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特開2024-115356薬液カプセル、揮散装置、及び噴霧器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115356
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】薬液カプセル、揮散装置、及び噴霧器
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20240819BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20240819BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20240819BHJP
   A01M 7/00 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
A61L9/12
A61L9/14
B65D83/00 F
A01M7/00 M
A01M7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021011
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷 美里
【テーマコード(参考)】
2B121
4C180
【Fターム(参考)】
2B121CA02
2B121CA66
2B121CB02
2B121CB23
2B121CB28
2B121CB61
2B121FA03
2B121FA20
4C180AA02
4C180AA03
4C180AA13
4C180AA16
4C180CA06
4C180CB01
4C180FF07
4C180GG08
4C180JJ01
4C180LL06
(57)【要約】
【課題】簡単な構成により安価に製造することができる薬液カプセル、揮散装置、及び噴霧器を提供する。
【解決手段】薬液カプセル10は、含浸体14と、カップ12と、シール材16と、を有する。含浸体14は、収縮及び膨張可能で且つ薬液を含浸している。カップ12は、含浸体14を入れる開口部12aを有する。シール材16は、含浸体14を収縮させてカップ12に入れた状態で開口部12aを封止する。含浸体14は、シール材16を破封することにより膨張し、その一部が開口部12aを介して突出する大きさを有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収縮及び膨張可能で且つ薬液を含浸した含浸体と、
前記含浸体を入れる開口部を有する容器と、
前記含浸体を収縮させて前記容器に入れた状態で前記開口部を封止するシール材と、を有し、
前記含浸体は、前記シール材を破封することにより膨張し、その一部が前記開口部を介して突出する大きさを有する、
薬液カプセル。
【請求項2】
前記シール材は、引き伸ばした状態で前記容器の前記開口部を封止するゴムシートである、
請求項1に記載の薬液カプセル。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の薬液カプセルと、
前記シール材を破封する破封手段と、
を有する揮散装置。
【請求項4】
前記破封手段は、前記シール材を突き破る針状部材を含む、
請求項3に記載の揮散装置。
【請求項5】
収縮及び膨張可能で且つ薬液を含浸した含浸体と、
引き伸ばした状態で、収縮させた状態の前記含浸体を内包して密封した、袋状の包囲材と、
前記含浸体を前記包囲材によって包んで密封した袋体を収容した収容部と、
前記収容部に収容した前記袋体の前記包囲材を破封する破封手段と、
を有する揮散装置。
【請求項6】
前記包囲材は、伸縮可能なゴムシートにより形成されている、
請求項5に記載の揮散装置。
【請求項7】
前記包囲材は、前記含浸体とともに前記含浸体に含浸しきれない薬液を内包している、
請求項5又は請求項6に記載の揮散装置。
【請求項8】
前記破封手段は、前記包囲材を突き破る針状部材を含む、
請求項5又は請求項6に記載の揮散装置。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載した薬液カプセルと、
前記シール材を破封する破封手段と、
前記破封手段による前記シール材の破封によって膨張して前記容器の前記開口部から突出した前記含浸体に接触し、前記含浸体に含浸した薬液を霧状にして噴霧するピエゾ素子と、
を有する噴霧器。
【請求項10】
前記シール材は、引き伸ばした状態で前記容器の前記開口部を封止するゴムシートである、
請求項9に記載の噴霧器。
【請求項11】
前記破封手段は、前記シール材を突き破る針状部材を含む、
請求項10に記載の噴霧器。
【請求項12】
請求項5又は請求項6に記載した揮散装置と、
前記破封手段による前記包囲材の破封によって膨張した前記含浸体に接触し、前記含浸体に含浸した薬液を霧状にして噴霧するピエゾ素子と、
を有する噴霧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、薬液を収容した薬液カプセル、薬液カプセルの薬液を揮散させる揮散装置、及び薬液カプセルの薬液を霧状にして噴霧する噴霧器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香剤などを含む薬液を霧状又は気体状にして周囲に放出させる装置として、薬液を収容したポーションカップを用いた放出装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1の装置は、ポーションカップを所定位置に保持し、ポーションカップの蓋シートを切除した後、ポーションカップの底部を振動させる。これにより、薬液をその液面から霧状に放出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-123900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置は、ポーションカップの蓋シートを切除するための構成を備え、その分、装置を構成する部品の数が多くなり、装置が大型化して高価になってしまう。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、簡単な構成により安価に製造することができる薬液カプセル、揮散装置、及び噴霧器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の薬液カプセルの一態様は、含浸体と、容器と、シール材と、を有する。含浸体は、収縮及び膨張可能で且つ薬液を含浸している。容器は、含浸体を入れる開口部を有する。シール材は、含浸体を収縮させて容器に入れた状態で開口部を封止する。含浸体は、シール材を破封することにより膨張し、その一部が開口部を介して突出する大きさを有する。
【0008】
本発明の揮散装置の一態様は、上記の薬液カプセルと、シール材を破封する破封手段と、を有する。
【0009】
本発明の揮散装置の一態様は、含浸体と、包囲材と、収容部と、破封手段と、を有する。含浸体は、収縮及び膨張可能で且つ薬液を含浸している。包囲材は、引き伸ばした状態で、収縮させた状態の含浸体を内包して密封した、袋状のものである。収容部は、含浸体を包囲材によって包んで密封した袋体を収容している。破封手段は、収容部に収容した袋体の包囲材を破封する。
【0010】
本発明の噴霧器の一態様は、上記の揮散装置と、破封手段による包囲材の破封によって膨張した含浸体に接触し、含浸体に含浸した薬液を霧状にして噴霧するピエゾ素子と、を有する。
【0011】
本発明の噴霧器の一態様は、上記の薬液カプセルと、シール材を破封する破封手段と、ピエゾ素子と、を有する。ピエゾ素子は、破封手段によるシール材の破封によって膨張して容器の開口部から突出した含浸体に接触し、含浸体に含浸した薬液を霧状にして噴霧する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、簡単な構成により安価に製造することができる薬液カプセル、揮散装置、及び噴霧器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る噴霧器を示す斜視図である。
図2図2は、図1の噴霧器を分解して示す断面図である。
図3図3は、図1の噴霧器の噴霧部と蓋部をそれぞれ閉塞位置に配置した状態を示す断面図である。
図4図4は、図1の噴霧器に装着する薬液カプセルを示す外観図である。
図5図5は、図4の薬液カプセルの断面図である。
図6図6は、図4の薬液カプセルのシール材を破封した状態を示す斜視図である。
図7図7は、図1の噴霧器の駆動部を示すブロック図である。
図8図8は、図1の噴霧器のヒンジの近くに破封ピンを配置した場合における作用効果を説明するための図である。
図9図9は、図1の噴霧器のヒンジから離れた位置に破封ピンを配置した場合における作用効果を説明するための図である。
図10図10は、図1の噴霧器のヒンジを省略して噴霧部を軸方向に閉じた場合における作用効果を説明するための図である。
図11図11は、本発明の第2の実施形態に係る噴霧器を分解して示す断面図である。
図12図12は、本発明の第3の実施形態に係る薬液カプセルを示す断面図である。
図13図13は、本発明の第4の実施形態に係る揮散装置の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1図3に示すように、第1の実施形態に係る噴霧器100は、薬液カプセル10を装着する装着部20と、ピエゾ素子30を備えた噴霧部40と、蓋部50と、を有する。
【0015】
装着部20は、略円柱状の外形を有する。装着部20は、その上面側に、薬液カプセル10を着脱可能に装着するための凹所22を有する。凹所22は、本願の特許請求の範囲に記載した収容部の一例である。凹所22は、略半球面状の内面を有する。装着部20の鉛直方向に延びた図示しない中心軸と直交する凹所22の断面形状は略円形である。凹所22の上面は最も大きく開口しており、底部に向けて徐々に縮径している。凹所22の内面形状は、薬液カプセル10の後述するカップ12の外面形状と略一致する。
【0016】
装着部20は、凹所22の上部にある開口の縁に、薬液カプセル10の後述するフランジ部12cを受け入れる円環状の段部22aを有する。装着部20は、段部22aの径方向の外側に、噴霧部40の後述する保持体42の下端を嵌合する円環状の段部22bを有する。薬液カプセル10を装着部20の凹所22に装着すると、薬液カプセル10のフランジ部12cが段部22aに当接する。噴霧部40の後述する保持体42を図3に示す閉塞位置に配置すると、保持体42の下面40aが段部22bに当接する。
【0017】
噴霧部40は、略円柱状の外形を有する。噴霧部40の外径は、装着部20の外径より小さい。噴霧部40は、図1に示すヒンジ62を介して装着部20に対して回動可能に接続されている。図2及び図3ではヒンジ62の図示を省略している。ヒンジ62は、噴霧部40の外周縁と装着部20の外周縁のわずかに内側の部分とを接続している。噴霧部40は、装着部20の凹所22内に収容した薬液カプセル10を覆う図3に示す閉塞位置と、凹所22を開放する図1に示す開放位置と、の間で回動可能である。
【0018】
蓋部50は、最大径が装着部20の外径と略同じ略半球状の外形を有する。蓋部50は、図1に示すヒンジ64を介して装着部20に対して回動可能に接続されている。図2及び図3ではヒンジ64の図示を省略している。ヒンジ64は、蓋部50の外周縁と装着部20の外周縁を接続している。ヒンジ64は、装着部20の外周に沿って、噴霧部40のヒンジ62とは約90度位相の異なる位置に設けられている。
【0019】
蓋部50は、装着部20の凹所22に装着した薬液カプセル10を覆う閉塞位置に配置した噴霧部40を覆う図3に示す閉塞位置と、図1に示す開放位置と、の間で回動可能である。蓋部50は、閉塞位置に配置した状態で、内部に噴霧部40の一部を収容する空間を有していればよく、いかなる形状であってもよい。蓋部50は、本発明に必須の構成ではないため、省略することもできる。
【0020】
薬液カプセル10を装着部20の凹所22に対して着脱する際には、図1に示すように、蓋部50を開放するとともに噴霧部40を開放する。また、噴霧器100の使用時には、薬液カプセル10を装着部20の凹所22に装着した後、噴霧部40を閉塞位置に配置して装着部20に固定し、蓋部50を開放する。なお、噴霧器100を使用しない場合、噴霧部40の後述する噴霧口41を介して埃などの異物が入りメッシュ34に堆積してしまい、メッシュ34の目詰まりによる噴霧不良が起こらないように、蓋部50を図3に示す位置に閉塞しておく。
【0021】
図2及び図3に示すように、噴霧部40は、ピエゾ素子30を保持した略円筒状の保持体42を有する。保持体42は、その上面側に、ピエゾ素子30を収容する凹所42aを有する。保持体42の図示しない中心軸と直交する凹所42aの断面形状は略円形である。凹所42aの内周面は柱面である。凹所42aの底は水平方向に平らであり、凹所42aの底には、凹所より小径の円形の貫通孔42bがある。凹所42aの径方向の外側には、略円筒状の周部42cがある。言い換えると、凹所42aの周面は、周部42cによって規定されている。周部42cの外周面は保持体42の外周面である。
【0022】
保持体42の下面40a側には、薬液カプセル10の後述する含浸体14の形状に合わせて上方に向けて凹んだ凹所43がある。凹所43は、略半球面状の内面を有する。貫通孔42bは、保持体42の上下にある2つの凹所42a、43を連通している。保持体42の図示しない中心軸と直交する凹所43の断面形状は略円形である。下面40aにある凹所43の開口部は最も大きく開口しており、凹所43は開口部から貫通孔42bに向けて徐々に縮径している。
【0023】
下側の凹所43の内面には、下方に向けて突出した1本の先鋭な針状の破封ピン43aが突設されている。破封ピン43aは、本願の特許請求の範囲に記載した破封手段の一例であるとともに針状部材の一例である。本実施形態では、貫通孔42bの周縁に近接して1本の破封ピン43aを設けたが、破封ピン43aの位置は本実施形態に限らない。破封ピン43aを1本だけ設けることにより、薬液カプセル10の後述するシール材16の破封部位を一点に集中させることができ、破封ピン43aを複数本設けた場合と比較して、突き刺す力が分散してしまうことを防止することができる。破封ピン43aは、1本に限らず、複数本設けてもよい。なお、破封ピン43aの凹所43内における配置位置については後に詳述する。凹所42a、貫通孔42b、周部42c、及び凹所43は、同軸に配置されている。
【0024】
ピエゾ素子30は、略円環板状の周縁部32と、複数の図示しない噴霧孔を有する略円板状のメッシュ34と、を有する。メッシュ34は、周縁部32の内周縁と一体に設けられている。また、周縁部32は、板状の圧電セラミックの両面に電極を備えたものである。ピエゾ素子30は、周知のものであるため、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0025】
ピエゾ素子30は、保持体42の凹所42aの底に接触して配置される。保持体42の周部42cの内径、すなわち凹所42aの内径は、ピエゾ素子30の周縁部32の外径よりわずかに大きい。保持体42の貫通孔42bの内径は、ピエゾ素子30の周縁部32の内径、すなわちメッシュ34の外径よりわずかに大きい。保持体42は、ピエゾ素子30を、凹所42a内で移動可能な状態で、その周縁部32を下から支えている。
【0026】
保持体42の下面40a側にある凹所43の最大径は、後述する薬液カプセル10のカップ12のフランジ部12cの外径よりわずかに小さい。このため、図3に示すように、薬液カプセル10を装着部20の凹所22に装着して噴霧部40の保持体42を閉塞位置に配置すると、薬液カプセル10のフランジ部12cが装着部20の段部22aと保持体42の下面40aの間に挟まれる。
【0027】
ピエゾ素子30の周縁部32の図示上面側には、略円環状の弾性体44が配置されている。弾性体44の外径は、保持体42の周部42cの内径と略同じである。弾性体44の内径は、ピエゾ素子30の周縁部32の内径よりわずかに大きい。弾性体44は、例えば、スポンジである。弾性体44は、スポンジに限らず、コイルバネや板バネなどであってもよい。
【0028】
弾性体44の図示上面側、すなわち保持体42の上面側の凹所42aの上端の開口部を塞ぐ位置には、略円環状の押さえ板46が設けられている。押さえ板46の外径は、保持体42の外径と略同じである。押さえ板46の内径は、ピエゾ素子30のメッシュ34の外径より小さい。押さえ板46の内周縁は、上述した噴霧口41の外周縁である。噴霧口41は、押さえ板46に設けられている。
【0029】
押さえ板46は、弾性体44を軸方向にわずかに圧縮した状態で、保持体42の周部42cの上端に固定される。言い換えると、弾性体44は、ピエゾ素子30の周縁部32の上面に弾性体44を乗せただけの、押さえ板46を取り付ける前の状態(図示せず)で、保持体42の周部42cの上端より上方にわずかに突出する厚みを有する。なお、押さえ板46の固定手段は、例えば、接着剤である。
【0030】
薬液カプセル10は、略半球状のカップ12と、略球状の含浸体14と、シール材16と、を有する。カップ12は本願の特許請求の範囲に記載した容器の一例である。以下、図2とともに図4図6を参照して、薬液カプセル10について詳細に説明する。
【0031】
図5に示すように、薬液カプセル10のカップ12は、その上端に含浸体14を入れるための略円形の開口部12aを有する。カップ12は、開口部12aにつながる略半球状の内面12bを有する。カップ12は、開口部12aの径方向の外側に、シール材16を固定するための円環状のフランジ部12cを有する。カップ12は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)などの可撓性を有する樹脂材料により形成されている。カップ12は、芳香剤、消臭剤、殺虫剤などの所定量の薬液を含浸した含浸体14を収容する。
【0032】
含浸体14は、薬液を含浸することができる素材、例えば、発泡合成樹脂などの多孔質素材、すなわちスポンジ素材によって、略球状に形成されている。含浸体14の直径は、カップ12の内径よりわずかに大きい。含浸体14の素材は、スポンジ素材に限らず、所定量の薬液を含浸して保持することができる素材であって、且つ収縮及び膨張可能な素材であればいかなる素材であってもよい。スポンジ素材は、液体に浸すと多数の孔内の空気と置換する形で液体を吸い取り、外部から圧力を加えることで含浸した液体を放出する特性を有するものである。
【0033】
シール材16は、薬液を透過させない材料により形成されている。シール材16は、薬液を含浸させた含浸体14を収縮させてカップ12内に押し込んだ後、含浸体14の膨張を押えるようにカップ12の開口部12aを封止する。シール材16は、その周縁部をカップ12のフランジ部12cに例えば接着剤によって固定する。シール材16は、上述した噴霧部40の破封ピン43aを突き刺すことにより破封することのできる材料であればよい。シール材16として、例えば、シリコーンゴムなどのシート状のゴム素材を引き延ばした状態で用いることができる。シール材16は、図4に示すように、カップ12のフランジ部12cを外側から覆うように開口部12a取り付けられ、その外周縁16aがフランジ部12cの下方でカップ12の外面に密着する。
【0034】
シール材16として上述したゴムシートを用いると、図4及び図5に示すように、カップ12の内部で膨張しようとする含浸体14によってシール材16が内側から押されて、開口部12aから外方へシール材16が突出するように膨出する。このため、シール材16に破封ピン43aを突き刺すと、引き伸ばされた状態のシール材16が容易に破封され、含浸体14の膨張によって図6に示すように含浸体14の一部がカップ12の開口部12aから突出する。破封後のシール材16は、カップ12のフランジ部12cに接着された状態で残るが、図6では残ったシール材16の図示を省略している。
【0035】
つまり、破封後のシール材16は、ゴムシートであるため、カップ12の開口部12aから突出した含浸体14の表面に重なるように残ることは無い。引き伸ばされた状態のゴムシートに破封ピン43aを突き刺すと、突き刺した部位が破れたシール材16がフランジ部12cの近くに収縮して集まる。このため、シール材16を破封した後、開口部12aを大きく開口させることができ、収縮したシール材16をカップ12から取り除く必要も無い。
【0036】
また、シール材16を破封した状態で、含浸体14の略全表面を瞬時に空気に触れさせることができ、薬剤の揮散効率を高めることができる。例えば、本実施形態のように、含浸体14をカップ12の開口部12aより大径の球状にした場合、シール材16を破封した図6に示す状態で、含浸体14の下端とカップ12の底部との間にわずかな隙間ができ、含浸体14の下面側も空気に触れさせることができる。なお、この場合、含浸体14に吸収されない状体でカップ12内に収容した薬液は、シール材16の破封によって膨張する含浸体14によって吸収され、カップ12の底部に残ることはない。
【0037】
また、シール材16を破封した後、含浸体14がカップ12の開口部12aから突出するが、ほとんど全ての薬液が含浸体14に含浸しているため、シール材16の破封により薬液が周囲に飛び散る心配はない。このため、破封後に薬液がカップ12から不所望に流れ出て周囲を汚す心配がない。
【0038】
ここで、上述した噴霧器100を使用する前の準備動作について説明する。
まず、図1に示すように、蓋部50を開放するとともに噴霧部40を開放し、装着部20の凹所22内に薬液カプセル10を装着する。この状態を図1に示す。
【0039】
この後、噴霧部40を図3に示す閉塞位置に回動させて図示しないラッチ爪等により噴霧部40を装着部20に固定する。噴霧部40の閉塞位置に向かう回動により、保持体42の凹所43の内面から突設した破封ピン43aが薬液カプセル10のシール材16に突き刺さり、シール材16が破封される。言い換えると、破封ピン43aは、噴霧部40を閉塞した状態で薬液カプセル10のシール材16に突き刺すことができる程度の突出高さを有する。また、薬液カプセル10の高さも、噴霧部40を閉塞した状態で薬液カプセル10のシール材16に破封ピン43aを突き刺すことができる程度の高さである。
【0040】
シール材16が破封されると、図6に示すようにカップ12内の含浸体14が膨張し、図3に示すようにカップ12の開口部12aから突出した含浸体14の一部が噴霧部40のピエゾ素子30のメッシュ34に押し当てられる。言い換えると、噴霧部40の保持体42の厚み、ピエゾ素子30を支持した凹所42aの深さ、含浸体14の径などは、膨張した含浸体14の一部をピエゾ素子30のメッシュ34に押し当てることができる値に設定されている。
【0041】
含浸体14がピエゾ素子30に押し当てられると、ピエゾ素子30が、弾性体44の弾性変形を伴って、上方に押し上げられて、ピエゾ素子30の周縁部32の下面と装着部20の保持体42の間にわずかな隙間ができる。この状態を図3に示す。
【0042】
図7は、上述した噴霧器100の駆動部200を示すブロック図である。駆動部200は、電源202、スイッチ204、及びコントローラ206を有する。電源202は、充電池や乾電池を用いることができる。コントローラ206は、ピエゾ素子30の図示しない電極と電気的に接続する。
【0043】
上述した準備動作の後、スイッチ204をONにすると、コントローラ206がピエゾ素子30を駆動する。これにより、含浸体14を介してピエゾ素子30のメッシュ34に供給された薬液が複数の噴霧孔を介して霧状にされる。ピエゾ素子30によって霧状にされた薬液は、押さえ板46の中央にある噴霧口41を介して噴霧される。
【0044】
コントローラ206は、ピエゾ素子30に給電する電圧を調整するためのつまみを備えてもよく、ピエゾ素子30に給電する電圧の周波数を調整するためのつまみを備えてもよい。周波数を変えることにより、薬液の噴霧量を変えることができる。
【0045】
ここで、破封ピン43aの凹所43内における配置位置、及び配置位置に基づく作用効果について、図8図10を参照して説明する。なお、図8、9に示す噴霧器110は、上述した噴霧器100の蓋部50を省略したものである。図10に示す噴霧器120は、噴霧部40を装着部20に対して回動可能に接続したヒンジ62をさらに省略したものである。
【0046】
図8に示すように、ヒンジ62の近くに破封ピン43aを配置すると、支点(ヒンジ62)から作用点(破封ピン43a)までの距離に対し、支点から力点(利用者が指で押す点)までの距離を大きくすることができるため、弱い力で破封ピン43aを薬液カプセル10のシール材16に突き刺すことができ、シール材16を確実に破封することができる。
【0047】
図9に示すように、ヒンジ62から遠い位置に破封ピン43aを配置すると、噴霧部40を閉塞位置に配置する直前に、破封ピン43aをシール材16に突き刺すことができ、破封により飛び散る可能性がある薬液の飛沫が噴霧器110の外部に出難くすることができる。また、噴霧部40を閉塞位置に閉じるタイミングでシール材16を破封することができ、破封の感触との時差がなく使用感を良好にすることができる。
【0048】
図10に示すように、ヒンジ62の代わりにラッチ爪同士を係合させる固定構造112を設けて噴霧部40を装着部20にラッチ固定する場合、破封ピン43aを凹所43の内面に突設すれば、ラッチ固定と同時にシール材16を破封することができる。ヒンジ62を省略することにより、生産工程の工数を削減することができ、噴霧器120の製造コストを削減することができる。なお、ヒンジ62を省略する場合、ラッチ爪による固定構造112の代わりに、L字形の溝とピンを嵌合する固定構造などを採用してもよい。
【0049】
以上のように、第1の実施形態の噴霧器100(110、120)によると、薬液カプセル10を装着部20に装着して、噴霧部40を閉じて破封ピン43aをシール材16に突き刺すだけで、ピエゾ素子30に薬液を供給することができる。つまり、本実施形態によると、ピエゾ素子30に薬液を供給するための吸液芯が不要であり、吸液芯をピエゾ素子30に押し付けるためのバネなども不要である。よって、本実施形態によると、装置構成を簡略化することができ、安価な噴霧器を提供することができる。
【0050】
また、本実施形態によると、薬液カプセル10のシール材16を手で開ける必要が無いため、薬液が手に付着して汚す不具合を生じることが無く、取り扱いが容易である。また、本実施形態によると、薬液カプセル10の全ての薬液を噴霧した後、使用済の薬液カプセル10を装着部20から取り外して破棄すればよく、ごみ処理が容易である。また、使用済の薬液カプセル10を取り外した後、新たな薬液カプセル10を装着部20に装着するだけで、すぐに薬液の噴霧を開始することができ、利便性を向上させることができる。例えば、いろいろな種類の芳香剤を含む薬液を収容した複数種類の薬液カプセルを用意することで、いろいろな香りを手軽に楽しむことができる。
【0051】
本実施形態のように球状の含浸体14を用いることで、含浸体14が膨張する方向(中心から径方向の外側へ向かう方向)と含浸体14をピエゾ素子30に押し付ける方向を略一致させることができ、含浸体14をピエゾ素子30に確実に押し当てることができる。なお、本実施形態ではピエゾ素子30に押し付ける含浸体14の形状を略球状としたが、これに限らず、含浸体14の形状は任意に変更可能である。
【0052】
図11は、第2の実施形態に係る噴霧器300を示す分解断面図である。
この噴霧器300は、薬液カプセル10の代わりに、薬液を含浸させた含浸体14の全表面を袋状の包囲材17で包んで密封した袋体310を用いた以外、上述した第1の実施形態の噴霧器100と同様の構造を有する。よって、ここでは、上述した第1の実施形態の噴霧器100と同様に機能する構成には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。なお、袋体310も、薬液カプセル10と同様に、含浸体14に含浸しきれなかった薬液を内包してもよい。
【0053】
袋体310の包囲材17は、例えば、シリコーンゴムなどの薄いゴムシートを袋状にしたものである。包囲材17は、引き伸ばした状態で、薬液を含浸した含浸体14を収縮させて内包し、内部を密封している。見方を変えると、含浸体14を収縮させた状態で内包することで、包囲材17は引き延ばされた状態となっている。このため、袋体310の外形は、含浸体14と同じ略球状となっている。
【0054】
本実施形態では、袋体310の直径を装着部20の凹所22の内径と略同じにして、袋体310を凹所22内に収容し易くしている。言い換えると、含浸体14は、第1の実施形態と同様に、噴霧部40を閉じて包囲材17を破封ピン43aによって破封した後、膨張によって径が大きくなり、その一部がピエゾ素子30のメッシュ34に押し付けられることになる。
【0055】
この噴霧器300を使用する際には、袋体310を装着部20の凹所22に装着して、保持体42を閉塞位置に回動させる。すると、袋体310の包囲材17に破封ピン43aが突き刺さり、袋体310が破封されて含浸体14が膨張し、ピエゾ素子30のメッシュ34に押し付けられる。この状態で、ピエゾ素子30に給電して駆動すると、含浸体14を介して供給された薬液がメッシュ34の噴霧孔を通って霧状にされ、押さえ板46の噴霧口41を介して薬液が噴霧される。
【0056】
以上のように、第2の実施形態の噴霧器300によると、上述した第1の実施形態の噴霧器100と同様の効果を奏することができるとともに、薬液カプセル10の代わりにより構造を簡略化した袋体310を用いることができ、装置構成をより簡略化することができ、より安価な噴霧器を提供することができる。
【0057】
なお、上述した第1及び第2の実施形態では、薬液カプセル10又は袋体310を装着部20に装着して使用する場合について説明したが、薬液カプセル10及び袋体310は、単体で揮散装置として機能させることもできる。つまり、各実施形態とも、薬液を含浸体14に含浸させて保持できるため、針状部材をシール材16(又は包囲材17)に突き刺して破封させることにより、薬液の揮散を開始させることができる。しかし、第2の実施形態の袋体310を単体で使用する場合には、別途、包囲材17を破封した後の含浸体14を受ける容器を用意することが望ましい。
【0058】
図12は、第3の実施形態に係る薬液カプセル400を示す。図12(a)はシール材16を破封する前の薬液カプセル400の断面図であり、図12(b)はシール材16を破封した後の薬液カプセル400の断面図である。この薬液カプセル400は、単体で揮散装置として使用することができる。
【0059】
薬液カプセル400は、カップ410と、略円柱状の含浸体420と、シール材16と、を有する。カップ410は、第1の実施形態の薬液カプセル10のカップ12と同じである。含浸体420は、第1の実施形態の薬液カプセル10の含浸体14と同じ素材により形成されており、薬液を含浸している。カップ410の開口部411は、第1の実施形態の薬液カプセル10のシール材16によって封止される。つまり、第3の実施形態の薬液カプセル400は、第1の実施形態の薬液カプセル10とは含浸体420の形状が異なる。
【0060】
含浸体420は、図12(b)に示すように、カップ410内に収容した状態で、カップ410の開口部411から上方に突出する軸方向の長さを有する。本実施形態では、カップ410の底部から開口部411までの高さの約2倍の高さの含浸体420を用いた。含浸体420の径は、カップ410の開口部411の径の約半分である。
【0061】
薬液カプセル400は、図12(a)に示すように、含浸体420を軸方向に押し縮めた状態でカップ410内に収容している。カップ410は、含浸体420に含浸されない薬液を含浸体420とは別に収容している。つまり、含浸体420は、薬液の全量を含浸しない状態でカップ410内に収容されていてもよい。カップ410の開口部411は、押し縮めた状態の含浸体420をカップ410内に収容した状態で、シール材16によって封止されている。含浸体420は、カップ410内に収容されてシール材16によって封止された状態で、シール材16を内側から押圧する復元力を生じる。シール材16は、含浸体420から作用する復元力により、カップ410の開口部411から外方へ膨出するように膨らむ。
【0062】
上記構造の薬液カプセル400を使用する場合、図示しない先鋭な針状部材によってシール材16を破封する。これにより、シール材16が破れて、含浸体420の復元力によって含浸体420が膨張し、図12(a)の状態から図12(b)の状態(略円柱形)に変形する。このとき、含浸体420の膨張によって含浸体420の内部で生じた負圧により、カップ410内の薬液が含浸体420に吸い上げられる。カップ410に含浸体420とは別に収容した薬液は、含浸体420の膨張により全量が吸い上げられてもよく、図示のようにカップ410内にわずかに残ってもよい。
【0063】
シール材16を破封した図12(b)の状態で、含浸体420の上側約半分がカップ410の開口部411から上方へ突出する。この状態で、含浸体420に含浸した薬液が含浸体420から揮散する。含浸体420とは別にカップ410内に収容した薬液は、含浸体420によって吸収された薬液が揮散するにつれて含浸体420によって吸い上げられ、含浸体420の表面から揮散される。
【0064】
第3の実施形態の薬液カプセル400は、針状部材によってシール材16を破封するだけで使用を開始することができ、複雑な構造の装置を必要とせず、電力を消費することもなく、安価な揮散装置を提供できる。このため、本実施形態によると、利用者の利便性を向上させることができる。
【0065】
図13は、第4の実施形態に係る揮散装置500の要部を示す。
揮散装置500は、ピエゾ素子30の代わりに揮散体510を備え、蓋部50を省略した以外、第1の実施形態の噴霧器100と略同じ構造を有する。よって、第1の実施形態の噴霧器100と同様に機能する構成要素には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0066】
揮散装置500は、保持体42の上面側の凹所42a内に揮散体510を収容している。凹所42aは、揮散体510を収容した後、複数の揮散孔521を有する押え板520によって閉塞される。押え板520は、保持体42に対して着脱可能となっている。
【0067】
揮散体510を保持した保持体42を図示の閉塞位置へ閉じると、保持体42の下面側の凹所43の内面から突設した破封ピン43aによってシール材16が破封され、含浸体14が膨張して揮散体510に押し付けられる。これにより、含浸体14に含浸した薬液が揮散体510に吸収され、押え板520の複数の揮散孔521を通して薬液が揮散される。
【0068】
第4の実施形態の揮散装置500は、電力を消費することがなく、安価に製造することができる。また、薬液カプセル10を別の種類に交換して別の種類の薬液を揮散させる場合、保持体42から押え板520を取り外して揮散体510を新しいものに交換すればよい。
【0069】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0070】
10…薬液カプセル、 12…カップ、 12a…開口部、 12c…フランジ部、 14…含浸体、 16…シール材、 17…包囲材、 20…装着部、 22…凹所、 30…ピエゾ素子、 32…周縁部、 34…メッシュ、 40…噴霧部、 41…噴霧口、 42…保持体、 43a…破封ピン、 44…弾性体、 46…押さえ板、 50…蓋部、 62、64…ヒンジ、 100、300…噴霧器、 200…駆動部、 310…袋体、 400…薬液カプセル、 500…揮散装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13