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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115357
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】洗面ユニット
(51)【国際特許分類】
   A47K 1/00 20060101AFI20240819BHJP
   A47B 67/02 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
A47K1/00 Q
A47B67/02 501Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021012
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100224672
【弁理士】
【氏名又は名称】深田 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】朝川 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】矢野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】村田 律子
(72)【発明者】
【氏名】上野 りさ
(72)【発明者】
【氏名】朝野 由加利
(72)【発明者】
【氏名】岡田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】行徳 和男
(57)【要約】
【課題】本発明は、見栄えを向上させると共に、車いす使用者が近づいて使用することができ、車いす使用者の使い勝手を向上させることができる洗面ユニットを提供することを目的としている。
【解決手段】本発明は、車いす使用者が利用可能な洗面ユニット1であって、洗面ボウル2、水栓装置4、及び、天板部34の前端から下方へ延びるエプロン部36を有するカウンター8を備え、カウンター8のエプロン部36の下端36aは、洗面ボウル2の前方壁24のリム部24aの下面24dと、洗面ボウル2の底部12の下端12aとの間の中央よりも上方に配置されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車いす使用者が利用可能な洗面ユニットであって、
排水口が形成された底部と、この底部から上方へ延びる立壁とを備える洗面ボウルと、
上記洗面ボウルへ水を吐水する水栓装置と、
上記洗面ボウルが設けられる天板部と、この天板部の前端から下方へ延びるエプロン部とを有するカウンターと、を備え、
上記洗面ボウルの上記立壁は、上記底部の前端から上方に延びる前方壁と、上記底部の後端から上方に延びる後方壁と、上記底部の左端又は右端から上方に延びる側方壁とを有し、
上記前方壁には、上縁を形成するリム部が形成され、
上記カウンターの上記エプロン部の下端は、上記洗面ボウルの上記リム部の下面と、上記洗面ボウルの底部の下端との間の中央よりも上方に配置されている
こと特徴とする洗面ユニット。
【請求項2】
上記洗面ボウルの上記前方壁は、上記底部から上方に屈曲する屈曲部を有し、
上記エプロン部の前側下端から上記屈曲部までの距離は、上記屈曲部から上記排水口の前端までの距離よりも大きくなっている、請求項1に記載の洗面ユニット。
【請求項3】
前後方向の鉛直断面において、上記エプロン部の下端よりも下方の空間であって上記エプロン部の後側下端を通る鉛直線と上記前方壁及び上記底部との間の空間の断面積は、上記エプロン部の下端よりも上方の空間であって上記エプロン部と上記前方壁との間の空間の断面積よりも大きくなっている、請求項2に記載の洗面ユニット。
【請求項4】
上記洗面ユニットは壁面に取り付けられ、
上記壁面から上記排水口の前端までの距離は、上記エプロン部の前側下端から上記排水口の前端までの距離よりも大きくなっている、請求項3に記載の洗面ユニット。
【請求項5】
上記洗面ボウルは、上記水栓装置の吐水口における中心軸を吐水方向に向かって延ばした延長線が、上記屈曲部よりも前方側で上記前方壁と交差するように構成されている、請求項2~4の何れか1項に記載の洗面ユニット。
【請求項6】
上記洗面ボウルの上記前方壁には、正面視において、上記側方壁の間に亘って延びる凹部が形成されている、請求項1に記載の洗面ユニット。
【請求項7】
上記前方壁の上記リム部の前後方向の幅は、上記側方壁の上縁を形成するリム部の左右方向の幅よりも大きくなっている、請求項6に記載の洗面ユニット。
【請求項8】
上記洗面ボウルは、偏平の略直方体状に形成されている、請求項6又は7に記載の洗面ユニット。
【請求項9】
上記洗面ボウルの裏面には、左右両端から下方に向かって延びる側壁が設けられ、上記側壁の前方側には、所定の曲率半径で湾曲するアール部が形成されている、請求項1に記載の洗面ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗面ユニットに係り、特に、車いす使用者が利用可能な洗面ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、特許文献1及び2のように車いす使用者の利用を想定して、下方空間に配慮した洗面ユニットが知られている。
特許文献1には、車いす使用者が利用可能な洗面台が開示されている。この洗面台では、洗面ボウルの前方壁が車いす使用者の膝と干渉しない上方位置に配置されている。これにより、洗面台を使用する際に、車いす使用者の下肢が洗面ボウルの下方空間に進入しても膝が洗面ボウルと干渉しないようになっている。
また、特許文献2にも、洗面ボウルの下方に空間が形成され、車いす使用者が利用可能な洗面台が開示されている。この洗面台では、天板部の前端から下方へ延びるエプロン部が洗面ボウルの前方に設けられている。これにより、洗面ボウルの裏面がエプロン部で隠されて外部に露出しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3218988号公報
【特許文献2】特開2001-104068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の洗面台は、洗面ボウルの裏面が外部に露出しているので、見栄えが悪くなるおそれがある。また、特許文献2の洗面台は、洗面ボウルの裏面をエプロン部によって隠しているが、エプロン部が洗面ボウルよりも下方に延びているので、洗面台を使用する際に、車いす使用者の下肢がエプロン部に衝突するおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、見栄えを向上させると共に、車いす使用者が近づいて使用することができ、車いす使用者の使い勝手を向上させることができる洗面ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、車いす使用者が利用可能な洗面ユニットであって、排水口が形成された底部と、この底部から上方へ延びる立壁とを備える洗面ボウルと、洗面ボウルへ水を吐水する水栓装置と、洗面ボウルが設けられる天板部と、この天板部の前端から下方へ延びるエプロン部とを有するカウンターと、を備え、洗面ボウルの立壁は、底部の前端から上方に延びる前方壁と、底部の後端から上方に延びる後方壁と、底部の左端又は右端から上方に延びる側方壁とを有し、前方壁には、上縁を形成するリム部が形成され、カウンターのエプロン部の下端は、洗面ボウルのリム部の下面と、洗面ボウルの底部の下端との間の中央よりも上方に配置されていることを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明においては、カウンターのエプロン部の下端は、洗面ボウルのリム部の下面と、洗面ボウルの底部の下端との間の中央よりも上方に配置されている。その結果、エプロン部によって洗面ボウルの裏面を隠しながら洗面ユニットの下方に空間を確保することができる。よって、洗面ユニットの見栄えを向上させると共に、車いす使用者が近づいて使用することができ、車いす使用者の使い勝手を向上させることができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、洗面ボウルの前方壁は、底部から上方に屈曲する屈曲部を有し、エプロン部の前側下端から屈曲部までの距離は、屈曲部から排水口の前端までの距離よりも大きくなっている。
このように構成された本発明によれば、屈曲部が前方壁の後方側に配置されているので、屈曲部が正面から目立たないようにすることができ、さらに洗面ユニットの下方の空間を広くすることができる。その結果、見栄えを向上させることができ、車いす使用者が洗面ユニットに近づいて使用し易くなる。
【0009】
また、本発明において、好ましくは、前後方向の鉛直断面において、エプロン部の下端よりも下方の空間であってエプロン部の後側下端を通る鉛直線と前方壁及び底部との間の空間の断面積は、エプロン部の下端よりも上方の空間であってエプロン部と前方壁との間の空間の断面積よりも大きくなっている。
このように構成された本発明によれば、エプロン部と前方壁との間のデッドスペースを小さくして洗面ユニットの下方の空間を広くすることができるので、車いす使用者が洗面ユニットに近づいて使用し易くなる。
【0010】
本発明において、好ましくは、洗面ユニットは壁面に取り付けられ、壁面から排水口の前端までの距離は、エプロン部の前側下端から排水口の前端までの距離よりも大きくなっている。
このように構成された本発明によれば、排水口よりも後方側の空間を広くすることができ、車いす使用者が脚を伸ばした時に爪先が壁面に衝突するのを防止することができる。
【0011】
また、本発明において、好ましくは、洗面ボウルは、水栓装置の吐水口における中心軸を吐水方向に向かって延ばした延長線が、屈曲部よりも前方側で前方壁と交差するように構成されている。
このように構成された本発明によれば、屈曲部よりも前方側の前方壁に水が吐水されるので、車いす使用者は吐水されている水に手を近づけ易く、手洗いなどがし易くなる。
【0012】
本発明において、好ましくは、洗面ボウルの前方壁には、正面視において、側方壁の間に亘って延びる凹部が形成されている。
このように構成された本発明によれば、前方壁に凹部が形成されているので、車いす使用者は洗面ボウル内に手を進入させ易く、手洗いなどがし易くなる。
【0013】
また、本発明において、好ましくは、前方壁のリム部の前後方向の幅は、側方壁の上縁を形成するリム部の左右方向の幅よりも大きくなっている。
このように構成された本発明によれば、前方壁のリム部の前後方向の幅が大きくなっているので、車いす使用者はリム部に腕を置くことができ、安定して手洗いなどがし易くなる。
【0014】
また、本発明において、好ましくは、洗面ボウルは、偏平の略直方体状に形成されている。
このように構成された本発明によれば、従来の半球状に形成された洗面ボウルと比較して、洗面ボウルの底部を広くすることができ、洗面ボウルの深さを深くせずに水の飛び散りを防止することができる。これにより、洗面ユニットの下方の空間を広くすることができる。
【0015】
また、本発明において、好ましくは、洗面ボウルの裏面には、左右両端から下方に向かって延びる側壁が設けられ、側壁の前方側には、所定の曲率半径で湾曲するアール部が形成されている。
このように構成された本発明によれば、側壁が正面から目立たないようにすることができ、さらに洗面ユニットの下方の空間を広くすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の洗面ユニットによれば、見栄えを向上させると共に、車いす使用者が近づいて使用することができ、車いす使用者の使い勝手を向上させることができる洗面ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態による洗面ユニットの上方から見た斜視図である。
図2】本発明の一実施形態による洗面ユニットの下方から見た斜視図である。
図3】本発明の一実施形態による洗面ユニットの正面図である。
図4】本発明の一実施形態による洗面ユニットの上面図である。
図5図4のV-V線に沿って見た断面図である。
図6図4のVI-VI線に沿って見た断面図である
図7図6に示すA部分の拡大図である。
図8】本発明の一実施形態による洗面ユニットを車いす使用者が使用する様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態による洗面ユニット1について説明する。先ず、図1及び図2により、洗面ユニット1の概要を説明する。図1は、本発明の一実施形態による洗面ユニット1の上方から見た斜視図であり、図2は、本発明の一実施形態による洗面ユニット1の下方から見た斜視図である。
【0019】
図1及び図2に示すように、洗面ユニット1は、洗面所などに設けられ、使用者が手洗いや洗顔を行うものである。洗面ユニット1は、洗面所の壁面WLに設置される。壁面WLは、床面FLに対して垂直に設置されている。壁面WLは、洗面所以外に設けられる壁面でもよく、例えばトイレ空間などの壁面でもよい。また、壁面WLは、建物以外の壁面でもよく、例えば家具などの一部でもよい。
【0020】
次に、図3図6により、本発明の一実施形態による洗面ユニット1の基本構造を説明する。図3は、本発明の一実施形態による洗面ユニット1の正面図であり、図4は、本発明の一実施形態による洗面ユニット1の上面図であり、図5は、図4のV-V線に沿って見た断面図である。図6は、図4のVI-VI線に沿って見た断面図である。
【0021】
ここで、本明細書において、説明の便宜上、洗面ユニット1を使用する使用者から見て、手前側を前方、奥側を後方、右側を右方、左側を左方、上側を上方、下側を下方として説明する。
【0022】
洗面ユニット1は、ボウル形状の洗面ボウル2と、水や温水を洗面ボウル2に向けて吐水する水栓装置4と、洗面ボウル2を壁面WL内の配管(図示せず)に接続する排水管6と、洗面ボウル2の左右方向に延びるカウンター8と、カウンター8を壁面WLに固定する固定部材10と、カウンター8と固定部材10との間に配置される固定補助部材11と、を備えている。
【0023】
洗面ボウル2は、陶器製であり、カウンター8と別体に形成されている。なお、本発明の一実施形態では、洗面ボウル2がカウンター8と別体に形成されているが、他の実施形態として、洗面ボウル2がカウンター8と一体的に形成されていてもよい。
【0024】
図3図6に示すように、洗面ボウル2は、底部12と、この底部12の外周縁から上方に延びる立壁14と、底部12に形成された排水口16と、排水口16から鉛直下方へ延びる排水部18と、洗面ボウル2内の水位が所定水位に達した場合に排水するためのオーバーフロー孔19と、オーバーフロー孔19から排水された水を排水管6へ導くためのオーバーフロー流路20と、洗面ボウル2の裏面から下方へ延びる側壁22と、を備えている。洗面ボウル2は、横方向に偏平の略直方体状に形成されている。これにより、洗面ボウル2は、従来の半球状に形成された洗面ボウルと比較して、洗面ボウル2の底部12を広くすることができ、洗面ボウル2の深さを深くせずに水の飛び散りを防止することができるようになっている。
【0025】
図4に示すように、洗面ボウル2の底部12は、上面視において、前後方向よりも左右方向が長い略長方形状に形成されている。底部12には、左右方向中央且つ後方側に、正円形状の排水口16が形成されている。底部12は、略平坦な面で形成され、外周縁から排水口16に向けて下方へ僅かに傾斜している(図5及び図6を参照)。
【0026】
洗面ボウル2の立壁14は、底部12の前端から前方且つ上方に延びる前方壁24と、底部12の後端から後方且つ上方に延びる後方壁26と、底部12の左端又は右端から、左方且つ上方、又は、右方且つ上方にそれぞれ延びる側方壁28と、を備えている。
【0027】
図6に示すように、洗面ボウル2の前方壁24は、上縁を形成するリム部24aを有している。リム部24aは、前方に向かって水平に延びる上面24bと、この上面24bの前端から下方に向かって鉛直に延びる前面24cと、この前面24cの上下方向中央付近から後方に向かって水平に延びる下面24dと、を備えている。前面24cの下端24eは、下面24dよりも下方に配置されており、洗面ボウル2とカウンター8との境界が前面24cによって隠されている。また、前方壁24の上面24bは、床面FLからの鉛直距離が750mmに設定され、洗面ボウル2から溢れる水の溢れ面として設定される。
【0028】
図3に示すように、前方壁24は、側方壁28よりも高さが低くなっており、前方壁24には、正面視において、左側の側方壁28と右側の側方壁28との間に亘って延びる凹部30が形成されている。凹部30の鉛直距離(洗面ボウル2の上端から前方壁24の上面24bまでの鉛直距離)H1は、洗面ボウル2の上端からカウンター8のエプロン部36の下端36aまでの鉛直距離H2の約半分に設定されている。具体的に、凹部30の鉛直距離H1は、40mm~65mm、好ましくは48mmに設定され、洗面ボウル2の上端からカウンター8のエプロン部36の下端36aまでの鉛直距離H2は、110mm~125mm、好ましくは118mmに設定されている。凹部30の左右方向の水平距離は、前方壁24の左右方向の水平距離と略同一に設定されている。これにより、車いす使用者が凹部30を通して洗面ボウル2内に手を進入させ易くなっている。
また、好ましくは凹部30の上面24bについて、床面FLからの高さが、カウンター8の洗面ボウル2が固定される面の床面FLからの高さよりも低い位置になるように設定される。つまり、溢れ面の高さを変更することなく、カウンター高さを低くすることができる。これにより、車いす使用者が前傾姿勢を維持することが困難な場合でも、カウンター8の洗面ボウル2の側方に胴部を預けながら手洗いなどをすることができ、使い勝手を向上させることができるようになっている。
【0029】
図5に示すように、後方壁26及び側方壁28は、略同一高さで形成されている。左側の側方壁28又は右側の側方壁28は、左方又は右方に向かって水平に延びるリム部28aをそれぞれ備えている。洗面ボウル2は、側方壁28のリム部28aがカウンター8の上面に当接して支持されている。
【0030】
図6に示すように、後方壁26は、底部12の後端から上方に向かって鉛直に延びる下部26aと、この下部26aの上端から後方に向かって水平に延びる略平坦な棚部26bと、この棚部26bの後端から上方に向かって鉛直に延びる上部26cと、を備えている。後方壁26の下部26aには、正面視において、右側上方に偏心してオーバーフロー孔19が配置されている(図5を参照)。棚部26bには、中央に水栓装置4の取付孔26dが配置され、左側に石鹸水を吐出する石鹸供給栓(図示せず)の取付孔26eが配置されている。
【0031】
図4に示すように、前方壁24のリム部24aの前後方向の幅W1は、側方壁28のリム部28aの左右方向の幅W2よりも大きくなっている。これにより、車いす使用者は、手洗いなどをする際にリム部24aの上面24bに腕を置き易くなっている。
【0032】
図5に示すように、洗面ボウル2の排水部18は、排水口16から下方に向かって排水口と同軸上に延びている。排水部18の内部には、目皿やヘアキャッチャーなどの排水栓32が取り付けられている。
【0033】
図2に示すように、オーバーフロー流路20は、洗面ボウル2の裏面に配置され、オーバーフロー流路20は、一端がオーバーフロー孔19に接続され、他端が排水部18に接続されている。オーバーフロー流路20は、オーバーフロー孔19から左側前方に向かって斜めに延びて排水部18に接続している。
【0034】
図2に示すように、洗面ボウル2の裏面には、洗面ボウル2の強度を高めると共に洗面ボウル2の裏面を隠すための側壁22が設けられている。側壁22は、互いに離間した状態で洗面ボウル2の裏面の左右両端に設けられ、下方に向かって鉛直に延びている。側壁22の前方側には、所定の曲率半径で湾曲するアール部22aが形成されている。このアール部22aが形成されることによって、側壁22の角部分が無くなり、側壁22が正面から目立たないようになっている。
【0035】
水栓装置4は、洗面ボウル2の取付孔26dに取り付けられ、使用者の操作によって水や温水が吐水口4aから洗面ボウル2へ吐水される。吐水口4aは、その開口が洗面ボウル2の前方側に向かって指向している。
【0036】
排水管6は、金属製、又は、樹脂製のパイプであり、封水をためるためのU字状のトラップ部を備えている。排水管6は、一端が洗面ボウル2の排水部18の下端に取り付けられ、他端が壁面WL内の配管(図示せず)に接続されている。排水管6は、洗面ユニット1の下方の空間の左右方向中央に設けられている。
【0037】
カウンター8は、棚状に形成された天板部34と、この天板部34の前端から下方に向かって鉛直に延びるエプロン部36と、天板部34の後端から上方に向かって鉛直に延びる立上部37と、を備えている。天板部34は、水平の平板状に形成され、固定部材10に支持されている(図2を参照)。エプロン部36は、鉛直の平板状に形成され、正面視において、洗面ボウル2の裏面を隠すことができるようになっている。立上部37は、飛び散った水が壁面WLに付着しないように壁面WLの一部を覆っている。
【0038】
天板部34の中央には、洗面ボウル2を挿入可能な洗面ボウルの取付開口34aが形成されている。取付開口34aは、上面視において、洗面ボウル2と略同じ大きさの略正方形状に形成されている。洗面ボウル2は、上方から取付開口34aに挿入されて天板部34の上面に支持される。
【0039】
図2に示すように、固定部材10は、例えば金属製のブラケットであり、互いに離間した状態で左右2箇所に設けられる。固定部材10は、側部10aがネジなどによって壁面WLに固定される。また、固定部材10の上部10bには、固定補助部材11を介してカウンター8の天板部34が固定される。固定補助部材11は、木製の平板であり、カウンター8の天板部34の下面に貼り付けられている。固定部材10の上部10bは、固定補助部材11に対してネジなどにより固定される。
【0040】
次に、図6及び図7により、本発明の一実施形態による洗面ユニット1について詳細に説明する。図7は、図6に示すA部分の拡大図である。
【0041】
図7に示すように、カウンター8のエプロン部36の下端36a(下端36aを通る水平線X2)は、上下方向において、洗面ボウル2のリム部24aの下面24d(下面24dを通る水平線X1)と、洗面ボウル2の底部12の下端12a(下端12aを通る水平線X3)との間の中央(中心軸C1)よりも上方に配置されている。具体的に、リム部24aの下面24dと、底部12の下端12aと間の鉛直距離H3は、100~90mm、好ましくは96mmに設定される。また、リム部24aの下面24dとエプロン部36の下端36aとの間の鉛直距離H4は、40~50mm、好ましくは43mmに設定される。
【0042】
エプロン部36の下端36aは、床面FLからの鉛直距離が680mmに設定され、従来の洗面ユニット(床面からエプロン部の下端までの鉛直距離が約595mm~650mm)と比較すると、エプロン部36の下端36aが高い位置に配置されている。また、エプロン部36の上端は、床面FLからの鉛直距離が785mmに設定され、従来の洗面ユニット(床面からエプロン部の上端までの鉛直距離が約800mm)と比較すると、エプロン部36の上端が低い位置に配置されている。これらにより、エプロン部36の鉛直距離は、従来の洗面ユニットと比較すると短くなっている。これにより、洗面ユニット1の下方の空間が広くなっている。
なお、洗面ボウル2のリム部24aの下面24dと、カウンター8のエプロン部36の上端との間には隙間が空いている。
【0043】
図7に示すように、前後方向の鉛直断面において、エプロン部36の下端36aよりも下方の空間であってエプロン部36の後側下端36cを通る鉛直線Yと洗面ボウル2の前方壁24及び底部12との間の空間S1の断面積は、エプロン部36の下端36aよりも上方の空間であってエプロン部36と前方壁24との間の空間S2の断面積よりも大きくなっている。具体的に、空間S1は、エプロン部36の後側下端36cを通る水平線X2、エプロン部36の後側下端36cを通る鉛直線Y、洗面ボウル2の底部12の下端12aを通る水平線X3、及び洗面ボウル2の前方壁24及び底部12によって囲まれた空間である(図7の斜線領域S1を参照)。空間S2は、カウンター8のエプロン部36、洗面ボウル2の前方壁24、及びエプロン部36の後側下端36cを通る水平線X2によって囲まれた空間である(図7の斜線領域S2を参照)。
【0044】
空間S1及び空間S2の断面は略同じ断面形状で前方壁24及びエプロン部36に沿って左右方向に延びている。左側の側方壁28と右側の側方壁28との間において、空間S1の体積は、空間S2の体積よりも大きくなっている。これにより、カウンター8のエプロン部36と洗面ボウル2の前方壁24との間のデッドスペースが小さくなり、洗面ユニット1の下方の空間が広くなっている。
【0045】
図6に示すように、前後方向の鉛直断面において、洗面ボウル2の前方壁24は、底部12から上方に屈曲する屈曲部38を備えている。前方壁24は、底部12に対して約45°の傾斜角度で上方へ屈曲している。屈曲部38は、上方に湾曲している前方壁24ののうちで曲率が最も大きくなっている部分である。また、エプロン部36の前側下端36bから屈曲部38までの前後方向の水平距離L1は、屈曲部38から排水口16の前端16aまでの前後方向の水平距離L2よりも大きくなっている。具体的に、エプロン部36の前側下端36bから屈曲部38までの前後方向の水平距離L1は、100mm~120mm、好ましくは110mmに設定され、屈曲部38から排水口16の前端16aまでの前後方向の水平距離L2は、80mm~100mm、好ましくは89mmに設定されている。これにより、屈曲部38が後方側に配置されているので、屈曲部38が目立たずに、洗面ユニット1の下方の空間が広くなっている。
【0046】
図6に示すように、前後方向の鉛直断面において、壁面WLから排水口16の前端16aまでの前後方向の水平距離L3は、エプロン部36の前側下端36bから排水口16の前端16aまでの前後方向の水平距離(L1+L2)よりも大きくなっている。具体的に、エプロン部36の前側下端36bから排水口16の前端16aまでの前後方向の水平距離(L1+L2)は、180mm~220mm、好ましくは199mmに設定され、壁面WLから排水口16の前端16aまでの前後方向の水平距離L3は、240mm~260mm、好ましくは251mmに設定されている。これにより、洗面ユニット1の排水口よりも後方側の空間が広くなっている。
【0047】
図6に示すように、洗面ボウル2は、水栓装置4の吐水口4aにおける中心軸を吐水方向に向かって延ばした延長線C2が、屈曲部38よりも前方側で前方壁24と交差するように構成されている。これにより、水栓装置4から吐水される水や温水は、洗面ボウル2の屈曲部38よりも前方側の前方壁24に向けて吐水される。
【0048】
次に、図8により、本発明の一実施形態による洗面ユニット1を車いす使用者が使用する様子について説明する。図8は、本発明の一実施形態による洗面ユニット1を車いす使用者が使用する様子を示す概略図である。
車いす使用者40が車いす42を前進させて洗面ユニット1の下方の空間に下肢を進入させると、車いす使用者40の胸40aあたりが洗面ボウル2へ近づいていく。さらに車いす42が前進すると車いす42の肘掛42aが洗面ボウル2の前面24cに突き当たるので、車いす使用者40は車いす42の前進を停止させる。この停止状態において、車いす使用者40の胸40aのあたりが洗面ボウル2の前面24cと対向する位置に配置され、膝40bあたりが洗面ボウル2の屈曲部38と対向する位置に配置されている。また、車いす使用者40が脚を伸ばしても爪先40cが壁面WLに当たらない位置に配置されている。さらに、排水口16は、洗面ボウル2の底部12における後方側に配置されているため、車いす使用者40の膝40bあたりが排水部18に当たることも抑制することができる。これにより、車いす使用者40が洗面ボウル2へ近づいて使用することができ、使用者の使い勝手を向上させることができる。
【0049】
以下、上述した本発明の一実施形態による洗面ユニット1の作用効果を説明する。
先ず、本発明の一実施形態による洗面ユニット1においては、カウンター8のエプロン部36の下端36a(X2)は、洗面ボウル2の前方壁24のリム部24aの下面24d(X1)と、洗面ボウル2の底部12の下端12a(X3)との間の中央(中心軸C1)よりも上方に配置されている。その結果、エプロン部36によって洗面ボウル2の裏面を隠しながら洗面ユニット1の下方に空間を確保することができる。よって、洗面ユニット1の見栄えを向上させると共に、車いす使用者が近づいて使用することができ、車いす使用者の使い勝手を向上させることができる。
【0050】
また、本発明の一実施形態による洗面ユニット1においては、洗面ボウル2の前方壁24は、底部12から上方に屈曲する屈曲部38を有し、エプロン部36の前側下端36bから屈曲部38までの水平距離L1は、屈曲部38から排水口16の前端16aまでの水平距離L2よりも大きくなっている。これにより、屈曲部38が前方壁の後方側に配置されているので、屈曲部38が正面から目立たないようにすることができ、さらに洗面ユニット1の下方の空間を広くすることができる。その結果、見栄えを向上させることができ、車いす使用者が洗面ユニット1に近づいて使用し易くなる。
【0051】
本発明の一実施形態による洗面ユニット1においては、前後方向の鉛直断面において、エプロン部36の下端36aよりも下方の空間S1であってエプロン部36の後側下端36cを通る鉛直線Yと前方壁24及び底部12との間の空間S1の断面積は、エプロン部36の下端36aよりも上方の空間S2であってエプロン部36と前方壁24との間の空間S2の断面積よりも大きくなっている。これにより、エプロン部36と前方壁24との間のデッドスペースを小さくして洗面ユニット1の下方の空間を広くすることができ、車いす使用者が洗面ユニット1に近づいて使用し易くなる。
【0052】
また、本発明の一実施形態による洗面ユニット1においては、洗面ユニット1は壁面WLに取り付けられ、壁面WLから排水口16の前端16aまでの水平距離L3は、エプロン部36の前側下端36bから排水口16の前端16aまでの水平距離(L1+L2)よりも大きくなっている。これにより、排水口16よりも後方側の空間を広くすることができ、車いす使用者が脚を伸ばした時に爪先が壁面WLに衝突するのを防止することができる。
【0053】
本発明の一実施形態による洗面ユニット1においては、洗面ボウル2は、水栓装置4の吐水口4aにおける中心軸を吐水方向に向かって延ばした延長線C2が、屈曲部38よりも前方側で前方壁24と交差するように構成されている。これにより、屈曲部38よりも前方側の前方壁24に水が吐水されるので、車いす使用者は吐水されている水に手を近づけ易く、手洗いなどがし易くなる。
【0054】
また、本発明の一実施形態による洗面ユニット1においては、洗面ボウル2の前方壁24には、正面視において、左側の側方壁28と右側の側方壁28との間に亘って延びる凹部30が形成されている。これにより、前方壁24に凹部30が形成されているので、車いす使用者は洗面ボウル2内に手を進入させ易く、手洗いなどがし易くなる。
【0055】
本発明の一実施形態による洗面ユニット1においては、前方壁24のリム部24aの前後方向の幅W1は、側方壁28の上縁を形成するリム部28aの左右方向の幅W2よりも大きくなっている。これにより、前方壁24のリム部24aの前後方向の幅W1が大きくなっているので、車いす使用者はリム部24aに腕を置くことができ、安定して手洗いなどがし易くなる。
【0056】
また、本発明の一実施形態による洗面ユニット1においては、洗面ボウル2は、偏平の略直方体状に形成されている。これにより、従来の半球状に形成された洗面ボウル2と比較して、洗面ボウル2の底部12を広くすることができ、洗面ボウル2の深さを深くせずに水の飛び散りを防止することができる。これにより、洗面ユニット1の下方の空間を広くすることができる。
【0057】
本発明の一実施形態による洗面ユニット1においては、洗面ボウル2の裏面には、左右両端から下方に向かって延びる側壁22が設けられ、側壁22の前方側には、所定の曲率半径で湾曲するアール部22aが形成されている。これにより、側壁22が正面から目立たないようにすることができ、さらに洗面ユニット1の下方の空間を広くすることができる。
【0058】
本発明の上述した実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 :洗面ユニット
2 :洗面ボウル
4 :水栓装置
4a :吐水口
8 :カウンター
12 :底部
12a :下端
14 :立壁
16 :排水口
16a :前端
22 :側壁
22a :アール部
24 :前方壁
24a :リム部
24b :上面
24c :前面
24d :下面
24e :下端
26 :後方壁
28 :側方壁
28a :リム部
30 :凹部
34 :天板部
36 :エプロン部
36a :下端
36b :前側下端
36c :後側下端
38 :屈曲部
C1 :中心軸
C2 :延長線
S1 :空間
S2 :空間
W1 :幅
W2 :幅
WL :壁面
Y :鉛直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8