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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115363
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】バッテリ冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20240819BHJP
   G01B 7/16 20060101ALI20240819BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240819BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240819BHJP
   H01M 10/643 20140101ALI20240819BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240819BHJP
【FI】
H01M10/48 301
G01B7/16
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/643
H01M50/204 401H
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021020
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】石原 育
(72)【発明者】
【氏名】小峰 理枝子
(72)【発明者】
【氏名】北園 正樹
(72)【発明者】
【氏名】相澤 祐汰
(72)【発明者】
【氏名】植弘 量子
【テーマコード(参考)】
2F063
5H030
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063BA30
2F063DA02
2F063DA05
2F063EC00
5H030AA09
5H030AS08
5H030FF32
5H031KK01
5H040AA28
5H040AS07
5H040AT01
5H040AT06
(57)【要約】
【課題】複数のバッテリセルを有するバッテリ冷却装置において、熱伝導効率を維持しつつ、バッテリセルの膨張等を高感度に検出する。
【解決手段】本バッテリ冷却装置は、複数のバッテリセルと、ヒートパイプと、ひずみゲージと、を有し、前記ヒートパイプは、第1方向に延伸する複数の第1延伸部と、前記第1方向と交差する第2方向に延伸する複数の第2延伸部と、を含み、複数の前記第1延伸部が所定間隔で配置され、隣接する前記第1延伸部の端部が互い違いに前記第2延伸部により連結されて、全体としてジグザグに折り返す構造であり、各々の前記バッテリセルは、隣接する前記第1延伸部の間に、前記第1延伸部の内壁面と接するように配置され、前記第2延伸部は、前記第1延伸部よりも弾性率の低い低弾性部を含み、前記第1延伸部は、前記低弾性部よりも熱伝導率が高く、前記低弾性部は、前記第2延伸部の外壁面の少なくとも一部を構成し、前記ひずみゲージは、前記低弾性部に貼付されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリセルと、ヒートパイプと、ひずみゲージと、を有し、
前記ヒートパイプは、第1方向に延伸する複数の第1延伸部と、前記第1方向と交差する第2方向に延伸する複数の第2延伸部と、を含み、複数の前記第1延伸部が所定間隔で配置され、隣接する前記第1延伸部の端部が互い違いに前記第2延伸部により連結されて、全体としてジグザグに折り返す構造であり、
各々の前記バッテリセルは、隣接する前記第1延伸部の間に、前記第1延伸部の内壁面と接するように配置され、
前記第2延伸部は、前記第1延伸部よりも弾性率の低い低弾性部を含み、
前記第1延伸部は、前記低弾性部よりも熱伝導率が高く、
前記低弾性部は、前記第2延伸部の外壁面の少なくとも一部を構成し、
前記ひずみゲージは、前記低弾性部に貼付されている、バッテリ冷却装置。
【請求項2】
前記第1延伸部は、金属から形成され、
前記低弾性部は、樹脂から形成されている、請求項1に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項3】
前記第2延伸部の全体が前記低弾性部である、請求項1又は2に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項4】
前記第2延伸部は、内部が空洞であり前記低弾性部よりも熱伝導率の高い高熱伝導部と、前記高熱伝導部に積層された前記低弾性部と、を含む、請求項1又は2に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項5】
前記第2延伸部は、内部が空洞であり前記低弾性部よりも熱伝導率の高い高熱伝導部と、前記高熱伝導部に形成された貫通孔と、前記貫通孔を埋める前記低弾性部と、を含む、請求項1又は2に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項6】
前記高熱伝導部と前記低弾性部との積層方向から視て、前記低弾性部の大きさは、前記高熱伝導部の大きさよりも小さい、請求項4又は5に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項7】
前記第2延伸部は、内壁面を構成し前記低弾性部よりも熱伝導率の高い高熱伝導部と、外壁面を構成する前記低弾性部と、を含み、前記高熱伝導部と前記低弾性部とは空洞を挟んで対向する、請求項1又は2に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項8】
前記高熱伝導部は、金属から形成されている、請求項4乃至7のいずれか一項に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項9】
異常判定部をさらに有し、
前記異常判定部は、各々の前記ひずみゲージの出力に基づいて、前記バッテリセルの異常を判定し、判定結果を出力する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項10】
前記ヒートパイプの前記バッテリセルと接していない領域と接する冷却部をさらに有し、
前記冷却部に、第2のひずみゲージが貼付されている、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項11】
異常判定部をさらに有し、
前記異常判定部は、各々の前記ひずみゲージの出力に基づいて、前記バッテリセルの異常を判定し、第1の判定結果を出力し、かつ前記第2のひずみゲージの出力に基づいて、前記ヒートパイプの異常を判定し、第2の判定結果を出力する、請求項10に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項12】
複数のバッテリセルと、ヒートパイプと、検出部と、を有し、
前記ヒートパイプは、第1方向に延伸する複数の第1延伸部と、前記第1方向と交差する第2方向に延伸する複数の第2延伸部と、を含み、複数の前記第1延伸部が所定間隔で配置され、隣接する前記第1延伸部の端部が互い違いに前記第2延伸部により連結されて、全体としてジグザグに折り返す構造であり、
各々の前記バッテリセルは、隣接する前記第1延伸部の間に、前記第1延伸部の内壁面と接するように配置され、
前記第2延伸部は、前記第1延伸部よりも弾性率の低い低弾性部を含み、
前記第1延伸部は、前記低弾性部よりも熱伝導率が高く、
前記低弾性部は、前記第2延伸部の外壁面の少なくとも一部を構成し、
前記検出部は、前記低弾性部に貼付され、
前記検出部は、前記バッテリセルの膨張又は収縮により生じる前記低弾性部の変形及び/又は前記低弾性部にかかる圧力を検出する、バッテリ冷却装置。
【請求項13】
前記第1延伸部は、金属から形成され、
前記低弾性部は、樹脂から形成されている、請求項12に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項14】
前記第2延伸部の全体が前記低弾性部である、請求項12又は13に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項15】
前記第2延伸部は、内部が空洞であり前記低弾性部よりも熱伝導率の高い高熱伝導部と、前記高熱伝導部に積層された前記低弾性部と、を含む、請求項12又は13に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項16】
前記第2延伸部は、内部が空洞であり前記低弾性部よりも熱伝導率の高い高熱伝導部と、前記高熱伝導部に形成された貫通孔と、前記貫通孔を埋める前記低弾性部と、を含む、請求項12又は13に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項17】
前記高熱伝導部と前記低弾性部との積層方向から視て、前記低弾性部の大きさは、前記高熱伝導部の大きさよりも小さい、請求項15又は16に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項18】
前記第2延伸部は、内壁面を構成し前記低弾性部よりも熱伝導率の高い高熱伝導部と、外壁面を構成する前記低弾性部と、を含み、前記高熱伝導部と前記低弾性部とは空洞を挟んで対向する、請求項12又は13に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項19】
前記高熱伝導部は、金属から形成されている、請求項15乃至18のいずれか一項に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項20】
異常判定部をさらに有し、
前記異常判定部は、各々の前記検出部の出力に基づいて、前記バッテリセルの異常を判定し、判定結果を出力する、請求項12乃至19のいずれか一項に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項21】
前記ヒートパイプの前記バッテリセルと接していない領域と接する冷却部をさらに有し、
前記冷却部に、第2の検出部が貼付されている、請求項12乃至19のいずれか一項に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項22】
異常判定部をさらに有し、
前記異常判定部は、各々の前記検出部の出力に基づいて、前記バッテリセルの異常を判定し、第1の判定結果を出力し、かつ前記第2の検出部の出力に基づいて、前記ヒートパイプの異常を判定し、第2の判定結果を出力する、請求項21に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項23】
前記検出部は、前記低弾性部の変形によって生じる磁気変化を検出する検出素子を有する、請求項12乃至22の何れか一項に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項24】
前記検出素子は磁性体を含み、
前記検出素子は、前記低弾性部の変形によって前記磁性体に圧力が加わったときの前記磁性体の磁化の強さの変化を検出する検出素子である、請求項23に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項25】
前記検出素子は、磁性膜で絶縁膜を挟んだ磁気トンネル接合の構造を含んでおり、
前記検出素子は、前記低弾性部の変形によって前記構造で発生する磁気変化を検出する検出素子である、請求項23に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項26】
前記検出部は半導体式のひずみゲージである、請求項12乃至22の何れか一項に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項27】
前記検出部は静電容量式の圧力センサである、請求項12乃至22の何れか一項に記載のバッテリ冷却装置。
【請求項28】
前記検出部は光ファイバ式のひずみゲージである、請求項12乃至22の何れか一項に記載のバッテリ冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多数のバッテリセルを有するバッテリ冷却装置が知られている。このようなバッテリ冷却装置では、例えば、充放電等により昇温状態にあるバッテリセルを冷却するために、バッテリセルに接するようにヒートパイプが配置されている。ヒートパイプの内部には作動液が封入されており、作動液の蒸発と凝縮により熱交換が行われる。このようなバッテリ冷却装置では、バッテリセルの状態を検出する検出手段が設けられる場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2021/074456号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、複数のバッテリセルを有するバッテリ冷却装置において、熱伝導効率を維持しつつ、バッテリセルの膨張等を高感度に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本バッテリ冷却装置は、複数のバッテリセルと、ヒートパイプと、ひずみゲージと、を有し、前記ヒートパイプは、第1方向に延伸する複数の第1延伸部と、前記第1方向と交差する第2方向に延伸する複数の第2延伸部と、を含み、複数の前記第1延伸部が所定間隔で配置され、隣接する前記第1延伸部の端部が互い違いに前記第2延伸部により連結されて、全体としてジグザグに折り返す構造であり、各々の前記バッテリセルは、隣接する前記第1延伸部の間に、前記第1延伸部の内壁面と接するように配置され、前記第2延伸部は、前記第1延伸部よりも弾性率の低い低弾性部を含み、前記第1延伸部は、前記低弾性部よりも熱伝導率が高く、前記低弾性部は、前記第2延伸部の外壁面の少なくとも一部を構成し、前記ひずみゲージは、前記低弾性部に貼付されている。
【発明の効果】
【0006】
開示の技術によれば、複数のバッテリセルを有するバッテリ冷却装置において、熱伝導効率を維持しつつ、バッテリセルの膨張等を高感度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係るバッテリ冷却装置を例示する斜視図である。
図2】第1実施形態に係るバッテリ冷却装置を例示する図である。
図3】第1実施形態に係るバッテリ冷却装置を例示する部分断面図である。
図4】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
図5】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その1)である。
図6】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その2)である。
図7】第1実施形態の変形例1に係るバッテリ冷却装置を例示する部分断面図である。
図8】第1実施形態の変形例2に係るバッテリ冷却装置を例示する部分断面図である。
図9】第1実施形態の変形例3に係るバッテリ冷却装置を例示する部分断面図である。
図10】第1実施形態の変形例4に係るバッテリ冷却装置を例示する部分断面図である。
図11】第2実施形態に係るバッテリ冷却装置を例示する模式図である。
図12】異常判定部の一例について説明する図である。
図13】制御部のハードウェアブロック図の一例である。
図14】第3実施形態に係るバッテリ冷却装置を例示する図である。
図15】第3実施形態の変形例に係るバッテリ冷却装置を例示する模式図である。
図16】第4実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の一例を示す平面図および断面図である。
図17】第5実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の一例を示す斜視図、平面図、および断面図である。
図18】第5実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の他の一例を示す斜視図、平面図、および断面図である。
図19】第5実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の、更に他の一例を示す斜視図、平面図、および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一の構成部には同一の符号を付す場合がある。また、各図面において、互いに直交するX方向、Y方向、及びZ方向を規定する場合がある。この場合、X方向において、矢印の始点(根元)側をX-側、矢印の終点(矢尻)側をX+側と称する場合がある。Y方向及びZ方向についても同様であるまた、各図面の説明において、既に説明した構成部と同一の構成部についての説明は省略する場合がある。
【0009】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係るバッテリ冷却装置を例示する斜視図である。図2は、第1実施形態に係るバッテリ冷却装置を例示する図であり、バッテリ冷却装置1を図1の矢印S方向から視た図である。図3は、第1実施形態に係るバッテリ冷却装置を例示する部分断面図であり、ひずみゲージ100を通り、かつXY平面に平行な方向に切った断面を示している。なお、バッテリ冷却装置を矢印S方向から視ることを平面視と称する場合がある。
【0010】
図1図3を参照すると、バッテリ冷却装置1は、複数のバッテリセル10と、ヒートパイプ20と、ひずみゲージ100とを有している。バッテリ冷却装置1は、例えば、電気自動車の電力供給に使用できる。
【0011】
バッテリセル10は、例えば、円柱状である。バッテリセル10は、例えば、四角柱等の多角柱状であってもよい。バッテリセル10は、例えば、リチウムイオン電池である。図示は省略されているが、複数のバッテリセル10は、並列または直接に接続されている。図1図3の例では、バッテリ冷却装置1は、64個のバッテリセル10を有するが、バッテリセル10の個数は任意である。
【0012】
ヒートパイプ20は、平面視で、第1方向に延伸する複数の第1延伸部21と、第1方向と交差する第2方向に延伸する複数の第2延伸部22とを含む。図1図3の例では、第1方向はY方向であり、第2方向はX方向である。図1図3の例では、第1方向と第2方向とは直交している。ただし、第1方向と第2方向とは直交していなくてもよい。
【0013】
ヒートパイプ20は、平面視で、複数の第1延伸部21が所定間隔で配置され、隣接する第1延伸部21の端部が互い違いに第2延伸部22により連結されて、全体としてジグザグに折り返す構造である。図1図3の例では、ヒートパイプ20は、5つの第1延伸部21と、4つの第2延伸部22とを含むが、第1延伸部21と第2延伸部22の個数は、これには限定されない。
【0014】
なお、第1延伸部21と第2延伸部22との接続部において、第1延伸部21及び/又は第2延伸部22は、バッテリセル10の外周面に沿って湾曲してもよい。また、第1延伸部21及び第2延伸部22は、平板状でなくてもよく、例えば、バッテリセル10の外周面に沿った凹凸構造を有してもよい。
【0015】
第2延伸部22は、第2延伸部22の外壁面の少なくとも一部を構成する低弾性部を含む。低弾性部は、第1延伸部21よりも弾性率の低い部分である。低弾性部は、可撓性を有する。本実施形態では、第2延伸部22の全体が低弾性部である。すなわち、本実施形態では、低弾性部は、第2延伸部22の外壁面の全部を構成する。低弾性部の弾性率は、例えば、5GPa以下である。これに対して、第1延伸部21の弾性率は、例えば、50GPa以上である。微小歪を高感度に検出する観点から、低弾性部の弾性率は、第1延伸部21の弾性率の1/10以下であることが好ましい。
【0016】
なお、ヒートパイプ20において、バッテリセル10と接する面を内壁面、内壁面の反対面であり、バッテリセル10と接しない面を外壁面とする。なお、後述のように、ヒートパイプ20は空洞Cを有するが、ここでいう内壁面及び外壁面は、空洞C内に露出する面ではない。
【0017】
第1延伸部21は、低弾性部よりも熱伝導率が高い。すなわち、本実施形態では、第1延伸部21は、全体が低弾性部である第2延伸部22よりも熱伝導率が高い。第1延伸部21の熱伝導率は、例えば、200W/m・k以上である。これに対して、低弾性部の熱伝導率は、例えば、0.5W/m・k以下である。
【0018】
第1延伸部21は、例えば、金属から形成されている。金属としては、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス等の熱伝導率の高い材料が挙げられる。第2延伸部22を構成する低弾性部は、例えば、樹脂から形成されている。樹脂としては、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂等の耐熱性の高い樹脂が挙げられる。
【0019】
ヒートパイプ20において、交互に配置される第1延伸部21及び第2延伸部22は連結されて1つの連続する構造体を形成している。隣接する第1延伸部21と第2延伸部22は、例えば、接着や成形等により一体化されている。この連続する構造体の内部には、連続する1つの空洞Cが設けられている。
【0020】
空洞C内には、図示しない作動液が密封されている。作動液としては、例えば、純水、エタノール等を用いることができる。また、空洞Cを規定するヒートパイプ20の内側面には、図示しない毛細管構造(ウィック)が設けられている。空洞C内は、例えば、作動液とその蒸気以外が含まれない真空状態であり、作動液の蒸発及び凝縮が生じやすくなっている。
【0021】
ヒートパイプ20は、各々のバッテリセル10の外周面と接するように設けられている。詳細には、各々のバッテリセル10は、隣接する第1延伸部21の間に、第1延伸部21の内壁面と接するように配置されている。すべてのバッテリセル10は、いずれかの第1延伸部21と接している。一部のバッテリセル10は、第1延伸部21と第2延伸部22の両方に接している。
【0022】
図1図3の例では、X方向を行方向、Y方向を列方向とすると、隣接する第1延伸部21の間に8行2列のバッテリセル10が配置されている。なお、これは一例であり、隣接する第1延伸部21の間に配置されるバッテリセル10の個数は任意である。
【0023】
ヒートパイプ20がバッテリセル10から熱を得ると、その部分にある作動液が蒸発して気体となり、熱を潜熱として吸収して、空洞C内の低温部に移動する。低温部に移動した作動液は凝縮し、熱を放出して液体に戻る。これにより、高温部の熱を低温部に運ぶことができる。また、液体となった作動液は、ウィックの毛細管現象によって元の熱源部分に戻る。作動液の気化と液化、移動は連続的に起こるため、長期間にわたって熱交換を継続することができる。
【0024】
ひずみゲージ100は、バッテリセル10の膨張や収縮に伴なうヒートパイプ20の伸縮を検出するセンサである。ひずみゲージ100は、本開示において検出部の一例である。ひずみゲージ100は、各々の第2延伸部22の外壁面を構成する低弾性部に貼付されている。ひずみゲージ100は、各々の第2延伸部22の外壁面を構成する低弾性部の一部に貼付されてもよいし、全体に貼付されてもよい。ひずみゲージ100の詳細については後述する。
【0025】
例えば、何らかの原因でバッテリセル10が膨張や収縮をすると、バッテリセル10と接しているヒートパイプ20には外力が加わり微小歪が発生する。仮に、ヒートパイプ20の全体が銅やアルミニウムのような剛性の高い金属から形成されていると、ヒートパイプ20の微小歪をひずみゲージ100で検出することは困難である。
【0026】
しかし、バッテリ冷却装置1では、第2延伸部22は、第1延伸部21よりも弾性率の低い低弾性部を含み、低弾性部にひずみゲージ100を貼付している。低弾性部は可撓性を有するため、第1延伸部21よりもひずみが生じやすい。そのため、低弾性部に貼付したひずみゲージ100により、ヒートパイプ20の微小歪を高感度に検出することができる。すなわち、バッテリセル10の膨張等を高感度に検出することができる。
【0027】
すなわち、複数のバッテリセル10のいずれか1以上が膨張すると、ヒートパイプ20に貼付されたひずみゲージ100の抵抗値が増加する。この抵抗値を監視することにより、複数のバッテリセル10のいずれか1以上の膨張の情報を得ることができる。また、複数のバッテリセル10のいずれか1以上が収縮すると、ヒートパイプ20に貼付されたひずみゲージ100の抵抗値が減少する。この抵抗値を監視することにより、複数のバッテリセル10のいずれか1以上の収縮の情報を得ることができる。また、各々のひずみゲージ100の出力の抵抗値の変化の度合いにより、膨張や収縮の程度を検出することができる。
【0028】
また、バッテリ冷却装置1では、ヒートパイプ20の多くの部分を占める第1延伸部21は低弾性部よりも熱伝導率が高い材料により形成されているため、熱伝導効率を維持しつつ、バッテリセル10の膨張等を高感度に検出することができる。
【0029】
[ひずみゲージ100]
図4は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。図5は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その1)であり、図4のA-A線に沿う断面を示している。
【0030】
図4及び図5を参照すると、ひずみゲージ100は、基材110と、抵抗体130と、配線140と、電極150と、カバー層160とを有している。すなわち、ひずみゲージ100は、検出素子として抵抗体130を有している。カバー層160は、必要に応じて設けることができる。なお、図4及び図5では、便宜上、カバー層160の外縁のみを破線で示している。まずは、ひずみゲージ100を構成する各部について詳細に説明する。
【0031】
なお、図4及び図5では、便宜上、ひずみゲージ100において、基材110の抵抗体130が設けられている側を「上側」と称し、抵抗体130が設けられていない側を「下側」と称する。又、各部位の上側に位置する面を「上面」と称し、各部位の下側に位置する面を「下面」と称する。ただし、ひずみゲージ100は天地逆の状態で用いることもできる。又、ひずみゲージ100は任意の角度で配置することもできる。又、図4及び図5において、平面視とは、基材110の上面110aに対する上側から下側への法線方向で対象物を視ることを指すものとする。そして、平面形状とは、前記法線方向で対象物を視たときの、対象物の形状を指すものとする。ひずみゲージ100は、基材110の下面110bが第2延伸部22の低弾性部側を向くように、第2延伸部22の低弾性部に貼り付けられる。
【0032】
基材110は、抵抗体130等を形成するためのベース層となる部材である。基材110は可撓性を有する。基材110の厚さは特に限定されず、ひずみゲージ100の使用目的等に応じて適宜決定されてよい。例えば、基材110の厚さは5μm~500μm程度であってよい。なお、低弾性部から受感部へのひずみの伝達性、及び、環境変化に対する寸法安定性の観点から考えると、基材110の厚さは5μm~200μmの範囲内であることが好ましい。また、絶縁性の観点から考えると、基材110の厚さは10μm以上であることが好ましい。
【0033】
基材110は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、LCP(液晶ポリマー)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成される。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、かつ可撓性を有する部材を指す。
【0034】
基材110が絶縁樹脂フィルムから形成される場合、当該絶縁樹脂フィルムには、フィラーや不純物等が含まれていてもよい。例えば、基材110は、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成されてもよい。
【0035】
基材110の樹脂以外の材料としては、例えば、SiO、ZrO(YSZも含む)、Si、Si、Al(サファイヤも含む)、ZnO、ペロブスカイト系セラミックス(CaTiO、BaTiO)等の結晶性材料が挙げられる。又、前述の結晶性材料以外に非晶質のガラス等を基材110の材料としてもよい。又、基材110の材料として、アルミニウム、アルミニウム合金(ジュラルミン)、チタン等の金属を用いてもよい。金属製の基材110を用いる場合、上面110aを被覆するように絶縁膜が設けられる。
【0036】
抵抗体130は、基材110の上側に所定のパターンで形成された薄膜である。ひずみゲージ100において、抵抗体130は、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。抵抗体130は、基材110の上面110aに直接形成されてもよいし、基材110の上面110aに他の層を介して形成されてもよい。なお、図4では、便宜上、抵抗体130を密度の高い梨地模様で示している。
【0037】
抵抗体130は、複数の細長状部が長手方向を同一方向(図4の例ではA-A線の方向)に向けて所定間隔で配置され、隣接する細長状部の端部が互い違いに連結されて、全体としてジグザグに折り返す構造である。複数の細長状部の長手方向がグリッド方向となり、グリッド方向と垂直な方向がグリッド幅方向(図4の例ではA-A線と垂直な方向)となる。
【0038】
グリッド幅方向の最も外側に位置する2つの細長状部の長手方向の一端部は、グリッド幅方向に屈曲し、抵抗体130のグリッド幅方向の各々の終端130e及び130eを形成する。抵抗体130のグリッド幅方向の各々の終端130e及び130eは、配線140を介して、電極150と電気的に接続されている。言い換えれば、配線140は、抵抗体130のグリッド幅方向の各々の終端130e及び130eと各々の電極150とを電気的に接続している。
【0039】
抵抗体130は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成することができる。すなわち、抵抗体130は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成することができる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0040】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、及びCrN等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでいてもよい。
【0041】
抵抗体130の厚さは特に限定されず、ひずみゲージ100の使用目的等に応じて適宜決定されてよい。例えば、抵抗体130の厚さは0.05μm~2μm程度であってよい。特に、抵抗体130の厚さが0.1μm以上である場合、抵抗体130を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する。また、抵抗体130の厚さが1μm以下である場合、抵抗体130を構成する膜の内部応力に起因する、(i)膜のクラック及び(ii)膜の基材110からの反りが、低減される。
【0042】
横感度を生じ難くすることと、断線対策とを考慮すると、抵抗体130の幅は10μm以上100μm以下であることが好ましい。更に言えば、抵抗体130の幅は10μm以上70μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であるとより好ましい。
【0043】
例えば、抵抗体130がCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα-Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、ゲージ特性の安定性を向上させることができる。又例えば、抵抗体130がCr混相膜である場合、抵抗体130がα-Crを主成分とすることで、ひずみゲージ100のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。ここで、「主成分」とは、抵抗体を構成する全物質の50重量%以上を占める成分のことを意味する。ゲージ特性を向上させるという観点から考えると、抵抗体130はα-Crを80重量%以上含むことが好ましい。更に言えば、同観点から考えると、抵抗体130はα-Crを90重量%以上含むことがより好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0044】
又、抵抗体130がCr混相膜である場合、Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNは20重量%以下であることが好ましい。Cr混相膜に含まれるCrN及びCrNが20重量%以下であることで、ひずみゲージ100のゲージ率の低下を抑制することができる。
【0045】
又、Cr混相膜におけるCrNとCrNとの比率は、CrNとCrNの重量の合計に対し、CrNの割合が80重量%以上90重量%未満となるようにすることが好ましい。更に言えば、同比率は、CrNとCrNの重量の合計に対し、CrNの割合が90重量%以上95重量%未満となるようにすることがより好ましい。CrNは半導体的な性質を有する。そのため、前述のCrNの割合を90重量%以上95重量%未満とすることで、TCRの低下(負のTCR)が一層顕著となる。更に、前述のCrNの割合を90重量%以上95重量%未満とすることで抵抗体130のセラミックス化を低減し、抵抗体130の脆性破壊が起こりにくくすることができる。
【0046】
一方で、CrNは化学的に安定であるという利点を有する。Cr混相膜にCrNをより多く含むことで、不安定なNが発生する可能性を低減することができるため、安定なひずみゲージを得ることができる。ここで「不安定なN」とは、Cr混相膜の膜中に存在し得る、微量のNもしくは原子状のNのことを意味する。これらの不安定なNは、外的環境(例えば高温環境)によっては膜外へ抜け出ることがある。不安定なNが膜外へ抜け出るときに、Cr混相膜の膜応力が変化し得る。
【0047】
ひずみゲージ100において、抵抗体130の材料としてCr混相膜を用いた場合、高感度化かつ、小型化を実現することができる。例えば、従来のひずみゲージの出力が0.04mV/2V程度であったのに対して、抵抗体130の材料としてCr混相膜を用いた場合は0.3mV/2V以上の出力を得ることができる。また、従来のひずみゲージの大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)が3mm×3mm程度であったのに対して、抵抗体130の材料としてCr混相膜を用いた場合の大きさ(ゲージ長×ゲージ幅)は0.3mm×0.3mm程度に小型化することができる。
【0048】
配線140は、基材110上に設けられている。配線140は、抵抗体130及び電極150と電気的に接続されている。配線140は、直線状には限定されず、任意のパターンとすることができる。また、配線140は、任意の幅及び任意の長さとすることができる。なお、図4では、便宜上、配線140を抵抗体130よりも密度の低い梨地模様で示している。
【0049】
電極150は、基材110上に設けられている。電極150は、配線140を介して抵抗体130と電気的に接続されている。電極150は、平面視において、配線140よりも拡幅して略矩形状に形成されている。電極150は、ひずみにより生じる抵抗体130の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極である。電極150の上面に、銅等の抵抗の低い金属層、または、金等のはんだ付け性が良好な金属層を積層してもよい。抵抗体130と配線140と電極150とは便宜上別符号としているが、両者は同一工程において同一材料により一体に形成することができる。なお、図4では、便宜上、電極150を配線140と同じ密度の梨地模様で示している。
【0050】
カバー層160(保護層)は、必要に応じ、基材110の上面110aに、抵抗体130及び配線140を被覆し電極150を露出するように設けられる。カバー層160の材料としては、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂が挙げられる。なお、カバー層160は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層160の厚さは、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、カバー層160の厚さは2μm~30μm程度とすることができる。カバー層160を設けることで、抵抗体130に機械的な損傷等が生じることを抑制することができる。又、カバー層160を設けることで、抵抗体130を湿気等から保護することができる。
【0051】
[ひずみゲージ100の製造方法]
本実施形態に係るひずみゲージ100では、基材110上に、抵抗体130と、配線140と、電極150と、カバー層160とが形成される。なお、基材110とこれらの部材の層の間に別の層(後述する機能層等)が形成されてもよい。
【0052】
以下、ひずみゲージ100の製造方法について説明する。ひずみゲージ100を製造するためには、まず、基材110を準備し、基材110の上面110aに金属層(便宜上、金属層Aとする)を形成する。金属層Aは、最終的にパターニングされて抵抗体130、配線140、及び電極150となる層である。従って、金属層Aの材料や厚さは、前述の抵抗体130、配線140、及び電極150の材料や厚さと同様である。
【0053】
金属層Aは、例えば、金属層Aを形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜することができる。金属層Aは、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法、蒸着法、アークイオンプレーティング法、またはパルスレーザー堆積法等を用いて成膜されてもよい。基材110の上面110aに金属層Aを成膜後、周知のフォトリソグラフィ法により、金属層Aを図4の抵抗体130、配線140、及び電極150と同様の平面形状にパターニングする。
【0054】
なお、基材110の上面110aに下地層を形成してから金属層Aを形成してもよい。例えば、基材110の上面110aに、所定の膜厚の機能層をコンベンショナルスパッタ法により真空成膜してもよい。このように下地層を設けることによって、ひずみゲージ100のゲージ特性を安定化させることができる。
【0055】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である金属層A(抵抗体130)の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層は、更に、基材110に含まれる酸素または水分による金属層Aの酸化を防止する機能、および/または、基材110と金属層Aとの密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0056】
基材110を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むことがあり、また、Crは自己酸化膜を形成することがある。そのため、特に金属層AがCrを含む場合、金属層Aの酸化を防止する機能を有する機能層を成膜することが好ましい。
【0057】
このように、金属層Aの下層に機能層を設けることにより、金属層Aの結晶成長を促進可能となり、安定な結晶相からなる金属層Aを作製することができる。その結果、ひずみゲージ100において、ゲージ特性の安定性が向上する。又、機能層を構成する材料が金属層Aに拡散することにより、ひずみゲージ100において、ゲージ特性が向上する。
【0058】
機能層の材料としては、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0059】
図6は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図(その2)である。図6は、抵抗体130、配線140、及び電極150の下地層として機能層120を設けた場合のひずみゲージ100の断面形状を示している。
【0060】
機能層120の平面形状は、例えば抵抗体130、配線140、及び電極150の平面形状と略同一にパターニングされてよい。しかしながら、機能層120と抵抗体130、配線140、及び電極150との平面形状は略同一でなくてもよい。例えば、機能層120が絶縁材料から形成される場合には、機能層120を抵抗体130、配線140、及び電極150の平面形状と異なる形状にパターニングしてもよい。この場合、機能層120は例えば抵抗体130、配線140、及び電極150が形成されている領域にベタ状に形
成されてもよい。或いは、機能層120は、基材110の上面全体にベタ状に形成されてもよい。
【0061】
抵抗体130、配線140、及び電極150を形成した後、必要に応じ、基材110の上面110aにカバー層160を形成する。カバー層160は抵抗体130及び配線140を被覆するが、電極150はカバー層160から露出していてよい。例えば、基材110の上面110aに、抵抗体130及び配線140を被覆し電極150を露出するように、半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートして、その後に当該絶縁樹脂フィルムを加熱して硬化させることにより、カバー層160を形成することができる。以上の工程により、ひずみゲージ100が完成する。
【0062】
〈第1実施形態の変形例〉
第1実施形態の変形例では、ひずみゲージを貼付する部分の構造が異なるバッテリ冷却装置の例を示す。なお、第1実施形態の変形例において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0063】
図7は、第1実施形態の変形例1に係るバッテリ冷却装置を例示する部分断面図であり、ひずみゲージ100を通り、かつXY平面に平行な方向に切った断面を示している。
【0064】
図7に示すように、バッテリ冷却装置1Aは、第2延伸部22が、内部が空洞であり低弾性部22bよりも熱伝導率の高い高熱伝導部22aと、高熱伝導部22aに積層された低弾性部22bとを含む点が、バッテリ冷却装置1と相違する。低弾性部22bは、高熱伝導部22aの表面の全体に積層されている。低弾性部22bは、可撓性を有する。
【0065】
高熱伝導部22aは、例えば、第1延伸部21と同じ金属により、第1延伸部21と一体に形成されている。低弾性部22bは、例えば、高熱伝導部22aに接着されている。低弾性部22bの材料としては、例えば、第1実施形態において低弾性部の材料として例示した樹脂が挙げられる。ひずみゲージ100は、第2延伸部22の外壁面をなす低弾性部22bに貼付されている。
【0066】
バッテリ冷却装置1Aでは、可撓性を有する低弾性部22bにひずみゲージ100を貼付しているため、バッテリ冷却装置1と同様に、ひずみゲージ100によりヒートパイプ20の微小歪を検出することが可能となる。また、バッテリ冷却装置1Aでは、バッテリ冷却装置1と比べて、ヒートパイプ20のより多くの部分が熱伝導率の高い材料から形成されているため、より良好な熱伝導効率を維持しつつ、バッテリセル10の膨張等を高感度に検出することができる。また、バッテリ冷却装置1Aでは、高熱伝導部22aをくり抜いたり、高熱伝導部22aと低弾性部22bとを繋ぎ合わせたり、という加工が必要なく、ひずみゲージ100を備えた低弾性部22bを高熱伝導部22aに貼付するだけでよいため、製造することが容易である。
【0067】
図8は、第1実施形態の変形例2に係るバッテリ冷却装置を例示する部分断面図であり、ひずみゲージ100を通り、かつXY平面に平行な方向に切った断面を示している。
【0068】
図8に示すように、バッテリ冷却装置1Bでは、低弾性部22bが高熱伝導部22aの表面の一部に積層されている点が、バッテリ冷却装置1Aと相違する。つまり、高熱伝導部22aと低弾性部22bとの積層方向から視て(Y+側からY-側に見て)、低弾性部22bの大きさは、高熱伝導部22aの大きさよりも小さい。すなわち、第2延伸部22の外壁面は、高熱伝導部22a及び低弾性部22bで形成されている。
【0069】
このように、第2延伸部22の外壁面の全体を低弾性部で構成する必要はなく、ひずみゲージ100を貼付する部分のみを低弾性部で構成すればよい。バッテリ冷却装置1Bでは、バッテリセル10を高熱伝導部22aで完全に覆っているため、冷却性能は図7に示すバッテリ冷却装置1Aの場合と同等である。また、バッテリ冷却装置1Bでは、バッテリ冷却装置1Aと同様に、高熱伝導部22aをくり抜いたり、高熱伝導部22aと低弾性部22bとを繋ぎ合わせたり、という加工が必要なく、ひずみゲージ100を備えた低弾性部22bを高熱伝導部22aに貼付するだけでよいため、製造することが容易である。また、バッテリ冷却装置1Bでは、バッテリ冷却装置1Aに比して、低弾性部22bの材料を削減することもできる。
【0070】
図9は、第1実施形態の変形例3に係るバッテリ冷却装置を例示する部分断面図であり、ひずみゲージ100を通り、かつXY平面に平行な方向に切った断面を示している。
【0071】
図9に示すように、バッテリ冷却装置1Cでは、第2延伸部22が、内部が空洞であり低弾性部22bよりも熱伝導率の高い高熱伝導部22aと、高熱伝導部22aに形成された貫通孔22xと、貫通孔22xを埋める低弾性部22bとを含む点が、バッテリ冷却装置1Bと相違する。Y+側からY-側に見て、低弾性部22bの大きさは、高熱伝導部22aの大きさよりも小さい。すなわち、第2延伸部22の外壁面は、高熱伝導部22a及び低弾性部22bで形成されている。
【0072】
このように、高熱伝導部22aに部分的に貫通孔22xを形成し、貫通孔22xを低弾性部22bで埋めてよい。バッテリ冷却装置1Cでは、第2延伸部22において高熱伝導部22aの面積が低弾性部22bの面積よりも大きいので、冷却性能は図7に示すバッテリ冷却装置1Aや図8に示すバッテリ冷却装置1Bには劣るものの、図3に示すバッテリ冷却装置1よりも優れている。また、低弾性部22bを低面積にすることで、ヒートパイプ20元来の熱伝達効率を保持することができる。また、バッテリ冷却装置1Cでは、バッテリ冷却装置1と同等の薄肉化や省スペース化が可能となる。
【0073】
図10は、第1実施形態の変形例4に係るバッテリ冷却装置を例示する部分断面図であり、ひずみゲージ100を通り、かつXY平面に平行な方向に切った断面を示している。
【0074】
図10に示すように、バッテリ冷却装置1Dでは、第2延伸部22が、内壁面を構成し低弾性部22bよりも熱伝導率の高い高熱伝導部22aと、外壁面を構成する低弾性部22bとを含み、高熱伝導部22aと低弾性部22bとが空洞Cを挟んで対向する点が、バッテリ冷却装置1と相違する。低弾性部22bは、Z方向の全体に設けられている。すなわち、第2延伸部22の外壁面は、低弾性部22bのみで形成されている。
【0075】
このように、第2延伸部22の内壁面と外壁面とを異種材料により構成してもよい。この場合も、バッテリ冷却装置1と同様の効果を奏する。また、バッテリ冷却装置1Dでは、感度と熱伝達の両立が可能であり、設計自由度も向上することができる。
【0076】
〈第2実施形態〉
第2実施形態では、異常判定部を有するバッテリ冷却装置の例を示す。なお、第2実施形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0077】
図11は、第2実施形態に係るバッテリ冷却装置を例示する模式図である。図11に示すように、バッテリ冷却装置2は、バッテリ冷却装置1の構成に加え、異常判定部300を有している。
【0078】
バッテリ冷却装置2において、各々のひずみゲージ100の出力は、異常判定部300に入力されている。なお、図11では、簡略化のため、各々のひずみゲージ100と異常判定部300との接続を1本の線で示しているが、実際には、各々のひずみゲージ100の一対の電極150が異常判定部300に接続される。
【0079】
異常判定部300は、各々のひずみゲージ100の出力に基づいて、バッテリセル10の異常を判定し、判定結果を出力することができる。具体的には、異常判定部300は、各々のひずみゲージ100の抵抗値を監視することで、バッテリセル10の膨張や収縮に伴ないヒートパイプ20に伸縮が生じたか否かを判定し、判定結果を出力することができる。
【0080】
例えば、異常判定部300は、少なくとも1つのひずみゲージ100の抵抗値が予め定めた閾値を超えた場合に、いずれかのバッテリセル10に膨張や収縮が生じたと判定することができる。又、異常判定部300は、判定結果を外部に出力することができる。
【0081】
図12は、異常判定部の一例について説明する図である。図12に示すように、異常判定部300は、例えば、アナログフロントエンド部310と、制御部320とを含む構成とすることができる。各々のひずみゲージ100の出力は、アナログフロントエンド部310に接続されている。
【0082】
アナログフロントエンド部310は、例えば、ブリッジ回路、増幅回路、A/D変換回路(アナログ/デジタル変換回路)等を備えており、ひずみゲージ100の出力に基づいて、ひずみ波形を生成する。アナログフロントエンド部310は、温度補償回路を備えていてもよい。アナログフロントエンド部310は、IC化されていてもよいし、個別部品により構成されていてもよい。
【0083】
なお、アナログフロントエンド部310は、ひずみゲージ100の個数に対応するブリッジ回路を有するが、増幅器等は個別に設けてもよいし、両者に共通であってもよい。
【0084】
アナログフロントエンド部310において、各々のひずみゲージ100の出力に対応するひずみ波形がブリッジ回路から出力され、増幅回路で増幅された後、A/D変換回路によりデジタル信号に変換され、制御部320に出力される。アナログフロントエンド部310が温度補償回路を備えている場合には、温度補償されたデジタル信号が制御部320に送られる。
【0085】
制御部320は、アナログフロントエンド部310から送られたデジタル化されたひずみ波形に演算処理を行い、バッテリセル10の膨張や収縮を監視する。演算処理は、例えば、ひずみ波形を所定の閾値と比較することを含む。制御部320は、演算処理の結果に基づいて、制御信号OPを出力することができる。
【0086】
制御信号OPは、例えば、音声出力装置、画像表示装置、光点滅装置等に入力することができる。これらの装置により、警告音、警告画像、警告用の光点滅等を行うことで、装置の監視者等にバッテリ冷却装置2の異常を知らせることができる。
【0087】
図13は、制御部のハードウェアブロック図の一例である。図13に示すように、制御部320は、主要な構成要素として、CPU(Central Processing Unit)321と、ROM(Read Only Memory)322と、RAM(Random Access Memory)323と、I/F(Interface)324と、バスライン325とを有している。CPU321、ROM322、RAM323、及びI/F324は、バスライン325を介して相互に接続されている。制御部320は、必要に応じ、他のハードウェアブロックを有しても構わない。
【0088】
CPU321は、制御部320の各機能を制御する。記憶手段であるROM322は、CPU321が制御部320の各機能を制御するために実行するプログラムや、各種情報を記憶している。記憶手段であるRAM323は、CPU321のワークエリア等として使用される。又、RAM323は、所定の情報を一時的に記憶できる。I/F324は、他の機器等と接続するためのインターフェイスであり、例えば、アナログフロントエンド部310や外部ネットワーク等と接続される。
【0089】
制御部320は、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、所定の機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System On a Chip)、又はGPU(Graphics Processing Unit)であってもよい。又、制御部320は、回路モジュール等であってもよい。
【0090】
このように、バッテリ冷却装置2では、異常判定部300を設けたことにより、バッテリセル10の膨張や収縮に伴なうヒートパイプ20の伸縮の程度をひずみゲージ100の抵抗体の抵抗値の変化として検出することができる。そして、異常時には、異常判定部300の出力する制御信号に基づいて、装置の監視者等にバッテリ冷却装置2の異常を知らせることができる。これにより、バッテリセル10の破損を回避すると共にバッテリ冷却装置2の安全性を向上できる。
【0091】
特に、抵抗体130がCr混相膜から形成されている場合は、抵抗体130がCu-NiやNi-Crから形成されている場合と比べ、バッテリセルの膨張や収縮に対する抵抗値の感度が大幅に向上する。抵抗体130がCr混相膜から形成されている場合、バッテリセルの膨張や収縮に対する抵抗値の感度は、抵抗体130がCu-NiやNi-Crから形成されている場合と比べ、おおよそ5~10倍程度となる。そのため、抵抗体130をCr混相膜から形成することで、バッテリセル10の膨張や収縮を精度よく検出することが可能となる。
【0092】
〈第3実施形態〉
第3実施形態では、冷却部を有するバッテリ冷却装置の例を示す。なお、第3実施形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0093】
図14は、第3実施形態に係るバッテリ冷却装置を例示する図であり、バッテリ冷却装置1を図1の矢印S方向と同様の方向から視た図である。
【0094】
図14に示すように、バッテリ冷却装置3は、ヒートパイプ20と接する冷却部50をさらに有し、冷却部50にひずみゲージ100が貼付されている点が、バッテリ冷却装置1と相違する。
【0095】
冷却部50は、ヒートパイプ20のバッテリセル10と接していない領域と接するように配置されている。冷却部50は、ヒートパイプ20から移動してきた熱を外部に放出する部分である。冷却部50は、例えば、放熱フィンやヒートシンクである。冷却部50は、例えば、車両に搭載されたラジエーターであってもよい。
【0096】
例えば、ヒートパイプ20が何らかの原因で損傷したり、動作が止まったりした場合、作動液が空洞Cを循環しなくなるため、ヒートパイプ20全体が通常より昇温し、それに伴い冷却部50も通常より昇温する。この昇温により冷却部50に微小歪みが生じるため、冷却部50に貼付されたひずみゲージ100により微小歪みを検出することにより、冷却部50の昇温の程度を検出することができる。
【0097】
なお、冷却部50の剛性が高い場合には、第1実施形態等と同様に、冷却部50に低弾性部を設け、低弾性部にひずみゲージ100を貼付することが好ましい。これにより、冷却部50の微小歪みを高感度に検出することができる。
【0098】
〈第3実施形態の変形例〉
第3実施形態の変形例では、冷却部を有するバッテリ冷却装置がさらに異常判定部を有する例を示す。なお、第3実施形態の変形例において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0099】
図15は、第3実施形態の変形例に係るバッテリ冷却装置を例示する模式図である。図15に示すように、バッテリ冷却装置3Aは、バッテリ冷却装置3の構成に加え、異常判定部300Aを有している。
【0100】
バッテリ冷却装置3Aにおいて、ヒートパイプ20に貼付された各々のひずみゲージ100の出力、及び冷却部50に貼付されたひずみゲージ100の出力は、異常判定部300Aに入力されている。なお、図15では、簡略化のため、各々のひずみゲージ100と異常判定部300Aとの接続を1本の線で示しているが、実際には、各々のひずみゲージ100の一対の電極150が異常判定部300Aに接続される。
【0101】
異常判定部300Aにおいて、図12及び図13に示した構成については異常判定部300と同様であるため、説明は省略する。
【0102】
異常判定部300Aは、ヒートパイプ20に貼付された各々のひずみゲージの出力に基づいて、バッテリセル10の異常を判定し、第1の判定結果を出力することができる。また、異常判定部300Aは、冷却部50に貼付されたひずみゲージの出力に基づいて、ヒートパイプ20の異常を判定し、第2の判定結果を出力することができる。以下に具体的に説明する。
【0103】
異常判定部300Aは、異常判定部300と同様に、ヒートパイプ20に貼付された各々のひずみゲージ100の出力に基づいて、ヒートパイプ20の伸縮を検出することができる。さらに、異常判定部300Aは、冷却部50に貼付されたひずみゲージ100の出力に基づいて、ヒートパイプ20の過剰な昇温を検出することができる。
【0104】
前述のように、ヒートパイプ20が何らかの原因で損傷したり、動作が止まったりした場合、作動液が空洞Cを循環しなくなるため、ヒートパイプ20全体が通常より昇温し、それに伴い冷却部50も通常より昇温する。異常判定部300Aは、この昇温を、冷却部50に貼付されたひずみゲージ100の出力に基づいて検出することができる。
【0105】
これにより、ヒートパイプ20に貼付された各々のひずみゲージ100で検出したヒートパイプ20の伸縮が、バッテリセル10の膨張や伸縮に伴なう変形か、ヒートパイプ20の異常による変形かを知ることができる。
【0106】
例えば、異常判定部300Aは、ヒートパイプ20に貼付されたひずみゲージ100の出力に基づいてヒートパイプ20の伸縮の異常を検出し、かつ冷却部50に貼付されたひずみゲージ100の出力に基づいてヒートパイプ20の昇温の異常を検出する場合がある。この場合、異常判定部300Aは、画像表示装置等に制御信号を出力することにより、『作動液が正しく流れていない』等の情報を装置の監視者等に知らせることができる。
【0107】
また、異常判定部300Aは、ヒートパイプ20に貼付されたひずみゲージ100の出力に基づいてヒートパイプ20の伸縮の異常を検出し、かつ冷却部50に貼付されたひずみゲージ100の出力は正常であると判定する場合がある。この場合、異常判定部300Aは、画像表示装置等に制御信号を出力することにより、『バッテリセルの交換が必要』等の情報を装置の監視者等に知らせることができる。
【0108】
また、異常判定部300Aは、ヒートパイプ20に貼付されたひずみゲージ100の出力、及び冷却部50に貼付されたひずみゲージ100の出力が、所定の閾値を大きく超えている場合には、バッテリ冷却装置3Aが危険な状態であると判定することができる。この場合、異常判定部300Aは、画像表示装置等に制御信号を出力することにより、『危険な状態である』等の情報を装置の監視者等に知らせることができる。
【0109】
〈第4実施形態〉
上述した各実施形態およびその変形例では、本開示に係る検出部が抵抗体を用いたひずみゲージである例について説明した。すなわち、前記各実施形態では、本開示に係る検出部が電気抵抗式の金属ひずみゲージである場合について説明した。しかしながら、本開示に係る検出部は金属ひずみゲージに限定されない。例えば、本開示に係る検出部は、当該ひずみゲージに含まれる検出素子によって、起歪体(または、ヒートパイプ20の低弾性部等の起歪体に相当する構造物)のひずみによって引き起こされる磁気変化を検出するひずみゲージであってもよい。
【0110】
具体的には、本開示に係る検出部は、ビラリ現象(後述)を利用した検出素子を含んだひずみゲージであってもよい。また、本開示に係る検出部は、磁気トンネル接合(後述)の構造を有する検出素子を含んだひずみゲージであってもよい。以下、第4実施形態では、ビラリ現象を利用した検出素子を含むひずみゲージについて説明する。また、第5実施形態では、磁気トンネル接合の構造を有する検出素子を含んだひずみゲージについて説明する。
【0111】
なお、本明細書の各実施形態では、同様の機能を有する部材には同様の名称および部材番号を付し、説明を繰り返さないこととする。また、以降の各実施形態に係る各図面(図16以降の図面)におけるx軸、y軸、およびz軸の方向は同一である。また、以降の説明では、z軸の正方向を「上」、z軸の負方向を「下」と称する。すなわち、以降の説明において「上側」とはz軸の正方向側であり、「上面」はz軸の正方向側にある面を示す。また、「下側」とはz軸の負方向側であり、「下面」とはz軸の負方向側にある面を示す。ただし、ひずみゲージ100は様々な向きでヒートパイプ20に貼付されるため、図16以降の図面におけるx軸、y軸、およびz軸の方向は、図16より前の図面におけるx軸、y軸、およびz軸の方向とは一致しない。
【0112】
図16は、第4実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子600の一例を示す図である。図16の(a)は検出素子600をz軸の正方向から負方向(すなわち、上面から下面側)に見下ろしたときの平面図である。一方、図16の(b)は、図16の(a)に示す検出素子600のα-α´直線での断面図を示している。なお、図16の(a)および(b)では、検出素子600から延びる配線は図示していない。しかしながら、検出素子600には、後述する駆動コイル620と電源とを接続する配線と、感知コイル680によって検出された電流を伝達するための配線が接続されていてもよい。
【0113】
図16の(a)に示す通り、検出素子600は、駆動コイル620と、感知コイル680と、ベース層610とを含む。ベース層610は駆動コイル620および感知コイル680の芯材となる層である。感知コイル680は、ベース層610(より厳密には、後述するベース金属670)の磁化の強さを検出するためのコイルである。駆動コイル620は、磁界を発生させるためのコイルである。検出素子600は、ベース層610を芯材として、感知コイル680が内側、そして駆動コイル620が外側に巻かれた2重構造を有している。なお、駆動コイル620および感知コイル680の材料は、Cu、Ag、Al、およびAu等の導電性金属、ならびに、これらの金属の合金であることが望ましい。また、駆動コイル620および感知コイル680の巻き数および断面積の大きさは、検出素子600に要求されるひずみの検知感度に応じて適宜設計されてよい。
【0114】
後で詳述するが、ベース層610に応力が加わると、ベース層610に含まれるベース金属670(後述)の磁化の強さが変化する。検出素子600は、感知コイル680でこの磁化の強さの変化を検出することによって、ベース層610にかかる応力の強さ(すなわち、ひずみ度合)を特定することができる。
【0115】
図16の(b)の断面図を参照して、検出素子600の構成について更に説明する。なお、図16の(b)において、駆動コイル620、感知コイル680、および3つの絶縁層640、650、および660はそれぞれ、芯材であるベース金属670を取り囲むように形成されている。すなわち、図16の(b)において同じ部材番号を付した層は、ベース金属670を取り囲んで繋がっている。
【0116】
ベース金属670は、各種コイルおよび絶縁層の芯材となる部材である。ベース金属670は、例えば略平板状の金属板であってよい。ベース金属670は絶縁層660で取り囲むように被覆されている。ベース金属670は、例えば、センダスト等のFe-Si-Al系合金、および、パーマロイ等のNi-Fe系合金等の軟磁性体材料で構成されることが望ましい。前述のベース層610は、図16の(b)に示す通り、このベース金属670と絶縁層660から成る。
【0117】
絶縁層660の外側には、絶縁層660を取り囲むように絶縁層650が形成される。そして、絶縁層650の外側には、更に絶縁層640が形成されている。絶縁層650は、感知コイル680を含む層であり、感知コイル680の間隙を絶縁材料で充填した層である。絶縁層640は、駆動コイル620を含む層であり、駆動コイル620の間隙を絶縁材料で充填した層である。絶縁層640、650、および660は、磁界に影響しないドライフィルムまたは感光性ポリイミド等のレジスト硬化物から成ることが望ましい。
【0118】
検出素子600の一面は、図16の(b)に示すように、基材110に貼り付けられていてよい。基材110は、検出素子600を固定する部材である。例えば、基材110は、プラスチックフィルム等で構成されるフレキシブル基板であってよい。検出素子600は基材110を介してヒートパイプ20の低弾性部に貼り付けられる。なお、検出素子600は、全体として平板または薄膜状の検出素子であってもよい。検出素子600が平板または薄膜状である場合、検出素子600を基材110により容易に貼り付けることができる。また、検出素子600において基材110は必須の構成ではない。例えば、検出素子600に基材110を設けず、検出素子600の下面をヒートパイプ20の低弾性部に直接貼り付けて使用してもよい。
【0119】
本実施形態に係るヒートパイプ20の低弾性部は、基本的には第1実施形態に係るヒートパイプ20の低弾性部と同様の構成および材料であってよい。
【0120】
次に、検出素子600を用いてひずみを検出する原理を概説する。検出素子600は、磁性体であるベース金属670を含んでいる。電源から駆動コイル620に交流電流が供給されると、駆動コイル620はその周囲に交番磁界を生じさせる。これにより磁界が発生し、ベース金属670は磁化される。この状態でヒートパイプ20の低弾性部が変形すると、ひずみが生じる。ひずみは基材110を伝わり、ベース金属670に応力が加わる。なお、検出素子600を、基材110を介さずにヒートパイプ20の低弾性部に貼り付けている場合は、ヒートパイプ20の低弾性部からベース金属670(およびそれを被覆する絶縁層640~660)に直接応力が伝わる。
【0121】
ベース金属670に応力が加わると、その応力に応じてベース金属670の透磁率が変化する。したがって、ベース金属670の磁化の強さ(磁化の程度)が変化する。このように、磁性体に応力がかかると磁性体の透磁率および磁化の強さが変化する現象のことを「ビラリ現象」という。検出素子600の構成によれば、ピックアップコイルである感知コイル680には、ベース金属670の磁化の強さに応じた交流電圧が誘起される。したがって、ビラリ現象の原理に基づけば、この交流電圧の値から、ベース金属670にかかる応力を算出することができる。そして、当該算出した応力から、ヒートパイプ20の低弾性部のひずみ度合を特定することができる。なお、検出素子600が図16の(a)および(b)に示す形状である場合、検出素子600のグリッド方向は、図16の(a)におけるα-α´方向に等しい。以上説明した原理に基づいて、検出素子600は、ヒートパイプ20の低弾性部のひずみを検出することができる。すなわち、検出素子600は、ひずみゲージの検出素子として機能する。
【0122】
なお、駆動コイル620は、感知コイル680の外側、かつ当該感知コイル680が存在している領域全体に、できる限り均一に巻き付けられることが望ましい。これにより、ベース金属670の、感知コイル680が存在する領域全体に、より均一に交番磁界を加えることができる。これにより、ビラリ現象によるベース金属670の磁化の強さの変化をより精密に検出することができる。したがって、検出素子600の性能が向上する。
【0123】
また、絶縁層660は、ベース金属670の全部ではなく一部に形成されていてもよい。例えば、ベース金属670のうち、感知コイル680および駆動コイル620を巻き付ける領域の部分を絶縁層660で覆い、絶縁層660の上から感知コイル680を含む絶縁層650で覆い、更に、絶縁層650の上から駆動コイル620を含む絶縁層640で覆うような構成であってもよい。
【0124】
また、ベース金属670が略平板状である場合、絶縁層660はベース金属670の、コイルを巻く方向のみ取り囲んで形成されていてもよい。すなわち、図16の(b)において、ベース金属670のx方向の両端部は絶縁層660で覆われていなくてもよい。
【0125】
本実施形態に係るバッテリ冷却装置において、ヒートパイプ20の低弾性部が変形する(すなわち、起歪体にひずみが生じる)と、ひずみゲージの基材110(または、検出素子600自体)がひずむ。検出素子600は、このひずみによって生じる磁性変化を、前述のビラリ現象の原理に基づき検出することができる。
【0126】
本実施形態に係る検出素子600を含んだひずみゲージは、第1実施形態及び第1実施形態の変形例で示したあらゆる配置パターンでヒートパイプ20の低弾性部に配置可能である。すなわち、本実施形態に係る検出素子600を用いて、電気抵抗式のひずみゲージを用いたときと同様にヒートパイプ20の低弾性部のひずみを検出することができる。したがって、本実施形態に係るひずみゲージは、第1実施形態及び第1実施形態の変形例に係るひずみゲージ100と同様の効果を奏する。
【0127】
〈第5実施形態〉
図17は、第5実施形態に係るひずみゲージに含まれる検出素子の一例である検出素子700を示す図である。図18は、第5実施形態に係る検出素子の他の一例である検出素子800を示す図である。また、図19は、第5実施形態に係る検出素子の更に他の一例である検出素子900を示す図である。図17~19の(a)はそれぞれ、検出素子700、800、および900の斜視図である。図17~19の(b)はそれぞれ、検出素子700、800、および900をz軸の正方向から負方向に見下ろしたときの平面図である。図17~19の(c)は、検出素子700、800、および900の、zx平面に平行な面での断面図である。なお、図17~19のいずれの図も、検出素子から延びる配線は図示していない。しかしながら、これらの検出素子700、800、および900には、後述する上流電極710と電源とを接続する配線と、下流電極720と電源とを接続する配線とが接続されていてもよい。
【0128】
図17図19の(a)に示す通り、検出素子700、800、および900は、上流電極710と、下流電極720と、磁性膜730と、絶縁膜740と、を含む。絶縁膜740は、図示のように磁性膜730で挟まれている。この磁性膜730と絶縁膜740によって、磁気トンネル接合が形成される。すなわち、検出素子700、800、および900は、磁気トンネル接合の構造に電極を接続した構造である。
【0129】
なお、検出素子700、800、および900の下面は、第1実施形態に係る基材110と同様の基材に貼り付けられていてもよい。そして、検出素子700は基材を介してヒートパイプ20の低弾性部に貼り付けられてよい。また、検出素子700、800、および900は、全体として平板または薄膜状の検出素子であってもよい。検出素子700、800、および900が平板または薄膜状である場合、検出素子700、800、および900を基材またはヒートパイプ20の低弾性部により容易に貼り付けることができる。また例えば、検出素子700、800、および900の下面をヒートパイプ20の低弾性部に直接貼り付けて使用してもよい。
【0130】
磁性膜730は磁性ナノ薄膜である。絶縁膜740は絶縁体のナノ薄膜である。磁気トンネル接合の構造が形成可能であれば、磁性膜730と、絶縁膜740の材料は特に限定されない。例えば、磁性膜730としてコバルト鉄ボロン、または、Fe、Co、Niなどの3d遷移金属強磁性体及びそれらを含む合金等を用いることができる。また、絶縁膜740として、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウムや酸化マグネシウム等を用いることができる。
【0131】
上流電極710および下流電極720は、磁気トンネル接合の構造に対し電圧を印加するための電極である。図17~19の例では、電流は上流電極710から下流電極720へと流れる。例えば図17の(c)の場合、上流電極710と下流電極720の間に電圧を印加すると、電子は上側(z軸正方向側)の磁性膜730から、絶縁膜740を超えて下側(z軸負方向側)の磁性膜730に流れ込む。これは「トンネル効果」と呼ばれている現象であり、電子が絶縁膜740を通過するときの電気抵抗は、「トンネル抵抗」と呼ばれている。なお、図17~19の例では、電極の各部の接合部は、磁気トンネル接合の構造をショートパスする電流が流れない様に端部が処理された構造となっている。
【0132】
ところで、基材110等を介して検出素子700にひずみがかかると、トンネル接合の構造において、磁気変化が起こる。より具体的には、上側と下側の磁性膜730の磁化方向がずれる。このように、上下の磁性膜730の磁化方向がずれると、磁化方向が平行な場合に比べて、トンネル抵抗が大きくなる(トンネル磁気抵抗効果)。したがって、前述の構成を備えた検出素子700では、検出素子700(より厳密には、磁気トンネル接合の部分)のひずみの大きさに応じて、電極間を流れる電流が小さくなる。すなわち、ひずみが大きくなるにつれ、電気抵抗が大きくなる。検出素子700は、このように、印加した電圧に対する電流値に基づきひずみを検出することができる。したがって、検出素子700をヒートパイプ20の低弾性部に貼り付けることによって、ヒートパイプ20の低弾性部にかかるひずみを測定することができる。
【0133】
磁気トンネル接合の構造を有する検出素子は、図17に示した例に限定されない。例えば、図18および図19に示すような検出素子800および900を採用することも可能である。図18に示す検出素子800も、図19に示す検出素子900も、上流電極710、下流電極720、磁性膜730、および絶縁膜740で構成されること、および、これらの構成によってひずみを検出する原理については、検出素子700と同様である。また、検出素子800および900の基本的な動作についても、検出素子700と同様である。なお、検出素子700、800、および900のグリッド方向は、それぞれ図17図19におけるx軸方向(x軸の正方向およびx軸の負方向)に相当する。図18に示す検出素子800は図示の通り、上側の磁性膜730と下側の磁性膜730が、一部繋がった構造をしている。すなわち、磁性膜730の一部の領域においてのみ、磁気トンネル接合の構造が形成されており、当該構造においてトンネル磁気抵抗効果が生じる。一方、図19に示す検出素子900は、基板910を介して基材110に貼り付けられる。図17図19に示すように、検出素子は前述の原理を超えない範囲であれば、要求されるサイズ、耐久性、および検出すべき応力の大きさ等に応じて、適宜その設計が変更されてよい。
【0134】
本実施形態に係るヒートパイプ20の低弾性部は、基本的には第1実施形態に係るヒートパイプ20の低弾性部と同様の構成および材料であってよい。また、検出素子700、800、および900は素子全体として、フィルム型などの略平板状の形状であってよい。これにより、ヒートパイプ20の低弾性部に、検出素子700を容易に貼り付けることができる。また、検出素子700、800、および900は、駆動コイル等、磁気トンネル接合の構造部分に対して、微弱な磁界を印加するための構造を有していてもよい。磁気トンネル接合の構造部分に対して磁界を印加することにより、前述のトンネル磁気抵抗効果をより安定して測定することができるため、安定してひずみを検出することができる。
【0135】
また、検出素子700、800、および900における「上流電極」および「下流電極」は便宜上の名称であり、電流の流れる方向は逆であってもよい。つまり、図17図19で示した検出素子700、800、および900において、下流電極720の方から、上流電極710の方へと電流が流れる設計であってもよい。
【0136】
本実施形態に係るバッテリ冷却装置において、ヒートパイプ20の低弾性部が変形する(すなわち、起歪体にひずみが生じる)と、ひずみゲージの基材(または、検出素子700、800、または900自体)がひずむ。検出素子700、800、または900は、このひずみによって生じる磁性変化を、前述のトンネル磁気抵抗効果の原理に基づき検出することができる。
【0137】
本実施形態に係る検出素子700、800、および900を含んだひずみゲージは、第1実施形態および第1実施形態の変形例に示したあらゆる配置位置でヒートパイプ20の低弾性部に配置可能である。すなわち、本実施形態に係る検出素子700、800、および900を用いて、電気抵抗式のひずみゲージを用いたときと同様にヒートパイプ20の低弾性部のひずみを検出することができる。したがって、本実施形態に係るひずみゲージは、第1実施形態及び第1実施形態の変形例に係るひずみゲージ100と同様の効果を奏する。
【0138】
〈第6実施形態〉
本開示に係る検出部は、半導体式のひずみゲージ、静電容量式の圧力センサ、または光ファイバ式のひずみゲージであってもよい。また、本開示に係る検出部は、機械式圧力センサ、振動式圧力センサ、または圧電式圧力センサであってもよい。以下、各種ひずみゲージ及び圧力センサの原理を説明する。
【0139】
(半導体式のひずみゲージ)
半導体式のひずみゲージは、半導体の圧抵抗効果を利用してひずみを検出するひずみゲージである。すなわち、半導体式のひずみゲージは、半導体をひずみの検出素子として用いるひずみゲージである。
【0140】
半導体に応力が印加されると、半導体の結晶格子にひずみが生じて半導体中のキャリアの数及び移動度が変化するため、結果として電気抵抗が変化することが知られている。半導体式のひずみゲージは、電気抵抗式の金属ひずみゲージと同様、ヒートパイプ20の低弾性部に直接貼り付けて使用することができる。この場合、ヒートパイプ20の低弾性部が伸縮すると、貼り付けられた半導体(より詳しくは、半導体の結晶格子)のひずみ電気抵抗が変化する。そのため、当該電気抵抗を測定することでヒートパイプ20の低弾性部のひずみ量を特定することができる。
【0141】
また、半導体式のひずみゲージは、ダイアフラム構造を備えたひずみセンサとして構成することもできる。この場合、ひずみセンサは例えば、非金属のダイアフラム(又は、金属ダイアフラム上に電気絶縁層を形成したもの)と、当該ダイアフラムの上に形成された半導体(例えば、シリコン薄膜の半導体)と、を有する。そして、この様にダイアフラムを含む構造において、ダイアフラムに印加された垂直応力によりダイアフラムがひずむと、半導体の電気抵抗が変化する。そのため、当該電気抵抗を測定することでダイアフラムのひずみ量(ひいては、ヒートパイプ20の低弾性部のひずみ量)を特定することができる。
【0142】
(静電容量式の圧力センサ)
静電容量式の圧力センサは、ダイアフラムにかかる圧力を一対の電極の静電容量の変化として計測する圧力センサである。すなわち、静電容量式の圧力センサは、一対の電極を検出素子として用いる圧力センサである。静電容量式の圧力センサは例えば、可動電極としてのダイアフラムと、1つ以上の固定電極と、を備える。ダイアフラムは例えば不純物を含んだシリコン(すなわち、導体として機能するシリコン)等で形成される。
【0143】
ダイアフラムに圧力が印加されると、当該ダイアフラムが変位し、固定電極と可動電極との間の距離が変化する。電極間の静電容量は、電極間媒質の誘電率と電極の面積が一定ならば、電極間の距離に応じて定まることが知られている。したがって、静電容量を計測することで、ダイアフラムの変位量(すなわち、圧力の大きさ)を特定することができる。
【0144】
(光ファイバ式のひずみゲージ)
光ファイバ式のひずみゲージとは、ファイバ・ブラッグ・グレーティング(FBG)が形成されている光ファイバを用いてひずみを検出するひずみゲージである。すなわち、光ファイバ式のひずみゲージは、光ファイバをひずみの検出素子として用いるひずみゲージである。FBGは光ファイバの他の部分とは異なる光の反射を起こす回折格子であり、この格子の一つ一つは一定間隔で形成されている。光ファイバがひずんで伸びると、FBGの格子間隔が広がるため、光ファイバに入射した光(例えば、レーザ光)の反射光の波長が変化する。また、光ファイバがひずんで縮むと、FBGの格子間隔は狭くなるため、ファイバに入射した光(例えば、レーザ光)の反射光の波長が変化する。
【0145】
このような特性を有する光ファイバをヒートパイプ20の低弾性部に貼り付けておき、光ファイバの反射光の波長スペクトルを計測することで、光ファイバのひずみ量(すなわち、ヒートパイプ20の低弾性部のひずみ量)を特定することができる。なお、光ファイバ式のひずみゲージは、光ファイバ内で生じるブリルアン散乱光の周波数の変化から当該光ファイバのひずみ量を特定するひずみゲージであってもよい。
【0146】
(機械式圧力センサ)
機械式圧力センサは機械的構造物の変位量を計測することで、当該構造物にかかる圧力を特定するセンサである。機械式圧力センサは、例えば、ばね又は曲げた管を備えており、このばねの伸縮量又は曲げた管の伸縮量を計測する。これらの伸縮量(すなわち、変位量)は、ばね又は曲げた管にかかる圧力の大きさに応じて変化する。したがって、当該伸縮量を計測することで、ばね又は曲げた管にかかる圧力を特定することができる。なお、ばね又は曲げた管の形状や大きさは、機械式圧力センサの取り付け対象の大きさ及び形状に応じて適宜定められてよい。
【0147】
(振動式圧力センサ)
振動式圧力センサは、弾性梁の固有振動数が、当該弾性梁の軸に沿って生じる圧力(すなわち、軸力)によって変化するという現象を利用して圧力を検出するセンサである。振動式圧力センサは、電気抵抗式の金属ひずみゲージと同様、ヒートパイプ20の低弾性部に直接貼り付けて使用することができる。また例えば、振動式圧力センサは、基板上に形成されたダイアフラムと、当該ダイアフラムの表面に形成された梁状の振動子と、で構成される圧力センサであってもよい。
【0148】
いずれの場合でも、ヒートパイプ20の低弾性部がひずむと、その圧力は直接または間接的に振動子に伝わり、振動子に軸力が生じる。振動子の固有振動数は、軸力に応じて変化する。したがって、振動子の固有振動数を計測することで、ヒートパイプ20の低弾性部に対する圧力の大きさを特定することができる。
【0149】
(圧電式圧力センサ)
圧電式圧力センサとは、圧電素子(ピエゾ素子とも称する)を含んでおり、この圧電素子の特性を用いて圧力を検出するセンサである。圧電素子は、力が加わり変形する(ひずむ)と、その力に応じた起電力を発生する特性を持っている。また、圧電素子は、電圧をかけると、その電圧に応じた力を発生させて伸縮する特性を持っている。
【0150】
圧電式圧力センサは、圧電素子の起電力を測定することで、圧電素子にかかった力(すなわち、圧電素子のひずみ量)を特定することができる。したがって、圧電式圧力センサをヒートパイプ20の低弾性部に貼り付けておくことで、ヒートパイプ20の低弾性部のひずみ量を特定することができる。
【0151】
以上の説明の通り、半導体式のひずみゲージ、静電容量式の圧力センサ、光ファイバ式のひずみゲージ、機械式圧力センサ、振動式圧力センサ、および圧電式圧力センサを用いた場合でも、第1実施形態及び第1実施形態の変形例に係るひずみゲージ100と同様の効果を得ることができる。
【0152】
以上、好ましい実施形態等について詳説した。しかしながら、本開示に係るバッテリ冷却装置は、上述した実施形態および変形例等に限定されない。例えば、上述した実施形態等に係るバッテリ冷却装置について、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0153】
1,1A,1B,1C,1D,2,3,3A バッテリ冷却装置、10 バッテリセル、21 第1延伸部、22 第2延伸部、22a 高熱伝導部、22b 低弾性部、22x 貫通孔、50 冷却部、100 ひずみゲージ、110 基材、110a 上面、120 機能層、130 抵抗体、130e,130e 終端、140 配線、150 電極、160 カバー層、300 異常判定部、310 アナログフロントエンド部、320 制御部、321 CPU、322 ROM、323 RAM、324 I/F、325 バスライン、600,700,800,900 検出素子、610 ベース層、620 駆動コイル、640,650,660 絶縁層、670 ベース金属、680 感知コイル、710 上流電極、720 下流電極、730 磁性膜、740 絶縁膜、910 基板
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