(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115376
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】ヒステリシス回路、半導体装置
(51)【国際特許分類】
H03K 5/08 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
H03K5/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021041
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】390009667
【氏名又は名称】セイコーNPC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正敏
【テーマコード(参考)】
5J039
【Fターム(参考)】
5J039BC05
5J039CC04
5J039DB08
5J039KK10
5J039KK18
5J039KK19
5J039MM16
(57)【要約】
【課題】ヒステリシス特性のために直流的な電流経路を用いないヒステリシス回路を提供する。
【解決手段】ヒステリシス回路11は、入力10b及び出力10cを有する増幅器13と、ヒステリシス回路11の入力10bと増幅器13の入力13bとの間に接続された第1キャパシタ15と、増幅器13の出力13cから増幅器13の入力13bに正帰還をかけるように増幅器13の入力13bと増幅器13の出力13cとの間に接続された第2キャパシタ17とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒステリシス回路であって、
入力及び出力を有する増幅器と、
前記ヒステリシス回路の入力と前記増幅器の前記入力との間に接続された第1キャパシタと、
前記増幅器の前記出力から前記増幅器の前記入力に正帰還がかかるように、前記増幅器の前記入力と前記増幅器の前記出力との間に接続された第2キャパシタと、
を備える、
ヒステリシス回路。
【請求項2】
前記増幅器は、直列に接続された偶数個の反転増幅段を含む非反転増幅器を有し、
前記増幅器は、前記ヒステリシス回路の前記入力からの入力値に応じた出力値を前記増幅器の前記出力に提供する、
請求項1に記載されたヒステリシス回路。
【請求項3】
前記非反転増幅器は、前記反転増幅段の直列接続のうちの初段反転増幅段の入力と前記初段反転増幅段の出力との間に接続された抵抗を更に含み、
前記ヒステリシス回路の前記入力は、前記第1キャパシタのキャパシタンス及び前記抵抗の抵抗値によって規定される時定数より短い間隔で遷移する入力信号を受けるように構成される、
請求項2に記載されたヒステリシス回路。
【請求項4】
前記非反転増幅器は、電界効果トランジスタを含み、
前記反転増幅段の少なくとも1つは、相補型反転論理ゲートを含む、
請求項2に記載されたヒステリシス回路。
【請求項5】
前記非反転増幅器は、電界効果トランジスタを含み、
前記反転増幅段の直列接続のうちの少なくとも1つ反転増幅段は、高電位電源線と当該反転増幅段の出力との間に、直列に及び/又は並列に、接続された複数のp型電界効果トランジスタを含むと共に、低電位電源線と当該反転増幅段の前記出力との間に、直列に及び/又は並列に、接続された複数のn型電界効果トランジスタを含む、
請求項2に記載されたヒステリシス回路。
【請求項6】
前記増幅器は、出力、第1入力及び第2入力を有するオペアンプを含み、
前記増幅器の前記入力は、前記オペアンプの前記第1入力に接続され、
前記増幅器の前記出力は、前記オペアンプの前記出力に接続され、
前記オペアンプの前記第1入力及び前記出力は、前記第2キャパシタが前記オペアンプの前記出力から前記オペアンプの前記第1入力に正帰還をかけるように構成され、
前記ヒステリシス回路の前記入力は、基準電圧を受けるように構成され、
前記増幅器は、前記ヒステリシス回路の別入力からの入力値に応じた出力値を前記ヒステリシス回路の出力に提供し、
前記オペアンプの前記第2入力は、前記ヒステリシス回路の前記別入力に接続される、
請求項1に記載されたヒステリシス回路。
【請求項7】
前記オペアンプの前記出力は、前記オペアンプの正出力又は負出力である、
請求項6に記載されたヒステリシス回路。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載されたヒステリシス回路と、
前記ヒステリシス回路の前記入力又は前記出力に接続されるクロック生成回路と、
を備える、半導体装置。
【請求項9】
前記クロック生成回路は、前記ヒステリシス回路の前記入力に接続される出力を有する水晶発振回路を含む、
請求項8に記載された半導体装置。
【請求項10】
前記クロック生成回路は、前記ヒステリシス回路の前記出力に接続される入力を有する位相同期回路を含む、
請求項8に記載された半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒステリシス回路、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、微小信号を所要レベルまで増幅して、この信号に応じたパルス波形を出力するパルス増幅回路を開示する。このパルス増幅回路は、第1のシュミットトリガ回路及び第2のシュミットトリガ回路を備える。例えば、第1のシュミットトリガ回路は、微小信号を増幅して第1のピークトウピーク電圧を持つ矩形波を生成するように動作する。第2のシュミットトリガ回路は、第1のシュミットトリガ回路からの出力を増幅して第2のピークトウピーク電圧を持つ矩形波を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
演算増幅器を用いてシュミットトリガ回路を形成することができる。このシュミットトリガ回路は、演算増幅器、第1抵抗、及び第2抵抗を有する。第1抵抗は、演算増幅器の出力と演算増幅器の+入力との間に接続されて、演算増幅器の入力に正帰還を掛ける。第2抵抗は、基準電圧源と演算増幅器の+入力との間に接続される。
【0005】
このシュミットトリガ回路は、抵抗による分圧によってヒステリシスを生成する。これ故に、2つの抵抗が直流的な電流経路を形成し、これらの抵抗に流れる電流を避けることができない。
【0006】
本発明は、ヒステリシス特性のために直流的な電流経路を用いないヒステリシス回路、及びヒステリシス回路を含む半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1側面に係るヒステリシス回路は、入力及び出力を有する増幅器と、前記ヒステリシス回路の入力と前記増幅器の前記入力との間に接続された第1キャパシタと、前記増幅器の前記出力から前記増幅器の前記入力に正帰還がかかるように、前記増幅器の前記入力と前記増幅器の前記出力との間に接続された第2キャパシタと、を備える。
【0008】
本発明の第2側面に係る半導体装置は、上記の側面に係るヒステリシス回路と、前記ヒステリシス回路の前記入力又は前記出力に接続されるクロック生成回路とを備える。
【発明の効果】
【0009】
上記の側面によれば、ヒステリシス特性のために直流的な電流経路を用いないヒステリシス回路、及びヒステリシス回路を含む半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係るヒステリシス回路を概略的に示すブロック図である。
【
図2】
図2(a)及び
図2(b)は、本発明の一実施の形態に係る例示的なヒステリシス回路の増幅器を示す回路図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施の形態に係る例示的なヒステリシス回路を示す回路図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施の形態に係るヒステリシス回路の例示的なヒステリシス特性を示す図面である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施の形態に係るヒステリシス回路の具体例を示す回路図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施の形態に係るヒステリシス回路の具体例を示す回路図である。
【
図7】
図7は、
図6に示されたヒステリシス回路の具体的な接続を示す回路図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施の形態に係るヒステリシス回路を含む例示的な半導体装置を示す図面である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施の形態に係るヒステリシス回路を含む例示的な半導体装置を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明を実施するための各実施の形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係るヒステリシス回路を概略的に示すブロック図である。ヒステリシス回路11は、増幅器13、第1キャパシタ15、及び第2キャパシタ17を備える。
【0013】
増幅器13は、少なくとも1つの入力13b及び少なくとも1つの出力13cを有する。第1キャパシタ15は、ヒステリシス回路11の入力10bと増幅器13の入力13bとの間に接続される。第2キャパシタ17は、増幅器13の入力13bと増幅器の13の出力13cとの間に接続される。増幅器13の入力13b及び出力13cは、第2キャパシタ17が増幅器13の出力13cから増幅器13の入力13bに正帰還をかけるように構成される。
【0014】
第2キャパシタ17は、第2キャパシタ17が増幅器13の出力13cから増幅器13の入力13bに正帰還をかけるように、入力13bと出力13cとの間に接続される。増幅器13は、入力13bと出力13cとの関係において非反転増幅回路を構成する。
【0015】
このヒステリシス回路11によれば、ヒステリシス回路11のヒステリシス幅は、第1キャパシタ15及び第2キャパシタ17の容量比に関係付けられる。第1キャパシタ15及び第2キャパシタ17は、ヒステリシス回路11の入力10bと増幅器13の出力13cとの間に接続されるけれども、これらのキャパシタ(15、17)の接続は、直流的な電流経路を形成しない。
【0016】
図2(a)及び
図2(b)は、本実施の形態に係るヒステリシス特性を有する増幅器を概略的に示す回路図である。
【0017】
例示的な増幅器13は、
図2(a)に示されるように、直列に接続された偶数個の反転増幅段21a、21b、21cの配列21を含む非反転増幅器20bを有することができる。反転増幅段21a、21b、21cは、互いに異なる回路構成を有していてもよく、同じ回路構成を有することができる。
【0018】
或いは、例示的な増幅器13は、
図2(b)に示されるように、直列に接続された複数個の非反転増幅段23a、23b、23cの配列23を含む非反転増幅器20cを有することができる。非反転増幅段23a、23b、23cは、互いに異なる回路構成を有していてもよく、同じ回路構成を有することができる。これらの例示的な増幅器13に限定されることなく、ヒステリシス回路11は単一の非反転増幅段を含むことができる。
【0019】
このヒステリシス回路11によれば、増幅器13は、非反転増幅器を構成するように直列に接続された一又は複数の反転増幅段(21a、21b、21c)及び一又は複数の非反転増幅段(23a、23b、23c)を含むことができる。
【0020】
図3は、本実施の形態に係る典型的なヒステリシス回路を示す回路図である。ヒステリシス回路11aの増幅器13は、初段の第1反転増幅段25及び次段の第2反転増幅段27を含むことができる。第1反転増幅段25及び第2反転増幅段27は、直列に接続される。第1反転増幅段25は、少なくとも1つの入力25b及び少なくとも1つの出力25cを有する。第2反転増幅段27は、少なくとも1つの入力27b及び少なくとも1つの出力27cを有する。増幅器13は、ヒステリシス回路11の入力10bからの入力値に応じた出力値をヒステリシス回路11の出力10cに提供する。
【0021】
ヒステリシス回路11aでは、具体的には、第1反転増幅段25の入力25bは、増幅器13の入力13bから信号を受ける。第2反転増幅段27の入力27bは、第1反転増幅段25の出力25cから信号を受ける。増幅器13の出力13cは、第2反転増幅段27の出力27cから信号を受ける。第2キャパシタ17は、第2反転増幅段27の出力27cから第1反転増幅段25の入力25bへの正帰還をかけるように増幅器13に接続される。
【0022】
増幅器13では、第1反転増幅段25の入力25bと出力25cとの間に抵抗29といった抵抗性の帰還素子が接続されることができる。抵抗29は、抵抗値RFを有し、第1反転増幅段25にセルフバイアスをかける。セルフバイアスは、閾値判定の動作を安定させることができる。この抵抗29は、
図2(a)に示された増幅器13の初段の反転増幅段21aに適用されることができる。抵抗性の帰還素子(例えば、抵抗29)は、例えば電界効果トランジスタ(具体的には、相補型電界効果トランジスタ)の伝達ゲートとして提供されることができる。
【0023】
ヒステリシス回路11aの入力10bは、第1キャパシタ15のキャパシタンスC1及び抵抗29の抵抗値RFによって規定される時定数より充分短い間隔で遷移する入力信号を受けるように構成される。
【0024】
図4は、本発明の一実施の形態に係るヒステリシス回路の例示的なヒステリシス特性を示す図面である。ヒステリシス特性における閾値差における「VIH」、「VIL」、「VOH」及び「VOL」が示されている。
図4における矢印の向きは、入力信号の遷移の方向を示す。
【0025】
図4に示されるように、入力10bの信号がロウ(L)値を持つ信号からハイ(H)値を持つ信号に遷移するヒステリシス回路11は、閾値VIHにおいて反転して、値VOLを持つ信号から遷移する値VOHを持つ信号を出力10cに出力する。反転に際して、非反転増幅回路(13)の入力への正帰還の値は、非反転増幅回路(13)の出力における反転前の値である。
【0026】
非反転増幅回路(13)の入力(13b)における閾値電圧をVTHとすると入力10bにおけるVIHは、以下の値になる。
VIH=VTH+(VTH-VOL)×C2/C1
上式の第1項は、出力(13c)が反転する際における入力13bの閾値(電圧値VTH)を示す。上式の第2項は、非反転増幅回路(13)の入力(13b)と出力(13c)との電位差を直列接続された第1キャパシタ15(キャパシタンスC1)及び第2キャパシタ17(キャパシタンスC2)により分圧することを表し、第1キャパシタ15の端子間の電位差を示す。
【0027】
上記の式から、式(1)が導かれる。
VIH=2VTH×C2/C1-VOL×C2/C1・・・(1)
【0028】
図4に示されるように、入力10bの信号がハイ(H)値を持つ信号からロウ(L)値を持つ信号に遷移するヒステリシス回路11は、閾値VILにおいて反転して、値VOHを持つ信号から遷移した値VOLを持つ信号を出力10cに出力する。反転に際して、非反転増幅回路(13)の入力への正帰還の値は、非反転増幅回路(13)の出力における反転前の値である。
【0029】
非反転増幅回路(13)の入力(13b)における閾値電圧をVTHとすると入力10bにおけるVILは、以下の値になる。
VIL=VTH-(VOH-VTH)×C2/C1
上式の第1項は、出力(13c)が反転する際における入力13bの電圧値(閾値VTH)を示す。上式の第2項は、非反転増幅回路(13)の入力(13b)と出力(13c)との電位差を直列接続されたキャパシタ(キャパシタンスC1、C2)により分圧することを表し、第1キャパシタ15の端子間の電位差を示す。
【0030】
上記の式から、式(2)が導かれる。
VIL=2VTH×C2/C1-VOH×C2/C1・・・(2)
【0031】
2つのキャパシタ(キャパシタンスC1、C2)を非反転増幅回路(13)に接続しても、非反転増幅回路(13)における反転の閾値VTHは、変わらない。式(1)及び(2)から、以下の式が導かれる。
VIH-VIL= (2VTH×C2/C1-VOL×C2/C1)
-(VIL=2VTH×C2/C1-VOH×C2/C1)
【0032】
ヒステリシス特性における閾値差は、式を整理すると、
VIH-VIL=(VOH-VOL)×C2/C1・・・(3)
となる。
【0033】
再び
図2及び
図3を参照すると、増幅器13、反転増幅段21a、21b、21c、非反転増幅段23a、23b、23c、第1反転増幅段25、及び第2反転増幅段27の各々は、例えば電界効果トランジスタを含むことができる。可能な場合には、増幅器13、反転増幅段21a、21b、21c、非反転増幅段23a、23b、23c、第1反転増幅段25、及び第2反転増幅段27の各々は、例えば相補型の回路構成を備えることができる。また、増幅器13、反転増幅段21a、21b、21c、非反転増幅段23a、23b、23c、第1反転増幅段25、及び第2反転増幅段27の各々は、例えば相補型反転論理ゲート(インバーター)を備えることができる。さらに、第1反転増幅段25及び第2反転増幅段27の少なくともいずれか一方は、相補型反転論理ゲート(インバーター)を備えることができる。
【0034】
図5は、本実施の形態に係るヒステリシス回路の具体例を示す回路図である。引き続く記述において、電界効果トランジスタのソース、ドレイン及びゲートは、それぞれ「S」、「D」及び{G}として参照される。n型電界効果トランジスタの基板端子は、低電位電源線VSSに接続され、p型電界効果トランジスタの基板端子は、高電位電源線VDDに接続される。
【0035】
第1反転増幅段25及び第2反転増幅段27は、それぞれ、相補型反転論理ゲート31、33を備えることができる。増幅器13の出力13cは、ヒステリシス回路11aの出力10cに接続される。
【0036】
具体的には、相補型反転論理ゲート31は、p型電界効果トランジスタ32a及びn型電界効果トランジスタ32bを含む。p型電界効果トランジスタ32aは、高電位電源線VDDと第1反転増幅段25の出力25cとの間にソースS-ドレインD間の電流経路を提供するように高電位電源線VDDと出力25cとの間に接続される。n型電界効果トランジスタ32bは、低電位電源線VSSと第1反転増幅段25の出力25cとの間にソースS-ドレインD間の電流経路を提供するように低電位電源線VSSと出力25cとの間に接続される。p型電界効果トランジスタ32aのゲートG及びn型電界効果トランジスタ32bのゲートGは、共に入力25bに接続されて、入力25bからの信号を受ける。p型電界効果トランジスタ32aのドレインD及びn型電界効果トランジスタ32bのドレインDは、共に出力25cに接続されて、出力25cに出力信号を提供する。
【0037】
抵抗29は、p型電界効果トランジスタ32a及びn型電界効果トランジスタ32bのゲートGと、p型電界効果トランジスタ32a及びn型電界効果トランジスタ32bのドレインDとの間に接続される。
【0038】
また、相補型反転論理ゲート33は、p型電界効果トランジスタ34a及びn型電界効果トランジスタ34bを含む。p型電界効果トランジスタ34aは、高電位電源線VDDと第2反転増幅段27の出力27cとの間にソースS-ドレインD間の電流経路を提供するように高電位電源線VDDと出力27cとの間に接続される。n型電界効果トランジスタ34bは、低電位電源線VSSと第2反転増幅段27の出力27cとの間にソースS-ドレインD間の電流経路を提供するように低電位電源線VSSと出力27cとの間に接続される。p型電界効果トランジスタ34aのゲートG及びn型電界効果トランジスタ34bのゲートGは、共に入力27bに接続されて、入力27bからの信号を受ける。p型電界効果トランジスタ34aのドレインD及びn型電界効果トランジスタ34bのドレインDは、共に出力27cに接続されて、出力27cに出力信号を提供する。
【0039】
図3に示される第1反転増幅段25及び第2反転増幅段27の各々は、相補型反転論理ゲートに限定されることなく、様々な論理ゲートを含むことができる。第1反転増幅段25及び第2反転増幅段27の各々は、例えば、NANDゲート又はNORゲートといった相補型論理ゲートを含むことができる。相補型論理ゲートを含む第1反転増幅段25及び第2反転増幅段27は、制御信号を受けることができ、また制御信号に応答して、当該増幅段への入力波形の遷移の有無に関係なく、ヒステリシス回路11aを動作不可(停止)にすることができ、或いはヒステリシス回路11aを動作可にすることができる。
【0040】
具体的には、相補型NANDゲートは、複数のp型電界効果トランジスタ及び複数のn型電界効果トランジスタを含むことができる。これらのp型電界効果トランジスタは、高電位電源線VDDと第2反転増幅段27の出力27cとの間に並列に接続される。また、これらのn型電界効果トランジスタは、低電位電源線VSSと第2反転増幅段27の出力27cとの間に直列に接続される。ヒステリシス回路11aによれば、反転増幅段の直列接続の少なくとも1つは、多入力の相補型NANDゲートであることができる。
【0041】
具体的には、相補型NORゲートは、複数のp型電界効果トランジスタ及び複数のn型電界効果トランジスタを含むことができる。これらのp型電界効果トランジスタは、高電位電源線VDDと第2反転増幅段27の出力27cとの間に直列に接続される。また、これらのn型電界効果トランジスタは、低電位電源線VSSと第2反転増幅段27の出力27cとの間に並列に接続される。ヒステリシス回路11aによれば、反転増幅段の直列接続の少なくとも1つは、多入力の相補型NORゲートであることができる。
【0042】
相補型論理ゲートは、相補型NANDゲート及び相補型NORゲートを組み合わせた相補型複合論理ゲートを含むことができる。
【0043】
具体的には、相補型複合論理ゲートは、高電位電源線VDDと出力(25c、27c)との間に、直列に及び/又は並列に接続された複数のp型電界効果トランジスタを含む。また、相補型複合論理ゲートは、低電位電源線VSSと出力(25c、27c)との間に、直列に及び/又は並列に接続された複数のn型電界効果トランジスタを含む。ヒステリシス回路11aによれば、反転増幅段の直列接続の少なくとも1つは、多入力の複合論理ゲートであることができる。
【0044】
図6は、本実施の形態に係るヒステリシス回路の具体例を示す回路図である。
図7は、
図6に示されたヒステリシス回路におけるヒステリシス特性の計算のための回路図を示す。
【0045】
ヒステリシス回路11bでは、増幅器13は、オペアンプ41を含むことができ、オペアンプ41は、出力41b、第1入力41c及び第2入力41dを有する。増幅器13の入力13b及び出力13cは、第2キャパシタ17がオペアンプ41の出力41bからオペアンプ41の第1入力41cに正帰還をかけるように、それぞれ、オペアンプ41の第1入力41c及びオペアンプ41の出力41bに接続される。第1キャパシタ15は、ヒステリシス回路11の入力10bとオペアンプ41の第1入力41cとの間に接続されることができる。
【0046】
オペアンプ41の第2入力41dは、ヒステリシス回路11bの別入力10dに接続される。このヒステリシス回路11bによれば、オペアンプ41を用いてヒステリシス特性を生成できる。オペアンプ41の第1入力41cと第2入力41dとの間には、抵抗R1が接続されることができる。
【0047】
図7を参照すると、ヒステリシス回路11bの入力10bは、基準電圧(VREF0)を提供する基準電位線42に接続される。オペアンプ41において、第1入力41cは、第1キャパシタ15を介してヒステリシス回路11bの入力10bに接続され、入力10bは、基準電位線42に接続される基準電圧源から基準電圧VREF0を受ける。別入力10dが、遷移する信号波形を受ける。オペアンプ41において、第2入力41d(負入力)の電圧波形が、出力41bの反転に関連付けられる。
図7に示された抵抗R2が、オペアンプ41の第1入力41cと第2入力41dとの間に接続されており、引き続くヒステリシス特性の計算には現れない。
【0048】
続いて、
図4及び
図7を参照しながら、ヒステリシス回路11bにおけるヒステリシス特性を説明する。オペアンプ41の第1入力41cは、第1キャパシタ15及び第2キャパシタ17によって中間ノードに接続されている。第1入力41cの電圧が、「VREF」として参照され、オペアンプ41の出力41bが反転する際の比較に利用される。
【0049】
別入力10dの信号がロウ(L)値からハイ(H)値に第1入力41d(負入力)において遷移するヒステリシス回路11bは、閾値VIHにおいて反転して、上記のVOUTとして値VOHを持つ信号から遷移した信号(値VOLを持つ)を出力10cに出力する。
VIH=2VREF×C2/C1-VOL×C2/C1・・・(4)
【0050】
また、別入力10dの信号がハイ(H)値を持つ信号からロウ(L)値を持つ信号に第1入力41d(負入力)において遷移するヒステリシス回路11bは、閾値VILにおいて反転して、上記のVOUTとして値VOLを持つ信号から遷移した信号(値VOHを持つ)を出力10cに出力する。
VIL=2VTH×C2/C1-VOH×C2/C1・・・(5)
【0051】
上式(4)及び(5)から、ヒステリシス幅が導かれる。
VIH-VIL= (2VREF×C2/C1-VOL×C2/C1)
-(VIL=2VREF×C2/C1-VOH×C2/C1)
=(VOH-VOL)×C2/C1・・・(6)
【0052】
図4を参照すると、ヒステリシス特性の閾値差における「VIH」、「VIL」、「VOH」及び「VOL」が示されている。
【0053】
このヒステリシス回路11bによれば、ヒステリシス回路11bのヒステリシス幅は、第1キャパシタ15及び第2キャパシタ17に関連付けられる。第1キャパシタ15及び第2キャパシタ17は、直流的な電流経路を形成せずに、ヒステリシス回路11の入力10bと増幅器13の出力13cとの間に接続される。
【0054】
具体的には、オペアンプ41は、正入力及び負入力を有し、更に正出力及び負出力の少なくとも一方を有することができる。正帰還は、正出力から正入力へ与えることができ、或いは負出力から負入力へ与えることができる。正帰還に用いる出力(具体的には、正出力又は負出力)に関係なく、正出力又は負出力のいずれも、ヒステリシス特性に係る出力信号を提供できる。
【0055】
図8及び
図9は、本実施の形態に係るヒステリシス回路を含む半導体装置を示す図面である。
図8及び
図9を参照すると、半導体装置12は、1又は複数のヒステリシス回路11、11a、11bと、クロック生成回路43(45、47)といった回路(デジタル回路又はアナログ回路)とを含む。クロック生成回路43(45、47)は、ヒステリシス回路11、11a、11bの入力10b又は出力10cの少なくとも一方に接続される。半導体装置12によれば、ヒステリシス回路11、11a、11bが、クロック生成回路43(45、47)の入力又は出力に接続されて、入力又は出力における予想不可能な揺らぎ波形の信号を波形整形して、クロック生成回路43(45、47)といった回路において揺らぎの影響を低減できる。
【0056】
図8を参照すると、例示的なクロック生成回路43は、水晶発振回路45を含むことができる。水晶発振回路45は、ヒステリシス回路11、11a、11bの入力10bに接続される出力45bを有する。水晶発振回路45は、概略的には、反転アンプ44、反転アンプ44の入力と出力との間に接続された抵抗性の帰還素子46(例えば抵抗)、反転アンプ44の入力と出力との間に接続された水晶発振子48、並びに反転アンプ44の入力及び出力にそれぞれ接続されたキャパシタ50、52を備える。半導体装置12によれば、水晶発振回路45の出力45bにおける予想不可能な揺らぎ波形の信号を波形整形することができる。
【0057】
図9を参照すると、例示的なクロック生成回路43は、位相同期回路47といったクロック同期回路を含むことができる。位相同期回路47は、ヒステリシス回路11、11a、11bの入力10bに接続される入力47bを有する。位相同期回路47は、デジタル及びアナログのいずれの方式の回路構成を有することができ、またその入力47bにおける予想不可能な揺らぎ波形の信号は、ヒステリシス回路11、11a、11bによって波形整形されている。
【0058】
ヒステリシス回路11、11a、11bは、その出力10cに、外部回路(例えば、水晶発振回路)からの参照クロック信号を生成する。位相同期回路47は、位相比較回路といった比較回路49a、ループフィルタ49b、電圧制御発信器といった発振器49c、及び1/Nデバイダーといった帰還回路49dを含む。比較回路49aは、ヒステリシス回路11、11a、11bからの参照クロック信号、及び帰還回路49dからの帰還信号を受ける。ループフィルタ49bは、比較回路49aの差分信号を平均化するローパスフィルタを含む。発振器49cは、ループフィルタ49bの出力値に応じた周波数の信号を生成する。帰還回路49dは、発振器49cからのクロック信号を分周して帰還信号を生成する。
【0059】
クロック生成回路43は、位相同期回路47の代わりに、周波数同期回路を備えることができる。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ヒステリシス特性のために直流的な電流経路を用いないヒステリシス回路11、11a、11b、及びヒステリシス回路11、11a、11bを含む半導体装置12を提供できる。
【0061】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本発明の技術思想に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
10b、13b、25b、27b、47b・・・入力、13c、25c、27c、45b、10c・・・出力、10d・・・別入力、11、11a、11b・・・ヒステリシス回路、12・・・半導体装置、13・・・増幅器、15・・・第1キャパシタ、17・・・第2キャパシタ、20b、20c・・・非反転増幅器、21、23・・・配列、21a、21b、21c・・・反転増幅段、23a、23b、23c・・・非反転増幅段、25、27・・・反転増幅段、29・・・抵抗、31・・・相補型反転論理ゲート、41・・・オペアンプ、41c・・・第1入力、41d・・・第2入力、41b・・・出力、42・・・基準電位線、43・・・クロック生成回路、44・・・反転アンプ、45・・・水晶発振回路、46・・・帰還素子、47・・・位相同期回路、48・・・水晶発振子、49a・・・比較回路、49b・・・ループフィルタ、49c・・・発振器、49d・・・帰還回路。