(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115391
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】ポリアルキレンオキシド含有化合物
(51)【国際特許分類】
C08G 65/333 20060101AFI20240819BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
C08G65/333
C11D3/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021062
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】大野 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】細谷 務
(72)【発明者】
【氏名】竹嶋 久晶
【テーマコード(参考)】
4H003
4J005
【Fターム(参考)】
4H003BA01
4H003BA12
4H003DA01
4H003DA09
4H003DA13
4H003EB34
4H003FA06
4J005AA04
4J005AA06
4J005BB01
4J005BD05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】泥粒子等の親水性汚れに対する再汚染防止能に優れるポリアルキレンオキシド含有化合物、その製造方法、当該化合物を含有する洗剤組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される置換基(A)
(R
1は、炭化水素基を表す。Xは、-C(=α
1)-β
1-基、-β
1-C(=α
1)-基、及び、>C=α
1基を表し、Yは、直接結合、炭化水素基、又は、ポリアルキレンオキシドユニットを表す。Zは、直接結合、又は、-(CH
2)
n-α
2-基を表す。α
1、β
1、α
2はヘテロ原子、又は、ヘテロ原子に水素原子が結合した基を表す。nは1~10の整数である。Tは、水素原子、又は、炭素数1~30の有機基を表す。)と、4以上の窒素原子を有するカチオン基(B)とを有し、置換基(A)が、カチオン基(B)に含まれる窒素原子の少なくとも一つ以上と結合している、ポリアルキレンオキシド含有化合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される置換基(A)と、
【化1】
(一般式(1)中、R
1は、同一又は異なって、炭素数2~6の炭化水素基を表す。Xは、-C(=α
1)-β
1-基、-β
1-C(=α
1)-基、及び、>C=α
1基から選ばれる1種以上を表し、α
1、β
1は、同一又は異なって、ヘテロ原子、又は、ヘテロ原子に水素原子が結合した基を表す。sは、1~30の整数である。Yは、直接結合、炭素数1~10の直鎖もしくは分岐の炭化水素基、又は、下記一般式(2)で表される置換基を表す。Zは、直接結合、又は、-(CH
2)
n-α
2-基を表す。α
2はヘテロ原子、又は、ヘテロ原子に水素原子が結合した基を表す。nは1~10の整数である。Tは、水素原子、又は、炭素数1~30の有機基を表す。)
【化2】
(一般式(2)中、qは、1~10の整数である。R
2、R
3は、同一又は異なって、炭素数2~6の炭化水素基を表す。)
4以上の窒素原子を有するカチオン基(B)とを有し、
前記置換基(A)が、前記カチオン基(B)に含まれる窒素原子の少なくとも一つ以上と結合しており、
ポリアルキレンオキシド含有化合物中の置換基(A)におけるsの平均が15以下である、ポリアルキレンオキシド含有化合物。
【請求項2】
前記一般式(1)に記載の置換基(A)中のXのα1、β1のヘテロ原子が、酸素原子、もしくは、窒素原子である請求項1に記載のポリアルキレンオキシド含有化合物。
【請求項3】
前記一般式(1)に記載の置換基(A)中のYが、炭素数2~4の炭化水素基である請求項1に記載のポリアルキレンオキシド含有化合物。
【請求項4】
前記ポリアルキレンオキシド含有化合物は、連結基が結合していないカチオン基を有し、
前記連結基が結合していないカチオン基に含まれる未反応のNH基が、該ポリアルキレンオキシド含有化合物に含まれる窒素原子の総モル数に対して、80mol%以下である、請求項1に記載のポリアルキレンオキシド含有化合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のポリアルキレンオキシド含有化合物の製造方法であって、
前記製造方法は、ポリアルキレンオキシド鎖を有するα,β-不飽和カルボニル化合物を、ポリアルキレンアミンにおけるアミノ基にマイケル付加する工程を含む、ポリアルキレンオキシド含有化合物の製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載のポリアルキレンオキシド含有化合物の製造方法であって、
前記製造方法は、不飽和エステル化合物を、ポリアルキレンアミンにおけるアミノ基にマイケル付加する第一工程と、
第一工程で得られた生成物の不飽和エステル化合物由来の基にポリアルキレンオキシド鎖を導入する第二工程を含む、ポリアルキレンオキシド含有化合物の製造方法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載のポリアルキレンオキシド含有化合物を含む洗剤又は洗剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泥粒子等の親水性汚れに対する再汚染防止能に優れるポリアルキレンオキシド含有化合物、その製造方法、当該化合物を含有する洗剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリアルキレンイミンを主鎖とし、エチレンオキシド等がポリアルキレンイミン中の窒素原子に付加した重合体は、ポリアルキレンイミンポリアルキレンオキシドとして知られている。この重合体は、高分子系ビルダーとして作用することが知られており、液体洗剤中に溶けるという性質を有することから、液体洗剤を構成する成分として使用されている。ポリアルキレンイミンポリアルキレンオキシドを活性剤と共に洗剤中に含有させると、洗濯により取り除かれた汚れによる再汚染を防止して、高い洗浄力を発揮することになる。
【0003】
ポリアルキレンイミンポリアルキレンオキシドについては、従来より様々な研究がされており、例えば、特許文献1では、ポリアルキレンオキシドをもつアルキレンイミン単量体単位を有するポリアルキレンイミンアルキレンオキシド共重合体のポリアルキレンオキシドの末端基に、無水マレイン酸を付加反応させた構造の共重合体が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、ポリアルキレンオキシド鎖を有するアルキレンアミン構造単位を含むポリアルキレンアミンアルキレンオキシド系共重合体であって、ポリアルキレンアミンアルキレンオキシド系共重合体の有するポリアルキレンオキシド鎖の末端基の一部または全部が、ラウリルグリシジルエーテルで付加反応をさせた構造の重合体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-241372号公報
【特許文献2】特開2012-149185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本願発明者らは、これまでの検討により、ポリアルキレンオキシド鎖を有するアルキレンアミン構造単位を含むポリアルキレンオキシド系共重合体のアルキレンオキシドの末端基を修飾した重合体を洗剤組成物に用いて、再汚染防止能を向上することを見出してきた。
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の、ポリアルキレンオキシド鎖を有するアルキレンアミン構造単位を含むポリアルキレンアミンアルキレンオキシド系共重合体のアルキレンオキシドの末端基を修飾した重合体は、泥粒子等の親水性汚れに対する再汚染防止能において改良の余地があるという課題があった。
【0008】
本発明は欺かる点に鑑みてなされたものであり、泥粒子等の親水性汚れに対する再汚染防止能に優れるポリアルキレンオキシド含有化合物、その製造方法、当該化合物を含有する洗剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、泥粒子等の親水性汚れに対する再汚染防止能に優れるポリアルキレンオキシド含有化合物について種々検討したところ、ポリアルキレンオキシド鎖を有する所定の構造の置換基と、4以上の窒素原子を有するカチオン基とを有し、該置換基がカチオン基に含まれる窒素原子の少なくとも一つ以上と結合し、ポリアルキレンオキシドの平均鎖長が15モル以下であるポリアルキレンオキシド含有化合物が、泥粒子等の親水性汚れに対する再汚染防止能に優れる重合体であることを見出し、本発明に到達したものである。
【0010】
本発明は、以下のポリアルキレンオキシド含有化合物等を包含する。
〔1〕下記一般式(1)で表される置換基(A)と、
【化1】
(一般式(1)中、R
1は、同一又は異なって、炭素数2~6の炭化水素基を表す。Xは、-C(=α
1)-β
1-基、-β
1-C(=α
1)-基、及び、>C=α
1基から選ばれる1種以上を表し、α
1、β
1は、同一又は異なって、ヘテロ原子、又は、ヘテロ原子に水素原子が結合した基を表す。sは、1~30の整数である。Yは、直接結合、炭素数1~10の直鎖もしくは分岐の炭化水素基、又は、下記一般式(2)で表される置換基を表す。Zは、直接結合、又は、-(CH
2)
n-α
2-基を表す。α
2はヘテロ原子、又は、ヘテロ原子に水素原子が結合した基を表す。nは1~10の整数である。Tは、水素原子、又は、炭素数1~30の有機基を表す。)
【化2】
(一般式(2)中、qは、1~10の整数である。R
2、R
3は、同一又は異なって、炭素数2~6の炭化水素基を表す。)
4以上の窒素原子を有するカチオン基(B)とを有し、置換基(A)が、上記カチオン基(B)に含まれる窒素原子の少なくとも一つ以上と結合しており、ポリアルキレンオキシド含有化合物中の置換基(A)におけるsの平均が15以下である、ポリアルキレンオキシド含有化合物。
〔2〕上記一般式(1)に記載の置換基(A)中のXのα
1、β
1のヘテロ原子が、酸素原子、もしくは、窒素原子である上記〔1〕に記載のポリアルキレンオキシド含有化合物。
〔3〕上記一般式(1)に記載の置換基(A)中のYが、炭素数2~4の炭化水素基である上記〔1〕又は〔2〕に記載のポリアルキレンオキシド含有化合物。
〔4〕上記ポリアルキレンオキシド含有化合物は、連結基が結合していないカチオン基を有し、上記連結基が結合していないカチオン基に含まれる未反応のNH基が、該ポリアルキレンオキシド含有化合物に含まれる窒素原子の総モル数に対して、80mol%以下である、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載のポリアルキレンオキシド含有化合物。
〔5〕上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のポリアルキレンオキシド含有化合物の製造方法であって、上記製造方法は、ポリアルキレンオキシド鎖を有するα,β-不飽和カルボニル化合物を、ポリアルキレンアミンにおけるアミノ基にマイケル付加する工程を含む、ポリアルキレンオキシド含有化合物の製造方法。
〔6〕上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のポリアルキレンオキシド含有化合物の製造方法であって、上記製造方法は、不飽和エステル化合物を、ポリアルキレンアミンにおけるアミノ基にマイケル付加する第一工程と、第一工程で得られた生成物の不飽和エステル化合物由来の基にポリアルキレンオキシド鎖を導入する第二工程を含む、ポリアルキレンオキシド含有化合物の製造方法。
〔7〕上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載のポリアルキレンオキシド含有化合物を含む洗剤又は洗剤組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物は、泥粒子等の親水性汚れに対する再汚染防止能に優れることから、洗剤組成物の成分として好適に用いることができる。
本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物の製造方法は、このようなポリアルキレンオキシド含有化合物を製造するための好適な方法である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。
【0013】
これ以降の説明において特に記載がない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を、それぞれ意味し、範囲を示す「A~B」は、A以上B以下であることを示す。また、本発明において、「(メタ)アクリレ-ト」は、「アクリレ-ト」または「メタクリレ-ト」を意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を意味する。
【0014】
1.ポリアルキレンオキシド含有化合物
本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物は、以下の1)、2)の置換基を有し、ポリアルキレンオキシドの平均鎖長が15モル以下である。
1)4以上の窒素原子を有するカチオン基(B)
2)カチオン基(B)に結合するポリアルキレンオキシド鎖を有する下記一般式(1)で表される置換基(A)
本明細書において、ポリアルキレンオキシドの平均鎖長は、同一の置換基(A)に含まれるオキシアルキレン基のモル数の平均値、すなわち、置換基(A)におけるsの平均を意味する。ポリアルキレンオキシドの平均鎖長として好ましくは3~15であり、より好ましくは5~12である。
【0015】
本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物は、カチオン基(B)に下記一般式(1)で表される置換基(A)が結合した構造を有する。
【0016】
【0017】
(一般式(1)中、R1は、同一又は異なって、炭素数2~6の炭化水素基を表す。Xは、-C(=α1)-β1-基、-β1-C(=α1)-基、及び、>C=α1基から選ばれる1種以上を表し、α1、β1は、同一又は異なって、ヘテロ原子、又は、ヘテロ原子に水素原子が結合した基を表す。sは、1~30の整数である。Yは、直接結合、炭素数1~10の直鎖もしくは分岐の炭化水素基、又は、下記一般式(2)で表される置換基を表す。Zは、直接結合、又は、-(CH2)n-α2-基を表す。α2はヘテロ原子、又は、ヘテロ原子に水素原子が結合した基を表す。nは1~10の整数である。Tは、水素原子、又は、炭素数1~30の有機基を表す。)
【0018】
【0019】
(一般式(2)中、qは、1~10の整数である。R2、R3は、同一又は異なって、炭素数2~6の炭化水素基を表す。)
【0020】
上記一般式(1)で表される置換基(A)は、(-R1-O-)sで表されるポリアルキレンオキシドに由来する構造部位と、-Y-X-Z-で表される連結基とを含む置換基である。連結基が、このような基であると、ポリアルキレンオキシド含有化合物の保存時安定性、使用後の分解性を高めることができるため好ましい。また、本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物の泥粒子分散能及び再汚染防止能が向上する傾向にあることから好ましい。
近年、洗剤組成物には洗浄能力に優れることに加え、環境への配慮から自然界で分解されやすいものであることが求められる。このため連結基としては、限定されないが、特に加水分解性基、菌体外酵素で分解する官能基であることが好ましく、上記の連結基の中でも、エステル基、アミド基が特に好ましい。
なお、生分解性とは、例えばバクテリア、菌類、その他の生物によって代謝・分解可能なことをいう。
【0021】
上記一般式(1)中のXは、-C(=α1)-β1-基、-β1-C(=α1)-基、及び、>C=α1基から選ばれる1種以上であれば好ましい。また、α1、β1は、ヘテロ原子を表す。Xは好ましくは、エステル基、チオエステル基、アミド基、であり、より好ましくは、エステル基、アミド基であり、更に好ましくはエステル基である。
また、α1、β1がヘテロ原子である場合、ヘテロ原子であれば特に限定はなく、好ましくは、酸素原子、及び、硫黄原子から選ばれる1種以上である。
α1、β1がヘテロ原子に水素原子が結合した基である場合、NH基であることが好ましい。
ポリアルキレンオキシド化合物の保存安定性の向上と分解促進の両立の観点から、前述した置換基及び原子であることが好ましい。
【0022】
上記一般式(1)中のR1は、炭素数2~6の炭化水素基であれば、特に限定はない。好ましくは、炭素数2~4の炭化水素基である。上記一般式(1)中にs個存在するR1は同一の炭素数の炭化水素基でもよいし、また、異なる炭素数の炭化水素基の組み合わせであってもよい。好ましいR1の炭素数は、前述した通り、炭素数2~4である。
また、上記一般式(1)中の-R1-O-基は、オキシエチレン基、オキシプロプレン基、オキシブチレン基から選ばれる1種以上であってもよい。
ポリアルキレンオキシド化合物へ水溶性を付与し、泥分散性と液体洗剤との相溶性により優れたものとする観点から、前述した置換基及び原子であることが好ましい。
【0023】
上記一般式(1)中のsは、1~30の整数であって、置換基(A)におけるsの平均が15以下であれば特に限定はない。sとして好ましくは、3~15であり、より好ましくは、3~12であり、更に好ましくは5~12である。
ポリアルキレンオキシド化合物の泥分散性、再汚染防止性能をより向上させる観点から、前述の範囲であることが好ましい。
【0024】
上記一般式(1)における(R1-O)sは、一態様において、下記一般式(3);
(R1’-O)t-(R1-O)s-t (3)
(式中、R1’は、炭素数3~6の分岐アルキレン基を表す。tは、1~15の整数である。R1及びsは、一般式(1)におけるR1及びsと同様である。)で表される構造であることが好ましい。
この場合、R1’における立体障害と疎水性により、一般式(1)中の-Y-X-Z-で表される連結基がより加水分解されにくくなり、ポリアルキレンオキシド化合物の安定性がより向上する。
R1’として好ましくは炭素数3~4の分岐アルキレン基であり、より好ましくはイソプロピレン基、イソブチレン基である。
tとして好ましくは1~10であり、更に好ましくは1~5である。
上記一般式(3)におけるR1として好ましくはエチレン基である。
【0025】
上記一般式(1)中のYは、直接結合、炭素数1~10の直鎖もしくは分岐鎖の炭化水素基、又は、上記一般式(2)で表される置換基である。一般式(1)中のYが、炭素数1~10の炭化水素基である場合、好ましくは炭素数2~6の炭化水素基であり、より好ましくは2~4の炭化水素基である。また、炭化水素基はアルキレン基が好ましい。Yがエチレン基又はイソプロピレン基である形態は本発明の好ましい実施形態の1つである。
本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物において第1級アミノ基(NH2基)、第2級アミノ基(NH基)が多い場合に、Yがイソプロピレン基であると、ポリアルキレンオキシド含有化合物の加水分解をより充分に抑制することができる。
【0026】
上記一般式(2)中のqは、1~10の整数であり、好ましい範囲は一般式(1)中のsと同様である。
一般式(2)中のR2、R3は、同一又は異なって、炭素数2~6の炭化水素基であり、好ましい炭化水素基は一般式(1)中のR1と同様である。
【0027】
本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物は、連結基部分で分解されるものであることが好ましい。この場合、カチオン基とポリアルキレンオキシド由来の構造単位を結合させる連結基の分解部分は、カチオン基に直接結合するのではなく、上記の範囲のカチオン基からある程度離れた位置に結合しているほうが、ポリアルキレンオキシド化合物の分解性確保の観点から好ましい。
【0028】
上記一般式(1)中のZは、直接結合、又は、-(CH2)n-α2-基であれば特に制限されない。
α2はヘテロ原子である。nは1~10の整数を表す。
α2がヘテロ原子である場合、特に限定はないが、好ましくは、酸素原子、硫黄原子である。
α2がヘテロ原子に水素原子が結合した基である場合、NH基であることが好ましい。
nは1~10の整数であれば特に限定はなく、好ましくは1~5であり、更に好ましくは1~3である。
ポリアルキレンオキシドに連結基を導入するための合成の容易さの観点から、前述の置換基及び範囲であることが好ましい。
【0029】
上記一般式(1)中のTは、同一又は異なって、水素原子、又は、炭素数1~30の有機基であれば、特に限定はなく、親水性、疎水性を調整するために、適宜、構造を選択すればよい。有機基としては、炭化水素基が好ましい。より好ましくは、直鎖又は分岐アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基である。
また上記炭化水素基にカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基のいずれかが結合した構造の有機基も好ましい。
【0030】
上記Tにおける有機基の炭素数として好ましくは1~20であり、より好ましくは1~15であり、更に好ましくは1~10であり、一層好ましくは1~8であり、より一層好ましくは1~6であり、特に好ましくは1~4である。
【0031】
上記直鎖又は分岐アルキル基としてはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基(アミル基)、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-エイコサニル基、i-プロピル基、sec-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、i-アミル基、ネオペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、t-アミル基、1,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-エチル-2-メチルプロピル基、1-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、1,5-ジメチルヘキシル基、t-オクチル基、分岐したノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基、イコシル基等が挙げられる。
【0032】
上記アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
上記アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ドデシニル基、オクタデシニル基、イコシニル基等が挙げられる。
【0033】
アリール基としては、例えば、フェニル基;ナフチル基;ベンジル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ブチルメチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジエチルフェニル基、ジブチルフェニル基、ビフェニル基、メチルビフェニル基、エチルビフェニル基、メチルナフチル基、エチルナフチル基、シンナミル基(Ph-CH=CHCH2-基)、1-ベンゾシクロブテニル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0034】
上記Tとして好ましくは直鎖又は分岐アルキル基である。中でも好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基である。
【0035】
本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物は、カチオン基(B)が少なくとも一つの疎水性基含有基(C)を有していてもよい。
上記のとおり、本発明におけるカチオン基(B)はアミノ基を有するが、カチオン基中に第1級アミノ基(NH2基)、第2級アミノ基(NH基)を有すると、ポリアルキレンオキシド含有化合物の構造にエステル構造が含まれる場合に、洗剤組成物中で当該第1級、第2級アミノ基部分でエステル構造とのエステルアミド交換や加水分解が生じ、重合体の保存安定性を低下させる原因となる。
これに対し、カチオン基中のNH基に一般式(1)で表される置換基(A)を結合することでこのようなエステルアミド交換や加水分解を抑制することができ、これにより本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物は洗剤組成物中での保存安定性に優れたものとなる。
【0036】
本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物は、カチオン基中のNH基に(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリルアミド化合物、カルボン酸無水物、カルボン酸ハライド、カルボン酸、エポキシ化合物、環状ラクトン化合物、環状ラクタム化合物からなる群より選択される少なくとも1種を反応させて形成される置換基(C)を有していてもよい。ポリアルキレンオキシド含有化合物における置換基(A)が結合していない未反応のNH基にこのような置換基(C)が結合することによっても、エステルアミド交換や加水分解等を抑制することができる。
【0037】
上記(メタ)アクリレート化合物及び(メタ)アクリルアミド化合物としては、特に制限されないが、下記一般式(4);
【0038】
【化5】
(式中、R
4は、炭素数1~30の有機基を表す。R
8は、水素原子またはメチル基である。Gは、O、NH又はNを表す。xは、1又は2であって、GがO又はNHのときxは1であり、GがNのときxは2である。)で表される化合物であることが好ましい。
【0039】
上記R4における有機基の具体例及び好ましい形態は、上記一般式(1)におけるTの有機基と同様である。
上記R4における有機基の炭素数として好ましくは1~24であり、より好ましくは1~18であり、更に好ましくは1~15であり、一層好ましくは1~10であり、より一層好ましくは1~8であり、特に好ましくは1~6である。
Tにおける上述の有機基の中でも、R4における有機基として好ましくは直鎖又は分岐アルキル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、フェニル基、ベンジル基であり、更に好ましくはメチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基である。
【0040】
一態様において、上記ポリアルキレンオキシド含有化合物が置換基(C)として、上記一般式(4)で表される化合物由来の基を有し、R4が炭素数2~18の有機基である形態は、本発明の好ましい実施形態の1つである。一態様において、より好ましくはR4が炭素数2~6の有機基である形態である。
上記R4がメチル基である場合、上記一般式(1)における(R1-O)sが一般式(3)で表される構造であることが好ましい。
一態様において、R4がメチル基であって、上記一般式(1)における(R1-O)sが一般式(3)で表される構造である形態もまた、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0041】
上記カルボン酸無水物としては、無水酢酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
上記カルボン酸ハライドとしては、酢酸クロライド、プロピオン酸クロライド等や、後述する製造方法(I)におけるカルボン酸ハライド基を有する疎水性基含有化合物等が挙げられる。
上記カルボン酸としては、後述する製造方法(I)におけるカルボキシル基を有する疎水性基含有化合物等が挙げられる。
上記エポキシ化合物としては、酸化エチレン、酸化プロピレン、エポキシペンタン、エポキシヘキサン等のアルキレンオキシド、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類が挙げられる。
上記環状ラクトン化合物、環状ラクタム化合物としては、後述する製造方法(II)における環状ラクトン化合物、環状ラクタム化合物が挙げられる。
【0042】
本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物において、置換基(A)はカチオン基(B)に含まれる窒素原子の少なくとも一つに結合していればよく、同一の窒素原子に2つの置換基(A)が結合していてもよい。また、本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物が上記置換基(C)を有する場合、1つの窒素原子に1つの置換基(C)が結合していてもよく、同一の窒素原子に2つの置換基(C)又は置換基(A)及び置換基(C)が1つずつ結合していてもよい。
【0043】
本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物における一般式(1)で表される置換基(A)の量は特に制限されないが、ポリアルキレンオキシド含有化合物に含まれる窒素原子の総モル数に対して5~90mol%であることが好ましい。より好ましくは、10~90mol%であり、更に好ましくは、20~90mol%である。
【0044】
本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物におけるカチオン基(B)に結合する置換基(C)の量は特に制限されないが、ポリアルキレンオキシド含有化合物に含まれる窒素原子の総モル数に対して0~95mol%であることが好ましい。より好ましくは、0~90mol%であり、更に好ましくは、0~80mol%である。
【0045】
本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物に含まれるNH基の量は特に制限されないが、ポリアルキレンオキシド含有化合物に含まれる窒素原子の総モル数に対して0~80 mol%であることが好ましい。より好ましくは、1~50mol%であり、更に好ましくは、1~20mol%である。
上記のとおり、本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物のカチオン基中のNH基は、一般式(1)で表される置換基(A)を結合することで少なくなる。ポリアルキレンオキシド含有化合物を泥分散性、再汚染防止性能により優れたものとする点からはポリアルキレンオキシド化合物へのポリアルキレンオキシド基の導入量は多いほうが好ましく、NH基の量は少ないほうが好ましい。また上記のとおり、本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物を洗剤組成物中での保存安定性に優れたものとする点からもNH基の量は少ないほうが好ましい。
【0046】
上記ポリアルキレンオキシド含有化合物におけるカチオン基は、アミノ基を有する基である。上記アミノ基は、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、第4級アミンの形態を取りうる。本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物において、カチオン基は、アミノ基を4以上有するものである。ポリアルキレンオキシド含有化合物におけるカチオン基は、アミノ基を有する構造単位を4以上有する重合体の形態であってもよい。
【0047】
上記カチオン基(B)はアミノ基を有する構造単位として表すこともできる。
具体的には、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリエチレンポリアミン(PEA)、テトラブチレンペンタミン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアミドアミン、ポリトリエタノールアミン等の化合物から由来する構造単位が挙げられる。好ましくはエチレンイミンを開環重合して得られるポリエチレンイミンである。
【0048】
上記アミノ基を有する構造単位の原料となる前駆体は、下記一般式(5)のように表すことができる。
【0049】
【0050】
(一般式(5)中、R5は、同一又は異なって、炭素原子数2~6の直鎖アルキレン基、又は、炭素原子数3~6の分岐アルキレン基を表す。Pは、同一又は異なって、水素原子、又は、分岐による別のアミノ基を有する構造単位を表す。a及びbは、同一又は異なって、0~100の整数を表し、a及びbの少なくとも一方が1以上であって、a、b及びPに含まれる窒素原子数の合計が4以上である。)
本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物が有するカチオン基(アミノ基を有する構造単位)としては、少なくとも1つのアミノ基の窒素原子に他のアミノ基が3つ結合する形態が好ましい。
上記a及びbが1以上であって、Pにおいて分岐による別のアミノ基を有する構造単位を有する形態は、本発明の好ましい実施形態の1つである。
上記一般式(5)で表される前駆体を用いた場合、前駆体から窒素原子に結合する水素原子を除いてできる基が、本発明のポリアルキレンオキシド化合物が有するカチオン基(B)になる。
なお、上記アミノ基を有する構造単位の原料となる前駆体について、該前駆体を構成するアミノ基の構造式は、例えば、上記一般式(5)の場合について例示すると、H2N-R5-、-NH-R5-、-N(-)-R5-、が挙げられる。
上記一般式(5)で表される化合物由来の構造とは、上記一般式(5)で表される化合物において、窒素原子に結合する水素原子を1または2以上除いた構造を言う。前記ポリアルキレンオキシド含有化合物は、1分子中に、上記一般式(5)で表される化合物由来の構造を1つだけ含んでいても良く、2以上含んでいても良い。
【0051】
上記一般式(5)のPが別のアミノ基を有する構造単位である場合、該別のアミノ基を有する構造単位は、下記一般式(6)で表されるものであることが好ましく、R5’基を介して一般式(5)で表される構造に結合することが好ましい。
【0052】
【0053】
(一般式(6)中、a’、b’、P’、R5’はそれぞれ一般式(5)のa、b、P、R5と同様である。)
【0054】
上記一般式(5)や(6)で表されるアミノ基を有する構造単位の原料となる前駆体において、R5におけるアルキレン基が1種であってもよく、2種以上であってもよいが、1種であるものが好ましく、エチレン基が好ましい。なお、R5が炭素原子数3~6の分岐アルキレン基である場合には、1,2-プロピレン基が好適である。
上記一般式(5)や(6)におけるa及びbは、同一又は異なって、0~100の整数を表し、a、b及びPに含まれる窒素原子数の合計が4以上であればよいが、上記窒素原子数の合計として好ましくは、4~100であり、より好ましくは5~75であり、さらに好ましくは10~50であり、特に好ましくは12~45である。
一態様において、カチオン基に含まれる窒素原子の数が5~60であってよく、7~50である形態も本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0055】
上記1級アミン窒素原子を含むアミノ基単位は、例えば、下記式で表される。
(H2-N-R5)-
R5は一般式(5)と同じである。
場合により下記式で表される構成単位も含む。
-NH2
上記2級アミン窒素原子を含むアミノ基単位は、例えば、下記一般式(7)で表される。
【0056】
【0057】
上記3級アミン窒素原子を含むアミノ基単位は、例えば、下記一般式(8)で表される。
【0058】
【0059】
(一般式(7)、(8)におけるP、R5は、一般式(5)と同じである。)
【0060】
上記アミノ基を有する構造単位において、アミノ基単位の存在形態としては特に限定はなく、例えば、1級アミン窒素原子を含むアミノ基単位(α)、2級アミン窒素原子を含むアミノ基単位(β)及び3級アミン窒素原子を含むアミノ基単位(γ)をランダムに有してもよい。なお、アミノ基を構成する窒素原子は、4級化又は酸化されていてもよい。
【0061】
上記ポリアルキレンオキシド含有化合物のカチオン基において、上記アミノ基単位(α)、(β)、(γ)のモル比は、(α):(β):(γ)=10~80/10~80/10~80であることが好ましく、より好ましくは(α):(β):(γ)=20~50/20~50/20~50である。
【0062】
また、上記一般式(5)で表される本発明のカチオン基を有する構造単位の原料となる前駆体の1つの例としては、下記一般式(9)で表されるアミン化合物が挙げられる。
【0063】
【0064】
(一般式(9)中、R5は、同一、もしくは異なって、炭素原子数2~6の直鎖アルキレン基、又は、炭素原子数3~6の分岐アルキレン基を表す。また、rは、2~15の整数を表す。)
【0065】
本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物は、アルカリ加水分解、酵素分解、活性汚泥から選ばれる1種以上の分解方法により分解反応が起こり、分子量を低減させることができる。
本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物は、アルカリ加水分解、酵素分解、活性汚泥から選ばれる1種以上の分解方法により分解試験を行った場合に、分解試験後の数平均分子量が、分解試験前の数平均分子量に対して、0.5以下となることが好ましい。より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.2以下となることである。
分解試験後の数平均分子量が、分解試験前の数平均分子量よりも小さくなることで、本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物を、例えば、洗剤や洗剤組成物として用いた場合、洗濯後に排出された化合物による環境への負荷が低減されるため好ましい。
【0066】
本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物の重量平均分子量は、1,000~1,000,000であることが好ましい。より好ましくは1,500~200,000であり、更に好ましくは2,000~50,000である。
本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物の重量平均分子量が前述の範囲であると、優れた再汚染防止能を有しつつ、前記の分解反応により環境への負荷が低減されるため好ましい。
一態様において、上記ポリアルキレンオキシド含有化合物の重量平均分子量は、1,000~30,000であることが好ましい。より好ましくは1,500~20,000であり、更に好ましくは2,000~10,000であり、一層好ましくは2,000~6,000である。
ポリアルキレンオキシド含有化合物の重量平均分子量は、GPCにより、実施例に記載の測定条件で測定することができる。
【0067】
2.ポリアルキレンオキシド含有化合物の製造方法
本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物の製造方法(I)としては、ポリアルキレンアミンのアミノ基の水素原子に、カルボキシル基を有するポリアルキレンオキシド化合物を縮合反応させる、または、カルボン酸ハライド基を有するポリアルキレンオキシド化合物をエステル化させることで製造する方法が挙げられる。
本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物が置換基(C)として疎水性基含有基を有する場合、製造方法(I)においてカルボキシル基を有する疎水性基含有化合物及び/又はカルボン酸ハライド基を有する疎水性基含有化合物を用いることにより、カチオン基(B)に疎水性基含有基を導入することができる。
【0068】
上記製造方法(I)に用いるポリアルキレンアミンは、上述した一般式(5)で表される構造式を有する化合物である。また、上記製造方法(I)に用いるカルボキシル基を有するポリアルキレンオキシド化合物または、カルボン酸ハライド基を有するポリアルキレンオキシド化合物は、下記一般式(10);
R6-(O-R1)s-R7-CO-Q (10)
(式中、R1、sは、上記一般式(1)と同一である。また、R6は、水素原子、または、炭素数1~20の有機基を表し、R7は、直接結合、又は、炭素数1~6の有機基を表す。Qは、OH、Cl、Br又はIを表す。)で表すことができる。
上記R6として好ましくは水素原子、炭素数1~20の直鎖又は分岐アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基である。R7として好ましくは炭素数1~6のアルキレン基である。
【0069】
一般式(10)のR6の有機基としては、飽和又は不飽和の炭化水素基が好ましい。
【0070】
上記カルボキシル基を有するポリアルキレンオキシド化合物の具体的例としては、アルコキシポリアルキレングリコールと無水コハク酸、無水マレイン酸等のジカルボン酸無水物とのエステル化反応物;アルコキシポリアルキレングリコールとカルボン酸ハライドとの反応物;アルコキシポリアルキレングリコールの末端水酸基を酸化剤で酸化・カルボキシル化した化合物等が挙げられる。
【0071】
上記製造方法(I)で用いるカルボキシル基を有する疎水性基含有化合物または、カルボン酸ハライド基を有する疎水性基含有化合物は、下記一般式(11);
R4-CO-Q (11)
(一般式(11)中、R4は、上記一般式(3)と同一である。Qは、OH、Cl、Br又はIを表す。)で表すことができる。
【0072】
上記カルボキシル基を有する疎水性基含有化合物または、カルボン酸ハライド基を有する疎水性基含有化合物の具体的例としては、上述の炭素数1~30のアルキル基、アルケニル基、アリール基を有するカルボン酸やカルボン酸ハライドが挙げられる。
【0073】
上記一般式(5)で表されるポリアルキレンアミンとカルボキシル基を有するポリアルキレンオキシド化合物、及び、必要に応じてカルボキシル基を有する疎水性基含有化合物を反応させる温度は、50~200℃であることが好ましい。より好ましくは100~200℃である。反応温度や反応時間が、上述の範囲であると、ほぼ定量的に反応が進んで反応性が向上し、未反応の原料が少なくなるため、本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物の泥粒子分散能及び再汚染防止能が向上する傾向にあることから好ましい。
【0074】
また、別の製造方法(II)としては、環状ラクトン化合物、環状ラクタム化合物から選ばれる1種以上の化合物を、カチオン基(B)に含まれるアミノ基に、開環付加反応させた後、その開環付加反応させて生成した活性水素に、ポリアルキレンオキシド鎖を導入することにより、本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物を得る方法が挙げられる。
より具体的には、ポリアルキレンアミンのアミノ基の水素原子に、カプロラクトン化合物やカプロラクタム化合物を開環付加反応させることで、エステル結合やアミド結合を導入することができる。カプロラクトン化合物やカプロラクタム化合物を開環付加反応させた末端残基は水酸基またはNH2基である。この水酸基またはNH2基に酸化エチレン等のエポキシ化合物を開環付加反応させることで、本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物を製造することができる。
【0075】
上記製造方法(II)に用いるポリアルキレンアミンは、上述した一般式(5)で表される構造式を有する化合物である。
また、上記製造方法(II)に用いるラクトン化合物としては、α-ラクトン(三員環)、β-ラクトン(四員環)、γ-ラクトン(五員環)、δ-ラクトン(六員環)、ε-ラクトン(七員環)及びこれらの誘導体を用いることができる。具体的には、α-アセトラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられる。ラクタム化合物としては、α-ラクタム(三員環)、β-ラクタム(四員環)、γ-ラクタム(五員環)、δ-ラクタム(六員環)、ε-ラクタム(七員環)及びこれらの誘導体の1種又は2種以上を用いることができる。
【0076】
上記製造方法(II)に於いては、上記一般式(5)のポリアルキレンアミンへの上記ラクトン化合物及び/又はラクタム化合物の開環付加反応により、一般式(5)のアミノ基の水素原子にラクトン化合物及び/又はラクタム化合物を結合させると、ポリアルキレンアミン-ラクトン付加物及び/又はポリアルキレンアミン-ラクタム付加物が得られる。下記スキームに、その反応の一例を示す。
【0077】
【0078】
一般式(12)、一般式(13)、及び、一般式(14)中のR5、rは、上記一般式(9)と同一である。
【0079】
上記製造方法(II)において、上記一般式(5)のポリアルキレンアミンと上記ラクトン化合物及び/又はラクタム化合物との開環付加反応の反応温度は、0~100℃であることが好ましい。より好ましくは20~80℃である。
また、反応時間は、1時間以上が好ましい。
【0080】
上記製造方法(II)で中間体として得られるポリアルキレンアミン-ラクトン付加物及びポリアルキレンアミン-ラクタム付加物において、ラクトン化合物及びラクタム化合物が付加反応を行った末端残基は、水酸基となっている。この水酸基に、酸化エチレンや酸化プロピレン等のアルキレンオキシドを開環付加反応させることで、本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物を得ることができる。アルキレンオキシドを開環付加反応させる反応条件は、常法と同様である。
【0081】
また、別の製造方法(III)として、ポリアルキレンオキシド鎖を有するα,β-不飽和カルボニル化合物をカチオン基(B)に含まれるアミノ基にマイケル付加することにより、本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物を得る方法が挙げられる。
ポリアルキレンオキシド鎖を有するα,β-不飽和カルボニル化合物を、ポリアルキレンアミンにおけるアミノ基にマイケル付加する工程を含む、ポリアルキレンオキシド含有化合物の製造方法もまた、本発明の1つである。
本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物が(メタ)アクリレート化合物又は(メタ)アクリルアミド化合物由来の置換基(C)を有する場合、製造方法(III)において(メタ)アクリレート化合物又は(メタ)アクリルアミド化合物を用いることにより、カチオン基(B)に(メタ)アクリレート化合物又は(メタ)アクリルアミド化合物由来の置換基(C)を導入することができる。
【0082】
上記ポリアルキレンオキシド鎖を有するα,β-不飽和カルボニル化合物として好ましくは、(アルコキシ)ポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレート、(アルコキシ)ポリアルキレンオキシド(メタ)アクリルアミドであり、より好ましくは(アルコキシ)ポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレートである。
(アルコキシ)ポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレートの2重結合をポリアルキレンアミンのアミノ基とマイケル付加させることによりエステル結合でポリアミンと、アルキレンオキシドとを結合させた化合物を製造することができる。
【0083】
上記製造方法(III)に用いるポリアルキレンアミンとしては、上述した一般式(5)で表される構造式を有する化合物を用いることができる。
また、上記製造方法(III)に用いる(アルコキシ)ポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレート化合物、または、(アルコキシ)ポリアルキレングリコール(メタ)アクリルアミドは、下記一般式(15)で表すことができる。
【0084】
【0085】
一般式(15)中、R1、s、Tは、一般式(1)と同じである。R8は、同一もしくは異なって、水素原子またはメチル基である。Gは、O、NH又はNを表す。xは、1又は2であって、GがO又はNHのときxは1であり、GがNのときxは2である。
【0086】
上記一般式(15)は、下記一般式(16)として表すこともできる。
【0087】
【0088】
一般式(16)中、R8、G、T、xは、一般式(15)と同じである。
m1、n1は、それぞれ0~30の整数であり、m1+n1は、一般式(1)のsと同じになる。
R9、R10は、同一又は異なって、炭素数2~6の炭化水素基を表す。
【0089】
R9は炭素数2~6の炭化水素基であり、好ましくは炭素数2~4の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数2~3の炭化水素基であり、更に好ましくは炭素数2の炭化水素基である。
【0090】
R10は炭素数3~6の炭化水素基であり、好ましくは炭素数3~4の炭化水素基である。
【0091】
R8は、同一もしくは異なって、水素原子またはメチル基である。R8がメチル基である場合、本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物の耐加水分解性がより向上する。
【0092】
m1は0~30の整数であれば特に限定はなく、好ましくは1~20であり、より好ましくは1~10であり、更に好ましくは1~5である。
m1が1以上の場合、R8は水素原子であることが好ましい。
m1が1以上の場合の一般式(16)の具体例は、(アルコキシ)ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、(アルコキシ)ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコール(メタ)アクリル酸エステルなどのエステル結合部分に炭素数3以上のアルキレングリコールが結合した(メタ)アクリル酸エステルである。特に好ましくは(アルコキシ)ポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールアクリル酸エステル、(アルコキシ)ポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコールアクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールアクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコール(ポリ)ブチレングリコールアクリル酸エステルである。
m1が0の場合は、(アルコキシ)ポリエチレングリコールメタクリル酸エステル、メトキシポリエチレングリコールメタクリル酸エステルが好ましい。
m1の値が前述の範囲であると、エステル結合部分に疎水性と立体障害を付与することができ、水、メタノール、エタノール等のプロトン性溶媒中で保存した時のエステル結合の安定性を向上させることができるという点で好ましい。
【0093】
n1は0~30の整数であれば特に限定はなく、好ましくは1~25であり、より好ましくは2~20であり、更に好ましくは3~15である。
n1の値が前述の範囲であると、泥粒子の分散性、泥等に対する再汚染防止性能、及び、液体洗剤への配合安定性が向上するため好ましい。
【0094】
また、R9が炭素数2の炭化水素基である場合、上記一般式(16)中の-R10-O-基、-R9-O-基の総量を100モル%とした場合、-R9-O-基の含有量は、50mol以上であることが好ましい。より好ましくは60mol以上であり、更に好ましくは、70mol以上である。
R9が炭素数2の炭化水素基である場合に於ける上記一般式(16)中の-R9-O-基の含有量が、前述の範囲であると、ポリアルキレンオキシド鎖の親水性が向上するため、泥粒子の分散性、泥等に対する再汚染防止性能が向上するという点で好ましい。
【0095】
上記製造方法(III)に用いる(メタ)アクリレート化合物、または、(メタ)アクリルアミド化合物は、上記一般式(4);
【0096】
で表される化合物が好ましい。
【0097】
上記(メタ)アクリレート化合物として好ましくは、炭素数1~30のアルキルアルコール又は炭素数6~30のアリールアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルである。
上記炭素数1~30のアルキルアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール等が挙げられる。
炭素数6~30のアリールアルコールとしては、フェノール、ベンジルアルコール、メチルフェニルアルコール(o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール)、エチルフェニルアルコール、プロピルフェニルアルコール、ブチルフェニルアルコール、ブチルメチルフェニルアルコール、ジメチルフェニルアルコール、ジエチルフェニルアルコール、ジブチルフェニルアルコール、ヒドロキシビフェニル、4-ヒドロキシメチルビフェニル、3-ヒドロキシメチルビフェニル、4-ヒドロキシエチルビフェニル、3-ヒドロキシエチルビフェニル、ナフトール、1-ヒドロキシメチル-ナフタレン、1-ヒドロキシエチル-ナフタレン、2-ヒドロキシメチル-ナフタレン、2-ヒドロキシエチル-ナフタレン等が挙げられる。
上記アルコールの炭素数は、好ましくは1~20であり、より好ましくは1~15であり、更に好ましくは1~10であり、特に好ましくは1~8である。
【0098】
上記(メタ)アクリレート化合物として特に好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートである。
【0099】
上記製造方法(III)に於いては、上記一般式(5)のポリアルキレンアミンと上記一般式(15)、もしくは、上記一般式(16)の(アルコキシ)ポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレートをマイケル付加反応により、一般式(5)のアミノ基の水素原子に結合させると、ポリアルキレンアミン-(アルコキシ)ポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレート付加物が得られる。
【0100】
上記製造方法(III)における、上記一般式(5)のポリアルキレンアミンへの一般式(15)で表される化合物のマイケル付加反応のスキームを以下に示す。
【0101】
【0102】
また、上記製造方法(III)に於いては、上記一般式(5)のポリアルキレンアミンに、上記一般式(15)、もしくは、上記一般式(16)の(アルコキシ)ポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレート、及び、必要に応じて一般式(4)で表される化合物をマイケル付加させる反応の反応温度は、20~100℃であることが好ましい。より好ましくは25~80℃である。
また、反応時間は、1時間以上が好ましい。より好ましくは5時間以上、更に好ましくは10時間以上である。反応温度や反応時間が、上述の範囲であると、ほぼ定量的に反応が進み反応が向上するため、未反応の原料が少なくなるため好ましい。
【0103】
製造方法(III)で使用する(アルコキシ)ポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレートの製造工程において、(メタ)アクリル酸と(アルコキシ)ポリアルキレンオキシドによるエステル化の工程を含む場合、(メタ)アクリル酸が残存していてもよい。その場合、(メタ)アクリル酸と比べて、(アルコキシ)ポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレートのマイケル付加が進行しやすいため、上記一般式(5)のポリアルキレンアミンと(アルコキシ)ポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレートの反応を低温で行うことで(アルコキシ)ポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレートを優先して一般式(5)のポリアルキレンアミンに付加することができる。さらに、反応温度を上げることや反応時間を延ばすことで、(メタ)アクリル酸も一般式(5)のポリアルキレンアミンにマイケル付加させることができる。
【0104】
上記製造方法(III)に於いて、上記一般式(5)のポリアルキレンアミンと上記一般式(15)、もしくは、上記一般式(16)の(アルコキシ)ポリアルキレンオキシド(メタ)アクリレート、及び、必要に応じて一般式(4)で表される化合物を反応させる際は、無溶媒で行ってもよい。また、反応溶媒を使用して反応を行う際は、メタノール、エタノール等のアルコール類;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のアルカン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の極性溶媒類;水および水と有機溶媒との混合溶媒を用いてもよい。
【0105】
また、製造方法(III)の類似の製造方法としては、α,β-不飽和カルボニル化合物をカチオン基(B)に含まれるアミノ基にマイケル付加させた後、ポリアルキレンオキシド鎖を導入することにより、本開示のポリアルキレンオキシド含有化合物を得る方法が挙げられる。
【0106】
また、別の製造方法(IV)として、アクリルアミドの二重結合をポリアルキレンアミンのアミノ基にマイケル付加させることで、アミド結合を導入し、次に、マイケル付加反応させた末端残基であるアミノ基や水酸基に酸化エチレン等のエポキシ化合物を開環付加反応させることで、本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物を製造する方法が挙げられる。
【0107】
また、別の製造方法(V)として、アルキル(メタ)アクリレートの二重結合をポリアルキレンアミンのアミノ基にマイケル付加させることで得られたエステル含有化合物に(アルコキシ)ポリアルキレンオキシド含有末端アミン化合物をエステル-アミド交換することで、本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物を製造する方法が挙げられる。
【0108】
更に、別の製造方法(VI)として、不飽和エステル化合物の二重結合をポリアルキレンアミンのアミノ基にマイケル付加させることで得られたエステル含有化合物に、(アルコキシ)ポリアルキレングリコールを反応させてエステル交換することで、本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物を製造する方法が挙げられる。
不飽和エステル化合物をポリアルキレンアミンにマイケル付加する第一工程と、第一工程で得られた生成物の不飽和エステル化合物由来の基にポリアルキレンオキシド鎖を導入する第二工程を含む、ポリアルキレンオキシド含有化合物の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0109】
上記第一工程で用いられる不飽和エステル化合物として好ましくは、上記一般式(4)においてGが酸素原子である化合物である。
【0110】
上記第一工程における不飽和エステル化合物の使用量は特に制限されないが、ポリアルキレンアミンにおける窒素原子の総モル数100mol%に対して、80~150mol%であることが好ましい。これにより、本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物のカチオン基中のNH基量をより充分に低減することができる。不飽和エステル化合物の使用量としてより好ましくは90~140mol%であり、更に好ましくは100~130mol%である。
【0111】
上記第二工程は、上記第一工程で得られた生成物の不飽和エステル化合物由来の基の少なくとも一部にポリアルキレンオキシド鎖を導入する限り特に制限されないが、上記不飽和エステル化合物由来の基に、ポリアルキレンオキシド原料としてポリアルキレングリコール化合物を反応させてエステル交換することでポリアルキレンオキシド鎖を導入することが好ましい。この場合、不飽和エステル化合物に由来する基が、アミノ基の窒素原子に結合する、-Y-X-Z-で表される連結基となる。
【0112】
上記第二工程で用いられるポリアルキレングリコール化合物は、ポリアルキレンオキシド鎖を有し、上記不飽和エステル化合物由来の基とエステル交換反応するものであることが好ましく、より好ましくは下記一般式(17);
HO-(R1-O)s-T (17)
(一般式(17)中、R1は、同一又は異なって、炭素数2~6の炭化水素基を表す。sは、1~30の整数である。Tは、水素原子、又は、炭素数1~30の有機基を表す。)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(17)におけるR1、s、Tは、一般式(1)と同様である。
一態様において、上記一般式(17)における(R1-O)sは、一般式(3)で表される構造であることが好ましい。
【0113】
上記製造方法(VI)において、上記一般式(5)のポリアルキレンアミンのアミノ基に一般式(4)で表される化合物をマイケル付加させ、得られたエステル含有化合物に一般式(17)で表される化合物を反応させてエステル交換するスキームを以下に示す。
【0114】
【0115】
上記第二工程におけるポリアルキレングリコール化合物の使用量は、特に制限されないが、ポリアルキレンアミンにおける窒素原子の総モル数100mol%に対して、1~100mol%であることが好ましい。ポリアルキレングリコール化合物の使用量としてより好ましくは5~90mol%であり、更に好ましくは10~80mol%である。
また、上記ポリアルキレングリコール化合物の使用量は、第一工程で得られた生成物の不飽和エステル化合物由来の基100mol%に対して、1~100mol%であることが好ましい。より好ましくは5~90mol%であり、更に好ましくは10~80mol%である。
【0116】
上記製造方法(VI)におけるマイケル付加反応の反応温度、反応時間の好ましい範囲は、上記製造方法(III)と同様である。
【0117】
更に、上記製造方法(I)~(VI)は、上述した工程とは別に、カチオン基(B)に含まれる連結基が結合していない未反応のNH基に対して、マイケル付加反応、アセチル化反応、カルボン酸無水物とのアミド化反応、カルボン酸ハライドとのアミド化反応、エポキシ化合物付加反応のいずれかの1種以上の反応を行って、未反応のNH基を低減させる工程を含んでいてもよい。
より具体的には、カチオン基(B)に含まれる連結基が結合していない未反応のNH基に対して、アクリル酸メチル等のアクリル酸アルキルエステルをマイケル付加させる、又は、無水酢酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等のカルボン酸無水物、酢酸クロライド、プロピオン酸クロライド等のカルボン酸ハライドとのアミド化反応をさせる、又はエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のエポキシ化合物を付加させることにより、未反応のNH基を減少させることができる。
未反応のNH基は、ポリアルキレンオキシド含有化合物の総NHに対して80mol以下、好ましくは50mol%以下、さらに好ましくは20mol%以下とすることが、泥分散性、再汚染防止性能、保存安定性向上の観点から好ましい。
【0118】
上述した製造方法は更に、NH基を低減させる別の方法として、酸化合物により、中和する工程を含んでいてもよい。
より具体的には、カチオン基(B)に含まれる連結基が結合していない未反応のNH基を、酸化合物である、酢酸、クエン酸、塩酸、リン酸、硝酸、硫酸、p-トルエンスルホン酸やその他一般的な酸化合物で、中和処理することで、NH基を低減することが好ましい。
未反応のNH基はポリアルキレンオキシド含有化合物の総NHに対して80mol以下、好ましくは50mol%以下、さらに好ましくは20mol%以下とすることが、泥分散性、再汚染防止性能、保存安定性向上の観点から好ましい。
また、酸化合物の添加量は、酸化合物を添加する前のカチオン基(B)に含まれるNH基に対して50~300mol%使用することが好ましい。
【0119】
3.ポリアルキレンオキシド含有化合物の用途
本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物(単に「本発明の化合物」とも言う)は、洗剤用ビルダー、洗剤、水処理剤、分散剤、繊維処理剤、スケール防止剤(スケール抑制剤)、セメント添加剤、金属イオン封止剤、増粘剤、各種バインダー等に好適に用いることができる。中でも、洗剤用ビルダー、洗剤、水処理剤、分散剤に好適に用いることができる。
【0120】
本発明は更に、本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物、又は、本発明の製造方法により製造されてなるポリアルキレンオキシド含有化合物を必須成分とする洗剤用ビルダー、洗剤、洗剤組成物、水処理剤又は分散剤でもある。
本発明の洗剤、洗剤組成物は、固形であっても、液体であってもよい。また食器用のものであっても、洗濯用のものであってもよい。
【0121】
本発明の洗剤、洗剤組成物における、本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物の含有割合は、洗剤又は洗浄組成物の総量に対して、0.1質量%~15質量%であることが好ましい。より好ましくは0.3質量%~10質量%、更に好ましくは、0.5質量%~5質量%である。
【0122】
本発明の洗剤、洗剤組成物は、本発明のポリアルキレンオキシド含有化合物以外に溶剤、界面活性剤、洗浄補助添加剤、カプセル化剤等のその他の成分の1種又は2種以上を含んでいてもよい。
洗浄補助添加剤としては、ビルダー、界面活性剤又は増粘剤、泥汚れ除去/再付着防止剤、ポリマー汚れ遊離剤、ポリマー分散剤、ポリマー油脂クリーニング剤、酵素、酵素安定化系、漂白化合物、漂白剤、漂白活性剤、漂白触媒、増白剤、染料、色相剤、移染防止剤、キレート剤、抑泡剤、柔軟剤、香料等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【実施例0123】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0124】
<ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)の測定条件>
装置:東ソー社製 EcoSEC HLC-8320GPC
検出器:示差屈折率計(RI)検出器
カラム:東ソー社製 TSKgel α-M、α-2500
カラム温度:40℃
流速:0.8mL/min
注入量:100μL
検量線:ジーエルサイエンス社製 ポリエチレングリコール、Mw=194、410、615、1020、1450、3860、8160、16100、21160、49930、67600、96100、205500、542500、942000、検量線の次数は3次である。
GPCソフト:東ソー社製 EcoSEC-WS
溶離液:0.5M酢酸+0.2M硝酸Na/アセトニトリル=50/50(v/v)
【0125】
<製造例1>
温度計、圧力計、撹拌機を備えたオートクレーブにメトキシポリ(n=10)エチレングリコール(日本触媒製)を612.9g、水酸化カリウムを0.64g(富士フイルム和光純薬製)仕込み、撹拌しながら120℃に昇温した。オートクレーブ系内を窒素置換したのち、真空ポンプを用いて1.2kPaに減圧して1時間脱水した。脱水終了後、オートクレーブ内を窒素で0.3MPaとし、1,2-ブチレンオキシド187.1g(東京化成工業製)を100分間かけて徐々に流し込み、さらに120℃で60分間保持し熟成したのち、系内を常圧に戻した。さらに、系内を60℃にした状態でコールドトラップおよび真空ポンプを接続し、未反応ブチレンオキシドを減圧留去した。残留した生成物を回収し、メトキシポリ(n=10)エチレングリコール-ポリ(n=2)ブチレングリコール(化合物(1))を得た。
【0126】
<実施例1>
窒素導入管、還流冷却器、撹拌機を備えたガラス製反応容器にポリエチレンイミン(日本触媒製SP-006、平均分子量600、窒素原子数14)30.10g、メタノール(富士フイルム和光純薬製)90.36gを仕込み、反応容器内を窒素置換した。その後、25℃で撹拌しながらアクリル酸メチル(日本触媒製)60.20gを30分間かけて滴下し、18時間反応を継続した。液体クロマトグラフィーによりアクリル酸メチルがすべて消費されていることを確認し、反応溶液をナスフラスコに回収した。ロータリーエバポレーターを用いて反応溶液からメタノールを減圧留去し、ポリエチレンイミンのアクリル酸メチル付加物(中間体(1))を得た。
続いて、温度計、スターラーチップ、窒素導入管を備えたガラス製反応容器に化合物(1)11.95g、カリウム-tert-ブトキシド(富士フイルム和光純薬製)1.09gを仕込み、系内に窒素を流し込みながら120℃にて1時間撹拌した。その後、中間体(1)5.00gを系内に滴下し、120℃で12時間撹拌することでエステル交換反応を行った。液体クロマトグラフィーにより、化合物(1)が反応していることを確認し、ポリエチレンイミンのメトキシポリ(n=10)エチレングリコール-ポリ(n=2)ブチレングリコールアクリレート付加物(重合体(1))を得た。重合体(1)の分子量は4200であった。重合体(1)における置換基(A):置換基(C)としてのアクリル酸メチル基:カチオン基(B)における第1級及び第2級アミノ基:のモル比は7:3:0であった。
【0127】
<実施例2>
還流冷却器、撹拌機を備えたガラス製反応容器にポリエチレンイミン1.2g(日本触媒製SP-006、平均分子量600、窒素原子数14)、メトキシポリ(n=9)エチレングリコールアクリレート(新中村化学製NKエステルAM-90G)6.76gを仕込み、反応容器内を窒素置換した。その後、撹拌しながら60℃に昇温し、5時間反応を継続した。反応終了後、液体クロマトグラフィーによりアクリレートが消費されていることを確認し、ポリエチレンイミンのメトキシポリ(n=9)エチレングリコールアクリレート付加物(重合体(2))を得た。重合体(2)の分子量は3900であった。重合体(2)における置換基(A):カチオン基(B)における第1級及び第2級アミノ基:のモル比は1:1であった。
【0128】
<実施例3>
還流冷却器、撹拌機を備えたガラス製反応容器にポリエチレンイミン1.0g(日本触媒製SP-006、平均分子量600、窒素原子数14)、メトキシポリ(n=13)エチレングリコールアクリレート(新中村化学製NKエステルAM-130G)7.69gを仕込み、反応容器内を窒素置換した。その後、撹拌しながら60℃に昇温し、5時間反応を継続した。反応終了後、液体クロマトグラフィーによりアクリレートが消費されていることを確認し、ポリエチレンイミンのメトキシポリ(n=13)エチレングリコールアクリレート付加物(重合体(3))を得た。重合体(3)の分子量は5200であった。重合体(3)における置換基(A):カチオン基(B)における第1級及び第2級アミノ基:のモル比は1:1であった。
【0129】
<比較例1>
還流冷却器、撹拌機、窒素導入管を備えたガラス製反応容器に純水77.38g、2-アミノエタンチオール塩酸塩10.79g(東京化成工業製)、アリルアルコールのエチレンオキシド20モル付加物89.21gを仕込み、40℃に昇温して溶解したのち、系内を30分間窒素置換した。続いて40℃に保持して撹拌しながら、過硫酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬製)の10%水溶液22.62gを22.6分間かけて滴下し、2時間加熱撹拌した。液体クロマトグラフィーにより反応の進行を確認して加熱を停止し、ロータリーエバポレーターを用いて水を減圧留去して、比較用重合体(1)とした。
【0130】
実施例1~3で製造した重合体(1)~(3)、比較例1の比較用重合体(1)について、以下の方法により酵素分解試験と再汚染防止能試験を行った。結果を表1に示す。
【0131】
<酵素分解試験>
得られた重合体について、加水分解酵素による酵素分解性評価を行った。
0.1M リン酸緩衝溶液(pH=7)の作成:
リン酸二水素ナトリウム二水和物(富士フイルム和光純薬)7.80gとリン酸一水素ナトリウム十二水和物(富士フイルム和光純薬)17.91gに純水999.12gを加え、0.1M リン酸緩衝溶液を調製した。
酵素分解試験:
ガラス製スクリューキャップバイアルに重合体(1)~(3)、比較用重合体(1)を0.10g仕込み、リン酸緩衝溶液5.0gで希釈した。次いで、希釈溶液にリパーゼAYSアマノ(Candida rugosa由来)(天野エンザイム製)を0.05g仕込み重合体水溶液を得た。この水溶液をGPC溶離液で1.0%としGPCの測定を行った。その後、キャップをして37℃の恒温槽で24時間振とうした後、再びGPCの測定を行った。GPCチャートにおいて16.0min~19.2minのピークを重合体のピークとし、37℃における振盪前後の重合体由来のピーク面積の減少率をポリマー分解率として以下の数式により算出し、酵素分解試験とした。
分解率(%)=(試験前の重合体由来のピーク面積-試験後の重合体由来のピーク面積)/(試験前の重合体由来のピーク面積)×100
【0132】
<再汚染防止能の測定>
下記の洗浄工程、すすぎ工程、乾燥工程をこの順序で行う洗濯処理を行い、布への再汚染防止能を測定した。
洗浄工程:
被洗物として、下記の綿布2種類を用いた。
綿布(1):再汚染判定布として綿メリヤス(谷頭商店製)5cm×5cmを5枚用意した。
綿布(2):Testfabrics社より入手した綿布を綿布(1)と合わせて30gになるように用意した。
界面活性剤として、3%LAS水溶液と、さらに実施例により得られたポリアルキレンオキシド含有化合物について、0.1質量%水溶液を用意した。
Tergot-o-meter(大栄科学社製、製品名:TM-4)用の1Lポットに、25℃の純水を876g入れたのち1.5質量%の炭酸水素ナトリウム水溶液を4.5g入れて撹拌した。その後、3000°DH硬水(塩化カルシウム及び塩化マグネシウムで調製。Ca/Mg=3(質量比))を4.5g加え、さらに、3%LAS水溶液7.5g、上記ポリアルキレンオキシド含有化合物である重合体(1)~(3)の0.1%水溶液を7.5g入れて撹拌した。その後、並漉赤土を0.9g加え撹拌したのち、綿布(1)及び(2)を投入し、撹拌速度120rpm、25℃で15分間洗浄を行った。
すすぎ工程:
洗浄工程後の被洗物を、1.5分間脱水した後、25℃の15°DH硬水900mLを入れ、120rpm、25℃で3分間すすいだ。この操作(脱水およびすすぎ)を2回繰り返した。
乾燥工程:
すすぎ工程後の被洗物を1.5分間脱水した後、綿布(1)のみ取り出し、綿布で挟み、アイロンで乾燥した。
上記洗濯処理を行った綿布(1)及び洗濯処理前の綿布(1)について、反射率計(分光式色差計、日本電色工業株式会社製、製品名:SE6000)を用い、反射率(Z値)を測定し、下記式より再汚染防止率を求めた。
再汚染防止率=(洗濯処理を行った後の綿布(1)のZ値)/(洗濯処理前の綿布(1)のZ値)×100
【0133】