(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115378
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】塗布装置及び被覆回転体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B05C 11/10 20060101AFI20240819BHJP
B05C 13/02 20060101ALI20240819BHJP
B05C 11/04 20060101ALI20240819BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240819BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240819BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240819BHJP
B05D 1/28 20060101ALI20240819BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C13/02
B05C11/04
B05C5/00 101
B05D7/00 K
B05D3/00 C
B05D1/28
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021045
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西宮 秀男
(72)【発明者】
【氏名】田中 敦也
(72)【発明者】
【氏名】山下 妙子
【テーマコード(参考)】
4D075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC71
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC93
4D075AC94
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA15
4D075DA20
4D075DB01
4D075DB02
4D075DB04
4D075DB07
4D075DC16
4D075EA05
4D075EA07
4D075EA35
4D075EB10
4D075EB12
4D075EC30
4F041AA01
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA22
4F042AA03
4F042BA05
4F042BA08
4F042BA10
4F042BA12
4F042BA27
4F042CA01
4F042CB02
4F042DD02
4F042DD07
4F042DD16
4F042DD19
4F042DD41
4F042DD45
4F042DF01
4F042DF28
4F042DF32
(57)【要約】
【課題】吐出部及び平滑部を回転体の一端部から他端部に向かう向きのみに移動させる場合と比較して、回転体の汚れの発生を抑制することができる塗布装置を得る。
【解決手段】塗布装置は、軸周りに回転する回転体の表面に、軸方向に移動しつつ液を吐出する吐出部と、吐出部から該回転体の表面に吐出された液を該軸方向に沿って移動しつつ平滑にする平滑部と、回転体の一端部で液の吐出を開始した吐出部及び平滑部を、軸方向に沿う一端部から他端部に向かう順向きとは逆の逆向きに夫々予め定めた距離移動させた後、順向きに移動させる制御部と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸周りに回転する回転体の表面に、軸方向に移動しつつ液を吐出する吐出部と、
該吐出部から該回転体の表面に吐出された該液を該軸方向に沿って移動しつつ平滑にする平滑部と、
該回転体の一端部で該液の吐出を開始した該吐出部及び該平滑部を、該軸方向に沿う一端部から他端部に向かう順向きとは逆の逆向きに夫々予め定めた距離移動させた後、該順向きに移動させる制御部と、
を有する塗布装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記液を吐出する前記吐出部を前記逆向きに第1の距離を移動させると共に、前記平滑部を前記逆向きに前記第1の距離よりも長い第2の距離を移動させる、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記吐出部を前記逆向きに前記第1の距離を移動させると共に、前記平滑部を前記逆向きに前記第2の距離を移動させる逆移動工程と、
前記逆移動工程の後、前記吐出部からの前記液の吐出を止めると共に、予め定めた時間、前記吐出部及び前記平滑部の移動を停止させる停止工程と、
前記停止工程の後、前記吐出部及び前記平滑部を前記順向きに移動させ、前記吐出部が前記逆向きに移動を開始する前の位置に戻った後、前記吐出部による前記液の吐出を再開させる順移動工程と、
を行う請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記吐出部を前記逆向きに移動させるときの前記吐出部からの単位時間当たりの前記液の吐出量は、前記吐出部を前記順向きに移動させるときの前記吐出部からの単位時間当たりの前記液の吐出量よりも少ない、請求項3に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記吐出部の前記逆向きへの移動と前記平滑部の前記逆向きへの移動の開始時期が同等であり、
前記吐出部を前記逆向きに前記第1の距離を移動させるときの前記吐出部の移動速度と、前記平滑部を前記逆向きに前記第2の距離を移動させるときの前記平滑部の移動速度とが同等である、請求項3に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記吐出部を前記逆向きに前記第1の距離を移動させると共に、前記平滑部を前記逆向きに前記第2の距離を移動させた後、前記吐出部からの前記液の吐出を維持したまま前記吐出部及び前記平滑部を前記順向きに移動させる、請求項2に記載の塗布装置。
【請求項7】
前記吐出部を前記逆向きに移動させるときの前記吐出部からの単位時間当たりの前記液の吐出量は、前記吐出部を前記逆向きに移動を開始する前の位置から前記順向きに移動させるときの前記吐出部からの単位時間当たりの前記液の吐出量よりも少ない、請求項6に記載の塗布装置。
【請求項8】
前記吐出部が前記位置に戻るまでの前記吐出部からの単位時間当たりの前記液の吐出量は、前記位置から前記順向きに移動させるときの前記吐出部からの単位時間当たりの前記液の吐出量よりも少ない、請求項7に記載の塗布装置。
【請求項9】
前記平滑部は、前記回転体側の端部かつ前記回転体の前記一端部側に面取りが形成されており、
前記平滑部の前記回転体の軸方向の長さは、前記平滑部を前記他端部に向けて移動させた際に、前記液が前記平滑部の前記一端部側の端に到達しない長さに設定されている、請求項1に記載の塗布装置。
【請求項10】
軸周りに回転する回転体の表面に、軸方向に移動しつつ液を吐出する吐出部と、該吐出部から該回転体の表面に吐出された該液を該軸方向に沿って移動しつつ平滑にする平滑部と、を用いて、該回転体の表面に該液を塗布する被覆回転体の製造方法であって、
該回転体の一端部で該液の吐出を開始した該吐出部及び該平滑部を、該軸方向に沿う一端部から他端部に向かう順向きとは逆の逆向きに夫々予め定めた距離移動させる第1工程と、
該吐出部及び該平滑部を該順向きに移動させる第2工程と、
を有する被覆回転体の製造方法。
【請求項11】
前記第1工程では、前記液を吐出する前記吐出部を前記逆向きに第1の距離を移動させると共に、前記平滑部を前記逆向きに前記第1の距離よりも長い第2の距離を移動させた後、
前記吐出部からの前記液の吐出を止めると共に、予め定めた時間、前記吐出部及び前記平滑部の移動を停止させ、
前記第2工程では、前記吐出部及び前記平滑部を前記順向きに移動させ、前記吐出部が前記逆向きに移動を開始する前の位置に戻った後、前記吐出部による前記液の吐出を再開させる、請求項10に記載の被覆回転体の製造方法。
【請求項12】
前記第1工程で、前記液を吐出する前記吐出部を前記逆向きに第1の距離を移動させると共に、前記平滑部を前記逆向きに前記第1の距離よりも長い第2の距離を移動させた後、
前記第2工程で、前記吐出部からの前記液の吐出を維持したまま前記吐出部及び前記平滑部を前記順向きに移動させる、請求項10に記載の被覆回転体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布装置及び被覆回転体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、芯材を回転させながら、ノズルを該芯材の長手方向に移動させ、該芯材の外表面に該ノズルから液状材料を流下させるフローコート方法を用いた電子写真装置用定着ロールの製造方法において、前記液状材料を前記芯材に対して流下させて、該芯材表面に該液状材料を塗布すると共に、塗布層の外表面にブレートを当てつけ、該芯材上に液状材料を平滑に塗り広げる電子写真装置用定着ロールの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、吐出部及び平滑部を回転体の一端部から他端部に向かう向きのみに移動させる場合と比較して、回転体の汚れの発生を抑制することができる塗布装置及び被覆回転体の製造方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様に係る塗布装置は、軸周りに回転する回転体の表面に、軸方向に移動しつつ液を吐出する吐出部と、該吐出部から該回転体の表面に吐出された該液を該軸方向に沿って移動しつつ平滑にする平滑部と、該回転体の一端部で該液の吐出を開始した該吐出部及び該平滑部を、該軸方向に沿う一端部から他端部に向かう順向きとは逆の逆向きに夫々予め定めた距離移動させた後、該順向きに移動させる制御部と、を有する。
【0006】
第2態様に係る塗布装置は、第1態様に記載の塗布装置において、前記制御部は、
前記液を吐出する前記吐出部を前記逆向きに第1の距離を移動させると共に、前記平滑部を前記逆向きに前記第1の距離よりも長い第2の距離を移動させる。
【0007】
第3態様に係る塗布装置は、第2態様に記載の塗布装置において、前記制御部は、前記吐出部を前記逆向きに前記第1の距離を移動させると共に、前記平滑部を前記逆向きに前記第2の距離を移動させる逆移動工程と、前記逆移動工程の後、前記吐出部からの前記液の吐出を止めると共に、予め定めた時間、前記吐出部及び前記平滑部の移動を停止させる停止工程と、前記停止工程の後、前記吐出部及び前記平滑部を前記順向きに移動させ、前記吐出部が前記逆向きに移動を開始する前の位置に戻った後、前記吐出部による前記液の吐出を再開させる順移動工程と、を行う。
【0008】
第4態様に係る塗布装置は、第3態様に記載の塗布装置において、前記吐出部を前記逆向きに移動させるときの前記吐出部からの単位時間当たりの前記液の吐出量は、前記吐出部を前記順向きに移動させるときの前記吐出部からの単位時間当たりの前記液の吐出量よりも少ない。
【0009】
第5態様に係る塗布装置は、第3態様に記載の塗布装置において、前記吐出部の前記逆向きへの移動と前記平滑部の前記逆向きへの移動の開始時期が同等であり、前記吐出部を前記逆向きに前記第1の距離を移動させるときの前記吐出部の移動速度と、前記平滑部を前記逆向きに前記第2の距離を移動させるときの前記平滑部の移動速度とが同等である。
【0010】
第6態様に係る塗布装置は、第2態様に記載の塗布装置において、前記制御部は、前記吐出部を前記逆向きに前記第1の距離を移動させると共に、前記平滑部を前記逆向きに前記第2の距離を移動させた後、前記吐出部からの前記液の吐出を維持したまま前記吐出部及び前記平滑部を前記順向きに移動させる。
【0011】
第7態様に係る塗布装置は、第6態様に記載の塗布装置において、前記吐出部を前記逆向きに移動させるときの前記吐出部からの単位時間当たりの前記液の吐出量は、前記吐出部を前記逆向きに移動を開始する前の位置から前記順向きに移動させるときの前記吐出部からの単位時間当たりの前記液の吐出量よりも少ない。
【0012】
第8態様に係る塗布装置は、第7態様に記載の塗布装置において、前記吐出部が前記位置に戻るまでの前記吐出部からの単位時間当たりの前記液の吐出量は、前記位置から前記順向きに移動させるときの前記吐出部からの単位時間当たりの前記液の吐出量よりも少ない。
【0013】
第9態様に係る塗布装置は、第1態様に記載の塗布装置において、前記平滑部は、前記回転体側の端部かつ前記回転体の前記一端部側に面取りが形成されており、前記平滑部の前記回転体の軸方向の長さは、前記平滑部を前記他端部に向けて移動させた際に、前記液が前記平滑部の前記一端部側の端に到達しない長さに設定されている。
【0014】
第10態様に係る被覆回転体の製造方法は、軸周りに回転する回転体の表面に、軸方向に移動しつつ液を吐出する吐出部と、該吐出部から該回転体の表面に吐出された該液を該軸方向に沿って移動しつつ平滑にする平滑部と、を用いて、該回転体の表面に該液を塗布する被覆回転体の製造方法であって、該回転体の一端部で該液の吐出を開始した該吐出部及び該平滑部を、該軸方向に沿う一端部から他端部に向かう順向きとは逆の逆向きに夫々予め定めた距離移動させる第1工程と、該吐出部及び該平滑部を該順向きに移動させる第2工程と、を有する。
【0015】
第11態様に係る被覆回転体の製造方法は、第10態様に記載の被覆回転体の製造方法において、前記第1工程では、前記液を吐出する前記吐出部を前記逆向きに第1の距離を移動させると共に、前記平滑部を前記逆向きに前記第1の距離よりも長い第2の距離を移動させた後、前記吐出部からの前記液の吐出を止めると共に、予め定めた時間、前記吐出部及び前記平滑部の移動を停止させ、前記第2工程では、前記吐出部及び前記平滑部を前記順向きに移動させ、前記吐出部が前記逆向きに移動を開始する前の位置に戻った後、前記吐出部による前記液の吐出を再開させる。
【0016】
第12態様に係る被覆回転体の製造方法は、第10態様に記載の被覆回転体の製造方法において、前記第1工程で、前記液を吐出する前記吐出部を前記逆向きに第1の距離を移動させると共に、前記平滑部を前記逆向きに前記第1の距離よりも長い第2の距離を移動させた後、前記第2工程で、前記吐出部からの前記液の吐出を維持したまま前記吐出部及び前記平滑部を前記順向きに移動させる。
【発明の効果】
【0017】
第1態様に係る塗布装置によれば、吐出部及び平滑部を回転体の一端部から他端部に向かう向きのみに移動させる場合と比較して、回転体の汚れの発生を抑制することができる。
【0018】
第2態様に係る塗布装置によれば、吐出部及び平滑部を回転体の軸方向の順向きとは逆の逆向きに等しい距離を移動させる場合と比較して、回転体の汚れの発生を抑制することができる。
【0019】
第3態様に係る塗布装置によれば、吐出部及び平滑部を回転体の軸方向の順向きとは逆の逆向きに移動させたときに、吐出部の吐出及び吐出部と平滑部の移動を予め定めた時間停止させない場合と比較して、吐出部からの液の吐出量を減らすことができる。
【0020】
第4態様に係る塗布装置によれば、吐出部を逆向きに移動させるときの吐出部からの単位時間当たりの液の吐出量と、吐出部を順向きに移動させるときの吐出部からの単位時間当たりの液の吐出量とが等しい場合と比較して、吐出部から吐出される液の中に泡が発生することを抑制することができる。
【0021】
第5態様に係る塗布装置によれば、吐出部を逆向きに第1の距離を移動させるときの吐出部の移動速度よりも、平滑部を逆向きに第2の距離を移動させるときの平滑部の移動速度が高速である場合と比較して、回転体の汚れの発生を抑制することができる。
【0022】
第6態様に係る塗布装置によれば、吐出部を逆向きに移動させると共に、平滑部を逆向きに移動させた後に吐出部からの液の吐出を停止すると共に、吐出部及び平滑部の移動を定められた時間停止する場合と比較して、吐出部から吐出される液の中に泡が発生することを抑制することができる。
【0023】
第7態様に係る塗布装置によれば、吐出部を逆向きに移動させるときの吐出部からの単位時間当たりの液の吐出量と、吐出部を順向きに移動させるときの吐出部からの単位時間当たりの液の吐出量とが等しい場合と比較して、回転体の汚れの発生を抑制することができる。
【0024】
第8態様に係る塗布装置によれば、吐出部が順向きに移動するときに吐出部からの液の吐出量が等しい場合と比較して、回転体の塗布層の厚みが不均一になることが抑制される。
【0025】
第9態様に係る塗布装置によれば、平滑部の端部の幅が等しい場合と比較して、回転体の塗布層の厚みが不均一となることが抑制される。
【0026】
第10態様に係る被覆回転体の製造方法によれば、吐出部及び平滑部を回転体の一端部から他端部に向かう向きのみに移動させる場合と比較して、回転体の汚れの発生を抑制することができる。
【0027】
第11態様に係る被覆回転体の製造方法によれば、吐出部及び平滑部を回転体の軸方向の順向きとは逆の逆向きに移動させたときに、吐出部の吐出及び吐出部と平滑部の移動を予め定めた時間停止させない場合と比較して、吐出部からの液の吐出量を減らすことができる。
【0028】
第12態様に係る被覆回転体の製造方法によれば、吐出部を逆向きに移動させると共に、平滑部を逆向きに移動させた後に吐出部からの液の吐出を停止すると共に、吐出部及び平滑部の移動を定められた時間停止する場合と比較して、吐出部から吐出される液の中に泡が発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】第1実施形態に係る塗布装置の構成を示す正面図である。
【
図2】第1実施形態に係る塗布装置の一部を示す側面図である。
【
図3】第1実施形態に係る塗布装置の制御部のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】(A)~(D)は、第1実施形態に係る塗布装置において、芯体の外周面に液状材料を塗布する工程を順番に示す、塗布装置の一部を拡大した正面図である。
【
図5】(A)は、第2比較例の塗布装置において、芯体の外周面に塗布した液状材料に泡が発生した状態を示す正面図であり、(B)は、第1比較例の塗布装置において、芯体の外周面の塗布層に泡が発生した状態を示す断面図である。
【
図6】(A)~(D)は、変形例の塗布装置において、芯体の外周面に液状材料を塗布する工程を順番に示す、塗布装置の一部を拡大した正面図である。
【
図7】(A)~(D)は、第2実施形態に係る塗布装置において、芯体の外周面に液状材料を塗布する工程を順番に示す、塗布装置の一部を拡大した正面図である。
【
図8】(A)は、第2実施形態に係る塗布装置の芯体の外周面に液状材料を塗布する逆移動工程を示す拡大正面図であり、(B)は、第2実施形態に係る塗布装置の芯体の外周面に液状材料を塗布する逆移動工程から順移動工程へ移行する状態を示す拡大正面図である。
【
図9】第2実施形態に係る塗布装置において、ノズルの動きを示す模式的な拡大正面図である。
【
図10】(A)は、第3比較例の塗布装置の芯体の外周面に液状材料を塗布する逆移動工程を示す拡大正面図であり、(B)は、第3比較例の塗布装置の芯体の外周面に液状材料を塗布する逆移動工程から順移動工程に移行する状態を示す拡大正面図である。
【
図11】第3比較例の塗布装置において、ノズルの動きを示す模式的な拡大正面図である。
【
図12】(A)は、第3実施形態に係る塗布装置のブレードを示す平面図であり、(B)は、第3実施形態に係る塗布装置のブレードにおける液状材料の付着状態を示す平面図である。
【
図13】(A)は、第4比較例の塗布装置のブレードを示す平面図であり、(B)は、第4比較例の塗布装置のブレードにおける液状材料の付着状態を示す平面図である。
【
図14】(A)~(C)は、ブレードの芯体への押付力を大きくしたときの液状材料の付着状態の変化を示す平面図である。
【
図15】ブレードにおける液状材料の付着状態により芯体の外周面の液状材料に泡が発生する原因を説明する図である。
【
図16】(A)は、第1比較例の塗布装置の一部を示す正面図であり、(B)は、第5比較例の塗布装置において、芯体の軸方向の端部側に液状材料の汚れが発生した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、下記の説明で用いるX方向(+X方向、-X方向)、Y方向(+Y方向、-Y方向)、Z方向(+Z方向、-Z方向)は、図中に示す矢印方向である。また、X方向、Y方向、Z方向は、互いに交差する方向(具体的には、直交する方向)である。
【0031】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態に係る塗布装置10を示す正面図である。また、
図2は、塗布装置10の一部を示す側面図である。
【0032】
<塗布装置の構成>
図1及び
図2に示されるように、塗布装置10は、芯体12を軸周りに回転させる回転部20と、回転部20によって軸周りに回転する芯体12の表面(外周面)に液状材料14を吐出させる吐出部34を備えた吐出装置30と、を有している。塗布装置10は、吐出部34から芯体12の表面に吐出された液状材料14を平滑にする平滑部40を有している。また、塗布装置10は、吐出部34を芯体12の軸方向に沿って移動させる第1移動手段である吐出側移動部50と、平滑部40を芯体12の軸方向に沿って移動させる第2移動手段である平滑側移動部54と、を有している。さらに、塗布装置10は、吐出装置30、吐出側移動部50及び平滑側移動部54を制御する制御部60を備えている(
図1参照)。芯体12は、回転体の一例であり、液状材料14は、液の一例である。
【0033】
(芯体)
図1及び
図2に示されるように、芯体12は、円筒状に形成された管体である。なお、芯体12は、円柱状に形成されていても良い。また、芯体12には、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料が用いられる。芯体12は、軸方向長さが例えば250mm以上400mm以下とされ、外径が例えば6mm以上30mm以下とされている。なお、芯体12の寸法は、上記寸法に限定されるものではない。また、芯体12の材質は、上記金属材料に限定されるものではない。
【0034】
(回転部)
回転部20は、芯体12を軸回りに回転させる機能を有する。
図1に示されるように、回転部20は、芯体12を保持する一対の保持部材22と、一対の保持部材22の一方を回転駆動するモータ24と、を有している。図示を省略するが、一対の保持部材22は、それぞれ支持部材に回転可能に支持されている。一対の保持部材22は、芯体12を取外し可能に保持するものである。一対の保持部材22は、芯体12の軸(回転軸)を水平にした状態で芯体12の両端部を支持している。
【0035】
モータ24は、一対の保持部材22の一方を軸周りに回転することにより、芯体12を一方向(矢印R1方向)に回転させる。
【0036】
(吐出装置)
図1に示されるように、吐出装置30は、液状材料14を貯留する貯留部32と、芯体12の表面(外周面)に液状材料14を吐出する吐出部34と、貯留部32に貯留された液状材料14を吐出部34に供給する供給部38と、を有している。吐出部34は、液状材料14を吐出するノズル36と、ノズル36を支持する支持部37と、を備えている。支持部37には、液状材料14の通路として機能する略直角に曲がった貫通孔(図示せず)が形成されている。ノズル36は、当該貫通孔の一端に接続されている。
【0037】
供給部38は、一端が貯留部32に接続され、他端が吐出部34の支持部37に形成された上記貫通孔の他端に接続された供給管38Aと、貯留部32に貯留された液状材料14を供給管38Aを通じて吐出部34へ送液するポンプ38Bと、を有している。ポンプ38Bは、供給管38Aの途中に接続されており、ポンプ38Bとして、例えば、モーノポンプが用いられている。ここで、モーノポンプとは、液状材料を加圧することで、液状材料を送入口から送出口へ送液(送出)するポンプのことである。さらに詳述すると、モーノポンプとは、雌ねじ形のステータと、当該ステータ内に差し込んで嵌められた雄ねじ形のロータとを有し、ステータの中心軸線を中心にしてロータを偏心回転させることにより、両者間にできる空間容積に入った液状材料をロータの回転に従って送液する一軸偏心ねじポンプのことをいう。
【0038】
吐出装置30では、貯留部32に貯留された液状材料14が、ポンプ38Bによって吐出部34の支持部37へ送られ、吐出部34の支持部37へ送られた液状材料14がノズル36から芯体12の表面(外周面)へ吐出されるようになっている。第1実施形態では、ノズル36は、芯体12の上方側に配置されており、ノズル36から下方側の芯体12に液状材料14を吐出するようになっている。
【0039】
(液状材料)
液状材料14は、芯体12の表面に塗布される塗布液である。一例として、液状材料14は、芯体12の塗布膜(塗布層)を構成する樹脂材料が有機溶媒に溶解された溶液で構成されている。液状材料14としては、例えば、接着剤が用いられる。接着剤が芯体12の外周面に塗布されることで、芯体12の外周面に接着層(接着剤による塗布層)が形成されるようになっている。接着層は、その外周に形成される表面層(例えば、樹脂層、ゴム層)と、芯体12とを接着(接合)するためのものである。なお、液状材料14としては、上記のものに限られるものではない。つまり、液状材料14は、芯体12に直接、表面層(例えば、樹脂層、ゴム層)を形成するために用いる液状の樹脂材料、液状のゴム材料等であっても良い。
【0040】
(平滑部)
図1及び
図2に示されるように、平滑部40は、芯体12の表面(外周面)に塗布された液状材料14に接触するブレード42と、ブレード42を支持する支持部44と、を備えている。ブレード42は、板状に形成されている。一例として、ブレード42は、細長い帯状の部材であり、芯体12の径方向(Y方向)に沿った長さが、芯体12の軸方向(X方向)に沿った幅よりも長い。ブレード42は、Y方向長さが例えば30mm以上60mm以下とされ、X方向の幅が例えば12.8mm以上20mm以下とされ、厚みが例えば0.5mm以上2.0mm以下とされている。また、ブレード42には、例えば、ステンレス鋼(SUS)等の金属が用いられる。なお、ブレード42の形状は、上記寸法に限定されず、変更が可能である。ブレード42の材質は、上記金属に限定されるものではない。
【0041】
図2に示されるように、平滑部40は、芯体12の下面にブレード42が接触するように、芯体12の下方側に配置されている。平滑部40は、平滑側移動部54によって、芯体12の軸方向に沿って移動する(
図1参照)。平滑部40は、ブレード42を芯体12の表面(下面)に接触させた状態で軸方向に沿って移動することで、芯体12の表面(外周面)に塗布された液状材料14をならし、液状材料14を平滑にするように構成されている。これにより、液状材料14によって形成される塗布膜(塗布層)の膜厚が均一化されるようになっている。
【0042】
(吐出側移動部)
吐出側移動部50は、ノズル36を備えた吐出部34を芯体12の軸方向に沿って移動させる機能を有する。吐出側移動部50は、図示しない支持部材によって、吐出部34の上方側に支持されている。一例として、吐出側移動部50は、ノズル36の支持部37に接続されており、支持部37をノズル36と共に芯体12の軸方向に沿って移動させる。
【0043】
図示を省略するが、吐出側移動部50は、吐出部34を芯体12の軸方向(+X方向、-X方向)に沿って移動させる移動機構を備えている。移動機構は、例えば、駆動部の駆動力を伝達するボールねじを回転させることで、ボールねじに接続された支持部37を芯体12の軸方向に沿って移動させる構成である。また、移動機構は、上記構成(駆動部の駆動力を伝達するボールねじ)に代えて、油圧式シリンダ又はアクチュエータにより、支持部37を芯体12の軸方向に沿って移動させる構成でもよい。
【0044】
吐出側移動部50は、吐出部34(第1実施形態では支持部37)を芯体12の一端部12Aから他端部12Bに向かう順向き(
図1に示す矢印A方向)に移動させることができる。また、吐出側移動部50は、吐出部34を順向きとは逆の逆向き(
図4(A)に示す矢印B方向)に移動させることもできる。言い換えると、順向きは、吐出部34が芯体12の軸方向の+X方向に向かう向きであり、逆向きは、吐出部34が芯体12の軸方向の-X方向に向かう向きである。
【0045】
(平滑側移動部)
平滑側移動部54は、平滑部40を芯体12の軸方向に沿って移動させる機能を有する。平滑側移動部54は、図示しない支持部材によって、平滑部40の下方側に支持されている。一例として、平滑側移動部54は、平滑部40の支持部44に接続されており、支持部44をブレード42と共に芯体12の軸方向に沿って移動させる。
【0046】
図示を省略するが、平滑側移動部54は、平滑部40を芯体12の軸方向に沿って移動させる移動機構を備えている。移動機構は、例えば、駆動部の駆動力を伝達するボールねじを回転させることで、ボールねじに接続された支持部44を芯体12の軸方向に沿って移動させる構成である。また、移動機構は、上記構成(駆動部の駆動力を伝達するボールねじ)に代えて、油圧式シリンダ又はアクチュエータにより、支持部44を芯体12の軸方向に沿って移動させる構成でもよい。
【0047】
平滑側移動部54は、平滑部40(第1実施形態では支持部44)を芯体12の一端部12Aから他端部12Bに向かう順向き(
図1に示す矢印A方向)に移動させることができる。また、平滑側移動部54は、平滑部40を順向きとは逆の逆向き(
図4(A)に示す矢印B方向)に移動させることもできる。言い換えると、順向きは、平滑部40が芯体12の軸方向の+X方向に向かう向きであり、逆向きは、平滑部40が芯体12の軸方向の-X方向に向かう向きである。
【0048】
(制御部)
図3は、塗布装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3に示されるように、塗布装置10は、上述した制御部60を備えている。制御部60は、CPU(Central Processing Unit)61、ROM(Read Only Memory)62、RAM(Random Access Memory)63、ストレージ64、及び入出力インタフェース65の各構成を有する。各構成は、バス69を介して相互に通信可能に接続されている。
【0049】
CPU61は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。CPU61は、プロセッサの一例である。すなわち、CPU61は、ROM62又はストレージ64からプログラムを読み出し、RAM63を作業領域としてプログラムを実行する。CPU61は、ROM62又はストレージ64に記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御処理を行う。本実施形態では、ROM62又はストレージ64には、上記各構成を制御するプログラムが格納されている。
【0050】
ROM62は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM63は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ64は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0051】
入出力インタフェース65は、上記各構成(塗布装置10に搭載される各装置)と通信するためのインタフェースである。制御部60は、入出力インタフェース65を介して吐出装置30のポンプ38B、吐出側移動部50及び平滑側移動部54にそれぞれ接続されている。なお、吐出装置30のポンプ38B、吐出側移動部50及び平滑側移動部54は、バス69を介して直接接続されていてもよい。
【0052】
制御部60において、CPU61は、吐出装置30のポンプ38B、吐出側移動部50及び平滑側移動部54の動作を制御する。これにより、CPU61は、吐出部34からの液状材料14の吐出タイミング、吐出側移動部50による吐出部34の移動、及び平滑側移動部54による平滑部40の移動を制御する。
【0053】
図4(A)~(D)には、塗布装置10により芯体12の表面(外周面)に液状材料14を塗布する工程が順番に示されている。
図4(A)~(B)に示されるように、CPU61は、芯体12の一端部12Aで液状材料14の吐出を開始した吐出部34及び平滑部40を、芯体12の軸方向に沿う一端部12Aから他端部12Bに向かう順向き(矢印A方向)とは逆の逆向き(矢印B方向)に夫々予め定めた距離移動させる。その後、
図4(C)~(D)に示されるように、CPU61は、吐出部34及び平滑部40を芯体12の軸方向に沿って順向き(矢印A方向)に移動させる。
【0054】
より具体的に説明すると、
図4(A)、(B)に示されるように、CPU61は、芯体12の一端部12Aで液状材料14の吐出を開始させ、吐出部34を逆向き(矢印B方向)に第1の距離D1を移動させて停止させると共に、平滑部40を逆向き(矢印B方向)に第1の距離D1よりも長い第2の距離D2を移動させて停止させる(逆移動工程)。第1の距離D1は、0.5mm以上2mm以下が好ましく、0.7mm以上1.8mm以下がより好ましく、0.9mm以上1.4mm以下がさらに好ましい。一例として、第1の距離D1は、1.1mmである。また、第2の距離D2は3mm以上9mm以下が好ましく、4mm以上8mm以下がより好ましく、4.5mm以上7mm以下がさらに好ましい。一例として、第2の距離D2は、6mmである。
【0055】
第1実施形態では、液状材料14を吐出するノズル36が逆向き(矢印B方向)に第1の距離D1を移動して移動を停止し(液状材料14の吐出は停止しない)、ブレード42が逆向き(矢印B方向)に第2の距離D2を移動して移動を停止したときに、ノズル36の中心線がブレード42の幅方向(X方向)の中心部付近となることが好ましい。このため、ノズル36とブレード42が逆向きへの移動後に上記の停止位置となるように、初期状態(逆向きへの移動前)のノズル36とブレード42との位置関係が設定されている。以降、この初期状態のノズル36の位置を「ノズル36の初期位置」、この初期状態のブレード42の位置を「ブレード42の初期位置」と称す場合がある。なお、「ノズル36の初期位置」は、芯体12の軸を水平にした状態で芯体12の両端部を一対の保持部材22に支持させた後、液状材料14を吐出させる前に芯体12に対してノズル36を最初に位置決めする位置である。換言すると、「ノズル36の初期位置」は、芯体12に対して液状材料14の吐出を最初に開始する位置である。また、「ブレード42の初期位置」は、芯体12の軸を水平にした状態で芯体12の両端部を一対の保持部材22に支持させた後、液状材料14を吐出させる前に芯体12に対してブレード42を最初に位置決めする位置である。
【0056】
第1実施形態では、ノズル36の初期位置におけるノズル36からの液状材料14の吐出開始時期と、ノズル36の初期位置からの吐出部34の逆向き(矢印B方向)への移動の開始時期と、ブレード42の初期位置からの平滑部40の逆向き(矢印B方向)への移動の開始時期が同等、同様又は同一である。また、ノズル36の初期位置から吐出部34を逆向き(矢印B方向)に第1の距離D1を移動させるときの吐出部34の移動速度と、ブレード42の初期位置から平滑部40を逆向き(矢印B方向)に第2の距離D2を移動させるときの平滑部40の移動速度とが同等、同様又は同一である。
【0057】
逆移動工程では、ポンプ38Bの回転数は、予め定められた回転数とされている。一例として、ポンプ38Bの回転数は、30rpmである。また、一例として、吐出部34からの液状材料14の吐出時間は、0.25秒である。液状材料14の吐出開始時の芯体12の軸方向の一端部12Aの末端(端面)から芯体12に吐出された液状材料14の一端部12A側の縁部までの長さL1は、例えば、31mmである。
【0058】
逆移動工程では、平滑部40のブレード42により芯体12の表面の液状材料14がならされ、平滑にされる。その際、ブレード42が2本目以降の芯体12に接触したときに、芯体12の一端部12A側で液状材料14の後述する汚れが発生したとしても、液状材料14の汚れがブレード42によって平滑にされると共に新たに供給された液状材料14で覆われる。この点については、後に詳細に説明する。
【0059】
逆移動工程の後、
図4(B)に示されるように、CPU61は、吐出部34からの液状材料14の吐出を止めると共に、予め定めた時間、吐出部34及び平滑部40の移動を停止させる(停止工程)。予め定めた時間は、0.1秒以上2秒以下が好ましく、0.2秒以上1秒以下がより好ましく、0.3秒以上0.7秒以下がさらに好ましい。一例として、予め定めた時間は、0.3秒である。
【0060】
第1実施形態の逆移動工程では、吐出部34がノズル36の初期位置から逆向き(矢印B方向)に第1の距離D1を移動して移動を停止した後も、平滑部40は逆向き(矢印B方向)への移動を継続し、ブレード42の初期位置から第2の距離D2を移動したときに移動を停止する。停止工程では、一例として、吐出部34は、平滑部40が停止するタイミングに合わせて液状材料14の吐出を停止すると共に、予め定められた時間、吐出部34の移動の停止と、平滑部40の移動の停止を継続する。停止工程では、芯体12の軸方向の一端部12Aの末端(芯体12の軸方向の一端)から平滑部40で平滑にされた液状材料14の他端部12B側の縁部までの長さL2は、例えば、37mmである。なお、平滑部40のブレード42は、芯体12の軸方向の移動を停止しても、芯体12が軸周りに回転しているため、芯体12の表面の液状材料14のならし(塗り広げ)を継続して行なう。
【0061】
停止工程の後、
図4(C)に示されるように、CPU61は、吐出部34及び平滑部40を順向き(矢印A方向)に移動させる。吐出部34の順向き(矢印A方向)への移動の開始時期と、平滑部40の順向き(矢印A方向)への移動の開始時期は、同じ(同等、同様又は同一)である。さらに、
図4(D)に示されるように、CPU61は、吐出部34が逆向き(矢印B方向)に移動を開始する前の位置(ノズル36の初期位置)に戻った後、吐出部34による液状材料14の吐出を再開させる(順移動工程)。液状材料14の吐出の再開時では、芯体12の軸方向の一端部12Aの末端(芯体12の軸方向の一端)から芯体12への吐出が再開された液状材料14の一端部12A側の縁部までの長さL3は、例えば、36mmである。
図4(D)では、芯体12への液状材料14の塗布状態を分かりやすくするため、図中の二点鎖線で示すように、吐出部34及び平滑部40が芯体12の軸方向の他端部12B側まで移動させ、芯体12の表面に液状材料14を塗布した状態が示されている。これにより、芯体12の表面に液状材料14が塗布された被覆回転体の一例としての被覆部材16が製造される。
【0062】
順移動工程では、ポンプ38Bの回転数は、予め定められた回転数(一定の回転数)とされている。吐出部34を逆向き(矢印B方向)に移動させるときの吐出部34からの単位時間当たりの液状材料14の吐出量は、吐出部34を順向き(矢印A方向)に移動させるときの吐出部34からの単位時間当たりの液状材料14の吐出量よりも少ない。
【0063】
吐出部34を逆向き(矢印B方向)に移動させるときの単位時間当たりの液状材料14の吐出量は、吐出部34を順向き(矢印A方向)に移動させるときの単位時間当たりの液状材料14の吐出量の30%以上80%以下であることが好ましく、40%以上70%以下であることがより好ましく、45%以上60%以下であることがさらに好ましい。一例として、吐出部34を順向き(矢印A方向)に移動させるときのポンプ38Bの回転数は、55rpmである。また、一例として、吐出部34を逆向き(矢印B方向)に移動させるときの単位時間当たりの液状材料14の吐出量は、吐出部34を順向き(矢印A方向)に移動させるときの単位時間当たりの液状材料14の吐出量の半分(50%程度)である。
【0064】
<第1比較例の塗布装置>
ここで、第1比較例の塗布装置の構成及び課題について、
図16を用いて説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0065】
図16(A)に示されるように、第1比較例の塗布装置200は、ノズル36を備えた吐出部202と、ブレード42を備えた平滑部210と、を備えている。吐出部202は、矢印R1方向の軸周りに回転する芯体12の軸方向の一端部12Aから他端部12Bに向かう向き(矢印A方向)のみに移動する。また、平滑部210は、芯体12の軸方向の一端部12Aから他端部12Bに向かう向き(矢印A方向)のみに移動する。すなわち、吐出部202及び平滑部210は、+X方向のみに移動する。これにより、吐出部202のノズル36から液状材料14が吐出され、ブレード42によって液状材料14が平滑にされることで、芯体12の表面に液状材料14による塗布層が形成される。
【0066】
図示を省略するが、クリーニングされたブレード42がセットされた塗布装置200に、最初の1本目の芯体12をセットしたときは、ブレード42に液状材料14が付着していない。このため、1本目の芯体12の一端部12Aにおける液状材料14の塗布端にはブレード42に付着済みの液状材料14が芯体12の表面に付着することがないため、芯体12が液状材料14で汚れることはない。
【0067】
しかし、2本目の芯体12以降は、その前の芯体12の液状材料14を塗り広げた際の液状材料14の一部がブレード42に付着している。このため、このブレード42に付着している液状材料14が芯体12に付着することにより、芯体12の一端部12Aの液状材料14の塗布端に汚れ220が発生する。換言すると、既に液状材料14が付着しているブレード42を用いて芯体12に液状材料14を塗布する場合は、芯体12の一端部12Aの液状材料14の塗布端に、汚れ220が発生する。ここで、汚れ220とは、芯体12の一端部12Aの液状材料14の塗布端から芯体12の一端部12Aの端末(端縁)に向けて突出するヒゲ状の液状材料14のことである。芯体12をコピー機などの画像形成装置で用いる場合、この汚れ220は、例えば、芯体12の画像形成領域外に位置するようにブレード42の動作を設定することで、不具合(汚れに起因する画像形成不良など)を抑制することができる。しかし、この汚れ220を放置すると、芯体12から汚れ220部分の塗布膜が脱落し、脱落したものが芯体12の画像形成領域に再付着して不具合(画像形成不良など)が発生する場合がある。つまり、芯体12に付着した汚れは、放置することができない。
【0068】
<第1実施形態の作用及び効果>
次に、第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0069】
第1実施形態の塗布装置10は、軸周りに回転する芯体12の表面に、軸方向に移動しつつ液状材料14を吐出する吐出部34と、吐出部34から芯体12の表面に吐出された液状材料14を芯体12の軸方向に沿って移動しつつ平滑にする平滑部40と、を備えている。さらに、塗布装置10は、芯体12の一端部12Aで液状材料14の吐出を開始した吐出部34及び平滑部40を、芯体12の軸方向に沿って順向き(矢印A方向)とは逆の逆向き(矢印B方向)に夫々予め定めた距離移動させた後、順向き(矢印A方向)に移動させる制御部60を備えている(
図4(A)~(D)を参照)。
【0070】
これにより、ブレード42が2本目以降の芯体12に接触したときに(既に液状材料14が付着しているブレード42が芯体12に接触したときに)、芯体12の一端部12Aの液状材料14の塗布端に汚れが発生しても、液状材料14の吐出を開始した吐出部34及び平滑部40を逆向き(矢印B方向)に移動させることで、液状材料14の汚れがブレード42によって平滑にされて新たに供給された液状材料14で覆われる。ここで、新らに供給された液状材料14とは、芯体12の一端部12A(ノズル36の初期位置)における吐出部34による液状材料14の吐出の開始から、平滑部40が移動を停止する時期と同じ(同等、同様又は同一)時期に吐出部34が液状材料14の吐出を停止するまでの間に、吐出部34が吐出した液状材料14のことである。
【0071】
このため、塗布装置10では、吐出部34及び平滑部40を芯体12の一端部12Aから他端部12Bに向かう向きのみに移動させる場合と比較して、芯体12の汚れの発生を抑制することができる。換言すると、塗布装置10は、芯体12に付着した汚れを、新たに供給された液状材料14によって覆い隠すことができる。芯体12に付着した汚れ(汚れ220部分の塗布膜)は、新たに供給された液状材料14によって覆われて芯体12に強固に固定されるため、芯体12から脱落することを抑制できる。
【0072】
また、制御部60は、液状材料14を吐出する吐出部34をノズル36の初期位置から逆向き(矢印B方向)に第1の距離D1を移動させて移動を停止させると共に、平滑部40をブレード42の初期位置から逆向き(矢印B方向)に第1の距離D1よりも長い第2の距離D2を移動させて移動を停止させる。制御部60は、吐出部34が第1の距離D1の移動を終えると、吐出部34の移動を停止させるが、液状材料14の吐出は継続させる。これにより、吐出部34から芯体12の表面に吐出された液状材料14が平滑部40によって広い範囲に塗り広げられる。
【0073】
このため、塗布装置10では、吐出部34及び平滑部40を芯体12の軸方向の順向きとは逆の逆向き(矢印B方向)に等しい距離を移動させる場合と比較して、芯体12の汚れの発生を抑制することができる。換言すると、塗布装置10は、芯体12に付着した汚れを、広い範囲に塗り広げられた新たに供給された液状材料14によって覆い隠すことができる。
【0074】
また、制御部60は、
図4(A)に示されるように、液状材料14を吐出する吐出部34をノズル36の初期位置から逆向き(矢印B方向)に第1の距離D1を移動させて移動を停止させると共に、平滑部40をブレード42の初期位置から逆向き(矢印B方向)に第2の距離D2を移動させて移動を停止させる逆移動工程を行う。そして、制御部60は、逆移動工程の後、
図4(B)に示されるように、平滑部40の移動を停止する時期と同じ(同等、同様又は同一)時期に吐出部34からの液状材料14の吐出を止めると共に、予め定めた時間、吐出部34及び平滑部40の移動を停止させる(吐出部34及び平滑部40の移動の停止を継続させる)停止工程を行う。制御部60は、停止工程の後、
図4(C)、(D)に示されるように、吐出部34及び平滑部40を順向き(矢印A方向)に移動させ、吐出部34が逆向きに移動を開始する前の位置(ノズル36の初期位置)に戻った後、吐出部34による液状材料14の吐出を再開させる順移動工程を行う。吐出部34による液状材料14の吐出は、吐出部34及び平滑部40の順向き(矢印A方向)への移動中に再開される。
【0075】
このため、塗布装置10では、吐出部34及び平滑部40を芯体12の軸方向の順向き(矢印A方向)とは逆の逆向き(矢印B方向)に移動させたときに、吐出部34の吐出及び吐出部34と平滑部40の移動を予め定めた時間停止させない場合と比較して、吐出部34からの液状材料14の吐出量を減らすことができる。
【0076】
また、塗布装置10では、吐出部34を逆向き(矢印B方向)に移動させるときの吐出部34からの単位時間当たりの液状材料14の吐出量は、吐出部34を順向き(矢印A方向)に移動させるときの吐出部34からの単位時間当たりの液状材料14の吐出量よりも少ない。
【0077】
このため、塗布装置10では、吐出部34を逆向きに移動させるときの吐出部34からの単位時間当たりの液状材料14吐出量と、吐出部34を順向きに移動させるときの吐出部34からの単位時間当たりの液状材料14の吐出量とが等しい場合と比較して、吐出部34から吐出される液状材料14の中に泡(気泡)が発生することを抑制することができる。
【0078】
また、塗布装置10では、吐出部34のノズル36の初期位置からの逆向き(矢印B方向)への移動の開始時期と、平滑部40のブレード42の初期位置からの逆向き(矢印B方向)への移動の開始時期が同等、同様又は同一である。さらに、塗布装置10では、吐出部34をノズル36の初期位置から逆向き(矢印B方向)に第1の距離D1を移動させるときの吐出部34の移動速度と、平滑部40をブレード42の初期位置から逆向き(矢印B方向)に第2の距離D2を移動させるときの平滑部40の移動速度とが同等、同様又は同一である。これにより、塗布装置10は、芯体12の軸方向におけるノズル36とブレード42との位置関係を適切に維持することができる。
【0079】
このため、塗布装置10では、吐出部34をノズル36の初期位置から逆向きに第1の距離D1を移動させるときの吐出部34の移動速度よりも、平滑部40をブレード42の初期位置から逆向きに第2の距離D2を移動させるときの平滑部40の移動速度が高速である場合と比較して、芯体12の汚れの発生を抑制することができる。また、塗布装置10は、吐出部34をノズル36の初期位置から逆向きに第1の距離D1を移動させるときの吐出部34の移動速度と、平滑部40をブレード42の初期位置から逆向きに第2の距離D2を移動させるときの平滑部40の移動速度とが異なる場合と比較して、吐出部34及び平滑部40の動作を制御しやすい。
【0080】
また、芯体12の表面に液状材料14を塗布する被覆部材16の製造方法は、芯体12の一端部12Aで液状材料14の吐出を開始した吐出部34及び平滑部40を、芯体12の軸方向に沿う順向き(矢印A方向)とは逆の逆向き(矢印B方向)に夫々予め定めた距離移動させる第1工程(すなわち、逆移動工程)を有する。さらに、被覆部材16の製造方法は、吐出部34及び平滑部40を順向き(矢印A方向)に移動させる第2工程(すなわち、順移動工程)を有する。
【0081】
このため、被覆部材16の製造方法によれば、吐出部34及び平滑部40を芯体12の一端部12Aから他端部12Bに向かう向きのみに移動させる場合と比較して、芯体12の汚れの発生を抑制することができる。
【0082】
また、被覆部材16の製造方法は、第1工程では、液状材料14を吐出する吐出部34をノズル36の初期位置から逆向き(矢印B方向)に第1の距離D1を移動させて移動を停止すると共に、平滑部40をブレード42の初期位置から逆向きに第1の距離D1よりも長い第2の距離D2を移動させて移動を停止させた後、吐出部34からの液状材料14の吐出を止めると共に、予め定めた時間、吐出部34及び平滑部40の移動を停止させる。すなわち、吐出部34及び平滑部40の移動の停止を継続させる(停止工程)。さらに、被覆部材16の製造方法は、第2工程では、吐出部34及び平滑部40を順向き(矢印A方向)に移動させ、吐出部34が逆向きに移動を開始する前の位置に戻った後、吐出部34による液状材料14の吐出を再開させる。換言すると、第2工程では、吐出部34及び平滑部40を順向き(矢印A方向)に移動させ、吐出部34及び平滑部40の順向きへの移動中に吐出部34が逆向きに移動を開始する前の位置(ノズル36の初期位置)に戻ったとき(到達した際)、吐出部34による液状材料14の吐出を再開させる。
【0083】
このため、被覆部材16の製造方法によれば、吐出部34及び平滑部40を芯体12の軸方向の順向きとは逆の逆向き(矢印B方向)に移動させたときに、吐出部34の吐出及び吐出部34と平滑部40の移動を予め定めた時間停止させない場合と比較して、吐出部34からの液状材料14の吐出量を減らすことができる。
【0084】
<第2比較例の塗布装置>
図5(A)には、第2比較例の塗布装置230が示されている。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0085】
第2比較例の塗布装置230では、第1実施形態の塗布装置10と同様に、制御部(図示省略)により、逆移動工程と、停止工程と、順移動工程とを行うが、逆移動工程における吐出部34からの液状材料14の単位時間当たりの吐出量が異なる。第2比較例の塗布装置230では、吐出部34を逆向き(矢印B方向)に移動させるときの吐出部34からの単位時間当たりの液状材料14の吐出量は、吐出部34を順向き(矢印A方向)に移動させるときの吐出部34からの単位時間当たりの液状材料14の吐出量と同等である。
【0086】
図5(A)には、第2比較例の塗布装置230において、吐出部34及び平滑部40を順向き(矢印A方向)に移動させる順移動工程が示されている。
図5(A)に示されるように、吐出部34を順向き(矢印A方向)に移動させて液状材料14の吐出を再開すると、芯体12に吐出された液状材料14の中に泡234が1つ発生する。
図5(B)は、芯体12の軸方向と直交する方向における液状材料14の泡234を示す断面図である。
図5(B)に示されるように、芯体12に吐出された液状材料14の中に泡234が1つ発生している。芯体12の一端部12A側の端縁と泡234の一端部12A側の縁部までの距離は、例えば、38mmである(
図5(A)参照)。
【0087】
泡234が発生する理由は、ノズル36から吐出する液状材料14の量が多い場合、ノズル36からの液状材料14の吐出を停止すると、キャビテーション現象により、ノズル36の先端で液状材料14を吸引する圧力が高くなるからである。ノズル36の先端で液状材料14が吸引されると、芯体12の表面の液状材料14が局所的に低圧になり、泡234が発生する。ここで、キャビテーション現象とは、液体が低圧状態になったときに、気化して気泡が発生する現象をいう。
【0088】
<変形例の塗布装置>
図6(A)~(D)には、変形例の塗布装置70における芯体12への液状材料14の塗布工程が順番に示されている。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0089】
図6(A)~(D)に示されるように、変形例の塗布装置70では、第1実施形態の塗布装置10と同様に、制御部60(
図3参照)により、逆移動工程と、停止工程と、順移動工程とを行うが、
図6(A)に示す逆移動工程における吐出部34からの液状材料14の単位時間当たりの吐出量が異なる。
【0090】
変形例の塗布装置70では、逆移動工程、すなわち吐出部34を逆向き(矢印B方向)に移動させるときの吐出部34からの単位時間当たりの液状材料14の吐出量は、吐出部34を順向き(矢印A方向)に移動させるときの吐出部34からの単位時間当たりの液状材料14の吐出量と同等、同様又は同一である。
【0091】
図6(A)に示されるように、変形例の塗布装置70では、液状材料14の吐出開始時の芯体12の軸方向の一端部12Aの末端(芯体12の軸方向の一端)から液状材料14の一端部12A側の縁部までの長さL11は、第1実施形態の塗布装置10における長さL1と異なる。長さL11は、例えば28mm以上29.5mm以下である。
【0092】
また、
図6(B)に示されるように、変形例の塗布装置70では、平滑部40をブレード42の初期位置から逆向き(矢印B方向)に移動させる第2の距離D21は、第1実施形態の塗布装置10における第2の距離D2と異なる。第2の距離D21は、例えば3.0mm以上4.5mm以下である。
【0093】
これにより、
図6(D)に示されるように、芯体12の軸方向の一端部12Aの末端(芯体12の軸方向の一端)から芯体12への吐出が再開された液状材料14の一端部12A側の縁部までの長さL31は、第1実施形態の塗布装置10における長さL3よりも短くなる。長さL31は、例えば33mm以上34.5mm以下となる。
【0094】
変形例の塗布装置70では、
図6(D)に示されるように、順移動工程で、吐出部34が元の位置(ノズル36の初期位置)に到達した際の吐出部34からの液状材料14の吐出の再開時に、液状材料14中に泡78が1つ発生する場合がある。このとき、芯体12の軸方向の一端部12Aの末端(芯体12の軸方向の一端)から泡78の一端部12A側の縁部までの長さL4は、例えば35mm以上36.5mm以下となる。
【0095】
一例として、芯体12の表面に液状材料14が塗布された被覆部材76を画像形成装置で使用する場合は、芯体12の軸方向の一端部12Aの末端(芯体12の軸方向の一端)から37mmの位置より軸方向中間部側が画像形成領域77となる。一例として、被覆部材76は、芯体12の表面に、液状材料14として接着剤が塗布された接着層に円筒状の弾性体を接着させた定着ロールである。画像形成領域77は、定着ロールとして使用される定着機能を有する領域となる。なお、変形例の塗布装置70のその他の構成は、第1実施形態の塗布装置10の構成と同様である。
【0096】
変形例の塗布装置70では、第1実施形態の塗布装置10と同様の構成により、同様の効果を得ることができる。
【0097】
また、変形例の塗布装置70では、被覆部材76の塗布膜に泡78が1つ発生しても、泡78の発生位置は、被覆部材76の画像形成領域77の軸方向外側となる。このため、被覆部材76を、画像形成装置で定着ロールとして使用することができる。
【0098】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態の塗布装置について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0099】
<第2実施形態の塗布装置の構成>
図7(A)~(D)に示されるように、第2実施形態の塗布装置90では、第1実施形態の塗布装置70と同様に、制御部60(
図3参照)により、逆移動工程(すなわち、第1工程)と、順移動工程(すなわち、第2工程)とを行うが、逆移動工程から順移動工程への移行時の状態が異なる。
【0100】
図7(A)に示されるように、制御部60(
図3参照)は、吐出部34から液状材料14を吐出した状態で、吐出部34を逆向き(矢印B方向)に第1の距離D12を移動させて移動を停止させると共に、平滑部40を逆向き(矢印B方向)に第1の距離D12よりも長い第2の距離D2を移動させる(逆移動工程)。一例として、第1の距離D12は、4.1mmであり、第2の距離D2は、6.0mmである。第1の距離D12は、第1実施形態の塗布装置10における第1の距離D1よりも長い。塗布装置90における第2の距離D2は、第1実施形態の塗布装置10における第2の距離D2と同様、同等又は同一である。
【0101】
図7(B)~(D)に示されるように、制御部60は、逆移動工程の後、吐出部34からの液状材料14の吐出を維持したまま吐出部34及び平滑部40を順向き(矢印A方向)に移動させる(順移動工程)。すなわち、逆移動工程から順移動工程に移るときは、吐出部34からの液状材料14の吐出を停止しない。また、
図7(B)に示されるように、平滑部40が逆向き(矢印B方向)に第2の距離D2を移動したら、
図7(C)に示されるように、すぐに吐出部34及び平滑部40を順向き(矢印A方向)に移動させる。すなわち、平滑部40は、第2の距離D2の移動を終えた直後に折り返す。このため、平滑部の停止は瞬間であり、平滑部40は停止していないと見做せるため、保持時間は、0秒である。
【0102】
図7(A)に示す逆移動工程において、吐出部34の逆向き(矢印B方向)の移動時の単位時間当たりの液状材料14の吐出量は、
図7(D)に示す順移動工程において、吐出部34の元の位置(ノズル36の初期位置)からの順向き(矢印A方向)の移動時の単位時間当たりの液状材料14の吐出量よりも少ない。吐出部34の元の位置とは、逆移動工程において、逆向きに吐出部34の移動を開始する前の位置、すなわち吐出部34の移動開始前の位置(ノズル36の初期位置)である。例えば、
図7(A)に示す逆移動工程におけるポンプ38Bの回転数は、25rpmである。また、例えば、
図7(D)に示す吐出部34の移動開始前の位置(ノズル36の初期位置)からの順移動工程におけるポンプ38Bの回転数は、50rpmである。例えば、
図7(A)に示す逆移動工程における吐出部34からの単位時間当たりの液状材料14の吐出量は、
図7(D)に示す吐出部34の移動開始前の位置(ノズル36の初期位置)からの順移動工程における吐出部34からの単位時間当たりの液状材料14の吐出量の半分(50%程度)である。
【0103】
一例として、
図7(A)に示す逆移動工程における吐出部34による液状材料14の吐出時間は、0.59秒程度である。
【0104】
図7(C)に示す順移動工程において、吐出部34が元の位置(移動開始前の位置=ノズル36の初期位置)に戻るまでの吐出部34からの単位時間当たりの液状材料14の吐出量は、
図7(D)に示す順移動工程において、吐出部34が元の位置から順向きに移動するときの吐出部34からの単位時間当たりの液状材料14の吐出量よりも少ない。例えば、
図7(C)に示す順移動工程において、吐出部34が元の位置(移動開始前の位置)に戻るまでのポンプ38Bの回転数は、25rpmである。
図7(C)に示す順移動工程において、吐出部34が元の位置(移動開始前の位置)まで戻るときの吐出部34からの単位時間当たりの液状材料14の吐出量は、
図7(A)に示す逆移動工程における吐出部34からの単位時間当たりの液状材料14の吐出量と同等、同様又は同一である。第2実施形態の塗布装置90のその他の構成は、第1実施形態の塗布装置10の構成と同様である。
【0105】
塗布装置90では、
図7(A)~(D)に示す液状材料14の塗布工程によって、芯体12の表面に液状材料14が塗布された被覆回転体の一例としての被覆部材96が製造される。
【0106】
<第2実施形態の作用及び効果>
塗布装置90では、第1実施形態の塗布装置10と同様の構成による作用及び効果に加えて、以下のような作用及び効果を有している。
【0107】
塗布装置90では、制御部60(
図3参照)は、液状材料14を吐出する吐出部34を逆向き(矢印B方向)に第1の距離D12を移動させた後、移動を停止させると共に、平滑部40を逆向き(矢印B方向)に第2の距離D2を移動させる。制御部60(
図3参照)は、その後、吐出部34からの液状材料14の吐出を維持したまま吐出部34及び平滑部40を順向き(矢印A方向)に移動させる。
【0108】
すなわち、液状材料14を吐出する吐出部34が逆向き(矢印B方向)に第1の距離D12を移動すると共に、平滑部40が逆向き(矢印B方向)に第2の距離D2を移動した後、吐出部34からの液状材料14の吐出を維持したまま吐出部34及び平滑部40が順向き(矢印A方向)に移動する。
【0109】
このため、塗布装置90では、吐出部34を逆向きに移動させると共に、平滑部40を逆向きに移動させた後に吐出部34からの液の吐出を停止すると共に、吐出部34及び平滑部40の移動を定められた時間停止する場合と比較して、吐出部34から吐出される液状材料14の中に泡が発生することを抑制することができる。芯体12の表面に塗布された液状材料14中の泡の発生を抑制できる理由は、吐出部34からの液状材料14の吐出を止めることなく継続させるからである。
【0110】
また、塗布装置90では、吐出部34を逆向き(矢印B方向)に移動させるときの吐出部34からの単位時間当たりの液状材料14の吐出量は、吐出部34を元の位置(逆向きの移動開始前の位置=ノズル36の初期位置)から順向き(矢印A方向)に移動させるときの吐出部34からの単位時間当たりの液状材料14の吐出量よりも少ない。
【0111】
このため、塗布装置90では、吐出部34を逆向きに移動させるときの吐出部34からの単位時間当たりの液状材料14の吐出量と、吐出部34を順向きに移動させるときの吐出部34からの単位時間当たりの液状材料14の吐出量とが等しい場合と比較して、芯体12の汚れの発生を抑制することができる。
【0112】
また、塗布装置90では、逆移動工程の後、吐出部34を順向き(矢印A方向)に移動させるときに、吐出部34が元の位置(逆向きの移動開始前の位置)に戻るまでの吐出部34からの単位時間当たりの液状材料14の吐出量は、吐出部34が元の位置から順向きに移動するときの吐出部34からの単位時間当たりの液状材料14の吐出量よりも少ない。これにより、吐出部34の順向きの移動時に、芯体12の表面の液状材料14が過剰に重ね塗りされることが抑制される。
【0113】
このため、塗布装置10では、逆移動工程の後の順移動工程において、吐出部34が順向きに移動するときに吐出部34からの液状材料14の吐出量が等しい場合(ノズル36の初期位置で吐出量を変更しない場合)と比較して、芯体12の液状材料14による塗布層の厚みが不均一になることが抑制される。
【0114】
また、被覆部材96の製造方法では、第1工程で、液状材料14を吐出する吐出部34を逆向き(矢印B方向)に第1の距離D12を移動させると共に、平滑部40を逆向きに第1の距離D1よりも長い第2の距離D2を移動させた後、第2工程で、吐出部34からの液状材料14の吐出を維持したまま吐出部34及び平滑部40を順向き(矢印A方向)に移動させる。
【0115】
被覆部材96の製造方法によれば、吐出部34を逆向きに移動させると共に、平滑部40を逆向きに移動させた後に吐出部34からの液状材料14の吐出を停止すると共に、吐出部34及び平滑部40の移動を定められた時間停止する場合と比較して、吐出部34から吐出される液状材料14の中に泡が発生することを抑制することができる。
【0116】
<第3比較例の塗布装置と第2実施形態の塗布装置との比較>
ここで、
図10等を用いて、第3比較例の塗布装置250について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0117】
図10(A)、(B)に示されるように、第3比較例の塗布装置250では、吐出部34を逆向き(矢印B方向)に移動させる第1の距離D1は、例えば1.1mmであり、平滑部40を逆向き(矢印B方向)に移動させる第2の距離D2は、例えば6.0mmである。第1の距離D1は、第2実施形態の塗布装置90の第1の距離D12よりも短い。塗布装置250では、
図10(A)に示す逆移動工程の後、吐出部34からの液状材料14の吐出を維持したまま吐出部34及び平滑部40を順向きに移動させる(順移動工程)。そのとき、
図10(B)に示されるように、吐出部34からの液状材料14の吐出を維持しているため、芯体12の一端部12A側の液状材料14の塗布端に汚れ354が発生する場合がある。これは、第1の距離D1が短いことで、ノズル36が逆向きに移動する際のブレード42の液状材料14の塗れ広がり幅(-X方向の幅)が小さくなり、汚れ354が発生しやすくなると考えられる。
【0118】
これに対して、第2実施形態の塗布装置90では、吐出部34を逆向き(矢印B方向)に移動させる第1の距離D12は、例えば4.1mmであり、平滑部40を逆向き(矢印B方向)に移動させる第2の距離D2は、例えば6.0mmである。このため、
図8(A)、(B)に示されるように、第1の距離D12が長いことで、ノズル36が逆向きに移動する際のブレード42の芯体12の表面の液状材料14の塗布広がり幅(-X方向の幅)が大きくなる。また、塗布装置90では、2本目以降の芯体12がセットされたときに、ブレード42に付着している液状材料14(1本目の芯体12の液状材料14を塗布した際に、ブレード42に付着した液状材料14)が芯体12の表面に斑状に付着しても(
図8(A)参照)、斑状の液状材料14が新たに供給された液状材料14で塗り広げられる。換言すると、既に液状材料14が付着しているブレード42を芯体12に接触させた際に、当該液状材料14が斑状に芯体12の表面に付着したとしても、当該斑状の液状材料14は、芯体12の表面に塗布するために新たに供給された液状材料14で上塗りされ、覆い隠すことができる。このため、塗布装置90では、第1の距離D1が小さい場合と比較して、芯体12の汚れの発生を抑制することができる。
【0119】
また、第3比較例の塗布装置250では、
図11に示されるように、吐出部34を逆向き(矢印B方向)に移動した後、吐出部34を順向き(矢印A方向)に移動させるときの移動速度は、吐出部34の移動位置によらずに同等、同様又は同一である。一例として、吐出部34が順向き(矢印A方向)に移動するときの移動速度は、23mm/秒である。吐出部34が順向き(矢印A方向)に移動するときの移動速度が変化しないため、芯体12の表面に吐出された液状材料14の芯体12の一端部12A側の形状を確保しやすい(
図11の破線の円を参照)。すなわち、芯体12の表面の液状材料14による塗布層の厚みが不均一になりにくい。
【0120】
一方、第2実施形態の塗布装置90では、吐出部34を逆向き(矢印B方向)に移動させる第1の距離D12は、例えば4.1mmであり、第3比較例の塗布装置250の第1の距離D1よりも長い。これに応じて、
図9に示されるように、吐出部34が順向き(矢印A方向)に移動するときの移動速度は、順向きの移動開始位置から6mmの位置までは早く、順向きの移動開始位置から6mmの位置以降は遅くしている。一例として、順向きの移動開始位置から6mmの位置までの吐出部34の移動速度は、約47mm/秒であり、順向きの移動開始位置から6mmの位置以降の吐出部34の移動速度は、その半分の約23mm/秒に変更している。
【0121】
これにより、
図9に示されるように、芯体12の表面に吐出された液状材料14の芯体12の一端部12A側の形状を確保しにくく、塗布層の厚みが薄くなりやすい(
図9の破線の円を参照)。このため、第2変形例の塗布装置90では、吐出部34の逆向き(矢印B方向)から順向き(矢印B方向)への移行時に、吐出部34からの液状材料14の吐出量を多くしている。一例として、吐出部34の順向き(矢印B方向)の移動開始時から吐出部34が元の位置(逆向きの移動開始前の位置)に戻るまでの吐出部34からの単位時間当たりの吐出量は、吐出部34の逆向き(矢印B方向)の移動時の吐出部34からの単位時間当たりの吐出量に対して20%程度多くする。このため、第2変形例の塗布装置90では、吐出部34の順向き(矢印B方向)の移動開始時から吐出部34が元の位置に戻るまでの吐出部34からの単位時間当たりの吐出量が、吐出部34の逆向き(矢印B方向)の移動時の吐出部34からの単位時間当たりの吐出量と同等の場合と比較して、芯体12の表面の塗布層の厚みが不均一になることが抑制される。
【0122】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態の塗布装置について説明する。なお、前述した第1及び第2実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0123】
<第3実施形態の塗布装置の構成>
図12(A)に示されるように、第3実施形態の塗布装置120では、第1実施形態の塗布装置10と異なる点は、平滑部122を構成するブレード124の形状を変更している点である。ブレード124は、長手方向の一端側の端部124Aと、長手方向の他端側の取付部124Bと、を備えている。取付部124Bは、支持部44(
図1、2参照)に固定されており、端部124Aが芯体12に接触させる先端側となる。ブレード124には、長手方向の芯体12側の端部124Aかつ芯体12の一端部12A側に面取り部125Aが形成されている。面取り部125Aは、面取りの一例である。また、ブレード124の端縁125Cの芯体12の軸方向の長さは、面取り部125Aが設けられた部分の芯体12の軸方向の長さと同等、同様又は同一である。すなわち、面取り部125Aの長さは、ブレード124の端縁125Cの芯体12の軸方向の長さよりも長い。
【0124】
図12(B)に示されるように、ブレード124における芯体12の軸方向の長さW1(すなわち、ブレード124の面方向の幅)は、ブレード124を芯体12の他端部12Bに向けて移動させた際に(順移動工程)、液状材料14がブレード124における芯体12の一端部12A側の端125Bに到達しない長さに設定されている。ブレード124における芯体12の軸方向の長さW1は、13mm以上20mm以下が好ましく、13.5mm以上18mm以下がより好ましく、14mm以上16mm以下がさらに好ましい。一例として、ブレード124における芯体12の軸方向の長さW1は、14.5mmである。また、ブレード124の端部124Aの端縁125Cと面取り部125Aとの角度は、例えば150度である。
【0125】
また、ブレード124の芯体12へのZ方向の押し込み量は、3mm以上8mm以下が好ましく、4mm以上7mm以下がより好ましく、4.5mm以上6.5mm以下がさらに好ましい。一例として、ブレード124の芯体12へのZ方向の押し込み量は、5mmである。なお、第3実施形態の塗布装置120の他の構成は、第1実施形態の塗布装置10と同様である。
【0126】
ここで、ブレード124を芯体12に押し付けたときに、液状材料14に泡が発生する原因について説明する。
【0127】
図14(A)~(C)には、ブレード124の芯体12への押し付け力を上げたときのブレード124への液状材料14の付着状態が示されている。
図14(A)~(C)では、矢印Cの方向に向かうにしたがって、ブレード124の芯体12への押し付け力を上げている。
【0128】
図14(A)に示されるように、ブレード124の芯体12への押し付け力が小さいと、ブレード124の端部124Aの端縁125Cと面取り125Aの一部に少ない量の液状材料14が付着する。この状態では、液状材料14に泡が発生する場合がある。この原因は、芯体12への液状材料14の塗布時に巻き込むエアをブレード124の押し付け力により、潰しきれていないためと考えられる。泡の直径は、例えば0.5mm程度である。
【0129】
図14(B)に示されるように、ブレード124の芯体12への押し付け力を大きくすると、ブレード124の端縁125Cと面取り125Aに付着する液状材料14の量が多くなる。この状態では、液状材料14に泡が発生しにくい。
【0130】
図14(C)に示されるように、ブレード124の芯体12への押し付け力をさらに大きくしていくと、ブレード124に付着する液状材料14の量が多くなり、液状材料14は、ブレード124における芯体12の一端部12A側の端125Bにも付着する。この状態では、芯体12に塗布された液状材料14に泡が発生する場合がある。
図15に示されるように、ブレード124の芯体12への押し付け力を大きくしすぎて液状材料14がブレード124の面取り部125Aを超えて端125Bまで塗れ広がると、矢印D及び矢印Eに示すように、液状材料14の掃き出し時に速度差が発生する。すなわち、ブレード124の面取り部125Aでの液状材料14の吐き出し速度が、ブレード124の端125Bでの液状材料14の吐き出し速度よりも大きくなる。このため、芯体12に塗布された液状材料14に泡が発生すると考えられる。
【0131】
第3実施形態では、ブレード124における芯体12の軸方向の長さW1は、ブレード124を芯体12に接触させて順方向(矢印A方向)に移動させた際に、液状材料14がブレード124における芯体12の一端部12A側の端125Bに到達しない長さに設定されている。このとき、ブレード124の芯体12への押付力は、定められた値とされており、一例として、上記のようにブレード124の芯体12へのZ方向の押し込み量が5mm程度となるように設定されている。
【0132】
<第3実施形態の作用及び効果>
第3実施形態の塗布装置120では、第1実施形態の塗布装置10と同様の構成による作用及び効果に加えて、以下のような作用及び効果を有している。
【0133】
塗布装置120では、ブレード124における芯体12の軸方向の長さW1は、ブレード124を順方向(矢印A方向)に移動させた際に、液状材料14がブレード124における芯体12の一端部12A側の端125Bに到達しない長さに設定されている。
【0134】
このため、塗布装置120では、平滑部122を構成するブレード124の端部124Aの幅が等しい場合と比較して、芯体12の液状材料14による塗布層の厚みが不均一となることが抑制される。
【0135】
<第4比較例の塗布装置>
図13(A)には、第4比較例の塗布装置270の吐出部272を構成するブレード274が示されている。
図13(A)に示されるように、第4比較例の塗布装置270では、ブレード274は、芯体12側の端部274Aかつ芯体12の一端部12A側に形成された面取り部275Aを備えている。ブレード274における芯体12の軸方向の長さW1(すなわち、ブレード274の面方向の幅)は、12.7mmである。また、ブレード274の端縁275Cの芯体12の軸方向の長さは、面取り部275Aが設けられた位置の芯体12の軸方向の長さよりも長い。また、ブレード274の端部274Aの端縁275Cと面取り部275Aとの角度は、150度である。
【0136】
図13(B)に示されるように、第4比較例の塗布装置270では、ブレード274を芯体12に接触させて順方向(矢印A方向)に移動させた際に、液状材料14がブレード274の面取り部275Aを超えて芯体12の一端部12A側の端125Bに到達する。このため、芯体12の表面に吐出された液状材料14に泡が発生する場合がある。
【0137】
これに対して、第3実施形態の塗布装置120では、
図12(B)に示されるように、ブレード124を順方向(矢印A方向)に移動させた際に、液状材料14がブレード124における芯体12の一端部12A側の端125Bに到達しない。このため、ブレード124の長さW1が短い場合と比較して、芯体12の表面に吐出された液状材料14に泡が発生しにくい。
【0138】
〔補足説明〕
第1実施形態及び変形例の塗布装置において、逆向き(矢印B方向)の移動後の吐出部34及び平滑部40の停止時間、逆向きの移動時の吐出部34からの液状材料14の吐出量、又は逆向きの移動時の吐出部34及び平滑部40の移動速度などは、本開示の要旨を変更しない範囲で適宜に変更可能である。
【0139】
第2実施形態の塗布装置において、逆向き(矢印B方向)の移動時の吐出部34からの液状材料14の吐出量、逆向きの移動時の吐出部34及び平滑部40の移動速度、又は順向き(矢印A方向)の移動時の吐出部34及び平滑部40の移動速度などは、本開示の要旨を変更しない範囲で適宜に変更可能である。
【0140】
第3実施形態の塗布装置において、ブレード124の長手方向と直交する方向の幅、又は面取り部125Aの長さなどは、本開示の要旨を変更しない範囲で適宜に変更可能である。
【0141】
上記の第1実施形態、変形例、第2実施形態、第3実施形態又は第2変形例の塗布装置の処理は、専用のハードウェア回路によっても実現することもできる。この場合には、1つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアで実行されてもよい。
【0142】
また、第1実施形態、変形例、第2実施形態、第3実施形態又は第2変形例の塗布装置を動作させるプログラムは、USB(Universal Serial Bus)メモリ、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、メモリ又はストレージ等に転送され記憶される。また、このプログラムは、たとえば、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、塗布装置の一機能としてその各装置のソフトウェアに組み込んでもよい。
【0143】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【0144】
〔付記〕
(((1)))
軸周りに回転する回転体の表面に、軸方向に移動しつつ液を吐出する吐出部と、
該吐出部から該回転体の表面に吐出された該液を該軸方向に沿って移動しつつ平滑にする平滑部と、
該回転体の一端部で該液の吐出を開始した該吐出部及び該平滑部を、該軸方向に沿う一端部から他端部に向かう順向きとは逆の逆向きに夫々予め定めた距離移動させた後、該順向きに移動させる制御部と、
を有する塗布装置。
【0145】
(((2)))
前記制御部は、
前記液を吐出する前記吐出部を前記逆向きに第1の距離を移動させると共に、前記平滑部を前記逆向きに前記第1の距離よりも長い第2の距離を移動させる、(((1)))に記載の塗布装置。
【0146】
(((3)))
前記制御部は、
前記吐出部を前記逆向きに前記第1の距離を移動させると共に、前記平滑部を前記逆向きに前記第2の距離を移動させる逆移動工程と、
前記逆移動工程の後、前記吐出部からの前記液の吐出を止めると共に、予め定めた時間、前記吐出部及び前記平滑部の移動を停止させる停止工程と、
前記停止工程の後、前記吐出部及び前記平滑部を前記順向きに移動させ、前記吐出部が前記逆向きに移動を開始する前の位置に戻った後、前記吐出部による前記液の吐出を再開させる順移動工程と、
を行う請求項(((2)))に記載の塗布装置。
【0147】
(((4)))
前記吐出部を前記逆向きに移動させるときの前記吐出部からの単位時間当たりの前記液の吐出量は、前記吐出部を前記順向きに移動させるときの前記吐出部からの単位時間当たりの前記液の吐出量よりも少ない、(((3)))に記載の塗布装置。
【0148】
(((5)))
前記吐出部の前記逆向きへの移動と前記平滑部の前記逆向きへの移動の開始時期が同等であり、
前記吐出部を前記逆向きに前記第1の距離を移動させるときの前記吐出部の移動速度と、前記平滑部を前記逆向きに前記第2の距離を移動させるときの前記平滑部の移動速度とが同等である、(((3)))又は(((4)))に記載の塗布装置。
【0149】
(((6)))
前記制御部は、
前記吐出部を前記逆向きに前記第1の距離を移動させると共に、前記平滑部を前記逆向きに前記第2の距離を移動させた後、前記吐出部からの前記液の吐出を維持したまま前記吐出部及び前記平滑部を前記順向きに移動させる、(((2)))に記載の塗布装置。
【0150】
(((7)))
前記吐出部を前記逆向きに移動させるときの前記吐出部からの単位時間当たりの前記液の吐出量は、前記吐出部を前記逆向きに移動を開始する前の位置から前記順向きに移動させるときの前記吐出部からの単位時間当たりの前記液の吐出量よりも少ない、(((6)))に記載の塗布装置。
【0151】
(((8)))
前記吐出部が前記位置に戻るまでの前記吐出部からの単位時間当たりの前記液の吐出量は、前記位置から前記順向きに移動させるときの前記吐出部からの単位時間当たりの前記液の吐出量よりも少ない、(((6)))又は(((7)))に記載の塗布装置。
【0152】
(((9)))
前記平滑部は、前記回転体側の端部かつ前記回転体の前記一端部側に面取りが形成されており、
前記平滑部の前記回転体の軸方向の長さは、前記平滑部を前記他端部に向けて移動させた際に、前記液が前記平滑部の前記一端部側の端に到達しない長さに設定されている、(((1)))から(((8)))までのいずれか1つに記載の塗布装置。
【0153】
(((10)))
軸周りに回転する回転体の表面に、軸方向に移動しつつ液を吐出する吐出部と、該吐出部から該回転体の表面に吐出された該液を該軸方向に沿って移動しつつ平滑にする平滑部と、を用いて、該回転体の表面に該液を塗布する被覆回転体の製造方法であって、
該回転体の一端部で該液の吐出を開始した該吐出部及び該平滑部を、該軸方向に沿う一端部から他端部に向かう順向きとは逆の逆向きに夫々予め定めた距離移動させる第1工程と、
該吐出部及び該平滑部を該順向きに移動させる第2工程と、
を有する被覆回転体の製造方法。
【0154】
(((11)))
前記第1工程では、前記液を吐出する前記吐出部を前記逆向きに第1の距離を移動させると共に、前記平滑部を前記逆向きに前記第1の距離よりも長い第2の距離を移動させた後、
前記吐出部からの前記液の吐出を止めると共に、予め定めた時間、前記吐出部及び前記平滑部の移動を停止させ、
前記第2工程では、前記吐出部及び前記平滑部を前記順向きに移動させ、前記吐出部が前記逆向きに移動を開始する前の位置に戻った後、前記吐出部による前記液の吐出を再開させる、(((10)))に記載の被覆回転体の製造方法。
【0155】
(((12)))
前記第1工程で、前記液を吐出する前記吐出部を前記逆向きに第1の距離を移動させると共に、前記平滑部を前記逆向きに前記第1の距離よりも長い第2の距離を移動させた後、
前記第2工程で、前記吐出部からの前記液の吐出を維持したまま前記吐出部及び前記平滑部を前記順向きに移動させる、(((10)))に記載の被覆回転体の製造方法。
【0156】
(((1)))に記載の塗布装置によれば、吐出部及び平滑部を回転体の一端部から他端部に向かう向きのみに移動させる場合と比較して、回転体の汚れの発生を抑制することができる。
【0157】
(((2)))に記載の塗布装置によれば、吐出部及び平滑部を回転体の軸方向の順向きとは逆の逆向きに等しい距離を移動させる場合と比較して、回転体の汚れの発生を抑制することができる。
【0158】
(((3)))に記載の塗布装置によれば、吐出部及び平滑部を回転体の軸方向の順向きとは逆の逆向きに移動させたときに、吐出部の吐出及び吐出部と平滑部の移動を予め定めた時間停止させない場合と比較して、吐出部からの液の吐出量を減らすことができる。
【0159】
(((4)))に記載の塗布装置によれば、吐出部を逆向きに移動させるときの吐出部からの単位時間当たりの液の吐出量と、吐出部を順向きに移動させるときの吐出部からの単位時間当たりの液の吐出量とが等しい場合と比較して、吐出部から吐出される液の中に泡が発生することを抑制することができる。
【0160】
(((5)))に記載の塗布装置によれば、吐出部を逆向きに第1の距離を移動させるときの吐出部の移動速度よりも、平滑部を逆向きに第2の距離を移動させるときの平滑部の移動速度が高速である場合と比較して、回転体の汚れの発生を抑制することができる。
【0161】
(((6)))に記載の塗布装置によれば、吐出部を逆向きに移動させると共に、平滑部を逆向きに移動させた後に吐出部からの液の吐出を停止すると共に、吐出部及び平滑部の移動を定められた時間停止する場合と比較して、吐出部から吐出される液の中に泡が発生することを抑制することができる。
【0162】
(((7)))に記載の塗布装置によれば、吐出部を逆向きに移動させるときの吐出部からの単位時間当たりの液の吐出量と、吐出部を順向きに移動させるときの吐出部からの単位時間当たりの液の吐出量とが等しい場合と比較して、回転体の汚れの発生を抑制することができる。
【0163】
(((8)))に記載の塗布装置によれば、吐出部が順向きに移動するときに吐出部からの液の吐出量が等しい場合と比較して、回転体の塗布層の厚みが不均一になることが抑制される。
【0164】
(((9)))に記載の塗布装置によれば、平滑部の端部の幅が等しい場合と比較して、回転体の塗布層の厚みが不均一となることが抑制される。
【0165】
(((10)))に記載の被覆回転体の製造方法によれば、吐出部及び平滑部を回転体の一端部から他端部に向かう向きのみに移動させる場合と比較して、回転体の汚れの発生を抑制することができる。
【0166】
(((11)))に記載の被覆回転体の製造方法によれば、吐出部及び平滑部を回転体の軸方向の順向きとは逆の逆向きに移動させたときに、吐出部の吐出及び吐出部と平滑部の移動を予め定めた時間停止させない場合と比較して、吐出部からの液の吐出量を減らすことができる。
【0167】
(((12)))に記載の被覆回転体の製造方法によれば、吐出部を逆向きに移動させると共に、平滑部を逆向きに移動させた後に吐出部からの液の吐出を停止すると共に、吐出部及び平滑部の移動を定められた時間停止する場合と比較して、吐出部から吐出される液の中に泡が発生することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0168】
10 塗布装置
12 芯体(回転体の一例)
12A 一端部
12B 他端部
14 液状材料(液の一例)
16 被覆部材(被覆回転体の一例)
34 吐出部
36 ノズル(吐出部の一例)
40 平滑部
42 ブレード(平滑部の一例)
44 支持部
60 制御部
70 塗布装置
76 被覆部材(被覆回転体の一例)
90 塗布装置
96 被覆部材(被覆回転体の一例)
120 塗布装置
122 平滑部
124 ブレード(平滑部の一例)
124A 端部
125A 面取り部(面取りの一例)
125B 端(平滑部の一端部側の端の一例)
D1 距離(第1の距離の一例)
D12 距離(第1の距離の一例)
D2 距離(第2の距離の一例)
D21 距離(第2の距離の一例)