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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115352
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20240819BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240819BHJP
   G01C 19/5684 20120101ALI20240819BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20240819BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20240819BHJP
   B81C 3/00 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
H01L21/02 C
H01L21/78 Q
G01C19/5684
B81C1/00
B81B3/00
B81C3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020997
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000183369
【氏名又は名称】住友精密工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】荒木 隆太
(72)【発明者】
【氏名】上木 壮大
【テーマコード(参考)】
2F105
3C081
5F063
【Fターム(参考)】
2F105BB07
2F105BB15
2F105CC04
2F105CD01
2F105CD07
3C081AA17
3C081BA03
3C081BA22
3C081BA32
3C081BA41
3C081BA48
3C081BA75
3C081CA02
3C081CA05
3C081CA13
3C081CA23
3C081CA32
3C081CA33
3C081CA42
3C081CA44
3C081DA03
3C081DA06
3C081EA02
5F063AA15
5F063AA36
5F063BA15
5F063BA32
5F063CA01
5F063CA04
5F063DG03
5F063EE02
5F063EE42
5F063EE43
5F063EE44
(57)【要約】
【課題】基板に樹脂テープを貼り付けたままでデバイス部の検査を行う場合にも、デバイス部の検査結果が、樹脂テープの不可逆的な物性変化に起因する影響を受けるのを回避することが可能な半導体デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】この半導体デバイスの製造方法は、基板Wに第1樹脂テープ50を貼り合わせる工程S1と、第1樹脂テープ50が貼り合わされた基板Wに対して、第1樹脂テープ50の不可逆的な物性変化を伴う処理を実施する工程S2と、不可逆的な物性変化を伴う処理を実施する工程の後、第1樹脂テープ50を基板Wから除去して、第2樹脂テープ60を基板Wに貼り合わせる工程S3と、不可逆的な物性変化を伴う処理が施されていない第2樹脂テープ60が貼り合わされた基板において、基板上に設けられた複数のデバイス部13の検査を行う工程S5と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にデバイス部を形成した半導体デバイスを製造する半導体デバイスの製造方法であって、
前記基板に第1樹脂テープを貼り合わせる工程と、
前記第1樹脂テープが貼り合わされた前記基板に対して、前記第1樹脂テープの不可逆的な物性変化を伴う処理を実施する工程と、
前記不可逆的な物性変化を伴う処理を実施する工程の後、前記第1樹脂テープを前記基板から除去して、第2樹脂テープを前記基板に貼り合わせる工程と、
前記不可逆的な物性変化を伴う処理が施されていない前記第2樹脂テープが貼り合わされた前記基板において、前記基板上に設けられた複数の前記デバイス部の検査を行う工程と、を備える、半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第1樹脂テープの前記不可逆的な物性変化を伴う処理は、前記第1樹脂テープを変形させる温度変化を伴う処理、前記第1樹脂テープを変質させる光の照射を伴う処理、前記第1樹脂テープを変形させる物質への曝露を伴う処理、のいずれかを含む、請求項1に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項3】
前記不可逆的な物性変化を伴う処理を実施する工程は、前記基板上に接着材を介して部品を設置する工程と、前記不可逆的な物性変化を伴う処理により前記接着材を硬化させる工程と、を含む、請求項2に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項4】
前記第1樹脂テープの前記不可逆的な物性変化を伴う処理は、前記接着材を硬化させる熱処理または前記接着材を硬化させる光照射処理の少なくとも一方を含み、
前記第1樹脂テープの前記不可逆的な物性変化は、前記第1樹脂テープの収縮を引き起こす物性変化である、請求項3に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項5】
前記デバイス部の検査を行う工程の前または後に、前記第2樹脂テープが貼り合わされた前記基板をダイシングする工程と、
前記デバイス部の検査を行う工程の後、ダイシングされた複数の個片基板をそれぞれ前記第2樹脂テープから剥離して前記半導体デバイスを組み立てる工程と、をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項6】
前記デバイス部の検査を行う工程の前に、前記基板をダイシングする工程を実施し、
前記デバイス部の検査を行う工程において、前記第2樹脂テープが貼り合わされた状態の前記複数の個片基板の前記デバイス部に対して、それぞれ検査を行う、請求項5に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記デバイス部の検査を行う工程における検査結果に応じて、前記デバイス部を補正加工する工程をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記デバイス部は、可動構造を有するMEMSデバイスを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項9】
前記第2樹脂テープを前記基板に貼り合わせる工程において、前記第1樹脂テープと同一品種の樹脂テープであって、未使用の前記第2樹脂テープを前記基板に貼付する、請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体デバイスの製造方法に関し、特に、製造工程においてデバイス部の検査を行う半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスの製造工程においてデバイス部の検査を行うことが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、リング型振動ジャイロを構成する半導体振動子の製造工程において、磁場中で振動子(デバイス部)に電流を印加して強制振動を起こし、誘導起電力をモニターすることで振動子の共振周波数と振動モードの位置とを測定すること(振動特性の検査)が開示されている。そして、特許文献1では、測定結果と基準値とのずれがある場合に、レーザー照射により振動子の一部を除去することにより、振動子の質量および剛性を変化させて、振動数および振動モードの位置を調整することが開示されている。上記特許文献1では、この作業は、シリコン基板から形成した振動子のみの状態、チップの状態又はパッケージングされた状態のいずれでも実施できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-83498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、半導体デバイスの製造工程では、ダイシングテープなどの各種の樹脂テープに基板を貼り付けて、樹脂テープが貼り付けられた状態の基板に対して、製造工程のいくつかの処理を実行することがある。樹脂テープの使用には、基板を損傷や汚染から保護することができ、基板のハンドリングが容易になるという利点がある。
【0006】
ところが、本願発明者らは、基板に対する処理が、基板への本来意図した作用を生じるだけでなく、基板に貼り付けられた樹脂テープの不可逆的な物性変化を付随的に引き起こしてしまう場合があることを発見した。樹脂テープの不可逆的な物性変化とは、基板に対する処理の終了後にも樹脂テープに生じた物性変化が残留し続けることを意味する。基板に貼り付けられた樹脂テープの不可逆的な物性変化の結果として、たとえば樹脂テープが不可逆的に収縮または膨張することがある。
【0007】
そして、本願発明者らは、樹脂テープが貼り付けられた状態の基板に対して、デバイス部の検査が実施される場合、その検査結果が、樹脂テープの不可逆的な物性変化に起因する影響を受けることを発見した。たとえば樹脂テープが収縮した状態で、上記特許文献1のようなデバイス部(振動子)の振動特性の測定が行われる場合、測定結果には、樹脂テープの収縮に起因して基板に生じる応力の影響が含まれる。その結果、検査後に基板を樹脂テープから剥離すると、樹脂テープに起因する応力が基板から除去されることによって、振動子の振動特性が検査時の測定結果から変化してしまう可能性が生じる。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、基板に樹脂テープを貼り付けたままでデバイス部の検査を行う場合にも、デバイス部の検査結果が、樹脂テープの不可逆的な物性変化に起因する影響を受けるのを回避することが可能な半導体デバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の半導体デバイスの製造方法は、基板上にデバイス部を形成した半導体デバイスを製造する半導体デバイスの製造方法であって、基板に第1樹脂テープを貼り合わせる工程と、第1樹脂テープが貼り合わされた基板に対して、第1樹脂テープの不可逆的な物性変化を伴う処理を実施する工程と、不可逆的な物性変化を伴う処理を実施する工程の後、第1樹脂テープを基板から除去して、第2樹脂テープを基板に貼り合わせる工程と、不可逆的な物性変化を伴う処理が施されていない第2樹脂テープが貼り合わされた基板において、基板上に設けられた複数のデバイス部の検査を行う工程と、を備える。
【0010】
この発明の半導体デバイスの製造方法では、上記のように、不可逆的な物性変化を伴う処理を実施する工程の後、第1樹脂テープを基板から除去して、第2樹脂テープを基板に貼り合わせる工程と、不可逆的な物性変化を伴う処理が施されていない第2樹脂テープが貼り合わされた基板において、基板上に設けられた複数のデバイス部の検査を行う工程と、を設ける。これにより、基板に対して、第1樹脂テープの不可逆的な物性変化を伴う処理が実施された後、デバイス部の検査を行う工程の前に、物性変化した第1樹脂テープが、不可逆的な物性変化が発生していない第2樹脂テープに交換される。そのため、デバイス部の検査を行う工程では、基板に対する樹脂テープの不可逆的な物性変化に起因する影響を排除することができる。これらにより、樹脂テープの使用による利点(基板の損傷や汚染からの保護および基板のハンドリングの容易化)を享受しつつ、基板に樹脂テープを貼り付けたままでデバイス部の検査を行う場合にも、デバイス部の検査結果が、樹脂テープの不可逆的な物性変化に起因する影響を受けるのを回避することができる。
【0011】
上記発明による半導体デバイスの製造方法において、好ましくは、第1樹脂テープの不可逆的な物性変化を伴う処理は、第1樹脂テープを変形させる温度変化を伴う処理、第1樹脂テープを変質させる光の照射を伴う処理、第1樹脂テープを変形させる物質への曝露を伴う処理、のいずれかを含む。このように構成すれば、第1樹脂テープの変形(変質)に起因して基板に発生する応力の影響を、第1樹脂テープから第2樹脂テープへの貼り替えによって取り除くことができる。
【0012】
この場合、好ましくは、第1樹脂テープの不可逆的な物性変化を伴う処理を実施する工程は、基板上に接着材を介して部品を設置する工程と、上記不可逆的な物性変化を伴う処理により接着材を硬化させる工程と、を含む。このように構成すれば、基板への部品の設置および接着を、基板に第1樹脂テープが貼り合わされた状態で実施することによって、基板を損傷や汚染から効果的に保護することができる。そして、この過程で第1樹脂テープの不可逆的な物性変化が生じる場合でも、第1樹脂テープから第2樹脂テープへの貼り替えによって、デバイス部の検査を行う工程への不可逆的な物性変化の影響を排除できる。
【0013】
上記第1樹脂テープの不可逆的な物性変化を伴う処理を実施する工程が不可逆的な物性変化を伴う処理により接着材を硬化させる工程を含む構成において、好ましくは、第1樹脂テープの不可逆的な物性変化を伴う処理は、接着材を硬化させる熱処理または接着材を硬化させる光照射処理の少なくとも一方を含み、第1樹脂テープの不可逆的な物性変化は、第1樹脂テープの収縮を引き起こす物性変化である。このように構成すれば、接着材を硬化させる熱処理または光照射処理が、第1樹脂テープを不可逆的に収縮させる場合にも、第1樹脂テープの収縮に起因して基板に発生する応力の影響を、第1樹脂テープから第2樹脂テープへの貼り替えによって取り除くことができる。特にデバイス部が振動子などの可動構造を備える場合、基板における応力発生は、デバイス部の機械的特性に直接的に影響を与えることから、第1樹脂テープの収縮に起因する影響を排除することで、適正な検査結果を得ることができる。
【0014】
上記発明による半導体デバイスの製造方法において、好ましくは、デバイス部の検査を行う工程の前または後に、第2樹脂テープが貼り合わされた基板をダイシングする工程と、デバイス部の検査を行う工程の後、ダイシングされた複数の個片基板をそれぞれ第2樹脂テープから剥離して半導体デバイスを組み立てる工程と、をさらに備える。つまり、第2樹脂テープは、ダイシングの際に基板に貼付されるダイシングテープである。このように構成すれば、基板に第1樹脂テープが貼られた状態で樹脂テープの不可逆的な物性変化を伴う処理を完了させておき、その後、第1樹脂テープから第2樹脂テープに貼り替えた状態で、ダイシング、検査および組み立てまでの工程を行うことができる。そのため、たとえば第1樹脂テープから第2樹脂テープに貼り替えた後、さらに第2樹脂テープから別のダイシングテープに貼り替えるような場合と比較して、貼り替え工程数を低減できる。
【0015】
この場合、好ましくは、デバイス部の検査を行う工程の前に、基板をダイシングする工程を実施し、デバイス部の検査を行う工程において、第2樹脂テープが貼り合わされた状態の複数の個片基板のデバイス部に対して、それぞれ検査を行う。このように構成すれば、第2樹脂テープ上で個片化された状態で、デバイス部の検査を行うことができる。つまり、基板が分割されていない状態よりも、半導体デバイスの最終形態に近い状態(個片基板の状態)で、デバイス部を検査できる。そのため、デバイス部の検査を行う工程における検査結果と、最終製品におけるデバイス部の特性との乖離を、より一層小さくすることができる。
【0016】
上記発明による半導体デバイスの製造方法において、好ましくは、デバイス部の検査を行う工程における検査結果に応じて、デバイス部を補正加工する工程をさらに備える。このように構成すれば、樹脂テープの不可逆的な物性変化に起因するバイアスを含まない検査結果に応じて、デバイス部の補正加工を行うことができる。その結果、基板を第2樹脂テープから剥離してもデバイス部の意図しない特性変動が生じることのない、高精度な補正加工ができる。
【0017】
上記発明による半導体デバイスの製造方法において、好ましくは、デバイス部は、可動構造を有するMEMSデバイスを含む。このように、デバイス部が、可動構造を有するMEMSデバイスを含む場合、樹脂テープの不可逆的な物性変化の影響が、可動構造の機械的特性に直接的に作用しうる。そのため、第1樹脂テープから第2樹脂テープへの貼り替えによって、検査結果における第1樹脂テープの不可逆的な物性変化の影響を排除できる本発明が、このようなデバイス部を備えた半導体デバイスの製造に特に効果的である。
【0018】
上記発明による半導体デバイスの製造方法において、好ましくは、第2樹脂テープを基板に貼り合わせる工程において、第1樹脂テープと同一品種の樹脂テープであって、未使用の第2樹脂テープを基板に貼付する。このように構成すれば、基板に第1樹脂テープを貼り合わせる工程と基板に第2樹脂テープを貼り合わせる工程とで、同じ樹脂テープロールからそれぞれの樹脂テープを供給することができる。そのため、半導体デバイスの製造工程において使用する樹脂テープの品種が増大しないとともに、製造工程が複雑化することを抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記のように、基板に樹脂テープを貼り付けたままでデバイス部の検査を行う場合にも、デバイス部の検査結果が、樹脂テープの不可逆的な物性変化に起因する影響を受けるのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】半導体デバイスを示す模式的な縦断面図である。
図2】半導体デバイスの構造を示す模式的な分解斜視図である。
図3】半導体デバイスのデバイス部を説明するための斜視説明図である。
図4】デバイス部の動作を説明するための模式的な部分断面図である。
図5】リング部の振動モードを説明するための図である。
図6】本実施形態の半導体デバイスの製造方法を示したフロー図である。
図7】第1樹脂テープを貼り合わせた状態の基板を示す工程断面図である。
図8】基板への部品の設置工程を説明するための工程断面図である。
図9】基板上に接着材を介して部品が配置された状態を示す工程断面図である。
図10】接着材を硬化させる工程を説明するための工程断面図である。
図11】第1樹脂テープへの紫外線照射を説明するための工程断面図である。
図12】基板から第1樹脂テープを剥離した状態を説明するための工程断面図である。
図13】第2樹脂テープを貼り合わせた状態の基板を示す工程断面図である。
図14】基板をダイシングする工程を説明するための工程断面図である。
図15】デバイス部の補正加工を説明するための工程断面図である。
図16】残りの部品の組み立ての工程を説明するための工程断面図である。
図17】第1樹脂テープを貼り合わせた状態の基板を示す平面模式図である。
図18】第2樹脂テープを貼り合わせた状態の基板を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
本実施形態の半導体デバイス100の製造方法は、基板上にデバイス部を形成した半導体デバイス100を製造する半導体デバイス100の製造方法である。製造される半導体デバイス100の構成は、特に限られないが、以下では、具体的な半導体デバイス100の一例とともに、その半導体デバイス100の製造方法を説明する。
【0023】
(半導体デバイスの構成)
図1に示すように、半導体デバイス100は、フォトリソグラフィおよびエッチングなどの半導体製造技術によって形成されたデバイス部13を含む。本実施形態では、デバイス部13は、可動構造を有するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスを含む。具体例として、本実施形態の半導体デバイス100は、MEMSジャイロ素子であり、半導体デバイス100が備えるデバイス部13は、ジャイロ素子の振動子である。
【0024】
半導体デバイス100は、素子本体1を、パッケージ2内に収容したものである。素子本体1は、下部基板11、支持基板12、デバイス部13、および磁界印加部14を主として含む。パッケージ2は、ベース部材21とカバー22とを含む。
【0025】
下部基板11は、素子本体1の全体が設置される平板状のガラス基板である。下部基板11の上面上に、支持基板12および磁界印加部14が設けられている。
【0026】
支持基板12は、デバイス部13の振動部(リング部31)を下部基板11から離した状態で支持する平板状のガラス基板である。支持基板12には、デバイス部13のリング部31およびレッグ部32(図3参照)の直下となる領域に貫通孔12aが形成されている。
【0027】
デバイス部13は、シリコン基板(シリコン製の平板部材)からなる。図3に示すように、デバイス部13には、リング部31、レッグ部32およびフレーム33が一体的に形成されている。リング部31は、特許請求の範囲の「可動構造」の一例である。フレーム33は、デバイス部13の外周部を構成する枠状部分である。デバイス部13は、フレーム33の下面部分において支持基板12(図1参照)と接触し、支持基板12と接合されている。リング部31は、フレーム33の内周側に配置されており、円環状形状を有する。レッグ部32は、フレーム33の内周縁とリング部31の外周縁とを接続する梁状部分である。リング部31は、レッグ部32を介してフレーム33に支持されている。特に限定されないが、図3の例では、2本一対のレッグ部32が、リング部31の周方向に等角度間隔で8組、合計16本設けられている。
【0028】
デバイス部13の上面上には、フレーム33からレッグ部32を通ってリング部31の周方向に沿うように、導体の配線部34が形成されている。配線部34は、8組のレッグ部32に対してそれぞれ1つずつ設けられている。各配線部34は、一方のレッグ部32からそれぞれリング部31上を周方向に延び、他方のレッグ部32上を通ってフレーム33に戻るように設けられている。8組のレッグ部32に対応した8個の配線部34が、リング部31の略全周に亘って設けられている。リング部31の内周側部分と、隣り合うレッグ部32の隙間の部分とは、デバイス部13を厚み方向に貫通する貫通孔となっている。
【0029】
図1に示すように、磁界印加部14は、円柱状のマグネット41と、マグネット41の上下にそれぞれ設けられた上部ポール42および下部ポール43とが設けられている。マグネット41は、リング部31の内周側を上下(厚み方向)に通過するようにリング部31の中心位置に配置されており、上下両端面が磁極面となっている永久磁石である。
【0030】
上部ポール42および下部ポール43は、それぞれ、マグネット41の上面および下面に接続されたヨークであり、いずれもパーマロイからなる。上部ポール42は、円形のキャップ形状(図2参照)を有する。つまり、上部ポール42は、マグネット41の上面からリング部31の直上まで半径方向外側に延びた後、リング部31と対向するように下向きに延びている。下部ポール43は、円板形状(図2参照)を有し、マグネット41の下面からリング部31の直下まで半径方向外側に延びている。そのため、リング部31は、上部ポール42の下面と、下部ポール43の上面とに、それぞれ全周にわたって上下に対向している。リング部31を介して上下に対向し合う上部ポール42の下面と下部ポール43の上面とが、それぞれ磁界印加部14における一方磁極(たとえばN極)と他方磁極(たとえばS極)とを構成している。
【0031】
パッケージ2のベース部材21は、平板形状を有し、素子本体1が上面上に配置される支持板である。ベース部材21には、素子本体1の配線部34(図3参照)とそれぞれ接続された複数の端子部21aが設けられている。図示しないが、配線部34と端子部21aとは、ワイヤーボンディングなどの接続処理によって電気的に接続されている。カバー22は、上面および周側面を有するとともに、下面側が開放された構造を有する。カバー22は、ベース部材21上に設けられ、ベース部材21とともに素子本体1を密閉状態で収容する収容空間を形成する。パッケージ2内は、真空(減圧)状態で封止されている。
【0032】
図4に示すように、上部ポール42および下部ポール43の一方から他方(図4では、上部ポール42から下部ポール43)に向けて磁界が発生し、リング部31を磁束が通過する。リング部31上の配線部34に電流を供給すると、リング部31に対して半径方向にローレンツ力Fが作用する。たとえば図5に示すように、リング部31の半径方向のうち互いに直交する2方向を横軸、縦軸とし、縦軸の一方側を0度とする。配線部34には、所定の周波数の交流電流が供給されることにより、上記のローレンツ力Fによってリング部31が縦長の楕円形状と横長の楕円形状とを交互に繰り返すように変形する一次振動モード(0度から90度毎に振幅の腹が生じるモード)の振動が、リング部31の面内(半径方向)に生じる。
【0033】
この状態で、リング部31に角速度ωが加わると、一次振動モードに対してコリオリ力が働き、新たに45度傾いた二次振動モード(45度から90度毎に振動の腹が生じるモード)の振動が、リング部31の面内(半径方向)に生じる。二次振動モードの振動に伴って配線部34が磁界を横切ることにより、誘導起電力が発生する。発生した誘導起電力が配線部34から検出されることにより、角速度ωに応じた信号が検出される。ジャイロ素子(半導体デバイス100)は、このようにして角速度ωを検出することが可能に構成されている。
【0034】
(半導体デバイスの製造方法)
次に、半導体デバイス100の製造方法を説明する。
【0035】
図6を参照して、本実施形態では、半導体デバイス100の製造方法は、少なくとも以下の工程を備える。
基板Wに第1樹脂テープ50を貼り合わせる工程(S1)、
第1樹脂テープ50が貼り合わされた基板Wに対して、第1樹脂テープ50の不可逆的な物性変化を伴う処理を実施する工程(S2)、
不可逆的な物性変化を伴う処理を実施する工程の後、第1樹脂テープ50を基板Wから除去して、第2樹脂テープ60を基板Wに貼り合わせる工程(S3)、
不可逆的な物性変化を伴う処理が施されていない第2樹脂テープ60が貼り合わされた基板Wにおいて、基板W上に設けられた複数のデバイス部13の検査を行う工程(S5)。
【0036】
また、本実施形態では、半導体デバイス100の製造方法は、
デバイス部13の検査を行う工程の前または後に、第2樹脂テープ60が貼り合わされた基板Wをダイシングする工程(S4)と、
デバイス部13の検査を行う工程における検査結果に応じて、デバイス部13を補正加工する工程(S6)と、
デバイス部13の検査を行う工程の後、ダイシングされた複数の個片基板WPをそれぞれ第2樹脂テープ60から剥離して半導体デバイス100を組み立てる工程(S7)と、をさらに備える。
【0037】
以下、各工程について説明する。図6のフローチャートでは、半導体デバイス100の製造工程のうち、個々の部品を形成する工程は、予め図示しないプロセスによって実施済みであるものとする。図6のフローチャートは、半導体デバイス100の各部品が準備された後、それぞれの部品をパッケージ部品として組み立てる段階を示している。
【0038】
本実施形態では、1枚の円板形状の基板W(ウェハ)に対して、素子本体1を構成する各部品を複数組配置した後、ダイシングによって素子本体1毎に基板Wを個片化することにより、1枚の基板Wから複数の半導体デバイス100を製造する。基板Wが個片化された後の個々のピースを、個片基板WPと呼ぶ。以下では、基板Wは、基板に部品が組み付けられた場合、それらの部品を含めた全体を指す。個片基板WPについても、基板上に組み付けられた部品を含めた全体を指す。個片基板WPは、図6のフローチャートの最終段階では、素子本体1とほぼ同義となる。
【0039】
〈基板に第1樹脂テープを貼り合わせる工程〉
図6の工程S1において、基板Wに第1樹脂テープ50を貼り合わされる。具合的には、図7に示すように、第1樹脂テープ50に、基板Wが載置されることによって、基板Wの下面に第1樹脂テープ50が貼り合わされる。工程S1における基板Wは、図1に示したように下部基板11として個片化される前の、円板状のガラスウェハの状態の下部基板11Wである。そのため、基板W(下部基板11W)は、複数の素子本体1を包含する直径を有する。基板Wの下面は、支持基板12および磁界印加部14が設置される面(上面とする)とは反対側の面である。
【0040】
第1樹脂テープ50は、基板Wの直径よりも大きく形成された粘着フィルムからなる。図7に示す例では、第1樹脂テープ50の図中の上面側が粘着面であり、第1樹脂テープ50の外周部が保持治具TFに貼り付けられ、第1樹脂テープ50の中央部が基板Wと貼り合わされる。つまり、図17に示すように、環状の保持治具TFに第1樹脂テープ50の外周縁が固定された状態で、保持治具TFの内側となる第1樹脂テープ50の中央部に、基板Wが貼り付けられる。図17では、便宜上、第1樹脂テープ50にハッチングを付して図示している。
【0041】
第1樹脂テープ50は、基板W(下部基板11W)を固定可能な接着力を有し、製造工程における基板Wを保護できる程度の機械的強度を備え、かつ、基板Wから剥離する際には基板Wを損傷することなく容易に剥離できる、といった性質を有することが望ましい。第1樹脂テープ50は、たとえば、フィルム状の基材と、基材の表面に形成された粘着剤層と、から主として構成されている。基材は、樹脂材料から構成されており、その樹脂材料は、たとえば、PET(ポリエチレンテレフタラート)などのポリエステル、または、PE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)などのポリオレフィンである。粘着剤層は、たとえば、光硬化性の粘着剤からなる。この場合、第1樹脂テープ50は、透光性を有する。光硬化性の粘着剤は、たとえば紫外線照射によって硬化することにより粘着力が低下する。そのため、第1樹脂テープ50は、紫外線照射前は高い粘着力により基板Wを固定する一方で、紫外線照射後には粘着剤層の硬化により基板Wから容易に剥離できる。
【0042】
〈基板に対して、第1樹脂テープの不可逆的な物性変化を伴う処理を実施する工程〉
図6の工程S2において、第1樹脂テープ50が貼り合わされた基板Wに対して、第1樹脂テープ50の不可逆的な物性変化を伴う処理が実施される。本実施形態では、不可逆的な物性変化を伴う処理を実施する工程S2は、基板W(下部基板11W)上に接着材AD(図9参照)を介して部品CPを設置する工程S2Aと、接着材ADを硬化させる工程S2Bと、を含む。
【0043】
まず、工程S2Aにおいて、下部基板11Wにおける素子本体1の各形成位置に、各部品CP(図8参照)が配置される。図8に示すように、配置される部品CPは、支持基板12Wおよびデバイス部13Wの接合体と、磁界印加部14の下部ポール43と、である。工程S2Aの段階では、支持基板12Wは、図2に示したように個片化される前の、複数の貫通孔12a(図2参照)が形成された状態のガラスウェハであり、デバイス部13Wは、図2に示したように個片化される前の、複数のリング部31を含んだ状態のシリコンウェハである。支持基板12Wとデバイス部13Wとは、陽極接合により一体化(接合)されている。
【0044】
図9に示すように、各部品CPは、基板W上の、素子本体1が形成される各形成位置と対応させて、それぞれ配置される。各部品CPは、接着材ADを介して、基板W上に載置される。接着材ADは、熱硬化性材料を含む。
【0045】
次に、工程S2B(図6参照)において、基板W(下部基板11W)と各部品CPとの間の接着材ADを硬化させる処理が行われる。この接着材ADを硬化させる処理が、本実施形態における第1樹脂テープ50の不可逆的な物性変化を伴う処理である。すなわち、第1樹脂テープ50の不可逆的な物性変化を伴う処理は、接着材ADを硬化させる熱処理を含む。
【0046】
具体的には、図10に示すように、第1樹脂テープ50が貼り合わされ、かつ、各部品CPが配置された状態の基板Wが、オーブン90内で加熱される。加熱条件は、接着材ADの仕様に応じて適宜設定されるが、一例として、100℃で、約30分である。熱処理によって、接着材ADが硬化し、各部品CPが基板W(下部基板11W)の上面に接合される。なお、説明の便宜上、図1図11図16では、硬化した接着材ADの図示を省略している。
【0047】
ここで、本願発明者らは、熱処理によって接着材ADが硬化される過程で、基板Wに貼り付けられている第1樹脂テープ50の不可逆的な物性変化が発生することを見出した。具体的には、第1樹脂テープ50の不可逆的な物性変化は、第1樹脂テープ50の収縮SRを引き起こす物性変化である。言い換えると、第1樹脂テープ50の不可逆的な物性変化を伴う処理は、第1樹脂テープ50を変形させる温度変化を伴う処理である。第1樹脂テープ50には、熱履歴として、収縮変形(SR)が残る。
【0048】
このように、第1樹脂テープ50は、熱処理の過程で生じた不可逆的な物性変化に起因して収縮し、処理後に温度を戻した後も、収縮状態が維持される。さらに、第1樹脂テープ50の収縮は、第1樹脂テープ50の面内で等方的ではなく、特にテープのロール方向(延伸方向、マシン方向ともいう)において強く生じる。図17の矢印MDがロール方向であると仮定する。第1樹脂テープ50のMD方向の収縮量が、MD方向と交差するTD方向の収縮量よりも大きくなる。第1樹脂テープ50の収縮に起因して、基板Wには、MD方向に向けて相対的に大きい圧縮応力が発生する。基板Wに応力が生じると、基板W上の各デバイス部13のリング部31の振動特性が、応力によって変化してしまう。特にジャイロ素子では、図5に示したように振動のバランスが素子性能に大きく影響する。基板W上の各デバイス部13は、それぞれ基板Wの面方向の異なる位置に配置されているため、配置位置毎に、各デバイス部13の中心(リング部31の中心)から見て異なる方向の応力を受けることになる。そのため、方向および強さの異なる応力の発生は、基板W上の個々のデバイス部13(リング部31)の振動特性に対して、不均一で、かつ無視できない影響を与えることがある。
【0049】
〈第1樹脂テープを基板から除去して、第2樹脂テープを基板に貼り合わせる工程〉
そこで、本実施形態では、図6に示すように、不可逆的な物性変化を伴う処理を実施する工程S2の後、第1樹脂テープ50を基板Wから除去して、第2樹脂テープ60を基板Wに貼り合わせる工程S3が実施される。
【0050】
まず、工程S3Aにおいて、基板W(下部基板11W)から第1樹脂テープ50が除去される。図11に示すように、第1樹脂テープ50が貼り合わされた基板W(下部基板11W)の下面側から、第1樹脂テープ50の貼り付け箇所に対して紫外光UVが照射される。これにより、第1樹脂テープ50の粘着剤層が硬化して粘着力が低下する。その後、図12に示すように、第1樹脂テープ50が基板W(下部基板11W)から剥離される。第1樹脂テープ50の剥離によって、第1樹脂テープ50の収縮に起因する応力は、基板Wから除去される。
【0051】
次に、工程S3Bにおいて、図13に示すように、基板W(下部基板11W)に第2樹脂テープ60が貼り合わされる。第2樹脂テープ60は、基板W(下部基板11W)において、第1樹脂テープ50が貼られていた面と同一の面に貼り合わされる。ここで、第2樹脂テープ60を基板Wに貼り合わせる工程S3Bでは、第1樹脂テープ50と同一品種の樹脂テープであって、未使用の第2樹脂テープ60を基板Wに貼付する。言い換えると、工程S2によって不可逆的に収縮した第1樹脂テープ50が、収縮していない新たな樹脂テープ(第2樹脂テープ60)に貼り替えられる。したがって、第2樹脂テープ60の詳細については、上記第1樹脂テープ50の説明を参照するものとする。
【0052】
第2樹脂テープ60の貼り合わせは、第1樹脂テープ50の貼り合わせ(工程S1)と同様にして行われる。つまり、図18に示すように、第2樹脂テープ60の上面(粘着面)の外周部が保持治具TFに貼り付けられ、中央部が基板Wの下面に貼り付けられる。これにより、各部品CPが接合済みの基板Wに、第2樹脂テープ60が貼り合わされる。新たに貼り合わされた第2樹脂テープ60には、熱履歴が存在しないため、不可逆的な収縮SRが発生していない。なお、図18では、便宜的に、第2樹脂テープ60にハッチングを付して示している。
【0053】
〈第2樹脂テープが貼り合わされた基板をダイシングする工程〉
次に、図6の工程S4において、第2樹脂テープ60が貼り合わされた基板Wがダイシングされる。すなわち、第2樹脂テープ60を介して保持治具TFによって保持された基板Wが、上面側から第2樹脂テープ60の上面側の一部までにかけて、ダイシングブレード(図示せず)によって切断される。基板Wは、図14に示すように、素子本体1を構成する領域毎の、複数の個片基板WPに分割される。この結果、基板Wを構成していたウェハ状の下部基板11W、支持基板12W、デバイス部13Wが、個片基板WP毎に、別々の下部基板11、支持基板12、デバイス部13としてそれぞれ分割される。
【0054】
複数の個片基板WPの各々は第2樹脂テープ60に貼り合わされているため、全体としてはダイシング前のウェハ形態のままで第2樹脂テープ60に並んで保持される。なお、ダイシングは、基板Wを機械的に切削する処理であるため、第2樹脂テープ60に対して不可逆的な物性変化(収縮SR)をもたらすものではない。
【0055】
〈基板上に設けられた複数のデバイス部の検査を行う工程〉
次に、図6の工程S5において、不可逆的な物性変化を伴う処理が施されていない第2樹脂テープ60が貼り合わされた基板Wにおいて、基板W上に設けられた複数のデバイス部13の検査が行われる。
【0056】
具体的には、個々の個片基板WPのリング部31に対して一様な磁界を印加する。そして、磁界印加状態で、リング部31の配線部34に対して交流電流を印加し、図5に示した強制振動をリング部31に生じさせる。そして、リング部31の振動に伴って生じる誘導起電力を配線部34から検出し、検出された信号に基づいてリング部31の振動特性を測定する。リング部31の振動特性は、リング部31の共振周波数および振動モードの位置を含む。振動モードの位置とは、図5に示した一次振動モードのピークの位置(角度)である。測定した振動特性が、予め設定された許容範囲に含まれるか否かが検査される。
【0057】
工程S5の検査は、第2樹脂テープ60が貼り合わされたままの各個片基板WPのデバイス部13に対して実行される。第2樹脂テープ60は収縮変形を生じていないため、第2樹脂テープ60に起因する応力が各個片基板WPに生じていない状態で、検査が行われる。
【0058】
〈検査結果に応じて、デバイス部を補正加工する工程〉
次に、図6の工程S6において、デバイス部13の検査を行う工程S5における検査結果に応じて、デバイス部13の補正加工が行われる。すなわち、測定した振動特性が、予め設定された許容範囲に含まれなかったデバイス部13について、リング部31の振動特性が許容範囲内に含まれるようにリング部31の形状を補正する加工が行われる。
【0059】
補正加工は、具体的にはレーザー照射による除去加工である。まず、デバイス部13の検査を行う工程S5で得られたリング部31の振動特性(共振周波数および振動モードの位置)に基づいて、振動特性を修正するためのリング部31の加工位置および加工量が算出される。つまり、測定された共振周波数と基準値とのずれ、および、測定された振動モードの位置と基準位置(図5の0度、90度、180度、270度)とのずれに基づいて、各ずれを修正するための加工位置と加工量(除去量)とが算出される。そして、算出した加工位置に対して、算出した加工量に応じたレーザー光LS(図15参照)が照射されることにより、リング部31の一部が除去される。リング部31の一部が除去される結果、リング部31の質量の変化および剛性の変化が生じて、リング部31の振動特性(共振周波数および振動モードの位置)が補正される。補正加工は、測定した振動特性が予め設定された許容範囲に含まれなかったデバイス部13のそれぞれに対して、別個に行われる。
【0060】
なお、工程S6では、補正加工と、加工結果を確認するための再検査(工程S5と同様の検査)とを、実施してもよい。この場合、補正加工後のリング部31の振動特性を再測定し、リング部31の振動特性が予め設定された許容範囲に含まれるか否かを再度確認する。そして、振動特性が許容範囲に含まれる場合には、そのデバイス部13についての補正加工の工程S6を終了し、振動特性が許容範囲に含まれない場合には、補正加工を追加で行ってもよい。なお、補正加工の後、加工結果を確認するための再検査を行うことなく、次の工程S7に進んでもよい。
【0061】
〈半導体デバイスを組み立てる工程〉
図6の工程S7では、ダイシングされた複数の個片基板WPがそれぞれ第2樹脂テープ60から剥離されて取り出され、パッケージ2に収納されることにより、半導体デバイス100が組み立てられる。
【0062】
まず、第2樹脂テープ60が貼り合わされた状態の各個片基板WPについて、半導体デバイス100を構成する残りの部品の組み立てが行われる。すなわち、図16に示すように、リング部31の内側を通って、下部ポール43上にマグネット41および上部ポール42が設置される。この際、たとえば、マグネット41は、接着剤を介して下部ポール43上に載置され、接着材を硬化させる処理(加熱処理)が行われることにより、マグネット41および上部ポール42が個片基板WPに固定される。この接着材を硬化させる処理によって、第2樹脂テープ60に不可逆的な物性変化(熱処理による収縮)が生じても、検査を行う工程S5の後であるので、第2樹脂テープ60の収縮は問題がない。
【0063】
その後、第2樹脂テープ60が貼り合わされた各個片基板WPの下面側から、第2樹脂テープ60の貼り付け箇所に対して紫外光UVが照射され、第2樹脂テープ60の粘着剤層が硬化して粘着力が低下する。そして、第2樹脂テープ60から、個片基板WPが1つずつ取り出されて、取り出された個片基板WPがそれぞれベース部材21(図1参照)上の搭載位置に配置される。そして、個片基板WPのデバイス部13の各配線部34(図3参照)が、ベース部材21の対応する各端子部21aと電気接続が施される。その後、ベース部材21にカバー22が取り付けられることにより、個片基板WPがパッケージ2内に封止される。
【0064】
以上により、半導体デバイス100が製造される。
【0065】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0066】
本実施形態では、上記のように、不可逆的な物性変化を伴う処理を実施する工程S2の後、第1樹脂テープ50を基板Wから除去して、第2樹脂テープ60を基板Wに貼り合わせる工程S3と、不可逆的な物性変化を伴う処理が施されていない第2樹脂テープ60が貼り合わされた基板Wにおいて、基板W上に設けられた複数のデバイス部13の検査を行う工程S5と、を設けたので、基板Wに対して、第1樹脂テープ50の不可逆的な物性変化を伴う処理(工程S2)が実施された後、デバイス部13の検査を行う工程S5の前に、物性変化した第1樹脂テープ50が、不可逆的な物性変化が発生していない第2樹脂テープ60に交換される。そのため、デバイス部13の検査を行う工程S5では、基板Wに対する樹脂テープの不可逆的な物性変化に起因する影響を排除することができる。これらにより、樹脂テープの使用による利点(基板Wの損傷や汚染からの保護および基板Wのハンドリングの容易化)を享受しつつ、半導体デバイス100の製造工程において基板Wに樹脂テープを貼り付けたままで処理を行う場合にも、デバイス部13の検査結果が、樹脂テープの不可逆的な物性変化に起因する影響を受けるのを回避することができる。
【0067】
また、本実施形態では、上記のように、第1樹脂テープ50の不可逆的な物性変化を伴う処理は、第1樹脂テープ50を変形(収縮SR)させる温度変化を伴う処理を含むので、第1樹脂テープ50の変形(収縮SR)に起因して基板Wに発生する応力の影響を、第1樹脂テープ50から第2樹脂テープ60への貼り替えによって取り除くことができる。
【0068】
また、本実施形態では、上記のように、第1樹脂テープ50の不可逆的な物性変化を伴う処理を実施する工程S2は、基板W上に接着材ADを介して部品CPを設置する工程S2Aと、接着材ADを硬化させる工程S2Bと、を含むので、基板Wへの部品CPの設置および接着を、基板Wに第1樹脂テープ50が貼り合わされた状態で実施することによって、基板Wを損傷や汚染から効果的に保護することができる。そして、この過程で第1樹脂テープ50の不可逆的な物性変化が生じる場合でも、第1樹脂テープ50から第2樹脂テープ60への貼り替えによって、デバイス部13の検査を行う工程S5への不可逆的な物性変化の影響を排除できる。
【0069】
また、本実施形態では、上記のように、第1樹脂テープ50の不可逆的な物性変化を伴う処理は、接着材ADを硬化させる熱処理を含み、第1樹脂テープ50の不可逆的な物性変化は、第1樹脂テープ50の収縮SRを引き起こす物性変化である。そのため、接着材ADを硬化させる熱処理が、第1樹脂テープ50を不可逆的に収縮させる場合にも、第1樹脂テープ50の収縮SRに起因して基板Wに発生する応力の影響を、第1樹脂テープ50から第2樹脂テープ60への貼り替え(工程S3)によって取り除くことができる。特にデバイス部13が振動子(リング部31)を備える本実施形態では、基板Wにおける応力発生は、デバイス部13の機械的特性(つまり、リング部31の振動特性)に直接的に影響を与えることから、第1樹脂テープ50の収縮SRに起因する影響を排除することで、適正な検査結果を得ることができる。
【0070】
また、本実施形態では、上記のように、デバイス部13の検査を行う工程S5の前に、第2樹脂テープ60が貼り合わされた基板Wをダイシングする工程S4と、デバイス部13の検査を行う工程S5の後、ダイシングされた複数の個片基板WPをそれぞれ第2樹脂テープ60から剥離して半導体デバイス100を組み立てる工程S6と、をさらに備えるので、基板Wに第1樹脂テープ50が貼られた状態で樹脂テープの不可逆的な物性変化を伴う処理(工程S2B)を完了させておき、その後、第1樹脂テープ50から第2樹脂テープ60に貼り替えた状態で、ダイシング、検査および組み立てまでの工程(S4、S5およびS7)を行うことができる。そのため、たとえば第1樹脂テープ50から第2樹脂テープ60に貼り替えた後、さらに第2樹脂テープ60から別のダイシングテープに貼り替えるような場合と比較して、貼り替え工程数を低減できる。
【0071】
また、本実施形態では、上記のように、デバイス部13の検査を行う工程S5の前に、基板Wをダイシングする工程S4を実施し、デバイス部13の検査を行う工程S5において、第2樹脂テープ60が貼り合わされた状態の複数の個片基板WPのデバイス部13に対して、それぞれ検査を行うので、第2樹脂テープ60上で個片化された状態で、デバイス部13の検査を行うことができる。つまり、基板Wが分割されていない状態よりも、半導体デバイス100の最終形態に近い状態(個片基板WPの状態)で、デバイス部13を検査できる。ここで、基板Wが分割されておらず一枚の板になっている状態と、個片基板WPに分割された状態とでは、デバイス部13の剛性が僅かに異なるため、リング部31の振動特性が僅かに変化する。そのため、個片基板WPの状態で検査を行うことにより、デバイス部13の検査を行う工程S5における検査結果と、最終製品におけるデバイス部13の特性との乖離を、より一層小さくすることができる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、デバイス部13の検査を行う工程S5における検査結果に応じて、デバイス部13を補正加工する工程S6を備えるので、樹脂テープの不可逆的な物性変化に起因するバイアスを含まない検査結果に応じて、デバイス部13の補正加工を行うことができる。そのため、個片基板WPを第2樹脂テープ60から剥離しても、デバイス部13の意図しない特性変動が生じることのない、高精度な補正加工ができる。
【0073】
また、本実施形態では、上記のように、デバイス部13は、可動構造(リング部31)を有するMEMSデバイスであるので、樹脂テープの不可逆的な物性変化の影響が、リング部31の機械的特性(振動特性)に直接的に作用しうる。そのため、第1樹脂テープ50から第2樹脂テープ60への貼り替えによって、デバイス部13の検査を行う工程での第1樹脂テープ50の不可逆的な物性変化の影響を排除できることが、本実施形態の半導体デバイス100では特に効果的である。
【0074】
また、本実施形態では、上記のように、第2樹脂テープ60を基板Wに貼り合わせる工程S3において、第1樹脂テープ50と同一品種の樹脂テープであって、未使用の第2樹脂テープ60を基板Wに貼付するので、基板Wに第1樹脂テープ50を貼り合わせる工程と基板Wに第2樹脂テープ60を貼り合わせる工程とで、同じ樹脂テープロールからそれぞれの樹脂テープを供給することができる。そのため、半導体デバイス100の製造工程において使用する樹脂テープの品種が増大しないとともに、製造工程が複雑化することを抑制できる。
【0075】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0076】
たとえば、上記実施形態では、半導体デバイス100が、MEMSジャイロ素子である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、半導体デバイスが、ジャイロ素子でなくてもよい。半導体デバイスは、たとえば、発信回路(クロック回路)に用いられる振動子、加速度センサ、圧力センサ、マイクロフォン、スピーカー、超音波振動子、RF(Radio Frepuency)フィルタ、などでもよい。超音波振動子は、たとえば圧電マイクロメカニカル超音波トランスデューサ(PMUT)または容量式マイクロメカニカル超音波トランスデューサ(CMUT)でありうる。これらのデバイスは、可動構造を備えたMEMSデバイスとして構成されうる。半導体デバイスは、上記の通り、樹脂テープの不可逆的な物性変化が可動構造の振動特性または他の動特性に与える影響を抑制できるので、上記の可動構造を備えたデバイスであって、かつ、基板の小さな応力の変化によっても影響を受けやすいMEMSデバイスの製造に好適である。ただし、本発明では、半導体デバイスは、可動構造を備えたMEMSデバイスでなくてもよい。たとえば樹脂テープの不可逆的な物性変化が、デバイス部の電気的特性に影響を与える場合に、半導体デバイスは、可動構造を有しない半導体素子であってもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、第1樹脂テープ50の不可逆的な物性変化を伴う処理が、第1樹脂テープ50を変形させる温度変化を伴う処理である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第1樹脂テープ50の不可逆的な物性変化を伴う処理は、第1樹脂テープ50を変質させる光の照射を伴う処理、または、第1樹脂テープ50を変形させる物質への曝露を伴う処理、のいずれかまたはこれらの組み合わせであってもよい。
【0078】
第1樹脂テープ50を変質させる光の照射を伴う処理は、たとえば、基板Wに部品CPを固定するための接着材ADを硬化させる光(たとえば紫外線)を接合部に照射する処理である。光の一部は、第1樹脂テープ50にも照射されるので、この光によって第1樹脂テープ50が変質を生じる。また、第1樹脂テープ50を変形させる物質への曝露を伴う処理は、たとえば、基板Wに部品CPを固定するための接着材ADを化学反応により硬化させる液剤を接合部に供給する処理である。液剤の一部は、第1樹脂テープ50にも付着すると、この液剤との化学反応によって第1樹脂テープ50が変形を生じる。これらの場合でも、変形(変質)が生じた第1樹脂テープ50から第2樹脂テープ60への貼り替えによって、第1樹脂テープ50の変形(変質)に起因して基板Wに発生する応力の影響を取り除くことができる。
【0079】
また、上記実施形態では、第1樹脂テープ50の不可逆的な物性変化を伴う処理が、接着材ADを硬化させる処理である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1樹脂テープ50の不可逆的な物性変化を伴う処理が、接着材ADを硬化させる処理以外の他の処理であってもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、接着材ADを硬化させる処理が熱処理である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、接着材ADを硬化させる処理が接着材ADを硬化させる光照射処理であってもよい。この場合、接着材ADは、光硬化性材料を含む。たとえば工程S2Aにおいて光(紫外線)照射処理によって接着材ADを硬化させて基板Wに部品CPを接合する場合に、第1樹脂テープ50の粘着剤が紫外線照射によって硬化する。第1樹脂テープ50の粘着剤の硬化によって、基板Wに応力が発生すると、デバイス部13の検査結果に影響する可能性があるため、第1樹脂テープ50から第2樹脂テープ60への貼り替えを行うことが有効である。なお、接着材ADを硬化させる処理は、熱処理および光照射処理の併用であってもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、第1樹脂テープ50の不可逆的な物性変化が、第1樹脂テープ50の収縮である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1樹脂テープ50に生じる不可逆的な物性変化は、その物性変化に起因してデバイス部13の検査結果が影響を受けるものであれば、どのような種類の物性変化であってもよい。第1樹脂テープ50の不可逆的な物性変化は、収縮以外の、第1樹脂テープ50の膨張、反り、その他の変形を生じるものであってもよい。第1樹脂テープ50の不可逆的な物性変化は、弾性係数、誘電率、電気伝導度、透磁率、線膨張率、屈折率、などの変化であってもよい。たとえばデバイス部の電気的特性の検査において、樹脂テープの誘電率や電気伝導度の変化が検査結果に影響する場合、この物性変化の影響を排除できる。
【0082】
また、上記実施形態では、第2樹脂テープ60が貼り合わされた基板Wをダイシングする工程S4を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。第2樹脂テープ60を別の樹脂テープ(ダイシングテープ)に貼り替えてから基板Wをダイシングする工程S4を実行してもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、基板Wをダイシングする工程S4を、デバイス部13の検査を行う工程S5の前に実行する例を示したが、本発明はこれに限られない。デバイス部13の検査を行う工程S5の後に、基板Wをダイシングする工程S4を実行してもよい。言い換えると、個片化されていない基板Wの状態で、デバイス部13の検査を行う工程S5を実行してもよい。この場合でも、第1樹脂テープ50から第2樹脂テープ60に貼り替えた状態で、ダイシング、検査および組み立てまでの工程(S4、S5およびS7)を行うことができるため、たとえば第1樹脂テープ50から第2樹脂テープ60に貼り替えた後、さらに第2樹脂テープ60から別のダイシングテープに貼り替えるような場合と比較して、貼り替え工程数を低減できる。
【0084】
また、上記実施形態では、デバイス部13の検査を行う工程S5における検査結果に応じて、デバイス部13を補正加工する工程S6を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。デバイス部13を補正加工する工程S6を備えなくてもよい。この場合、検査を行う工程S5における検査結果が許容範囲外であったデバイス部13については、たとえば製造不良として以降の工程を実施しないようにしてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、第2樹脂テープ60を基板Wに貼り合わせる工程S3において、第1樹脂テープ50と同一品種の樹脂テープであって、未使用の第2樹脂テープ60を基板Wに貼付する例を示したが、本発明はこれに限られない。第2樹脂テープ60が、第1樹脂テープ50とは別品種の樹脂テープであってもよい。つまり、第2樹脂テープ60が、その物性、寸法(厚み等)、構造(何層構造か、等)、粘着剤層の組成または硬化(粘着力低下)の原理、などに関して、第1樹脂テープ50とは異なる樹脂テープであってもよい。
【符号の説明】
【0086】
13:デバイス部(MEMSデバイス)
31:リング部(可動構造)
50:第1樹脂テープ
60:第2樹脂テープ
100:半導体デバイス
AD:接着材
CP:部品
SR:第1樹脂テープの収縮
W:基板
WP:個片基板
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