(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115373
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】水硬性組成物及びコンクリート構造物
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20240819BHJP
C04B 14/36 20060101ALI20240819BHJP
C04B 18/10 20060101ALI20240819BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20240819BHJP
C04B 24/18 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B14/36
C04B18/10 B
C04B24/26 B
C04B24/26 E
C04B24/26 F
C04B24/26 H
C04B24/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021038
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】横山 茂輝
(72)【発明者】
【氏名】久保田 洋
(72)【発明者】
【氏名】平野 勝識
(72)【発明者】
【氏名】塚本 康誉
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MD02
4G112MD03
4G112MD04
4G112MD05
4G112PA20
4G112PA26
4G112PB23
4G112PB29
4G112PB31
4G112PB32
4G112PC03
(57)【要約】
【課題】バイオ炭のような多孔質の炭素材料をコンクリート組成物などの水硬性組成物に含有させる場合に、空気連行性を備え、ワーカビリティに優れた水硬性組成物を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態における水硬性組成物は、炭素材料、水硬性材料、及びセメント分散剤としての化学混和剤を含み、前記炭素材料は、比表面積100~1000m
2/g、嵩比重0.05g/mlより大きく、粒子径53μm以下の粒子が50質量%以下であり、化学混和剤は、酸基及びポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を含む。さらに、化学混和剤は、さらにスルホン酸基及び/又はその塩を含有する高分子化合物を含む
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素材料、水硬性材料、及びセメント分散剤としての化学混和剤を含み、
前記炭素材料は、
比表面積100~1000m2/g、嵩比重0.05g/mlより大きく、粒子径53μm以下の粒子が50質量%以下であり、
前記化学混和剤は、酸基及びポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を含むことを特徴とする、水硬性組成物。
【請求項2】
前記化学混和剤は、さらにスルホン酸基及び/又はその塩を含有する高分子化合物を含む、請求項1に記載の水硬性組成物。
【請求項3】
前記化学混和剤は、さらにカルボキシル酸基及び/又はその塩含有化合物を含む、請求項1に記載の水硬性組成物。
【請求項4】
前記酸基及びポリアルキレングリコール鎖を有する化合物は、化学式(1)で表される単量体に由来する第1の構成単位0~99質量%、化学式(2)で表される単量体に由来する第2の構成単位0~99質量%、及び化学式(3)で表される単量体に由来する第3の構成単位0~99質量%からなる群から選択される少なくとも2種の構成単位を有する共重合体であり、第1の構成単位、第2の構成単位、第3の構成単位を合計して100質量%となる、請求項1に記載の水硬性組成物、
【化1】
(化学式(1)中、R
1~R
3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表す。pは、0~2の整数を表し、qは、0又は1を表す。A
1Oは、同一若しくは異なっていてもよい、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。nは、1~300の整数を表す。R
4は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表す)、
【化2】
(化学式(2)中、R
5~R
7は、それぞれ独立に、水素原子、-CH
3又は-(CH
2)
rCOOM
2を表す。但し、-(CH
2)
rCOOM
2は、互いに-COOM
1又は他の-(CH
2)
rCOOM
2と無水物を形成していてもよく、無水物を形成する場合はM
1、M
2は存在しない。M
1及びM
2は、同一若しくは異なっていてもよい、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基又は置換アルキルアンモニウム基を表す。rは0~2の整数を表す)、
【化3】
(化学式(3)中、R
8~R
10は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表す。R
11は、ヘテロ原子を含んでもよい炭素原子数1~4の炭化水素基を表す。sは0~2の整数を表す)。
【請求項5】
水硬性材料としてセメントを使用したコンクリート組成物である、請求項1~4のいずれかに記載の水硬性組成物。
【請求項6】
請求項5の水硬性組成物を打設してなる、コンクリート構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水硬性組成物、特に炭素材料を含有するコンクリート組成物及びコンクリート構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化抑制の観点から、空気中の二酸化炭素を貯留する様々な技術が開発され、その中で二酸化炭素をコンクリート内に固定する技術が着目されている。
【0003】
特許文献1には、活性炭などの多孔質性材料の表面に液体を付着したうえで凍結させ、それらをコンクリート作製の際の材料として使用する技術が開示されている。特許文献2には、炭素の表面にセラミックス層をコーティングして、コンクリート作製の際の材料として使用する技術が開示されている。特許文献3には、セラミックスでコーティングされた炭素をセメント水和硬化物多孔質成形体として、コンクリート作製の際の材料として使用する技術が開示されている。
【0004】
従来、家畜糞尿、もみ殻など由来の原料を350度程度の温度にて加熱して作製されるバイオ炭が知られている。バイオ炭は低比重かつ多孔質性であり、このバイオ炭を特許文献1~3のようなコンクリートの材料用途で使用する研究がなされてきた。
【0005】
例えば、木材(チップやペレット)をガス化炉にて高温で蒸し焼きにし、高温で加熱分解させることより可燃性ガスを発生させ、ガスエンジンにて発電する木質バイオマスガス化発電が知られている。その副産物であるバイオ炭は微細孔構造を持っており、保水性や吸着性が高いことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許4634248号公報
【特許文献2】特開2002-226248号公報
【特許文献3】特開2005-154163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、バイオ炭をコンクリートなどの水硬性組成物の製造に使用される混和材として用いた場合、水硬性組成物の「空気連行性」が不十分になりやすいという問題がある。
【0008】
例えばコンクリート組成物を製造する際の混和材としてバイオ炭を用いる場合、空気連行性を向上させるための化学混和剤などを混合させても、バイオ炭が化学混和剤を吸着してしまい、水硬性組成物において期待される空気連行性が十分でなく、硬化前のワーカビリティ或いは硬化後の耐凍害性などにおいて求められる特性が得られにくくなるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するために、バイオ炭のような多孔質の炭素材料を含有し、かつ空気連行性を備え、ワーカビリティに優れた水硬性組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態における水硬性組成物は、炭素材料、水硬性材料、及びセメント分散剤としての化学混和剤を含み、炭素材料は、比表面積100~1000m2/g、嵩比重0.05g/mlより大きく、粒子径53μm以下の粒子が50質量%以下であり、化学混和剤は、酸基及びポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を含む。
【0011】
本発明の一実施形態における水硬性組成物は、化学混和剤が、さらにスルホン酸基及び/又はその塩を含有する高分子化合物を含む。
【0012】
本発明の一実施形態における水硬性組成物は、化学混和剤が、さらにカルボキシル酸基及び/又はその塩含有化合物を含む。
【0013】
本発明の一実施形態における水硬性組成物は、酸基及びポリアルキレングリコール鎖を有する化合物が、化学式(1)で表される単量体に由来する第1の構成単位0~99質量%、化学式(2)で表される単量体に由来する第2の構成単位0~99質量%、及び化学式(3)で表される単量体に由来する第3の構成単位0~99質量%からなる群から選択される少なくとも2種以上の構成単位を有する共重合体であり、第1の構成単位、第2の構成単位、第3の構成単位を合計して100質量%となる、
【化1】
(化学式(1)中、R
1~R
3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表す。pは、0~2の整数を表し、qは、0又は1を表す。A
1Oは、同一若しくは異なっていてもよい、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。nは、1~300の整数を表す。R
4は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表す)
【化2】
(化学式(2)中、R
5~R
7は、それぞれ独立に、水素原子、-CH
3又は-(CH
2)
rCOOM
2を表す。但し、-(CH
2)
rCOOM
2は、互いに-COOM
1又は他の-(CH
2)
rCOOM
2と無水物を形成していてもよく、無水物を形成する場合はM
1、M
2は存在しない。M
1及びM
2は、同一若しくは異なっていてもよい、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基又は置換アルキルアンモニウム基を表す。rは0~2の整数を表す)
【化3】
(化学式(3)中、R
8~R
10は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表す。R
11は、ヘテロ原子を含んでもよい炭素原子数1~4の炭化水素基を表す。sは0~2の整数を表す)。
【0014】
本発明の一実施形態における水硬性組成物は、水硬性材料としてセメントを使用したコンクリート組成物である。
【0015】
本発明の一実施形態におけるコンクリート構造物は、水硬性組成物を打設してなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】従来のコンクリート組成物の製造工程を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明につき図面を参照しつつ説明する。なお、本発明を実施する形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0018】
本明細書中において、水硬性組成物とは、主に硬化前のコンクリート組成物(生コンクリート)を示すが、モルタル、石膏を含んでもよい。また、特に水硬性組成物のうち、生コンクリートを打設し硬化したものを、コンクリート構造物と呼ぶ。
【0019】
本明細書中において、炭素材料とはバイオマス原料から作製された多孔質のバイオ炭及びそれと同等の炭粉末又は粒子を主成分とする材料を意味し、例えば多孔質でない結晶性の炭素材料などは含まない。また、後述するが炭素以外の揮発成分及び灰分を含んでもよい。
【0020】
以下、本発明の一実施形態であるコンクリートを例に説明する。
【0021】
建築物などに用いられるコンクリート構造物は、まず凝固前の流動性のあるコンクリート組成物(生コン)を製造し、それを型枠に打設して硬化させることにより、一定の強度を有する建築部材等として使用できるようになる。
【0022】
コンクリート組成物は、前述のように型枠に打設する工法が用いられるため、打設時のワーカビリティの指標として一定の流動性が求められる。そのため、通常は多量の水が添加され、またAE減水剤などの化学混和剤の添加によりコンクリート組成物内に微細な気泡を分散させ、これらのボールベアリング作用によりワーカビリティを向上させることもできる。そのため、コンクリート組成物を構成する各成分の量は、適正な比率に調整される必要がある。なお、施工の際には、コンクリート組成物内の水分量、空気量、温度、塩化物量なども適正に調整されたうえで、打設及び硬化される。
【0023】
図1は、コンクリート組成物を作製する際の従来の製造工程を示す概要図である。コンクリート組成物を構成する成分は、主にセメント、水、混和材、骨材、化学混和剤からなる。これらをそれぞれ適量に計量し、ミキサーで所定時間混合させることにより、流動性のあるコンクリート組成物が製造される。
【0024】
セメントはコンクリート組成物を構成する主成分であり、一般的には、水や液体などにより水和や重合することで硬化する粉体を意味する。本発明の実施形態において使用されるセメントは限定されるものではないが、例えば、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントなどの公知のセメント又はそれらの混合物を使用することができる。
【0025】
セメントの量はコンクリート組成物を作製する際の混合比率において、適宜設定することができる。しかしセメントの含有量が高すぎると乾燥収縮が大きくなるため、ひび割れしやすくなり、低すぎると他の混合物を均一結合させることができず強度が不足しやすくなる。したがって、コンクリート組成物1m3あたり250~350kgとなるように混合されることが好ましい。
【0026】
水は、凝結補助剤としてセメントの硬化を補助する成分である。また、コンクリート組成物の流動性を調整し、型に入れる際の作業性を調整し、又はコンクリート内に鉄筋を配置しやすくする成分である。水は、コンクリート組成物を作製する際の混合比率において、含有量が高すぎると乾燥時の収縮が大きくなりひび割れしやすくなる。また含有量が低すぎるとコンクリート組成物の流動性が低下し、打設しにくくなる。したがって、水は、コンクリート組成物1m3あたり150~200kgとなるように混合されることが好ましい。使用する水としては、水道水、工業用水、回収水、地下水、河川水、雨水、海水等を使用することができる。
【0027】
混和材は、セメントとともに多量に混合される構成成分の1つであり、コンクリート組成物の品質を向上させるために混合される。一般的には高炉スラグ微粉末、火山灰、フライアッシュ、シリカフュームなどが利用される。また、詳細は後述するが、本発明の一実施形態においては、混和材としてバイオ炭などの炭素材料を使用する。
【0028】
混和材は、コンクリート組成物を作製する際の混合比率において、含有量が高すぎると中性化抵抗性が低下する。したがって、混和材は、コンクリート組成物1m3あたり0.1~50kg含有するように混合されることが好ましい。なお、本発明の一実施形態によるコンクリート組成物には、混和材の一部として炭素材料を使用することができる。
【0029】
骨材はセメントの充填剤としての機能を有する。また骨材を適切に選択することによりコンクリートの収縮低減、発熱抑制、剛性付与、耐磨耗性付与の機能を有することができる。通常、骨材は粒径により粗骨材及び細骨材に分類され、例えば平均粒径が5.0mm以上のものを粗骨材、5.0mm以下のものを細骨材と呼んでもよい。骨材としては、川砂、海砂、砕砂、人工細骨材、スラグ細骨材、再生骨材、珪砂、川砂利、陸砂利、砕石、人工粗骨材、スラグ粗骨材、及び再生粗骨材砂、などを使用することができる。
【0030】
骨材は、コンクリート組成物を作製する際の混合比率において、含有量が高すぎると骨材分離が生じやすい荒々しいコンクリートとなるが、低すぎるとコンクリートの流動性が低下する。したがって、骨材は、コンクリート組成物1m3あたり1000~2500kg含有するように混合されることが好ましい。
【0031】
化学混和剤は、コンクリートの用途に応じて、必要な機能を付与するために混合される成分である。
【0032】
化学混和剤としては、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤といったセメント分散剤、が挙げられる。任意成分としては、例えば、水溶性高分子、硬化促進剤、増粘剤、高分子エマルジョン、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張剤、防水剤、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、消泡剤、AE剤、界面活性剤等の公知のセメント組成物用添加剤が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明の一実施形態において、セメント分散剤としての化学混和剤は、酸基及びポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を含むことができる。
【0034】
本発明の一実施形態において、セメント分散剤としての化学混和剤である酸基及びポリアルキレングリコール鎖を有する化合物は、下記化学式(1)で表される単量体(オキシアルキレン基含有不飽和単量体)に由来する第1の構成単位、下記化学式(2)で表される単量体(カルボン酸若しくはその塩又は酸無水物含有不飽和単量体)に由来する第2の構成単位、及び下記化学式(3)で表される単量体(エステル基含有不飽和単量体)に由来する第3の構成単位からなる群から選択される少なくとも2種以上の構成単位を有する共重合体(以下、本明細書中において共重合体(A)(共重合体(A)の溶液を含む)と呼ぶ)を使用することができる。
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
化学式(1)中、R1~R3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表す。炭素原子数1~3のアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。炭素原子数1~3のアルキル基は、置換基を有していてもよい(但し、置換基の炭素原子数はアルキル基の炭素原子数には含まれない。)。R1は、水素原子であることが好ましい。R2は、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましい。R3は、水素原子であることが好ましい。
【0039】
化学式(1)中、pは、0~2の整数を表し、qは、0又は1を表し、nは、1~300の整数を表す。
【0040】
化学式(1)中、A1Oは、同一又は異なっていてもよく、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。オキシアルキレン基(アルキレングリコール単位)としては、例えば、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)、オキシブチレン基(ブチレングリコール単位)が挙げられる。中でも、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましい。
【0041】
上記「同一又は異なっていてもよく」とは、化学式(1)中にA1Oが複数含まれる場合(nが2以上の場合)、それぞれのA1Oが同一のオキシアルキレン基であってもよく、互いに異なる(2種類以上の)オキシアルキレン基であってもよいことを意味する。化学式(1)中にA1Oが複数含まれる場合の態様としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン基からなる群から選択される2以上のオキシアルキレン基が混在する態様が挙げられる。より詳細には、オキシエチレン基とオキシプロピレン基とが混在する態様、又はオキシエチレン基とオキシブチレン基とが混在する態様であることが好ましく、オキシエチレン基とオキシプロピレン基とが混在する態様であることがより好ましい。異なるオキシアルキレン基が混在する態様において、2種類以上のオキシアルキレン基の付加は、ブロック状の付加であってもよく、ランダム状の付加であってもよい。
【0042】
化学式(1)中のnは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~300の整数を表す。nは、1~200であることが好ましい。平均付加モル数とは、単量体1モルに付加しているオキシアルキレン基のモル数の平均値を意味する。
【0043】
化学式(1)中、R4は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。R4は、水素原子又は炭素原子数1~10の炭化水素基であることが好ましく、水素原子又は炭素原子数1~5の炭化水素基であることがさらに好ましく、水素原子又はメチル基であることが最も好ましい。R4の炭素原子数がこの範囲であれば、炭素原子数が大きくなりすぎないため、コンクリート組成物用の化学混和剤として分散性が良好に発揮される。
【0044】
化学式(1)で表される単量体の製造方法としては、例えば、アリルアルコール、メタリルアルコール、3-メチル-3-ブテン-1-オール等の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを1~300モル付加する方法が挙げられる。この方法で製造され得る単量体としては、例えば、(ポリ)エチレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールアリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールメタリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレングリコールアリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレングリコールメタリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールアリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコールメタリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールアリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールメタリルエーテル、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテルが例示される。これらの中でも、親水性及び疎水性のバランスの観点から、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アリルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アリルエーテル、(ポリ)エチレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテル、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール3-メチル-3-ブテニルエーテルが好ましい。
【0045】
また、化学式(1)で表される単量体の他の製造方法としては、(メタ)アクリレート等の不飽和モノカルボン酸と、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール等の(ポリ)アルキレングリコールと、をエステル化する方法が挙げられる。この方法で製造され得る単量体としては、例えば、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましく、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0046】
化学式(1)で表される単量体に由来する第1の構成単位を有する場合、第1の構成単位を1種のみ有するものであってもよく、互いに異なる単量体に由来する2種以上の第1の構成単位を有していてもよい。
【0047】
化学式(2)中、R5~R7は、それぞれ独立に、水素原子、-CH3又は-(CH2)rCOOM2を表す。なお、(CH2)rCOOM2は、互いに-COOM1又は他の-(CH2)rCOOM2と無水物を形成していてもよい。無水物を形成している場合、それらの基のM1、M2は存在しない。R5は、水素原子であることが好ましい。R6は、水素原子、メチル基又は(CH2)rCOOM2であることが好ましい。R7は、水素原子であることが好ましい。
【0048】
M1及びM2は、同一又は異なっていてもよく、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基又は置換アルキルアンモニウム基であり、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属であることが好ましい。
【0049】
rは、0~2の整数を表す。rは、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0050】
化学式(2)で表される単量体としては、例えば、不飽和モノカルボン酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体等が挙げられる。不飽和モノカルボン酸系単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等と、これらの一価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が挙げられる。不飽和ジカルボン酸の具体例としては、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等と、これらの一価金属塩、アンモニウム塩及び有機アミン塩等、又は、これらの無水物が挙げられる。化学式(2)で表される単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸が好ましい。
【0051】
化学式(2)で表される単量体に由来する第2の構成単位を有する場合、第2の構成単位を1種のみ有するものであってもよく、互いに異なる単量体に由来する2種以上の第2の構成単位を有していてもよい。
【0052】
化学式(3)中、R8~R10は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基を表す。炭素原子数1~3のアルキル基の例は、R1~R3における例と同様である。R8は、水素原子であることが好ましく、R9は、水素原子であることが好ましく、R10は、水素原子であることが好ましい。
【0053】
化学式(3)中、R11は、炭素原子数1~4のヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表す。炭素原子数は、1~3であることが好ましく、2~3であることがより好ましく、3であることがさらに好ましい。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、リン原子、ケイ素原子が挙げられる。これらの中でも、酸素原子が好ましい。炭素原子数1~4の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基が挙げられる。R11が含むヘテロ原子の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。2つ以上のヘテロ原子を含む場合、それぞれのヘテロ原子は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0054】
R11は、ヘテロ原子を含む炭素原子数1~4の炭化水素基であることが好ましく、酸素原子を含む炭素原子数1~4の炭化水素基であることがより好ましい。該基としては、例えば、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基、及びグリセリル基が挙げられる。これらの中でも、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基が好ましい。
【0055】
化学式(3)中、sは0~2の整数を表す。sは0であることが好ましい。
【0056】
化学式(3)で表される単量体としては、例えば、不飽和モノカルボン酸のモノエステル体が挙げられる。不飽和モノカルボン酸モノエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0057】
化学式(3)で表される単量体に由来する第3の構成単位を有する場合、第3の構成単位を1種のみ有するものであってもよく、互いに異なる単量体に由来する2種以上の第3の構成単位を有していてもよい。
【0058】
<共重合体(A)の製造方法>
共重合体(A)は、それぞれ所定の単量体を、公知の方法によって共重合して製造することができる。該方法としては、例えば、溶媒中での重合、塊状重合等の重合方法が挙げられる。
【0059】
溶媒中での重合に使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;シクロヘキサン、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられる。原料単量体及び得られる共重合体の溶解性の観点から、水及び低級アルコールの少なくともいずれかの溶媒を用いることが好ましく、水を用いることがより好ましい。
【0060】
溶媒中で重合反応を行う場合、各単量体と重合開始剤を各々反応容器に連続滴下してもよく、各単量体の混合物と重合開始剤を各々反応容器に連続滴下してもよい。また、反応容器に溶媒を仕込み、単量体と溶媒の混合物と、重合開始剤溶液を各々反応容器に連続滴下してもよく、単量体の一部又は全部を反応容器に仕込み、重合開始剤を連続滴下してもよい。
【0061】
重合反応に使用し得る重合開始剤は、特に限定されない。水溶媒中で重合反応を行う際に使用し得る重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;t-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の水溶性過酸化物が挙げられる。この際、L-アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、モール塩等の促進剤を併用してもよい。低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル類又はケトン類等の有機溶媒中で重合反応を行う際に使用し得る重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド等のパーオキサイド;クメンパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。この際、アミン化合物等の促進剤を併用してもよい。水-低級アルコール混合溶剤中で重合反応を行う場合に使用し得る重合開始剤は、前述の重合開始剤、又は重合開始剤と促進剤との組合せの中から適宜選択すればよい。重合温度は、用いる溶媒、重合開始剤の種類等の重合条件によって適宜異なるけれども、通常は50~120℃である。
【0062】
重合反応においては、必要に応じて連鎖移動剤を用いて分子量を調整することができる。連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、2-メルカプトエタンスルホン酸等の既知のチオール系化合物;亜リン酸、次亜リン酸、又はそれらの塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、又はそれらの塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物又はそれらの塩等が挙げられる。これらの連鎖移動剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
共重合体(A)を得る際に水溶媒中で重合反応を行う場合、重合反応時のpHは通常不飽和結合を有する単量体の影響で強酸性となる。但し、これを適当なpHに調整してもよい。重合反応の際にpHの調整が必要な場合、リン酸、硫酸、硝酸、アルキルリン酸、アルキル硫酸、アルキルスルホン酸、(アルキル)ベンゼンスルホン酸等の酸性物質を用いてpHの調整を行えばよい。これら酸性物質の中では、pH緩衝作用がある等の理由から、リン酸を用いることが好ましい。但し、エステル系の単量体が有するエステル結合の不安定さを解消するために、pH2~7で重合反応を行うことが好ましい。また、pHの調整に用い得るアルカリ性物質に特に限定はなく、NaOH、Ca(OH)2等のアルカリ性物質が一般的である。pH調整は、重合反応前の単量体に対して行ってもよく、重合反応後の共重合体溶液に対して行ってもよい。また、これらは重合反応前に一部のアルカリ性物質を添加して重合を行った後、さらに共重合体に対してpH調整(例えば、pH3~7となるように調整)を行ってもよい。
【0064】
共重合体(A)における固形分濃度の下限は、5質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、その上限は、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましい。
【0065】
共重合体(A)は、液状であってもよい。液状の場合の溶媒としては、水性溶媒が例示される。水性溶媒としては、水、炭素数1~6のアルコール(エチルアルコール、メチルアルコール、エチレングリコール及びジエチレングリコール等)及び炭素数1~6のケトン(メチルイソブチルケトン及びアセトン等)等が挙げられる。これらの水性溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。水性溶媒としては、水が好ましい。
【0066】
共重合体(A)は原料である上記一般式(1)~(3)からなる群から選択される少なくとも1種の単量体を含んでいてもよい。共重合体(A)を得る際には、必要に応じて反応溶媒の除去、濃縮、精製等の処理を行ってもよい。これらの処理方法は、従来公知の方法であってもよい。
【0067】
共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)の下限は、5000以上であることが好ましく、6000以上であることがより好ましい。この重量平均分子量を有する共重合体(A)を用いることにより、セメント組成物用添加剤を添加した際にセメント組成物の分散性が十分発揮され、リグニンスルホン酸系又はオキシカルボン酸系等のAE減水剤を上回る減水率を得ることができる。そのため、流動性又は作業性を改善することができる。重量平均分子量の上限は、60000以下であることが好ましく、50000以下であることがより好ましい。この重量平均分子量を有する共重合体(A)を用いることにより、セメント組成物中の粒子の凝集作用が抑制され、作業性を良好にすることができる。重量平均分子量は、5000~60000であることが好ましく、6000~50000であることがより好ましい。
【0068】
共重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)の下限は、1.0以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましい。上限は、3.0以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましい。分子量分布は、1.0~3.0の範囲であることが好ましく、1.2~3.0の範囲であることがより好ましく、1.2~2.5の範囲であることがさらに好ましい。
【0069】
共重合体(A)の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)にてポリエチレングリコール換算の公知の方法にて測定することができる。GPCの測定条件は特に限定されるものではなく、例えば、以下の条件を挙げることができる。なお、後段の実施例における重量平均分子量は、この条件で測定した値である。
測定装置;東ソー製
使用カラム;Shodex Column OH-pak SB-806HQ、SB-804HQ、SB-802.5HQ
溶離液;0.05mM硝酸ナトリウム/アセトニトリル 8/2(v/v)
標準物質;ポリエチレングリコール(東ソー社製又はGLサイエンス社製)
検出器;示差屈折計(東ソー社製)
検量線;ポリエチレングリコール基準
【0070】
本発明の一実施形態では、セメント分散剤として、さらに公知の減水剤やAE減水剤を使用することができる。減水剤としては、例えば、ポリカルボン酸系減水剤、ナフタレン系減水剤、メラミン系減水剤、アミノスルホン酸系減水剤、リグニンスルホン酸系減水剤の減水剤があり、またAE減水剤としては、例えば、リグニンスルホン酸系減水剤、オキシカルボン酸系減水剤などがある。
【0071】
本発明の一実施形態では、セメント分散剤として、さらに公知の高性能減水剤、高性能AE減水剤を使用することができる。高性能減水剤としては、ポリカルボン酸塩系高性能減水剤、ポリアルキルアリルスルホン酸塩系高性能減水剤、芳香族アミノスルホン酸塩系高性能減水剤、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系高性能減水剤などがある。高性能AE減水剤としては、アルキルアリルスルホン酸塩系高性能AE減水剤、芳香族アミノスルホン酸塩系高性能AE減水剤、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系高性能AE減水剤、ポリカルボン酸塩系高性能AE減水剤などがある。
【0072】
本発明の一実施形態では、公知のAE剤として、樹脂石鹸、飽和もしくは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α-オレフィンスルホネートなどを含有させることができる。
【0073】
本発明の一実施形態では、高分子エマルジョンとして(メタ)アクリル酸アルキルなどの各種ビニル単量体の共重合物などを含有させることができる。
【0074】
また、水溶性高分子物質として、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの非イオン性セルロースエーテル類、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの多糖類の誘導体、 酵母グルカンやキサンタンガム、6-1.3グルカン類などの微生物醗酵によって製造される多糖類、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、デンプンなどを加えてもよい。
【0075】
硬化遅延剤としては、一般的にはグルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース、キシロース、アピオース、リボース、異性化糖などの単糖類や、二糖、三糖などのオリゴ糖、又はデキストリンなどのオリゴ糖、又はデキストランなどの多糖類、これらを含む糖蜜などの糖類、ソルビトールなどの糖アルコール、ケイフッ化マグネシウム、リン酸及びその塩又はホウ酸エステル類、アミノカルボン酸及びその塩、アルカリ可溶タンパク質、フミン酸、タンニン酸、フェノール、グリセリンなどの多価アルコール、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などのホスホン酸及びその誘導体などが使用できる。
【0076】
早強剤・促進剤としては、一般的には亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウムなどの可溶性カルシウム塩、塩化鉄、塩化マグネシウムなどの塩化物、硫酸塩、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸塩、チオ硫酸塩、ギ酸及びギ酸カルシウムなどのギ酸塩、アルカノールアミン、アルミナセメント、カルシウムアルミネートシリケートなどが使用できる。
【0077】
消泡剤としては、一般的には燈油、流動パラフィンなどの鉱油系消泡剤、動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物などの油脂系消泡剤、オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物などの脂肪酸系消泡剤、グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックスなどの脂肪酸エステル系消泡剤、オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類などのアルコール系消泡剤、アクリレートポリアミンなどのアミド系消泡剤、リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェートなどのリン酸エステル系消泡剤、アルミニウムステアレート、カルシウムオレエートなどの金属石鹸系消泡剤、ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサンなどのポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油などのシリコーン系消泡剤などが使用できる。
【0078】
防水剤としては、脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、パラフィン、アスファルト、ワックスなどが使用できる。
【0079】
防錆剤としては、亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛などが使用できる。
【0080】
ひび割れ低減剤としては、ポリオキシアルキルエーテルなどが使用できる。
【0081】
膨張材としては、エトリンガイト系、石炭系の膨張剤が使用できる。
【0082】
さらに、本発明の一実施形態におけるコンクリート組成物は、その他の従来公知のセメント添加剤であるセメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤などを使用することができる。
【0083】
化学混和剤は、コンクリート組成物を作製する際の混合比率において、含有量が高すぎると材料分離が生じるが、低すぎると目標とする流動性やワーカビリティを得ることが出来ない。したがって、コンクリート組成物に含まれるセメント全質量の0.01~5.0%の含有量となるように混合されることが好ましい。
【0084】
本発明の実施形態において、コンクリート組成物の混和材として炭素材料を含有させることができる。前述のように、バイオ炭のような炭素材料は保水性や吸着性が大きい多孔質材料であるが、化学混和剤として上述の共重合体を適量混合させることにより、適度な空気連行性を維持できるため、コンクリート組成物におけるワーカビリティを損なうことなく使用できる。
【0085】
本発明の一実施形態において、炭素材料は、固定炭素、揮発成分及び灰分を概ね以下の比率で含有する。
固定炭素比率:20~90質量%
揮発分:5~60質量%
灰分:0.1~50質量%
【0086】
本発明の一実施形態におけるコンクリート組成物に使用される炭素材料は、比表面積が大きすぎると吸水性、吸着性が過剰となり、小さすぎるとコンクリート組成物内で均一に分散されにくくなる。したがって、100~1000m2/gの範囲であることが好ましい。
【0087】
本発明の一実施形態における炭素材料の嵩比重は小さすぎると粉塵が発生しやすいなど取扱いが困難である。したがって0.05g/mlより大きい範囲であることが好ましい。
【0088】
本発明の一実施形態において使用される炭素材料の粒径は限定されるものではない。しかし炭素材料の粒径が大きすぎるとコンクリートの強度低下を起こす可能性があり、小さすぎると粉じん発生や装置等への付着が多くなるなど取扱いが難しくなる。したがって、粒子径50μmの粒子が50質量%以下含有されることが好ましい。
【0089】
本発明の一実施形態におけるコンクリート組成物の製造工程は化学混和剤として酸基及びポリアルキレングリコール鎖を有する化合物(共重合体(A))を使用すること以外は、
図1に示した従来の工程と変わるところは無い。
【0090】
製造されたコンクリート組成物は所望の型に入れられ、打設及び硬化されコンクリート構造物となる。コンクリート組成物の打設方法としては、公知の手法を用いることができる。
【実施例0091】
以下、実施例により本発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に限定されるものではない。
【0092】
表1に示す構成比となるように、水、セメント、炭素材料(バイオ炭粉末)、粒径の細かい砂(第1細骨材)、粒径の粗い砂(第2細骨材)、砂利(粗骨材)、セメント分散剤及び消泡剤をミキサーで混合して、実施例1~3のコンクリート組成物(生コンクリート)を得た。表1中の各構成成分の含有率は、混合されたコンクリート組成物1m3に含まれるkg数で表す。
【0093】
【0094】
実施例1~3は、セメント分散剤として、酸基及びポリアルキレングリコール鎖を有する化合物(共重合体(A))であるA1~A4のいずれか1種以上を混合し、さらに従来のセメント分散剤としてS剤及び又はG剤を混合させた。セメント分散剤A1~A4、S剤及びG剤それぞれの含有率(内訳)は、セメント分散剤A1~A4、S剤及びG剤のセメント分散剤の合計質量に対する質量百分率で示す。また表中、他の成分として他のAE剤及び消泡剤は、セメントの質量を100%とした場合の質量百分率で示す。
【0095】
水:水道水
セメント:普通ポルトランドセメント(株式会社トクヤマ製)
炭素材料:平均粒子径150μm、比表面積541m2/g、嵩比重0.3のバイオ炭
第1細骨材:山砂 千葉県君津市産 表乾密度:2.60g/cm3
第2細骨材:砕砂 東京都西多摩郡奥多摩町産 表乾密度:2.68g/cm3
粗骨材:砕石2005 東京都西多摩郡奥多摩町 表乾密度:2.68g/cm3
A1~A4:化学混和剤 後述の製造例を参照
S剤:リグニンスルホン酸系セメント分散剤(日本製紙株式会社製、商品名:サンフローRH)
G剤:グルコン酸ナトリウム系セメント分散剤(扶桑化学工業株式会社製、商品名:C-PARN)
【0096】
また、比較例1として、セメント分散剤である酸基及びポリアルキレングリコール鎖を有する化合物A1~A4を使用せず、従来の化学混和剤(S剤)のみ使用したコンクリート組成物を作製した。比較例1の水、セメント、バイオ炭、第1細骨材、第2細骨材、第1粗骨材の単位量は、実施例1と同一である。
【0097】
次に、セメント分散剤A1~A4の製造例を示す。
【0098】
<製造例A1>
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたステンレス製反応容器に、水5010g、3-メチル-3-ブテン-1-オールのエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイドの平均付加モル数30)(3MBO)5000g(24モル%)を仕込み、攪拌下で反応容器を窒素置換した。窒素雰囲気下で80℃に昇温した後、アクリル酸(AA)800g(76モル%)及び水5010gを混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム120g及び水1880gの攪拌混合液とを、各々2時間かけて80℃に保持した反応容器に連続滴下した。温度を100℃に保持した状態で1時間重合反応を行った後、反応容器の後段に位置する追加装置にて、80℃まで冷却し、水酸化ナトリウムでpH6に中和すると同時に加水することで、濃度30%の共重合体(重量平均分子量Mw20200、Mw/Mn1.7)の水溶液(A1)を得た。
【0099】
<製造例A2>
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたステンレス製反応容器に水8000gを仕込み、攪拌下で反応容器を窒素置換した。窒素雰囲気下で75℃に昇温した後、メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(MPEG-MA)(エチレンオキサイドの平均付加モル数18)4000g(24モル%)、メタクリル酸(MAA)1200g(76モル%)、水1470g、及び3-メルカプトプロピオン酸56gを混合したモノマー水溶液と、過硫酸ナトリウム70g及び水2030gの攪拌混合液を、各々2時間かけて75℃に保持した反応容器に連続滴下した。温度を75℃に保持した状態で1時間重合反応を行った後、反応容器の後段に位置する追加装置にて、65℃まで冷却し、水酸化ナトリウムでpH6に中和すると同時に加水することで、濃度30%の共重合体(重量平均分子量Mw17000、Mw/Mn1.6)の水溶液(A2)を得た。
【0100】
<製造例A3>
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたステンレス製反応容器に水4440g、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアリルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数37、プロピレンオキサイドの平均付加モル数3、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのランダム付加)(PEG-AL)2820g(5モル%)を仕込み、攪拌下で反応容器を窒素置換した。窒素雰囲気下で80℃に昇温した後、メタクリル酸(MA)1050g(41モル%)、アクリル酸(AA)150g(7モル%)、メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数150)(MPEG-MA)1890g(1モル%)、2-ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)1800g(46モル%)、3-メルカプトプロピオン酸240g、水4950gを混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム90g及び水1410gの攪拌混合液とを、各々2時間かけて80℃に保持した反応容器に連続滴下した。温度を100℃に保持した状態で1時間重合反応を行った後、反応容器の後段に位置する追加装置にて、80℃まで冷却し、水酸化ナトリウムでpH4に中和すると同時に加水することで、濃度40%の共重合体(重量平均分子量Mw11100、Mw/Mn1.5)の水溶液(A3)を得た。
【0101】
<製造例A4>
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたステンレス製反応容器に、水1133g、ポリオキシエチレンモノアリルモノメチルエーテル(エチレンオキサイドの平均付加モル数35)(MPEG-AL)1528g(1モル%)、無水マレイン酸166g(1モル%)を仕込み、攪拌下で反応容器を窒素置換した。窒素雰囲気下で60℃に昇温した後、過硫酸アンモニウム39g及び水14000gの攪拌混合液を、2時間かけて60℃に保持した反応容器に連続滴下した。温度を60℃に保持した状態で2時間重合反応を行った後、反応容器の後段に位置する追加装置にて、80℃まで冷却し、水酸化ナトリウムでpH6に中和すると同時に加水することで、濃度40%の共重合体(重量平均分子量Mw27000、Mw/Mn1.8)の水溶液(A4)を得た。
【0102】
以上の製造例により製造したセメント分散剤(共重合体(A))A1~A4を用いた実施例1~3及び比較例1のコンクリート組成物について、スランプ及び空気連行性(空気量ともいう)を測定した。スランプ試験はJIS A 1101(コンクリートのスランプ試験方法)により測定した。コンクリートの空気量はJIS A 1128(コンクリートの空気量の圧力による試験方法)により測定した。結果を表2に示す。
【0103】
【0104】
コンクリート組成物に対し、セメント分散剤として本発明の酸基及びポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を用いたところ、バイオ炭粉末を混合した実施例1~3のコンクリート組成物ではスランプ試験値及び空気連行性(空気量)ともに適正な範囲内となり、優れたワーカビリティを有していた。一方、セメント分散剤として酸基及びポリアルキレングリコール鎖を有する化合物を用いていない比較例1は、スランプ試験及び空気連行性(空気量)の測定結果が、いずれも実施例1~3に劣るものであった。以上のように、本発明の一実施形態におけるコンクリート組成物は、地球温暖化防止のための土壌炭素貯留技術と、建築材料として有用なコンクリート材料の製造技術を両立することが示された。
【0105】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0106】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。