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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115403
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】削孔装置用のレールの設置方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/16 20060101AFI20240819BHJP
   E01B 5/02 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
E04G21/16
E01B5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021083
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】三澤 孝史
(72)【発明者】
【氏名】石井 敏之
(72)【発明者】
【氏名】川澄 悠馬
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正士
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174AA01
2E174BA03
2E174DA31
2E174EA07
(57)【要約】
【課題】削孔装置の移動をガイドするレールを削孔現場に効率よく設置することができる。
【解決手段】削孔装置Aの走行をガイドする走行レールGRを複数組の単位レール部GRU1~GRU3で構成し、削孔が終了した場所の単位レール部GRU1を取り外し、複数組の単位レール部GRU1~GRU3の最後方の単位レール部GRU3の後部に運び、削孔作業と同時に組み立てる。これにより、走行レールGRを効率よく設置することができる。
【選択図】図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)削孔対象の壁面に交差する床部上に削孔装置の移動をガイドするレールを構成する2組以上の単位レール部を互いに連結した状態で前記壁面に沿って並べて設置する過程と、
(b)前記2組以上の単位レール部のうちの削孔作業が終了した場所にある使用済みの単位レール部を取り外す過程と、
(c)前記(b)過程後、前記使用済みの単位レール部を前記2組以上の単位レール部のうちの最後方の単位レール部の後部に運ぶ過程と、
(d)前記(c)過程後、前記最後方の単位レール部と前記使用済みの単位レール部とを互いに連結した状態で前記壁面に沿って並べて設置する過程と、
を有することを特徴とする削孔装置用のレールの設置方法。
【請求項2】
前記削孔装置により前記壁面に対して削孔作業を実施するとともに、前記(b)~(d)過程の少なくとも1つの過程を実施することを特徴とする請求項1記載の削孔装置用のレールの設置方法。
【請求項3】
前記レールは、
前記単位レール部を構成する部材であって、前記壁面に沿って延在し、互いに対向した状態で前記床部上に設置された一対の長尺レール部と、
前記一対の長尺レール部の各々に一体的に設けられ、前記一対の長尺レール部の各々から前記一対の長尺レール部同士が対向する内方に向かって突出した状態で設けられた一対の第1の突出部と、
前記一対の長尺レール部の各々に一体的に設けられ、前記一対の長尺レール部の各々から外方に向かって突出した状態で設けられた一対の第2の突出部と、
前記第2の突出部の上下面を貫通するように設けられた第1の貫通孔と、
前記単位レール部を構成する部材であって、前記一対の第2の突出部の各々の前記第1の貫通孔を通じて前記床部に設置され、前記一対の長尺レール部を着脱自在の状態で前記床部に固定する固定部材と、
前記単位レール部を構成する部材であって、前記一対の長尺レール部の間に設けられ、前記一対の第1の突出部に着脱自在の状態で取り付けられて前記一対の長尺レール部同士を互いに連結する第1の連結部材と、
前記壁面に沿って互いに隣接する前記単位レール部同士の前記長尺レール部の各々の先端部に着脱自在の状態で取り付けられて前記単位レール部同士の前記長尺レール部同士を互いに連結する第2の連結部材と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の削孔装置用のレールの設置方法。
【請求項4】
前記削孔装置により前記壁面に対して削孔作業を実施するとともに、前記(b)~(d)過程の少なくとも1つの過程を実施することを特徴とする請求項3記載の削孔装置用のレールの設置方法。
【請求項5】
前記(b)過程において、前記一対の長尺レール部、前記固定部材、前記第1の連結部材および前記第2の連結部材を分解することを特徴とする請求項3記載の削孔装置用のレールの設置方法。
【請求項6】
前記削孔装置により前記壁面に対して削孔作業を実施するとともに、前記(b)~(d)過程の少なくとも1つの過程を実施することを特徴とする請求項5記載の削孔装置用のレールの設置方法。
【請求項7】
前記一対の長尺レール部は、L字型鋼材によって構成されており、該L字型鋼材の山側を上に向けた状態で前記床部上に設置されることを特徴とする請求項3~6のいずれか一項に記載の削孔装置用のレールの設置方法。
【請求項8】
前記固定部材は、ネジ式のアンカー部材により構成されていることを特徴とする請求項3~6のいずれか一項に記載の削孔装置用のレールの設置方法。
【請求項9】
前記一対の長尺レール部は、L字型鋼材によって構成されており、該L字型鋼材の山側を上に向けた状態で前記床部上に設置されることを特徴とする請求項8記載の削孔装置用のレールの設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、削孔装置用のレールの設置方法に関し、例えば、既設のコンクリート製の構造物に孔を削成する削孔装置を移動させるときにガイドとなるレールの設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地上、地中、半地下などにおいて地盤に接するコンクリート製の構造物や、鉄道や道路等に近接する地上に構築されたコンクリート製の構造物においては、耐震補強を目的として、削孔装置を用いて構造物の片側面から孔を削成し、その孔内に定着材を充填した後、後施工せん断補強鉄筋(以下、せん断補強鉄筋という)を挿入して構造物と一体化させることで当該構造体のせん断耐力を向上させる工法が行われる。
【0003】
また、コンクリート製の躯体で構成された道路、橋梁、ダム、堤防などの既設の構造物においては、耐力の維持や補強を目的として、削孔装置を用いて躯体の側面や上下面に対し、所定間隔で孔を削成し、その孔内に、あと施工アンカーを埋め込み、当該あと施工アンカーと連結するように配筋を行ってさらにコンクリートを打設する増し打ち工法が行われている。
【0004】
なお、構造物に対するせん断補強工法については、例えば特許文献1(特開2016-037787号公報)が知られている。また、構造物に対するコンクリートの増し打ち工法については、例えば特許文献2(特開2018-131848号公報)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-037787号公報
【特許文献2】特開2018-131848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記した削孔工事においては、削孔対象範囲が長い場合、削孔装置を壁面に沿って移動しながら削孔するか、壁に対して垂直に削孔するため、壁に対して平行に削孔装置を移動させることが必要となる。このため、削孔工事現場の床面に、コンクリートの壁面に沿ってレールを敷設し、そのレールに沿って削孔装置を移動させることが考えられる。
【0007】
しかし、現状の削孔工事においては、当該レールの構造や設置技術が確立しておらず、如何にして、削孔装置の移動をガイドするレールを効率よく設置できるようにするかが重要な課題となっている。
【0008】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、削孔装置の移動をガイドするレールを削孔現場に効率よく設置することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明の削孔装置用のレールの設置方法は、(a)削孔対象の壁面に交差する床部上に削孔装置の移動をガイドするレールを構成する2組以上の単位レール部を互いに連結した状態で前記壁面に沿って並べて設置する過程と、(b)前記2組以上の単位レール部のうちの削孔作業が終了した場所にある使用済みの単位レール部を取り外す過程と、(c)前記(b)過程後、前記使用済みの単位レール部を前記2組以上の単位レール部のうちの最後方の単位レール部の後部に運ぶ過程と、(d)前記(c)過程後、前記最後方の単位レール部と前記使用済みの単位レール部とを互いに連結した状態で前記壁面に沿って並べて設置する過程と、を有することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の本発明の削孔装置用のレールの設置方法は、上記請求項1に記載の発明において、前記削孔装置により前記壁面に対して削孔作業を実施するとともに、前記(b)~(d)過程の少なくとも1つの過程を実施することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の本発明の削孔装置用のレールの設置方法は、上記請求項1に記載の発明において、前記レールは、前記単位レール部を構成する部材であって、前記壁面に沿って延在し、互いに対向した状態で前記床部上に設置された一対の長尺レール部と、前記一対の長尺レール部の各々に一体的に設けられ、前記一対の長尺レール部の各々から前記一対の長尺レール部同士が対向する内方に向かって突出した状態で設けられた一対の第1の突出部と、前記一対の長尺レール部の各々に一体的に設けられ、前記一対の長尺レール部の各々から外方に向かって突出した状態で設けられた一対の第2の突出部と、前記第2の突出部の上下面を貫通するように設けられた第1の貫通孔と、前記単位レール部を構成する部材であって、前記一対の第2の突出部の各々の前記第1の貫通孔を通じて前記床部に設置され、前記一対の長尺レール部を着脱自在の状態で前記床部に固定する固定部材と、前記単位レール部を構成する部材であって、前記一対の長尺レール部の間に設けられ、前記一対の第1の突出部に着脱自在の状態で取り付けられて前記一対の長尺レール部同士を互いに連結する第1の連結部材と、前記壁面に沿って互いに隣接する前記単位レール部同士の前記長尺レール部の各々の先端部に着脱自在の状態で取り付けられて前記単位レール部同士の前記長尺レール部同士を互いに連結する第2の連結部材と、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の本発明の削孔装置用のレールの設置方法は、上記請求項3に記載の発明において、前記削孔装置により前記壁面に対して削孔作業を実施するとともに、前記(b)~(d)過程の少なくとも1つの過程を実施することを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の本発明の削孔装置用のレールの設置方法は、上記請求項3に記載の発明において、前記(b)過程において、前記一対の長尺レール部、前記固定部材、前記第1の連結部材および前記第2の連結部材を分解することを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の本発明の削孔装置用のレールの設置方法は、上記請求項5に記載の発明において、前記削孔装置により前記壁面に対して削孔作業を実施するとともに、前記(b)~(d)過程の少なくとも1つの過程を実施することを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載の本発明の削孔装置用のレールの設置方法は、上記請求項3~6のいずれか1項に記載の発明において、前記一対の長尺レール部は、L字型鋼材によって構成されており、該L字型鋼材の山側を上に向けた状態で前記床部上に設置されることを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載の本発明の削孔装置用のレールの設置方法は、上記請求項3~6のいずれか1項に記載の発明において、前記固定部材は、ネジ式のアンカー部材により構成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項9に記載の本発明の削孔装置用のレールの設置方法は、上記請求項8に記載の発明において、前記一対の長尺レール部は、L字型鋼材によって構成されており、該L字型鋼材の山側を上に向けた状態で前記床部上に設置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、削孔装置の移動をガイドするレールを削孔現場に効率よく設置することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施の形態に係る削孔装置により削成された孔にせん断補強鉄筋を挿入して耐震補強されたコンクリート製の構造物の一部を示す説明図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る削孔装置の側面図である。
図3図1の削孔装置の正面図である。
図4図1の削孔装置の平面図である。
図5図3のV-V線の断面図である。
図6図2のVI-VI線の断面図である。
図7図1の削孔装置に設けられたチェーンの配置を示す説明図である。
図8】本発明の一実施の形態である削孔装置用の走行レールの平面図である。
図9図8の走行レールを構成する単位レール部の拡大平面図である。
図10図9の単位レール部を構成する一対の長尺レール部の平面図である。
図11】(a)は図10のI-I線の断面図、(b)は図10のII-II線の断面図である。
図12】(a)は図9のI-I線の断面図、(b)は図12(a)の単位レール部を分解して示した断面図である。
図13】予備用の外側突出部にアンカー部材を配置した一例を示した単位レール部の拡大平面図である。
図14】(a)は図13のI-I線の断面図、(b)は図13のIII-III線の断面図である。
図15】(a)は図8の長尺レール部の先端部の破線で囲んだ箇所Pの拡大平面図、(b)は図15(a)の連結部材の裏面の平面図、(c)は図15(b)の連結部材の側面図である。
図16】(a)は図15(a)の連結部材を取り外して示した長尺レール部の先端部の拡大平面図、(b)は図16(a)のIV-IV線の断面図である。
図17】(a)は図15(a)のIV-IV線の断面図、(b)は図17(a)の部品を分解して示した断面図である。
図18】(a)は削孔作業時における走行レールと削孔装置との平面図、(b)は図18(a)の過程後の走行レールと削孔装置との平面図である。
図19】(a)は図18(b)の過程後の走行レールと削孔装置との平面図、(b)は図19(a)の過程後の走行レールと削孔装置との平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0021】
図1は本発明の一実施の形態に係る削孔装置により削成された孔にせん断補強鉄筋を挿入して耐震補強されたコンクリート製の構造物の一部を示す説明図である。
【0022】
本実施の形態の削孔装置は、例えば図1に示すような地盤Gに接する既設のコンクリート製の構造物Sや、鉄道や道路等の建造物に近接する地上に構築された既設のコンクリート製の構造物(図示せず)などに対して、補強工事の一工程として片側面(壁面)から孔Hを開けるために用いられる。開けた孔Hの内部に定着材Mを充填した後、せん断補強鉄筋Rを挿入して構造物Sと一体化させることで、構造物Sのせん断耐力を向上させる。なお、せん断補強鉄筋Rとしては、例えば、一般的に使用される鉄筋R1の片側をネジ切り、斜め切断加工し、先端部に六角ナット(定着体)R2を装着したものなどが適用される。
【0023】
図2は本発明の一実施の形態に係る削孔装置の側面図、図3図1の削孔装置の正面図、図4図1の削孔装置の平面図、図5図3のV-V線の断面図、図6図2のVI-VI線の断面図、図7図1の削孔装置に設けられたチェーンの配置を示す説明図である。
【0024】
図2図6に示すように、本実施の形態の削孔装置Aは、コラム(角形鋼管)やH形鋼などの棒状の鋼材で直方体の形状に構成された本体フレーム10と、同様にコラムやH形鋼などの鋼材で矩形に構成されて本体フレーム10内において昇降可能に設けられた昇降フレーム20と、昇降フレーム20に設けられて前方のコンクリート製の構造物Sを削孔するドリフタ30とを備えている。
【0025】
本体フレーム10は、図3に示すように、前後面が開口する一方、図2および図5に示すように、側面には、桁材11が上下の複数箇所(ここでは、例えば2カ所)に取り付けられるとともにブレース(筋交い)12が設けられ、所要の強度が確保されている。また、図4および図6に示すように、昇降フレーム20は、矩形を形成する4本のフレームロッド21からなり、図2図5および図6に示すように、本体フレーム10の上下に延びる4本の柱材13に沿って設けられたガイドレール14に嵌め込まれており、当該ガイドレール14に案内されながら前面の開口範囲内を昇降する。
【0026】
図5に示すように、ドリフタ30は、先端にビット31が取り付けられたロッド32と、ロッド32に打撃力、回転力および推力を加えるドリフタ本体33とからなり、コンクリート製の構造物Sに対して所定深さの孔Hを開ける。このドリフタ30は、開口した前面の所望位置へと移動できるように昇降フレーム20上を横行移動(削孔対象の壁面に沿って移動)させることが可能になっており、さらに開口した前面を介して構造物Sを削孔するために進退移動(削孔対象の壁面に対して交差(直交)する方向に沿って移動)させることが可能になっている。
【0027】
なお、本実施の形態のドリフタ30では、例えば深さ1m程度の比較的深い孔Hを開けることが可能になっている。但し、孔Hの深さは自由に設定することができ、本実施の形態の1mに限定されるものではない。
【0028】
ここで、ドリフタ30の横行移動機構および進退移動機構の具体例について説明する。
【0029】
図4および図6に示すように、昇降フレーム20には、当該昇降フレーム20上を横行移動させる横行部材40が設けられている。また、横行部材40には、当該横行部材40の移動方向に対して直交する方向に往復動可能な進退部材50が設置されている。そして、進退部材50がドリフタ30を進退移動させ、横行部材40が進退部材50を横行移動させることにより、ドリフタ30は横行移動および進退移動することが可能になっている。
【0030】
図6において、横行部材40は、矩形の昇降フレーム20を形成する後部に位置したフレームロッド21に沿って横方向に延びて設けられた横行用ガイドレール41と、前後方向に長くなってこの横行用ガイドレール41をスライド移動する横行体42と、横行体42に螺合するとともに横行用モータ43により回転駆動されるボールねじ44とを備えている。また、ドリフタ30は進退部材50を介して横行体42に設置されている。したがって、ボールねじ44の回転により横行体42が横行用ガイドレール41に沿って移動することにより、ドリフタ30は昇降フレーム20上を前面の開口範囲内にわたって横行移動する。
【0031】
図4および図6において、進退部材50は、横行体42に沿って設けられた進退用ガイドレール51と、進退用ガイドレール51をスライド移動するスライダ52と、進退用モータ53により周回駆動されることによって取り付けられたスライダ52をスライド移動させる無端状ベルト54とを備えている。また、ドリフタ30はスライダ52に搭載されている。したがって、進退用モータ53の回転により無端状ベルト54が周回してスライダ52が進退用ガイドレール51に沿って移動することにより、ドリフタ30は昇降フレーム20上を進退移動する。なお、本実施の形態において無端状ベルト54は、例えば非金属のゴムベルトであるが、金属ベルトであってもよい。
【0032】
次に、昇降フレーム20の昇降機構の具体例について説明する。
【0033】
図3に示すように、昇降機構は、昇降フレーム20を吊り下げるチェーン60と、チェーン60を上げ下ろしして昇降フレーム20を昇降させる昇降用モータ61と、チェーン60が掛け渡されたスプロケット62とを備えている。
【0034】
チェーン60は、一方端が昇降フレーム20における相互に対向する2辺の中央にそれぞれ取り付けられた第1のチェーン60aおよび第2のチェーン60bで構成されている。すなわち、図3図4および図6に示すように、第1のチェーン60aおよび第2のチェーン60bの一方端は、矩形の昇降フレーム20の構成要素である左右の2本のフレームロッド21の中央上部に取り付けられている。また、第1のチェーン60aおよび第2のチェーン60bの他方端は、その反対側であるフレームロッド21の中央下部に取り付けられている。
【0035】
なお、チェーン60が左右のフレームロッド21に取り付けられているのは、前後のフレームロッド21に取り付けられていると、横行移動するドリフタ30と干渉してしまうからである。
【0036】
ここで、本体フレーム10には、図3および図7に示すように、左右上部における前後方向の中央にスプロケット62a、62bが配置され、これと対応した左右下部における前後方向の中央にスプロケット62c、62dが配置されている。また、昇降用モータ61と当該昇降用モータ61の近傍に位置するスプロケット62dとの間で、且つスプロケット62dよりもやや高い位置には、スプロケット62eが配置されている。さらに、昇降用モータ61には駆動スプロケット61aが取り付けられている。
【0037】
なお、駆動スプロケット61aおよび昇降用モータ61が位置する側(図示する場合には、右側)のスプロケット62b、62d、62eは、2枚のスプロケットが同軸上となって一体化されたシングルダブルスプロケットとなって、2本のチェーン60(第1のチェーン60a、第2のチェーン60b)を掛け渡すことができるようになっている。また、その反対側(図示する場合には、左側)のスプロケット62a、62cは、1枚だけのシングルスプロケットとなって、第1のチェーン60aのみを掛け渡すことができるようになっている。
【0038】
そして、図3に示すように、第1のチェーン60aは、昇降フレーム20の左側の上部取付位置から上方に向けてスプロケット62a、スプロケット62b、スプロケット62e、駆動スプロケット61a、スプロケット62dおよびスプロケット62cに順次掛け渡されて昇降フレーム20の左側の下部取付位置に至っている。また、第2のチェーン60bは、昇降フレーム20の右側の取付位置から上方に向けてスプロケット62b、スプロケット62e、駆動スプロケット61aおよびスプロケット62dに順次掛け渡されて昇降フレーム20の右側の下部取付位置に至っている。
【0039】
図3において昇降用モータ61が時計回りに回転して第1のチェーン60aおよび第2のチェーン60bが周回すると、昇降フレーム20がこれらのチェーン60で吊り上げられて上昇する。また、同じく図3において昇降用モータ61が反時計回りに回転して第1のチェーン60aおよび第2のチェーン60bが逆方向に周回すると、昇降フレーム20がこれらのチェーン60で吊り下げられて下降する。
【0040】
ここで、図2図4に示すように、本体フレーム10の上端部の左右2箇所には、削孔対象である構造物Sに対して削孔時の推進反力を伝達する反力伝達部70が設置されている。この反力伝達部70は、図示しない真空ポンプによる負圧吸引力により構造物Sに吸着する吸着パッド71と、吸着パッド71を進退移動させるスライドジャッキ72とを備えている。そして、削孔時にはスライドジャッキ72で吸着パッド71を前方に伸ばして構造物Sに押し当て、真空ポンプにより吸着パッド71を当該構造物Sに吸着させることにより、ドリフタ30で構造物Sを削孔する際の推進反力が得られ、スムーズに削孔を実行することが可能になる。
【0041】
なお、反力伝達部70は、本実施の形態のように本体フレーム10の上端部の左右2箇所に設置されるのが望ましいが、上端部の左右何れか1箇所、上端中央部の1箇所、あるいは上端部以外の箇所などに設置されていてもよい。
【0042】
このような削孔装置Aは、その本体フレーム10の下部に設けられた走行モータ81により走行レールGRに沿って移動することが可能になっている。すなわち、図2図3および図5に示すように、削孔装置Aは、その本体フレーム10の下部に取り付けられた複数個(本実施の形態では、例えば4個)のローラ82を介して走行レールGR上に搭載されている。ローラ82は、走行モータ81により駆動されて走行レールGR上を転動する回転部材であり、2個の駆動ローラ82a(図2図3図6参照)と、2個の従動ローラ82b(図3図6参照)とを備えている。2個の駆動ローラ82aは、走行用モータ81によりベルト83を介して回転駆動される走行駆動軸84の同軸上に取り付けられている。一方、2個の従動ローラ82bは、走行レールGRの延在方向において駆動ローラ82aの対向位置に回転可能な状態で設置されて駆動ローラ82aの回転に従って回転するようになっている。
【0043】
以上の構成を備える削孔装置Aを用いて、図1に示したように、コンクリート製の構造物Sにせん断補強鉄筋Rを挿入するための孔Hを削成するには、例えば以下のようにする。
【0044】
まず、走行レールGに沿って削孔装置Aを走行させて削孔場所に移動する。続いて、必要に応じて、スライドジャッキ72で吸着パッド71を前方に伸ばして構造物Sに押し当てて吸着させた後、昇降用モータ61により昇降フレーム20を所定の高さに移動し、かつ、横行用モータ43により横行体42を所定の横方向位置に移動することにより、ドリフタ30を削孔位置に移動する。
【0045】
次いで、ドリフタ30の電源を入れ、ドリフタ30を待機位置からビット31が構造物Sに接する位置まで前進移動させ、ビット31が構造物Sに接したらドリフタ30を自動的に元の待機位置に戻すという一連の動作の中でドリフタ30の移動距離を計測することにより削孔装置Aと構造物Sとの対向間距離を計測する。
【0046】
次に、進退用モータ53によりスライダ52をスライド移動させてドリフタ30を前進移動させることにより、ドリフタ30を構成するロッド32の先端のビット31を構造物Sの削孔位置に押し当てて構造物Sに孔を削成する。そして、所定の深さまで孔を削成し終えたならば、構造物Sから離間する方向にスライダ52を移動させてドリフタ30を後退移動させ、待機位置に戻す。
【0047】
構造物2に孔を開けるには、例えば、横方向の削孔位置毎に、ドリフタ30の高さを変えて複数の孔を削成する。すなわち、横行用モータ43により横行体42を横方向に移動してドリフタ30を第1の横方向削孔位置にセットする。続いて、第1の横方向削孔位置において、昇降用モータ61により昇降フレーム20を高さ方向に移動してドリフタ30の高さを変えながら複数の孔を削成する。そして、第1の横方向削孔位置の削孔が終了したら、横行用モータ43により横行体42を第1の横方向削孔位置の隣りの第2の横方向削孔位置に移動してドリフタ30を第2の横方向削孔位置にセットする。その後、第2の横方向削孔位置において、上記と同様にドリフタ30の高さを変えながら複数の孔を削成する。これを繰り返すことにより、構造物Sの壁面内に複数の孔を削成する。
【0048】
また、孔を開ける他の方法として、例えば、高さ方向の削孔位置毎に、ドリフタ30の横方向位置を変えて複数の孔を削成してもよい。すなわち、昇降用モータ61により昇降フレーム20を高さ方向に移動してドリフタ30を第1の高さ方向削孔位置にセットする。続いて、第1の高さ方向削孔位置において、横行用モータ43により横行体42を横方向に移動してドリフタ30の横方向位置を変えながら複数の孔を削成する。そして、第1の高さ方向削孔位置の削孔が終了したら、昇降用モータ61により昇降フレーム20を第1の高さ方向削孔位置の直上または直下の第2の高さ方向削孔位置に移動してドリフタ30を第2の高さ方向削孔位置にセットする。その後、第2の高さ方向削孔位置において、上記と同様にドリフタ30の横方向位置を変えながら複数の孔を削成する。これを繰り返すことにより、構造物Sの壁面内に複数の孔を削成する。
【0049】
このように、本実施の形態の削孔装置Aによれば、コンクリート製の構造物Sの削孔対象の壁面内に対して高さ方向および横方向にドリフタ30を移動して孔を削成することができるので、作業者の負担を軽減しつつ壁面内に複数の孔を削成することができる。
【0050】
次に、本実施の形態の走行レールGRについて図8図17を参照して説明する。
【0051】
図8は削孔装置用の走行レールの平面図、図9図8の走行レールを構成する単位レール部の拡大平面図、図10図9の単位レール部を構成する一対の長尺レール部の平面図、図11(a)は図10のI-I線の断面図、図11(b)は図10のII-II線の断面図、図12(a)は図9のI-I線の断面図、図12(b)は図12(a)の単位レール部を分解して示した断面図である。
【0052】
図8に示すように、走行レールGRは、削孔装置Aの移動をガイドするレールであって、構造物Sの削孔対象の壁面SSに交差(直交)するコンクリート製のスラブ(床部)上に、当該壁面SSに沿って延在した状態で敷設されている。走行レールGRの全長は、例えば9000mm程度、幅は、例えば600mm程度である。
【0053】
走行レールGRは、例えば3組の単位レール部GRUによって構成されている。単位レール部GRUは、走行レールGRを構成する単位部分であり、3組の単位レール部GRUは互いに同じ構成となっている。これら3組の単位レール部GRUは、壁面SSに沿って並んで設置されているとともに、当該壁面SSに沿って並ぶ単位レール部GRUの隣接先端部分において互いに連結された状態で設置されている。但し、単位レール部GRUは、少なくとも2組あればよく、3組に限定されるものではなく種々変更可能である。
【0054】
図8および図9に示すように、単位レール部GRUは、一対の長尺レール部90,90と、2本の連結部材(第1の連結部材)91,91と、4本のアンカー部材(固定部材)92とを備えている。単位レール部GRUの全長は、例えば3000mm程度である。なお、図8および図9においては図面を見易くするためアンカー部材92を黒塗りで示している。
【0055】
図9および図10に示すように、一対の長尺レール部90,90は、走行レールGRのレール本体部であり、壁面SSに沿って延在した状態で設置されているとともに、壁面SSに対して直交する方向に互いに離間し対向した状態でスラブ上に設置されている。この長尺レール部90の長手方向の両端部近傍には、例えば2個の貫通孔(第4の篏合部)90hが設けられている。この貫通孔90hは、例えば平面視で円形状に形成されており、その直径は、例えば9.5mm程度である。
【0056】
また、図11に示すように、長尺レール部90は、例えばL字型鋼材によって構成されており、該L字型鋼材の山側を上に向けた状態でスラブSB上に設置されている。長尺レール部90をL字型鋼材によって構成することにより、軽量でありながら、頑丈な走行レールGRを構築することができる。
【0057】
図10に示すように、一対の長尺レール部90,90の各々の内側長辺には、内側突出部(第1の突出部)90a,90aが一体的に設けられている。内側突出部90a,90aは、一対の長尺レール部90,90の対向長辺から一対の長尺レール部90,90同士が対向する内方に向かって突出した状態で設けられている。
【0058】
内側突出部90aは、一対の長尺レール部90の各々に、例えば2個ずつ設けられ、合計で4個設けられている。一方の長尺レール部90の2個の内側突出部90a,90aと、他方の長尺レール部90の2個の内側突出部90a,90aとは互いに向き合うように長尺レール部90の長手方向の同じ位置に設けられている。
【0059】
長尺レール部90の長手方向の先端部から内側突出部90aまでの長さX1は、例えば750mm程度、長尺レール部90の長手方向に沿って隣接する2個の内側突出部90a,90aの間の長さX2は、例えば1500mm程度である。各内側突出部90aは、例えば平面視で矩形状に形成されており、その厚さは、例えば6mm程度である。
【0060】
また、図11(a)および図12に示すように、各内側突出部90aの上面には、その上面から上方に向かって突出する突出部(第2の篏合部)90apが内側突出部90aと一体的に設けられている。この突出部90apは、例えば円錐形状に形成されており、その突出高さは、例えば14mm程度、直径は、例えば19mm程度である。
【0061】
一方、図9および図10に示すように、一対の長尺レール部90,90の各々の外側長辺には、外側突出部(第2の突出部)90b,90bが一体的に設けられている。この外側突出部90b、90bは、一対の長尺レール部90,09の各々の外側長辺から外方に向かって突出した状態で設けられている。
【0062】
外側突出部90bも、一対の長尺レール部90の各々に、例えば2個ずつ設けられ、合計で4個設けられている。長尺レール部90の長手方向における外側突出部90b,90bの位置は、長尺レール部90の長手方向における内側突出部90a,90aの位置と同じ位置に設けられている。外側突出部90bは、例えば平面視で矩形状に形成されており、その厚さは、例えば6mm程度である。
【0063】
また、図10図11(a)および図12に示すように、各外側突出部90a,90aには、その上下面を貫通する貫通孔(第1の貫通孔)90bhが設けられている。貫通孔90bhは、例えば平面視で円形状に形成されている。この貫通孔90bhは、アンカー部材92(図12(a)参照)が挿入される孔である。すなわち、図12(a)に示すように、一対の長尺レール部90,90は、外側突出部90bの貫通孔90bhを通じてアンカー部材92がスラブSBに打ち込まれることにより着脱自在の状態でスラブSBに固定されている。
【0064】
ここで本実施の形態においては、アンカー部材92が、例えば鋼材で形成されたネジ式のアンカー部材によって構成されており、着脱自在の状態でスラブSBに螺合されている。したがって、アンカー部材92の取り付け取り外しを比較的簡単に行うことができるので、一対の長尺レール部90,90の取り付け取り外しも比較的簡単に行うことができる。
【0065】
また、図9図10および図11(b)に示すように、一対の長尺レール部90,90の各々の外側長辺には、一対の予備用の外側突出部(第3の突出部)90c,90cが一体的に設けられている。この予備用の外側突出部90c、90cは、一対の長尺レール部90,09の各々の外側長辺から外方に向かって突出した状態で設けられている。
【0066】
外側突出部90cも、一対の長尺レール部90の各々に、例えば2個ずつ設けられ、合計で4個設けられている。長尺レール部90の長手方向における外側突出部90c,90cの位置は、長尺レール部90の長手方向における外側突出部90b,90bの位置と異なる位置に設けられている。外側突出部90cは、例えば平面視で矩形状に形成されており、その厚さは、例えば6mm程度である。
【0067】
また、図9図10および図11(b)に示すように、各外側突出部90c,90cには、その上下面を貫通する貫通孔(第2の貫通孔)90chが設けられている。貫通孔90chは、例えば平面視で円形状に形成されている。この貫通孔90chは、アンカー部材92(図12(a)参照)が挿入される孔である。これは、所定の外側突出部90bにおける貫通孔90bhの直下のスラブSBに鉄筋等が埋設されておりアンカー部材92を打ち込めない場合があるが、その場合に所定の外側突出部90bの代わりに予備用の外側突出部90cの貫通孔90chを通じてスラブSBにアンカー部材92を打ち込み、長尺レール部90を固定するための構成である。
【0068】
ここで、図13は予備用の外側突出部にアンカー部材を配置した一例を示した単位レール部の拡大平面図、図14(a)は図13のI-I線の断面図、図14(b)は図13のIII-III線の断面図である。なお、図13においては図面を見易くするためアンカー部材92を黒塗りで示している。
【0069】
図13においては、左上の外側突出部90b下にアンカー部材92を打ち込むことができない場合が例示されている。この場合は、図13および図14に示すように、左上の外側突出部90bの貫通孔90bhに代えて、その隣りの予備用の外側突出部90cの貫通孔90chを通じてアンカー部材92がスラブSBに打ち込まれている。これにより、長尺レール部90が着脱自在の状態でスラブSBに固定されている。
【0070】
また、図9図12図13および図14(a)に示すように、単位レール部GRUを構成する連結部材91,91は、一対の長尺レール部90,90に対して交差(直交)する方向に延在した状態で、一対の長尺レール部90,90同士を橋渡すように一対の長尺レール部90,90の間に着脱自在の状態で設置されている。
【0071】
各連結部材91,91は、一対の長尺レール部90,90の隣接間隔を決めるとともに、一対の長尺レール部90,90同士を連結する部材である。連結部材91は、例えば平面視で帯状の鋼板からなり、その全長は、例えば510mm程度、幅は、例えば50mm程度、厚さは、例えば6mm程度である。
【0072】
連結部材91の長手方向の両端部近傍には、その上下面を貫通する貫通孔(第1の篏合部)91hが設けられている。貫通孔91hは、例えば平面視で円形状に形成されており、その直径は、上記した突出部90apの直径より大きく、例えば19.5mm程度である。
【0073】
このような連結部材91は、その長手方向の両端部が一対の長尺レール部90,90の内側突出部90a,90aと平面視で部分的に重なった状態で設置されているとともに、各連結部材91,91の両端部近傍の貫通孔91h,91h内に一対の長尺レール部90,90の各々の内側突出部90a,90aの突出部90ap,90apを嵌め合わすことにより着脱自在の状態で取り付けられている。したがって、連結部材91の取り付け取り外しを比較的簡単に行うことができる。
【0074】
また、図15(a)は図8の長尺レール部の先端部の破線で囲んだ領域Pの拡大平面図、図15(b)は図15(a)の連結部材の裏面の平面図、図15(c)は図15(b)の連結部材の側面図、図16(a)は図15(a)の連結部材を取り外して示した長尺レール部の先端部の拡大平面図、図16(b)は図16(a)のIV-IV線の断面図、図17(a)は図15(a)のIV-IV線の断面図、図17(b)は図17(a)の部品を分解して示した断面図である。
【0075】
図8図15(a)および図16(a)に示すように、単位レール部GRUの長手方向に隣接する長尺レール部90,90同士は、互いの先端部を突き合せた状態で設置されているとともに、図8および図15(a)に示すように、一対の連結部材93,93によって互いに連結されている。なお、図16に示す補強部材94は、長尺レール部90のL字形状を維持するための部材であり、長尺レール部90の左右の斜面同士を連結するように接合されている。
【0076】
図15(a)、図15(b)および図15(c)に示すように、連結部材93は、例えば平面視で短い帯状の鋼板からなり、その全長は、例えば90mm程度、幅は、例えば20mm程度、板状部分の厚さは、例えば6mm程度である。図15(b)および図15(c)に示すように、連結部材93の裏面(長尺レール部90に対向する面)において長手方向の両端部近傍には、その裏面から突出する突出部(第3の篏合部)93p,93pが一体的に設けられている。この突出部93pは、例えば円錐形状に形成されており、その突出高さは、例えば12mm程度、直径は、上記した長尺レール部90の貫通孔90hの直径より小さく、例えば9mm程度である。
【0077】
このような連結部材93は、図16および図17に示すように、走行レールGRの長手方向に沿って隣接する長尺レール部90の各々の貫通孔90h,90h内に、図17(a)に示すように、連結部材93の突出部93p,93pを嵌め合わすことにより着脱自在の状態で取り付けられている。そして、連結部材93が取り付けられることにより当該長尺レール部90,90同士が連結されている。連結部材93は嵌め合わされているだけなので、比較的簡単に取り付け取り外しを行うことができる。
【0078】
このように本実施の形態においては、走行レールGRを、一対の長尺レール部90,90、連結部材91、アンカー部材92、連結部材93に分解(解体)した状態で持ち運び組み立てることができるので、走行レールGRを削孔現場に簡単に設置することができる。
【0079】
次に、上記した削孔装置Aの削孔方法の一例について図18および図19を参照して説明する。
【0080】
図18(a)は削孔作業時における走行レールと削孔装置との平面図、図18(b)は図18(a)の過程後の走行レールと削孔装置との平面図である。
【0081】
まず、図18(a)に示すように、削孔現場のスラブ上に走行レールGRを敷設する。走行レールGRは、例えば3組の単位レール部GRU1,GRU2,GRU3(GRU)を備えている。3組の単位レール部GRU1,GRU2,GRU3(GRU)は構造物Sの壁面SSに沿って並んで設置されており、互いに連結されている。
【0082】
ここで、走行レールの構成部品が一体固定されている場合、削孔範囲長が長いと、走行レールの全長が長くなり、走行レールを削孔現場に運び込み設置することが困難になる。削孔現場が狭い場合は特に困難になる。これに対して本実施の形態においては、走行レールGRの構成部品を分解した状態で削孔現場に運び込み組み立てることができるので、走行レールGRを削孔現場に簡単に設置することができる。
【0083】
続いて、走行レールGRの先頭の単位レール部GRU1上に削孔装置Aを搭載して上記したように構造物Sに孔Hを削成する。その後、単位レール部GRU1での削孔作業が終了したら、図18(b)に示すように、削孔装置Aを隣りの単位レール部GRU2上に移動する。
【0084】
次いで、図19(a)は図18(b)の過程後の走行レールと削孔装置との平面図、図19(b)は図19(a)の過程後の走行レールと削孔装置との平面図である。
【0085】
上記のように削孔装置Aを単位レール部GRU2に移動した後、図19(a)に示すように、単位レール部GRU1を、一対の長尺レール部90,90、連結部材91,91、アンカー部材92および連結部材93に分解(解体)した後、分解した状態で走行レールGRの最後端部に運ぶ。このため、単位レール部GRU1を比較的小さく、且つ軽くした状態で運ぶことができるので、狭い削孔現場でも比較的簡単に単位レール部GRU1を運ぶことができる。なお、アンカー部材92の取り外した孔痕には充填材を埋め込む。
【0086】
続いて、図19(b)に示すように、単位レールGRU2上において削孔装置Aにより削孔作業を実施するとともに、走行レールGRの最後端部において運ばれてきた単位レール部GRU1を組み立てる。
【0087】
以上のように、削孔装置Aによる削孔作業と、走行レールGRの単位レール部GRUの設置(分解、運搬および組立)とを繰り返すことにより構造物Sの削孔範囲の全域に複数の孔を削成する。
【0088】
このように本実施の形態においては、構造物Sの削孔作業と同時に単位レール部GRU1を組み立てることができるので、単位レールGRUを分解し運搬し組み立てるからといって作業効率が著しく低下することもない。すなわち、走行レールGRを効率よく設置することができる。
【0089】
また、走行レールGRを分解することができるので、削孔範囲長が長い削孔現場でも、長い走行レールを必要とせず、少なくとも2組の単位レール部GRUで対応できるので、走行レールGRのコストを低減することができる。すなわち、削孔作業のコストを低減することができる。
【0090】
さらに、削孔現場毎に削孔範囲長が種々変わっても、削孔範囲長毎に特製の走行レールを用意する必要がなく、少なくとも2組の単位レール部GRUで種々の削孔範囲長に対応できるので、削孔現場毎の削孔範囲長の違いに柔軟に対応することができる。すなわち、走行レールGRの汎用性を高めることができる。
【0091】
ここで、上記の例では、先頭の単位レール部GRU1を走行レールGRの最後端に運搬した後に中間の単位レール部GRU2での削孔作業を開始した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば中間の単位レール部GRU2での削孔作業をしながら同時に先頭の単位レール部GRU1の分解(解体)し、走行レールGRの最後端に運搬し組み立ててもよい。この場合、中間の単位レール部GRU2での削孔作業中に先頭の単位レール部GRU1の分解(解体)、運搬および組立を行うので、上記の場合よりもさらに作業効率を向上させることができる。
【0092】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0093】
例えば、上記実施の形態においては、L字状の長尺レール部を用いて走行レールを構成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく種々変更可能であり、例えばT字状の長尺レール部を逆さにしてスラブ上に設置することにより走行レールを構成してもよい。
【0094】
また、上記実施の形態においては、内側突出部90aに設けられた突出部90apと、連結部材91に設けられた貫通孔91hとを篏合する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば内側突出部90aに設けられた貫通孔または凹部と、連結部材91の長手方向両端部近傍に設けられた突出部とを篏合するようにしてもよい。
【0095】
また、上記実施の形態においては、長尺レール部90の長手方向両端部に設けられた貫通孔90hと、連結部材93に設けられた突出部93pとを篏合する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば長尺レール部の長手方向両端部に設けられた突出部と、連結部材93に設けられた貫通孔または凹部とを篏合するようにしてもよい。
【0096】
また、上記実施の形態においては、ドリフタ30等のような削孔部材を高さ方向に移動する機構と横方向に移動する機構とを有する大型の削孔装置に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば削孔部材を高さ方向のみに移動する機構を備え、削孔部材の横方向の移動は装置全体を走行レールに沿って移動することで実施する小型の削孔装置にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上の説明では、本発明の削孔装置を、コンクリート製の既設の構造物に、せん断補強鉄筋を挿入するための孔開けを実施する削孔装置用の走行レールに適用した場合が示されているが、これに限定されるものではなく、削孔装置以外の装置であって、構造物の壁面と装置との間の距離を比較的高い精度で確保しながら壁面に沿って装置を移動させる必要がある装置用の走行レールにも適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
10 本体フレーム
11 桁材
12 ブレース
13 柱材
14 ガイドレール
20 昇降フレーム
21 フレームロッド
30 ドリフタ
31 ビット
32 ロッド
33 ドリフタ本体
40 横行部材
41 横行用ガイドレール
42 横行体
43 横行用モータ
44 ボールねじ
50 進退部材
51 進退用ガイドレール
52 スライダ
53 進退用モータ
54 無端状ベルト
60 チェーン
60a 第1のチェーン
60b 第2のチェーン
61 昇降用モータ
61a 駆動スプロケット
62,62a,62b,62c,62d,62e スプロケット
70 反力伝達部
71 吸着パッド
72 スライドジャッキ
81 走行用モータ
82 ローラ
82a 駆動ローラ
82b 従動ローラ
83 ベルト
84 走行駆動軸
90 長尺レール部
90a 内側突出部(第1の突出部)
90ap 突出部(第2の篏合部)
90b 外側突出部(第2の突出部)
90bh 貫通孔(第1の貫通孔)
90c 予備用の外側突出部(第3の突出部)
90ch 貫通孔(第2の貫通孔)
90h 貫通孔(第4の篏合部)
91 連結部材(第1の連結部材)
91h 貫通孔(第1の篏合部)
92 アンカー部材(固定部材)
93 連結部材(第2の連結部材)
93p 突出部(第3の篏合部)
94 補強部材
A 削孔装置
H 孔
R せん断補強鉄筋
S 構造物
SS 壁面
SB スラブ
GR 走行レール
GRU,GRU1,GRU2,GRU3 単位レール部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19