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特開2024-115430ファイバ接続体、モードフィールドアダプタ、及びモードフィールドアダプタの製造方法
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  • 特開-ファイバ接続体、モードフィールドアダプタ、及びモードフィールドアダプタの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115430
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】ファイバ接続体、モードフィールドアダプタ、及びモードフィールドアダプタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/32 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
G02B6/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021125
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 究
【テーマコード(参考)】
2H137
【Fターム(参考)】
2H137AA17
2H137BA03
2H137BA04
2H137BA12
2H137BA13
2H137BC04
2H137CC11
2H137FA06
2H137HA00
(57)【要約】
【課題】2本の光ファイバの結合効率を更に向上させる技術を実現する。
【解決手段】ファイバ接続体(1)は、第1光ファイバ(11)、第2光ファイバ(12)、第1GRINレンズ型ファイバ(101)、及び第2GRINレンズ型ファイバ(102)を備える。第2光ファイバ(12)のモードフィールド径に対する第1光ファイバ(11)のモードフィールド径の比をrとして、第2GRINレンズ型ファイバ(102)の屈折率分布定数は、第1GRINレンズ型ファイバ(101)の屈折率分布定数のr倍に一致、又は、略一致する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光ファイバと、モードフィールド径が前記第1光ファイバよりも大きい第2光ファイバと、一方の端面が前記第1光ファイバの一方の端面に接続された第1GRINレンズ型ファイバと、屈折率分布定数が前記第1GRINレンズ型ファイバよりも小さく、一方の端面が前記第1GRINレンズ型ファイバの他方の端面に接続され、他方の端面が前記第2光ファイバの一方の端面に接続された第2GRINレンズ型ファイバと、を備え、
前記第2光ファイバのモードフィールド径に対する前記第1光ファイバのモードフィールド径の比をrとして、前記第2GRINレンズ型ファイバの屈折率分布定数は、前記第1GRINレンズ型ファイバの屈折率分布定数のr倍に誤差10%精度で一致し、
nを任意の自然数として、前記第1GRINレンズ型ファイバの長さは、前記第1GRINレンズ型ファイバのピッチ長のn/2+1/4倍に誤差10%精度で一致し、
mを任意の自然数として、前記第2GRINレンズ型ファイバの長さは、前記第2GRINレンズ型ファイバのピッチ長のm/2+1/4倍に誤差10%精度で一致する、
ことを特徴とするファイバ接続体。
【請求項2】
前記第2GRINレンズ型ファイバの屈折率分布定数は、前記第1GRINレンズ型ファイバの屈折率分布定数のr倍に一致する、
ことを特徴とする請求項1に記載のファイバ接続体。
【請求項3】
前記第1GRINレンズ型ファイバの長さは、前記第1GRINレンズ型ファイバのピッチ長のn/2+1/4倍に一致し、
前記第2GRINレンズ型ファイバの長さは、前記第2GRINレンズ型ファイバのピッチ長のm/2+1/4倍に一致する、
ことを特徴とする請求項1に記載のファイバ接続体。
【請求項4】
一方の端面が前記第2光ファイバの前記一方の端面において前記第2光ファイバのクラッドに接続された第3光ファイバを更に備えている、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載にファイバ接続体。
【請求項5】
第1光ファイバと、モードフィールド径が前記第1光ファイバよりも大きい第2光ファイバと、の接続を媒介するためのモードフィールドアダプタであって、
一方の端面が前記第1光ファイバの一方の端面に接続される第1GRINレンズ型ファイバと、屈折率分布定数が前記第1GRINレンズ型ファイバよりも小さく、一方の端面が前記第1GRINレンズ型ファイバの他方の端面に接続され、他方の端面が前記第2光ファイバの一方の端面に接続される第2GRINレンズ型ファイバと、を備え、
前記第2光ファイバのモードフィールド径に対する前記第1光ファイバのモードフィールド径の比をrとして、前記第2GRINレンズ型ファイバの屈折率分布定数は、誤差10%精度で前記第1GRINレンズ型ファイバの屈折率分布定数のr倍に誤差10%精度で一致し、
nを任意の自然数として、前記第1GRINレンズ型ファイバの長さは、前記第1GRINレンズ型ファイバのピッチ長のn/2+1/4倍に誤差10%精度で一致し、
mを任意の自然数として、前記第2GRINレンズ型ファイバの長さは、前記第2GRINレンズ型ファイバのピッチ長のm/2+1/4倍に誤差10%精度で一致する、
モードフィールドアダプタ。
【請求項6】
第1光ファイバと、モードフィールド径が前記第1光ファイバよりも大きい第2光ファイバと、との接続を媒介するためのモードフィールドアダプタの製造方法であって、
前記モードフィールドアダプタは、一方の端面が前記第1光ファイバの一方の端面に接続される第1GRINレンズ型ファイバと、屈折率分布定数が前記第1GRINレンズ型ファイバよりも小さく、一方の端面が前記第1GRINレンズ型ファイバの他方の端面に接続され、他方の端面が前記第2光ファイバの一方の端面に接続される第2GRINレンズ型ファイバと、を備え、
前記第2光ファイバのモードフィールド径に対する前記第1光ファイバのモードフィールド径の比をrとして、前記第2GRINレンズ型ファイバの屈折率分布定数の狙い値を、前記第1GRINレンズ型ファイバの屈折率分布定数のr倍に設定して、前記第2GRINレンズ型ファイバを作成する工程と、
nを任意の自然数として、前記第1GRINレンズ型ファイバの長さの狙い値を、前記第1GRINレンズ型ファイバのピッチ長のn/2+1/4倍に設定して、前記第1GRINレンズ型ファイバを切断する第1切断工程と、
mを任意の自然数として、前記第2GRINレンズ型ファイバの長さの狙い値を、前記第2GRINレンズ型ファイバのピッチ長のm/2+1/4倍に設定して、前記第2GRINレンズ型ファイバを切断する第2切断工程と、を含んでいる、
モードフィールドアダプタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モードフィールド径が異なる2本の光ファイバを、モードフィールドアダプタを介して接続することにより構成されるファイバ接続体に関する。また、本発明は、そのようなモードフィールドアダプタ、及び、そのようなモードフィールドアダプタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モードフィールド径の異なる2本の光ファイバを接続するためには、これら2本の光ファイバの間に、モードフィールド径を変換するためのモードフィールドアダプタを介在させる必要がある。一方の光ファイバから出射される光のモードフィールド径を他方の光ファイバのモードフィールド径に整合させないと、接続損失が著しく上昇し、その結果、結合効率が著しく低下するためである。例えば、シングルモードファイバとマルチモードファイバとを接続するためには、このようなモードフィールドアダプタが必要になる。特許文献1には、モードフィールドアダプタとしてGRINレンズを用いて、モードフィールド径の異なる2本の光ファイバを接続する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6442432号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術には、結合効率を更に向上させる余地が残されていることを、本願発明者らは見出した。本発明は、この点に鑑みてなされたものであり、その目的は、GRINレンズ型ファイバを介して2本の光ファイバを接続する際に、これら2本の光ファイバの結合効率を更に向上させる技術を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
態様1に係るファイバ接続体は、第1光ファイバと、モードフィールド径が前記第1光ファイバよりも大きい第2光ファイバと、一方の端面が前記第1光ファイバの一方の端面に接続された第1GRINレンズ型ファイバと、屈折率分布定数が前記第1GRINレンズ型ファイバよりも小さく、一方の端面が前記第1GRINレンズ型ファイバの他方の端面に接続され、他方の端面が前記第2光ファイバの一方の端面に接続された第2GRINレンズ型ファイバと、を備え、前記第2光ファイバのモードフィールド径に対する前記第1光ファイバのモードフィールド径の比をrとして、前記第2GRINレンズ型ファイバの屈折率分布定数は、前記第1GRINレンズ型ファイバの屈折率分布定数のr倍に誤差10%精度で一致し、nを任意の自然数として、前記第1GRINレンズ型ファイバの長さは、前記第1GRINレンズ型ファイバのピッチ長のn/2+1/4倍に誤差10%精度で一致し、mを任意の自然数として、前記第2GRINレンズ型ファイバの長さは、前記第2GRINレンズ型ファイバのピッチ長のm/2+1/4倍に誤差10%精度で一致する。
【0006】
上記の構成によれば、第1GRINレンズと第2GRINレンズとのうち、一方の屈折率分布定数の設定に自由度を有する。このため、この自由度を、第1光ファイバと第2光ファイバの結合効率を最大化するための自由度として利用することができる。これにより、第1光ファイバと第2光ファイバとを、従来よりも高い結合効率で光結合させることが可能になる。
【0007】
本発明の態様2に係るファイバ接続体においては、態様1の構成に加えて、前記第2GRINレンズ型ファイバの屈折率分布定数は、前記第1GRINレンズ型ファイバの屈折率分布定数のr倍に一致する、という構成が採用されている。
【0008】
上記の構成によれば、第1光ファイバと第2光ファイバとを、更に高い結合効率で光結合させることが可能になる。
【0009】
本発明の態様2に係るファイバ接続体においては、態様1又は2の構成に加えて、前記第1GRINレンズ型ファイバの長さは、前記第1GRINレンズ型ファイバのピッチ長のn/2+1/4倍に一致し、前記第2GRINレンズ型ファイバの長さは、前記第2GRINレンズ型ファイバのピッチ長のm/2+1/4倍に一致する、という構成が採用されている。
【0010】
上記の構成によれば、第1光ファイバと第2光ファイバとを、更に高い結合効率で光結合させることが可能になる。
【0011】
本発明の態様2に係るファイバ接続体においては、態様1~3の何れかの構成に加えて、一方の端面が前記第2光ファイバの前記一方の端面において前記第2光ファイバのクラッドに接続された第3光ファイバを更に備えている、という構成が採用されている。
【0012】
上記の構成によれば、第1光ファイバと第2光ファイバのコアとを光学結合すると共に、第3光ファイバと第2光ファイバのクラッドとを光学結合することができる。したがって、光コンバイナとして機能するファイバ接続体を実現することができる。
【0013】
本発明の態様5に係るモードフィールドアダプタは、第1光ファイバと、モードフィールド径が前記第1光ファイバよりも大きい第2光ファイバと、の接続を媒介するためのモードフィールドアダプタであって、一方の端面が前記第1光ファイバの一方の端面に接続される第1GRINレンズ型ファイバと、屈折率分布定数が前記第1GRINレンズ型ファイバよりも小さく、一方の端面が前記第1GRINレンズ型ファイバの他方の端面に接続され、他方の端面が前記第2光ファイバの一方の端面に接続される第2GRINレンズ型ファイバと、を備え、前記第2光ファイバのモードフィールド径に対する前記第1光ファイバのモードフィールド径の比をrとして、前記第2GRINレンズ型ファイバの屈折率分布定数は、誤差10%精度で前記第1GRINレンズ型ファイバの屈折率分布定数のr倍に誤差10%精度で一致し、nを任意の自然数として、前記第1GRINレンズ型ファイバの長さは、前記第1GRINレンズ型ファイバのピッチ長のn/2+1/4倍に誤差10%精度で一致し、mを任意の自然数として、前記第2GRINレンズ型ファイバの長さは、前記第2GRINレンズ型ファイバのピッチ長のm/2+1/4倍に誤差10%精度で一致する。
【0014】
上記の構成によれば、第1GRINレンズ型ファイバの屈折率分布定数を、第1光ファイバと第2光ファイバの結合効率を最大化するための自由度として利用することができる。これにより、第1光ファイバと第2光ファイバとを、従来よりも高い結合効率で光結合させることが可能になる。
【0015】
本発明の態様1に係るモードフィールドアダプタの製造方法は、第1光ファイバと、モードフィールド径が前記第1光ファイバよりも大きい第2光ファイバと、との接続を媒介するためのモードフィールドアダプタの製造方法であって、前記モードフィールドアダプタは、一方の端面が前記第1光ファイバの一方の端面に接続される第1GRINレンズ型ファイバと、屈折率分布定数が前記第1GRINレンズ型ファイバよりも小さく、一方の端面が前記第1GRINレンズ型ファイバの他方の端面に接続され、他方の端面が前記第2光ファイバの一方の端面に接続される第2GRINレンズ型ファイバと、を備え、前記第2光ファイバのモードフィールド径に対する前記第1光ファイバのモードフィールド径の比をrとして、前記第2GRINレンズ型ファイバの屈折率分布定数の狙い値を、前記第1GRINレンズ型ファイバの屈折率分布定数のr倍に設定して、前記第2GRINレンズ型ファイバを作成する工程と、nを任意の自然数として、前記第1GRINレンズ型ファイバの長さの狙い値を、前記第1GRINレンズ型ファイバのピッチ長のn/2+1/4倍に設定して、前記第1GRINレンズ型ファイバを切断する第1切断工程と、mを任意の自然数として、前記第2GRINレンズ型ファイバの長さの狙い値を、前記第2GRINレンズ型ファイバのピッチ長のm/2+1/4倍に設定して、前記第2GRINレンズ型ファイバを切断する第2切断工程と、を含んでいる。
【0016】
上記の構成によれば、第1GRINレンズ型ファイバの屈折率分布定数を、第1光ファイバと第2光ファイバの結合効率を最大化するための自由度として利用することができる。これにより、第1光ファイバと第2光ファイバとを、従来よりも高い結合効率で光結合させることが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、2本の光ファイバを従来よりも高い結合効率で光結合させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るファイバ接続体の構成を示す断面図である。
図2】(a)は、実施例に係るファイバ接続体に対して波動光学的シミュレーションを実施することにより得られた、基本モードに関する光ファイバの結合効率のグラフである。(b)は、(a)に示すグラフの98.5%以上99.5%以下のレンジを拡大した拡大グラフである。
図3】実施例に係るファイバ接続体に対して波動光学的シミュレーションを実施することにより得られた、基本モードの波面を示すグラフである。
図4】比較例に係るファイバ接続体に対して波動光学的シミュレーションを実施することにより得られた、基本モードに関する光ファイバの結合効率のグラフである。
図5】比較例に係るファイバ接続体に対して波動光学的シミュレーションを実施することにより得られた、基本モードの波面を示すグラフである。
図6図1に示すファイバ接続体の変形例を示す断面図である。
図7図1に示すファイバ接続体に含まれるモードフィールドアダプタの製造方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(ファイバ接続体の構成)
本発明の一実施形態に係るファイバ接続体1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、ファイバ接続体1の構成を示す断面図である。
【0020】
ファイバ接続体1は、図1に示すように、モードフィールドアダプタ10と、第1光ファイバ11と、第2光ファイバ12と、を備えている。
【0021】
第1光ファイバ11は、柱状(例えば、円柱状)のコア11aと、コア11aを取り囲む、屈折率がコア11aよりも低い筒状(例えば、円筒状)のクラッド11bと、を備えている。第1光ファイバ11は、例えば、シングルモードファイバである。
【0022】
第2光ファイバ12は、柱状(例えば、円柱状)のコア12aと、コア12aを取り囲む、屈折率がコア12aよりも低い筒状(例えば、円筒状)のクラッド12bと、を備えている。第2光ファイバ12のモードフィールド径d2は、第1光ファイバ11のモードフィールド径d1よりも大きい。第2光ファイバ12は、例えば、マルチモードファイバである。
【0023】
モードフィールドアダプタ10は、第1GRINレンズ型ファイバ101と、第2GRINレンズ型ファイバ102と、を備えている。第1GRINレンズ型ファイバ101は、一方の端面101aが第1光ファイバ11の一方の端面11cに接続(例えば、融着接続)され、他方の端面101bが第2GRINレンズ型ファイバ102の一方の端面102aに接続(例えば、融着接続)される。第2GRINレンズ型ファイバ102は、一方の端面102aが第1GRINレンズ型ファイバ101の他方の端面101bに接続(例えば、融着接続)され、他方の端面102bが第2光ファイバ12の一方の端面12cに接続(例えば、融着接続)される。
【0024】
第1GRINレンズ型ファイバ101は、屈折率分布n1(r)の二乗がn1 2sech2(g1r)により近似される柱状(例えば、円柱状)の構造体である。ここで、n1は、第1GRINレンズ型ファイバ101の中心軸上の屈折率であり、rは、その中心軸からの距離である。g1は、定数であり、屈折率分布定数と呼ばれる。第1GRINレンズ型ファイバ101のピッチ長P1は、2π/g1により定義され、2πR1/(2Δ11/2により近似される。ここで、R1は、第1GRINレンズ型ファイバ101のコア半径であり、Δ1は、第1GRINレンズ型ファイバ101のコアΔである。図1に示すように、クラッドを持たない(空気をクラッドとする)構成では、第1GRINレンズ型ファイバ101の直径をR1と見做し、第1GRINレンズ型ファイバ101(全体がコアとして機能)の最外周の屈折率に対する屈折率n1の比屈折率差を、Δ1と見做す。
【0025】
第1GRINレンズ型ファイバ101の長さL1は、(n/2+1/4)×P1に略一致するように、より好ましくは、一致するように設定されている。ここで、nは、任意の自然数(0を含む)である。したがって、端面101aを介して、ビーム径最小かつビーム発散角最大の状態(又は、その状態に近い状態)で第1光ファイバ11から第1GRINレンズ型ファイバ101に入射した光は、端面101bを介して、ビーム径最大かつビーム発散角最小の状態(又は、その状態に近い状態)で第1GRINレンズ型ファイバ101から第2GRINレンズ型ファイバ102に入射する。なお、図1においては、n=0である場合、すなわち、L1=(1/4)×P1である場合を例示している。
【0026】
なお、前段落において「略一致する」とは、例えば、(1)誤差10%精度で一致すること、(2)誤差5%以内で一致すること、又は、(3)誤差1%以内で一致することを指す。したがって、第1GRINレンズ型ファイバ101の長さL1は、例えば、(1)(n/2+1/4)×P1×0.9≦L1≦(n/2+1/4)×P1×1.1、(2)(n/2+1/4)×P1×0.95≦L1≦(n/2+1/4)×P1×1.05、又は、(3)(n/2+1/4)×P1×0.99≦L1≦(n/2+1/4)×P1×1.01を満たす。
【0027】
第2GRINレンズ型ファイバ102は、屈折率分布n2(r)の二乗がn2 2sech2(g2r)により近似される柱状(例えば、円柱状)の構造体である。ここで、n2は、第2GRINレンズ型ファイバ102の中心軸上の屈折率であり、rは、その中心軸からの距離である。g2は、定数であり、屈折率分布定数と呼ばれる。第2GRINレンズ型ファイバ102のピッチ長P2は、2π/g2により定義され、2πR2/(2Δ21/2により近似される。ここで、R2は、第2GRINレンズ型ファイバ102のコア半径であり、Δ2は、第2GRINレンズ型ファイバ102のコアΔである。図1に示すように、クラッドを持たない(空気をクラッドとする)構成では、第2GRINレンズ型ファイバ102の直径をR2と見做し、第2GRINレンズ型ファイバ102(全体がコアとして機能)の最外周の屈折率に対する屈折率n2の比屈折率差を、Δ2と見做す。
【0028】
第2GRINレンズ型ファイバ102の長さL2は、(m/2+1/4)×P2に略一致するように、より好ましくは、一致するように設定されている。ここで、mは、任意の自然数(0を含む)である。したがって、一方の端面102aを介して、ビーム径最大かつビーム発散角最小の状態(又は、その状態に近い状態)で第1GRINレンズ型ファイバ101から第2GRINレンズ型ファイバ102に入射した光は、他方の端面102bを介して、ビーム径最小かつビーム発散角最大の状態(又は、その状態に近い状態)で第2GRINレンズ型ファイバ102から第2光ファイバ12に入射する。なお、図1においては、m=0である場合、すなわち、L2=(1/4)×P2である場合を例示している。
【0029】
なお、前段落において「略一致する」とは、例えば、(1)誤差10%精度で一致すること、(2)誤差5%以内で一致すること、又は、(3)誤差1%以内で一致することを指す。したがって、第2GRINレンズ型ファイバ102の長さL2は、例えば、(1)(m/2+1/4)×P2×0.9≦L2≦(m/2+1/4)×P2×1.1、(2)(m/2+1/4)×P2×0.95≦L2≦(m/2+1/4)×P2×1.05、又は、(3)(m/2+1/4)×P2×0.99≦L2≦(m/2+1/4)×P2×1.01を満たす。
【0030】
(ファイバ接続体の特徴及び効果)
ファイバ接続体1において特徴的な点は、第1GRINレンズ型ファイバ101の屈折率分布定数g1に対する第2GRINレンズ型ファイバ102の屈折率分布定数g2の比g2/g1と、第2光ファイバ12のモードフィールド径d2に対する第1光ファイバ11のモードフィールド径d1の比d1/d2とが、略一致すること、より好ましくは、一致することである。換言すれば、第2光ファイバ12のモードフィールド径d2に対する第1光ファイバ11のモードフィールド径d1の比d1/d2をrとして、第2GRINレンズ型ファイバ102の屈折率分布定数g2が、第1GRINレンズ型ファイバ101の屈折率分布定数g1のr倍と略一致すること、より好ましくは、一致することである。
【0031】
なお、前段落において「略一致する」とは、例えば、(1)誤差10%精度で一致すること、(2)誤差5%以内で一致すること、又は、(3)誤差1%以内で一致することを指す。したがって、第2GRINレンズ型ファイバ102の屈折率分布定数g2は、例えば、(1)r×g1×0.9≦g2≦r×g1×1.1、(2)r×g1×0.95≦g2≦r×g1×1.05、又は、(3)r×g1×0.99≦g2≦r×g1×1.01を満たす。
【0032】
これにより、第1光ファイバ11からモードフィールドアダプタ10にモードフィールド径d1の光が入射したとき、モードフィールドアダプタ10から第2光ファイバ12にモードフィールド径d2の光を入射させることができる。したがって、第1光ファイバ11と第2光ファイバ12とを、高い結合効率で光結合させることができる。
【0033】
しかも、第1GRINレンズ型ファイバ101の屈折率分布定数g1をどのように選んでも、第2GRINレンズ型ファイバ102の屈折率分布定数g2を適宜設定することで、上述した条件(g2=r×g1又はg2≒r×g1)を満たすことができる。すなわち、第1GRINレンズ型ファイバ101の屈折率分布定数g1を、第1光ファイバ11と第2光ファイバ12の結合効率を最大化するための自由度として利用することができる。或いは、第2GRINレンズ型ファイバ102の屈折率分布定数g2をどのように選んでも、第1GRINレンズ型ファイバ101の屈折率分布定数g1を適宜設定することで、上述した条件(g2=r×g1又はg2≒r×g1)を満たすことができる。すなわち、第2GRINレンズ型ファイバ102の屈折率分布定数g2を、第1光ファイバ11と第2光ファイバ12の結合効率を最大化するための自由度として利用することができる。これにより、第1光ファイバ11と第2光ファイバ12とを、従来よりも高い結合効率で光結合させることが可能になる。
【0034】
なお、GRINレンズ型ファイバの屈折率分布n(r)は、中心軸上の屈折率n0、中心軸からの距離r、屈折率分布定数gを用いて、n(r)≒n0{1-(gr)2/2}と近似することができる。したがって、GRINレンズ型ファイバの屈折率分布定数gは、(1)屈折率分布n(r)を実測する工程と、(2)最小二乗法を用いてn0{1-(gr)2/2}が実測した屈折率分布n(r)を最も良く近似するgを算出する工程と、を実施することにより特定することが可能である。上述した条件(g2=r×g1又はg2≒r×g1)は、このようにして特定された屈折率分布定数g1,g2が満たすべき条件であると見做すことができる。
【0035】
(実施例)
本実施形態に係るファイバ接続体1の一実施例について、図2及び図3を参照して説明する。
【0036】
本実施例では、第1光ファイバ11として、コア径φが8.2μmであり、コアΔが0.344%であるシングルモードファイバを用いた。第1光ファイバ11のモードフィールド径d1は、10.6μmとした。また、第2光ファイバ12として、コア径φが20μmであり、コアΔが0.117%であるマルチモードファイバを用いた。第2光ファイバ12のモードフィールド径d2は、21.0μmとした。したがって、比r=d1/d2は、0.505であった。
【0037】
また、本実施例では、第1GRINレンズ型ファイバ101として、コア径φが125μmであり、長さL1が(1/4)×P1であるGRINレンズ型ファイバを用いた。屈折率分布定数g1は、光ファイバ11,12の結合効率を最大化するための自由度として、1.5以上7.5以下の範囲で変化させた。また、第2GRINレンズ型ファイバ102として、コア径φが125μmであり、長さL2が(1/4)×P2であるGRINレンズ型ファイバを用いた。屈折率分布定数g2は、r×g1と一致するように、0.76以上3.8以下の範囲で変化させた。
【0038】
図2の(a)は、本実施例に係るファイバ接続体1に対して波動光学的シミュレーション(BPM法)を適用することで得られた、基本モードLP01に関する光ファイバ11,12の結合効率のグラフであり、図2の(b)は、図2の(a)に示すグラフの98.5%以上99.5%以下のレンジを拡大した拡大グラフである。図2に示すグラフによれば、第1GRINレンズ型ファイバ101の屈折率分布定数g1を2.3に設定したときに、結合効率が最大値99.2%に達することが確かめられる。
【0039】
図3は、第1GRINレンズ型ファイバ101の屈折率分布定数g1を2.3に設定したときに、本実施例に係るファイバ接続体1に対して上述したシミュレーションを適用することにより得られた基本モードLP01の波面を示すグラフである。図3に示すグラフによれば、第1光ファイバ11からモードフィールドアダプタ10にモードフィールド径d1程度の光が入射したとき、モードフィールドアダプタ10から第2光ファイバ12にモードフィールド径d2程度の光が入射することが確かめられる。
【0040】
(比較例)
本実施形態に係るファイバ接続体1の一比較例について、図4及び図5を参照して説明する。
【0041】
発明者らは、上述した実施例に係るファイバ接続体1において、モードフィールドアダプタ10を、コア径φが125μmであり、長さがピッチ長の1/4倍である単一のGRINレンズ型ファイバに置き換えたファイバ接続体を、比較例として検討した。
【0042】
図4は、本比較例に係るファイバ接続体に対して波動光学的シミュレーション(BPM法)を適用することで得られた、基本モードLP01に関する光ファイバ11,12の結合効率のグラフである。図4に示すグラフによれば、GRINレンズ型ファイバ101の屈折率分布定数gを6.5に設定したときに、結合効率が最大値98.8%に達することが確かめられる。
【0043】
図5は、GRINレンズ型ファイバの屈折率分布定数gを6.5に設定したときに、本比較例に係るファイバ接続体に対して上述したシミュレーションを適用することにより得られた基本モードLP01の波面を示すグラフである。図5に示すグラフによれば、第1光ファイバ11からGRINレンズ型ファイバにモードフィールド径d1程度の光が入射したとき、GRINレンズ型ファイバから第2光ファイバ12にモードフィールド径d2程度の光が入射することが確かめられる。
【0044】
上述した実施例と本比較例とに鑑みると、上述した実施例に係るファイバ接続体1の方が本比較例に係るファイバ接続体よりも結合効率を高くすることが可能であることが結論される。
【0045】
(変形例)
本実施形態に係るファイバ接続体1の一変形例(以下、ファイバ接続体1Aと記載する)について、図6を参照して説明する。図6は、ファイバ接続体1Aの構成を示す断面図である。
【0046】
ファイバ接続体1Aは、ファイバ接続体1に第3光ファイバ13を追加したものである。第3光ファイバ13は、一方の端面13aが第2光ファイバ12の一方の端面12cにおいて第2光ファイバ12のクラッド12bに接続される。なお、第3光ファイバ13の本数は任意である。図6においては、2本の第3光ファイバ13を図示しているが、第3光ファイバ13は、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。
【0047】
ファイバ接続体1Aによれば、第1光ファイバ11のコア11aと第2光ファイバ12のコア12aとを光結合すると共に、第3光ファイバ13と第2光ファイバ12のクラッドとを光結合することができる。つまり、ファイバ接続体1Aは、光コンバイナとして機能する。
【0048】
ファイバレーザでは、信号光を増幅用光ファイバのコアに導入すると共に、励起光を増幅用光ファイバのクラッドに導入する光コンバイナが利用される。ファイバ接続体1Aは、このような光コンバイナとして、好適に利用することができる。この場合、信号光を導波する第1光ファイバ11のコア径を、増幅用光ファイバとして機能する第2光ファイバ12のコア径よりも小さくすることができる。このため、第1光ファイバ11を導波される信号光に外乱ノイズが乗る可能性を低減することができる。
【0049】
(モードフィールドアダプタの製造方法)
最後に、モードフィールドアダプタ10の製造方法S1について、図7を参照して説明する。図7は、製造方法Sの流れを示すフロー図である。
【0050】
製造方法S1は、図7に示すように、第1測定工程S11と、第2測定工程S12と、算出工程S13と、第1作成工程S14と、第2作成工程S15と、第1切断工程S16と、第2切断工程S17と、接続工程S18と、を含んでいる。
【0051】
第1測定工程S11は、第1光ファイバ11のモードフィールド径d1を測定する工程である。モードフィールド径の測定方法は、公知であるため、詳細な説明を割愛する。
【0052】
第2測定工程S12は、第2光ファイバ12のモードフィールド径d2を測定する工程である。モードフィールド径の測定方法は、公知であるため、詳細な説明を割愛する。
【0053】
算出工程S13は、第1測定工程S11及び第2測定工程S12において得られたモードフィールド径d1,d2から比r=d1/d2を算出する工程である。
【0054】
第1作成工程S14は、第1GRINレンズ型ファイバ101を作成する工程である。第1作成工程S14においては、第1GRINレンズ型ファイバ101の屈折率分布定数g1の狙い値を、光ファイバ11,12の結合効率を最大化する値として事前に特定された値(上述した実施例においては2.3)に設定する。GRINレンズ型ファイバの製造方法は、公知であるため、これ以上の詳細な説明を割愛する。
【0055】
第2作成工程S15は、第2GRINレンズ型ファイバ102を作成する工程である。第2作成工程S15においては、第2GRINレンズ型ファイバ102の屈折率分布定数g2の狙い値を、第1GRINレンズ型ファイバ101の屈折率分布定数g1のr倍に設定する。これにより、第2GRINレンズ型ファイバ102の屈折率分布定数g2を、第1GRINレンズ型ファイバ101の屈折率分布定数g1のr倍に誤差10%精度で一致させることができる。GRINレンズ型ファイバの製造方法は、公知であるため、これ以上の詳細な説明を割愛する。
【0056】
第1切断工程S16は、第1GRINレンズ型ファイバ101を切断する工程である。第1切断工程S16においては、第1GRINレンズ型ファイバ101の長さL1の狙い値を、第1GRINレンズ型ファイバ101のピッチ長P1のn/2+1/4倍に設定する。ここで、ピッチ長P1は、屈折率分布定数g1の狙い値から、2π/g1に従って算出してもよいし、コア半径R1と比屈折率差Δ1とから、2πR1/(2Δ11/2に従って算出してもよい。これにより、第1GRINレンズ型ファイバ101の長さL1を、第1GRINレンズ型ファイバ101のピッチ長P1のn/2+1/4倍に誤差10%精度で一致させることができる。
【0057】
第2切断工程S17は、第2GRINレンズ型ファイバ102を切断する工程である。第2切断工程S17においては、第2GRINレンズ型ファイバ102の長さL2の狙い値を、第2GRINレンズ型ファイバ102のピッチ長P2のm/2+1/4倍に設定する。ここで、ピッチ長P2は、屈折率分布定数g2の狙い値から、2π/g2に従って算出してもよいし、コア半径R2と比屈折率差Δ2とから、2πR2/(2Δ21/2に従って算出してもよい。これにより、第2GRINレンズ型ファイバ102の長さL2を、第2GRINレンズ型ファイバ102のピッチ長P2のm/2+1/4倍に誤差10%精度で一致させることができる。
【0058】
接続工程S18は、第1GRINレンズ型ファイバ101の端面101bと第2GRINレンズ型ファイバ102の端面102aとを接続(例えば、融着接続)する工程である。
【0059】
以上の工程を実施することによって、モードフィールドアダプタ10を製造することができる。以上の工程に加えて、第1光ファイバ11の端面11cを第1GRINレンズ型ファイバ101の端面101aに接続する工程、及び、第2光ファイバ12の端面12cを第2GRINレンズ型ファイバ102の端面102bに接続する工程を実施すれば、ファイバ接続体1を製造することができる。
【0060】
なお、ここでは、(1)屈折率分布定数g1の狙い値を、光ファイバ11,12の結合効率を最大化する値として事前に特定された値に設定し、(2)屈折率分布定数g2の狙い値を、屈折率分布定数g1の狙い値のr倍に設定する構成について説明したが、これに限定されない。すなわち、(1)屈折率分布定数g2の狙い値を、光ファイバ11,12の結合効率を最大化する値として事前に特定された値に設定し、(2)屈折率分布定数g1の狙い値を、屈折率分布定数g2の狙い値の1/r倍に設定する構成を採用してもよい。
【0061】
(付記事項)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された異なる技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1 ファイバ接続体
10 モードフィールドアダプタ
101 第1GRINレンズ型ファイバ
102 第2GRINレンズ型ファイバ
11 第1光ファイバ
12 第2光ファイバ
13 第3光ファイバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7