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  • 特開-ギ酸の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115392
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】ギ酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/00 20060101AFI20240819BHJP
   C07C 53/02 20060101ALI20240819BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240819BHJP
【FI】
C07C51/00
C07C53/02
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021063
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】本倉 健
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 ゆりの
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC46
4H006BA51
4H006BA61
4H006BB22
4H006BB24
4H006BC10
4H006BE41
4H039CA65
(57)【要約】
【課題】良好な収率で二酸化炭素からギ酸を合成することが可能な、新規なギ酸の製造方法を提供する。
【解決手段】表面の一部が酸化したシリコン粉末を還元剤とし、フッ化テトラブチルアンモニウムを触媒として二酸化炭素を還元する工程を含む、ギ酸の製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の一部が酸化したシリコン粉末を還元剤とし、フッ化テトラブチルアンモニウムを触媒として二酸化炭素を還元する工程を含む、ギ酸の製造方法。
【請求項2】
前記シリコン粉末は、廃棄された太陽光パネルから回収したシリコンウエハから得られたシリコン粉末である、請求項1に記載のギ酸の製造方法。
【請求項3】
前記シリコン粉末は、表面の50%以上が酸化したシリコン粉末である、請求項1に記載のギ酸の製造方法。
【請求項4】
90~200℃の温度範囲にて、1~10atmの二酸化炭素圧力下で二酸化炭素の還元反応を行う、請求項1に記載のギ酸の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギ酸の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2050年カーボンニュートラルへ向けて、二酸化炭素(CO2)の排出削減・有効活用は喫緊の課題である。このため、二酸化炭素を原料としてギ酸を製造することは上記課題において重要な開発テーマである。
【0003】
ギ酸は防腐剤や殺菌剤として使用され、さらには還元することで工業基幹原料として様々な化学品の原料となるメタノールが得られるため、非常に重要な有機化合物である。二酸化炭素をギ酸へ変えるには、触媒と還元剤を利用する必要がある。
【0004】
従来、二酸化炭素を還元する方法として、シリコンを還元剤として用いる方法が知られている。非特許文献1には、独自に調製したシリコンナノ粒子による二酸化炭素の還元反応により一酸化炭素を製造する方法が開示されている。当該方法では、化学量論量のHF(3700%)と光を使用している。
【0005】
非特許文献2には、独自に調製したシリコンナノ粒子による二酸化炭素の還元反応によりメタノールを製造する方法が開示されている。当該方法では、化学量論量のHF(220%)を使用している。
【0006】
非特許文献3には、新品のシリコンウエハを粉砕して作成したシリコン粉末を用いて二酸化炭素の還元反応を実施し、ギ酸を合成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】A. Ozin et al. Nat. Commun. 2016, 7, 125
【非特許文献2】M. Dasog et al. Chem. Commun. 2017, 53, 3114
【非特許文献3】K. Motokura et al. Energy Adv. 2022, 1, 385-390
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1及び2に記載の技術は、シリコンを還元剤として二酸化炭素を還元する方法に係るが、製造物が一酸化炭素またはメタノールであり、さらに毒性のあるHFを添加している。
非特許文献3に記載の技術は、新品のシリコンウエハを粉砕して作成したシリコン粉末を還元剤として二酸化炭素を還元しているが、収率の改善など未だ開発の余地がある。
【0009】
本発明は、このような問題を解決すべく、良好な収率で二酸化炭素からギ酸を合成することが可能な、新規なギ酸の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下のように特定される本発明によって解決される。
(1)表面の一部が酸化したシリコン粉末を還元剤とし、フッ化テトラブチルアンモニウムを触媒として二酸化炭素を還元する工程を含む、ギ酸の製造方法。
(2)前記シリコン粉末は、廃棄された太陽光パネルから回収したシリコンウエハから得られたシリコン粉末である、前記(1)に記載のギ酸の製造方法。
(3)前記シリコン粉末は、表面の50%以上が酸化したシリコン粉末である、前記(1)に記載のギ酸の製造方法。
(4)90~200℃の温度範囲にて、1~10atmの二酸化炭素圧力下で二酸化炭素の還元反応を行う、前記(1)に記載のギ酸の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、良好な収率で二酸化炭素からギ酸を合成することが可能な、新規なギ酸の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実験例1に係るXPSスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0014】
<ギ酸の製造方法>
本発明の実施形態に係るギ酸の製造方法は、表面の一部が酸化したシリコン粉末を還元剤とし、フッ化テトラブチルアンモニウムを触媒として二酸化炭素を還元する工程を含む。当該工程では、二酸化炭素(CO2)と、水(H2O)とを原料とし、表面の一部が酸化したシリコン粉末を還元剤として、また、フッ化テトラブチルアンモニウムを触媒として反応させることで、二酸化炭素を還元する。
【0015】
シリコン粉末の純度は、特に限定されないが、ギ酸の収率向上の観点からは高いほうが好ましい。シリコン粉末の純度は2N(99.0%以上)であるのが好ましく、3N(99.00%以上)であるのがより好ましく、4N(99.000%以上)であるのが更により好ましい。
【0016】
シリコン粉末の粒径は、特に限定されないが、300μm以下であってもよい。また、シリコン粉末の粒径が20μm以下であると、比表面積の増大による反応性向上効果が生じるため好ましい。
【0017】
シリコン粉末としては、特に限定されず、高純度シリコン原料、耐火物、セラミックスなどに使用される一般的なシリコン粉末であってもよい。
【0018】
シリコン粉末は表面の一部が酸化している。シリコン粉末は表面の一部が酸化することで、表面近傍のシリコンの結晶性の低下が生じ、これによって二酸化炭素の還元効果が向上する。
【0019】
シリコン粉末は、廃棄された太陽光パネルから回収したシリコンウエハから得られたシリコン粉末であるのが好ましい。廃棄された太陽光パネルは、通常、その部品として使用されたシリコンウエハのシリコンの表面が部分的に酸化している。このため、廃棄された太陽光パネルから回収したシリコンウエハを解砕してシリコン粉末を作製することで、表面の一部が酸化したシリコン粉末を作製することができる。
なお、シリコンウエハは金属Siに微量のB、P、Sbなどの添加元素(ドーパント)を添加して製造されており、一般的に添加元素の成分が非常に微量であるため、二酸化炭素の還元反応に影響を及ぼすものではない。
【0020】
太陽光パネルのリサイクルに関しては、太陽光パネルに含まれるガラスやアルミ等の金属はリサイクル方法が開発されているが、シリコンのリサイクルは実施されておらず、廃棄されていた。これに対し、本発明の実施形態のように、廃棄された太陽光パネルから回収したシリコンウエハから得られたシリコン粉末をギ酸の合成反応の還元剤として使用することで、太陽光パネルの有価値リサイクルになり、太陽光パネルの処理コストも削減することができる。シリコンは、一般に、大量の電力を用いて硅石を還元することで生産されている。本発明の実施形態のように、最終的にシリコンを還元剤として用いることで製造の際に投入されたエネルギーを回収することができる。これらは、太陽光パネルの製造・リサイクル問題の解決につながり、再生可能エネルギーの普及を加速させるため、社会にとっても非常に有益となる。
【0021】
シリコン粉末は、表面の50%以上が酸化したシリコン粉末であるのが好ましい。表面の50%以上が酸化したシリコン粉末を使用することで、より二酸化炭素の還元効果が向上し、ギ酸の収率が向上する。シリコン粉末の表面の酸化の割合の上限としては特に限定されないが、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下であってもよい。
【0022】
シリコン粉末を還元剤として二酸化炭素を還元する反応において、これらをそのまま混合させただけでは反応が遅いという問題があるため、触媒を介在させて反応速度を加速させる必要がある。このような観点から、本発明の実施形態では、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF:Tetrabutylammonium fluoride)を触媒として二酸化炭素を還元する。TBAFは、そのフッ化物イオンがSi原子と反応することで金属Si表面が活性化される。これにより還元効果が向上し、二酸化炭素の還元反応を加速させることができる。
【0023】
従来、ギ酸はコークス等から製造される一酸化炭素を原料として合成されており、いずれも化石資源が必要であった。これに対し、本発明の実施形態では、ギ酸合成の原料として化石資源ではなく二酸化炭素を用いている。このため、省資源に貢献することができる。また、二酸化炭素としては空気中の二酸化炭素を用いてもよいが、特に工場等から排出される二酸化炭素を利用することで、二酸化炭素排出量の削減にも貢献することができる。
【0024】
ギ酸の合成反応の条件としては、90~200℃の温度範囲にて、1~10atmの二酸化炭素圧力下で二酸化炭素の還元反応を行うことが好ましい。本発明の実施形態のようにシリコン粉末を還元剤とする二酸化炭素の還元反応は、反応に大きな熱を必要としないことから、反応中の過熱を最小限にとどめることができる。このため、ギ酸合成プロセスの省エネルギー化が可能となる。
また、ギ酸の合成反応において、90~200℃の温度範囲での加熱時間は2~24時間であるのが好ましい。
【0025】
ギ酸の合成反応における二酸化炭素圧力の好ましい範囲は、1~10atmである。ここで、二酸化炭素圧力が高いとギ酸の生成量が増加する傾向となるが、ギ酸の収率は低下する傾向となる。
【0026】
ギ酸の合成反応の反応液中には、ギ酸の原料となる二酸化炭素と水、還元剤としての表面の一部が酸化したシリコン粉末、及び、触媒としてのフッ化テトラブチルアンモニウムの他に、溶媒として有機溶媒を添加する。有機溶媒としては特に限定されないが、ジメチルスルホキシド(DMSO:Dimethyl sulfoxide)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP:N-methyl pyrrolidone)等を用いることができる。
【0027】
ギ酸の合成反応の反応液における上述の各添加原料の割合については、ギ酸の収率や製造効率などによって適宜設計することができるが、例えば、表面の一部が酸化したシリコン粉末を1.0~5.0mmol(Siのモル数を示す。シリコン粉末の組成について、特に断りがない限り以下同様)、有機溶媒を1~10mL、水を4.0~20.0mmol、TBAFを0.1~1.0mmolで調製することが好ましい。
【0028】
本発明の実施形態で得られたギ酸をさらに還元して、メタノールを製造することができる。従来、メタノールは天然ガスや石炭ガスを原料にして合成されており、化石資源が必要であった。これに対し、原料が二酸化炭素である本発明の実施形態で得られたギ酸を還元することで、化石資源を使用することなくメタノールを製造することができ、省資源に貢献することができる。
【実施例0029】
以下に本発明を実施例でさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0030】
・実験例1
廃棄された太陽光パネルから回収したシリコンウエハを解砕してシリコン粉末を準備した。
当該シリコン粉末について、表面の酸化状態を確認するために、走査型X線光電子分光分析装置(XPS)によるXPS測定を実施した。測定結果であるXPSスペクトルを図1に示す。
XPS測定の結果、98eV付近のSi(0)のピークと、103eV付近のSi(+4)のピークの両方が観測された。これにより、シリコンの大部分はSi(0)で構成されているが、この粉末の表面付近にはSi(+4)が多く存在していることが分かった。具体的には、この例では、シリコン粉末の表面の57%程度が酸化されていることが確認できた。
【0031】
・実験例2
実験例1のシリコン粉末を用いて、以下の実施例1~11に示すように、ギ酸の合成反応を行った。
<実施例1>
実験例1のシリコン粉末(2.0mmol)、NMP溶媒(2mL)、蒸留水(H2O;4.0mmol)、TBAF触媒(0.70mmol)をステンレス製のオートクレーヴ(内容積20mL程度)に加え、内部の気体を二酸化炭素(5atm)で置換したのち、120℃で5時間加熱した。反応終了後、生成したギ酸を1H NMRによって定量したところ、1.13mmolのギ酸の生成が確認された。この量は投入した二酸化炭素の19%(収率19%)であった。
【0032】
<実施例2>
実験例1のシリコン粉末(2.0mmol)、NMP溶媒(2mL)、蒸留水(H2O;4.0mmol)、TBAF触媒(0.70mmol)をステンレス製のオートクレーヴ(内容積20mL程度)に加え、内部の気体を二酸化炭素(9atm)で置換したのち、120℃で5時間加熱した。反応終了後、生成したギ酸を1H NMRによって定量したところ、1.32mmolのギ酸の生成が確認された。この量は投入した二酸化炭素の13%(収率13%)であった。
【0033】
<実施例3>
実験例1のシリコン粉末(2.0mmol)、NMP溶媒(2mL)、蒸留水(H2O;4.0mmol)、TBAF触媒(0.70mmol)をステンレス製のオートクレーヴ(内容積20mL程度)に加え、内部の気体を二酸化炭素(9atm)で置換したのち、100℃で5時間加熱した。反応終了後、生成したギ酸を1H NMRによって定量したところ、1.25mmolのギ酸の生成が確認された。この量は投入した二酸化炭素の12%(収率12%)であった。
【0034】
<実施例4>
実験例1のシリコン粉末(2.0mmol)、NMP溶媒(2mL)、蒸留水(H2O;4.0mmol)、TBAF触媒(0.70mmol)をステンレス製のオートクレーヴ(内容積20mL程度)に加え、内部の気体を二酸化炭素(9atm)で置換したのち、150℃で5時間加熱した。反応終了後、生成したギ酸を1H NMRによって定量したところ、1.00mmolのギ酸の生成が確認された。この量は投入した二酸化炭素の10%(収率10%)であった。
【0035】
<実施例5>
実験例1のシリコン粉末(2.0mmol)、NMP溶媒(2mL)、蒸留水(H2O;4.0mmol)、TBAF触媒(0.70mmol)をステンレス製のオートクレーヴ(内容積20mL程度)に加え、内部の気体を二酸化炭素(9atm)で置換したのち、170℃で5時間加熱した。反応終了後、生成したギ酸を1H NMRによって定量したところ、0.67mmolのギ酸の生成が確認された。この量は投入した二酸化炭素の7%(収率7%)であった。
【0036】
<実施例6>
実験例1のシリコン粉末(5.0mmol)、NMP溶媒(2mL)、蒸留水(H2O;10.0mmol)、TBAF触媒(0.70mmol)をステンレス製のオートクレーヴ(内容積20mL程度)に加え、内部の気体を二酸化炭素(1atm)で置換したのち、95℃で5時間加熱した。反応終了後、生成したギ酸を1H NMRによって定量したところ、0.68mmolのギ酸の生成が確認された。この量は投入した二酸化炭素の58%(収率58%)であった。
【0037】
<実施例7>
実験例1のシリコン粉末(5.0mmol)、NMP溶媒(2mL)、蒸留水(H2O;10.0mmol)、TBAF触媒(0.70mmol)をステンレス製のオートクレーヴ(内容積20mL程度)に加え、内部の気体を二酸化炭素(1atm)で置換したのち、95℃で24時間加熱した。反応終了後、生成したギ酸を1H NMRによって定量したところ、0.84mmolのギ酸の生成が確認された。この量は投入した二酸化炭素の72%(収率72%)であった。
【0038】
<実施例8>
実験例1のシリコン粉末(5.0mmol)、NMP溶媒(2mL)、蒸留水(H2O;10.0mmol)、TBAF触媒(0.70mmol)をステンレス製のオートクレーヴ(内容積20mL程度)に加え、内部の気体を二酸化炭素(1atm)で置換したのち、160℃で9時間加熱した。反応終了後、生成したギ酸を1H NMRによって定量したところ、0.86mmolのギ酸の生成が確認された。この量は投入した二酸化炭素の74%(収率74%)であった。
【0039】
<実施例9>
実験例1のシリコン粉末(5.0mmol)、DMSO溶媒(2mL)、蒸留水(H2O;10.0mmol)、TBAF触媒(0.85mmol)をガラス製反応容器(内容積20mL程度)に加え、内部の気体を、バルーンを用いて二酸化炭素(1atm)で置換したのち、95℃で24時間加熱した。反応終了後、生成したギ酸を1H NMRによって定量したところ、0.60mmolのギ酸の生成が確認された。
【0040】
<実施例10>
実験例1のシリコン粉末(5.0mmol)、DMSO溶媒(2mL)、蒸留水(H2O;10.0mmol)、TBAF触媒(0.50mmol)をガラス製反応容器(内容積20mL程度)に加え、内部の気体を、バルーンを用いて二酸化炭素(1atm)で置換したのち、95℃で24時間加熱した。反応終了後、生成したギ酸を1H NMRによって定量したところ、0.43mmolのギ酸の生成が確認された。
【0041】
<実施例11>
実験例1のシリコン粉末(5.0mmol)、DMSO溶媒(2mL)、蒸留水(H2O;10.0mmol)、TBAF触媒(0.30mmol)をガラス製反応容器(内容積20mL程度)に加え、内部の気体を、バルーンを用いて二酸化炭素(1atm)で置換したのち、95℃で24時間加熱した。反応終了後、生成したギ酸を1H NMRによって定量したところ、0.23mmolのギ酸の生成が確認された。
【0042】
・実験例3
実験例1のシリコン粉末(5.0mmol)、DMSO溶媒(2mL)、蒸留水(H2O;10.0mmol)、TBAF触媒(0.85mmol)をガラス製反応容器(内容積20mL程度)に加え、内部の気体を、バルーンを用いて安定同位体13Cで置換された二酸化炭素(13CO2;1atm)で置換したのち、95℃で24時間加熱した。反応終了後、生成したギ酸を1H NMRによって測定したところ、J1H-13C=184Hzで分裂したダブレットの信号が8.7ppmに確認され、同位体で置換されたギ酸の生成が確認された。
このため、生成したギ酸が、原料として使用した二酸化炭素由来のものであることが分かった。
図1