(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115381
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】対象物移動装置
(51)【国際特許分類】
E05F 11/38 20060101AFI20240819BHJP
E05F 11/48 20060101ALI20240819BHJP
B60J 1/17 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
E05F11/38 F
E05F11/48 D
B60J1/17 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021049
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【弁理士】
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】原田 和明
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 研一朗
【テーマコード(参考)】
3D127
【Fターム(参考)】
3D127AA19
3D127BB01
3D127CB05
3D127CC05
3D127CC13
3D127DF03
3D127DF10
3D127DF12
3D127DF15
3D127DF18
3D127DF26
3D127EE20
3D127EE29
3D127GG04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】作業工程を抑制することで作業性が良い、移動対象物に給電可能な対象物移動装置を提供する。
【解決手段】対象物移動装置は、移動可能な移動体側部材5と、移動体側部材5に接続される配線を有する移動対象物側部材10とを含み、移動体側部材5の移動にともなって、移動対象物側部材10に保持されている移動対象物80を移動させることが可能である。移動対象物側部材10は、移動体側部材5に取り付けられる被取付孔16と、第1コネクタ30を保持する第1コネクタ保持部22とを有する。移動体側部材5は、移動対象物側部材10が取り付けられる取付孔54と、第2コネクタ78を保持する第2コネクタ保持部62とを有する。被取付孔16と取付孔54との位置合わせにより、第1コネクタ30と第2コネクタ78とが接続される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向と第2の方向とに移動可能な移動体を有する移動体側部材と、
移動対象物に取り付けられ、前記移動体側部材に接続される配線を有する移動対象物側部材と、を含み、
前記移動体側部材の移動にともなって、前記移動対象物側部材に保持されている前記移動対象物を移動させることが可能な対象物移動装置であって、
前記移動対象物側部材は、
前記移動体側部材に取り付けられる被取付部と、
前記配線と電気的に結線された第1のコネクタを保持する第1コネクタ保持部とを有し、
前記移動体側部材は、
前記移動対象物側部材が取り付けられる取付部を有する前記移動体と、
給電側の配線と電気的に結線される第2のコネクタを保持する第2コネクタ保持部と、を有し、
前記第1コネクタ保持部及び前記第2コネクタ保持部の少なくともいずれかは、
前記被取付部と前記取付部との位置合わせにより、前記第1のコネクタ及び前記第2のコネクタのうちいずれか一方のコネクタを、該一方のコネクタとは異なる他方のコネクタと接続されるよう誘導する誘導部を有する、
対象物移動装置。
【請求項2】
前記第1コネクタ保持部は、
前記第2コネクタ保持部を挿入可能であって、前記第2コネクタ保持部が挿入される側の開口部が、幅方向の外側に向けて傾斜して開口している第1傾斜部を有しており、
前記第2コネクタ保持部は、
前記開口部から挿入される側の先端部が、前記第1傾斜部に誘導されるように幅方向の内側に向けて傾斜している第2傾斜部を有する、
請求項1に記載の対象物移動装置。
【請求項3】
前記移動体側部材を案内する板状のガイドレールと、
前記給電側の配線を内挿し、前記板状のガイドレールに支持される筒状部材と、をさらに含み、
前記移動体側部材は、前記板状のガイドレールの表裏面のうちいずれか一方の面に沿って移動するように構成されており、
前記筒状部材は、
一方の端部が前記移動体側部材に固定されるとともに、他方の端部が前記板状のガイドレールの表裏面のうち前記一方の面とは反対の他方の面側に固定され、
前記移動体側部材の移動方向に向けて移動可能である一方、前記移動方向と交差する方向への移動が前記移動方向と比べて制限されるよう構成されている、
請求項1又は2に記載の対象物移動装置。
【請求項4】
前記筒状部材は、
長手方向を横切る断面が長方形であって、表面が波形に加工された筒状部材である、
請求項3に記載の対象物移動装置。
【請求項5】
前記筒状部材の長手方向を回転中心とする当該筒状部材の回転を規制する回転規制部をさらに含む、
請求項4に記載の対象物移動装置。
【請求項6】
前記第2コネクタ保持部は、前記筒状部材を支持する支持部を有し、
前記支持部は、前記長手方向への前記筒状部材の移動を規制する移動規制部を有する、
請求項4に記載の対象物移動装置。
【請求項7】
前記第1コネクタ保持部は、
前記第2コネクタ保持部を挿入可能であって、前記第2コネクタ保持部が挿入される開口部を有しており、
前記第1のコネクタは、
板状の基板から構成されており、
前記第2のコネクタは、
前記第1のコネクタを挿入可能であって、前記第1のコネクタが挿入される開口部を有する
請求項1に記載の対象物移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物移動装置に関し、とくに移動対象物等に給電可能な対象物移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、対象物移動装置の例として、例えば、車両のガラスが取り付けられたキャリアプレートを移動させることによって、ガラスを移動させるウインドレギュレータが知られている。
【0003】
近い将来、利便性や快適性をさらに高めるために、移動対象物であるガラスに様々な機能が追加されることが予想され、その機能を成立させるためには移動対象物等への給電は必要不可欠である。例えば特許文献1には、リード線を含むガラスに給電するウインドレギュレータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/262273号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガラスに給電することが可能なウインドレギュレータでは、キャリアプレートへのガラスの取り付けと、配線の結線とを行う必要があるため、作業工程が多く、作業が煩雑となる。
【0006】
本発明は、作業工程を抑制することで作業性が良い、移動対象物等に給電可能な対象物移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る対象物移動装置は、第1の方向と第2の方向とに移動可能な移動体を有する移動体側部材と、移動対象物に取り付けられ、前記移動体側部材に接続される配線を有する移動対象物側部材と、を含み、前記移動体側部材の移動にともなって、前記移動対象物側部材に保持されている前記移動対象物を移動させることが可能な対象物移動装置であって、前記移動対象物側部材は、前記移動体側部材に取り付けられる被取付部と、前記配線と電気的に結線された第1のコネクタを保持する第1コネクタ保持部とを有し、前記移動体側部材は、前記移動対象物側部材が取り付けられる取付部を有する前記移動体と、給電側の配線と電気的に結線される第2のコネクタを保持する第2コネクタ保持部と、を有し、前記第1コネクタ保持部及び前記第2コネクタ保持部の少なくともいずれかは、前記被取付部と前記取付部との位置合わせにより、前記第1のコネクタ及び前記第2のコネクタのうちいずれか一方のコネクタを、該一方のコネクタとは異なる他方のコネクタと接続されるよう誘導する誘導部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業工程を抑制することで作業性が良い、移動対象物に給電可能な対象物移動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】移動対象物を保持する対象物移動装置の斜視図の一例である。
【
図2】移動対象物に取り付けられた移動対象物側部材の正面図の一例であって、一部を縦断面図として示す図である。
【
図3】移動体側部材を正面から見た縦断面図の一例である。
【
図4】ガイドレールに筒状部材が固定された態様を示す斜視図の一例である。
【
図5】移動体側部材及び移動対象物側部材を正面から見た縦断面図の一例であって、(A)移動体側部材に移動対象物側部材を組み付ける前の図、(B)移動体側部材に移動対象物側部材を組み付けた後の図、である。
【
図6】変形例である移動対象物側部材を示す分解斜視図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る対象物移動装置について説明する。なお、各図において言及する方向は、各図に示されるとおりである。本発明に係る対象物移動装置は、例えば、車両のドア等に設けられ、移動対象物である車両の窓ガラスの開閉を行うウインドレギュレータ等として用いられる。
【0011】
[1.対象物移動装置の概略]
先ず、本発明に係る対象物移動装置の概略について、
図1を参照して説明する。
図1は、移動対象物80(例えば、車両の窓ガラス等の開閉体)を保持する対象物移動装置1の斜視図の一例である。
図1において、移動対象物80が上端まで上昇した場合の態様を二点鎖線で示し、移動対象物80が下端まで下降した場合の態様を実線で示している。
【0012】
図1に示されるように、対象物移動装置1は、移動対象物80を上方向に移動させると窓を閉じることができ、移動対象物80を下方向に移動させると窓を開くことができる。上記の「上方向」及び「下方向」のうち、いずれか一方が本発明の「第1の方向」に相当し、いずれか一方とは異なる他方が本発明の「第2の方向」に相当する。
【0013】
なお、本実施形態では、移動対象物80を上下方向に移動させることを前提として説明するが、移動対象物80を移動させる方向は上下方向に限定されない。すなわち、
図1に示される対象物移動装置1の適用例は、上下方向に窓ガラスを移動させることによって開閉するタイプの車両に限られない。例えばピックアップトラックのように、上記の対象物移動装置1を、左右方向にバックウインドウを移動させて開閉することができる車両に適用することもできる。左右方向にバックウインドウを移動させて開閉することができる車両に上記の対象物移動装置1を適用する場合、「左方向」及び「右方向」のうち、いずれか一方が本発明の「第1の方向」に相当し、いずれか一方とは異なる他方が本発明の「第2の方向」に相当する。
【0014】
図1に示されるように、対象物移動装置1は、駆動装置2と、上下方向に所定の長さを有する略長方形状の板状部材で構成されたガイドレール4と、ガイドレール4に対して上下方向に移動することが可能な移動体52(例えばキャリアプレート)を含む移動体側部材5と、駆動装置2により移動体側部材5を上下方向に移動させるケーブル6と、配線が内挿される筒状部材7と、筒状部材7をガイドレール4に固定するブラケット8と、移動対象物80を保持する移動対象物側部材10と、を備える。
【0015】
駆動装置2は、例えば、ケーブル6のインナーケーブルを巻き取り、送り出すドラム(不図示)と、このドラムを駆動するモータ3と、モータ3に連結されるウォームギア減速機等の減速機(不図示)を収容するためのハウジングとを有する。なお、駆動装置2の配置位置はとくに限定されるものではなく、
図1に図示される配置位置とは別の位置に駆動装置2が設けられていても良い。
【0016】
ガイドレール4は、亜鉛メッキ鋼板等の金属薄板であって、移動対象物側部材10に保持された例えば移動対象物80が湾曲した軌跡で上下に昇降するように、上下に弓なりに湾曲するよう形成されている。
【0017】
移動体52を含む移動体側部材5は、ガイドレール4の表裏面のうち、
図1に示される第1の面4aとは反対側の面である第2の面4b(後述の
図4参照)と対向するように配置されており、上下方向に延びるガイドレール4に沿って摺動自在に保持されている。移動体側部材5の上下方向の移動は、ガイドレール4によって案内される。詳しくは図示しないが、移動体側部材5には、ケーブル6の端部を取り付けるためのケーブル端連結部が設けられている。移動体側部材5の詳細については後述する。
【0018】
ケーブル6は、例えば、アウターケーシングとアウターケーシングに挿通されるインナーケーブルとにより構成され、駆動装置2により移動体側部材5を上下に移動させるものである。インナーケーブルの一方の端部がドラム(不図示)に巻き取られ、インナーケーブルの他方の端部が移動体側部材5に連結されている。
【0019】
筒状部材7は、例えば移動対象物80又は/及び移動対象物側部材10に給電するための複数の配線を束にして内挿する例えば樹脂製の保護チューブである。筒状部材7は、一方の端部が移動体側部材5に固定され、他方の端部がガイドレール4に取り付けられたブラケット8に固定されている。筒状部材7の詳細については後述する。
【0020】
移動対象物側部材10は、移動対象物80に取り付けられた後、移動体側部材5に固定される。移動体側部材5が上下方向に移動すると、これにともなって、移動対象物側部材10及び移動対象物80が上下方向に移動する。移動対象物側部材10の詳細については後述する。
【0021】
ところで、ブラケット8は、ガイドレール4の長手方向の略中央において、ガイドレール4の第1の面4aに取り付けられている。一方、移動体側部材5は、上述のとおり、ガイドレール4の第2の面4b(後述の
図4参照)と対向するように配置されている。よって、移動体側部材5が上下方向に移動するとき、移動体側部材5とブラケット8とが干渉せずにすれ違うことができるとともに、移動体側部材5が筒状部材7と干渉せずにすれ違うことが可能となる。
【0022】
以下、移動対象物側部材10、移動体側部材5、及び筒状部材7の詳細について、この順で説明する。
【0023】
[2.移動対象物側部材]
先ず、移動対象物側部材10について、
図2を参照して説明する。
図2は、移動対象物80を保持する移動対象物側部材10の正面図の一例であって、一部を縦断面図として示している。なお、この明細書において、後述する図面も含めて、
図2に示される左側(
図2の紙面手前側)から右側(
図2の紙面奥側)に向けて見た図を正面図とする。
【0024】
図2に示されるように、移動対象物側部材10は、例えば2つの移動対象物保持部14(例えば、車両の窓ガラス等を保持するガラスホルダ)と、板状の基板コネクタで構成される第1コネクタ30を収容保持する移動対象物側接続部20とを含む。
図2では、移動対象物側接続部20が縦断面図として示されている。
【0025】
移動対象物保持部14は移動対象物80を保持する機能を有する。移動対象物80を保持する2つの移動対象物保持部14は、移動対象物80に取り付けられる。2つの移動対象物保持部14は、それぞれ、移動体側部材5(
図1参照)に固定されるための被取付孔16を有する。
【0026】
移動対象物側接続部20は、第1コネクタ30を収容保持する第1コネクタ保持部22を有しており、第1コネクタ保持部22に第1コネクタ30を収容した後、第1コネクタ30を覆うようにカバー28(
図1参照)が取り付けられる。第1コネクタ30は、例えば移動対象物80又は/及び移動対象物側部材10に給電するための配線と電気的に結線されている。移動対象物80又は/及び移動対象物側部材10に給電するための配線は、例えば、フレキシブル基板(Flexible printed circuits)が用いられる。移動対象物80に給電する場合、例えば移動対象物80の表面に貼り付けられる。
【0027】
第1コネクタ保持部22は、下方側の端部に、後述の第2コネクタ保持部62(後述の
図3参照)を挿入可能な開口部24を有する。この開口部24は、下方に向けて幅方向の外側(すなわち前後方向)に広がる第1傾斜部26を有する。この第1傾斜部26の形状により、開口部24は、下方に向けて外側に広がるラッパ状に構成されている。
【0028】
本実施形態において、移動対象物保持部14と移動対象物側接続部20とが別体で構成されており、移動対象物側接続部20は、取付孔21において1つの移動対象物保持部14に取り付けられている。ただし、これに限定されず、移動対象物保持部14と移動対象物側接続部20とが一体で構成されていてもよい。
【0029】
[3.移動体側部材]
次に、移動体側部材5について、
図3を参照して説明する。
図3は、移動体側部材5を正面から見た(すなわち左側(
図3の紙面手前側)から右側(
図3の紙面奥側)に向けて見た)縦断面図の一例である。なお、
図3には、筒状部材支持部66の拡大図(
図3において円内に示される図)が示されているが、この拡大図では、便宜上、筒状部材7及び筒状部材7に内挿される配線の図示を省略している。
【0030】
図3に示されるように、移動体側部材5は、移動体52と、移動体側接続部60とを含む。移動体52は、上述のとおり例えばキャリアプレートが相当するが、移動体側接続部60と一体的に構成されている。
【0031】
移動体52は、2つの移動対象物保持部14(
図2参照)をそれぞれ固定する2つの取付孔54を有する。
【0032】
移動体側接続部60は、第2コネクタ78を収容保持する第2コネクタ保持部62を有する。第2コネクタ保持部62は、第2コネクタ78が収容保持される部位よりも下方に、筒状部材7を収容保持する筒状部材支持部66を有する。第2コネクタ78は、移動対象物80又は/及び移動対象物側部材10に給電するための配線、すなわち筒状部材7に内挿された配線と電気的に結線されている。また、第2コネクタ78は、上方側の端部に、板状の第1コネクタ30を挿入できるように、スリット状の開口部(不図示)を有する。上記の「筒状部材支持部66」は、本発明の「支持部」に相当する。
【0033】
第2コネクタ保持部62は、開口部24(
図2参照)に挿入される側である上方側の端部に、第2傾斜部64を有する。この第2傾斜部64は、第2コネクタ保持部62の外側面の幅方向(前後方向)の大きさ、すなわち第1外側面62aから第2外側面62bまで)の最短長さhが上方側に向けて小さくなるように、テーパ状に傾斜している。
【0034】
筒状部材支持部66は、狭小部67を有する。この狭小部67は、径方向内側に向けて突出しているため、筒状部材支持部66における他の部位と比べて、前後方向の寸法が小さい。上記の「狭小部67」は、本発明の「移動規制部」に相当する。
【0035】
[4.筒状部材]
次に、筒状部材7について、
図3及び
図4を参照して説明する。
図4は、ガイドレール4に筒状部材7が固定された態様を示す斜視図の一例である。なお、
図4では、筒状部材7の表面形状の図示を省略している。
【0036】
図3に示されるように、筒状部材7は、移動体側部材5(より詳しくは移動体側接続部60)に固定される側である一方の端部に、ジョイント75が外挿されている。筒状部材7は、このジョイント75を介して、筒状部材支持部66に収容保持される。筒状部材7がジョイント75を介して筒状部材支持部66に収容保持された状態で、筒状部材7の長手方向を回転中心として筒状部材7が回転しないように、筒状部材7及びジョイント75は、長手方向を横切る断面が長方形である。ただし、筒状部材7及びジョイント75は、長手方向を横切る断面が長方形であることに限定されず、筒状部材7が筒状部材支持部66に収容保持された状態で筒状部材7が回転しないように構成されていればよい。なお、
図3に示されるように、筒状部材7は、径方向外側の表面が、凹凸を有する波形形状となっている。上記の「ジョイント75」は、本発明の「回転規制部」に相当する。
【0037】
ジョイント75は、径方向における内側の面に、筒状部材7の径方向外側の表面形状である波形形状と係合するように、凹凸に形成された凹凸部77を有する。このように、筒状部材7の径方向外側の波形形状と、ジョイント75の径方向内側の凹凸部77とが係合することにより、ジョイント75に対する筒状部材7の長手方向への位置ずれを防止することができ、ひいてはジョイント75から筒状部材7が抜けてしまうことを防止できる。
【0038】
また、ジョイント75は、径方向における外側の面に、狭小部67と対応するように形成された係合部76を有する。この係合部76が狭小部67と係合することにより、筒状部材支持部66に対する筒状部材7の長手方向への位置ずれを防止することができ、ひいては筒状部材7が筒状部材支持部66から抜けてしまうことを防止できる。
【0039】
このように、ジョイント75に対する筒状部材7の長手方向への位置ズレと、筒状部材支持部66に対する筒状部材7の長手方向への位置ズレとを防止することにより、移動体側接続部60の筒状部材支持部66から筒状部材7が抜けてしまうことを防止できる。
【0040】
図4に示されるように、筒状部材7は、ガイドレール4に固定される側である他方の端部に、外部から電源が供給される不図示のハーネスと接続可能な第3コネクタ72と、ジョイント74とを有する。
【0041】
ジョイント74は、筒状部材7に外挿されている。筒状部材7にジョイント74が外挿された状態で筒状部材7が回転しないように、ジョイント74は、筒状部材7と同様に、長手方向を横切る断面が長方形である。ただし、筒状部材7及びジョイント74は、長手方向を横切る断面が長方形であることに限定されず、筒状部材7にジョイント74が外挿された状態で筒状部材7が回転しないように構成されていればよい。なお、ジョイント74の径方向内側には、ジョイント75と同様に、筒状部材7の径方向外側の表面形状である波形形状と係合する凹凸部を有することが好ましい。これにより、ジョイント74から筒状部材7が抜けてしまうことを防止できる。とくに、筒状部材7が引っ張られる等、筒状部材7に対して長手方向に力が作用することで生じうる、第1コネクタ30、第2コネクタ78、及び筒状部材7等の破損を防止することができる。
【0042】
ガイドレール4には、上述したように、長手方向の略中央にブラケット8が取り付けられている。このブラケット8は、ガイドレール4の第1の面4aに取り付けられている。ブラケット8は、例えばジョイント74を上下方向から挟持して取り付けることが可能な筒状部材取付部82を有する。筒状部材取付部82は、上側部材83と下側部材84とを有し、上側部材83が例えば下方に向けて付勢するとともに、下側部材84が例えば上方に向けて付勢する弾性部材であることが好ましい。また、上側部材83と下側部材84との間の隙間の上下方向長さは、ジョイント74の上下方向の大きさよりも僅かに小さいことが好ましい。このようにすることで、筒状部材7に外挿されたジョイント74を、工具等を用いることなくスナップフィットで筒状部材取付部82に簡単に挟持させることが可能となる。
【0043】
ところで、対象物移動装置1により移動対象物80を移動させるとき、筒状部材7が左右方向又は/及び前後方向に撓んだ状態で移動体側部材5が上下方向に移動すると、ブラケット8の近傍において、移動体側部材5と筒状部材7とが干渉するおそれがある。すなわち、移動体側部材5が上下方向に移動するとき、移動体側部材5がブラケット8に支持される側の筒状部材7とすれ違うこととなるが、このとき、筒状部材7が左右方向又は/及び前後方向に撓むと、移動体側部材5と筒状部材7とが干渉しやすくなる。そこで、本実施形態において、筒状部材7は、一の方向には移動可能であるものの、一の方向と交差する方向には一の方向と比べて移動が制限されることで動きが2次元的となるように、例えばコルゲートチューブが用いられている。本実施形態では、上下方向には移動体側部材の移動に追従して移動可能である一方、上下方向と交差する方向である左右方向又は/及び前後方向への移動が上下方向への移動と比べて制限されるように、筒状部材7を用いている。
【0044】
[5.移動体側部材への移動対象物側部材の組み付け]
次に、移動体側部材5への移動対象物側部材10の組み付けについて、
図5を参照して説明する。
図5は、移動体側部材5及び移動対象物側部材10を正面から見た(すなわち左側(
図5の紙面手前側)から右側(
図5の紙面奥側)に向けて見た)縦断面図の一例であって、(A)移動体側部材5に移動対象物側部材10を組み付ける前の図、(B)移動体側部材5に移動対象物側部材10を組み付けた後の図、である。
【0045】
図5(A)に示されるように、移動体側部材5に移動対象物側部材10を組み付ける前に、2つの移動対象物保持部14を移動対象物80に取り付ける。そして、移動対象物80に取り付けられた移動対象物側部材10を、移動体側部材5に組み付ける。
【0046】
移動体側部材5に対して移動対象物側部材10を組み付けるとき、被取付孔16と取付孔54との位置合わせを行い、位置合わせされた被取付孔16と取付孔54とを例えばボルト締めする。
【0047】
ところで、被取付孔16と取付孔54との位置合わせを行うとき、移動体側接続部60の第2傾斜部64が移動対象物側接続部20の第1傾斜部26に誘導される。第2傾斜部64が第1傾斜部26に誘導されると、第1コネクタ30と第2コネクタ78とが接続される。すなわち、移動体側部材5への移動対象物側部材10の組み付けを行うときに、第1コネクタ30と第2コネクタ78との接続も同時に行われることとなる。しかも、上述したように、第1コネクタ30は板状の基板であり、第2コネクタ78はスリット状の開口部(不図示)を有する。そのため、被取付孔16と取付孔54との位置合わせを行うだけで、第1コネクタ30と第2コネクタ78とを容易に接続することができる。
【0048】
[6.作用効果等]
本実施形態の対象物移動装置1は、例えば上下方向に移動可能な移動体側部材5と、移動対象物80に取り付けられ、移動体側部材5に接続される配線を有する移動対象物側部材10とを含み、移動体側部材5の移動にともなって、移動対象物側部材10に保持されている移動対象物80を移動させることが可能に構成されている。そして、移動対象物側部材10は、移動体側部材5に取り付けられる被取付孔16と、配線と電気的に結線された第1コネクタ30を保持する第1コネクタ保持部22とを有する。また、移動体側部材5は、移動対象物側部材10が取り付けられる取付孔54と、給電側の配線と電気的に結線される第2コネクタ78を保持する第2コネクタ保持部62とを有する。第1コネクタ保持部22は、被取付孔16と取付孔54との位置合わせにより第1コネクタ30と第2コネクタ78とが接続されるように、第2コネクタ78を開口部24に誘導する第1傾斜部26を有する。また、第2コネクタ保持部62は、被取付孔16と取付孔54との位置合わせにより第1コネクタ30と第2コネクタ78とが接続されるように、第1傾斜部26によって開口部24に誘導されるように第2傾斜部64を有する。
【0049】
このような対象物移動装置1によれば、被取付孔16と取付孔54との位置合わせ作業と、第1コネクタ30と第2コネクタ78とを接続する接続作業との両方を行う必要がない。すなわち、被取付孔16と取付孔54とを位置合わせするだけ、又は、第1傾斜部26に第2傾斜部64を誘導させるだけで、被取付孔16と取付孔54との位置合わせと第1コネクタ30と第2コネクタ78との接続とを同時に行うことが可能となり、作業工程を抑制することができる。このように作業工程を抑制することで、作業性が良く、移動対象物80又は/及び移動対象物側部材10に給電可能な対象物移動装置1を提供することが可能となる。
【0050】
とくに、第1傾斜部26は、下方に向けて外側に広がっている。また、第2傾斜部64は、第1傾斜部26に誘導されるようにテーパ状に傾斜している。そのため、移動体側部材5に対して移動対象物側部材10を組み付けるとき、すなわち被取付孔16と取付孔54との位置合わせを行うときに、第2傾斜部64が第1傾斜部26によって開口部24に誘導され、第1コネクタ30と第2コネクタ78とを容易に接続することが可能となる。とくに、移動体側部材5は、鉛直方向に沿ってではなく、上下に弓なりに湾曲するガイドレール4に配置されることから鉛直方向に対して傾斜して配置される。そのため、第1傾斜部26が下方に向けて外側に広がることで、開口部24の間口が広くなり、第1コネクタ30と第2コネクタ78との接続が容易となる。また、第1コネクタ30と第2コネクタ78とを接続させるとき、第1コネクタ保持部22の外側の面と、第2コネクタ保持部62の内側の面との間に遊びが必要であるが、上述の第1傾斜部26及び第2傾斜部64によって遊びを作ることができる。
【0051】
なお、本実施形態では、第1コネクタ保持部22が有する第1傾斜部26と、第2コネクタ保持部62が有する第2傾斜部64とによって、第1コネクタ30と第2コネクタ78とを容易に接続することが可能であるが、これに限定されない。例えば、第1コネクタ保持部22が有する第1傾斜部26と、第2コネクタ保持部62が有する第2傾斜部64とのうち、いずれか一方のみであったとしても、第1コネクタ30と第2コネクタ78とを容易に接続することが可能である。
【0052】
また、対象物移動装置1は、移動体側部材5を案内するガイドレール4と、給電側の配線を内挿し、ガイドレール4に支持される筒状部材7とをさらに含む。移動体側部材5は、板状のガイドレール4の表裏面(第1の面4a、第2の面4b)のうち、第2の面4bに沿って移動するように構成されている。筒状部材7の他方の端部を支持するブラケット8は、ガイドレール4の長手方向の略中央において、ガイドレール4の表裏面のうち、第1の面4aに取り付けられている。移動体側部材5が上下方向に移動するとき、ガイドレール4の長手方向の略中央、より詳しくはブラケット8が取り付けられる位置において、移動体側部材5と筒状部材7とがすれ違うこととなる。しかし、筒状部材7は、移動体側部材5の移動方向である上下方向に向けて移動可能である一方、左右方向又は/及び前後方向への移動が上下方向への移動と比べて制限される。そのため、移動体側部材5と筒状部材7とのすれ違い時に、移動体側部材5と筒状部材7とが干渉することを抑制できる。その結果、移動体側部材5と筒状部材7とがスムーズにすれ違うことが可能となる。
【0053】
また、筒状部材7は、長手方向を横切る断面が長方形であって、一方の端部に、断面が長方形のジョイント75が外挿されている。第2コネクタ保持部62は、筒状部材7を支持する筒状部材支持部66を有する。筒状部材7は、ジョイント75を介して筒状部材支持部66に支持された状態で、長手方向を回転中心とする回転が規制される。上述のとおり筒状部材7は左右方向又は/及び前後方向への移動が上下方向への移動と比べて制限されるが、筒状部材7の回転が規制されることによって移動が制限される方向が変わらないようにすることができる。よって、ガイドレール4に沿って移動体側部材5が移動するときに、移動体側部材5と筒状部材7とのスムーズなすれ違いを安定的に維持することができる。
【0054】
また、筒状部材7は径方向外側の表面が凹凸を有する波形に加工されており、ジョイント75は、径方向における内側の面に、筒状部材7の径方向外側の表面形状である波形形状と係合する凹凸部77を有する。よって、ジョイント75に対する筒状部材7の長手方向への位置ずれを防止することができ、ひいてはジョイント75から筒状部材7が抜けてしまうことを防止できる。また、筒状部材支持部66は狭小部67を有しており、ジョイント75は、狭小部67と係合する係合部76を有する。よって、筒状部材支持部66に対する筒状部材7の長手方向への位置ずれを防止することができ、ひいては筒状部材7が筒状部材支持部66から抜けてしまうことを防止できる。その結果、第1コネクタ30と第2コネクタ78との接続状態を安定させることができるとともに、第2コネクタ78と給電側である筒状部材7に内挿される配線との結線を維持することができる。このようにして、移動対象物80又は/及び移動対象物側部材10に対して安定して給電を行うことができる。
【0055】
また、第1コネクタ保持部22は、第2コネクタ保持部62を挿入可能であって、第2コネクタ保持部62が挿入される開口部24を有する。第1コネクタ30は板状の基板から構成されており、第2コネクタ78は、第1コネクタ30を挿入可能であって、第1コネクタ30が挿入される開口部を有する。よって、第2コネクタ保持部62を第1コネクタ保持部22に挿入するだけで、第1コネクタ30と第2コネクタ78とを容易に接続することができる。また、第1コネクタ30が板状の基板であるため、第1コネクタ30の厚みを薄くすることができ、レイアウト性を良好なものとすることができる。
【0056】
[7.変形例]
上述の移動対象物側部材10は、移動対象物保持部14と移動対象物側接続部20とが別体で構成されているが、上述のとおり、これらが一体で構成されていてもよい。また、カバー28に防水機能を持たせて第1コネクタ30が保護されるようにすると好ましい。以下に、移動対象物側部材10の変形例である10Aについて、
図6を参照して説明する。
【0057】
図6は、変形例である移動対象物側部材10Aを示す分解斜視図の一例である。なお、
図6において、上述の本実施形態と形状が同じ部材については上述の実施形態と同じ符号を付し、上述の実施形態と異なる部材については上述の実施形態において用いた符号に対して添え字Aを付している。
【0058】
図6に示されるように、移動対象物側部材10Aは、移動対象物保持部14Aと移動対象物側接続部20Aとが一体成型されており、移動体側部材5(
図1参照)に固定されるための被取付孔16Aを有する。
【0059】
移動対象物側接続部20Aは、第1コネクタ30を収容保持する第1コネクタ保持部22Aを有する。第1コネクタ保持部22Aは、下方側の端部に開口部24Aを有し、この開口部24Aは、下方に向けて外側に広がる第1傾斜部26Aを有する。これらの各部材が有する機能は、上述の移動対象物側接続部20と同様である。
【0060】
カバー28Aは、シールゴム29Aがアウトサートされている。また、移動対象物80又は/及び移動対象物側部材10Aに給電するための配線40Aは、フレキシブル基板(Flexible printed circuits)が用いられており、この配線40Aの端部はシールゴム42Aで被覆されている。
【0061】
このような変形例の移動対象物側部材10Aによれば、部品点数を減らすことができるとともに、防水機能に優れたものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本実施形態では、対象物移動装置1が採用される適用例として、車両のドア等に設けられ、車両の窓ガラスの開閉を行うウインドレギュレータを例示したが、ウインドレギュレータに限定されず、様々な装置に搭載されてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、移動体側部材5の移動方向が上下方向であることを前提として説明したが、移動体側部材5の移動条項は上下方向に限定されず、様々な方向を移動方向とすることができる。
【符号の説明】
【0064】
1 対象物移動装置
4 ガイドレール
4a 第1の面
4b 第2の面
5 移動体側部材
6 ケーブル
7 筒状部材
10 移動対象物側部材
16 被取付孔
22 第1コネクタ保持部
24 開口部
26 第1傾斜部
30 第1コネクタ
54 取付孔
62 第2コネクタ保持部
64 第2傾斜部
66 筒状部材支持部
67 狭小部
75 ジョイント
78 第2コネクタ
80 移動対象物