(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115412
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】電気集塵機
(51)【国際特許分類】
B03C 3/41 20060101AFI20240819BHJP
B03C 3/40 20060101ALI20240819BHJP
A61L 9/16 20060101ALI20240819BHJP
F24F 8/192 20210101ALI20240819BHJP
F24F 8/80 20210101ALI20240819BHJP
【FI】
B03C3/41 A
B03C3/40 A
B03C3/41 H
B03C3/41 J
B03C3/41 Z
A61L9/16 Z
F24F8/192
F24F8/80 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021092
(22)【出願日】2023-02-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、環境省、革新的な省CO2型感染症対策技術等の実用化加速のための実証事業「電気集塵と深紫外線LEDによるハイブリッド式空間浮遊ウイルス不活化装置の実証」委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391022614
【氏名又は名称】学校法人幾徳学園
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】松本 伸
(72)【発明者】
【氏名】瑞慶覧 章朝
(72)【発明者】
【氏名】池田 祐斗
(72)【発明者】
【氏名】片田 涼太
(72)【発明者】
【氏名】眞下 史樹
【テーマコード(参考)】
4C180
4D054
【Fターム(参考)】
4C180AA07
4C180AA16
4C180DD11
4C180HH02
4C180HH03
4C180HH05
4D054AA11
4D054BA02
4D054BA07
4D054BB02
4D054BB15
4D054BB26
4D054BC31
4D054EA11
(57)【要約】
【課題】高集塵率かつ低オゾン濃度で空気を清浄する電気集塵機の提供。
【解決手段】本発明の一態様による電気集塵機は、吸い込み口から吹き出し口に空気を流すダクトと、前記ダクト内から前記吹き出し口に空気を排出するファンと、前記ダクト内の空気に含まれる微粒子を帯電させる帯電部と、帯電した微粒子を静電力によって捕集する捕集部と、を備え、前記帯電部は、筒状の接地電極と、前記接地電極の内側に配置された荷電極と、を有し、前記荷電極は、複数の繊維の根元を束ねた複数のブラシ電極と、前記複数のブラシ電極を支持する支持電極と、を有し、前記複数の繊維の先端は、前記接地電極の内周面と対向し、前記接地電極の内周面から離隔している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸い込み口から吹き出し口に空気を流すダクトと、
前記ダクト内から前記吹き出し口に空気を排出するファンと、
前記ダクト内の空気に含まれる微粒子を帯電させる帯電部と、
帯電した微粒子を静電力によって捕集する捕集部と、を備え、
前記帯電部は、筒状の接地電極と、前記接地電極の内側に配置された荷電極と、を有し、
前記荷電極は、複数の繊維の根元を束ねた複数のブラシ電極と、前記複数のブラシ電極を支持する支持電極と、を有し、
前記複数の繊維の先端は、前記接地電極の内周面と対向し、前記接地電極の内周面から離隔している、電気集塵機。
【請求項2】
前記複数の繊維は、前記接地電極の中心軸を中心として前記接地電極の内周面に向けて放射状に配置されている、請求項1に記載の電気集塵機。
【請求項3】
隣り合う前記ブラシ電極間の距離をL1、前記繊維の長さをL2とすると、L1/L2は、0.3以上2.0以下である、請求項2に記載の電気集塵機。
【請求項4】
前記複数のブラシ電極は、前記接地電極の中心軸に対して回転対称となる位置に配置されている、請求項3に記載の電気集塵機。
【請求項5】
前記繊維の先端と、前記接地電極の内周面との距離は、10mm以上30mm以下である、請求項2に記載の電気集塵機。
【請求項6】
前記荷電極の半径をR1、前記接地電極の内径の1/2をR2とするとき、R1/R2は、0.7以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の電気集塵機。
【請求項7】
前記支持電極は、板状電極を含み、
前記板状電極の中心軸は、前記接地電極の中心軸と同じである、請求項6に記載の電気集塵機。
【請求項8】
複数の前記板状電極が、前記接地電極の中心軸に沿う方向において等間隔に配置されている、請求項7に記載の電気集塵機。
【請求項9】
前記支持電極は、棒状電極を含み、
前記棒状電極の中心軸は、前記接地電極の中心軸と同じである、請求項6に記載の電気集塵機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気集塵機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コロナ放電によって空気中の粒子を帯電させ、帯電した粒子を集塵極に付着させて捕集する、電気集塵機が知られている。電気集塵による粒子の除去性能は、粒子への帯電量に依存する。粒子を帯電させる電極に印加する電圧を上昇させると、コロナ放電が発生するとともに放電電流が上昇、すなわち空間のイオン濃度が上昇して粒子への帯電量が増加し、集塵率が向上する。一方、電極に印加する電圧が上昇すると、コロナ放電により生成されるオゾンの濃度が上昇する。空間のオゾン濃度は、環境基準などにより所定の基準値以下にすることが定められていることから、オゾン濃度を低減させるため、荷電極としてブラシ状の電極を用いた電気集塵機が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、対向電極は、気流の流通路を遮るように配置され、複数の開口部を有する平板状に形成され、放電極は、多数の線材を束ねた放電ブラシであり、複数の開口部に対応して複数配置され、放電極の前記放電ブラシの束の中心の先端部は、開口部の中心線上において、該開口部を貫通することなく該開口部から離間して配置された荷電装置を備えた空気清浄機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の空気清浄機では、荷電装置に高電圧を印加中、放電ブラシの多数の線材のうちコロナ放電が発生する線材が刻々と切り替わった場合、対向電極の開口部の周縁部と、コロナ放電が発生する線材との放電ギャップが変化する。また、各ブラシ間にイオン濃度の薄い空間ができやすい。よって、放電状態が不均一となり、帯電効率の低下により集塵効率が低下する可能性がある。
【0006】
本開示の一態様は、高集塵率かつ低オゾン濃度で空気を清浄する電気集塵機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様では、吸い込み口から吹き出し口に空気を流すダクトと、前記ダクト内から前記吹き出し口に空気を排出するファンと、前記ダクト内の空気に含まれる微粒子を帯電させる帯電部と、帯電した微粒子を静電力によって捕集する捕集部と、を備え、前記帯電部は、筒状の接地電極と、前記接地電極の内側に配置された荷電極と、を有し、前記荷電極は、複数の繊維の根元を束ねた複数のブラシ電極と、前記複数のブラシ電極を支持する支持電極と、を有し、前記複数の繊維の先端は、前記接地電極の内周面と対向し、前記接地電極の内周面から離隔している、電気集塵機が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、高集塵率かつ低オゾン濃度で空気を清浄できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態の電気集塵機の構成例を模式的に示す図である。
【
図2】捕集部及び帯電部の構造例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】帯電部内の帯電ユニットの構造例を透過的に示す斜視図である。
【
図5】ブラシ電極及び支持電極の他の例を示す平面図である。
【
図6】帯電部内の帯電ユニットの第1変形例を透過的に示す斜視図である。
【
図7】帯電部内の帯電ユニットの第2変形例を透過的に示す斜視図である。
【
図8】帯電部内の帯電ユニットの第3変形例を示す図である。
【
図9】放電電流とオゾン濃度との関係を実測した結果の一例を示す図である。
【
図10】オゾン濃度と集塵率との関係を実測した結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を説明する。
【0011】
図1は、一実施形態の電気集塵機の構成例を模式的に示す図である。
図1に示す電気集塵機100は、空気に含まれる微粒子を帯電させ、帯電した微粒子を静電力によって捕集する機器である。電気集塵機100は、空気を清浄化するための空気清浄機とも称される場合がある。
【0012】
電気集塵機100は、空気に含まれる微粒子を帯電及び捕集するための装置類を収納する筐体10を備える。筐体10は、電気集塵機100の外部の空気を吸い込む吸い込み口3と、筐体10内の装置類により清浄化された空気を電気集塵機100の外部に吹き出す吹き出し口6とを有する。
【0013】
図1に示す例では、吸い込み口3は、筐体10の一方の端部(例えば、下部)に設けられ、吹き出し口6は、筐体10の他方の端部(例えば、上部)に設けられる。吸い込み口3及び吹き出し口6の各々の位置は、これに限られず、他の箇所でもよい。吸い込み口3及び吹き出し口6の各々の設置数は、一つでも複数でもよい。
【0014】
電気集塵機100は、主な構成として、ダクト7、帯電部2、捕集部1、ファン5、高圧電源4及び制御装置9を備える。ダクト7、帯電部2、捕集部1、及びファン5は、筐体10内に設けられている。なお、
図1に示す各構成要素の位置関係は、単なる一例であり、これに限られない。
【0015】
ダクト7は、吸い込み口3と吹き出し口6との間に介在し、吸い込み口3から吹き出し口6に空気を流す導管であり、筐体10の内部に存在する。ダクト7は、吸い込み口3から吹き出し口6まで接続され、吸い込み口3から流入する空気を吹き出し口6に向けて流す流路である。
【0016】
帯電部2は、筐体10の内部のダクト7内の空気(以下、"空気A"とも称する)に含まれる微粒子を帯電させる装置である。帯電部2は、例えば、空気Aに含まれる微粒子をコロナ放電によって帯電させる。
【0017】
微粒子とは、ウイルス又は細菌であるが、ウイルス又は細菌を含む、エアロゾル状の飛沫や塵埃などの微小物質でもよい。微粒子には、微小粒子状物質(PM2.5)が含まれてもよい。PM2.5とは、空気中に浮遊する粒子のうち、粒径が2.5μm以下の粒子をいう。
【0018】
捕集部1は、帯電部2を通過した空気Aから、帯電した微粒子を静電力により捕集する装置である。捕集部1は、例えば10nm以上100μm以下の粒径の微粒子を捕集する能力を有する場合、30nm程度の小さなウイルス、100nm程度の新型コロナウィルス(COVID-19)、又は数μmのウイルス飛沫や病原性細菌を捕集できる。なお、捕集部1が捕集可能な微粒子の粒径は、特に制限されなくてもよい。
【0019】
ファン5は、筐体10の内部のダクト7内から吹き出し口6に空気Aを排出する。ファン5は、電気集塵機100の外部の空気を吸い込み口3から筐体10の内部のダクト7内に導入し、帯電部2及び捕集部1を通過した空気Aを吹き出し口6に排出する。ファン5は、モータによって回転する。ファン5の回転によって、空気Aは、吹き出し口6から排出される。
【0020】
高圧電源4は、帯電部2に高圧電圧を印加する電源装置である。
【0021】
制御装置9は、ユーザからの操作指示内容に応じて、電気集塵機100の運転を制御する。例えば、制御装置9は、ユーザからの操作指示内容に応じて、帯電部2、捕集部1、及びファン5を作動又は停止させる。また、制御装置9は、所定の開閉条件に従って、吸い込み口3及び吹き出し口6の開閉を制御する。制御装置9の機能は、メモリに記憶されたプログラムによってCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが動作することにより実現される。制御装置9の機能は、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)によって実現されてもよい。
【0022】
捕集部1は、所望の捕集機能を満たせば、その配置位置は、特に限定されない。
図1に示す例では、捕集部1は、帯電部2と吹き出し口6との間で、帯電した微粒子を空気Aから静電力により捕集する。これにより、帯電部2において帯電した微粒子が捕集部1に供給されやすくなるので、帯電した微粒子の捕集能力が向上する。ファン5が帯電部2と吹き出し口6との間に介在する場合、捕集部1は、帯電部2とファン5との間で、帯電した微粒子を空気Aから静電力により捕集するのが好ましい。これにより、帯電した微粒子の捕集能力が向上する。
【0023】
ファン5は、所望の排出機能を満たせば、その配置位置は、特に限定されない。
図1に示す例では、ファン5は、捕集部1と吹き出し口6との間に配置されている。空気Aに含まれる微粒子は、捕集部1において捕集されるので、ファン5が捕集部1と吹き出し口6との間に配置されることで、ファン5が汚れた空気Aで汚染し難くなる。その結果、例えば、ファン5の交換や洗浄などのメンテナンスにおける安全性が向上する。
【0024】
電気集塵機100は、空気Aに含まれるオゾン(コロナ放電によって生成されたオゾンを含んでよい)の濃度を低減させるフィルタを、捕集部1と吹き出し口6との間に備えてもよい。これにより、吹き出し口6から吹き出す空気に含まれるオゾンの濃度を低減する効果が高まる。ファン5が捕集部1と吹き出し口6との間に介在する場合、フィルタは、ファン5の上流側に設けられることが好ましく、具体的には、ファン5と捕集部1との間に介在するのが好ましい。フィルタをファン5の上流側に設けることにより、電線被覆の劣化などオゾンによる機器の劣化を抑制する効果が高まる。フィルタの触媒として、例えば、酸化マンガンを使用することで、オゾン濃度の低減効果は向上する。なお、ファン5が捕集部1と吹き出し口6との間に介在する場合、フィルタは、ファン5と吹き出し口6との間に介在してもよい。
【0025】
図2は、捕集部及び帯電部の構造例を模式的に示す斜視図である。
図2に示す捕集部1は、複数の荷電平板電極11と複数の接地平板電極12を有する集塵部である。荷電平板電極11と接地平板電極12は、一定の間隔で交互に配置されている。空気Aは、荷電平板電極11と接地平板電極12との隙間を通る。荷電平板電極11と接地平板電極12は、空気Aの流れに平行となるように配置されている。
【0026】
印加電圧の抑制及び高集塵率を実現するため、荷電平板電極11と接地平板電極12との隣接間隔は、3mm以上12mm以下が好ましい。数キロ~数十キロボルト(例えば、1kV~20kV)の電圧が荷電平板電極11と接地平板電極12との間に印加されることで、荷電平板電極11と接地平板電極12との間に高電界が発生する。帯電部2において正の電荷に帯電した微粒子は、捕集部1を通過する際に、荷電平板電極11と接地平板電極12との間の電界により、接地平板電極12に付着する。捕集部1において微粒子が除去された空気は、ファン5により吹き出し口6から排出される。
【0027】
図2に示す帯電部2は、コロナ放電を発生させる。帯電部2は、一又は複数の帯電ユニット20を有する。
図2は、同じ形状の複数の帯電ユニット20が平面的に配列された構造を例示するが、これに限らず、複数の帯電ユニット20は、空気Aの流通方向に沿って直列に積層されていてもよい。
【0028】
図3は、帯電部内の帯電ユニットの構造例を透過的に示す斜視図であり、
図4は、ブラシ電極及び支持電極の平面図であり、
図5は、ブラシ電極及び支持電極の他の例を示す平面図である。帯電ユニット20は、筒状の接地電極22と、接地電極22の内側に配置された荷電極50を含む。帯電部2は、高圧電源4により生成される高電圧を荷電極50と接地電極22との間に印加することで、荷電極50と接地電極22との間にコロナ放電を発生させ、筒状の接地電極22の内側を通る微粒子を帯電させる。
【0029】
接地電極22は、空気Aが通るダクト7の一部を構成する部分であり、空気Aが流れる上下方向に貫通する。接地電極22は、接地電極22の中心軸32に平行な方向に開口する。
図3は、接地電極22が円筒状の場合を例示するが、これに限らず、接地電極22は角筒状であってもよい。
【0030】
荷電極50は、正極性でも負極性でもよい。正極性の荷電極50とは、接地電極22に対してプラスの高電圧が印加される電極であり、負極性の荷電極50とは、接地電極22に対してマイナスの高電圧が印加される電極である。
【0031】
荷電極50は、複数の繊維231の根元を束ねた複数のブラシ電極23と、複数のブラシ電極23を支持する支持電極21とを有する。ブラシ電極23の複数の繊維231の先端は、接地電極22の内周面26と対向し、接地電極22の内周面26から離隔している。即ち、接地電極22の内周面26と繊維231の先端との間にギャップがある。帯電部2は、高圧電源4により生成される高電圧をブラシ電極23と接地電極22との間に印加することで、ブラシ電極23と接地電極22との間にコロナ放電を発生させ、筒状の接地電極22の内側を通る微粒子を帯電させる。
【0032】
ブラシ電極23は、オゾン発生量を抑制できる。よって、荷電極50が、ブラシ電極23を有することにより、電気集塵機100は、低オゾン濃度で空気を清浄できる。また、ブラシ電極23は、複数の繊維231のうちコロナ放電が発生する繊維231が刻々と切り替わるため、電極が汚れ難く、また、一部の繊維231が消耗しても他の繊維231が代替し、高い耐久性を発揮できるため、円板電極等の他の電極よりも寿命を延ばすことができる。よって、荷電極50が、ブラシ電極23を有することにより、電気集塵機100は、長寿命化を図ることができる。
【0033】
また、ブラシ電極23の複数の繊維231の先端が、筒状の接地電極22の内周面26と対向し、接地電極22の内周面26から離隔していることにより、ブラシ電極23の複数の繊維231のうちコロナ放電が発生する繊維231が刻々と切り替わっても、接地電極22の内周面26と、コロナ放電が発生する繊維231の先端との距離G(ギャップ長)が変化することを抑制することができる。よって、ブラシ電極23の一部でコロナ放電が集中し、帯電効率が低下することを抑制できる。以上により、電気集塵機100は、高集塵率かつ低オゾン濃度で空気を清浄できる。
【0034】
ブラシ電極23の繊維231としては、例えば、直径1μm~10μm、長さ1mm~10mmのカーボン又は金属からなる繊維231を用いることができる。繊維231の直径は、小さい程好ましい。繊維231の直径が小さい程、酸素分子の解離及び電離可能領域が小さくなるため、電気集塵機100は、オゾン濃度を低減することができる。1本のブラシ電極23における繊維231の数は、特に限定されないが、例えば、5000本~7000本とすることができる。
【0035】
ブラシ電極23は、複数の繊維231と、複数の繊維231の根元を束ねて保持する保持部材232とを有していてよい。この場合、保持部材232は、支持電極21に固定されている。
図3及び
図4で示す例では、保持部材232は、支持電極21から突出しているが、支持電極21の周縁より内側又は支持電極21の内部に配置されていてもよい。ブラシ電極23は、
図5に示すように、保持部材232を有していなくてもよく、支持電極21に繊維231が植え付けられていてもよい。
【0036】
1本のブラシ電極23に流れる放電電流は、10μA/本以下であると、ブラシ電極23の劣化が抑制され、耐放電性能が向上する。好ましくは、5μA/本以下であり、より好ましくは、3μA/本以下である。
【0037】
図2から
図4に示す例では、1つの支持電極21に支持されたブラシ電極23の数は12本であるが、これに限らず、12本以上であってもよく、12本以下であってもよい。
【0038】
荷電極50は、絶縁部材25及びロッド24を有していてよい。絶縁部材25及びロッド24は、筒状の接地電極22の内側に配置されている。絶縁部材25及びロッド24は、接地電極22から接地電極22の中心軸31に平行な方向に突き出てもよい。
【0039】
絶縁部材25は、荷電極50と筐体10との間を絶縁する部材であり、例えば、碍子である。絶縁部材25は、例えば、筐体10の下面に対して固定される。
【0040】
ロッド24は、接地電極22の中心軸31に平行な方向に延伸する部材であり、絶縁部材25に固定される。ロッド24と絶縁部材25は、例えば、絶縁部材25の上端部に形成された雌ねじとロッド24の下端部に形成された雄ねじとによって結合される。
【0041】
支持電極21は、板状電極21aを含んでいてよい。支持電極21が板状電極21aを含む場合、支持電極21の外周縁部に、ブラシ電極23が設けられていてよい。板状電極21aは、ロッド24に固定される。例えば、ロッド24は、板状電極21aの中心孔27(
図4)を貫通する。そして、板状電極21aとロッド24は、板状電極21aの内周面に形成された雌ねじとロッド24の外周面に形成された雄ねじとによって結合される。
【0042】
板状電極の中心軸32(
図4)は、接地電極22の中心軸31(
図3)と同じであることが好ましい。これにより、接地電極22の内周面26と繊維231の先端との間の距離Gを接地電極22の全周に亘って均一にすることができ、複数のブラシ電極23のうち、一部のブラシ電極23でコロナ放電が集中し、帯電効率が低下することをより抑制できる。よって、電気集塵機100は、より高集塵率、かつ低オゾン濃度で空気を清浄できる。
【0043】
板状電極21aの外周縁の形状は、例えば、円形が好ましいが、楕円又は六角形以上の多角形でもよい。板状電極21aの厚さは、特に限定されないが、0.4mm~1.5mmとすることができる。
【0044】
ブラシ電極23の複数の繊維231は、接地電極22の中心軸31を中心として接地電極22の内周面26に向けて放射状に配置されていることが好ましい。これにより、接地電極22の中心軸31を中心として360°に亘って、接地電極22の内周面26と、コロナ放電が発生するブラシ電極23の繊維231の先端との距離が変化することを抑制することができる。よって、ブラシ電極23の一部でコロナ放電が集中し、帯電効率が低下することをより抑制できる。以上により、電気集塵機100は、より高集塵率、かつ低オゾン濃度で空気を清浄できる。
【0045】
図4及び
図5に示すように、隣り合うブラシ電極23間の距離をL1、繊維231の長さをL2とすると、L1/L2は、0.3以上2.0以下であることが好ましい。ここで、隣り合うブラシ電極23間の距離とは、電圧印加前における隣り合うブラシ電極23間の最短距離を意味する。繊維231の長さとは、保持部材232又は支持電極21から露出している繊維231の長さを意味する。ブラシ電極に高電圧を印加すると、ブラシ電極の繊維が外側に広がることが知られており、隣り合うブラシ電極間の距離が短い程、隣り合うブラシ電極の繊維同士で電界緩和が起こり、放電が抑制される。一方、隣り合うブラシ電極間の距離が長い程、コロナ放電による帯電領域以外を通過する粒子の数が増えるため、集塵率が低下する。本実施形態の電気集塵機100では、L1/L2が、0.3以上2.0以下であることにより、十分な放電電流が得られると共に、接地電極22の内周面26と繊維231の先端との間の全領域に亘って帯電領域を形成することができるため、より高集塵率で、かつ低オゾン濃度で空気を清浄できる。
【0046】
複数のブラシ電極23は、筒状の接地電極22の中心軸31に対して回転対称となる位置に配置されていることが好ましい。
図2から
図4に示す例では、12本のブラシ電極23が、接地電極22の中心軸31に対して12回転対称となる位置に配置されている。複数のブラシ電極23が、接地電極22の中心軸31に対して回転対称となる位置に配置されていることにより、接地電極22の中心軸31を中心として360°に亘ってより均一に帯電領域を形成することができ、接地電極22の内側を中心軸31に沿う方向に流通する空気Aに含まれる微粒子をより均一に帯電させることができる。よって、電気集塵機100は、より高集塵率で空気を清浄で、かつ低オゾン濃度で空気を清浄できる。
【0047】
ブラシ電極23の繊維231の先端と、接地電極22の内周面26との距離Gは、10mm以上30mm以下であることが好ましい。距離Gは、12mm以上28mm以下であることがより好ましく、14mm以上26mm以下であることがさらに好ましい。距離Gが、10mm以上30mm以下であることにより、ブラシ電極23の繊維231の先端と、接地電極22の内周面26との間で、安定したコロナ放電を発生させることができ、筒状の接地電極22の内側を通る微粒子をより均一に帯電させることができる。よって、電気集塵機100は、より高集塵率で、かつ低オゾン濃度で空気を清浄できる。
【0048】
荷電極50の半径をR1、接地電極の内径の1/2(半径)をR2とするとき、R1/R2(半径比P)は、0.7以下であることが好ましい。ここで、荷電極50の半径とは、支持電極21の中心軸32からブラシ電極23の繊維231の中心軸33の先端までの長さを意味する。半径比Pの下限は、特に限定されないが、例えば、0.3としてもよい。半径比Pは、0.35以上0.65以下であることがより好ましく、0.40以上0.60以下であることがさらに好ましい。半径比Pが、0.7以下であることにより、ブラシ電極23の繊維231の先端と、接地電極22の内周面26との間で、安定したコロナ放電を発生させることができ、筒状の接地電極22の内側を通る微粒子をより均一に帯電させることができる。よって、電気集塵機100は、より高集塵率、かつ低オゾン濃度で空気を清浄できる。
【0049】
接地電極22の内周面26の断面(中心軸31に直交する断面)の形状は、荷電極50の支持電極21の外周縁の形状と相似であることが好ましい。その形状は、例えば、円形が好ましいが、楕円又は六角形以上の多角形でもよい。接地電極22の内周面26の断面の形状が、荷電極50の支持電極21の外周縁の形状と相似であることにより、接地電極22の内周面26と繊維231の先端との間の距離Gを接地電極22の全周に亘ってより均一にすることができ、複数のブラシ電極23のうち、一部のブラシ電極23でコロナ放電が集中し、帯電効率が低下することを抑制できる。よって、電気集塵機100は、より高集塵率で、かつ低オゾン濃度で空気を清浄できる。
【0050】
(帯電ユニットの変形例)
次に、帯電ユニット20の変形例について説明する。
図6は、帯電部内の帯電ユニットの第1変形例を透過的に示す斜視図である。第1変形例の帯電ユニット20は、複数のブラシ電極23が支持された板状電極21aが3つ設けられている点で、
図3に示す帯電ユニット20の構造例と異なる。
図6に示すように、複数のブラシ電極23が支持された板状電極21aが、接地電極22の中心軸31に沿う方向に複数設けられていてよい。第1変形例では、複数のブラシ電極23が支持された板状電極21aの数は、3つであるが、これに限らず任意の数を選択することができる。これにより、電気集塵機100の空気Aの処理容量の増加に応じて、ブラシ電極23の数を増加させ、電気集塵機100は、集塵性能を向上させることができる。
【0051】
複数の板状電極21aは、接地電極22の中心軸31に沿う方向において等間隔に配置されていることが好ましい。これにより、接地電極22の中心軸31に沿う方向に亘って均一に帯電領域を形成することができ、接地電極22の内側を中心軸31に沿う方向に流通する空気Aに含まれる微粒子をより均一に帯電させることができる。よって、電気集塵機100は、より高集塵率で、かつ低オゾン濃度で空気を清浄できる。
【0052】
図7は、帯電部内の帯電ユニットの第2変形例を透過的に示す斜視図である。第2変形例の帯電ユニット20は、支持電極21が棒状電極21bを含む点で、
図3に示す帯電ユニット20の構造例と異なる。棒状電極21bの断面(中心軸31に直交する断面)の形状は、例えば、円形が好ましいが、楕円又は六角形以上の多角形でもよい。
【0053】
棒状電極21bの中心軸は、接地電極22の中心軸31と同じであることが好ましい。これにより、接地電極22の内周面26と繊維231の先端との間の距離Gを接地電極22の全周に亘って均一にすることができ、複数のブラシ電極23のうち、一部のブラシ電極23でコロナ放電が集中し、帯電効率が低下することを抑制できる。よって、電気集塵機100は、より高集塵率で、かつ低オゾン濃度で空気を清浄できる。
【0054】
図8は、帯電部内の帯電ユニットの第3変形例を示す図である。第3変形例の帯電ユニット20は、板状電極21aの外縁の形状が六角形である点、板状電極21aがロッド24の上端に設けられている点、及び接地電極22の内周面26の断面の形状が六角形である点で
図3に示す帯電ユニット20の構造例と異なる。接地電極22の内周面26の断面の形状が、荷電極50の支持電極21の外周縁の形状と相似であることにより、接地電極22の内周面26と繊維231の先端との間の距離Gを接地電極22の全周に亘って均一にすることができ、複数のブラシ電極23のうち、一部のブラシ電極23でコロナ放電が集中し、帯電効率が低下することを抑制できる。よって、電気集塵機100は、より高集塵率で、かつ低オゾン濃度で空気を清浄できる。
【0055】
板状電極21aの六角形の各辺は、接地電極22の内周面26の六角形の対応する辺に平行に対向することが好ましい。第3変形例では、板状電極21aがロッド24の上端に設けられているが、これに限らず、板状電極21aは、ロッド24の軸方向における中央、又は下方に設けられていてもよい。なお、
図6から
図8に示す、第1から第3変形例の帯電ユニット20においても、ブラシ電極23は、保持部材232を有していなくてもよく、支持電極21に繊維231が植え付けられていてもよい。
【実施例0056】
次に、実施例について説明する。
【0057】
<電気集塵機の作製>
[実施例1]
帯電ユニット、帯電部及び捕集部をそれぞれ以下のように作製し、それらを用いて電気集塵機を作製した。
【0058】
(帯電ユニット及び帯電部の作製)
板状電極21a、ブラシ電極23、ロッド24、絶縁部材25、接地電極22を用いて、帯電ユニット20を9個作製した。ブラシ電極23は20本使用し、ブラシ電極23の繊維231の先端が接地電極22の内周面と対向するように配置した。ブラシ電極23は、接地電極22の中心軸31に対して回転対称となる位置に配置し、隣り合うブラシ電極23間の距離は5~6mmとした。L1(隣り合うブラシ電極23間の距離)/L2(繊維231の長さ)は、1.0~1.2であった。また、繊維の先端と、接地電極の内周面との距離は、22.5mmとした。R1(荷電極の半径をR1)/R2(接地電極の内径の1/2)は、0.5であった。そして、作製した1個の帯電ユニット20を110mm×110mmの角型のアクリル製のダクト7内に同一平面上に均一に配列し、帯電部2を得た。各部材の詳細は下記の通りである。
・板状電極21a:直径60mm、厚さ0.3mmのステンレス製の円板電極
・ブラシ電極23:直径約8μmのカーボンからなる繊維を約6000本を根元で束ね、ブラシ電極23の中心軸33方向の長さが2mmの保持部材232で保持し、繊維の露出部分の長さが5.5mmであるブラシ電極
・ロッド24:直径20mmのアルミニウム製のロッド
・絶縁部材25:ムライト製の絶縁部材(軸方向の長さ30mm)
・接地電極22:内径90mmのステンレス製の円筒
【0059】
(捕集部の作製)
110mm×110mmの角型のアクリル製のダクト7の平行な2面に幅0.5mm、深さ5mmのスリットを10mmピッチで形成した。荷電平板電極11及び接地平板電極12として、厚さ0.5mm、高さ125mm、幅119mmのステンレス板を用い、ダクト7に設けられた複数のスリットに荷電平板電極11及び接地平板電極12を交互に挿し込んで捕集部1を得た。なお、複数の荷電平板電極11間の導通および複数の接地平板電極12間の導通は、ジャンパー線により確保した。
【0060】
帯電部2と捕集部1の各々のダクト7を積層した電気集塵部の上部に、定格風量20m3/hのファン5が設けられた110mm×110mmの角型のアクリル製のダクト7を連結し、ガスを吹き出し実施例1の電気集塵機100を得た。
【0061】
<集塵率及びオゾン濃度の評価>
得られた実施例1の電気集塵機について、集塵率及びオゾン濃度を測定し評価した。
【0062】
図9は、放電電流とオゾン濃度との関係を実測した結果の一例を示す図である。なお、
図9に示す結果は、ブラシ電極23と接地電極22の間に正電極性直流電圧を印加して測定したものである。放電電流が0.09mAのとき、オゾン濃度0.03ppm以下を合格、オゾン濃度0.03ppm超えを不合格として評価を行った。
図9に示すように、実施例1の電気集塵機では、放電電流が0.09mAのとき、オゾン濃度は、0.025ppmであったことから合格と評価した。
【0063】
次に、
図9で得られたオゾン濃度の測定結果と集塵率の測定結果から、オゾン濃度と集塵率との関係を求めた。
図10は、オゾン濃度と集塵率との関係を実測した結果の一例を示す図である。オゾン濃度0.025ppmにおいて、集塵率85%以上を合格、集塵率85%未満を不合格として評価を行った。
図10に示すように、実施例1の電気集塵機では、オゾン濃度0.025ppmにおいて、96%以上(96.2%)の集塵率が得られたことから合格と評価した。
【0064】
従来のブラシ電極を備える電気集塵機では、オゾン濃度を低減できることが知られているが、集塵率を高めることが困難であったところ、実施例1の電気集塵機では、高集塵率と低オゾン濃度を両立できることを確認した。
【0065】
本実施形態の電気集塵機100は、例えば、業務用の空気清浄機、家庭用の空気清浄機等に適用することができる。
【0066】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更などを行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0067】
例えば
図1のように、帯電部2は、捕集部1とは別体に構成された構造に限られない。帯電部2は、帯電部2で帯電した微粒子を静電力によって捕集する捕集部を組み込んだ構造でもよい。例えば、接地電極22を捕集部1の捕集板として使用されてもよい。