(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115433
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】焦電型赤外線センサ、及び、焦電型赤外線センサを備える電子機器
(51)【国際特許分類】
C04B 35/472 20060101AFI20240819BHJP
G01J 1/02 20060101ALI20240819BHJP
H10N 15/10 20230101ALI20240819BHJP
C01G 45/00 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
C04B35/472
G01J1/02 Y
H10N15/10
C01G45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021130
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148840
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100191673
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 久典
(72)【発明者】
【氏名】藤原 茂美
(72)【発明者】
【氏名】金子 誠
【テーマコード(参考)】
2G065
4G048
【Fターム(参考)】
2G065AB02
2G065BA13
2G065BA36
2G065BC03
2G065BE08
2G065CA12
2G065CA23
4G048AA05
4G048AC08
4G048AE05
(57)【要約】
【課題】リフローに起因する不具合の発生を低減可能な焦電型赤外線センサを提供すること。
【解決手段】焦電型赤外線センサ12は、内部基板22と、焦電素子48と、コンデンサ素子42とを備えている。内部基板22には、第1電極パッド24と、第2電極パッド26とが設けられている。焦電素子48は、PbCa(MnSb)TiOの組成を有しており、第1電極パッド24に接続されている。コンデンサ素子42は、240℃以上の液相線温度を有する高融点半田ペースト18で第2電極パッド26に接続されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部基板と、焦電素子と、コンデンサ素子とを備えており、
前記内部基板には、第1電極パッドと、第2電極パッドとが設けられており、
前記焦電素子は、PbCa(MnSb)TiOの組成を有しており、前記第1電極パッドに接続されており、
前記コンデンサ素子は、240℃以上の液相線温度を有する高融点半田ペーストで前記第2電極パッドに接続されている
焦電型赤外線センサ。
【請求項2】
請求項1記載の焦電型赤外線センサであって、
金属製のシールドケースと、光学フィルタとを備えており、
前記シールドケースには、開口部が形成されており、
前記光学フィルタは、前記開口部に装着されており、
前記シールドケースは、前記内部基板に前記高融点半田ペーストで接続されている
焦電型赤外線センサ。
【請求項3】
請求項1記載の焦電型赤外線センサであって、
JFET(Junction Field Effect Transistor)を備えており、
前記JFETは、電極を有しており、
前記内部基板には、第3電極パッドが設けられており、
前記JFETの前記電極は前記第3電極パッドにワイヤボンディングされている
焦電型赤外線センサ。
【請求項4】
請求項3記載の焦電型赤外線センサであって
前記JFETはベアチップである
焦電型赤外線センサ。
【請求項5】
請求項1記載の焦電型赤外線センサであって、
前記第1電極パッドと前記第2電極パッドとは、同一の所定平面に位置しており、
前記内部基板には、レジストが設けられており、
前記レジストには、所定開口部が形成されており、
前記所定開口部の前記所定平面に沿ったサイズは、前記焦電素子の前記所定平面に沿ったサイズよりも大きく、
前記第1電極パッドは、前記所定開口部の内部に位置しており、
前記焦電素子は、導電性接着剤で前記第1電極パッドに接続されており、
前記焦電素子は、前記所定開口部の上方に位置するように、前記導電性接着剤によって支持されている
焦電型赤外線センサ。
【請求項6】
低融点半田ペーストで外部基板に接続される焦電型赤外線センサであって、
内部基板と、焦電素子と、コンデンサ素子とを備えており、
前記内部基板には、第1電極パッドと、第2電極パッドとが設けられており、
前記焦電素子は、PbCa(MnSb)TiOの組成を有しており、前記第1電極パッドに接続されており、
前記コンデンサ素子は、前記低融点半田ペーストより融点の高い高融点半田ペーストで前記第2電極パッドに接続されている
焦電型赤外線センサ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の焦電型赤外線センサと、外部基板とを備える電子機器であって、
前記焦電型赤外線センサは、前記外部基板に前記高融点半田ペーストよりも融点の低い低融点半田ペーストで接続されている
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高いキュリー温度を有する焦電素子を備える焦電型赤外線センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、このタイプの焦電型赤外線センサが開示されている。特許文献1の焦電素子は、リフロー炉内において220℃以上の高温に曝されることを考慮し、PbCa(MnSb)TiOの組成を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の焦電型赤外線センサは、他の電子部品や電気部品と共に主基板又は外部基板上に搭載され、リフローされて、電子機器を構成する。このように製造された電子機器について、想定している220℃の温度でリフローを行っているにもかかわらず不具合が生じることが懸念される。
【0005】
そこで、本発明は、懸念される不具合が焦電型赤外線センサに起因して生じる可能性を視野に入れ、リフローに起因する不具合の発生を低減可能な焦電型赤外線センサを提供することを目的とする。また、本発明は、この焦電型赤外線センサを備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは、研究の結果、焦電型赤外線センサに起因して電子機器に不具合が生じる理由として、以下のような可能性があることに気づいた。
【0007】
一般に、焦電型赤外線センサや他の部品を主基板に接続するために使用される半田ペーストは、220℃程度の液相線温度を有している。従って、リフロー時の温度は、半田ペーストに応じて220℃程度に設定される。
【0008】
一方、製造される電子機器によっては、焦電型赤外線センサと同程度の大きさの電子部品だけでなく、かなり大型の電子部品も主基板上に搭載されていることがある。その場合、リフロー時の設定温度が220℃程度であっても、大型の電子部品を主基板上に確実に半田付けするため、加熱時間を想定していた時間よりも長くすることがある。長時間の加熱の結果、リフロー炉におけるピーク温度が250℃近くまで達することもある。すなわち、リフロー時のピーク温度が想定を超えることがある。
【0009】
特許文献1の焦電型赤外線センサの焦電素子は、250℃程度のピーク温度よりも高いキュリー温度を有している。このため、焦電素子自体には問題が生じない。しかしながら、焦電型赤外線センサに含まれる焦電素子以外の部品に問題が生じる可能性がある。
【0010】
従来の焦電型赤外線センサにおいて、焦電素子以外の部品と内部基板との間の接続は、焦電型赤外線センサを主基板に接続するための半田ペーストと同様の半田ペーストを用いて行われていることが多い。即ち、焦電型赤外線センサ内部においても、220℃程度の液相線温度を有する半田ペーストが使用されている。焦電型赤外線センサを主基板に接続するためのリフローの際にピーク温度が想定値を超えると、焦電型赤外線センサ内部において再溶融した半田ペーストが電気的異常を引き起こす可能性がある。すなわち、意図に反して再溶融した半田ペーストが不具合の原因となっている可能性がある。本発明は、上述の知見に基づいてなされたものであり、具体的には以下に掲げる構造の焦電型赤外線センサを提供する。
【0011】
本発明は、第1の焦電型赤外線センサとして、
内部基板と、焦電素子と、コンデンサ素子とを備えており、
前記内部基板には、第1電極パッドと、第2電極パッドとが設けられており、
前記焦電素子は、PbCa(MnSb)TiOの組成を有しており、前記第1電極パッドに接続されており、
前記コンデンサ素子は、240℃以上の液相線温度を有する高融点半田ペーストで前記第2電極パッドに接続されている
焦電型赤外線センサを提供する。
【0012】
本発明は、第2の焦電型赤外線センサとして、第1の焦電型赤外線センサであって、
金属製のシールドケースと、光学フィルタとを備えており、
前記シールドケースには、開口部が形成されており、
前記光学フィルタは、前記開口部に装着されており、
前記シールドケースは、前記内部基板に前記高融点半田ペーストで接続されている
焦電型赤外線センサを提供する。
【0013】
本発明は、第3の焦電型赤外線センサとして、第1の焦電型赤外線センサであって、
JFET(Junction Field Effect Transistor)を備えており、
前記JFETは、電極を有しており、
前記内部基板には、第3電極パッドが設けられており、
前記JFETの前記電極は前記第3電極パッドにワイヤボンディングされている
焦電型赤外線センサを提供する。
【0014】
本発明は、第4の焦電型赤外線センサとして、第3の焦電型赤外線センサであって、
前記JFETはベアチップである
焦電型赤外線センサを提供する。
【0015】
本発明は、第5の焦電型赤外線センサとして、第1の焦電型赤外線センサであって、
前記第1電極パッドと前記第2電極パッドとは、同一の所定平面に位置しており、
前記内部基板には、レジストが設けられており、
前記レジストには、所定開口部が形成されており、
前記所定開口部の前記所定平面に沿ったサイズは、前記焦電素子の前記所定平面に沿ったサイズよりも大きく、
前記第1電極パッドは、前記所定開口部の内部に位置しており、
前記焦電素子は、導電性接着剤で前記第1電極パッドに接続されており、
前記焦電素子は、前記所定開口部の上方に位置するように、前記導電性接着剤によって支持されている
焦電型赤外線センサを提供する。
【0016】
本発明は、第6の焦電型赤外線センサとして、
低融点半田ペーストで外部基板に接続される焦電型赤外線センサであって、
内部基板と、焦電素子と、コンデンサ素子とを備えており、
前記内部基板には、第1電極パッドと、第2電極パッドとが設けられており、
前記焦電素子は、PbCa(MnSb)TiOの組成を有しており、前記第1電極パッドに接続されており、
前記コンデンサ素子は、前記低融点半田ペーストより融点の高い高融点半田ペーストで前記第2電極パッドに接続されている
焦電型赤外線センサを提供する。
【0017】
本発明は、第1の電子機器として、第1から第6までのいずれかの焦電型赤外線センサと、外部基板とを備える電子機器であって、
前記焦電型赤外線センサは、前記外部基板に前記高融点半田ペーストよりも融点の低い低融点半田ペーストで接続されている
電子機器を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低融点半田ペーストで電子機器の主基板又は外部基板に接続されることが想定される焦電型赤外線センサにおいて、コンデンサ素子は内部基板の電極パッドに対して高融点半田ペーストで接続されている。このため、電子機器製造のリフロー時においてピーク温度が高くなっても問題の発生が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態による電子機器を示す斜視図である。
【
図2】
図1の電子機器に搭載された焦電型赤外線センサを示す斜視図である。
【
図3】
図2の焦電型赤外線センサを示す別の斜視図である。
【
図4】
図2の焦電型赤外線センサを示す分解斜視図である。
【
図5】
図4の焦電型赤外線センサの主部材を示す斜視図である。グランドパターンの上に設けられる高融点半田ペーストを破線で描画している。
【
図6】
図5の主部材を示す平面図である。焦電素子の上面電極の位置を破線で描画している。
【
図7】
図6の主部材の一部を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1を参照すると、本発明の実施の形態による電子機器10は、焦電型赤外線センサ12と、外部基板14とを備えている。焦電型赤外線センサ12は、焦電効果を利用して赤外線を検出するセンサである。電子機器10は、図示した上述の部材に加えて、図示していない様々な電子部品及び電気部品(以下、合わせて単に「部品」という。)を備えている。焦電型赤外線センサ12は、他の部品とともに外部基板14に搭載されており、電子回路(図示せず)によって他の部品に電気的に接続されている。
【0021】
例えば、焦電型赤外線センサ12は、検出した赤外線の変化に応じた電圧を電子機器10の電子回路(図示せず)に出力する。例えば、電子機器10は、焦電型赤外線センサ12が出力した電圧に基づいて、人間が室内に入ったと判断し、照明を灯す、通報するといった様々な動作を行う。本実施の形態の電子機器10は、上述のような機能や構造を有している。但し、電子機器10に焦電型赤外線センサ12が搭載されている限り、本発明による電子機器10の機能や構造は、特に限定されない。例えば、電子機器10は、外部基板14を収容するケース(図示せず)を更に備えていてもよい。
【0022】
図2を参照すると、本実施の形態の焦電型赤外線センサ12は、主部材20と、金属製のシールドケース60と、光学フィルタ66とを備えている。シールドケース60及び光学フィルタ66は、赤外線を主部材20の所定の部位に照射するための部材である。主部材20は、受光した赤外線を検出するための部材である。本実施の形態の焦電型赤外線センサ12は、主部材20、シールドケース60及び光学フィルタ66のみを備えている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、焦電型赤外線センサ12は、主部材20、シールドケース60及び光学フィルタ66に加えて、他の部材を更に備えていてもよい。
【0023】
本実施の形態の主部材20は、矩形平板形状を有している。詳しくは、主部材20は、水平面において矩形形状を有している。シールドケース60は、上下方向における上方から主部材20に取り付けられている。本実施の形態の上下方向は、Z方向である。本実施の形態において、上方は+Z方向であり、下方は-Z方向である。本実施の形態の水平面は、上下方向と直交する平面であり、第1水平方向(X方向)及び第2水平方向(Y方向)によって規定されるXY平面である。上述した方向及び平面は、地面に対する絶対的な位置関係を示すものではなく、主部材20の底面を基準とする相対的な位置関係を示すものに過ぎない。
【0024】
シールドケース60は、主部材20から上方に張り出している。シールドケース60には、開口部62が形成されている。開口部62は、シールドケース60の水平面における中間部に位置している。開口部62は、水平面において矩形形状を有しており、シールドケース60を上下方向に貫通している。
【0025】
光学フィルタ66は、水平面と平行な薄い矩形平板形状を有している。光学フィルタ66は、シリコン等の材料からなり赤外線を透過可能である。特に、本実施の形態の光学フィルタ66は、所定の帯域の赤外線を選択的に透過させる。光学フィルタ66は、開口部62に装着されている。詳しくは、光学フィルタ66の水平面における縁部は、外周封止剤(図示せず)を介して、導電性接着剤(図示せず)によってシールドケース60の内面に接着され固定されている。このように固定された光学フィルタ66は、下方から開口部62全体を隙間なく覆っている。
【0026】
本実施の形態の主部材20、シールドケース60及び光学フィルタ66は、上述した構造を有している。但し、本発明は、これに限られず、主部材20、シールドケース60及び光学フィルタ66の夫々の構造は、必要に応じて変形可能である。例えば、主部材20、シールドケース60及び光学フィルタ66の夫々は、水平面において円形状を有していてもよい。
【0027】
図4に示されるように、本実施の形態の主部材20は、内部基板22と、焦電素子42と、2つのコンデンサ素子44と、JFET(Junction Field Effect Transistor)46とを備えている。即ち、本実施の形態の焦電型赤外線センサ12は、内部基板22と、焦電素子42と、コンデンサ素子44と、JFET46とを備えている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、コンデンサ素子44は、必要な数だけ設ければよい。また、主部材20は、上述の部材に加えて、別の部材を更に備えていてもよい。
【0028】
以下、本実施の形態の主部材20の各部材について説明する。
【0029】
図5を参照すると、本実施の形態の内部基板22は、多層基板である。より具体的には、本実施の形態の内部基板22は、ガラスエポキシ樹脂からなる1層の基材222と、2層のプリプレグ224と、導電体からなる2層の回路パターン226と、絶縁体からなる2層のレジスト34,35とを備えている。上側の回路パターン226のうち水平面における周囲に位置する部位は、グランドパターン228として機能する。レジスト34,35は、上側レジスト34と下側レジスト35とを含んでいる。
【0030】
基材222及び2層の回路パターン226は、プリプレグ224を介して上下に積層されている。2層の回路パターン226は、スルーホールを介して互いに接続されている。この結果、内部基板22には、赤外線を検出し検出結果を出力するための電子回路(以下、「赤外線検出回路」という。)が形成されている。本実施の形態の内部基板22は、上述の構造を有している。但し、内部基板22が赤外線検出回路を備えている限り、本発明の内部基板22の構造は、特に限定されない。
【0031】
図5及び
図6を参照すると、内部基板22には、導電体からなる2つの第1電極パッド24と、導電体からなる4つの第2電極パッド26と、導電体からなる2つの第3電極パッド28と、レジスト34とが設けられている。第1電極パッド24、第2電極パッド26及び第3電極パッド28は、赤外線検出回路(図示せず)に接続されている。第1電極パッド24、第2電極パッド26、第3電極パッド28及びレジスト34は、内部基板22の上面に位置している。即ち、第1電極パッド24と第2電極パッド26と第3電極パッド28とレジスト34とは、同一の所定平面に位置している。本実施の形態の所定平面は、水平面と平行な平面である。
【0032】
レジスト34には、単一の所定開口部36が形成されている。所定開口部36は、レジスト34が設けられていない部位であり、底面38を有する凹みである。底面38は、内部基板22の上面の一部である。所定開口部36は、内部基板22の上面の水平面における中間部に位置している。所定開口部36は、水平面においてレジスト34に囲まれており、レジスト34から下方に僅かに凹んでいる。第1電極パッド24、第2電極パッド26及び第3電極パッド28は、所定開口部36の内部に位置している。換言すれば、レジスト34は、水平面において第1電極パッド24、第2電極パッド26及び第3電極パッド28を囲んでいる。
【0033】
本実施の形態の内部基板22の上面は、上述の構造を有している。但し、本発明は、これに限られず、内部基板22の上面の構造は、必要に応じて変形可能である。例えば、第1電極パッド24、第2電極パッド26及び第3電極パッド28を含む導電パッドの配置及び数は、内部基板22に搭載される部品に応じて変形可能である。レジスト34には、第1電極パッド24、第2電極パッド26及び第3電極パッド28に夫々対応した2以上の開口部が形成されていてもよい。
【0034】
図3を参照すると、本実施の形態の内部基板22の下面には、導電体からなる4つの接続端子32が設けられている。接続端子32は、赤外線検出回路(図示せず)に接続されている。赤外線検出回路の検出結果は、接続端子32を経由して外部基板14(
図1参照)に出力される。本実施の形態によれば、内部基板22の第2水平方向(Y方向)における一方側に4つの接続端子32のうちの2つが位置しており、内部基板22の第2水平方向における他方側に4つの接続端子32のうちの他の2つが位置している。但し、本発明における接続端子32の数及び配置は、特に限定されない。
【0035】
図5及び
図6を参照すると、本実施の形態の焦電素子42は、PbCa(MnSb)TiOの組成を有している。より具体的には、組成式が(Pb
(1-x)Ca
x)(1-a)(Ti
(1-y)(Mn
1/3Sb
2/3)
y)O
3(但し、0.12≦x≦0.23、0.040≦y≦0.100、-0.020≦a≦0.020)で表される焦電体材料からなる焦電素子42を使用できる。この組成により、焦電素子42は、295℃以上の高いキュリー温度を有しており、250℃以上の高温に曝されても所望の性能を維持できる。
【0036】
焦電素子42は、水平面と平行な薄い矩形平板形状を有している。焦電素子42の上面には、矩形形状の2つの上面電極422(
図6参照)が形成されており、焦電素子42の下面には、2つの上面電極422に夫々対応する矩形形状の2つの下面電極(図示せず)が形成されている。2つの上面電極422は、第2水平方向(Y方向)において互いに連結されており、且つ、赤外線吸収膜(図示せず)によって覆われている。上述の構造により、焦電素子42の上面に照射された赤外線が変化すると、2つの下面電極に電位差が生じる。即ち、焦電素子42は、赤外線検出能力を有している。
【0037】
本実施の形態の焦電素子42は、上述の構造を有している。但し、焦電素子42が必要な赤外線検出能力及び必要な熱耐性を有している限り、焦電素子42の構造は、特に限定されない。
【0038】
図4を参照すると、焦電素子42は、第1電極パッド24に接続されている。このように接続された焦電素子42は、光学フィルタ66の真下に位置しており、赤外線を確実に受光できる。詳しくは、焦電素子42の2つの下面電極(図示せず)は、2つの第1電極パッド24に導電性接着剤54で夫々接続されている。この結果、下面電極に生じた電位差は、赤外線検出回路(図示せず)に出力される。
【0039】
図5及び
図6を参照すると、本実施の形態のコンデンサ素子44の夫々は、第2電極パッド26に接続されている。詳しくは、コンデンサ素子44の夫々における2つの端子(図示せず)は、2つの第2電極パッド26に夫々接続されている。コンデンサ素子44は、高周波ノイズによる影響を低減するために使用される。コンデンサ素子44を赤外線検出回路(図示せず)に接続することで、高周波帯域の無線通信環境下における焦電型赤外線センサ12全体の赤外線検出能力を向上できる。
【0040】
本実施の形態のJFET46は、第3電極パッド28に接続されている。詳しくは、JFET46は、2つの電極48を有している。2つの電極48は、JFET46のドレイン及びソースに夫々対応して設けられている。電極48の夫々は、金属製のワイヤ52によって第3電極パッド28のうちの1つに接続されている。ワイヤ52の夫々において、一方の端部は、導電性接着剤54によって電極48に接続されており、他方の端部は、導電性接着剤54によって第3電極パッド28に接続されている。
【0041】
また、本実施の形態によれば、JFET46と第3電極パッド28の間にレジスト34が設けられており、JFET46の周囲は、レジスト34によって囲まれている。上述のようにレジスト34を設けることでJFET46の周囲に凹凸構造が形成される。この結果、JFET46への水分侵入経路の沿面距離を大きくでき、絶縁抵抗の劣化等の不具合が生じる可能性を、より低減できる。
【0042】
上述のように、JFET46の電極48は、第3電極パッド28に夫々ワイヤボンディングされている。JFET46を、半田ではなくワイヤ52及び導電性接着剤54を使用して赤外線検出回路(図示せず)に接続することで、製造コストを低減しつつ焦電素子42が出力した電圧を増幅できる。加えて、半田フラッシュに起因する品質の劣化を防止できる。
【0043】
本実施の形態のJFET46は、ベアチップであり、樹脂等の材料からなるパッケージの内部に封止されていない。ベアチップは、ワイヤボンディングに適している。但し、本発明は、これに限られない。例えば、JFET46は、パッケージの内部に封止されていてもよい。また、JFET46に代えて、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等の他のスイッチング素子を使用してもよい。
【0044】
以下、上述の部材を備えた焦電型赤外線センサ12について説明する。
【0045】
図1を参照すると、本実施の形態の焦電型赤外線センサ12は、電子機器10の外部基板14に半田付けによって表面実装される。一般的に、焦電型赤外線センサ12のような部品を外部基板14のような対象物に表面実装する場合、まず、対象物の電極上に半田ペーストを印刷する。次に、部品の端子を半田ペーストの上に置く。次に、対象物及び部品をリフロー炉の内部に配置し、半田ペーストが溶けて液相になる温度(液相線温度)以上の温度に加熱する。次に、対象物及び部品をリフロー炉から取り出して冷却する。この結果、部品の端子が半田を介して対象物の電極に固定され電気的に接続される。
【0046】
以上に説明したリフロー(即ち、リフロー炉を使用した半田付け)は、焦電型赤外線センサ12自体を製造する際にも行われる。
【0047】
より具体的には、
図4を
図1と併せて参照すると、本実施の形態の焦電型赤外線センサ12は、以下に説明するように製造され、電子機器10に搭載される。まず、内部基板22を作製する。次に、コンデンサ素子44を配置した内部基板22をリフロー炉の内部で加熱する。次に、焦電素子42及びJFET46を、リフロー後の内部基板22に導電性接着剤54で接着する。次に、シールドケース60をリフローによって内部基板22に半田付けする。即ち、焦電型赤外線センサ12全体をリフロー炉の内部で加熱する。以上のように作製した焦電型赤外線センサ12を、リフローによって外部基板14に接続する。以上の説明から理解されるように、本実施の形態の電子機器10の作製にあたって、少なくとも3回のリフローが行われる。
【0048】
一般的に、半田ペーストの液相線温度が低い場合、部品の端子は、リフローの際に特に外力を加えることなく対象物の電極に位置合わせされ易い。換言すれば、液相線温度が低い半田ペーストを使用することで、部品がセルフアラインメントされ易い。このため、半田ペーストとしては、220℃以下の液相線温度を有する低融点半田ペースト16が好んで使用される。本実施の形態の電子機器10においても、焦電型赤外線センサ12及び他の部品(図示せず)を外部基板14に半田付けするために低融点半田ペースト16が使用される。また、従来の焦電型赤外線センサにおいても、内部の部品の半田付けに低融点半田ペースト16が使用される。
【0049】
従来の焦電型赤外線センサは、本実施の形態の焦電型赤外線センサ12と同様に、他の部品(図示せず)と共に外部基板上に搭載され、リフローされて、従来の電子機器を構成する。このように製造された従来の電子機器について、想定している220℃の温度でリフローを行っているにもかかわらず不具合が生じることが懸念されている。不具合は、以下のような原因で生じる懸念がある。
【0050】
一般に、電子機器を製造する過程におけるリフロー時の温度は、低融点半田ペースト16に応じて220℃程度に設定される。一方、製造される電子機器によっては、焦電型赤外線センサと同程度の大きさの部品だけでなく、かなり大型の部品も外部基板上に搭載されていることがある。その場合、リフロー時の設定温度が220℃程度であっても、大型の部品を外部基板上に確実に半田付けするため、加熱時間を想定していた時間よりも長くすることがある。長時間の加熱の結果、リフロー炉におけるピーク温度が250℃近くまで達することもある。すなわち、リフロー時のピーク温度が想定を超えることがある。
【0051】
本実施の形態の焦電素子42は、250℃程度のピーク温度よりも高いキュリー温度を有している。このため、従来の焦電型赤外線センサが焦電素子42を備えている場合、焦電素子42自体には問題が生じない。しかしながら、従来の焦電型赤外線センサに含まれる焦電素子42以外の部品に問題が生じる可能性がある。より具体的には、前述したように、従来の焦電型赤外線センサにおける内部の部品の半田付けには、低融点半田ペースト16が使用される。従来の焦電型赤外線センサを外部基板に接続するためのリフローの際にピーク温度が想定値を超えると、従来の焦電型赤外線センサ内部において低融点半田ペースト16が再溶融し、これにより、電気的異常が生じる可能性がある。
【0052】
本実施の形態の焦電型赤外線センサ12は、従来の焦電型赤外線センサと同様に、低融点半田ペースト16で外部基板14に接続される。但し、
図5及び
図6を
図1と併せて参照すると、本実施の形態の焦電型赤外線センサ12における内部の部品の半田付けには、低融点半田ペースト16に代えて、高融点半田ペースト18が使用される。例えば、コンデンサ素子44は、240℃以上の液相線温度を有する高融点半田ペースト18で第2電極パッド26に接続されている。換言すれば、コンデンサ素子44は、低融点半田ペースト16より融点の高い高融点半田ペースト18で第2電極パッド26に接続されている。焦電型赤外線センサ12は、外部基板14に高融点半田ペースト18よりも融点の低い低融点半田ペースト16で接続されている。
【0053】
上述した本実施の形態によれば、電子機器10を製造する過程のリフロー時においてピーク温度が高くなっても、高融点半田ペースト18は、実質的に再溶融しない。本実施の形態によれば、低融点半田ペースト16の再溶融に起因する問題の発生が低減される。また、本実施の形態の焦電型赤外線センサ12は、250℃程度の熱によって大きな影響を受け易い部品を含んでいない。更に、本実施の形態の導電性接着剤54の熱分解温度は300℃程度であり、導電性接着剤54は、250℃程度の熱によって影響を受けない。従って、焦電型赤外線センサ12を製造する過程のリフロー時においてピーク温度が高くなっても、特に問題が生じない。
【0054】
図4を参照すると、本実施の形態のシールドケース60は、内部基板22に高融点半田ペースト18で固定されている。従って、電子機器10を製造する過程のリフロー時においてピーク温度が高くなっても、シールドケース60は、内部基板22に強固に固定され続ける。本実施の形態によれば、光学フィルタ66と焦電素子42との間の位置関係を確実に維持できる。加えて、シールドケース60を、高融点半田ペースト18を介して内部基板22のグランドパターン228に接続することで高周波ノイズによる影響を低減できる。
【0055】
シールドケース60は、内部基板22に導電性接着剤54(
図5参照)で固定してもよい。但し、導電性接着剤54は、一般的に多孔質であり、空気中の水分を吸収し易い。導電性接着剤54が水分を吸収すると、シールドケース60と内部基板22との間の固定強度が低下するおそれがある。比較的湿度の高い環境において電子機器10を使用するためには、高融点半田ペースト18が好ましい。
【0056】
図5及び
図6を参照すると、本実施の形態の高融点半田ペースト18は、Sn-Sb合金からなり、セルフアライメント性が低い。しかしながら、コンデンサ素子44の水平面における位置がある程度ずれていても、焦電型赤外線センサ12の性能に影響をあたえない。従って、コンデンサ素子44は、高融点半田ペースト18で半田付け可能である。
【0057】
本実施の形態によれば、コンデンサ素子44は、主部材20を製造する過程のリフロー時において、高融点半田ペースト18によって半田付けされる。また、シールドケース60は、製造された主部材20を使用して焦電型赤外線センサ12を製造する過程のリフロー時において、高融点半田ペースト18によって半田付けされる。後者のリフロー時において、コンデンサ素子44の高融点半田ペースト18は、再溶融する。但し、コンデンサ素子44の周りに樹脂部材が設けられていないため、高融点半田ペースト18が再溶融してもコンデンサ素子44が上下に浮き沈みするだけであり、半田フラッシュが生じるおそれがない。
【0058】
焦電素子42は、比較的正確に位置決めする必要がある。従って、焦電素子42の耐熱性能が高くても、焦電素子42は、高融点半田ペースト18による接続に適していない。このため、焦電素子42は、半田ペーストを使用して第1電極パッド24に固定するのでなく、導電性接着剤54で第1電極パッド24に固定され接続されている。
【0059】
同様に、JFET46は、比較的正確に位置決めする必要がある。このため、JFET46は、半田ペーストを使用して第3電極パッド28に直接的に固定するのでなく、所定の位置に導電性接着剤54で固定した状態で、ワイヤ52及び導電性接着剤54を使用して第3電極パッド28に接続されている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、仮に、なんらかの高融点半田ペースト(図示せず)を使用できる場合、JFET46を、この高融点半田ペーストで第3電極パッド28に接続してもよい。
【0060】
図5を参照すると、本実施の形態の内部基板22の層は、プリプレグ224によって上下に互いに固定されている。例えば、内部基板22の層をボンディングシートによって互いに固定すると、高融点半田ペースト18の融点において、ボンディングシートが外れるおそれがある。本実施の形態によれば、内部基板22の熱耐性を向上できる。
【0061】
図6に示されるように、所定開口部36の所定平面(XY平面)に沿ったサイズは、焦電素子42の所定平面に沿ったサイズよりも大きい。より具体的には、第1電極パッド24に固定された焦電素子42を上方から見ると、焦電素子42全体が、所定開口部36の内側に位置している。
図7を参照すると、焦電素子42は、所定開口部36の上方に位置するように、導電性接着剤54によって支持されている。換言すれば、導電性接着剤54は、導電部材としてだけでなく、支持部材としても機能している。焦電素子42は、下面電極(図示せず)の一部を除いて、内部基板22の底面38から離れており、これにより、焦電素子42の赤外線検出能力の劣化が防止されている。
【0062】
本実施の形態の焦電素子42は、内部基板22の底面38からレジスト34の厚さ(具体的には、0.08mm程度)だけ離れている。本実施の形態によれば、内部基板22のレジスト34を除去するだけで、焦電素子42を底面38の上方に位置させることができる。本実施の形態によれば、一般的な基材222(
図5参照)を使用して内部基板22を作製でき、これにより、製造コストを低減できる。但し、本発明は、これに限られない。例えば、内部基板22に深い凹部を形成してもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 電子機器
12 焦電型赤外線センサ
14 外部基板
16 低融点半田ペースト
18 高融点半田ペースト
20 主部材
22 内部基板
222 基材
224 プリプレグ
226 回路パターン
228 グランドパターン
24 第1電極パッド
26 第2電極パッド
28 第3電極パッド
32 接続端子
34 上側レジスト(レジスト)
35 下側レジスト(レジスト)
36 所定開口部
38 底面
42 焦電素子
422 上面電極
44 コンデンサ素子
46 JFET
48 電極
52 ワイヤ
54 導電性接着剤
60 シールドケース
62 開口部
66 光学フィルタ