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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115362
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】バッテリユニット
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20240819BHJP
   G01B 7/16 20060101ALI20240819BHJP
   H01M 50/505 20210101ALI20240819BHJP
   H01M 50/503 20210101ALI20240819BHJP
   H01M 50/55 20210101ALI20240819BHJP
   H01M 50/516 20210101ALI20240819BHJP
   H01M 50/574 20210101ALI20240819BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240819BHJP
   H01M 50/51 20210101ALI20240819BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240819BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
H01M10/48 Z
G01B7/16
H01M50/505
H01M50/503
H01M50/55 101
H01M50/516
H01M50/574
H01M10/48 301
H01M50/204 401Z
H01M50/51
H02J7/00 Y
H02H7/18
H01M50/204 401D
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021019
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】相澤 祐汰
(72)【発明者】
【氏名】小峰 理枝子
(72)【発明者】
【氏名】北園 正樹
(72)【発明者】
【氏名】石原 育
(72)【発明者】
【氏名】植弘 量子
【テーマコード(参考)】
2F063
5G053
5G503
5H030
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063BA30
2F063DA02
2F063DA05
2F063EC00
5G053AA16
5G053BA05
5G053CA01
5G053FA05
5G053FA06
5G503BA02
5G503BB02
5G503CB09
5G503EA08
5G503FA06
5H030AA06
5H030FF31
5H030FF51
5H040AA06
5H043AA19
5H043FA04
5H043GA01
5H043HA13F
5H043JA02F
5H043JA04F
(57)【要約】
【課題】複数のバッテリセルを有するバッテリユニットにおいて、バッテリセルの膨張等を高感度に検出する。
【解決手段】本バッテリユニットは、各々が正極及び負極を備えた複数のバッテリセルと、少なくも1つの前記バッテリセルに接して設けられ、異なる前記バッテリセルの前記正極同士、前記負極同士、及び/又は前記正極と前記負極を電気的に接続し、各々の前記バッテリセルを並列及び/又は直列につなぐ導電板と、前記導電板に貼付されたひずみゲージと、を有し、前記ひずみゲージは、前記バッテリセルの膨張又は収縮により生じる前記導電板のひずみを検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が正極及び負極を備えた複数のバッテリセルと、
少なくも1つの前記バッテリセルに接して設けられ、異なる前記バッテリセルの前記正極同士、前記負極同士、及び/又は前記正極と前記負極を電気的に接続し、各々の前記バッテリセルを並列及び/又は直列につなぐ導電板と、
前記導電板に貼付されたひずみゲージと、を有し、
前記ひずみゲージは、前記バッテリセルの膨張又は収縮により生じる前記導電板のひずみを検出する、バッテリユニット。
【請求項2】
前記導電板を複数有し、
各々の前記導電板には、前記正極及び前記負極の突出方向に貫通する複数の孔又は切欠きが設けられ、
前記正極及び前記負極は、前記孔又は前記切欠きから露出するように配置され、
複数の前記導電板は、導電接合材を介して前記正極と接続される前記導電板と、導電接合材を介して前記負極と接続される前記導電板と、を含む、請求項1に記載のバッテリユニット。
【請求項3】
各々の前記導電板に複数のひずみゲージが貼付され、
各々の前記ひずみゲージの出力の変化の度合いから膨張又は収縮した前記バッテリセルが特定される、請求項2に記載のバッテリユニット。
【請求項4】
前記導電接合材は、金属製の細線である、請求項2又は3に記載のバッテリユニット。
【請求項5】
前記導電板は、異なる前記バッテリセルの前記正極と前記負極を電気的に接続し、各々の前記バッテリセルを直列につなぐバスバーである、請求項1に記載のバッテリユニット。
【請求項6】
前記バスバーを複数個有し、
前記ひずみゲージは、各々の前記バスバーに貼付される、請求項5に記載のバッテリユニット。
【請求項7】
前記導電板は、ロバーバル型である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のバッテリユニット。
【請求項8】
並列に接続された複数のバッテリ群と、異常判定部と、回路遮断部と、を有し、
各々の前記バッテリ群は、
複数の前記バッテリセルと、
少なくも1つの前記バッテリセルに接して設けられ、異なる前記バッテリセルの前記正極同士、前記負極同士、及び/又は前記正極と前記負極を電気的に接続し、各々の前記バッテリセルを並列及び/又は直列につなぐ前記導電板と、
前記導電板に貼付された前記ひずみゲージと、を有し、
前記異常判定部は、各々の前記バッテリ群の前記ひずみゲージの出力に基づいて、各々の前記バッテリ群の異常を判定し、
前記回路遮断部は、前記異常判定部の判定結果に基づいて、異常と判定された前記バッテリ群を遮断する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のバッテリユニット。
【請求項9】
各々が正極及び負極を備えた複数のバッテリセルと、
少なくも1つの前記バッテリセルに接して設けられ、異なる前記バッテリセルの前記正極同士、前記負極同士、及び/又は前記正極と前記負極を電気的に接続し、各々の前記バッテリセルを並列及び/又は直列につなぐ導電板と、
前記導電板に貼付された検出部と、を有し、
前記検出部は、前記バッテリセルの膨張又は収縮により生じる前記導電板の変形及び/又は前記導電板にかかる圧力を検出する、バッテリユニット。
【請求項10】
前記導電板を複数有し、
各々の前記導電板には、前記正極及び前記負極の突出方向に貫通する複数の孔又は切欠きが設けられ、
前記正極及び前記負極は、前記孔又は前記切欠きから露出するように配置され、
複数の前記導電板は、導電接合材を介して前記正極と接続される前記導電板と、導電接合材を介して前記負極と接続される前記導電板と、を含む、請求項9に記載のバッテリユニット。
【請求項11】
各々の前記導電板に複数の検出部が貼付され、
各々の前記検出部の出力の変化の度合いから膨張又は収縮した前記バッテリセルが特定される、請求項10に記載のバッテリユニット。
【請求項12】
前記導電接合材は、金属製の細線である、請求項10又は11に記載のバッテリユニット。
【請求項13】
前記導電板は、異なる前記バッテリセルの前記正極と前記負極を電気的に接続し、各々の前記バッテリセルを直列につなぐバスバーである、請求項9に記載のバッテリユニット。
【請求項14】
前記バスバーを複数個有し、
前記検出部は、各々の前記バスバーに貼付される、請求項13に記載のバッテリユニット。
【請求項15】
前記導電板は、ロバーバル型である、請求項9乃至14のいずれか一項に記載のバッテリユニット。
【請求項16】
並列に接続された複数のバッテリ群と、異常判定部と、回路遮断部と、を有し、
各々の前記バッテリ群は、
複数の前記バッテリセルと、
少なくも1つの前記バッテリセルに接して設けられ、異なる前記バッテリセルの前記正極同士、前記負極同士、及び/又は前記正極と前記負極を電気的に接続し、各々の前記バッテリセルを並列及び/又は直列につなぐ前記導電板と、
前記導電板に貼付された前記検出部と、を有し、
前記異常判定部は、各々の前記バッテリ群の前記検出部の出力に基づいて、各々の前記バッテリ群の異常を判定し、
前記回路遮断部は、前記異常判定部の判定結果に基づいて、異常と判定された前記バッテリ群を遮断する、請求項9乃至15のいずれか一項に記載のバッテリユニット。
【請求項17】
前記検出部は、前記導電板の変形によって生じる磁気変化を検出する検出素子を有する、請求項9乃至16の何れか一項に記載のバッテリユニット。
【請求項18】
前記検出素子は磁性体を含み、
前記検出素子は、前記導電板の変形によって前記磁性体に圧力が加わったときの前記磁性体の磁化の強さの変化を検出する検出素子である、請求項17に記載のバッテリユニット。
【請求項19】
前記検出素子は、磁性膜で絶縁膜を挟んだ磁気トンネル接合の構造を含んでおり、
前記検出素子は、前記導電板の変形によって前記構造で発生する磁気変化を検出する検出素子である、請求項17に記載のバッテリユニット。
【請求項20】
前記検出部は半導体式のひずみゲージである、請求項9乃至16の何れか一項に記載のバッテリユニット。
【請求項21】
前記検出部は静電容量式の圧力センサである、請求項9乃至16の何れか一項に記載のバッテリユニット。
【請求項22】
前記検出部は光ファイバ式のひずみゲージである、請求項9乃至16の何れか一項に記載のバッテリユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器等に用いられるバッテリユニットにおいて、様々な安全対策が検討されている。例えば、二次電池のガス開放口にガス開放弁に連動する押圧部材を備え、基板の一方の面は、ひずみ検出配線パターンと、二次電池を接続する基板端子を備える電池モジュールが挙げられる。
【0003】
この電池モジュールでは、押圧部材がひずみ検出配線パターンと対向するように基板の他方の面に当接しているため、二次電池のケースの内圧が高まると、押圧部材がひずみ検出配線パターンを変形させ電気抵抗値が変化する。この変化を検知した制御手段が基板端子間に設けられたスイッチ素子に信号を送り、電池モジュールの直列構造を遮断する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-175150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、複数のバッテリセルを有するバッテリユニットにおいて、バッテリセルの膨張等を高感度に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本バッテリユニットは、各々が正極及び負極を備えた複数のバッテリセルと、少なくも1つの前記バッテリセルに接して設けられ、異なる前記バッテリセルの前記正極同士、前記負極同士、及び/又は前記正極と前記負極を電気的に接続し、各々の前記バッテリセルを並列及び/又は直列につなぐ導電板と、前記導電板に貼付されたひずみゲージと、を有し、前記ひずみゲージは、前記バッテリセルの膨張又は収縮により生じる前記導電板のひずみを検出する。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、複数のバッテリセルを有するバッテリユニットにおいて、バッテリセルの膨張等を高感度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るバッテリユニットを例示する平面図である。
図2】第1実施形態に係るバッテリユニットを例示する断面図である。
図3図1のバッテリユニットから導電板を取り除いた状態の平面図である。
図4】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
図5】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その1)である。
図6】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その2)である。
図7】第1実施形態の変形例1に係るバッテリユニットを例示する平面図である。
図8】第1実施形態の変形例2に係るバッテリユニットを例示する平面図である。
図9】第1実施形態の変形例3に係るバッテリユニットを例示する平面図である。
図10】第1実施形態の変形例4に係るバッテリユニットを例示する斜視図である。
図11】第1実施形態の変形例5に係るバッテリユニットの導電板及びひずみゲージを例示する平面図である。
図12】第1実施形態の変形例5に係るバッテリユニットの導電板及びひずみゲージを例示する側面図である。
図13】第2実施形態に係るバッテリユニットを例示する模式図である。
図14】異常判定部の一例について説明する図である。
図15】制御部のハードウェアブロック図の一例である。
図16】第3実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の一例を示す平面図および断面図である。
図17】第4実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の一例を示す斜視図、平面図、および断面図である。
図18】第4実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の他の一例を示す斜視図、平面図、および断面図である。
図19】第4実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の、更に他の一例を示す斜視図、平面図、および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係るバッテリユニットを例示する平面図である。図2は、第1実施形態に係るバッテリユニットを例示する断面図であり、図1のA-A線に沿う断面を示している。図3は、図1のバッテリユニットから導電板を取り除いた状態の平面図である。なお、ここでは、バッテリセル10の端面10aに垂直な方向からバッテリユニット1を見た場合の図を平面図としている。
【0011】
図1図3を参照すると、バッテリユニット1は、複数のバッテリセル10と、導電板60a及び60bと、ひずみゲージ100とを有している。バッテリユニット1は、導電接合材70を有してもよい。また、本発明に係るバッテリユニットは、少なくとも1つの導電板を有していればよい。
【0012】
バッテリセル10は、例えば、リチウムイオン電池である。バッテリユニット1は、例えば、電気自動車の電力供給に使用できる。バッテリユニット1は、パーソナルコンピュータやスマートフォン等の各種電子機器や携帯端末に使用してもよい。
【0013】
バッテリセル10は、例えば、四角柱状であり、端面10aと、端面10bと、外周面とを有している。端面10aと端面10bとは、例えば、略同一面積の長方形である。長方形の四隅が円弧形状や面取り形状であってもよい。端面10aと端面10bとは、例えば、平行である。外周面は、端面10aの外縁と端面10bの外縁とを接続する。
【0014】
バッテリセル10は、各々が正極11及び負極12を備えている。具体的には、バッテリセル10の端面10aには、互いに絶縁された正極11及び負極12が、端面10aから突出するように設けられている。なお、バッテリセル10の形状は、四角柱状に限らず、円柱状であってもよい。あるいは、バッテリセル10の形状は、三角柱状等の他の多角柱状であってもよい。
【0015】
導電板は、少なくも1つのバッテリセルに接して設けられる。ここで、導電板とバッテリセルとが接するとは、導電板とバッテリセルが直接接する場合と、他の部材を介して間接的に接する場合の両方を含む。要は、バッテリセルの発する熱が導電板に伝わるような形態であればよい。
【0016】
本実施形態では、導電板60a及び60bは3つのバッテリセル10と接している。具体的には、導電板60a及び60bは、3つのバッテリセル10の端面10aと接している。なお、導電板60a及び60bは、各々の端面10aと絶縁されている。導電板60a及び60bは、例えば、各々の端面10aに設けられて絶縁材を介して、端面10aと間接的に接している。
【0017】
導電板60a及び60bは、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の導電率の高い金属から形成することができる。
【0018】
導電板60aは、異なるバッテリセル10の正極11同士を電気的に接続している。また、導電板60bは、異なるバッテリセル10の負極12同士を電気的に接続している。具体的には、導電板60a及び60bには、正極11及び負極12の突出方向に貫通する複数の孔60xが設けられている。そして、正極11及び負極12は、孔60xから露出するように配置されている。そして、導電板60aは、導電接合材70を介して正極11と接続されている。また、導電板60bは、導電接合材70を介して負極12と接続されている。これにより、各々のバッテリセル10は並列につながれる。
【0019】
導電接合材70は、例えば、金線や銅線等の金属製の細線である。細線は、例えば、ボンディングワイヤであってもよい。この場合、導電接合材70は、正極11と導電板60a、及び負極12と導電板60bと、ワイヤボンディングの手法により電気的及び機械的に接続することができる。
【0020】
導電接合材70は、導電性を有する部材であればよく、細線には限らず、リボン線や薄板等であってもよい。導電接合材70は、正極11と導電板60a、及び負極12と導電板60bと、導電性接着剤やはんだ等により接続されてもよい。
【0021】
ひずみゲージ100は、1つの導電板に少なくとも1つ貼付される。ひずみゲージ100は、本開示において検出部の一例である。本実施形態では、導電板60aに1つのひずみゲージ100が貼付され、かつ導電板60bに1つのひずみゲージ100が貼付されている。
【0022】
導電板60aに貼付されたひずみゲージ100は、正極11が導電板60aと接続されたバッテリセル10の膨張又は収縮により生じる導電板60aのひずみを検出するセンサである。導電板60bに貼付されたひずみゲージ100は、負極12が導電板60bと接続されたバッテリセル10の膨張又は収縮により生じる導電板60bのひずみを検出するセンサである。ひずみゲージ100の詳細については後述する。
【0023】
なお、本実施形態では、導電板60aに貼付されたひずみゲージ100と、導電板60bに貼付されたひずみゲージ100は、同一のバッテリセル10(すなわち並置された3つのバッテリセル10)を検出対象としている。
【0024】
なお、図1及び図2では、バッテリユニット1が3つのバッテリセル10を有する例を示したが、バッテリユニット1は2つのバッテリセル10を有してもよいし、4つ以上のバッテリセルを有してもよい。
【0025】
このように、バッテリユニット1は、バッテリセル10に接して設けられる導電板60a及び60bを有し、導電板60a及び60bには各々ひずみゲージ100が設けられている。これにより、バッテリセル10の膨張等を高感度に検出することができる。
【0026】
バッテリユニット1において、何らかの原因でバッテリセル10が膨張や収縮をすると、バッテリセル10と接している導電板60a及び/又は60bに外力が加わり微小歪が発生する。この微小歪みを導電板60a及び60bに貼付されたひずみゲージ100により検出することにより、複数のバッテリセル10のいずれか1以上の膨張や収縮の情報を得ることができる。
【0027】
すなわち、複数のバッテリセル10のいずれか1以上が膨張すると、導電板60a及び/又は60bに貼付されたひずみゲージ100の抵抗値が増加する。この抵抗値を監視することにより、複数のバッテリセル10のいずれか1以上の膨張の情報を得ることができる。また、複数のバッテリセル10のいずれか1以上が収縮すると、導電板60a及び/又は60bに貼付されたひずみゲージ100の抵抗値が減少する。この抵抗値を監視することにより、複数のバッテリセル10のいずれか1以上の収縮の情報を得ることができる。また、各々のひずみゲージ100の出力の抵抗値の変化の度合いにより、膨張や収縮の程度を検出することができる。
【0028】
[ひずみゲージ100]
図4は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。図5は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その1)であり、図4のB-B線に沿う断面を示している。
【0029】
図4及び図5を参照すると、ひずみゲージ100は、基材110と、抵抗体130と、配線140と、電極150と、カバー層160とを有している。すなわち、ひずみゲージ100は、検出素子として抵抗体130を有している。カバー層160は、必要に応じて設けることができる。なお、図4及び図5では、便宜上、カバー層160の外縁のみを破線で示している。まずは、ひずみゲージ100を構成する各部について詳細に説明する。
【0030】
なお、図4及び図5では、便宜上、ひずみゲージ100において、基材110の抵抗体130が設けられている側を「上側」と称し、抵抗体130が設けられていない側を「下側」と称する。又、各部位の上側に位置する面を「上面」と称し、各部位の下側に位置する面を「下面」と称する。ただし、ひずみゲージ100は天地逆の状態で用いることもできる。又、ひずみゲージ100は任意の角度で配置することもできる。又、平面視とは、基材110の上面110aに対する上側から下側への法線方向で対象物を視ることを指すものとする。そして、平面形状とは、前記法線方向で対象物を視たときの、対象物の形状を指すものとする。ひずみゲージ100は、基材110の下面110bが導電板に貼り付けられる。
【0031】
基材110は、抵抗体130等を形成するためのベース層となる部材である。基材110は可撓性を有する。基材110の厚さは特に限定されず、ひずみゲージ100の使用目的等に応じて適宜決定されてよい。例えば、基材110の厚さは5μm~500μm程度であってよい。なお、導電板から受感部へのひずみの伝達性、及び、環境変化に対する寸法安定性の観点から考えると、基材110の厚さは5μm~200μmの範囲内であることが好ましい。また、絶縁性の観点から考えると、基材110の厚さは10μm以上であることが好ましい。
【0032】
基材110は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、LCP(液晶ポリマー)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成される。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、かつ可撓性を有する部材を指す。
【0033】
基材110が絶縁樹脂フィルムから形成される場合、当該絶縁樹脂フィルムには、フィラーや不純物等が含まれていてもよい。例えば、基材110は、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成されてもよい。
【0034】
基材110の樹脂以外の材料としては、例えば、SiO、ZrO(YSZも含む)、Si、Si、Al(サファイヤも含む)、ZnO、ペロブスカイト系セラミックス(CaTiO、BaTiO)等の結晶性材料が挙げられる。又、前述の結晶性材料以外に非晶質のガラス等を基材110の材料としてもよい。又、基材110の材料として、アルミニウム、アルミニウム合金(ジュラルミン)、チタン等の金属を用いてもよい。金属製の基材110を用いる場合、上面110aを被覆するように絶縁膜が設けられる。
【0035】
抵抗体130は、基材110の上側に所定のパターンで形成された薄膜である。ひずみゲージ100において、抵抗体130は、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。抵抗体130は、基材110の上面110aに直接形成されてもよいし、基材110の上面110aに他の層を介して形成されてもよい。なお、図4では、便宜上、抵抗体130を密度の高い梨地模様で示している。
【0036】
抵抗体130は、複数の細長状部が長手方向を同一方向(図4の例ではB-B線の方向)に向けて所定間隔で配置され、隣接する細長状部の端部が互い違いに連結されて、全体としてジグザグに折り返す構造である。複数の細長状部の長手方向がグリッド方向となり、グリッド方向と垂直な方向がグリッド幅方向(図4の例ではB-B線と垂直な方向)となる。
【0037】
グリッド幅方向の最も外側に位置する2つの細長状部の長手方向の一端部は、グリッド幅方向に屈曲し、抵抗体130のグリッド幅方向の各々の終端130e及び130eを形成する。抵抗体130のグリッド幅方向の各々の終端130e及び130eは、配線140を介して、電極150と電気的に接続されている。言い換えれば、配線140は、抵抗体130のグリッド幅方向の各々の終端130e及び130eと各々の電極150とを電気的に接続している。
【0038】
抵抗体130は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成することができる。すなわち、抵抗体130は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成することができる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0039】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、及びCrN等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでいてもよい。
【0040】
抵抗体130の厚さは特に限定されず、ひずみゲージ100の使用目的等に応じて適宜決定されてよい。例えば、抵抗体130の厚さは0.05μm~2μm程度であってよい。特に、抵抗体130の厚さが0.1μm以上である場合、抵抗体130を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する。また、抵抗体130の厚さが1μm以下である場合、抵抗体130を構成する膜の内部応力に起因する、(i)膜のクラック及び(ii)膜の基材110からの反りが、低減される。
【0041】
横感度を生じ難くすることと、断線対策とを考慮すると、抵抗体130の幅は10μm以上100μm以下であることが好ましい。更に言えば、抵抗体130の幅は10μm以上70μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であるとより好ましい。
【0042】
例えば、抵抗体130がCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα-Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、ゲージ特性の安定性を向上させることができる。又例えば、抵抗体130がCr混相膜である場合、抵抗体130がα-Crを主成分とすることで、ひずみゲージ100のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。ここで、「主成分」とは、抵抗体を構成する全物質の50重量%以上を占める成分のことを意味する。ゲージ特性を向上させるという観点から考えると、抵抗体130はα-Crを80重量%以上含むことが好ましい。更に言えば、同観点から考えると、抵抗体130はα-Crを90重量%以上含むことがより好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0043】
又、抵抗体130がCr混相膜である場合、Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNは20重量%以下であることが好ましい。Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNが20重量%以下であることで、ひずみゲージ100のゲージ率の低下を抑制することができる。
【0044】
又、Cr混相膜におけるCrNとCrNとの比率は、CrNとCrNの重量の合計に対し、CrNの割合が80重量%以上90重量%未満となるようにすることが好ましい。更に言えば、同比率は、CrNとCrNの重量の合計に対し、CrNの割合が90重量%以上95重量%未満となるようにすることがより好ましい。CrNは半導体的な性質を有する。そのため、前述のCrNの割合を90重量%以上95重量%未満とすることで、TCRの低下(負のTCR)が一層顕著となる。更に、前述のCrNの割合を90重量%以上95重量%未満とすることで抵抗体130のセラミックス化を低減し、抵抗体130の脆性破壊が起こりにくくすることができる。
【0045】
一方で、CrNは化学的に安定であるという利点を有する。Cr混相膜にCrNをより多く含むことで、不安定なNが発生する可能性を低減することができるため、安定なひずみゲージを得ることができる。ここで「不安定なN」とは、Cr混相膜の膜中に存在し得る、微量のNもしくは原子状のNのことを意味する。これらの不安定なNは、外的環境(例えば高温環境)によっては膜外へ抜け出ることがある。不安定なNが膜外へ抜け出るときに、Cr混相膜の膜応力が変化し得る。
【0046】
ひずみゲージ100において、抵抗体130の材料としてCr混相膜を用いた場合、高感度化かつ、小型化を実現することができる。例えば、従来のひずみゲージの出力が0.04mV/2V程度であったのに対して、抵抗体130の材料としてCr混相膜を用いた場合は0.3mV/2V以上の出力を得ることができる。また、従来のひずみゲージの大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)が3mm×3mm程度であったのに対して、抵抗体130の材料としてCr混相膜を用いた場合の大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)は0.3mm×0.3mm程度に小型化することができる。
【0047】
配線140は、基材110上に設けられている。配線140は、抵抗体130及び電極150と電気的に接続されている。配線140は、直線状には限定されず、任意のパターンとすることができる。また、配線140は、任意の幅及び任意の長さとすることができる。なお、図4では、便宜上、配線140を抵抗体130よりも密度の低い梨地模様で示している。
【0048】
電極150は、基材110上に設けられている。電極150は、配線140を介して抵抗体130と電気的に接続されている。電極150は、平面視において、配線140よりも拡幅して略矩形状に形成されている。電極150は、ひずみにより生じる抵抗体130の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極である。電極150の上面に、銅等の抵抗の低い金属層、または、金等のはんだ付け性が良好な金属層を積層してもよい。抵抗体130と配線140と電極150とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成することができる。なお、図4では、便宜上、電極150を配線140と同じ密度の梨地模様で示している。
【0049】
カバー層160(保護層)は、必要に応じ、基材110の上面110aに、抵抗体130及び配線140を被覆し電極150を露出するように設けられる。カバー層160の材料としては、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂が挙げられる。なお、カバー層160は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層160の厚さは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、カバー層160の厚さは2μm~30μm程度とすることができる。カバー層160を設けることで、抵抗体130に機械的な損傷等が生じることを抑制することができる。又、カバー層160を設けることで、抵抗体130を湿気等から保護することができる。
【0050】
[ひずみゲージ100の製造方法]
本実施形態に係るひずみゲージ100では、基材110上に、抵抗体130と、配線140と、電極150と、カバー層160とが形成される。なお、基材110とこれらの部材の層の間に別の層(後述する機能層等)が形成されてもよい。
【0051】
以下、ひずみゲージ100の製造方法について説明する。ひずみゲージ100を製造するためには、まず、基材110を準備し、基材110の上面110aに金属層(便宜上、金属層Aとする)を形成する。金属層Aは、最終的にパターニングされて抵抗体130、配線140、及び電極150となる層である。従って、金属層Aの材料や厚さは、前述の抵抗体130、配線140、及び電極150の材料や厚さと同様である。
【0052】
金属層Aは、例えば、金属層Aを形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜することができる。金属層Aは、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法、蒸着法、アークイオンプレーティング法、またはパルスレーザー堆積法等を用いて成膜されてもよい。基材110の上面110aに金属層Aを成膜後、周知のフォトリソグラフィ法により、金属層Aを図4の抵抗体130、配線140、及び電極150と同様の平面形状にパターニングする。
【0053】
なお、基材110の上面110aに下地層を形成してから金属層Aを形成してもよい。例えば、基材110の上面110aに、所定の膜厚の機能層をコンベンショナルスパッタ法により真空成膜してもよい。このように下地層を設けることによって、ひずみゲージ100のゲージ特性を安定化させることができる。
【0054】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である金属層A(抵抗体130)の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層は、更に、基材110に含まれる酸素または水分による金属層Aの酸化を防止する機能、および/または、基材110と金属層Aとの密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0055】
基材110を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むことがあり、また、Crは自己酸化膜を形成することがある。そのため、特に金属層AがCrを含む場合、金属層Aの酸化を防止する機能を有する機能層を成膜することが好ましい。
【0056】
このように、金属層Aの下層に機能層を設けることにより、金属層Aの結晶成長を促進可能となり、安定な結晶相からなる金属層Aを作製することができる。その結果、ひずみゲージ100において、ゲージ特性の安定性が向上する。又、機能層を構成する材料が金属層Aに拡散することにより、ひずみゲージ100において、ゲージ特性が向上する。
【0057】
機能層の材料としては、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0058】
図6は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その2)である。図6は、抵抗体130、配線140、及び電極150の下地層として機能層120を設けた場合のひずみゲージ100の断面形状を示している。
【0059】
機能層120の平面形状は、例えば抵抗体130、配線140、及び電極150の平面形状と略同一にパターニングされてよい。しかしながら、機能層120と抵抗体130、配線140、及び電極150との平面形状は略同一でなくてもよい。例えば、機能層120が絶縁材料から形成される場合には、機能層120を抵抗体130、配線140、及び電極150の平面形状と異なる形状にパターニングしてもよい。この場合、機能層120は例えば抵抗体130、配線140、及び電極150が形成されている領域にベタ状に形
成されてもよい。或いは、機能層120は、基材110の上面全体にベタ状に形成されてもよい。
【0060】
抵抗体130、配線140、及び電極150を形成した後、必要に応じ、基材110の上面110aにカバー層160を形成する。カバー層160は抵抗体130及び配線140を被覆するが、電極150はカバー層160から露出していてよい。例えば、基材110の上面110aに、抵抗体130及び配線140を被覆し電極150を露出するように、半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートして、その後に当該絶縁樹脂フィルムを加熱して硬化させることにより、カバー層160を形成することができる。以上の工程により、ひずみゲージ100が完成する。
【0061】
〈第1実施形態の変形例〉
第1実施形態の変形例では、バッテリセル同士の接続、1つの導電板に貼付するひずみゲージの個数、導電板の形状等が異なるバッテリユニットの例を示す。なお、第1実施形態の変形例において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0062】
図7は、第1実施形態の変形例1に係るバッテリユニットを例示する平面図である。図7に示すように、バッテリユニット1Aは、6つのバッテリセル10を有する点、導電板60cが追加された点が、バッテリユニット1と相違する。導電板60a、60b、及び60bには、各々ひずみゲージ100が設けられている。
【0063】
バッテリユニット1Aにおいて、導電板60aは、バッテリユニット1Aの長手方向の一方側に並置された3つのバッテリセル10の正極11同士を電気的に接続している。また、導電板60bは、バッテリユニット1Aの長手方向の他方側に並置された3つのバッテリセル10の負極12同士を電気的に接続している。また、導電板60cは、バッテリユニット1Aの長手方向の一方側に並置された3つのバッテリセル10の負極12と、長手方向の他方側に並置された3つのバッテリセル10の正極11とを電気的に接続している。
【0064】
これにより、バッテリユニット1Aの長手方向の一方側に並置された3つのバッテリセル10は並列につながれる。また、バッテリユニット1Aの長手方向の他方側に並置された3つのバッテリセル10は並列につながれる。また、バッテリユニット1Aの長手方向の一方側に並置された3つのバッテリセル10と、長手方向の他方側に並置された3つのバッテリセル10は直列につながれる。
【0065】
このように、1つのバッテリユニット1Aに、並列に接続されたバッテリセル10と、直列に接続されたバッテリセル10が混在してもよい。この場合も、何らかの原因でバッテリセル10が膨張や収縮をすると、バッテリセル10と接している導電板60a、60b、及び/又は60cに外力が加わり微小歪が発生する。そのため、バッテリユニット1の場合と同様に、この微小歪みを導電板60a、60b、及び60cに貼付されたひずみゲージ100により検出することにより、複数のバッテリセル10のいずれか1以上の膨張や収縮の情報を得ることができる。
【0066】
図8は、第1実施形態の変形例2に係るバッテリユニットを例示する平面図である。図8に示すように、バッテリユニット1Bは、導電板60a及び60bに各々複数のひずみゲージ100が貼付された点が、バッテリユニット1と相違する。図8の例では、導電板60a及び60bに、各々ひずみゲージ100が3つ貼付されている。
【0067】
このように、各々の導電板に複数のひずみゲージ100が貼付されてもよい。この場合、各々の導電板において、膨張又は収縮したバッテリセル10と接する部分のひずみが大きくなるため、各々のひずみゲージ100の出力(抵抗値)の変化の度合いから膨張又は収縮したバッテリセル10を特定することができる。
【0068】
図9は、第1実施形態の変形例3に係るバッテリユニットを例示する平面図である。図9に示すように、バッテリユニット1Cは、導電板60a及び60bに、孔60xに代えて切欠き60yが設けられた点が、バッテリユニット1と相違する。
【0069】
このように、各々の導電板には、バッテリセル10の正極11及び負極12の突出方向に貫通する複数の切欠き60yが設けられてもよい。これにより、バッテリユニット1の場合と同様に、正極11及び負極12と導電板60a及び60bとを導電接合材70を介して接続することが可能となる。
【0070】
図10は、第1実施形態の変形例4に係るバッテリユニットを例示する斜視図である。図10に示すように、バッテリユニット1Dは、導電板としてバスバー80を用いている点が、バッテリユニット1と相違する。ここで、バスバーとは、大容量の電流を導電する導体を指す。
【0071】
バッテリユニット1Dにおいて、バスバー80は、異なるバッテリセル10の正極11と負極12を電気的に接続し、各々のバッテリセル10を直列につないでいる。図10の例では、6つのバッテリセル10が並置され、5つのバスバー80が隣接するバッテリセル10の正極11と負極12とを接続し、6つのバッテリセル10を直列につないでいる。ひずみゲージ100は、各々のバスバー80に貼付されている。
【0072】
バスバー80は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の導電率の高い金属から形成することができる。バスバー80と正極11及び負極12とは、例えば、溶接やねじ締結により接合することができる。バスバー80と正極11及び負極12とは、導電性接着剤やはんだ等により接合されてもよい。
【0073】
このように、複数のバッテリセル10をバスバー80で直列に接続し、バスバー80の各々にひずみゲージ100を貼付してもよい。これにより、バッテリセル10の膨張等を高感度に検出することができる。
【0074】
なお、バッテリユニット1Dは、2つのバッテリセル10と、1つのバスバー80と、1つのひずみゲージ100とを有する構成であってもよい。
【0075】
図11は、第1実施形態の変形例5に係るバッテリユニットの導電板及びひずみゲージを例示する平面図である。図12は、第1実施形態の変形例5に係るバッテリユニットの導電板及びひずみゲージを例示する側面図である。
【0076】
図11及び図12に示すように、導電板90は、略直方体状の金属ブロックに貫通孔91、溝92、及び溝93を設けたロバーバル型の起歪体である。導電板90は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の導電率の高い金属から形成することができる。
【0077】
貫通孔91は、導電板90の一方の側面から他方の側面まで貫通する。貫通孔91は、例えば、側面視で、互いに離隔して配置された2つの円形孔の対向する部分の一部が連通した眼鏡状に形成されている。
【0078】
溝92及び93は、導電板90の上下方向に、貫通孔91を挟んで互いに対向するように配置されている。溝92は導電板90の上面から貫通孔91側に窪んでおり、溝93は導電板90の下面から貫通孔91側に窪んでいる。
【0079】
貫通孔91と溝92及び93の各々とに挟まれた部分は、薄肉部94~97となる。薄肉部94~97は、外力によりひずみが発生しやすい起歪部である。溝92内の薄肉部94上及び薄肉部95上には、例えば、4つのひずみゲージ100が行列状に配置されている。各々のひずみゲージ100において、抵抗体のグリッド方向は、例えば、導電板90の長手方向を向いている。
【0080】
各々のひずみゲージ100は、例えば、接着層を介して、溝92内の薄肉部94上及び薄肉部95上に貼付されている。
【0081】
導電板90が外部から荷重を受けると、起歪部である薄肉部94~97に応力が発生し、ひずみが生じる。ひずみゲージ100は、薄肉部94~97のひずみにより生じる抵抗値の変化を検知する。例えば、4つのひずみゲージ100をフルブリッジ接続して抵抗値の変化を演算処理することで、外部から受けた荷重を算出できる。
【0082】
導電板90は、例えば、図10における各バスバー80の代わりに用いることができる。また、導電板90は、例えば、図1等における導電板60a及び60bの代わりに用いることができる。この場合、導電板60a及び60bの各々において、各々のバッテリセル10と重複する位置に薄肉部を設けることができる。
【0083】
このように、バッテリユニット1等において、ロバーバル型の導電板90を用いることにより、バッテリセル10の膨張等をさらに高感度に検出することができる。
【0084】
なお、図11では、導電板90に4つのひずみゲージ100を搭載する例を示したが、1つの基材上に4つの抵抗体が形成された1つのひずみゲージを搭載してもよい。その場合、ブリッジ接続に都合がよいように、基材上に設けた配線で各抵抗体を接続してもよい。
【0085】
また、導電板90に搭載するひずみゲージは2つでもよい。この場合、各々のひずみゲージをハーフブリッジ接続することができる。また、導電板90に搭載するひずみゲージは1つでもよい。
【0086】
〈第2実施形態〉
第2実施形態では、複数のバッテリ群を有するバッテリユニットの例を示す。なお、第2実施形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0087】
図13は、第2実施形態に係るバッテリユニットを例示する模式図である。
【0088】
図13に示すように、バッテリユニット2は、バッテリ群201及び202を有している。バッテリ群201及び202の各々の構成は、第1実施形態に係るバッテリユニット1と同様である。バッテリ群201及び202の各々は、より多くのバッテリセル10を有してもよい。
【0089】
バッテリ群201とバッテリ群202とは、配線203及び204を介して並列に接続されている。205及び206は、端子を示している。端子205がプラス側の端子、端子206がマイナス側の端子となる。
【0090】
バッテリユニット2は、さらに、異常時に回路を遮断する機構として、異常判定部300と、回路遮断部401と、回路遮断部402とを有してもよい。
【0091】
バッテリユニット2において、バッテリ群201の3つひずみゲージ100の出力は、異常判定部300に入力されている。同様に、バッテリ群202の3つひずみゲージ100の出力は、異常判定部300に入力されている。
【0092】
端子205とバッテリ群201との間の配線203に回路遮断部401が挿入されている。また、端子206とバッテリ群202との間の配線203に回路遮断部402が挿入されている。回路遮断部401及び402は、通常は導通状態であり、外部からの制御信号により遮断状態に切り替えることができる。回路遮断部401及び402は、例えば、外部から制御可能なスイッチである。具体的には、例えば、リレーのような機械的スイッチや、トランジスタ等を備えた電子式スイッチが挙げられる。
【0093】
異常判定部300は、各々のバッテリ群のひずみゲージ100の出力に基づいて、各々のバッテリ群の異常を判定することができる。具体的には、異常判定部300は、バッテリ群201及び202の各々のひずみゲージ100の抵抗値を監視することで、バッテリ群201及び202の有するバッテリセルに膨張や収縮が生じたか否かを判定することができる。
【0094】
例えば、異常判定部300は、膨張や収縮の程度が予め定めた閾値を超えた場合に、バッテリ群201及び/又は202に異常が発生したと判定することができる。さらに、異常判定部300は、異常が発生したと判定したバッテリ群と端子205との間に挿入されている回路遮断部に回路を遮断するための制御信号を出力することができる。そして、回路遮断部は、異常判定部300の判定結果である制御信号に基づいて、異常と判定されたバッテリ群を遮断することができる。
【0095】
例えば、異常判定部300は、バッテリ群202に異常が発生したと判定した場合、バッテリ群202と端子206との間の配線203に挿入されている回路遮断部402に、回路を遮断するための制御信号を出力する。この制御信号に基づいて、回路遮断部402は、異常と判定されたバッテリ群202を遮断する。
【0096】
バッテリ群202が遮断されても、バッテリ群201は端子205と端子206との間に接続されているため、端子205と端子206からは正常な電圧出力が得られ、バッテリユニット2は正常な動作を継続することができる。すなわち、バッテリユニット2は、異常なバッテリ群を遮断して安全を確保すると共に、正常なバッテリ群を生かして電池としての動作を継続することができる。
【0097】
図14は、異常判定部の一例について説明する図である。図14に示すように、異常判定部300は、例えば、アナログフロントエンド部310と、制御部320とを含む構成とすることができる。バッテリ群201及び202の各々のひずみゲージ100の出力は、アナログフロントエンド部310に接続されている。
【0098】
アナログフロントエンド部310は、例えば、ブリッジ回路、増幅回路、A/D変換回路(アナログ/デジタル変換回路)等を備えており、ひずみゲージの出力に基づいて、ひずみ波形を生成する。アナログフロントエンド部310は、温度補償回路を備えていてもよい。アナログフロントエンド部310は、IC化されていてもよいし、個別部品により構成されていてもよい。
【0099】
なお、アナログフロントエンド部310は、バッテリ群201のひずみゲージ100の出力を接続するブリッジ回路と、バッテリ群202のひずみゲージ100の出力を接続するブリッジ回路の6つを有するが、増幅器等は個別に設けてもよいし、複数のブリッジ回路に共通であってもよい。
【0100】
アナログフロントエンド部310において、バッテリ群201及び202の各々のひずみゲージ100の出力に対応するひずみ波形がブリッジ回路から出力され、増幅回路で増幅された後、A/D変換回路によりデジタル信号に変換され、制御部320に出力される。アナログフロントエンド部310が温度補償回路を備えている場合には、温度補償されたデジタル信号が制御部320に送られる。
【0101】
制御部320は、アナログフロントエンド部310から送られたデジタル化されたひずみ波形に演算処理を行い、バッテリセルの膨張や収縮を監視する。演算処理は、例えば、ひずみ波形を所定の閾値と比較することを含む。制御部320は、演算処理の結果に基づいて、バッテリ群と端子205との間の配線203に挿入されている回路遮断部に、回路を遮断するための制御信号を出力することができる。
【0102】
図15は、制御部のハードウェアブロック図の一例である。図15に示すように、制御部320は、主要な構成要素として、CPU(Central Processing Unit)321と、ROM(Read Only Memory)322と、RAM(Random Access Memory)323と、I/F(Interface)324と、バスライン325とを有している。CPU321、ROM322、RAM323、及びI/F324は、バスライン325を介して相互に接続されている。制御部320は、必要に応じ、他のハードウェアブロックを有しても構わない。
【0103】
CPU321は、制御部320の各機能を制御する。記憶手段であるROM322は、CPU321が制御部320の各機能を制御するために実行するプログラムや、各種情報を記憶している。記憶手段であるRAM323は、CPU321のワークエリア等として使用される。又、RAM323は、所定の情報を一時的に記憶できる。I/F324は、他の機器等と接続するためのインターフェイスであり、例えば、アナログフロントエンド部310や外部ネットワーク等と接続される。
【0104】
制御部320は、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、所定の機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System On a Chip)、又はGPU(Graphics Processing Unit)であってもよい。又、制御部320は、回路モジュール等であってもよい。
【0105】
このように、バッテリユニット2では、異常判定部300と回路遮断部401及び402を設けたことにより、バッテリ群201及び202の各々のバッテリセルの膨張や収縮の程度をひずみゲージ100の抵抗体の抵抗値の変化として検出することができる。そして、異常時には、異常判定部300の制御に基づいて、回路遮断部401及び/又は402によりバッテリ群201及び/又は202を遮断することで、バッテリセルの破損を回避すると共にバッテリユニット2の安全性を向上できる。
【0106】
特に、抵抗体130がCr混相膜から形成されている場合は、抵抗体130がCu-NiやNi-Crから形成されている場合と比べ、バッテリセルの膨張や収縮に対する抵抗値の感度が大幅に向上する。抵抗体130がCr混相膜から形成されている場合、バッテリセルの膨張や収縮に対する抵抗値の感度は、抵抗体130がCu-NiやNi-Crから形成されている場合と比べ、おおよそ5~10倍程度となる。そのため、抵抗体130をCr混相膜から形成することで、バッテリセルの膨張や収縮を精度よく検出することが可能となる。
【0107】
〈第3実施形態〉
上述した各実施形態およびその変形例では、本開示に係る検出部が抵抗体を用いたひずみゲージである例について説明した。すなわち、前記各実施形態では、本開示に係る検出部が電気抵抗式の金属ひずみゲージである場合について説明した。しかしながら、本開示に係る検出部は金属ひずみゲージに限定されない。例えば、本開示に係る検出部は、当該ひずみゲージに含まれる検出素子によって、起歪体(または、導電板60a等の起歪体に相当する構造物)のひずみによって引き起こされる磁気変化を検出するひずみゲージであってもよい。
【0108】
具体的には、本開示に係る検出部は、ビラリ現象(後述)を利用した検出素子を含んだひずみゲージであってもよい。また、本開示に係る検出部は、磁気トンネル接合(後述)の構造を有する検出素子を含んだひずみゲージであってもよい。以下、第3実施形態では、ビラリ現象を利用した検出素子を含むひずみゲージについて説明する。また、第4実施形態では、磁気トンネル接合の構造を有する検出素子を含んだひずみゲージについて説明する。
【0109】
なお、本明細書の各実施形態では、同様の機能を有する部材には同様の名称および部材番号を付し、説明を繰り返さないこととする。また、以降の各実施形態に係る各図面(図16以降の図面)におけるx軸、y軸、およびz軸の方向は同一である。また、以降の説明では、z軸の正方向を「上」、z軸の負方向を「下」と称する。すなわち、以降の説明において「上側」とはz軸の正方向側であり、「上面」はz軸の正方向側にある面を示す。また、「下側」とはz軸の負方向側であり、「下面」とはz軸の負方向側にある面を示す。
【0110】
図16は、第3実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子600の一例を示す図である。図16の(a)は検出素子600をz軸の正方向から負方向(すなわち、上面から下面側)に見下ろしたときの平面図である。一方、図16の(b)は、図16の(a)に示す検出素子600のα-α´直線での断面図を示している。なお、図16の(a)および(b)では、検出素子600から延びる配線は図示していない。しかしながら、検出素子600には、後述する駆動コイル620と電源とを接続する配線と、感知コイル680によって検出された電流を伝達するための配線が接続されていてもよい。
【0111】
図16の(a)に示す通り、検出素子600は、駆動コイル620と、感知コイル680と、ベース層610とを含む。ベース層610は駆動コイル620および感知コイル680の芯材となる層である。感知コイル680は、ベース層610(より厳密には、後述するベース金属670)の磁化の強さを検出するためのコイルである。駆動コイル620は、磁界を発生させるためのコイルである。検出素子600は、ベース層610を芯材として、感知コイル680が内側、そして駆動コイル620が外側に巻かれた2重構造を有している。なお、駆動コイル620および感知コイル680の材料は、Cu、Ag、Al、およびAu等の導電性金属、ならびに、これらの金属の合金であることが望ましい。また、駆動コイル620および感知コイル680の巻き数および断面積の大きさは、検出素子600に要求されるひずみの検知感度に応じて適宜設計されてよい。
【0112】
後で詳述するが、ベース層610に応力が加わると、ベース層610に含まれるベース金属670(後述)の磁化の強さが変化する。検出素子600は、感知コイル680でこの磁化の強さの変化を検出することによって、ベース層610にかかる応力の強さ(すなわち、ひずみ度合)を特定することができる。
【0113】
図16の(b)の断面図を参照して、検出素子600の構成について更に説明する。なお、図16の(b)において、駆動コイル620、感知コイル680、および3つの絶縁層640、650、および660はそれぞれ、芯材であるベース金属670を取り囲むように形成されている。すなわち、図16の(b)において同じ部材番号を付した層は、ベース金属670を取り囲んで繋がっている。
【0114】
ベース金属670は、各種コイルおよび絶縁層の芯材となる部材である。ベース金属670は、例えば略平板状の金属板であってよい。ベース金属670は絶縁層660で取り囲むように被覆されている。ベース金属670は、例えば、センダスト等のFe-Si-Al系合金、および、パーマロイ等のNi-Fe系合金等の軟磁性体材料で構成されることが望ましい。前述のベース層610は、図16の(b)に示す通り、このベース金属670と絶縁層660から成る。
【0115】
絶縁層660の外側には、絶縁層660を取り囲むように絶縁層650が形成される。そして、絶縁層650の外側には、更に絶縁層640が形成されている。絶縁層650は、感知コイル680を含む層であり、感知コイル680の間隙を絶縁材料で充填した層である。絶縁層640は、駆動コイル620を含む層であり、駆動コイル620の間隙を絶縁材料で充填した層である。絶縁層640、650、および660は、磁界に影響しないドライフィルムまたは感光性ポリイミド等のレジスト硬化物から成ることが望ましい。
【0116】
検出素子600の一面は、図16の(b)に示すように、基材110に貼り付けられていてよい。基材110は、検出素子600を固定する部材である。例えば、基材110は、プラスチックフィルム等で構成されるフレキシブル基板であってよい。検出素子600は基材110を介して導電板60a等に貼り付けられる。なお、検出素子600は、全体として平板または薄膜状の検出素子であってもよい。検出素子600が平板または薄膜状である場合、検出素子600を基材110により容易に貼り付けることができる。また、検出素子600において基材110は必須の構成ではない。例えば、検出素子600に基材110を設けず、検出素子600の下面を導電板60a等に直接貼り付けて使用してもよい。
【0117】
本実施形態に係る導電板60a等は、基本的には第1実施形態に係る導電板60a等と同様の構成および材料であってよい。しかしながら、本実施形態において、導電板60a等は、非磁性体から成ることがより望ましい。本実施形態に係る導電板60a等は、例えば、アルミニウムを材料として作製することができる。
【0118】
次に、検出素子600を用いてひずみを検出する原理を概説する。検出素子600は、磁性体であるベース金属670を含んでいる。電源から駆動コイル620に交流電流が供給されると、駆動コイル620はその周囲に交番磁界を生じさせる。これにより磁界が発生し、ベース金属670は磁化される。この状態で導電板60a等が変形すると、ひずみが生じる。ひずみは基材110を伝わり、ベース金属670に応力が加わる。なお、検出素子600を、基材110を介さずに導電板60a等に貼り付けている場合は、導電板60a等からベース金属670(およびそれを被覆する絶縁層640~660)に直接応力が伝わる。
【0119】
ベース金属670に応力が加わると、その応力に応じてベース金属670の透磁率が変化する。したがって、ベース金属670の磁化の強さ(磁化の程度)が変化する。このように、磁性体に応力がかかると磁性体の透磁率および磁化の強さが変化する現象のことを「ビラリ現象」という。検出素子600の構成によれば、ピックアップコイルである感知コイル680には、ベース金属670の磁化の強さに応じた交流電圧が誘起される。したがって、ビラリ現象の原理に基づけば、この交流電圧の値から、ベース金属670にかかる応力を算出することができる。そして、当該算出した応力から、導電板60a等のひずみ度合を特定することができる。なお、検出素子600が図16の(a)および(b)に示す形状である場合、検出素子600のグリッド方向は、図16の(a)におけるα-α´方向に等しい。以上説明した原理に基づいて、検出素子600は、導電板60a等のひずみを検出することができる。すなわち、検出素子600は、ひずみゲージの検出素子として機能する。
【0120】
なお、駆動コイル620は、感知コイル680の外側、かつ当該感知コイル680が存在している領域全体に、できる限り均一に巻き付けられることが望ましい。これにより、ベース金属670の、感知コイル680が存在する領域全体に、より均一に交番磁界を加えることができる。これにより、ビラリ現象によるベース金属670の磁化の強さの変化をより精密に検出することができる。したがって、検出素子600の性能が向上する。
【0121】
また、絶縁層660は、ベース金属670の全部ではなく一部に形成されていてもよい。例えば、ベース金属670のうち、感知コイル680および駆動コイル620を巻き付ける領域の部分を絶縁層660で覆い、絶縁層660の上から感知コイル680を含む絶縁層650で覆い、更に、絶縁層650の上から駆動コイル620を含む絶縁層640で覆うような構成であってもよい。
【0122】
また、ベース金属670が略平板状である場合、絶縁層660はベース金属670の、コイルを巻く方向のみ取り囲んで形成されていてもよい。すなわち、図16の(b)において、ベース金属670のx方向の両端部は絶縁層660で覆われていなくてもよい。
【0123】
本実施形態に係るバッテリユニットにおいて、導電板60a等が変形する(すなわち、起歪体にひずみが生じる)と、ひずみゲージの基材110(または、検出素子600自体)がひずむ。検出素子600は、このひずみによって生じる磁性変化を、前述のビラリ現象の原理に基づき検出することができる。
【0124】
本実施形態に係る検出素子600を含んだひずみゲージは、第1実施形態及び第1実施形態の変形例で示したあらゆる配置パターンで導電板60a等に配置可能である。すなわち、本実施形態に係る検出素子600を用いて、電気抵抗式のひずみゲージを用いたときと同様に導電板60a等のひずみを検出することができる。したがって、本実施形態に係るひずみゲージは、第1実施形態及び第1実施形態の変形例に係るひずみゲージ100と同様の効果を奏する。
【0125】
〈第4実施形態〉
図17は、第4実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の一例である検出素子700を示す図である。図18は、第4実施形態に係る検出素子の他の一例である検出素子800を示す図である。また、図19は、第4実施形態に係る検出素子の更に他の一例である検出素子900を示す図である。図17~19の(a)はそれぞれ、検出素子700、800、および900の斜視図である。図17~19の(b)はそれぞれ、検出素子700、800、および900をz軸の正方向から負方向に見下ろしたときの平面図である。図17~19の(c)は、検出素子700、800、および900の、zx平面に平行な面での断面図である。なお、図17~19のいずれの図も、検出素子から延びる配線は図示していない。しかしながら、これらの検出素子700、800、および900には、後述する上流電極710と電源とを接続する配線と、下流電極720と電源とを接続する配線とが接続されていてもよい。
【0126】
図17図19の(a)に示す通り、検出素子700、800、および900は、上流電極710と、下流電極720と、磁性膜730と、絶縁膜740と、を含む。絶縁膜740は、図示のように磁性膜730で挟まれている。この磁性膜730と絶縁膜740によって、磁気トンネル接合が形成される。すなわち、検出素子700、800、および900は、磁気トンネル接合の構造に電極を接続した構造である。
【0127】
なお、検出素子700、800、および900の下面は、第1実施形態に係る基材110と同様の基材に貼り付けられていてもよい。そして、検出素子700は基材を介して導電板60a等に貼り付けられてよい。また、検出素子700、800、および900は、全体として平板または薄膜状の検出素子であってもよい。検出素子700、800、および900が平板または薄膜状である場合、検出素子700、800、および900を基材または導電板60a等により容易に貼り付けることができる。また例えば、検出素子700、800、および900の下面を導電板60a等に直接貼り付けて使用してもよい。
【0128】
磁性膜730は磁性ナノ薄膜である。絶縁膜740は絶縁体のナノ薄膜である。磁気トンネル接合の構造が形成可能であれば、磁性膜730と、絶縁膜740の材料は特に限定されない。例えば、磁性膜730としてコバルト鉄ボロン、または、Fe、Co、Niなどの3d遷移金属強磁性体及びそれらを含む合金等を用いることができる。また、絶縁膜740として、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウムや酸化マグネシウム等を用いることができる。
【0129】
上流電極710および下流電極720は、磁気トンネル接合の構造に対し電圧を印加するための電極である。図17~19の例では、電流は上流電極710から下流電極720へと流れる。例えば図17の(c)の場合、上流電極710と下流電極720の間に電圧を印加すると、電子は上側(z軸正方向側)の磁性膜730から、絶縁膜740を超えて下側(z軸負方向側)の磁性膜730に流れ込む。これは「トンネル効果」と呼ばれている現象であり、電子が絶縁膜740を通過するときの電気抵抗は、「トンネル抵抗」と呼ばれている。なお、図17~19の例では、電極の各部の接合部は、磁気トンネル接合の構造をショートパスする電流が流れない様に端部が処理された構造となっている。
【0130】
ところで、基材110等を介して検出素子700にひずみがかかると、トンネル接合の構造において、磁気変化が起こる。より具体的には、上側と下側の磁性膜730の磁化方向がずれる。このように、上下の磁性膜730の磁化方向がずれると、磁化方向が平行な場合に比べて、トンネル抵抗が大きくなる(トンネル磁気抵抗効果)。したがって、前述の構成を備えた検出素子700では、検出素子700(より厳密には、磁気トンネル接合の部分)のひずみの大きさに応じて、電極間を流れる電流が小さくなる。すなわち、ひずみが大きくなるにつれ、電気抵抗が大きくなる。検出素子700は、このように、印加した電圧に対する電流値に基づきひずみを検出することができる。したがって、検出素子700を導電板60a等に貼り付けることによって、導電板60a等にかかるひずみを測定することができる。
【0131】
磁気トンネル接合の構造を有する検出素子は、図17に示した例に限定されない。例えば、図18および図19に示すような検出素子800および900を採用することも可能である。図18に示す検出素子800も、図19に示す検出素子900も、上流電極710、下流電極720、磁性膜730、および絶縁膜740で構成されること、および、これらの構成によってひずみを検出する原理については、検出素子700と同様である。また、検出素子800および900の基本的な動作についても、検出素子700と同様である。なお、検出素子700、800、および900のグリッド方向は、それぞれ図17図19におけるx軸方向(x軸の正方向およびx軸の負方向)に相当する。図18に示す検出素子800は図示の通り、上側の磁性膜730と下側の磁性膜730が、一部繋がった構造をしている。すなわち、磁性膜730の一部の領域においてのみ、磁気トンネル接合の構造が形成されており、当該構造においてトンネル磁気抵抗効果が生じる。一方、図19に示す検出素子900は、基板910を介して基材110に貼り付けられる。図17図19に示すように、検出素子は前述の原理を超えない範囲であれば、要求されるサイズ、耐久性、および検出すべき応力の大きさ等に応じて、適宜その設計が変更されてよい。
【0132】
なお、本実施形態に係る導電板60a等は、基本的には第1実施形態に係る導電板60a等と同様の構成および材料であってよい。しかしながら、本実施形態において、導電板60a等は、非磁性体から成ることがより望ましい。本実施形態に係る導電板60a等は、例えば、アルミニウムを材料として作製することができる。また、検出素子700、800、および900は素子全体として、フィルム型などの略平板状の形状であってよい。これにより、導電板60a等に、検出素子700を容易に貼り付けることができる。また、検出素子700、800、および900は、駆動コイル等、磁気トンネル接合の構造部分に対して、微弱な磁界を印加するための構造を有していてもよい。磁気トンネル接合の構造部分に対して磁界を印加することにより、前述のトンネル磁気抵抗効果をより安定して測定することができるため、安定してひずみを検出することができる。
【0133】
また、検出素子700、800、および900における「上流電極」および「下流電極」は便宜上の名称であり、電流の流れる方向は逆であってもよい。つまり、図17図19で示した検出素子700、800、および900において、下流電極720の方から、上流電極710の方へと電流が流れる設計であってもよい。
【0134】
本実施形態に係るバッテリユニットにおいて、導電板60a等が変形する(すなわち、起歪体にひずみが生じる)と、ひずみゲージの基材(または、検出素子700、800、または900自体)がひずむ。検出素子700、800、または900は、このひずみによって生じる磁性変化を、前述のトンネル磁気抵抗効果の原理に基づき検出することができる。
【0135】
本実施形態に係る検出素子700、800、および900を含んだひずみゲージは、第1実施形態および第1実施形態の変形例に示したあらゆる配置位置で導電板60a等に配置可能である。すなわち、本実施形態に係る検出素子700、800、および900を用いて、電気抵抗式のひずみゲージを用いたときと同様に導電板60a等のひずみを検出することができる。したがって、本実施形態に係るひずみゲージは、第1実施形態及び第1実施形態の変形例に係るひずみゲージ100と同様の効果を奏する。
【0136】
〈第5実施形態〉
本開示に係る検出部は、半導体式のひずみゲージ、静電容量式の圧力センサ、または光ファイバ式のひずみゲージであってもよい。また、本開示に係る検出部は、機械式圧力センサ、振動式圧力センサ、または圧電式圧力センサであってもよい。以下、各種ひずみゲージ及び圧力センサの原理を説明する。
【0137】
(半導体式のひずみゲージ)
半導体式のひずみゲージは、半導体の圧抵抗効果を利用してひずみを検出するひずみゲージである。すなわち、半導体式のひずみゲージは、半導体をひずみの検出素子として用いるひずみゲージである。
【0138】
半導体に応力が印加されると、半導体の結晶格子にひずみが生じて半導体中のキャリアの数及び移動度が変化するため、結果として電気抵抗が変化することが知られている。半導体式のひずみゲージは、電気抵抗式の金属ひずみゲージと同様、導電板60a等に直接貼り付けて使用することができる。この場合、導電板60a等が伸縮すると、貼り付けられた半導体(より詳しくは、半導体の結晶格子)のひずみ電気抵抗が変化する。そのため、当該電気抵抗を測定することで導電板60a等のひずみ量を特定することができる。
【0139】
また、半導体式のひずみゲージは、ダイアフラム構造を備えたひずみセンサとして構成することもできる。この場合、ひずみセンサは例えば、非金属のダイアフラム(又は、金属ダイアフラム上に電気絶縁層を形成したもの)と、当該ダイアフラムの上に形成された半導体(例えば、シリコン薄膜の半導体)と、を有する。そして、この様にダイアフラムを含む構造において、ダイアフラムに印加された垂直応力によりダイアフラムがひずむと、半導体の電気抵抗が変化する。そのため、当該電気抵抗を測定することでダイアフラムのひずみ量(ひいては、導電板60a等のひずみ量)を特定することができる。
【0140】
(静電容量式の圧力センサ)
静電容量式の圧力センサは、ダイアフラムにかかる圧力を一対の電極の静電容量の変化として計測する圧力センサである。すなわち、静電容量式の圧力センサは、一対の電極を検出素子として用いる圧力センサである。静電容量式の圧力センサは例えば、可動電極としてのダイアフラムと、1つ以上の固定電極と、を備える。ダイアフラムは例えば不純物を含んだシリコン(すなわち、導体として機能するシリコン)等で形成される。
【0141】
ダイアフラムに圧力が印加されると、当該ダイアフラムが変位し、固定電極と可動電極との間の距離が変化する。電極間の静電容量は、電極間媒質の誘電率と電極の面積が一定ならば、電極間の距離に応じて定まることが知られている。したがって、静電容量を計測することで、ダイアフラムの変位量(すなわち、圧力の大きさ)を特定することができる。
【0142】
(光ファイバ式のひずみゲージ)
光ファイバ式のひずみゲージとは、ファイバ・ブラッグ・グレーティング(FBG)が形成されている光ファイバを用いてひずみを検出するひずみゲージである。すなわち、光ファイバ式のひずみゲージは、光ファイバをひずみの検出素子として用いるひずみゲージである。FBGは光ファイバの他の部分とは異なる光の反射を起こす回折格子であり、この格子の一つ一つは一定間隔で形成されている。光ファイバがひずんで伸びると、FBGの格子間隔が広がるため、光ファイバに入射した光(例えば、レーザ光)の反射光の波長が変化する。また、光ファイバがひずんで縮むと、FBGの格子間隔は狭くなるため、ファイバに入射した光(例えば、レーザ光)の反射光の波長が変化する。
【0143】
このような特性を有する光ファイバを導電板60a等に貼り付けておき、光ファイバの反射光の波長スペクトルを計測することで、光ファイバのひずみ量(すなわち、導電板60a等のひずみ量)を特定することができる。なお、光ファイバ式のひずみゲージは、光ファイバ内で生じるブリルアン散乱光の周波数の変化から当該光ファイバのひずみ量を特定するひずみゲージであってもよい。
【0144】
(機械式圧力センサ)
機械式圧力センサは機械的構造物の変位量を計測することで、当該構造物にかかる圧力を特定するセンサである。機械式圧力センサは、例えば、ばね又は曲げた管を備えており、このばねの伸縮量又は曲げた管の伸縮量を計測する。これらの伸縮量(すなわち、変位量)は、ばね又は曲げた管にかかる圧力の大きさに応じて変化する。したがって、当該伸縮量を計測することで、ばね又は曲げた管にかかる圧力を特定することができる。なお、ばね又は曲げた管の形状や大きさは、機械式圧力センサの取り付け対象の大きさ及び形状に応じて適宜定められてよい。
【0145】
(振動式圧力センサ)
振動式圧力センサは、弾性梁の固有振動数が、当該弾性梁の軸に沿って生じる圧力(すなわち、軸力)によって変化するという現象を利用して圧力を検出するセンサである。振動式圧力センサは、電気抵抗式の金属ひずみゲージと同様、導電板60a等に直接貼り付けて使用することができる。また例えば、振動式圧力センサは、基板上に形成されたダイアフラムと、当該ダイアフラムの表面に形成された梁状の振動子と、で構成される圧力センサであってもよい。
【0146】
いずれの場合でも、導電板60a等がひずむと、その圧力は直接または間接的に振動子に伝わり、振動子に軸力が生じる。振動子の固有振動数は、軸力に応じて変化する。したがって、振動子の固有振動数を計測することで、導電板60a等に対する圧力の大きさを特定することができる。
【0147】
(圧電式圧力センサ)
圧電式圧力センサとは、圧電素子(ピエゾ素子とも称する)を含んでおり、この圧電素子の特性を用いて圧力を検出するセンサである。圧電素子は、力が加わり変形する(ひずむ)と、その力に応じた起電力を発生する特性を持っている。また、圧電素子は、電圧をかけると、その電圧に応じた力を発生させて伸縮する特性を持っている。
【0148】
圧電式圧力センサは、圧電素子の起電力を測定することで、圧電素子にかかった力(すなわち、圧電素子のひずみ量)を特定することができる。したがって、圧電式圧力センサを導電板60a等に貼り付けておくことで、導電板60a等のひずみ量を特定することができる。
【0149】
以上の説明の通り、半導体式のひずみゲージ、静電容量式の圧力センサ、光ファイバ式のひずみゲージ、機械式圧力センサ、振動式圧力センサ、および圧電式圧力センサを用いた場合でも、第1実施形態及び第1実施形態の変形例に係るひずみゲージ100と同様の効果を得ることができる。
【0150】
以上、好ましい実施形態等について詳説した。しかしながら、本開示に係るバッテリユニットは、上述した実施形態および変形例等に限定されない。例えば、上述した実施形態等に係るバッテリユニットについて、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0151】
1,1A,1B,1C,1D,2 バッテリユニット、10 バッテリセル、10a,10b 端面、11 正極,12 負極、60a,60b,60c,90 導電板、60x 孔、60y 切欠き、70 導電接合材、80 バスバー、91 貫通孔、92,93 溝、94,95,96,97 薄肉部、100 ひずみゲージ、110 基材、110a 上面、120 機能層、130 抵抗体、130e,130e 終端、140 配線、150 電極、160 カバー層、201,202 バッテリ群、203,204 配線、205,206 端子、300 異常判定部、310 アナログフロントエンド部、320 制御部、321 CPU、322 ROM、323 RAM、324 I/F、325 バスライン、401,402 回路遮断部、600,700,800,900 検出素子、610 ベース層、620 駆動コイル、640,650,660 絶縁層、670 ベース金属、680 感知コイル、710 上流電極、720 下流電極、730 磁性膜、740 絶縁膜、910 基板
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