(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115394
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】太陽光発電・蓄電システム、発電方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/35 20060101AFI20240819BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
H02J7/35 K
H02J7/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021069
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】322013937
【氏名又は名称】エナジーウィズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 洋生
(72)【発明者】
【氏名】原 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】小島 亮
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA08
5G503CA11
5G503CC02
5G503EA05
5G503GB06
(57)【要約】
【課題】本開示は、蓄電池の充電電圧に起因する太陽電池の発電効率の低下を抑制した太陽光発電・蓄電システム及び発電方法の提供を目的とする。
【解決手段】太陽光発電・蓄電システム10は、太陽電池30と、太陽電池30と電気的に直結され、最大充電電圧Vmcが太陽電池30における最大出力動作電圧Vpm以下とされた蓄電池20と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池と、
前記太陽電池と電気的に直結され、最大充電電圧が前記太陽電池における最大出力動作電圧以下である蓄電池と、
を備えた、太陽光発電・蓄電システム。
【請求項2】
前記太陽電池から前記蓄電池までの電気抵抗値及び前記蓄電池における内部抵抗値の合計値をAとし、
前記太陽電池において出力電力が最大となる場合の電圧値を、前記太陽電池において出力電力が最大となる場合の電流値で除して得られた値をBとした場合に、
下記式(I)を満たす、請求項1に記載の太陽光発電・蓄電システム。
A/B≦0.3・・・(I)
【請求項3】
太陽電池と、
最大充電電圧が前記太陽電池における最大出力動作電圧以下とされた蓄電池と、
を電気的に直結した状態で発電する、発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、太陽光発電・蓄電システム、発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、太陽光パネルと、前記太陽光パネルに直結された蓄電池と、を備え、前記蓄電池の最大充電電圧は、前記太陽光パネルの最大出力動作電圧より10%大きな値以下である太陽光発電・蓄電ユニットおよび太陽光発電・蓄電システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
開示者らは、特許文献1に記載の構成では、太陽光パネルの動作点電圧が蓄電池の電圧に依存するため、蓄電池の電圧が最大出力動作電圧より大きい場合に太陽電池の発電効率が低下することを知見した。
【0005】
本開示は、蓄電池の充電電圧に起因する太陽電池の発電効率の低下を抑制した太陽光発電・蓄電システム及び発電方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様の太陽光発電・蓄電システムは、太陽電池と、前記太陽電池と電気的に直結され、最大充電電圧が前記太陽電池における最大出力動作電圧以下とされた蓄電池と、を備える。
【0007】
この態様に係る太陽光発電・蓄電システムによれば、太陽電池と電気的に直結されている蓄電池の最大充電電圧は、太陽電池における最大出力動作電圧以下とされている。このため、蓄電池の充電電圧が上昇して、太陽電池の発電効率が低下することを抑制することができる。
【0008】
第二態様の太陽光発電・蓄電システムは、第一態様の太陽光発電・蓄電システムにおいて、前記太陽電池から前記蓄電池までの電気抵抗値及び前記蓄電池における内部抵抗値の合計値をAとし、前記太陽電池において出力電力が最大となる場合の電圧値を、前記太陽電池において出力電力が最大となる場合の電流値で除して得られた値をBとした場合に、下記式(I)を満たす。
A/B≦0.3・・・(I)
【0009】
この態様に係る太陽光発電・蓄電システムは、A/B≦0.3とされている。このため、この態様に係る太陽光発電・蓄電システムは、A/Bが0.3を超える場合と比べて、太陽電池における発電効率の低下を抑制することができる
【0010】
第三態様の発電方法は、太陽電池と、最大充電電圧が太陽電池における最大出力動作電圧以下とされた蓄電池と、を前記太陽電池と前記蓄電池とが電気的に直結した状態で発電する。
【0011】
この態様に係る発電方法によれば、太陽電池と電気的に直結されている蓄電池の最大充電電圧は、太陽電池における最大出力動作電圧以下とされている。このためこの発電方法によれば、蓄電池の充電電圧が上昇して、太陽電池の発電効率が低下することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、蓄電池の充電電圧に起因する太陽電池の発電効率の低下を抑制した太陽光発電・蓄電システム、発電方法及び発電・蓄電方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示に係る太陽光発電・蓄電システムを説明する模式図である。
【
図2】本開示に係る太陽光発電・蓄電システムの等価回路図である。
【
図3】本開示に係る太陽電池が出力する電流及び電圧の関係を説明する図である。
【
図4】本開示に係る太陽光発電・蓄電システムにおいて、蓄電池の最大充電電圧と太陽電池の出力との関係を示す図である。
【
図5】本開示に係る太陽光発電・蓄電システムにおいて、太陽電池を除いた部分の電気抵抗を変化させた場合において、電気抵抗の比率と最大出力電流との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において、同一又は等価な構成要素及び部品には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0015】
(構成)
図1は、本開示に係る太陽光発電・蓄電システム10を示す図である。
図1に示されるように、太陽光発電・蓄電システム10は、太陽電池30と、蓄電池20とを備えており、太陽電池30と、蓄電池20とが電線42を介して電気的に接続されている。
【0016】
太陽電池30は、日光が照射した場合に起電力が発生する複数のセルを有するパネルである。
【0017】
蓄電池20は、太陽電池30から出力された電力を蓄える(蓄電する)二次電池である。この蓄電池20は、充電及び放電を繰り返し可能とされていればどのような二次電池でもよい。
【0018】
太陽電池30と蓄電池20は、正極の側でスイッチ40を介して電線42によって接続される。また、太陽電池30から見て蓄電池20と、
図1における矢印の先に設けられる図示しない電力機器とが、並列に接続される。スイッチ40は、
図1に示されるように、一例として太陽電池30、蓄電池20、及び電力機器へ接続される電線42のそれぞれに設けられている。各スイッチ40の開閉により、太陽電池30、蓄電池20、及び電力機器の電気的接続が切り替えられる。
【0019】
また、
図1に示されるように、本開示に係る太陽光発電・蓄電システム10は、太陽電池30と、蓄電池20とが電気的に直結されている。なお、本開示における「電気的に直結されている」とは、本開示における太陽電池30と、蓄電池20との間に、いわゆるパワーコンディショナ等の太陽電池30から出力される電流及び電圧を制御する制御回路を有していない状態を指す。すなわち、本開示における「電気的に直結されている」とは、電流及び電圧を制御する制御回路を有さなければ、太陽電池30と蓄電池20との間に抵抗器、コンデンサ、インダクタ等の受動素子、及び継電器、断路器、IC等の能動素子が挿入されていてもよい。また、本開示における「電気的に直結されている」とは、電流及び電圧を制御する制御回路を有さなければ、太陽電池30と蓄電池20との間に、電流計、電圧計等の計測機器が挿入されていてもよい。また、太陽電池30と蓄電池20とを接続する電線42に設けられているスイッチ40が開いている状態も太陽電池30と、蓄電池20とが電気的に直結されている状態に含まれる。
【0020】
なお、
図1では、一例として一つのパネルである太陽電池30が示されているが、本開示において太陽電池30とは、複数のパネルが直列又は並列に接続されたアレイとされていてもよい。また、
図1では、一例として一つの蓄電池20が示されているが、本開示において蓄電池20とは、複数の蓄電池20が直列又は並列に接続されたアレイとされていてもよい。なお、「直列又は並列に接続された」とは、アレイが、直列のみで接続されて構成された場合と、並列のみで接続されて構成された場合と、直列及び並列の両方で接続されて構成された場合と、のいずれも含む。
【0021】
また、本開示における蓄電池20は、蓄電池20を充電する充電電圧が上昇した場合に、蓄電池20への充電を止める図示しない保護回路を内部に有している。この保護回路は、後述するように、蓄電池20に印加される電圧が上昇した場合において、充電電圧が予め定められた値である最大充電電圧Vmcを超えないように、蓄電池20への充電電流を遮断する回路である。なお、保護回路は、一例として蓄電池20が有する場合に限られず、上述したスイッチ40がその役割を成してもよい。
【0022】
図2は、
図1に示す太陽光発電・蓄電システム10において、スイッチ40が太陽電池30と蓄電池20とを電気的に接続している場合の等価回路図である。
【0023】
図2に示されるように、等価回路では、太陽電池30は、発電部32と、互いに並列に接続された内部抵抗34と及びダイオード33と、発電部32に直列に接続された内部抵抗35と、を有するものとされる。発電部32は、太陽電池30に日光が照射した場合に、電流Iphを出力し、太陽電池30としては、電流Iを出力する。
【0024】
また、
図2に示されるように、等価回路では、蓄電池20は、直流電源26と、直列に接続された内部抵抗24とを、有するものとされる。また、
図2に示されるように、等価回路では、太陽電池30と蓄電池20とを繋ぐ電線42の抵抗も直列に接続された配線抵抗44として表される。
【0025】
そして、
図2に示されるように、等価回路では、太陽電池30が出力する電圧(
図2におけるV)は、配線抵抗44、及び蓄電池20の内部抵抗24及び直流電源26に印加される。
【0026】
ここで、蓄電池20が有する直流電源26の電圧は、蓄電池20に蓄えられた電気量に依存する。すなわち、蓄電池20が放電して蓄電池20に蓄えられた電気量が少なくなった場合には直流電源26の電圧値が小さくなり、蓄電池20が充電されて蓄えた電気量が多くなった場合には直流電源26の電圧値が大きくなる。また、太陽電池30が蓄電池20を充電する条件として、太陽電池30が出力する電圧値は、蓄電池20が有する直流電源26の電圧値よりも大きいことから、太陽電池30が出力する電圧値は、蓄電池20に蓄えられた電気量が多くなった場合に増加する。
【0027】
ところで、太陽電池30が出力する電流及び電圧は、一般的に
図3に示すような関係をとる。より具体的には、出力電圧値は、出力端子間が開放されたときに最大である開放電圧Vocとなり、その場合の出力電流Iは、0となる。また、出力電流値は、出力端子間を短絡させた場合に最大である短絡電流Iscとなり、その場合の出力電圧Vは、0となる。
【0028】
また、太陽電池30から出力される電力は、出力電流Iと出力電圧Vの積で表される。言い換えればこの出力電流Iと出力電圧Vの積(
図3における斜線部分の面積)が大きいほど、太陽電池30における発電効率が良いといえる。また言い換えれば、
図3に示すように、太陽電池30においては、出力が最大となる最大出力電力点Pが存在する。以後の説明では、太陽電池30から出力される電力が最大となる場合の電圧を、「最大出力動作電圧Vpm」と称し、太陽電池30から出力される電力が最大となる場合の電流を、「最大出力動作電流Ipm」と称する。
【0029】
なお、
図3に示されるような関係は、太陽電池30の製造業者によって仕様書等で開示されている場合がある。出力電流Iと出力電圧Vの関係については、仕様書等で開示されている場合には、その開示された値を用いてもよく、また、開示されていない場合も含め、太陽電池30を実測することによって取得してもよい。
【0030】
ここで、本開示における太陽光発電・蓄電システム10では、蓄電池20の最大充電電圧Vmcは、太陽電池30の最大出力動作電圧Vpm以下とされる。また、より詳しくは、蓄電池20の最大充電電圧Vmcは、配線抵抗44による電圧降下量Vd(電線42に流れる電流と配線抵抗44の積)及び太陽電池30における最大出力動作電圧Vpmの合計値以下とされる。すなわち、太陽光発電・蓄電システム10は、下記式(1)(2)が成り立つ設計とされている。
Vmc≦Vpm (1)
Vmc≦Vd+Vpm (2)
このため、蓄電池20が最大充電電圧Vmcまで充電された場合に、保護回路により蓄電池20への給電が止められる。なお、本開示における太陽光発電・蓄電システム10では、蓄電池20が最大充電電圧Vmcまで充電された場合、太陽電池30から出力される電力は、電力機器へと供給される。
【0031】
ここで、蓄電池20に印加される電圧は、太陽電池30の出力電圧Vから配線抵抗44による電圧降下量Vdを減じた値である。このため本開示における太陽光発電・蓄電システム10では一例として、式(1)を満たすように蓄電池20及び太陽電池30(単体又は直列接続数)が選定される。そして、式(2)を満たすように、電線42の太さ、長さ等が設定されて配線抵抗44が定められ、必要に応じて蓄電池20及び太陽電池30の直列接続数が調整される。
【0032】
なお、上述の説明における「電力機器」には、太陽電池30が発電した電力、又は蓄電池20に蓄電された電力を用いる機器であれば、具体的な構成及び機器の種類は、限定されない。電力機器には、動力機器、照明機器、電熱機器等の電力を消費する機器、インバータ等の電力変換器、太陽光発電・蓄電システム10に組み込まれない、他の蓄電池なども含まれる。
【0033】
また、上述のように、太陽電池30が出力する電圧値は、太陽電池30に接続された蓄電池20に蓄えられた電気量、すなわち蓄電池20の充電率(SOC(State Of Charge))によって変動する。太陽電池30の発電効率を向上させるためには、蓄電池20としては、充電率に対して開回路電圧(OCV(Open circuit voltage))の変動が小さいものが好ましい。また、太陽電池30の発電効率を向上させるためには、蓄電池20としては、開路電圧が最大出力動作電圧Vpmとの差が小さい状態で、充電率に対して開回路電圧の変動が小さいものが好ましい。本開示における蓄電池20は、一例として、鉛蓄電池の他、リン酸鉄系リチウムイオン電池、NMC(ニッケル・マンガン・コバルト)系リチウムイオン電池、マンガン酸リチウム系リチウムイオン電池等の二次電池が挙げられる。また、蓄電池20は、充電率が0.1から0.8の範囲において、変動する開回路電圧の値が10mV以下である二次電池が好ましく、変動する開回路電圧の値が6mV以下である二次電池がより好ましく、変動する開回路電圧の値が4.7mV以下である二次電池がさらに好ましく、変動する開回路電圧の値が3.5mV以下である二次電池が特に好ましい。なお、二次電池における開回路電圧の値の測定方法は、一例として目的のSOCに充電又は放電したあとに2時間以上休止させ、休止が終了した時点での電池の端子電圧値を測定し、記録したものである。
【0034】
ここで、開示者らは、蓄電池の充電電圧に起因する太陽電池の発電効率の低下を抑制するため、次に示す実験を行った。
【0035】
(実験1)
本実験では、太陽電池30と電気的に直結する蓄電池20の最大充電電圧Vmcがそれぞれ異なる条件における、太陽電池30から出力される電力を測定し、比較を行った。実験条件及び結果を表1に、また、表1における最大充電電圧Vmcと、太陽電池30から出力された電力との関係を
図4に示す。なお、本実験では、配線抵抗44は、最大出力動作電圧Vpm及び最大充電電圧Vmcに比べて十分に小さかったため、記載を省略している。
【0036】
【0037】
図4、及び表1の番号1から番号3に示す実施例1~実施例3の条件のように、蓄電池20の最大充電電圧Vmcが、太陽電池30の最大出力動作電圧Vpmに近づくにつれて、太陽電池30の出力が増加していることが読み取れる。一方、番号4に示す比較例の条件のように、蓄電池20の最大充電電圧Vmcが、太陽電池30の最大出力動作電圧Vpmを超える場合には、太陽電池30の出力が減少した。また、番号3のように、最大充電電圧Vmcが最大出力動作電圧Vpmより2V低い条件よりも、番号4のように、最大充電電圧Vmcが最大出力動作電圧Vpmを1V超える条件では、太陽電池30の出力が減少した。このように、蓄電池20の最大充電電圧Vmcが太陽電池30の最大出力動作電圧Vpmを超える場合は、蓄電池20の最大充電電圧Vmcが太陽電池30の最大出力動作電圧Vpmを下回る場合よりも太陽電池30の発電効率が低下しやすい。
【0038】
(実験2)
また、配線抵抗44と蓄電池20の内部抵抗24との合計値以下、「システム抵抗値A」と称す)が大きくなると、抵抗損失が増加するため好ましくない。そこで本実験では、太陽電池30と、配線抵抗44及び蓄電池20の内部抵抗24を模した抵抗器とを接続して、太陽電池30が出力する電力の変化を確認した。なお、本開示において、システム抵抗値Aとは、太陽電池30から蓄電池20までの電気抵抗値(配線抵抗44)及び蓄電池20における内部抵抗24の内部抵抗値の合計値を含める。言い換えれば、システム抵抗値Aとは、太陽光発電・蓄電システム10を構成する機器全体の抵抗値から、太陽電池30における内部抵抗の値(内部抵抗34及び内部抵抗35の合成抵抗の値)を減じた抵抗値であるともいえる。
【0039】
また、太陽電池30において出力電力が最大となる場合の電圧値である最大出力動作電圧Vpmを、太陽電池30において出力電力が最大となる場合の電流値である最大出力動作電流Ipmで除して得られた値を、「太陽電池特性値B」と称す。また、システム抵抗値Aを太陽電池特性値Bで除した値を「抵抗比率A/B」と称す。
【0040】
なお、各条件では、JIS C 61215-2に準拠の方法でそれぞれ、太陽電池30に入射する太陽光のエネルギーが900W/m2となった状態における、太陽電池30から出力される電圧値及び電流値を測定した。各実験条件、及び各実験条件における発電効率と、測定時間中に太陽電池30から出力された電流の最大値(最大出力電流)を表2に示す。なお、表2において、発電効率とは、太陽電池30から出力される電力量を、太陽電池30に入射するエネルギー量で除して算出した。
【0041】
【0042】
また、表2で得られた、抵抗比率A/Bと、最大出力電流との関係をプロットしたグラフを
図5に示す。なお、
図5における破線は、各プロット点から得られた近似した結果を示す。
【0043】
図5より、抵抗比率A/Bの値が大きくなると最大出力電流が減少し、太陽光発電・蓄電システム10としての発電効率が低下することがわかる。このように、抵抗比率A/Bの値が0.3以下となることが好ましい。その理由としてはシステム抵抗値Aが大きくなると、蓄電池20に充電される際の抵抗過電圧の影響が大きくなり、最大出力動作電圧Vpmを大きく超えた電圧範囲で太陽電池30の出力電圧Vが制御されるため、太陽電池30からの出力電流Iが小さくなるためである。
【0044】
続いて、本開示に係る太陽光発電・蓄電システム10に、表2及び
図5で得られた結果を適用した場合の例を説明する。表3に、本開示に係る太陽光発電・蓄電システム10において想定される構成における、蓄電池20、配線抵抗44、太陽電池30の個数及び値と、各条件の構成から導出されるシステム抵抗値A、太陽電池特性値B、抵抗比率A/B、発電効率及び最大出力電流を示す。なお、太陽光発電・蓄電システム10は、接続対象(電力機器)での使用電圧を得るために、蓄電池20及び太陽電池30が、それぞれ直列に接続されたアレイとされている。表3の例では、蓄電池20のアレイにおける蓄電池20が直列に接続された個数を、蓄電池直列数として示し、太陽電池30のアレイにおける太陽電池30が直列に接続された個数を、太陽電池直列数として示している。
【0045】
【0046】
番号9に示す条件では、抵抗比率A/Bが0.28であり、その場合の効率が0.123である。また、番号10、及び番号11に示す条件においては、抵抗比率A/Bは、番号9に示す条件よりも小さく、また、発電効率も大きい。したがって、表3から、抵抗比率A/Bは、0.3以下であることが好ましいことが確認された。
【0047】
また、表3において番号9から番号11に示す条件のように、太陽電池30の直列数を増やした場合、太陽電池特性値Bがより大きくなる。このため、表3から、蓄電池20の直列数を増やし、システム抵抗値Aの値が増加した場合においても、抵抗比率A/Bが小さくなるように太陽電池特性値Bをより大きくすることにより、発電効率を向上させることが可能である。
【0048】
続いて、本開示に係る太陽光発電・蓄電システム10及び、本開示に係る発電方法の作用及び効果を説明する。
【0049】
(作用及び効果)
本開示に係る太陽光発電・蓄電システム10によれば、太陽電池30と電気的に直結されている蓄電池20の最大充電電圧Vmcは、太陽電池30における最大出力動作電圧Vpm以下とされている。このため、蓄電池20の充電電圧が上昇して、太陽電池30から出力される電流量が低下し、太陽電池30から出力される電力が低下することを抑制することができる。
【0050】
また、本開示に係る太陽光発電・蓄電システム10によれば、システム抵抗値Aと、太陽電池特性値Bとの関係が下記式(I)を満たす。
A/B≦0.3・・・(I)
【0051】
上述のように、太陽光発電・蓄電システム10においてA/Bが0.3を超えていた場合発電効率が低下することが判明しており、この本開示に係る太陽光発電・蓄電システム10は、A/B≦0.3とされている。このため、この本開示に係る太陽光発電・蓄電システム10は、A/Bが0.3を超える場合と比べて、太陽電池30における発電効率の低下を抑制することができる
【0052】
また、本開示に係る発電方法では、太陽電池30と電気的に直結されている蓄電池20の最大充電電圧Vmcは、太陽電池30における最大出力動作電圧Vpm以下とされている。このため、蓄電池20を充電する電圧値が増加して、太陽電池30から出力される電力が低下することにより、太陽電池30の発電効率が低下することを抑制することができる。
【0053】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態を説明したが、本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0054】
10 太陽光発電・蓄電システム
20 蓄電池
24 内部抵抗
26 直流電源
30 太陽電池
32 発電部
33 ダイオード
34 内部抵抗
35 内部抵抗
40 スイッチ
42 電線
44 配線抵抗