(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115375
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】液面検知センサーフロート
(51)【国際特許分類】
G01F 23/64 20060101AFI20240819BHJP
G01F 23/76 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
G01F23/64
G01F23/76
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021040
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000187024
【氏名又は名称】昭和機器工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前芝 信介
【テーマコード(参考)】
2F013
【Fターム(参考)】
2F013AB04
(57)【要約】
【課題】フロート部1の下方に異なる重量の重り3、3’を収容でき、かつ、重り収容部4付近にスラッジが溜まることのない液面検知センサーフロートを提供すること。
【解決手段】フロート部1の下方に内側方向に移動可能な係止部2を設け、フロート部1の下方から円環状の重り3を挿入することによって、重り収容部4に重り3を収容してフロート部1全体の重量を調整できる液面検知センサーフロートであって、水平面で切った断面形状が円環状の重り3と同じ形状のスペーサ12を有し、重り3とスペーサ12を合わせた高さは重り収容部4の高さと等しく、スペーサ12の外径は円筒状のフロート体6の下端部における外径と同じか小さく、スペーサ12の上面はフロート体6の下面に密着している液面検知センサーフロート。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体貯蔵タンクに設置されている上下方向へ延びるガイド部に対して、上下動可能に装着される液面検知センサーフロートであって、
前記ガイド部に対して上下動可能な筒体及び該筒体の周囲に固定されている筒状のフロート体からなるフロート部と、
前記筒体の下方に設けられている係止部と、
前記フロート体と前記係止部との間にある重り収容部と、
前記重り収容部に収容される重り及びスペーサを備えており、
前記重り及び前記スペーサを合わせた高さは、前記重り収容部の高さと等しく、
前記重り及び前記スペーサのうち最も上側にあるものは、その上周縁が前記フロート体の下面に密着しており、
前記重り及び前記スペーサのうち下側にあるものは、その上周縁が直上にある前記重り又は前記スペーサの下面に密着している
ことを特徴とする液面検知センサーフロート。
【請求項2】
前記スペーサは、2つの半環状体からなり、
前記2つの半環状体は、両端面同士を接合させて固定可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の液面検知センサーフロート。
【請求項3】
液体貯蔵タンクに設置されている上下方向へ延びるガイド部に対して、上下動可能に装着される液面検知センサーフロートであって、
前記ガイド部に対して上下動可能な筒体及び該筒体の周囲に固定されている筒状のフロート体からなるフロート部と、
前記筒体の下方に設けられている係止部と、
前記フロート体と前記係止部との間にある重り収容部と、
前記重り収容部に収容される重りと、
前記フロート体の下部の周囲と前記重りの周囲との間を覆うスリーブを備えている
ことを特徴とする液面検知センサーフロート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油等の液体を貯蔵する液体貯蔵タンク内の液面レベルを測定するために用いられる液面検知センサーフロートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体貯蔵タンク内の液面レベルを測定するため、液面検知センサーフロートが用いられている。
例えば、本出願人は、特許文献1(特開2005-351767号公報)に記載されているように、液体貯蔵タンク内の油面レベルを検出するための第1の磁石付きフロート(1)と水面レベルを検出するための第2の磁石付きフロート(2)とを備え、第2の磁石付きフロート(2)の変動により液体貯蔵タンク内に水が溜まっているか否かを検知する水検知機能を有する磁歪式液面計を開発している(特に、段落0016及び
図1を参照)。
また、特許文献2(特開2001-4434号公報)には、タンク液面測定装置において、水検出用フロート(7)に、フロートの全体としての嵩密度がタンク(1)に貯蔵される液の密度よりも若干大きく、水よりも小さくなるようにするためのバラスト(35)を設ける点が記載され(特に、段落0020及び
図6を参照)、特許文献3(特開2007-107986号公報)には、フロート式タンク液面検出装置において、水検知用フロート群(30)の下部フロート(31)の重量をバラスト(33)によって調整する点が記載されている(特に、段落0020及び
図1を参照)。
【0003】
しかし、特許文献1には第1の磁石付きフロート(1)及び第2の磁石付きフロート(2)の具体的な構成は記載されておらず、第1の磁石付きフロート(1)の全体の比重を油よりも小さくすること及び第2の磁石付きフロート(2)の全体の比重を水よりも小さく油よりも大きくすることについては記載されているものの(段落0016を参照)、どのようにして各フロート(1)(2)の全体の比重を調整するのかは不明である。
また、特許文献2及び3にはフロートの嵩密度や重量をバラストによって調整する点が記載されているものの、フロートの嵩密度を調整するバラスト(35)及び下部フロート(31)の重量を調整するバラスト(33)等の具体的な構成については記載されていない。
【0004】
そこで、出願人は、液体貯蔵タンクに設置されている上下方向へ延びるガイド部に対して上下動可能なフロート部1の下方に係止部2を設け、その係止部2をフロート部1の内側方向に移動可能とし、フロート部1の下方から円環状の重り3を挿入することによって、重り収容部4に異なる重量の重り3を収容してフロート部1全体の重量を調整できる液面検知センサーフロートを開発した。
図5(A)及び(B)は、それぞれ開発した液面検知センサーフロートの正面図及び中心線を含む平面で切った断面図である。
そして、
図5に示すように、フロート部1は円筒体5と、円筒体5の周囲に着脱自在に固定可能な円筒状のフロート体6からなり、係止部2は円筒体5の下端部に設けられており、フロート体6の下面と係止部2の上面との間に重り収容部4が形成されている。
また、円筒体5には下端から上方に向かって延びる複数のスリット7が設けてあるので、円筒体5を構成する材料(硬質プラスチックやステンレス等の金属)の可撓性によって、複数の係止部2は円筒体5の内側方向に移動することができる。
なお、円筒体5には、上端部にフロート体用係止部8が設けられているとともに、上端から下方に向かって延びる複数の上端側スリット9が設けてあり、フロート体用係止部8も係止部2と同様に円筒体5の内側方向に移動可能となっているので、フロート体6の小径部10を円筒体5の上端から挿入することができる。そして、小径部10の下端が円筒体5の大径部11の上端にぶつかったところで小径部10の上端がフロート体用係止部8の下側に位置する関係となっているので、複数のフロート体用係止部8はその位置で元の位置に戻り、フロート体6は円筒体5の周囲に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-351767号公報(特許第4149963号公報)
【特許文献2】特開2001-4434号公報(特許第3307610号公報)
【特許文献3】特開2007-107986号公報(特許第4097091号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、開発した液面検知センサーフロートを使用してみると、フロート体6の下面と重り3の上面との間にある隙間にスラッジが溜まり、フロート部1が液面レベルを測定しようとしている液体に浮かばなくなってしまう事態が発生した。
本発明が解決しようとする課題は、このような事態が発生しないようにするため、フロート部1の下方に異なる重量の重りを収容でき、かつ、重り収容部4付近にスラッジが溜まることのない液面検知センサーフロートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための請求項1に係る発明は、液体貯蔵タンクに設置されている上下方向へ延びるガイド部に対して、上下動可能に装着される液面検知センサーフロートであって、
前記ガイド部に対して上下動可能な筒体及び該筒体の周囲に固定されている筒状のフロート体からなるフロート部と、
前記筒体の下方に設けられている係止部と、
前記フロート体と前記係止部との間にある重り収容部と、
前記重り収容部に収容される重り及びスペーサを備えており、
前記重り及び前記スペーサを合わせた高さは、前記重り収容部の高さと等しく、
前記重り及び前記スペーサのうち最も上側にあるものは、その上周縁が前記フロート体の下面に密着しており、
前記重り及び前記スペーサのうち下側にあるものは、その上周縁が直上にある前記重り又は前記スペーサの下面に密着していることを特徴としている。
【0008】
上記の課題を解決するための請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の液面検知センサーフロートにおいて、
前記スペーサは、2つの半環状体からなり、
前記2つの半環状体は、両端面同士を接合させて固定可能であることを特徴とする。
【0009】
上記の課題を解決するための請求項3に係る発明は、液体貯蔵タンクに設置されている上下方向へ延びるガイド部に対して、上下動可能に装着される液面検知センサーフロートであって、
前記ガイド部に対して上下動可能な筒体及び該筒体の周囲に固定されている筒状のフロート体からなるフロート部と、
前記筒体の下方に設けられている係止部と、
前記フロート体と前記係止部との間にある重り収容部と、
前記重り収容部に収容される重りと、
前記フロート体の下部の周囲と前記重りの周囲との間を覆うスリーブを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、重り収容部に収容されている重り及びスペーサを合わせた高さは重り収容部の高さと等しく、重り及びスペーサのうち最も上側にあるものは、その上周縁がフロート体の下面に密着しており、重り及びスペーサのうち下側にあるものは、その上周縁が直上にある重り又はスペーサの下面に密着しているので、フロート部の下方にある重り収容部に異なる重量の重りを収容でき、かつ、重り収容部付近にスラッジが溜まることのない液面検知センサーフロートを提供することができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、請求項1に係る発明による効果に加え、スペーサが2つの半環状体からなり、2つの半環状体は両端面同士を接合させて固定可能であるため、既に設置されているスペーサを備えていない液面検知センサーフロートの重り収容部に対しても、容易にスペーサを取り付けることができる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、フロート体の下部の周囲と重り収容部に収容されている重りとの周囲との間を覆うスリーブを備えているので、フロート部の下方にある重り収容部に異なる重量の重りを収容でき、かつ、重り収容部付近にスラッジが溜まることのない液面検知センサーフロートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1に係る液面検知センサーフロートの正面図と断面図。
【
図2】実施例2で用いる組立て型スペーサの構造を説明する平面図と正面図。
【
図3】フロート部に重りと実施例3に係るスペーサを収容した状態を示す断面図。
【
図4】フロート部に重りを収容しスリーブを固定した状態を示す正面図と断面図。
【
図5】事前に出願人が開発した液面検知センサーフロートの正面図と断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施例によって本発明の実施形態を説明する。
【実施例0015】
図1(A)は、実施例1に係る液面検知センサーフロートの正面図であり、
図1(B)及び(C)は、同液面検知センサーフロートの断面図である。
図1(A)及び(B)と
図5(A)及び(B)を比較すれば分かるように、実施例1に係る液面検知センサーフロートは、スペーサ12を有している点のみにおいて、事前に出願人が開発した液面検知センサーフロートと相違している。
そのため、スペーサ12並びに
図1(C)のスペーサ12’及び重り3’以外の各構成に関する説明は省略し、各構成の図面番号には
図5と同じ番号を用いることとする。
【0016】
図1(A)及び(B)に示すように、実施例1に係る液面検知センサーフロートは、事前に出願人が開発した液面検知センサーフロート(
図5(A)及び(B)を参照)に対して、水平面で切った断面形状が円環状の重り3と同じ形状の円環状のスペーサ12を有しており、重り3とスペーサ12を合わせた高さは重り収容部4の高さと等しくなっている。そして、スペーサ12の外径は円筒状のフロート体6の下端部における外径と同じか小さく、スペーサ12の上面はフロート体6の下面に密着している。
すなわち、フロート部1の下方から円環状のスペーサ12を挿入し、次に重り3を挿入して、重り収容部4にスペーサ12及び重り3を重ねて収容することによって、重り収容部4付近(フロート体6の下部、スペーサ12及び重り3の外周部)に上面が平坦な箇所が存在しない状態となるため、重り収容部4付近にスラッジが溜まるおそれのない液面検知センサーフロートとすることができる。
【0017】
図1(C)は、
図1(A)及び(B)に示す重り3及びスペーサ12を、それぞれ重り3より厚く重量の大きい重り3’及びスペーサ12より薄いスペーサ12’に代えて、液面検知センサーフロートの全体の比重を大きくし、より大きな比重の液体に沈むようにする場合における液面検知センサーフロートの断面図である。
図1(C)の重り3’及びスペーサ12’も、重り3及びスペーサ12と同様、水平面で切った断面形状は同じ形状であり、重り3’とスペーサ12’を合わせた高さは重り収容部4の高さと等しく、スペーサ12’の外径は円筒状のフロート体6の下端部における外径と同じか小さく、スペーサ12’の上面はフロート体6の下面に密着している。
なお、重りとスペーサを合わせた重量を調整することで、液面検知センサーフロートの全体の比重を調整することができるが、スペーサ12、12’の比重を液面検知センサーフロートが浮く液体の比重と等しくすれば、事前に出願人が開発した液面検知センサーフロートで利用していた重り3、3’をそのまま利用することができるのでより良い。