(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115414
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】長尺物の交換装置、その組立方法及び長尺物の交換方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20240819BHJP
B66C 7/00 20060101ALI20240819BHJP
B66C 17/00 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
E04G21/16
B66C7/00
B66C17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021097
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000203977
【氏名又は名称】日鉄テックスエンジ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】523053026
【氏名又は名称】株式会社土屋工業
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100202913
【弁理士】
【氏名又は名称】武山 敦史
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】武田 和仁
(72)【発明者】
【氏名】細谷 真樹
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 正一
(72)【発明者】
【氏名】川合 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 藤一郎
(72)【発明者】
【氏名】土屋 龍司
【テーマコード(参考)】
2E174
3F202
3F203
【Fターム(参考)】
2E174BA03
2E174CA03
2E174CA06
2E174CA16
3F202AA02
3F202CA02
3F202CB03
3F203CA03
(57)【要約】
【課題】建屋内での操業への影響を抑制しながら建屋内の長尺物を交換することが可能な交換装置、その組立方法及び交換方法を提供する。
【解決手段】交換装置1は、建屋の屋根上に着脱自在に設置され、屋根に設けられたトラス32に荷重を伝達するように構成された吊り架台11A、11Bと、吊り架台11A、11Bに支持され、CRGを吊り上げると共にCRGの長手方向に垂直な方向に移動させることが可能なチェーンブロック12A、12Bと、を備える。吊り架台11A、11Bは、互いに間隔を空けて設置され、互いに平行に延びる一対の梁部材と、各梁部材の長手方向の異なる位置に配置されるように各梁部材に接続され、トラス32に取り付けられた状態で各梁部材を支持する複数の柱脚と、を備えてもよい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋内に設置された長尺物を交換する交換装置であって、
前記建屋の屋根上に着脱自在に設置され、前記屋根に設けられた構造部材に荷重を伝達するように構成された吊り架台と、
前記吊り架台に支持され、前記長尺物を吊り上げると共に前記長尺物の長手方向に垂直な方向に移動させることが可能な吊り上げ手段と、
を備える交換装置。
【請求項2】
前記吊り架台は、
互いに間隔を空けて設置され、互いに平行に延びる一対の梁部材と、
各梁部材の長手方向の異なる位置に配置されるように各梁部材に接続され、前記構造部材に取り付けられた状態で各梁部材を支持する複数の柱脚と、を備え、
前記吊り上げ手段は、各柱脚の間に配置されるように各梁部材に支持されている、
請求項1に記載の交換装置。
【請求項3】
前記一対の梁部材には、各梁部材に交差する方向に延びる複数のブリッジ部材がそれぞれ相互に接続されている、
請求項2に記載の交換装置。
【請求項4】
前記吊り架台は、前記構造部材に取り付けられた一対の柱状部材と、各柱状部材に接続された状態で水平方向に延びる水平部材と、を備える門型架台であり、
前記吊り上げ手段は、前記水平部材に対してその長手方向に移動可能に支持されている、
請求項1に記載の交換装置。
【請求項5】
請求項1に記載の交換装置の組立方法であって、
前記屋根上に互いに平行に延びる一対の台車レールを設置し、前記一対の台車レール上に運搬台車を設置する工程と、
前記運搬台車に前記吊り架台を載置して走行させることにより前記吊り架台を運搬する工程と、
前記運搬台車により運搬された前記吊り架台を前記屋根上に設置する工程と、
前記屋根上に設置された前記吊り架台に前記吊り上げ手段を取り付ける工程と、
を含む組立方法。
【請求項6】
請求項1に記載の交換装置を用いた長尺物の交換方法であって、
前記建屋に設置された前記長尺物を吊り上げ、前記長尺物の長手方向に垂直な方向である横方向に移動させた後、前記建屋の床面に下ろす工程と、
前記建屋の床面に置かれた長尺物を吊り上げ、前記横方向と反対側の方向に移動させた後、前記建屋のうち前記長尺物が設置されていた箇所に下ろす工程と、
を含む交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺物の交換装置、その組立方法及び長尺物の交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場の建屋内には、重量物の運搬のために天井クレーンが設置されていることがある。天井クレーンは、建屋内に設置されたクレーンランウェイガーター(Crane Runway Girder:CRG)上を、天井クレーンの本体部であるクレーンガーターが走行するように構成されている。CRGでは、長年の使用によりき裂が発生することがあり、このような場合には交換が必要となる。
【0003】
CRGの交換では、建屋内に配置したレッカーを用いてCRGを吊り上げる手法が一般的であるが、施工対象箇所の周辺の設備や資材が妨げとなりレッカーを配置できず、CRGの交換ができないことがある。このような問題を解決する手法として、例えば、特許文献1には、建屋内に設置された架台と、架台に対して水平移動可能に支持され、運搬対象のCRGを吊り上げる吊り上げ手段と、を備える交換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の交換装置では、建屋内に高さのある架台を組み立てた上で、架台に吊り上げ手段を取り付ける必要がある。また、交換作業が終了した後に架台から吊り上げ手段を撤去し、架台を解体する必要もある。このため、建屋内で長時間にわたる作業が必要となり、建屋内での操業に多大な影響を及ぼす。このような問題は、建屋内におけるCRGの交換作業のみならず、他の長尺物の交換作業においても存在している。
【0006】
本発明は、このような背景に基づいてなされたものであり、建屋内での操業への影響を抑制しながら建屋内の長尺物を交換することが可能な交換装置、その組立方法及び交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る交換装置は、
建屋内に設置された長尺物を交換する交換装置であって、
前記建屋の屋根上に着脱自在に設置され、前記屋根に設けられた構造部材に荷重を伝達するように構成された吊り架台と、
前記吊り架台に支持され、前記長尺物を吊り上げると共に前記長尺物の長手方向に垂直な方向に移動させることが可能な吊り上げ手段と、
を備える。
【0008】
前記吊り架台は、
互いに間隔を空けて設置され、互いに平行に延びる一対の梁部材と、
各梁部材の長手方向の異なる位置に配置されるように各梁部材に接続され、前記構造部材に取り付けられた状態で各梁部材を支持する複数の柱脚と、を備え、
前記吊り上げ手段は、各柱脚の間に配置されるように各梁部材に支持されてもよい。
【0009】
前記一対の梁部材には、各梁部材に交差する方向に延びる複数のブリッジ部材がそれぞれ相互に接続されてもよい。
【0010】
前記吊り架台は、前記構造部材に取り付けられた一対の柱状部材と、各柱状部材に接続された状態で水平方向に延びる水平部材と、を備える門型架台であり、
前記吊り上げ手段は、前記水平部材に対してその長手方向に移動可能に支持されてもよい。
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係る組立方法は、
前記交換装置の組立方法であって、
前記屋根上に互いに平行に延びる一対の台車レールを設置し、前記一対の台車レール上に運搬台車を設置する工程と、
前記運搬台車に前記吊り架台を載置して走行させることにより前記吊り架台を運搬する工程と、
前記運搬台車により運搬された前記吊り架台を前記屋根上に設置する工程と、
前記屋根上に設置された前記吊り架台に前記吊り上げ手段を取り付ける工程と、
を含む。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第3の観点に係る交換方法は、
前記交換装置を用いた長尺物の交換方法であって、
前記建屋に設置された前記長尺物を吊り上げ、前記長尺物の長手方向に垂直な方向である横方向に移動させた後、前記建屋の床面に下ろす工程と、
前記建屋の床面に置かれた長尺物を吊り上げ、前記横方向と反対側の方向に移動させた後、前記建屋のうち前記長尺物が設置されていた箇所に下ろす工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、建屋内での操業への影響を抑制しながら建屋内の長尺物を交換することが可能な交換装置、その組立方法及び交換方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係る交換装置が設置される建屋の構成を示す正面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る交換装置及び仮設構造物の配置を示す平面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る交換装置の構成を示す平面図である。
【
図4】
図3の交換装置をA-A線で切断した断面図である。
【
図5】(a)は、本発明の実施の形態に係る交換装置の構成を示す平面図であり、(b)は、(a)の交換装置をB-B線で切断した断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る吊り架台と屋根のトラスとの接続箇所の構成を示す平面図である。
【
図7】(a)、(b)は、それぞれ本発明の実施の形態に係る交換装置が交換対象CRGを建屋の床面に吊り下げる様子を示す図である。
【
図8】(a)、(b)は、それぞれ本発明の実施の形態に係る交換装置が新設CRGを建屋の架台に吊り上げる様子を示す図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る仮設構造物の構成を示す平面図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る運搬台車の構成を示す正面図である。
【
図11】(a)、(b)は、それぞれ本発明の実施の形態に係る運搬台車が架台を運搬する様子を示す平面図、側面図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係る仮設構造物の構成を示す正面図である。
【
図13】本発明の実施の形態に係るCRG交換の施工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図14】本発明の変形例に係る交換装置の構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る長尺物の交換装置、その組立方法及び長尺物の交換方法を、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面においては、同一又は同等の部分に同一の符号を付す。
【0016】
実施の形態に係る交換装置は、天井クレーンが設置された建屋の屋根上に設置され、天井クレーンを走行可能に支持する交換対象CRGを建屋の床面に下ろし、代わりの新規CRGを床面から吊り上げ、元々交換対象CRGが設置されていた箇所に下ろす装置である。実施の形態に係る交換装置は、建屋の屋根上で設置や撤去の作業を行うことができ、従来よりも建屋内での操業への影響を抑制できる。
【0017】
以下、実施の形態に係る交換装置が
図1に示すような切妻屋根に設置される場合を例に説明する。切妻屋根は、屋根の最頂部の棟から地上に向かって2つの傾斜面が延びる断面が山形の屋根である。以下の説明では、建屋3の棟が延びる方向をY軸方向、建屋3の棟に垂直であって水平面上に延びる方向をX軸方向、上下方向をZ軸方向とする直交座標系を用いる。
【0018】
交換装置1を設置するため、建屋3の正面側には、地上から屋根に向かって延び、作業者が昇降可能な仮設足場が設けられている。また、建屋3の屋根上には、仮設足場から屋根の谷桶に向かって延びる仮設通路が設けられている。そして、
図2に示すように、仮設足場の途中には、資材置場が設けられている。建屋3の屋根上には、屋根の棟が延びる方向(Y軸方向)に延び、仮設構造物2の一部を構成する一対の仮設通路と並行に交換装置1が設置されている。
【0019】
仮設構造物2は、交換装置1を屋根上に設置するために屋根上に一時的に構築される構造物であり、作業員による資材の運搬や交換装置1の組立及び解体を支援する。
図2では、一例として、交換装置1は、トラスT3からトラスT4まで延びるように屋根上に設置され、仮設構造物2は、トラスT1からトラスT4まで延びるように屋根上に設置されている。トラスT1~T4は、交換装置1及び仮設構造物2からの荷重を支えることが可能な屋根の構造部材の一例である。
【0020】
次に、実施の形態に係る交換装置1の構成を説明する。
図3及び
図4に示すように、交換装置1は、屋根上に着脱自在に設置される長尺な吊り架台11と、吊り架台11の長手方向(Y軸方向)の異なる位置において幅方向(X軸方向)に間隔を空けてそれぞれ2つずつ支持され、運搬対象のCRGを吊り下げる4つのチェーンブロック12と、を備える。吊り架台11は、その両端を屋根に設けられた一対のトラスT3、T4により支持されている。トラスT3、T4は、建屋3の柱33と連結して屋根を支えるトラスであり、交換装置1及び仮設構造物2からの荷重を受けるのに好適である。以下、トラスT1、T2、…を区別する必要がない場合に、これらを総称してトラス32と表現することがある。なお、トラスT3、T4の間に配置された3つのトラスt1、t2、t3は、柱33と直接連結していないトラスである。
【0021】
各チェーンブロック12は、
図3の記号+で示すように吊り架台11の両端部から離して配置されている。チェーンブロック12は、その取り付け作業を行う作業者からの荷重が屋根に加わることを考慮すると、作業者がトラスt1、t3の上に載った状態で取り付け可能な位置に設置することが好ましい。吊り架台11の長手方向において同一の位置に支持された2つのチェーンブロック12は、CRGの略同一箇所に接続され、吊り架台11の長手方向から見ると全体としてV字状に配置されている。屋根板31のうちチェーンブロック12に対応する箇所には、それぞれチェーンブロック12を建屋3内に吊すために開口31aが設けられている。
【0022】
好ましくは、一方の吊り架台11は、架台34に設置された交換対象CRGの真上に交換対象CRGに平行に延び、他方の吊り架台11は、床面に置かれた新設CRGの真上に一方の吊り架台11に平行に延びるように、屋根板31の一部を取り外した状態でトラス32上に設置されている。このため、一方の吊り架台11は、単独で架台34から交換対象CRGを吊り上げることができ、他方の吊り架台11は、単独で床面から新設CRGを吊り上げることができる。
【0023】
以下、理解を容易にするため、建屋3の柱33に近い側の吊り架台11と建屋3の棟に近い側の吊り架台11とを、それぞれ吊り架台11A、11Bと表現し、吊り架台11A、11Bのそれぞれに支持されているチェーンブロック12をチェーンブロック12A、12Bと表現することがある。
【0024】
図5(a)及び
図5(b)に示すように、吊り架台11は、互いに平行な向きに延びる一対の梁部材11aと、各梁部材11aに対して交差する向きに延び、一対の梁部材11aを相互に接続する複数のブリッジ部材11bと、屋根上に設置され、各梁部材11aの長手方向に対向する両端部で各梁部材11aをそれぞれ支持する4つの柱脚11cと、を備える。
【0025】
梁部材11aは、例えば、長尺な鋼材で構成されている。梁部材11aは、複数のH型鋼の部材を直列に連結して構成されている。隣り合うH型鋼の部材は、板状の連結金具を介して互いに着脱自在に接続されている。具体的には、H型鋼の部材及び連結金具のそれぞれに形成された貫通孔にボルトやピンを挿通して固定されている。
【0026】
梁部材11aには、それぞれ底面部において長手方向の異なる位置にチェーンブロック12を取り付ける金具11dが設けられている。金具11dは、U字状の部材であり、その両端部が梁部材11aの底面部に固定されている。金具11dは、それぞれ別個のチェーンブロック12を支持する。
【0027】
ブリッジ部材11bは、各梁部材11aの中間部が下向きに撓むことを防止する。隣接するブリッジ部材11bは、梁部材11aと共にトラス構造を構成するように互い違いに向きを変えて配置されている。ブリッジ部材11bは、一方の梁部材11aの下側の板部材と他方の梁部材11aの上側の板部材とを接続している。これは、各梁部材11aが切妻屋根の高さの異なる部分にそれぞれ設置されるためである。梁部材11aとブリッジ部材11bとは、それぞれに形成された貫通孔にボルトやピンが挿通されることにより固定されている。
【0028】
柱脚11cは、水平面に対して傾いているトラス32に取り付けられ、梁部材11aからの荷重をトラス32に伝達する。柱脚11cは、本体11eと基板11fとを備える。本体11eは、ブロック状の部材であり、その底面部がトラス32の傾斜に合わせて傾斜している。基板11fは、本体11eの底面部に設けられ、屋根に設置されたときに本体11eの上面が水平面上に延びるように構成されている。
【0029】
図6に示すように、吊り架台11の基板11fには複数の貫通孔が設けられ、屋根板31に開けられた開口31bから露出しているトラス32にも、対応する貫通孔が設けられている。このため、基板11fの貫通孔とトラス32の貫通孔とが位置合わせされた状態で、これらの貫通孔にボルトやピンが挿通されることにより、トラス32に対して柱脚11cを着脱自在に取り付けることができる。
以上が、交換装置1の構成である。
【0030】
次に、
図7及び
図8を参照して、実施の形態に係る交換装置1の動作の流れを説明する。以下、交換対象CRGの長手方向の異なる位置においてチェーンブロック12A、12Bが玉掛けされ、交換対象CRGが接続されていた他のCRGから切り離されているものとする。
【0031】
交換対象CRGの撤去工程では、まず、
図7(a)に示すように、一対のチェーンブロック12Aで建屋3内に設置された交換対象CRGをZ軸方向に吊り上げる。このとき、一対のチェーンブロック12Bは、一対のチェーンブロック12Aによる吊り上げの妨げとならないように緩めた状態しておく。
【0032】
次に、交換対象CRGが接続されていた他のCRGから完全に離れたことを確認した後、
図7(b)に示すように、一対のチェーンブロック12Bを徐々に緊張させると共に、一対のチェーンブロック12Aを徐々に緩める。すると、交換対象CRGは吊り架台11A側からを吊り架台11B側に向けて横方向(+X方向)に移動する。
【0033】
チェーンブロック12Aに加えられた荷重が抜けて緩み、チェーンブロック12Bが荷重を受けてZ軸方向に延びていることを確認した後、一対のチェーンブロック12Bを用いて交換対象CRGを建屋3内の床面に向けて下ろし、交換対象CRGの撤去工程が終了する。
【0034】
他方、新設CRGの設置工程については、交換対象CRGの撤去と逆の手順で実施すればよい。具体的には、まず、
図8(a)に示すように、一対のチェーンブロック12Bを緊張させて新規CRGをZ軸方向に吊り上げる。このとき、一対のチェーンブロック12Aは、一対のチェーンブロック12Bによる吊り上げの妨げとならないように緩めた状態しておく。
【0035】
次に、新設CRGが架台34よりも上の高さに持ち上げられたことを確認した後、
図8(b)に示すように、一対のチェーンブロック12Aを徐々に緊張させると共に、一対のチェーンブロック12Bを徐々に緩める。すると、新規CRGは吊り架台11B側から吊り架台11A側に向けて横方向(-X方向)に移動する。
【0036】
一対のチェーンブロック12Bに加えられた荷重が抜けて緩み、一対のチェーンブロック12Aが荷重を受けてZ軸方向に延びていることを確認した後、一対のチェーンブロック12Aを用いて新規CRGを架台の目標位置に向けて下ろし、新設CRGの設置工程が終了する。
以上が、交換装置1の動作の流れである。
【0037】
次に、実施の形態に係る交換装置1を屋根上に設置するのに用いる仮設構造物2の構成を説明する。
図9に示すように、仮設構造物2は、屋根上に仮設された一対の仮設通路21と、仮設通路21の間に配置された一対の台車レール22と、台車レール22上を走行する2台の運搬台車23と、仮設通路21の間に配置され、台車レール22の真上に延びるように組み立てられた単管やぐら24と、単管やぐら24により支持され、運搬対象の資材を吊り下げるチェーンブロック(図示せず)と、を備える。運搬対象の資材は、例えば、梁部材11aを構成するH型鋼の部材11a1である。なお、
図9では、一対のH型鋼の部材11a1が屋根上において一対の台車レール22の外側に置かれている。
【0038】
仮設通路21は、屋根の棟方向(Y軸方向)に延びるように屋根上に載せられる足場板と、足場板から上向きに立ち上がり、足場板の長手方向に延びる柵と、を備える。足場板は、例えば、木製の板部材である。柵は、単管パイプで組み立てられ、作業者が把持可能な手摺を備える。
【0039】
各台車レール22は、運搬台車23の車輪が転動可能なレールであり、例えば、断面コの字状の鋼材で形成されている。一対の台車レール22の間と各台車レール22の左側及び右側とには、それぞれ互いに平行に延びる3列の足場板が設置されている。
【0040】
図10に示すように、運搬台車23は、資材を載せることが可能な台車本体23aと、台車本体23aの底面部に取り付けられた4つの脚部材23bと、脚部材23bにより回転可能に支持された4つの車輪23cと、台車本体23aから上向きに延び、作業者により把持される取っ手23dと、を備える。
【0041】
台車本体23aの左右に配置された脚部材23bは、それぞれ長さが異なっている。これは、各台車レール22が屋根において高さの異なる位置に配置され、運搬台車23が台車レール22に設置された場合に台車本体23aの載置面が水平面上に配置されるためである。車輪23cは、モータのような動力源により回転するように構成されてもよく、取っ手23dは、台車本体23aに対して着脱可能に構成されてもよい。
【0042】
H型鋼の部材11a1を運搬するとき、
図11に示すように2台の運搬台車23が1セットで用いられる。2台の運搬台車23では、それぞれの台車本体23aに部材11a1の両端が載置され、ラッシング23eのような固定手段を用いて部材11a1を台車本体23aに固定した状態で運搬する。
【0043】
図9に戻り、単管やぐら24及びチェーンブロックは、運搬台車23により運搬された資材を吊り上げる吊り上げ手段の一例である。単管やぐら24は、単管パイプで組み立てられ、一対の台車レール22の上方に配置されるように屋根上に設置されている。単管やぐら24は、台車本体23aから部材11a1を吊り上げることができるように部材11a1の両端を玉掛けできる位置に配置されている。単管やぐら24は、少なくとも一部が屋根の構造部材上に設置されていることが好ましい。
【0044】
図12に示すように、単管やぐら24は、一対の台車レール22の前後方向及び左右方向に間隔を空けて配置され、上方に延びる複数の柱状部材24aと、柱状部材24aにより支持され、台車レール22と直交する方向に延びる水平部材24bと、を備える。水平部材24bには、その長手方向(Y軸方向)に部材11a1を吊り上げるチェーンブロック25が移動可能に支持されている。
【0045】
仮設構造物2は、上記の構成を備えるため、屋根上に設置された一対の台車レール22上で運搬台車23を走行させることにより、屋外に設置されたレッカーのブームが届かない位置にも資材を簡単に搬入できる。また、運搬台車23により運搬された部材11a1をチェーンブロック25で吊り上げ、一対の台車レール22に交差する方向に移動させることにより、重量物である部材11a1を屋根上に簡単に設置できる。
以上が、仮設構造物2の構成である。
【0046】
次に、
図13のフローチャートを参照して、実施の形態に係る交換装置1及び仮設構造物2を用いたCRG交換の施工方法の流れを説明する。以下、
図1及び
図2に示すように屋根上に資材や作業者を搬入する仮設足場及び仮設通路が建屋3の正面や屋根上に設置されているものとする。
【0047】
まず、屋根上に仮設構造物2を設置する(ステップS1)。具体的な手順の一例を説明すると、まず、
図9に示すようにY軸方向に延びる一対の仮設通路21を屋根上に設置し、仮設通路21の間にY軸方向に延びる一対の台車レール22を設置する。一対の台車レール22の間と一対の台車レール22の左側及び右側とには、運搬台車23を押す作業者が通行するための3列の足場板を設置するとよい。次に、一対の台車レール22に運搬台車23を設置する。次に、
図12に示すように屋根上に複数の単管やぐら24を組み立て、各単管やぐら24に1つずつチェーンブロック25を吊り下げる。
【0048】
次に、仮設構造物2を用いて屋根上に交換装置1を設置する(ステップS2)。具体的な手順の一例を説明すると、まず、
図6に示すように屋根板31にトラス露出用の開口31bを設け、トラス32に柱脚11cを取り付ける。次に、運搬台車23を用いて梁部材11aを構成する部材11a1を運搬する。次に、単管やぐら24を用いて部材11a1を運搬台車23から屋根上に移し、屋根上で複数の部材11a1を連結して梁部材11aを形成する。そして、柱脚11cに梁部材11aを接続すると共に、梁部材11aとブリッジ部材11bとを接続することで、
図5に示すように吊り架台11を組み立てる。次に、
図3に示すように屋根板31にチェーンブロック用の開口31aを設け、梁部材11aの金具11dにチェーンブロック12を取り付け、建屋内に向けて吊り下げる。
【0049】
次に、交換装置1を用いてCRG更新を実施する(ステップS3)。具体的な手順の一例を説明すると、まず、建屋3内のCRGの直下に
図4に示すように仮設足場を組み立てる。次に、新規CRGをトラックで建屋3内に搬入する。次に、仮設足場上で交換対象CRGを接続されていた他のCRGから切り離し、
図7に示すように交換装置1を用いて架台34から交換対象CRGを撤去する。次に、
図8に示すように交換装置1を用いて新規CRGを架台34上の交換対象CRGが設置されていた箇所に設置し、仮設足場上で新設CRGと他のCRGとを連結する。
【0050】
次に、仮設構造物2を用いて屋根上に設置された交換装置1を撤去する(ステップS4)。具体的な手順の一例を説明すると、まず、チェーンブロック12を吊り架台11の金具11dから取り外し、屋根板31に開けられたチェーンブロック用の開口31bを塞ぐ。次に、柱脚11cから梁部材11aを切り離すと共に、梁部材11aとブリッジ部材11bとを切り離し、梁部材11aを解体する。次に、運搬台車23を用いて梁部材11aを構成していた各部材11a1を搬出する。次に、屋根上のトラス32から柱脚11cを取り外し、屋根板31に開けられたトラス露出用の開口31aを塞ぐ。
【0051】
次に、屋根上に設置された仮設構造物2を撤去する(ステップS5)。具体的な手順の一例を説明すると、まず、単管やぐら24からチェーンブロック25を取り外し、単管やぐら24を解体する。次に、台車レール22から運搬台車23を取り外し、台車レール22を屋根上から撤去する。合わせて一対の台車レール22の間と一対の台車レール22の左側及び右側とに設置された3列の足場板も撤去する。次に、一対の仮設通路21も屋根上から撤去する。
以上が、施工方法の流れである。
【0052】
以上説明したように、実施の形態に係る交換装置1は、建屋3の屋根上に着脱自在に設置され、屋根に設けられたトラス32に荷重を伝達するように構成された吊り架台11と、吊り架台11に支持され、CRGを吊り上げると共にCRGの長手方向に垂直な方向に移動させることが可能なチェーンブロック12と、を備える。このため、CRG交換工事の前後で建屋3内に複雑な仮設構造物を組み立てたり解体したりする必要がなく、建屋3内での操業に多大な影響を及ぼすことを回避できる。
【0053】
本発明は上記実施の形態に限られず、以下に述べる変形も可能である。
【0054】
(変形例)
上記実施の形態では、吊り架台11の梁部材11aが複数の部材11a1に分割可能に構成され、各部材が連結金具により直列に連結されていたが、本発明はこれに限られない。例えば、梁部材11aの長さが運搬台車23により運搬可能な程度であれば、梁部材11aを1つの連続するH型鋼で構成してもよい。
【0055】
上記実施の形態では、吊り架台11の梁部材11aがブリッジ部材11bにより接続されていたが、本発明はこれに限られない。例えば、梁部材11aの撓みが無視できる程度であれば、吊り架台11においてブリッジ部材11bを省略してもよい。
【0056】
上記実施の形態では、吊り架台11の梁部材11aの両端を一対の柱脚11cにより支持していたが、本発明はこれに限られない。例えば、梁部材11aの中間部を追加の柱脚11cにより支持してもよい。このとき、柱脚11cは、屋根のトラス32上に配置すればよい。
【0057】
また、一対の梁部材11aを各トラスに取り付けられた一対の門型架台により支持してもよい。各門型架台は、一対の柱状部材と、各柱状部材に接続された状態で水平方向に延びる水平部材と、を備え、水平部材は、2つの梁部材11aの隣り合う端部を支持すればよい。
【0058】
加えて、例えば、
図14に示すように一対のトラス32上に門型架台11gを設置し、各門型架台11gに対して1つのチェーンブロック12をY軸方向に移動可能に支持させてもよい。門型架台11gは、トラス32に取り付けられた一対の柱状部材11hと、各柱状部材11hに接続された状態で水平方向に延びる水平部材11iと、を備える。各水平部材11iには、その長手方向にそれぞれ走行機構13が走行可能に載置され、一対の走行機構13が梁部材11aの両端部を支持する。梁部材11aには、その長手方向に間隔を空けて2つのチェーンブロック12が支持されている。これにより各門型架台11gに支持された2つのチェーンブロック12をY軸方向に一緒に移動させることができる。
【0059】
上記実施の形態では、CRGを吊り上げる吊り上げ手段としてチェーンブロック12を用いていたが、本発明はこれに限られない。例えば、CRGを吊り上げるのに電動ホイストを用いてもよい。
【0060】
上記実施の形態では、CRGが屋根の棟が延びる方向に延びていたが、本発明はこれに限られない。例えば、CRGが屋根の棟が延びる方向に垂直な水平面上に延びている場合にも交換装置1を適用してもよい。このとき、一対の梁部材11aをCRGの長さに合わせて離して配置し、梁部材11aとCRGとが交差するようにチェーンブロック12によりCRGを支持すればよい。
【0061】
上記実施の形態では、交換装置1を切妻屋根上に設置していたが、本発明はこれに限られない。交換装置1を他の形状を備える屋根、例えば、片流れ屋根、寄棟屋根、鋸屋根に設置してもよい。
【0062】
上記実施の形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな実施の形態が可能である。実施の形態や変形例で記載した構成要素は自由に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した発明と均等な発明も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1 交換装置
11,11A,11B 吊り架台
11a 梁部材
11a1 部材
11b ブリッジ部材
11c 柱脚
11d 金具
11e 本体
11f 基板
11g 門型架台
11h 柱状部材
11i 水平部材
12,12A,12B チェーンブロック
13 走行機構
2 仮設構造物
21 仮設通路
22 台車レール
23 運搬台車
23a 台車本体
23b 脚部材
23c 車輪
23d 取っ手
23e ラッシング
24 単管やぐら
24a 柱状部材
24b 水平部材
25 チェーンブロック
3 建屋
31 屋根板
31a、31b 開口
32,T1~T4,t1~t3 トラス
33 柱
34 架台