V1…第1重複領域、V2…第2重複領域、VBS…オフセット電位、VHV…電源電位、VPM…主走査仮想平面、VPM_1…第1主走査仮想平面、VPM_2…第2主走査仮想平面、VPM_3…第3主走査仮想平面、VPS…副走査仮想平面、VS…仮想空間、Vp…法線ベクトル、W…ワーク、WF…面、Wn…吐出幅、Wva…幅、Wvb…幅、dCom…波形指定信号、θ…着弾角度。
図1
図2
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図4
図5
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