(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115406
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】砥石成形工具および砥石成形方法
(51)【国際特許分類】
B23F 21/00 20060101AFI20240819BHJP
B24B 53/075 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B23F21/00
B24B53/075
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021086
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒川 直矢
(72)【発明者】
【氏名】大和 宏樹
【テーマコード(参考)】
3C047
【Fターム(参考)】
3C047CC12
3C047CC18
(57)【要約】
【課題】製造コストが低減された砥石成形工具および砥石成形方法を提供する。
【解決手段】はすば歯車2を創成研削するための外歯車状の砥石車3を成形する砥石成形工具1であって、円盤状または円環状のベース部4と、ベース部4に、ベース部4の周方向に配置されるとともに、ベース部4の径方向に突出する成形刃7と、を備え、成形刃7は、はすば歯車2の歯面の歯直角断面と同一形状を有するとともに、所定の厚みTを有しており、ベース部4の中心軸線Ctに対して、はすば歯車2の歯のねじれ角と同一角度分傾けて配置されている、砥石成形工具1。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車を創成研削するための外歯車状の砥石車を成形する砥石成形工具であって、
円盤状または円環状のベース部と、
前記ベース部に、前記ベース部の周方向に配置されるとともに、前記ベース部の径方向に突出する成形刃と、を備え、
前記成形刃は、
前記歯車の歯面の歯直角断面と同一形状を有するとともに、所定の厚みを有しており、
前記ベース部の中心軸線に対して、前記歯車の歯のねじれ角と同一角度分傾けて配置されている、砥石成形工具。
【請求項2】
前記歯車が、はすば歯車である、請求項1に記載の砥石成形工具。
【請求項3】
前記成形刃は、板状に形成されている、請求項2に記載の砥石成形工具。
【請求項4】
前記成形刃の厚みは、前記成形刃の刃丈よりも小さい、請求項3に記載の砥石成形工具。
【請求項5】
前記成形刃は、前記ベース部に対して着脱可能に取付けられる、請求項1に記載の砥石成形工具。
【請求項6】
1つの前記成形刃に、前記砥石車の複数の歯を成形する複数の刃部を有する、請求項5に記載の砥石成形工具。
【請求項7】
前記ベース部には、複数の前記成形刃が着脱可能に取付けられる、請求項1に記載の砥石成形工具。
【請求項8】
前記成形刃は、前記ベース部の径方向について凸状に形成されている、請求項1に記載の砥石成形工具。
【請求項9】
前記成形刃は、前記ベース部の径方向について凹状に形成されている、請求項1に記載の砥石成形工具。
【請求項10】
前記歯車が外歯車であり、前記砥石成形工具が外歯車であり、前記成形刃が前記ベース部の径方向外側に突出している、請求項1に記載の砥石成形工具。
【請求項11】
前記歯車が内歯車であり、前記砥石成形工具が内歯車であり、前記成形刃が前記ベース部の径方向内側に突出している、請求項1に記載の砥石成形工具。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の砥石成形工具を用いた砥石成形方法であって、
前記砥石車の中心軸線と、前記砥石成形工具の中心軸線とが所定の交差角を有するように、前記砥石車と前記砥石成形工具とを相対的に傾斜して配置する配置工程と、
前記砥石車および前記砥石成形工具を同期回転させた状態で、前記砥石車を、前記砥石成形工具の前記中心軸線に沿って、相対的に前進および後進させることにより、前記砥石車を成形加工する成形加工工程と、を備えた、砥石成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石成形工具および砥石成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載の、はすば歯車を創成研削するための外歯車状の砥石車を成形する砥石成形工具が知られている。この砥石成形工具は、リング状の台金と、台金の内周部に設けられて、歯形形状に沿って配置されるダイヤモンド層とを備える。砥石成形工具の歯形形状は、はすば歯車の歯形形状と同じ形状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術によれば、砥石成形工具の歯形形状を形成するためには、はすば歯車の歯形形状を形成するときと同様に、歯すじが、はすば歯車の軸方向に対して傾斜した形状に加工する必要がある。このため、砥石成形工具の成形が容易ではないという問題がある。なお、平歯車を創成研削するための砥石車を成形する砥石成形工具についても、同様に、成形が容易ではないという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、容易に成形可能な砥石成形工具および砥石成形方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
歯車を創成研削するための外歯車状の砥石車を成形する砥石成形工具であって、
円盤状または円環状のベース部と、
前記ベース部に、前記ベース部の周方向に配置されるとともに、前記ベース部の径方向に突出する成形刃と、を備え、
前記成形刃は、
前記歯車の歯面の歯直角断面と同一形状を有するとともに、所定の厚みを有しており、
前記ベース部の中心軸線に対して、前記歯車の歯のねじれ角と同一角度分傾けて配置されている、砥石成形工具にある。
【0007】
本発明の他の態様は、
上記の砥石成形工具を用いた砥石成形方法であって、
前記砥石車の中心軸線と、前記砥石成形工具の中心軸線とが所定の交差角を有するように前記砥石車と前記砥石成形工具とを相対的に傾斜して配置する配置工程と、
前記砥石車および前記砥石成形工具を同期回転させた状態で、前記砥石車を、前記砥石成形工具の前記中心軸線に沿って、相対的に前進および後進させることにより、前記砥石車を成形加工する成形加工工程と、を備えた、砥石成形方法にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、成形刃は、歯車の歯面の歯直角断面を備え、且つ、所定の厚みを有する。これにより、砥石成形工具の成形刃の形状を加工するために、高精度な加工が不要となるので、砥石成形工具を容易に成形することができる。
【0009】
また、本形態の他の態様によれば、砥石成形工具の成形刃の形状を加工するために、高精度な加工が不要となるので、砥石成形工具を容易に成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1の砥石成形工具と、はすば歯車と、砥石車との関係を示す模式図。
【
図7】実施形態1の砥石成形工具を備えた砥石成形加工装置を示す平面図。
【
図8】実施形態1の砥石成形工具を備えた砥石成形加工装置を示す側面図。
【
図9】実施形態1の砥石成形加工装置の動作を示すフローチャート。
【
図10】実施形態1の配置工程における、砥石車と砥石成形工具との関係を示す、
図11におけるL-L線断面図。
【
図11】実施形態1の配置工程における、砥石車と砥石成形工具との関係を示す正面図。
【
図12】実施形態1の成形加工工程における、砥石車と砥石成形工具との関係を示す、
図11におけるL-L線断面図。
【
図13】実施形態1の成形加工工程における、砥石車と砥石成形工具との関係を示す、一部拡大模式図。
【
図16】実施形態4の砥石成形工具と、はすば歯車と、砥石車との関係を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
1.砥石成形工具1の構成
本形態の砥石成形工具1は、はすば歯車2を創成研削するための外歯車状の砥石車3を成形するものである。
図1(a)に、はすば歯車2と、このはすば歯車2を創成研削するための外歯車状の砥石車3と、を示す。はすば歯車2は、円環状に形成されており、内周面にはすば(図示せず)が形成されている。はすば歯車2はCw軸回りに回転し、砥石車3はCg軸回りに回転する。砥石車3は外歯車状に形成されている。
【0012】
図1(b)には、砥石車3と、この砥石車3を成形する砥石成形工具1と、を示す。砥石車3はCg軸回りに回転し、砥石成形工具1はCt軸回りに回転する。砥石成形工具1は、円環状に形成されており、内周面に成形刃7が配されている。ただし、創成研削される歯車の形状、および砥石車の形状は特に限定されず、例えば、創成研削される歯車が平歯車であり、砥石車がはすばの外歯車状に形成される構成としてもよい。
【0013】
続いて、
図2~
図3を参照して、本形態の砥石成形工具1について説明する。本形態の砥石成形工具1は、はすば歯車2を創成研削するための外歯車状の砥石車3を成形するものである。以下の説明において、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0014】
図2に示すように、砥石成形工具1は、ベース部4と、成形刃7と、を備える。ベース部4の材料は特に限定されず、金属、樹脂、セラミック等、任意の材料を適宜に選択できる。本形態のベース部4は、例えば金属製とすることができる。また、ベース部4は円環状に形成されている。
【0015】
(1)ベース部4
図2に示すように、ベース部4は、径方向について外周側に位置する縁部5と、径方向について縁部5よりも内方に位置する台座部6と、を有する。
【0016】
図2に示すように、縁部5には、ベース部4の表側から裏側に陥没する複数(本形態では12個)のボルト用凹部5Aが形成されている。ただし、ボルト用凹部5Aの個数は限定されない。ボルト用凹部5Aの内形状は円形状に形成されている。ボルト用凹部5Aの底部には、ボルト5Cの軸部が挿通されるボルト挿通孔5Bが形成されている。ボルト用凹部5Aおよびボルト挿通孔5B内にボルト5Cが挿通されて、後述する取付け部材20Aに螺合されることにより、ベース部4が取付け部材20Aに固定されるようになっている(
図3参照)。
【0017】
図2に示すように、台座部6は、縁部5の表面よりも、やや裏面側に陥没した形状に形成されている。台座部6の表面には、複数(本形態では20個)の成形刃7が固定されている。ただし、成形刃7の個数は限定されない。台座のうち、成形刃7が載置される部分には、表裏方向に貫通するねじ孔(図示せず)が形成されている。成形刃7は、台座部6の周方向について等間隔に取付けられている。ただし、成形刃7は、台座部6の周方向について、不均一な間隔で取付けられてもよい。
【0018】
台座部6には、ねじ孔の近傍に、成形刃7の位置決めをするための位置決め部(図示せず)を備える構成としても良い。
【0019】
(2)成形刃7
図3~
図6を参照して成形刃7について説明する。
図3に示すように、成形刃7は、ベース部4の台座部6に、ベース部4の周方向に沿って配置される。成形刃7がベース部4に取付けられた状態で、成形刃7は、ベース部4の径方向に突出する形態とされる。本形態においては、成形刃7は、ベース部4の径方向の内方に突出している。
【0020】
図4に示すように、成形刃7は、表裏方向から見て略台形状に形成された固定部8と、略台形状の固定部8のうち短辺から突出する凸部9(刃部の一例)と、を備える。成形刃7の表面、裏面および側面については、ダイヤモンド、CBN等、公知の砥粒を配置しても良い。
【0021】
図4に示すように、固定部8は、表面8A側から裏面8B側に陥没するとともに、ボルト8Eを収容するための、ボルト用凹部8Cを有する。ボルト用凹部8Cの内形状は円形状に形成されている。ボルト用凹部8Cの底部には、固定部8を表裏方向に貫通する挿通孔8Dが形成されている。挿通孔8Dには、ボルト8Eの軸部(図示せず)が挿通される構成となっている。
【0022】
台座部6のねじ孔に対応する位置に、固定部8の挿通孔8Dを整合させるように配置し、ボルト8Eをボルト用凹部8Cの内部に、表側から挿通させる。さらに、ボルト8Eの軸部を固定部8の挿通孔8D内に挿通し、台座部6のねじ孔にボルト8Eの軸部を螺合することにより、ベース部4の台座部6に、成形刃7が着脱可能に固定される(
図3参照)。ただし、成形刃7は、例えば、リベット締め等の公知の手法により、ベース部4に着脱不能に固定される構成としても良い。
【0023】
図5に示すように、凸部9は、固定部8からの突出方向について先細り形状に形成されている。凸部9のうち、固定部8との境界部分は、やや幅広に形成された肩部9Aとされる。凸部9の形状は、はすば歯車2の歯面の歯直角断面と同一断面形状に形成されている。換言すると、凸部9の形状は、はすば歯車2と他の歯車(図示せず)との噛み合い部分の歯直角断面と同一形状に形成されている。
【0024】
図6に示すように、固定部8の表面8Aは、固定部8の裏面8Bに対して傾斜して形成されている。固定部8の裏面8Bに直交する仮想的な直線L1と、固定部8の表面8Aに直交する仮想的な直線L2とは、角度θで交差している。表裏方向について、固定部8の左側の長さ寸法は、固定部8の右側の長さ寸法よりも短く形成されている。
【0025】
凸部9の表面は、固定部8の表面8Aに面一に形成されている。また、凸部9の裏面は、固定部8の表面8Aと平行に形成されている。これにより、固定部8の裏面8Bに直交する仮想的な直線L1と、凸部9の表面に直交する仮想的な直線L2とは、角度θで交差している。成形刃7がベース部4に取付けられた状態で、固定部8の裏面8Bに直交する仮想的な直線L1は、ベース部4の中心軸線Ctに一致するように形成されている。よって、成形刃7がベース部4に取付けられた状態で、成形刃7の凸部9の表面は、凸部9の表面に直交する仮想的な直線L2が、ベース部4の中心軸線Ct(L1)に対して、角度θで交差する形状に形成されている。
【0026】
成形刃7がベース部4に取付けられた状態で、ベース部4の中心軸線Ct(L1)に対する、凸部9の表面のなす角度は、はすば歯車2の歯のねじれ角と同一の角度に設定されている。ただし、創成研削される歯車が平歯車の場合には、ねじれ角は0°となる。
【0027】
凸部9は、固定部8の表面8Aと直交する方向に沿って所定の厚みTを有する板状に形成されている。固定部8の表面8Aと直交する方向について、凸部9の厚みTは、固定部8よりも小さく形成されている。また、凸部9の表裏方向についての厚さは、凸部9の固定部8からの突出高さ(凸部9の刃丈)よりも小さい。
【0028】
2.砥石成形加工装置10の構成
本発明の砥石成形工具1が適用された砥石成形加工装置10の構成について、
図7~
図8を参照して説明する。
図7に示すように、砥石成形加工装置10は、例えば、直交3軸(X軸線、Y軸線、Z軸線)方向の移動、並びに、砥石の中心軸線Cg、砥石成形工具1の中心軸線Ct、およびA軸線回りの揺動が可能な6軸マシニングセンタである。
【0029】
砥石成形加工装置10は、ベッド11、X軸スライダ12、砥石ガイド壁13、Z軸スライダ14、Y軸スライダ15、砥石成形工具ガイド壁16、砥石成形工具主軸17、および砥石主軸18等を備える。
【0030】
ベッド11の上面には、一対のX軸ガイドレール19AがX軸線方向に延びて配置されている。一対のX軸ガイドレール19Aの上には、X軸スライダ12がX軸線方向へ移動可能に配置されている。X軸スライダ12には、砥石主軸18が配置されている。砥石主軸18は取付け部材20Bを介して砥石車3を、砥石車3の中心軸線Cgの周りに回転可能に支持する。X軸スライダ12には、Y軸線方向に延びる砥石ガイド壁13が配置されている。
【0031】
図8に示すように、砥石ガイド壁13には円弧の一部分の形状に形成された一対のA軸ガイドレール19Bが配置されている。この一対のA軸ガイドレール19Bにガイドされることにより、砥石主軸18はA軸線回りに揺動可能に支持される。
【0032】
図7に示すように、ベッド11の上面には、砥石成形工具ガイド壁16が、Y軸線方向に延びて形成されている。砥石成形工具ガイド壁16には、一対のY軸ガイドレール19CがY軸線方向に長尺に形成されている。一対のY軸ガイドレール19Cには、Y軸スライダ15がY軸線方向に移動可能に支持されている。
【0033】
Y軸スライダ15の上面には、Z軸線方向に長尺な一対のZ軸ガイドレール19Dが配置されている。一対のZ軸ガイドレール19Dの上には、Z軸スライダ14が配置されている。一対のZ軸ガイドレール19Dにガイドされることにより、Z軸スライダ14がZ軸線方向に移動可能に配置されている。
【0034】
Z軸スライダ14の上には、砥石成形工具主軸17が配置されている。砥石成形工具主軸17は取付け部材20Aを介して砥石成形工具1を、砥石成形工具1の中心軸線Ctの周りに回転可能に支持する。
【0035】
3.砥石成形加工装置10の動作
図9~
図13を参照して、砥石成形加工装置10の動作について説明する。
図9に示すように、砥石成形加工装置10が起動されると、配置工程が実行される(S1)。
図10に示すように、配置工程においては、砥石車3の中心軸線Cgと、砥石成形工具1の中心軸線Ctとが交差角αを有するように砥石車3と砥石成形工具1とを相対的に傾斜して配置する。相対的に傾斜して配置するとは、砥石車3の中心軸線Cgを傾斜して配置する場合、砥石成形工具1の中心軸線Ctを傾斜させて配置する場合、および、砥石車3の中心軸線Cgと砥石成形工具1の中心軸線Ctの双方を傾斜させて配置する場合を含む。この段階においては、砥石車3と、砥石成形工具1とは、Z軸線方向に離れて配置されている。なお、砥石成形工具1に配置された成形刃7の形状は、説明の便宜のため模式的に示している。
【0036】
図11に示すように、本形態においては、砥石車3は、Z軸線方向から見て、砥石成形工具1のX軸線方向の一方の内側縁に重なるように配置される。
【0037】
続いて、
図9に示すように、成形加工工程が実行される(S2)。成形加工工程においては、砥石車3および砥石成形工具1を同期回転させた状態で、砥石車3を、砥石成形工具1の中心軸線Ctに沿って、前進および後進させることにより、砥石車3を成形加工する。
図12に、砥石車3を、砥石成形工具1の中心軸線Ctに沿って前進させた状態を示す。成形加工工程においては、砥石車3を、
図10に示す位置と、
図12に示す位置との間を移動させる動作を繰り返す。なお、砥石成形工具1に配置された成形刃7の形状は、説明の便宜のため模式的に示している。
【0038】
図13に、
図11中の矢印Pで示す方向から見た、砥石成形工具1の成形刃7を示す。二点鎖線にて砥石車3を示す。砥石車3は歯溝3Aを有する。歯溝3Aは、説明の便宜のため、模式的に直線で示してある。砥石車3の中心軸線Cgと、砥石成形工具1の中心軸線Ctとに交差角αを持たせ、砥石車3と砥石成形工具1の回転が同期させ、砥石車3の表面に切込みを与える。角度βは砥石車3に形成された外歯のねじれ角である。
【0039】
ベース部4(砥石成形工具1)の中心軸線Ctと、凸部9の表面に直交する仮想的な直線L2とのなす角度θは、砥石車3の外歯のねじれ角βから、砥石車3と砥石成形工具1との交差角αを減じた差に設定されている。なお、念のため、砥石車3の外歯のねじれ角βと、はすば歯車2の歯のねじれ角とは異なるものであることを付言する。
【0040】
砥石車3の成形加工が終了すると、砥石成形加工装置10の動作が終了する。
【0041】
4.本形態の作用効果
続いて、本形態の作用効果について説明する。本形態の砥石成形工具1は、はすば歯車2を創成研削するための外歯車状の砥石車3を成形する砥石成形工具1であって、円環状のベース部4と、ベース部4に、ベース部4の周方向に配置されるとともに、ベース部4の径方向に突出する成形刃7と、を備え、成形刃7の凸部9は、はすば歯車2の歯面の歯直角断面と同一形状を有するとともに、所定の厚みTを有しており、ベース部4の中心軸線Ctに対して、はすば歯車2の歯のねじれ角と同一角度分傾けて配置されている。
【0042】
砥石成形工具1の成形刃7は、砥石車3の表面を、はすば歯車2の歯形を成形可能な形状に成形する。このため、砥石成形工具1の成形刃7は、はすば歯車2の歯形に対応する形状に形成される。このため、本形態の成形刃7の凸部9は、はすば歯車2の歯面の歯直角断面と同一形状を有する。仮に、砥石成形工具1の成形刃7の形状を、はすば歯車2の歯形と同一形状に形成しようとすると、砥石成形工具1の軸線方向に傾斜した形状に加工することになる。このため、砥石成形工具1を成形することが容易ではない。
【0043】
本形態の成形刃7の凸部9は、はすば歯車2の歯面の歯直角断面を備え、且つ、所定の厚みTを有する。これにより、砥石成形工具1の成形刃7の形状を加工するために、高精度な歯車成形研削盤が不要となり、砥石成形工具1の成形が容易となる。この結果、砥石車3の成形加工のコストを低減させることができる。
【0044】
また、本形態の成形刃7の凸部9は板状に形成されているので、加工が一層容易となる。これにより、砥石車3の成形加工のコストをさらに低減させることができる。
【0045】
本形態の成形刃7は、ベース部4に対して着脱可能に取付けられる。これにより、一部の成形刃7が摩耗した場合に、摩耗した成形刃7のみを交換することができる。これにより、一部の成形刃7が摩耗したときに砥石成形工具1全体を交換する場合に比べて、砥石成形加工の費用を削減できる。
【0046】
また、本形態によれば、ベース部4には、複数の成形刃7が着脱可能に取付けられるので、砥石車3の成形加工の効率を向上させることができる。
【0047】
本形態の成形刃7は、ベース部4の径方向について凸状に形成されている。これにより、砥石車3の隣り合う2つの歯の側面を、1つの成形刃7で成形することができる。
【0048】
本形態の成形刃7は、ベース部4の径方向内側に突出しているので、はすば歯車2が内歯車であり、砥石成形工具1が内歯車である形態に好適に適用できる。
【0049】
本形態は、砥石成形工具1を用いた砥石成形方法であって、砥石車3の中心軸線Cgと、砥石成形工具1の中心軸線Ctとが所定の交差角αを有するように砥石車3と砥石成形工具1とを相対的に傾斜して配置する配置工程(S1)と、砥石車3および砥石成形工具1を同期回転させた状態で、砥石車3を、砥石成形工具1の中心軸線Ctに沿って、相対的に前進および後進させることにより、砥石車3を成形加工する成形加工工程(S2)と、を備える。
【0050】
本形態によれば、砥石成形工具1の成形刃7の形状を加工するために、高精度な歯車成形研削盤が不要となるので、砥石成形工具1を容易に成形することが可能となり、砥石車3の成形加工のコストを低減させることができる。
【0051】
(実施形態2)
続いて、
図14を参照して実施形態2について説明する。本形態の成形刃27は、1つの基部28に、間隔を空けて、2つのボルト用凹部8Cを有する。各ボルト用凹部8Cの底部には挿通孔が形成されている。
【0052】
また、本形態の基部28は、左右方向に連なって並ぶ、2つの凸部9を有する。本形態においては、2つの凸部9の間に位置する肩部9Aは、1つに連なった形状に形成されている。本形態によれば、1つの成形刃27をベース部4に取付けることにより、ベース部4に2つの凸部9を設けることになる。このため、ベース部4と成形刃27とを組立てて砥石成形工具1を製造する効率を向上させることができる。
【0053】
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0054】
(実施形態3)
続いて、
図15を参照して実施形態3について説明する。本形態の成形刃37は、ベース部4の径方向について凹状に形成されている。凹状に形成された成形刃37の内形状は、はすば歯車2の歯直角断面と同一形状を有する。凹状に形成された成形刃37の内側面39が刃部に相当する。本形態によれば、砥石車3の1つの歯の両側面を、1つの成形刃37で成形することができる。
【0055】
(実施形態4)
続いて、
図16~
図17を参照して実施形態4について説明する。
図16(a)に、はすば歯車42と、このはすば歯車42を創成研削するための外歯車状の砥石車43と、を示す。はすば歯車42は、円盤状に形成されており、外周面にはすば(図示せず)が形成されている。はすば歯車42はCw軸回りに回転し、砥石車43はCg軸回りに回転する。砥石車43は外歯車状に形成されている。
図16(b)には、砥石車43と、この砥石車43を成形する砥石成形工具41と、を示す。砥石車43はCg軸回りに回転し、砥石成形工具41はCt軸回りに回転する。砥石成形工具41は、円盤状に形成されており、外周面に成形刃7が配されている。
【0056】
図17に示すように、本形態の砥石成形工具41は、ベース部44と、成形刃7と、を備える。ベース部44の材料は特に限定されず、金属、樹脂、セラミック等、任意の材料を適宜に選択できる。本形態のベース部44は、例えば金属製とすることができる。また、ベース部44は円盤状に形成されている。
【0057】
(1)ベース部44
ベース部44は、径方向について外周側に位置する台座部46と、径方向について台座部46よりも内方に位置する取付け基部48と、を有する。
【0058】
取付け基部48は、ベース部44の表側から裏側に陥没する複数(本形態では12個)のボルト用凹部45Aが形成されている。ただし、ボルト用凹部45Aの個数は限定されない。ボルト用凹部45Aの内形状は円形状に形成されている。ボルト用凹部45Aの底部には、図示しないボルトの軸部が挿通されるボルト挿通孔(図示せず)が形成されている。ボルト用凹部45Aおよびボルト挿通孔45B内にボルト45Cが挿通されて、取付け部材20Aに螺合されることにより、ベース部44が取付け部材20Aに固定されるようになっている。
【0059】
台座部46は、取付け基部48の表面よりも、やや裏面側に陥没した形状に形成されている。台座部46の表面には、複数(本形態では20個)の成形刃7が固定されている。ただし、成形刃7の個数は限定されない。台座のうち、成形刃7が載置される部分には、表裏方向に貫通するねじ孔(図示せず)が形成されている。成形刃7は、台座部46の周方向について等間隔に取付けられている。ただし、成形刃7は、台座部46の周方向について、不均一な間隔で取付けられてもよい。
【0060】
本形態においては、成形刃7がベース部44に取付けられた状態で、成形刃7がベース部44の径方向外側に突出して配置されている。
【0061】
本形態の砥石成形工具41は、はすば歯車42が外歯車であり、砥石成形工具41が外歯車である形態に好適に用いることができる。
【0062】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【0063】
(1)砥石成形工具1の中心軸線Ctと砥石車3の中心軸線Cgとの交差角α、砥石車3のねじれ角β、および、砥石成形工具1の中心軸線Ctと成形刃7のなす角度θの数値は特に限定されず、任意に設定することができる。
【0064】
(2)はすば歯車2、砥石車3および砥石成形工具1の歯数に特に制限はなく、任意の歯数とすることができるが、例えば、はすば歯車2の歯数が80個、砥石車3の歯数が31個、砥石成形工具1の歯数が20個としてもよい。
【0065】
(3)本形態の砥石成形工具1は、砥石車3のツルーイングにも、ドレッシングにも適用できる。
【0066】
(4)凸部9の厚みTは、固定部8と同じまたは大きくても良いし、凸部9の刃丈と同じまたは大きくても良い。
【符号の説明】
【0067】
1,41:砥石成形工具、2,42:はすば歯車、3,43:砥石車、4,44:ベース部、7,27,37:成形刃、9:凸部、Cg:砥石車の中心軸線、Ct:砥石成形工具の中心軸線、S1:配置工程、S2:成形加工工程、α:砥石車と砥石成形工具の交差角β:砥石車のねじれ角、θ:固定部の裏面に直交する仮想的な直線と、凸部の表面に直交する仮想的な直線のなす角度