(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115383
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】自動ハンダ付け方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B23K 3/00 20060101AFI20240819BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B23K3/00 310A
G01B11/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021051
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】390014834
【氏名又は名称】株式会社ジャパンユニックス
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100188743
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】大山 和男
(72)【発明者】
【氏名】森田 聖史
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 真人
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA07
2F065CC25
2F065FF04
2F065JJ09
2F065MM04
2F065PP13
2F065QQ31
(57)【要約】
【課題】ハンダ付け時に、接触式のセンサを使用することなく、カメラの画像からハンダ鏝の鏝先位置を検出して該鏝先の位置補正を行うことができるようにする。
【解決手段】ハンダ付け開始前に、ハンダ鏝に取り付けられた未使用鏝先16nの画像を、カメラ45でハンダ付けヘッドのR方向角度を0度にした場合と90度にした場合との2方向から撮像し、撮像した画像を位置補正ユニット42に登録し、ハンダ付け開始後に、一定量のハンダ付けを行う毎に、前記使用鏝先16uの画像を、カメラ45でハンダ付けヘッドのR方向角度を0度にした場合と90度にした場合との2方向から撮像し、撮像した画像を前記位置補正ユニット42に登録し、前記未使用鏝先16n及び使用鏝先16uの画像から、前記未使用鏝先16nに対する前記使用鏝先16uの位置ずれ量を算出し、算出した位置ずれ量に基づいて使用鏝先16uの位置補正を行う。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のハンダ付けポイントを有する基板を裁置するテーブルと、ハンダ鏝を有するハンダ付けヘッドと、前記ハンダ鏝の鏝先に線状ハンダを供給するハンダ供給機構と、前記テーブルとハンダ付けヘッドとを相対的に移動させる制御を行う制御装置と、前記ハンダ鏝の鏝先位置を補正する鏝先位置補正機構とを有するハンダ付け装置を使用し、前記制御装置で前記テーブルとハンダ付けヘッドとを互いに直交するX軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びZ軸周りのR方向に相対的に移動させることにより、前記ハンダ鏝で前記基板の複数のハンダ付けポイントを順次自動的にハンダ付けする自動ハンダ付け方法において、
ハンダ付け開始前に、前記ハンダ付けヘッドのハンダ鏝に取り付けられた未使用鏝先の画像を、前記鏝先位置補正機構のカメラユニットにより、前記ハンダ付けヘッドのR方向角度を0度にした場合及び90度にした場合の2方向から撮像し、撮像した画像を前記鏝先位置補正機構の位置補正ユニットに登録し、
ハンダ付け開始後に、一定量のハンダ付けに使用した使用鏝先又は交換した交換鏝先の画像を、前記カメラユニットにより、前記ハンダ付けヘッドのR方向角度を0度にした場合及び90度にした場合の2方向から撮像し、撮像した画像を前記位置補正ユニットに登録し、
鏝先位置補正時に、前記位置補正ユニットにおいて、前記未使用鏝先及び前記使用鏝先又は交換鏝先の画像から、ピクセル座標により、前記未使用鏝先に対する前記使用鏝先又は交換鏝先の位置ずれ量を算出し、算出した位置ずれ量に基づいて前記使用ハンダ鏝又は交換鏝先の鏝先位置を補正する、
ことを特徴とする自動ハンダ付け方法。
【請求項2】
前記鏝先位置補正時に、前記未使用鏝先に対する前記使用鏝先又は交換鏝先のZ軸方向、X軸方向及びY軸方向の位置ずれ量を算出し、
前記Z軸方向の位置ずれ量は、前記未使用鏝先先端の位置座標と前記使用鏝先先端又は交換鏝先先端の位置座標との差として算出し、
前記X軸方向の位置ずれ量は、前記未使用鏝先におけるX軸方向の中心位置と前記使用鏝先又は交換鏝先におけるX軸方向の中心位置との差として算出し、
前記Y軸方向の位置ずれ量は、前記未使用鏝先におけるY軸方向の中心位置と前記使用鏝先又は交換鏝先におけるY軸方向の中心位置との差として算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動ハンダ付け方法。
【請求項3】
前記未使用鏝先及び前記使用鏝先又は交換鏝先のX軸方向の中心位置は、前記R方向角度を90度にした時の画像から鏝先外周面におけるX軸方向両端部の位置を検出し、該X軸方向両端部の位置の中間点をX軸方向の中心位置として算出し、
前記未使用鏝先及び前記使用鏝先又は交換鏝先のY軸方向の中心位置は、前記R方向角度を0度にした時の画像から鏝先外周面におけるY軸方向両端部の位置を検出し、該Y軸方向両端部の位置の中間点をY軸方向の中心位置として算出する、
ことを特徴とする請求項2に記載の自動ハンダ付け方法。
【請求項4】
前記未使用鏝先及び前記使用鏝先又は交換鏝先のX軸方向の中心位置及びY軸方向の中心位置の算出は、濡れ面の位置で行うことを特徴とする請求項3に記載の自動ハンダ付け方法。
【請求項5】
前記鏝先位置の補正は、前記未使用鏝先先端に対する前記使用鏝先先端又は交換鏝先先端のZ軸方向の位置ずれ量、及び、前記未使用鏝先の濡れ面に対する前記使用鏝先又は交換鏝先の濡れ面の位置ずれ量に基づいて行うことを特徴とする請求項1に記載の自動ハンダ付け方法。
【請求項6】
ハンダ付けポイントを有する基板を裁置するテーブルと、ハンダ鏝を有するハンダ付けヘッドと、前記ハンダ鏝の鏝先に線状ハンダを供給するハンダ供給機構と、ハンダ付け時に前記テーブルと前記ハンダ付けヘッドとをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向、及びR方向に相対的に移動させる制御を行う制御装置と、前記ハンダ鏝の鏝先位置を補正する鏝先位置補正機構とを有し、
前記鏝先位置補正機構は、カメラユニットと位置補正ユニットとを有していて、
前記カメラユニットは、上面が開放する箱形をした容器と、該容器の内部に前記ハンダ鏝の鏝先を挿入するための空間部を介して配設されたカメラ及び背景板と、前記鏝先を照らすためのランプとを有し、前記カメラにより、前記ハンダ付けヘッドのハンダ鏝に取り付けられた未使用鏝先の画像と、一定量のハンダ付けを行った使用鏝先又は交換した交換鏝先の画像とを、前記ハンダ付けヘッドのR方向角度を0度にした場合及び90度にした場合の2方向から撮像し、
前記位置補正ユニットは、前記カメラユニットで撮像した前記未使用鏝先の画像と前記使用鏝先又は交換鏝先の画像とから、ピクセル座標により、前記未使用鏝先に対する使用鏝先又は交換鏝先の位置ずれ量を算出し、算出した位置ずれ量に基づいて前記使用ハンダ鏝又は交換ハンダ鏝の鏝先の位置を補正する、
ことを特徴とする自動ハンダ付け装置。
【請求項7】
前記カメラユニットにおける前記ランプは、前記カメラの近傍の該カメラより下方位置に配設されていることを特徴とする請求項6に記載の自動ハンダ付け装置。
【請求項8】
前記位置補正ユニットは、前記未使用鏝先に対する前記使用鏝先又は交換鏝先のZ軸方向、X軸方向及びY軸方向の位置ずれ量を算出し、
前記Z軸方向の位置ずれ量は、前記未使用鏝先先端の位置座標と前記使用鏝先先端又は交換鏝先先端の位置座標との差として算出し、
前記X軸方向の位置ずれ量は、前記未使用鏝先におけるX軸方向の中心位置と前記使用鏝先又は交換鏝先におけるX軸方向の中心位置との差として算出し、
前記Y軸方向の位置ずれ量は、前記未使用鏝先におけるY軸方向の中心位置と前記使用鏝先又は交換鏝先におけるY軸方向の中心位置との差として算出する、
ことを特徴とする請求項6に記載の自動ハンダ付け装置。
【請求項9】
前記未使用鏝先及び前記使用鏝先又は交換鏝先におけるX軸方向の中心位置は、前記R方向角度を90度にした時の画像から、鏝先外周面におけるX軸方向両端部の位置座標を検出し、該X軸方向両端部の中間位置として算出し、
前記未使用鏝先及び前記使用鏝先又は交換鏝先におけるY軸方向の中心位置は、前記R方向角度を0度にした時の画像から、鏝先外周面におけるY軸方向両端部の位置座標を検出し、該Y軸方向両端部の中間位置として算出する、
ことを特徴とする請求項8に記載の自動ハンダ付け装置。
【請求項10】
前記位置補正は、前記未使用鏝先先端に対する前記使用鏝先先端又は交換鏝先先端のZ軸方向の位置ずれ量、及び、前記未使用鏝先の濡れ面に対する前記使用鏝先又は交換鏝先の濡れ面の位置ずれ量に基づいて行うことを特徴とする請求項6に記載の自動ハンダ付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンダ付けヘッドに取り付けられたハンダ鏝により、基板上のハンダ付けポイントを予め設定されたプログラムに従って自動的にハンダ付けする自動ハンダ付け方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、プリント基板と該基板に搭載された電子部品とを所定のプログラムに従って自動的にハンダ付けする場合、自動ハンダ付け装置(ロボット)が使用される。この自動ハンダ付け装置は、一般に、ハンダ鏝を有するハンダ付けヘッドと、前記ハンダ鏝に線状ハンダを供給するためのハンダノズルと、ハンダ付けポイントを有する基板を裁置するためのテーブルと、該テーブルと前記ハンダ付けヘッドとを相対的に移動させる移動機構と、該移動機構を制御する制御装置とを有していて、該制御装置により、前記ハンダ付けヘッドと前記テーブル(即ち基板)とを相対的に移動させることにより、前記基板上のハンダ付けポイントを前記ハンダ鏝でハンダ付けするものである。
【0003】
ところが、このようなハンダ付け装置においては、前記ハンダ鏝の鏝先がハンダとの接触による腐食により使用と共に消耗し、鏝先先端の位置が初期位置からずれていくため、ハンダ付け精度が低下して不良品を生じるという問題があった。ハンダ鏝又は鏝先を新たなものと交換した場合にも、鏝先位置のずれによって同様の問題を生じていた。
【0004】
そこで、特許文献1、2には、ハンダ鏝の鏝先の位置を補正することによって位置ずれを解消するようにしたハンダ付け方法及び装置が開示されている。
【0005】
前記特許文献1、2に開示された公知のハンダ付け方法及び装置においては、鏝先の側面又は凹部の内面等を接触式のセンサに押し付けることによって該鏝の位置座標を検出して位置補正を行うようにしているが、通常、前記鏝先をセンサに押し付けるときの動作はスローであるため、位置座標の検出までに時間がかかるという問題がある。また、前記鏝先をセンサに押し付けるときの押付力によっては、該センサの変形や破損等を生じ易いという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-198636号公報
【特許文献2】特開2018-114519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の技術的課題は、接触式のセンサを使用することなく、カメラの画像からハンダ鏝の鏝先位置を検出して鏝先の位置補正を行うことができる自動ハンダ付け方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明によれば、複数のハンダ付けポイントを有する基板を裁置するテーブルと、ハンダ鏝を有するハンダ付けヘッドと、前記ハンダ鏝の鏝先に線状ハンダを供給するハンダ供給機構と、前記テーブルとハンダ付けヘッドとを相対的に移動させる制御を行う制御装置と、前記ハンダ鏝の鏝先位置を補正する鏝先位置補正機構とを有するハンダ付け装置を使用し、前記制御装置で前記テーブルとハンダ付けヘッドとを互いに直交するX軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びZ軸周りのR方向に相対的に移動させることにより、前記ハンダ鏝で前記基板の複数のハンダ付けポイントを順次自動的にハンダ付けする自動ハンダ付け方法において、ハンダ付け開始前に、前記ハンダ付けヘッドのハンダ鏝に取り付けられた未使用鏝先の画像を、前記鏝先位置補正機構のカメラユニットにより、前記ハンダ付けヘッドのR方向角度を0度にした場合及び90度にした場合の2方向から撮像し、撮像した画像を前記鏝先位置補正機構の位置補正ユニットに登録し、ハンダ付け開始後に、一定量のハンダ付けに使用した使用鏝先又は交換した交換鏝先の画像を、前記カメラユニットにより、前記ハンダ付けヘッドのR方向角度を0度にした場合及び90度にした場合の2方向から撮像し、撮像した画像を前記位置補正ユニットに登録し、鏝先位置補正時に、前記位置補正ユニットにおいて、前記未使用鏝先及び前記使用鏝先又は交換鏝先の画像から、ピクセル座標により、前記未使用鏝先に対する前記使用鏝先又は交換鏝先の位置ずれ量を算出し、算出した位置ずれ量に基づいて前記使用ハンダ鏝又は交換鏝先の鏝先位置を補正する、ことを特徴とする自動ハンダ付け方法が提供される。
【0009】
本発明においては、前記鏝先位置補正時に、前記未使用鏝先に対する前記使用鏝先又は交換鏝先のZ軸方向、X軸方向及びY軸方向の位置ずれ量を算出し、前記Z軸方向の位置ずれ量は、前記未使用鏝先先端の位置座標と前記使用鏝先先端又は交換鏝先先端の位置座標との差として算出し、前記X軸方向の位置ずれ量は、前記未使用鏝先におけるX軸方向の中心位置と前記使用鏝先又は交換鏝先におけるX軸方向の中心位置との差として算出し、前記Y軸方向の位置ずれ量は、前記未使用鏝先におけるY軸方向の中心位置と前記使用鏝先又は交換鏝先におけるY軸方向の中心位置との差として算出することができる。
【0010】
また、本発明において、前記未使用鏝先及び前記使用鏝先又は交換鏝先のX軸方向の中心位置は、前記R方向角度を90度にした時の画像から鏝先外周面におけるX軸方向両端部の位置を検出し、該X軸方向両端部の位置の中間点をX軸方向の中心位置として算出し、前記未使用鏝先及び前記使用鏝先又は交換鏝先のY軸方向の中心位置は、前記R方向角度を0度にした時の画像から鏝先外周面におけるY軸方向両端部の位置を検出し、該Y軸方向両端部の位置の中間点をY軸方向の中心位置として算出することができる。
本発明において、前記未使用鏝先及び使用鏝先のX軸方向の中心位置及びY軸方向の中心位置の算出は、濡れ面の位置で行うことが望ましい。
【0011】
さらに、本発明において、前記鏝先位置の補正は、前記未使用鏝先先端に対する前記使用鏝先先端又は交換鏝先先端のZ軸方向の位置ずれ量、及び、前記未使用鏝先の濡れ面に対する前記使用鏝先又は交換鏝先の濡れ面の位置ずれ量に基づいて行うことができる。
【0012】
また、本発明によれば、ハンダ付けポイントを有する基板を裁置するテーブルと、ハンダ鏝を有するハンダ付けヘッドと、前記ハンダ鏝の鏝先に線状ハンダを供給するハンダ供給機構と、ハンダ付け時に前記テーブルと前記ハンダ付けヘッドとをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向、及びR方向に相対的に移動させる制御を行う制御装置と、前記ハンダ鏝の鏝先位置を補正する鏝先位置補正機構とを有し、前記鏝先位置補正機構は、カメラユニットと位置補正ユニットとを有していて、前記カメラユニットは、上面が開放する箱形をした容器と、該容器の内部に前記ハンダ鏝の鏝先を挿入するための空間部を介して配設されたカメラ及び背景板と、前記鏝先を照らすためのランプとを有し、前記カメラにより、前記ハンダ付けヘッドのハンダ鏝に取り付けられた未使用鏝先の画像と、一定量のハンダ付けを行った使用鏝先又は交換した交換鏝先の画像とを、前記ハンダ付けヘッドのR方向角度を0度にした場合及び90度にした場合の2方向から撮像し、前記位置補正ユニットは、前記カメラユニットで撮像した前記未使用鏝先の画像と前記使用鏝先又は交換鏝先の画像とから、ピクセル座標により、前記未使用鏝先に対する使用鏝先又は交換鏝先の位置ずれ量を算出し、算出した位置ずれ量に基づいて前記使用ハンダ鏝又は交換ハンダ鏝の鏝先の位置を補正する、ことを特徴とする自動ハンダ付け装置が提供される。
【0013】
本発明において、前記カメラユニットにおける前記ランプは、前記カメラの近傍の該カメラより下方位置に配設されていることが好ましい。
【0014】
本発明の一つの実施態様において、前記位置補正ユニットは、前記未使用鏝先に対する前記使用鏝先又は交換鏝先のZ軸方向、X軸方向及びY軸方向の位置ずれ量を算出し、前記Z軸方向の位置ずれ量は、前記未使用鏝先先端の位置座標と前記使用鏝先先端又は交換鏝先先端の位置座標との差として算出し、前記X軸方向の位置ずれ量は、前記未使用鏝先におけるX軸方向の中心位置と前記使用鏝先又は交換鏝先におけるX軸方向の中心位置との差として算出し、前記X軸方向の位置ずれ量は、前記未使用鏝先におけるY軸方向の中心位置と前記使用鏝先又は交換鏝先におけるY軸方向の中心位置との差として算出することができる。
【0015】
この場合、前記未使用鏝先及び前記使用鏝先又は交換鏝先におけるX軸方向の中心位置は、前記R方向角度を90度にした時の画像から、鏝先外周面におけるX軸方向両端部の位置座標を検出し、該X軸方向両端部の中間位置として算出し、前記未使用鏝先及び前記使用鏝先又は交換鏝先におけるY軸方向の中心位置は、前記R方向角度を0度にした時の画像から、鏝先外周面におけるY軸方向両端部の位置座標を検出し、該Y軸方向両端部の中間位置として算出することができる。
【0016】
また、本発明において、前記位置補正は、前記未使用鏝先先端に対する前記使用鏝先先端又は交換鏝先先端のZ軸方向の位置ずれ量、及び、前記未使用鏝先の濡れ面に対する前記使用鏝先又は交換鏝先の濡れ面の位置ずれ量に基づいて行っても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ハンダ付けを行う前の未使用鏝先の画像と、ハンダ付け後の使用鏝先の画像とをカメラで撮像し、その画像から未使用鏝先に対する使用鏝先の位置ずれ量を検出して位置補正するようにしているため、従来のように接触式のセンサを使用することによる該センサの変形や破損等の問題がなく、しかも、接触式のセンサを使用する場合に比べて短時間で精度の良い位置補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るハンダ付け装置の一実施形態を示す正面図である。
【
図5】鏝先の拡大側面図であって、平面部側から見た図である。
【
図6】鏝先の拡大側面図であって、部分円錐面側から見た図である。
【
図9】カメラユニットの平面図であって、ハンダ付けヘッドのR方向角度を0度にすることによって鏝先を平面部側から撮像しているときの図である。
【
図10】カメラユニットの平面図であって、ハンダ付けヘッドのR方向角度を90度にすることによって鏝先を部分円錐面側から撮像しているときの図である。
【
図11】未使用鏝先を平面部側から撮像した時の画像である。
【
図12】未使用鏝先を部分円錐面側から撮像した時の画像である。
【
図13】使用鏝先を平面部側から撮像した時の画像である。
【
図14】使用鏝先を部分円錐面側から撮像した時の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1-
図3は本発明に係る自動ハンダ付け装置10の一実施形態を示すものである。この自動ハンダ付け装置10は、複数のハンダ付けポイントを有する基板11(プリント配線基板)を裁置するためのテーブル12と、該テーブル12をX軸方向に移動させるテーブル移動機構13と、前記基板11をハンダ付けするためのハンダ鏝15及び該ハンダ鏝15の鏝先16に線状ハンダ17を供給するためのハンダ供給機構18を備えたハンダ付けヘッド14と、該ハンダ付けヘッド14を支持アーム19を介してY軸方向とZ軸方向(
図4参照)及び該Z軸を中心とするR方向(回転方向)とに変位自在なるように支持するヘッドホルダ20と、該ヘッドホルダ20をY軸方向に移動させるヘッド移動機構21と、ハンダ付け装置10の動作を制御する制御装置22とを有し、該制御装置22で前記テーブル移動機構13及びヘッド移動機構21を、該制御装置22に予め入力されたプログラムに従って制御することにより、前記テーブル12とハンダ付けヘッド14とを、前記X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びR方向に相対的に変位させ、前記ハンダ鏝15で前記基板11上の複数のハンダ付けポイントを順次自動的にハンダ付けするものである。
【0020】
前記制御装置22は、ベース23の内部に配設され、前記テーブル移動機構13は、前記ベース23上に配設されたスライドテーブル24と、前記テーブル12に取り付けられたスライダ25とからなっていて、前記制御装置22で前記スライダ25を前記スライドテーブル24に沿って移動させることにより、前記テーブル12がX軸方向に移動する。
【0021】
前記ヘッドホルダ20及びヘッド移動機構21は、ガイドレール26に前記Y軸方向に移動可能なるように支持され、前記ガイドレール26は、前記ベース23の後端部から立ち上がった左右の支柱27,27の上端部間に架設されている。
【0022】
前記ハンダ供給機構18は、線状ハンダ17が巻かれたハンダリール(不図示)を内臓するハンダ供給部28と、該ハンダ供給部28にハンダ送りチューブ29を介して接続されたハンダノズル30とを有し、該ハンダノズル30は、その先端を前記ハンダ鏝15の鏝先16の側面(濡れ面)に向けた姿勢に配設され、前記ハンダ供給部28から繰り出された線状ハンダ17を、該ハンダノズル30によって前記ハンダ鏝15の鏝先16に供給するように構成されている。
【0023】
前記ハンダ鏝15は、前記支持アーム19の中心を通る前記Z軸に対して傾斜した姿勢で前記ハンダ付けヘッド14に取り付けられ、該ハンダ鏝15の先端に前記鏝先16が脱着可能なるように取り付けられている。前記ハンダ鏝15の内部には不図示のヒーターが内蔵され、該ヒータにより前記鏝先16が加熱されてハンダ付けが行われる。
【0024】
前記鏝先16は、
図5、
図6に示すように、次第に先細り状をなしていて、該鏝先16の前記X軸方向を向く前後両側面には、一対の平面部31a,31bが互いに対称をなすように形成され、該鏝先16の前記Y軸方向を向く左右両側面即ち前記一対の平面部31a,31b間の部分は、円錐面の一部である部分円錐面部32とされている。前記一対の平面部31a,31bのうち一方の平面部31aは、ハンダの濡れ面を形成し、この濡れ面となる平面部31aに、前記ハンダノズル30から線状ハンダ17が供給される。従って以下の説明において、前記平面部31aを濡れ面31aと言うこともある。
本実施形態においては、
図1に示すように、前記鏝先16の平面部31a,31bをX軸方向に向けた時の前記ハンダ付けヘッド14のR方向角度が0度である。
【0025】
なお、図示した例において前記ハンダ鏝15の鏝先16は、その鏝先先端16a及び濡れ面31aが前記Z軸に接するように配置されているが、前記鏝先16は、その鏝先先端16aの中心を前記Z軸が通るように配置されていても、該鏝先先端16aが前記Z軸から僅かに離隔するように配置されていても良い。
【0026】
また、前記自動ハンダ付け装置10には、ハンダ付けを行うことによって前記ハンダ鏝15の鏝先16が腐食して消耗したり、新たな鏝先16と交換したりすることにより、鏝先先端16aの位置が、ハンダ付けの前に行われるティーチング登録時の鏝先先端の位置に対してずれを生じた場合に、該鏝先先端16aの位置補正を行うための鏝先位置補正機構40が設けられている。
【0027】
前記鏝先位置補正機構40は、
図1-
図3に示すように、前記テーブル12上か又はベース23上に配設されたカメラユニット41と、前記ハンダ付け装置10の機体の一部又は該機体の外部に配設された位置補正ユニット42とから構成され、該位置補正ユニット42は、前記カメラユニット41と前記制御装置22とに電気的に接続されており、特に、前記制御装置22にはシリアル通信により接続されていて、該制御装置22との間で位置補正のコマンドを送受し合うように構成されている。
【0028】
前記カメラユニット41は、前記ハンダ付けヘッド14に取り付けられたハンダ鏝15の鏝先16の画像を撮像するためのもので、
図7-
図10に示すように、上面が開放する箱形をして内部に前記ハンダ鏝15の鏝先16を挿入するための空間部44を有するX軸方向に細長い筐体43と、該筐体43内の前記X軸方向の一端側及び他端側に前記空間部44を介して配設されたカメラ45及び背景板46と、前記鏝先16を照らすためのランプ47とを有している。
【0029】
前記カメラ45は、例えばM12マウントの小型カメラにより構成され、レンズを前記背景板46に向けて配置されている。
【0030】
前記背景板46は、前記鏝先16の輪郭形状や表面状態等を明確にするためのもので、その色は白色であることが好ましいが、鏝先16に対して紛れにくい色であればその他の色であっても構わない。
【0031】
また、前記ランプ47は、LEDランプからなるもので、前記鏝先16の影が画像に映り込まないようにするため、前記筐体43内の前記カメラ45が設けられている側の、該カメラ45よりより下方の位置に配設されている。
【0032】
前記カメラユニット41で鏝先16の画像を撮像するときは、前記制御装置22により前記ハンダ付けヘッド14を該カメラユニット41の位置まで移動させてハンダ鏝15の鏝先16を前記空間部44内に挿入し、前記鏝先16の画像を、前記ハンダ付けヘッド14のR方向角度を0度にした方向と90度にした方向との、互いに90度異なる2方向から撮像する。
図9は、前記ハンダ付けヘッド14のR方向角度を0度にすることにより、前記鏝先16の画像を濡れ面31a側から撮像する場合を示し、
図5はその時の画像を示しており、
図10は、前記ハンダ付けヘッド14のR方向角度を90度にすることにより、前記鏝先16の画像を部分円錐面部32側から撮像する場合を示し、
図6はその時の画像を示している。
【0033】
前記カメラユニット41による鏝先16の画像の撮像は、ハンダ付けを行う前の鏝先(未使用鏝先)16n(
図11及び
図12参照)と、一定量のハンダ付けを行った鏝先(使用鏝先)16u(
図13及び
図14参照)との、両方について行われる。
【0034】
前記位置補正ユニット42は、鏝先位置の補正時に、前記カメラユニット41のカメラ45で撮像した前記未使用鏝先16nの画像と使用鏝先16uの画像とから、前記未使用鏝先16nに対する使用鏝先16uの前記Z軸方向、X軸方向及びY軸方向の位置ずれ量を算出し、算出した位置ずれ量に基づいて前記使用ハンダ鏝の鏝先位置を補正するものである。
【0035】
次に、前記自動ハンダ付け装置10の作用について説明する。この自動ハンダ付け装置10においては、ハンダ付けを開始する前に、前記基板11上のハンダ付けポイントの位置や該ハンダ付けポイントと前記ハンダ鏝15における未使用鏝先16nの鏝先先端16aとの位置関係、ハンダ付けする経路や順番等が前記制御装置22にティーチング登録されると共に、前記未使用鏝先16nの画像が、前記カメラユニット41において、前記R方向角度を0度にした場合(
図11参照)及び90度にした場合(
図12参照)の2方向から撮像され、その画像が前記位置補正ユニット42に送られて登録される。
【0036】
そのとき、前記位置補正ユニット42において、画像の2値化処理とブロブ解析とによって鏝先先端16aの位置が検出され、該鏝先先端16aの座標が、カメラのピクセル座標により初期位置Zとして記憶(登録)される。また、前記ハンダ付けヘッド14のR方向角度を0度にした時の画像(
図11)から、前記鏝先先端16aから濡れ面31aの線状ハンダ17が供給される部分に対応する高さhまで上昇した位置において、前記未使用鏝先16nのY軸方向両端部の位置(Y1,Y2)が検出されると共に、前記ハンダ付けヘッド14のR方向角度を90度にした時の画像(
図12)から、前記未使用鏝先16nのX軸方向両端部の位置(X1,X2)が検出され、これらの位置(Y1,Y2)及び(X1,X2)の座標が、カメラのピクセル座標により初期位置として記憶(登録)される。
【0037】
そのあとスタートボタンを押すことで、前記制御装置22が、予め入力されたプログラムに従って前記テーブル移動機構13及び前記ヘッド移動機構21を制御し、前記テーブル12と前記ハンダ付けヘッド14とを前記X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及びR方向に相対的に変位させることにより、前記ハンダ鏝15で前記基板11上の複数のハンダ付けポイントが順次自動的にハンダ付けされる。
【0038】
ハンダ付け開始後に、前記ハンダ鏝15の鏝先16は、はんだ付けする前の未使用鏝先16nからハンダ付けを行った使用鏝先16uとなり、ハンダとの接触により次第に劣化して位置ずれを生じることになる。そこで、ハンダ付け工程中に、一定量のハンダ付けを行う毎に鏝先先端の位置補正が次のようにして行われる。
【0039】
すなわち、一定量のハンダ付けを行う毎に、前記ハンダ付けヘッド14が、前記制御装置22の制御により前記カメラユニット41の位置に移動し、ハンダ鏝15の鏝先16(使用鏝先16u)の画像が、前記カメラ45により、前記ハンダ付けヘッド14のR方向角度を0度にした時の方向と90度にした時の方向との、2方向から撮像される。そして、前記位置補正ユニット42で画像処理が行われることにより、前記未使用鏝先16nの場合と同様に、前記R方向角度が0度の時の画像(
図13)から、前記使用鏝先16uにおける鏝先先端16aの位置Z’と、Y軸方向両端部の位置(Y’1,Y’2)とが検出されると共に、前記R方向角度が90度の時の画像(
図14)から、X軸方向の両端部の位置(X’1,X’2)が検出され、検出された各位置がピクセル座標により計測位置として登録される。
【0040】
なお、前記カメラユニット41による撮像時に、前記未使用鏝先16n及び使用鏝先16uはZ軸に対して若干傾斜しているが、その傾斜は僅かであると共に、傾斜していても傾斜していなくても、位置補正の原理及び精度は変わらないので、分かり易くするため、以下の説明においては、鏝先が傾斜していない状態の図を用いて位置補正の説明を行うものとする。
【0041】
続いて、前記制御装置22からの補正要求により、前記位置補正ユニット42において、前記初期位置及び計測位置の位置座標から、前記未使用鏝先16nに対する使用鏝先16uの前記Z軸方向、X軸方向及びY軸方向の位置ずれ量を算出し、算出した位置ずれ量に基づいて前記使用鏝先16uの位置補正を行い、該位置補正ユニット42からの指示によって前記制御装置22が、前記使用鏝先16uの位置補正を実行する。
【0042】
前記Z軸方向の位置ずれ量ΔZは、前記使用鏝先16uにおける鏝先先端16aの位置Z’と前記未使用鏝先16nにおける鏝先先端16aの位置Zとの差(ΔZ=Z’-Z)として算出され、前記X軸方向の位置ずれ量ΔXは、前記使用鏝先16uのX軸方向の中心位置X’cと前記未使用鏝先16nのX軸方向の中心位置Xcとの差(ΔX=X’c-Xc)として算出され、前記Y軸方向の位置ずれ量ΔYは、前記使用鏝先16uのY軸方向の中心位置Y’cと前記未使用鏝先16nのY軸方向の中心位置Ycとの差(ΔY=Y’c-Yc)として算出される。
【0043】
また、前記未使用鏝先16nのX軸方向の中心位置Xcは、前記X軸方向両端部の位置(X1,X2)から、以下の計算式(1)により算出され、Y軸方向の中心位置Ycは、前記Y軸方向両端部の位置(Y1,Y2)から、以下の計算式(2)により算出され、
Xc=(X1+X2)/2・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
Yc=(Y1+Y2)/2・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
前記使用鏝先16uのX軸方向の中心位置X’cは、前記X軸方向両端部の位置(X’1,X’2)から、以下の計算式(3)式により算出され、前記Y軸方向の中心位置Y’cは、前記Y軸方向両端部の位置(Y’1,Y’2)から、以下の計算式(4)式により算出される。
X’c=(X’1+X’2)/2・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
Y’c=(Y’1+Y’2)/2・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(4)
【0044】
実際には、前記位置ずれ量ΔZ、ΔX、ΔYに、キャリブレーション係数aを乗じて調整した調整位置ずれ量ΔZa、ΔXa、ΔYaに基づいて位置補正が行われる。
【0045】
前記キャリブレーション係数aとは、カメラ45のピクセル座標における1ピクセルを実際の距離(mm)に変換する際の比率である。
【0046】
なお、位置補正を行う場合、ハンダ付け条件によっては、前述したように鏝先16の中心X’c、Y’cの位置ずれを補正するのが好ましい場合と、鏝先16の濡れ面31aの位置ずれを補正するのが好ましい場合とがあり、後者の場合には、前記濡れ面31aの位置ずれ量ΔNが、未使用鏝先16nのX軸方向両端部の位置(X1,X2)のうちの濡れ面31a側の位置X1と、使用鏝先16uのX軸方向両端部の位置(X’1,X’2)のうちの濡れ面31a側の位置X’1とから、ΔN=X1-X’1として算出され、これに前記キャリブレーション係数aを乗じたΔNaと、前記鏝先先端の位置ずれ量ΔZaとに基づいて鏝先16の位置補正が行われる。好ましくは、鏝先16の中心の位置ずれを補正する場合と、濡れ面31aの位置ずれを補正する場合とを、状況に応じて選択することができるようにしておくことである。
【0047】
また、前述した手順で鏝先16の位置補正を行った状態で、再度前述した〔0039〕以降の手順を繰り返し行うことにより、位置補正の精度確認を行うことができる。
前記実施形態においては、ハンダ付けを行うことによって消耗した使用鏝先の位置補正を行う場合について説明したが、鏝先を交換した場合の「交換鏝先」についても、その位置補正を前記「使用鏝先」の場合と同様の方法で行うことができる。その場合、前記「使用鏝先」の位置補正の説明において、前記「使用鏝先」を「交換鏝先」と読み換えれば良い。
【0048】
このように、本発明においては、ハンダ付けを行う前の未使用鏝先の画像、及び、ハンダ付けに使用した使用鏝先又は交換した交換鏝先の画像を、カメラで撮像し、その画像から、未使用鏝先に対する使用鏝先又は交換鏝先の位置ずれ量を検出して位置補正するものであって、従来のように接触式のセンサを使用しないため、該センサの変形や破損精度の問題を発生させることがなく、精度の良い位置補正を行うことができる。
【符号の説明】
【0049】
10 ハンダ付け装置
11 基板
12 テーブル
14 ハンダ付けヘッド
15 ハンダ鏝
16 鏝先
16a 先端
16n 未使用鏝先
16u 使用鏝先
17 線状ハンダ
18 ハンダ供給機構
22 制御装置
40 鏝先位置補正機構
41 カメラユニット
42 位置補正ユニット
43 筐体
44 空間部
45 カメラ
46 背景板
47 ランプ