(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115440
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】ズームレンズおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20240819BHJP
【FI】
G02B7/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021137
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】澤木 亮二
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AD02
2H044AD03
(57)【要約】
【課題】ズームレンズの内外を連通する通気路に介在するシート材を外側から簡易に検査可能にする構成を実現する。
【解決手段】ズームレンズの二重環構造の部分に内外を連通する通気路を形成し、当該二重環構造の内環の外周壁面における当該通気路の開口部にシート材(30)を貼り付ける。シート材(30)の検査に際しては、二重環構造の外環を内環に対して軸方向に摺動させてシート材(30)を露出させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁を貫通する貫通孔を有する内環と、
通気性を有するとともに、前記内環の外周壁面に貼り付けられて前記貫通孔を塞ぐシート材と、
軸方向へ相対的に摺動可能な二重環構造を前記内環とともに構成する外環と、
外周側から着脱可能に装着されて軸方向に移動可能な前記内環または前記外環を軸方向において固定する固定部と、を有し、
前記内環または前記外環は、軸方向における、前記シート材に前記外環が重なる第一の位置から前記シート材が外周側に露出する第二の位置まで摺動可能であり、
前記固定部は、前記第一の位置に前記内環または前記外環を固定し、
前記内環または前記外環が前記第一の位置にあるときに、前記貫通孔を含むとともに前記内環の内周側と前記外環の外周側とを連通する通気路が形成されている、
ズームレンズ。
【請求項2】
前記内環は、第一レンズ群を保持する第一レンズ群保持枠を物体側の端部に保持する第一レンズ群摺動枠であり、
前記外環は、前記第一レンズ群摺動枠に物体側から外嵌して軸方向へ摺動可能なフィルタネジ枠であり、
前記固定部は、外周側から前記フィルタネジ枠の周壁を貫通して前記フィルタネジ枠および前記第一レンズ群摺動枠の一方または両方に螺合するネジである、
請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記内環は、周方向に回転可能であるとともに軸方向に移動可能に配置されているズーム操作環であり、
前記外環は、ズーム操作環の像面側端部に重なる外筒であり、
前記固定部は、前記ズーム操作環を貫通して、前記ズーム操作環の内周側に配置されているカム環に固定されるコマ部材を含み、
前記内環を前記第一の位置から前記第二の位置まで案内する案内構造をさらに含む、
請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項4】
前記案内構造は、前記カム環の外周面に軸方向に沿って延在する第一係合部と、前記ズーム操作環の内周面に形成されて前記第一係合部と係合する第二係合部と、を含み、
前記第一係合部は、前記ズーム操作環が前記第一の位置にあるときの前記第二係合部の位置から、前記ズーム操作環が前記第二の位置にあるときの前記第二係合部の位置まで延在している、
請求項3に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記案内構造は、前記ズーム操作環の周壁を貫通する孔であって、前記コマ部材が内嵌する幅で軸方向に細長く形成されている案内嵌合孔であり、
前記案内嵌合孔の開口形状は、前記ズーム操作環が前記第一の位置にあるときの前記コマ部材が軸方向における一端で嵌合し、前記ズーム操作環が前記第二の位置にあるときの前記コマ部材が軸方向における他端で嵌合する細長の形状である、
請求項3に記載のズームレンズ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のズームレンズを有する撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズおよび撮像装置に関する。たとえば、本発明は、カメラ等の光学機器に適用されるレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
ズームレンズでは、レンズ群の移動に伴って内容積が変化し、内圧が変化する。この変化によってレンズ群の摺動に振動などの不都合を生じさせないために、ズームレンズの内外を連通する通気路を有するズームレンズが知られている。当該ズームレンズでは、水分および粉塵などの異物が内部に侵入することを防止する観点から、当該通気路中に形成される開口部が撥水性および通気性を有するシート材で覆われる(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-227400号公報
【特許文献2】特開2007-47411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のズームレンズでは、シート材に異物が付着して通気路を塞ぐことがあり得る。そのため、当該シート材を観察し、必要に応じて交換することが求められる。前述した従来のズームレンズは、このようなシート材の点検および交換などの検査の際に、ズームレンズの解体に時間がかかることがある。また、前述した従来のズームレンズは、当該解体の際にマウントを外す必要があり、ズームレンズにおけるレンズ性能が当該解体によって低下する懸念がある。このように、従来のズームレンズには、シート材の検査への対策の観点から検討の余地が残されている。
【0005】
本発明の一態様は、ズームレンズの内外を連通する通気路に介在するシート材を外側から簡易に検査可能にする構成を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るズームレンズは、周壁を貫通する貫通孔を有する内環と、通気性を有するとともに、前記内環の外周壁面に貼り付けられて前記貫通孔を塞ぐシート材と、軸方向へ相対的に摺動可能な二重環構造を前記内環とともに構成する外環と、外周側から着脱可能に装着されて軸方向に移動可能な前記内環または前記外環を軸方向において固定する固定部と、を有し、前記内環または前記外環は、軸方向における、前記シート材に前記外環が重なる第一の位置から前記シート材が外周側に露出する第二の位置まで摺動可能であり、前記固定部は、前記第一の位置に前記内環または前記外環を固定し、前記内環または前記外環が前記第一の位置にあるときに、前記貫通孔を含むとともに前記内環の内周側と前記外環の外周側とを連通する通気路が形成されている。
【0007】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る撮像装置は、上記のズームレンズを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、ズームレンズの内外を連通する通気路に介在するシート材を外側から簡易に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態1に係る撮像装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係るズームレンズの通気構造を模式的に示す、ズームレンズの物体側端部の要部断面図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係るズームレンズにおける二重環構造が固定されている構造を模式的に示す、ズームレンズの物体側端部の要部断面図である。
【
図4】本発明の実施形態1に係るズームレンズにおけるシート材が露出したときの構造を模式的に示す、ズームレンズの物体側端部の要部断面図である。
【
図5】本発明の実施形態2におけるズーム操作環の構成を模式的に示す図である。
【
図6】本発明の実施形態2に係るズームレンズの通気構造を模式的に示す、ズームレンズの要部断面図である。
【
図7】本発明の実施形態2に係るズームレンズにおけるズーム操作環を軸方向に摺動させるための構造を模式的に示す、ズームレンズの要部断面図である。
【
図8】本発明の実施形態2に係るズームレンズにおける二重環構造が固定されている構造を模式的に示す、ズームレンズの要部断面図である。
【
図9】本発明の実施形態2に係るズームレンズにおいてズーム操作環を軸方向に摺動させたときの構造を模式的に示す、ズームレンズの部分断面図である。
【
図10】本発明の実施形態3に係るズームレンズにおけるズーム操作環を軸方向に摺動させるための構造を模式的に示す図である。
【
図11】本発明の実施形態3に係るズームレンズにおいてズーム操作環を軸方向に摺動させたときの構造を模式的に示す、ズームレンズの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
[撮像装置]
図1は、本発明の実施形態1に係る撮像装置の構成を模式的に示す図である。
図1に示されるように、撮像装置1は、本体10とズームレンズ20とを有する。撮像装置1は、例えばミラーレス一眼カメラである。
【0012】
本体10は、撮像素子および必要に応じてそれに伴う光学素子を有している。たとえば、本体10は、撮像素子としてCCDセンサを有し、上記の光学素子として赤外線カットフィルタを有し得る。CCDセンサは、ズームレンズ20と同一の光軸を有している。本体10は、所望の解像性能が得られる範囲において、赤外線カットフィルタの代わりに、カバーガラス等の実質的な屈折力を有さない平行平面板を有していてもよい。
【0013】
[ズームレンズ]
<概略構成>
ズームレンズ20は、外筒21、マウント22、ズーム操作環23、ズームラバー24、カム環25、第一レンズ群摺動枠26およびフィルタネジ枠27を有している。
【0014】
外筒21は、略円筒状の部材であり、ズームレンズ20の像面側の外装材である。外筒21は、ズームレンズ20におけるレンズ鏡筒の基本構造に対して固定されており、軸方向および周方向のいずれに対しても移動しない。
【0015】
マウント22は、外筒21の像面側端部に配置されており、外筒21と本体10とを接続する部材である。マウント22の端面から撮像素子までの距離がズームレンズ20の光学特性を決定する一因になる。そのため、マウント22のズームレンズ20における位置は、精密に調整されている。
【0016】
ズーム操作環23は、略円筒状の部材であり、その像面側端部で外筒21の内側に重なっている。ズーム操作環23は、周方向に回転可能に配置されている。ズーム操作環23は、その外周面に凹部が周設されている。
【0017】
ズームラバー24は、ゴム製の筒状の部材である。ズームラバー24は、ズーム操作環23の外周面の凹部に嵌っており、このようにしてズーム操作環23に外陥している。
【0018】
カム環25は、略円筒状の部材であり、その周壁には軸方向に交差する方向(斜めの方向または周方向)に延在するカム溝が形成されている。カム環25は、ズーム操作環23の内側に、軸方向には固定されて、そして周方向には回転可能に配置されている。なお、ズーム操作環23は、カム環25に対して固定されており、カム環25は、ズーム操作環23の周方向への回転に連動して周方向に回転する。
【0019】
第一レンズ群摺動枠26は、略円筒状の部材であり、径方向におけるカム環25とズーム操作環23との間に配置されている。第一レンズ群摺動枠26は、その物体側端部に第一レンズ群保持枠を有している。また、第一レンズ群摺動枠26は、カム環25のカム溝に噛み合う案内ピンを有しており、カム環25の周方向の回転に連動して軸方向に沿って物体側へ進出し、または像面側に後退する。
【0020】
フィルタネジ枠27は、略円環状の部材であり、第一レンズ群摺動枠26に外陥している。フィルタネジ枠27は、その内周壁面における物体側端部に、第一レンズ群の物体側にフィルタを固定するための構造として周設されているネジ部を有している。フィルタは、フィルタネジ枠27に締着することによってズームレンズ20の光軸上に配置される。
【0021】
このほかに、ズームレンズ20は、第一レンズ群以外のレンズ群、例えば第二から第六レンズ群を有している。一部のレンズ群は、第一レンズ群とは独立して軸方向に移動可能に配置されている。たとえば、第三レンズ群がフォーカシングのために軸方向に移動可能に配置されている。
【0022】
ズームレンズ20の物体側端部における一要部の断面を
図2に示す。
図2は、本実施形態に係るズームレンズ20の通気構造を模式的に示している。
【0023】
第一レンズ群摺動枠26は、その物体側端部において、第一レンズ群保持枠28を内周側に保持しており、第一レンズ群保持枠28は、略円環状の部材であり、第一レンズ群を構成するレンズ281、282を同一軸上に保持している。レンズ281は、負の屈折力を有するレンズと正の屈折力を有するレンズとが接合してなる接合レンズである。レンズ282は、正の屈折力を有するレンズである。
【0024】
<通気構造>
第一レンズ群摺動枠26は、その物体側端部において、外周面側と内周面側とを連通する貫通孔261を有している。貫通孔261は、当該物体側端部の外周壁面に一方の開口端262を有し、当該物体側端部の内周壁面に他方の開口端を有している。貫通孔261は、外周面から径方向に沿って内側に延出し、次いで軸方向に沿って像面側に延出しており、軸方向に沿う断面における貫通孔261の形状は、略L字型である。このように、第一レンズ群摺動枠26は、その周壁を貫通する貫通孔261を有している。
【0025】
開口端262は、シート材30で塞がれている。シート材30は、細かなメッシュ状のシートであり、通気性を有するとともに防塵性と防滴性とを有している。シート材30は、開口端262を塞ぐように、第一レンズ群摺動枠26の外周壁面に接着剤によって着脱可能に貼り付けられている。このように、シート材30は、通気性を有するとともに第一レンズ群摺動枠26の外周壁面に貼り付けられて貫通孔261を塞いでいる。
【0026】
なお、貫通孔261は、通常、所望の通気量に応じて、ズームレンズ20の周方向において間欠的に複数形成される。よって、開口端262も、貫通孔261に応じて、周方向に間欠的に形成されている。貫通孔261(開口端262)は、第一レンズ群摺動枠26の周方向において、規則的に、例えば全周にわたって等間隔に配置されていてもよいし、不規則に、例えば全周の一部に偏在して配置されていてもよい。たとえば、貫通孔261(開口端262)は、全周の1/3の部分に間欠的に複数形成される。この場合、シート材30も、全周の約1/3の部分に貼り付けられる。
【0027】
フィルタネジ枠27は、第一レンズ群摺動枠26の物体側端部で、第一レンズ群摺動枠26に対して軸方向に摺動可能に第一レンズ群摺動枠26に外陥している。フィルタネジ枠27は、第一レンズ群摺動枠26に対して軸方向に摺動可能であり、このように第一レンズ群摺動枠26とフィルタネジ枠27とは、互いに軸方向へ相対的に摺動可能な二重環構造を構成している。当該二重環構造における内環は第一レンズ群摺動枠26であり、外環はフィルタネジ枠27である。
【0028】
フィルタネジ枠27が第一レンズ群摺動枠26に外嵌している状態において、フィルタネジ枠27の物体側の部分では、径方向において、フィルタネジ枠27は、第一レンズ群摺動枠26との間に隙間31を有して配置されている。隙間31は、像面側に延在して外部と連通している。前述の開口端262は、この隙間31に対して開口している。このようにして、ズームレンズ20の物体側端部には、貫通孔261を一部に含むとともに、第一レンズ群摺動枠26の内周側とフィルタネジ枠27の外周側とを連通する通気路が形成されている。
【0029】
隙間31における開口端262よりも物体側の部分には、シーリング材32が周方向の全周にわたって充填されている。シーリング材32は、例えば繊維の集合で構成されている。シーリング材32は、第一レンズ群摺動枠26に対してフィルタネジ枠27を軸方向に摺動可能に、第一レンズ群摺動枠26およびフィルタネジ枠27の両方に当接し、隙間31からさらに物体側への異物および水滴の侵入を防いでいる。
【0030】
<固定構造>
ズームレンズ20の物体側端部における他の要部の断面を
図3に示す。
図3は、本実施形態に係るズームレンズ20における二重環構造が固定されている構造を模式的に示している。
【0031】
フィルタネジ枠27の外周壁には、ビス孔272が貫通しており、その内周側における第一レンズ群摺動枠26の部分には、ネジ孔263が形成されている。ビス孔272およびネジ孔263は、少なくとも一か所に形成されていればよいが、バランスの観点から周方向の三か所に等間隔で形成されている。
【0032】
ビス孔272は、ビスが挿通されたときにビスの頭とその近傍とを収容する部分である。ネジ孔263は、ビス孔272に挿通されたビスが螺合する孔である。ビス孔272にはビス40が挿通され、ビス40はネジ孔263の内周壁面のネジ山と螺合し、そしてビス40の頭部およびその近傍の部分はビス孔272に収容される。こうして、フィルタネジ枠27が第一レンズ群摺動枠26に固定されている。すなわち、ビス40は、ズームレンズの外周側からフィルタネジ枠27の周壁を貫通してフィルタネジ枠27および第一レンズ群摺動枠26に螺合している。このようにしてビス40は、ズームレンズ20の外周側から着脱可能に装着されて、軸方向に移動可能なフィルタネジ枠27を第一レンズ群摺動枠26に対して軸方向において固定している。
【0033】
<シート材の検査>
フィルタネジ枠27がビス40によって第一レンズ群摺動枠26に固定された状態であっても、隙間31、開口端262および貫通孔261を介して、ズームレンズ20の内外が連通している。このようにしてズームレンズ20の内外を常時連通する通気路が形成されている。よって、ズームレンズ20の作動時において、内容積の変化による内圧の変化およびそれに伴うズーム操作環23の操作性が損なわれない。また、当該通気路にはシート材30が介在している。よって、ズームレンズ20の内部への塵埃および水滴などの異物の侵入が防止される。一方で、シート材30が目詰まりを生じた場合には、当該操作性が十分に発現されない場合がある。よって、上記の操作性に関する不具合の有無に関わらず、シート材30の検査が実施され得る。
【0034】
ズームレンズ20の物体側端部における他の要部の断面を
図4に示す。
図4は、本実施形態に係るズームレンズ20におけるシート材30が露出したときの構造を模式的に示している。シート材30の検査に際しては、まずビス40を外す。次いで、第一レンズ群摺動枠26に対してフィルタネジ枠27を、シート材30が露出する位置まで物体側に摺動させる。
【0035】
すなわち、本実施形態では、フィルタネジ枠27が第一レンズ群摺動枠26に外環してビス40によって固定されているときのフィルタネジ枠27の位置を第一の位置とし、シート材30が露出するときのフィルタネジ枠27の位置を第二の位置とする。本実施形態では、フィルタネジ枠27が第一の位置にあるときに、貫通孔261を含む前述の通気路が形成される。そしてフィルタネジ枠27は、第一レンズ群摺動枠26に対して、当該第一の位置から当該第二の位置まで軸方向に摺動可能である。
【0036】
フィルタネジ枠27を第二の位置まで摺動させることによって露出したシート材30を観察し、必要に応じて掃除し、あるいは交換する。
【0037】
シート材30を確認、検査し、必要に応じて掃除し、または交換したら、軸方向に沿ってフィルタネジ枠27を像面側に摺動させ、ビス孔272およびネジ孔263にビス40を挿通し、螺合させる。こうしてフィルタネジ枠27が第一レンズ群摺動枠26に再び固定される。フィルタネジ枠27は、第一レンズ群摺動枠26に物体側から外嵌することで所期の位置に配置される。よって、シート材30の検査および交換は、ズームレンズ20のレンズの性能に実質的な影響を及ぼさない。本実施形態によれば、ズームレンズ20の当初のレンズ性能が維持されたままシート材30の検査および交換が可能である。
【0038】
また、本実施形態では、第一レンズ群摺動枠26とフィルタネジ枠27との隙間31には、前述したように開口端262よりも物体側にシーリング材32が配置されている。よって、上記の摺動が可能であるとともに、当該摺動時においても隙間31の物体側への異物の侵入が防止される。
【0039】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、以下の他の実施形態の説明において、説明の便宜上、前述した実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。本実施形態に係るズームレンズは、ズーム操作環23および外筒21を前述した二重環構造に適用する形態である。本実施形態に係るズームレンズは、第一レンズ群摺動枠26およびフィルタネジ枠27によるシート材30検査のための構造に代えて、ズーム操作環23および外筒21によるシート材30検査のための構造を有する。それ以外は、本実施形態に係るズームレンズは、前述した実施形態1のズームレンズと実質的に同じ構造を有している。
【0040】
<ズーム操作環>
図5は、本実施形態におけるズーム操作環23の構成を模式的に示す図である。
図5に示されるように、ズーム操作環23は、本体部231と段部232とを有する。
【0041】
本体部231は、軸方向におけるその両端部に凸条部が周設されており、軸方向における中央部の凹部には、ズームラバー24が嵌っている。ズームラバー24は、その外周面に、周方向に山と谷とが繰り返されるコルゲート様の構造を有しており、ユーザの操作性をより向上させる。
【0042】
段部232は、本体部231の像面側に連設する部分であり、本体部231よりも小さい外径を有する。このため、ズーム操作環23は、その外周面に、軸方向における本体部231と段部232との間に段差を有している。
【0043】
段部232の外周壁面における物体側の部分には、貫通孔233が複数形成されている。貫通孔233は、例えば、周方向に全周の約1/3の範囲内に等間隔で形成されている。貫通孔233の開口端には、シート材30が貼り付けられており、貫通孔233がシート材30によって塞がれている。段部232の当該開口端の外周壁面における像面側の部分には、シーリング材32が周設され、固定されている。
【0044】
本実施形態に係るズームレンズの一要部の断面を
図6に示す。
図6は、本実施形態に係るズームレンズの通気構造を模式的に示している。
図6に示されるように、ズーム操作環23の段部232は外筒21の内側に位置している。ズーム操作環23の本体部231は、軸方向において物体側で外筒21に隣り合っている。外筒21は固定されており、ズーム操作環23は周方向に回転可能であるため、外筒21の物体側の端縁と本体部231の像面側端縁との間(図中の矢印aで示す)には、わずかに隙間が設けられている。このように、本実施形態では、ズーム操作環23の段部232と外筒21とが、軸方向へ互いに相対的に摺動可能な二重環構造を構成している。本実施形態において、二重環構造の内環は、周方向に回転可能であるとともに軸方向に移動可能に配置されているズーム操作環23であり、外環は、ズーム操作環23の像面側端部に重なる外筒21である。
【0045】
<通気構造>
径方向において、段部232の外周壁面と外筒21の内周壁面との間には、隙間31が形成されている。また、段部232には前述したように貫通孔233形成されており、貫通孔233はその開口端234で、通気性を有するシート材30によって塞がれている。このように、本実施形態に係るズームレンズには、貫通孔233を一部に含むとともに、外筒21が開口端234に重なるときにズーム操作環23の内周側と外筒21の外周側とを連通する通気路が形成されている。
【0046】
<摺動構造>
本実施形態に係るズームレンズの他の要部の断面を
図7に示す。
図7は、本実施形態に係るズームレンズにおけるズーム操作環を軸方向に摺動させるための構造を模式的に示している。
【0047】
前述したように、ズーム操作環23の径方向内側にはカム環25が配置されている。ズーム操作環23は、その内周壁面から突出する凸部235を有しており、カム環25は、その外周壁面に、軸方向に沿って延在する凹条251を有している。凸部235は、軸方向において、ズーム操作環23の本体部231の像面側端部に配置されている。凹条251は、軸方向において、カム環25の像面側端縁から物体側へ延在している。凹条251は、径方向において凸部235に対向する位置に形成されている。凹条251および凸部235は、互いに係合するように形成されている。
【0048】
すなわち、本実施形態では、ズーム操作環23のカム環25に対する固定が解除されたときに、ズーム操作環23が、カム環25に対して軸方向に、凸部235が係合したときの凹条251の残りの距離d1を摺動可能に構成されている。距離d1は、例えば、軸方向において、ズーム操作環23の本体部231の像面側端縁からシーリング材32の物体側端部に到達するまでの距離と等しい。すなわち、本実施形態のズームレンズは、ズーム操作環23がカム環25に対して軸方向に摺動すると、ズーム操作環23の段部232は像面側に距離d1分まで移動し、貫通孔233のシート材30が露出するように構成されている。
【0049】
このように、本実施形態では、軸方向において、ズーム操作環23の外周面上のシート材30が外筒21で覆われるズーム操作環23の位置を第一の位置とし、シート材30が外周側に露出するときのズーム操作環23の位置を第二の位置としたときに、ズーム操作環23は、第一の位置から第二の位置まで摺動可能である。また、本実施形態において、凹条251は、カム環25の外周面側に軸方向に沿って延在する第一係合部となっており、凸部235は、ズーム操作環23の内周面側に形成されて当該案内部と係合する第二係合部となっている。本実施形態では、凸部235および凹条251は、ズーム操作環23を前述の第一の位置から第二の位置まで案内する案内構造を構成している。そして、凹条251は、第一の位置のズーム操作環23における凸部235の位置から第二の位置のズーム操作環23における凸部235の位置まで延在している。
【0050】
なお、凸部235および凹条251は、周方向において少なくとも一組形成されていればよい。本実施形態では、摺動時における周方向の摺動のバランスの観点から、凸部235および凹条251の各組は、周方向における等間隔の三か所(三回対称の位置)に配置されている。
【0051】
<固定構造>
本実施形態に係るズームレンズにおける他の要部の断面を
図8に示す。
図8は、本実施形態に係るズームレンズにおける二重環構造が固定されている構造を模式的に示している。
【0052】
図8に示されるように、本実施形態に係るズームレンズは、コマ部材50をさらに有している。コマ部材50は、比較的硬質な略円筒状の樹脂製の部材である。コマ部材50は、ズーム操作環23の本体部231を貫通する嵌合孔236に挿通されて嵌合し、さらにその一端部はカム環25の外周面に形成された凹部252に内嵌している。コマ部材50には、ビス51が挿入されている。ビス51は、その先端部で、凹部252の底に開口するネジ孔253に螺合している。このように、本実施形態に係るズームレンズは、ズーム操作環23を貫通してカム環25に固定されるコマ部材50を固定部として含んでいる。
【0053】
なお、コマ部材50の他端縁およびビス51の頭部の頂面は、いずれも、本体部231の外周壁面よりもわずかに径方向内側に位置しており、ズームラバー24の内周壁面との間にわずかな隙間を有している。また、コマ部材50は、周方向において少なくとも一か所に配置されていればよい。本実施形態では、周方向における固定強度のバランスの観点から、コマ部材50を含む上記の固定構造は、周方向における等間隔の三か所(三回対称の位置)に配置されている。また、本実施形態では、コマ部材50は、周方向における前述の案内構造とは異なる位置に配置されている。
【0054】
<シート材の検査>
本実施形態では、シート材30の検査に際して、まずズームラバー24をズーム操作環23の本体部231から取り外す。次いで、全てのビス51とコマ部材50とを取り外す。前述したように、カム環25は、軸方向には固定されており、ズーム操作環23は、カム環25にコマ部材50およびビス51によって固定されている。また、外筒21も、前述したように、軸方向および周方向に対して固定されている。よって、ビス51とコマ部材50とを取り外すことによって、ズーム操作環23は、カム環25に対して軸方向に摺動可能となるとともに、外筒21に対しても軸方向に摺動可能となる。
【0055】
図9は、本実施形態に係るズームレンズの部分断面図である。
図9は、本実施形態においてズーム操作環を軸方向に摺動させたときの構造を模式的に示している。
【0056】
ズーム操作環23を軸方向に沿って物体側へ摺動させると、凸部235が凹条251に係合しながら凹条251内を軸方向に沿って移動し、凹条251に案内されて凹条251の物体側の端に当接する。このように、本実施形態では、凹条251における凸部235が係合可能な長さ(距離d1)に、ズーム操作環23の軸方向への摺動距離が規定されている。一方、ズーム操作環23の摺動に伴ってズーム操作環23の像面側端部である段部232も距離d1だけ物体側へ移動する。よって、軸方向において、ズーム操作環23の本体部231と外筒21との間に、貫通孔233およびそれを塞ぐシート材30が露出する。この状態においても、段部232と外筒21との間にはシーリング材32が介在している。よって、隙間31の像面側からズームレンズの内部への異物の侵入が防止される。
【0057】
シート材30を確認、検査し、必要に応じて掃除し、あるいは交換したら、軸方向に沿ってズーム操作環23を像面側に摺動させ、コマ部材50を嵌合孔236に挿通して嵌合させ、凹部252に内嵌させ、ビス51をネジ孔253に螺合させる。こうしてズーム操作環23がカム環25に再び固定され、また外筒21に対しても再び固定される。シート材30の検査および交換は、ズーム操作環23のみを軸方向にずらしてズームレンズの周方向外側にシート材30を露出させて実施されることから、ズームレンズのレンズの性能に実質的な影響を及ぼさない。本実施形態も、前述した実施形態1と同様に、ズームレンズのレンズ性能を維持したままシート材30の検査および交換が可能である。また、本実施形態ではズームレンズの比較的中央部に通気路が形成されるため、レンズ群の移動による内圧変化をより円滑に抑制する観点から、前述した実施形態1よりも有利である。
【0058】
〔実施形態3〕
本実施形態に係るズームレンズは、ズーム操作環23の凸部235およびカム環25の凹条251に代えて、ズーム操作環23が特定の開口形状を有する嵌合孔を有する以外は、前述した実施形態2のズームレンズと実質的に同じ構造を有する。
【0059】
<構成>
図10は、本実施形態に係るズームレンズにおけるズーム操作環を軸方向に摺動させるための構造を模式的に示している。また、
図11は、ズームレンズの要部断面図であり、本実施形態に係るズームレンズにおいてズーム操作環を軸方向に摺動させたときの構造を模式的に示している。本実施形態では、実施形態2においてズーム操作環23に形成されている三つの嵌合孔236の一つが、軸方向に細長く開口する形状に形成された案内嵌合孔237に置き替えられている。
【0060】
案内嵌合孔237は、軸方向に細長な略矩形の開口形状を有している。当該開口形状における幅(周方向の長さ)は、コマ部材50が挿通されて嵌合する長さとなっている。また、当該開口形状における長さ(軸方向の長さ)は、案内嵌合孔237の一端から他端までのコマ部材50を移動距離が、ズーム操作環23を軸方向に摺動させたときにシート材30が露出する距離d2となる長さである。このように、案内嵌合孔237の開口形状は、ズーム操作環23が一の位置にあるときのコマ部材50が軸方向における一端で嵌合し、ズーム操作環23が第二の位置にあるときのコマ部材50が軸方向における他端で嵌合する細長の形状、となっている。なお、コマ部材50は、外筒21がシート材30に重なる位置にあるときに、軸方向における案内嵌合孔237の物体側の位置(像面側に隙間を有する位置)で案内嵌合孔237に嵌合している。
【0061】
<シート材の検査>
本実施形態では、シート材30の検査に際して、まずズームラバー24をズーム操作環23の本体部231から取り外す。次いで、案内嵌合孔237以外の二つの嵌合孔236に嵌合しているコマ部材50とそれを固定しているビス51とを取り外す。その結果、案内嵌合孔237の軸方向の長さの範囲において、ズーム操作環23がカム環25および外筒21に対して軸方向に摺動可能となる。
【0062】
案内嵌合孔237にコマ部材50を嵌合させたまま摺動させる。たとえば、
図10および
図11に示されるように、案内嵌合孔237の像面側の端までコマ部材50が移動するまで、ズーム操作環23を軸方向に沿って物体側に摺動させる。その結果、ズーム操作環23の摺動に伴ってズーム操作環23の段部232も物体側へ距離d2だけ移動し、ズーム操作環23の本体部231と外筒21との間にシート材30が露出する。この状態においても、段部232と外筒21との間にはシーリング材32が介在しているため、隙間31の像面側からズームレンズの内部への異物の侵入が防止される。
【0063】
シート材30を確認、検査し、必要に応じて交換したら、軸方向に沿ってズーム操作環23を像面側に摺動させ、コマ部材50を嵌合孔236に挿通して嵌合させ、凹部252に内嵌させ、ビス51をネジ孔253に螺合させる。こうしてズーム操作環23がカム環25に再び固定され、また外筒21に対しても再び固定される。
【0064】
本実施形態も、前述した実施形態1および実施形態2と同様に、ズームレンズのレンズ性能を維持したままシート材30の検査および交換が可能である。加えて、本実施形態では、コマ部材50およびビス51の一組を残したままズーム操作環23の軸方向の摺動とシート材30の検査とが可能である。よって、全てのビスを外す実施形態1および実施形態2に対して、シート材30の検査の作業がより簡易になる。
【0065】
〔変形例〕
前述した実施形態では、内環および外環の一方が固定され、他方が軸方向に摺動可能に配置されているが、ズームレンズを構成し得る範囲において、内環と外環との両方が軸方向に摺動可能であってもよい。
【0066】
実施形態2において、カム環25が第一係合部としての凸部を有し、ズーム操作環23が当該凸部に係合する第二係合部としての凹条を有してもよい。
【0067】
本発明に係るズームレンズは、前述した実施形態1から実施形態3のうちの二以上の実施形態を含んでいてもよい。
【0068】
実施形態3において、案内嵌合孔は、複数の嵌合孔の一部であれば二以上形成されていてもよい。このような構造は、周方向における摺動時のバランスを改善する観点から有利である。
【0069】
実施形態3において、案内嵌合孔に嵌合するコマ部材は、カム環に対して完全に(すなわち着脱できないように)固定されていてもよい。このような構造は、シート材の検査に際して案内嵌合孔に嵌合しているコマ部材50を誤って外すことを防止する観点から有利である。
【0070】
前述した実施形態において、案内構造における軸方向への摺動を案内する構造と、摺動距離を規定する構造とが独立していてもよい。たとえば、実施形態1であれば、第一レンズ群摺動枠26は、径方向外側に突出して第二の位置でフィルタネジ枠27に対して軸方向に係止する凸部を、摺動距離を規定する構造としてさらに有していてもよい。また、実施形態2および実施形態3では、ズーム操作環23の段部232は、径方向外側に突出して第二の位置で外筒21に対して軸方向に係止する凸部または凸条を、摺動距離を規定する構造としてさらに有していてもよい。
【0071】
〔まとめ〕
本発明の第一の態様に係るズームレンズ(20)は、周壁を貫通する貫通孔(261)を有する内環(第一レンズ群摺動枠26)と、通気性を有するとともに、内環の外周壁面に貼り付けられて貫通孔を塞ぐシート材(30)と、軸方向(X方向)へ相対的に摺動可能な二重環構造を内環とともに構成する外環(フィルタネジ枠27)と、外周側から着脱可能に装着されて軸方向に移動可能な内環または外環を軸方向において固定する固定部(ビス40)と、を有する。そして、内環または外環は、軸方向における、シート材に外環が重なる第一の位置からシート材が外周側に露出する第二の位置まで摺動可能であり、固定部は、第一の位置に内環または外環を固定し、内環または外環が第一の位置にあるときに、貫通孔を含むとともに内環の内周側と外環の外周側とを連通する通気路が形成されている。第一の態様によれば、通気路を有するズームレンズを構成する従来の部品に簡易な変更を施すことによって、部品点数を実質的に増やすことなく、またシート材の検査時にズームレンズを解体することなく、シート材を外側に露出させることが可能である。したがって、第一の態様によれば、ズームレンズの内外を連通する通気路に介在するシート材を外側から簡易に検査することができる。
【0072】
本発明の第二の態様に係るズームレンズは、第一の態様において、内環が、第一レンズ群を保持する第一レンズ群保持枠(28)を物体側の端部に保持する第一レンズ群摺動枠であり、外環が、第一レンズ群摺動枠に物体側から外嵌して軸方向へ摺動可能なフィルタネジ枠であり、固定部が、外周側からフィルタネジ枠の周壁を貫通してフィルタネジ枠および第一レンズ群摺動枠の一方または両方に螺合するネジ(ビス40)である。第二の態様は、通常ズームレンズに対して外陥し、かつ着脱可能に構成されるフィルタネジ枠の固定構造を利用可能である。したがって、第二の態様は、部品点数を実質的に増やすことなく、かつ簡易な構造でシート材を外側から簡易に検査することを可能にする観点からより一層効果的である。
【0073】
本発明の第三の態様に係るズームレンズは、第一の態様または第二の態様において、内環が、周方向に回転可能であるとともに軸方向に移動可能に配置されているズーム操作環(23)であり、外環が、ズーム操作環の像面側端部に重なる外筒(21)であり、固定部が、ズーム操作環を貫通して、ズーム操作環の内周側に配置されているカム環(25)に固定されるコマ部材(50)を含み、内環を第一の位置から第二の位置まで案内する案内構造をさらに含む。第三の態様では、ズームレンズにおいてレンズ群の移動によって内容積が変更するズームレンズの軸方向における中央部に、前述の通気路が形成される。したがって、第三の態様は、ズームレンズの内圧の変化を円滑に抑制する観点からより一層効果的である。
【0074】
本発明の第四の態様に係るズームレンズは、第三の態様において、案内構造が、カム環の外周面に軸方向に沿って延在する第一係合部(凹条251)と、ズーム操作環の内周面に形成されて第一係合部と係合する第二係合部(凸部235)と、を含み、第一係合部が、ズーム操作環が第一の位置にあるときの第二係合部の位置から、ズーム操作環が第二の位置にあるときの第二係合部の位置まで延在している。第四の態様は、周方向における複数箇所(回転対称位置)に設置可能な軸方向に延在する凹条とそれに係合する凸部とのセットによって、ズーム操作環を軸方向に摺動させることが可能である。よって、第四の態様は、円滑かつ適度にズーム操作環を外筒に対して軸方向へ摺動させる観点からより一層効果的である。
【0075】
本発明の第五の態様に係るズームレンズは、第三の態様または第四の態様において、案内構造が、ズーム操作環の周壁を貫通する孔であって、コマ部材が内嵌する幅で軸方向に細長く形成されている案内嵌合孔(237)であり、案内嵌合孔の開口形状が、ズーム操作環が第一の位置にあるときのコマ部材が軸方向における一端で嵌合し、ズーム操作環が第二の位置にあるときのコマ部材が軸方向における他端で嵌合する細長の形状である。第五の態様では、ズーム操作環を摺動させる際に複数のコマ部材50のうち、案内嵌合孔に嵌合している一部のコマ部材50を外すことなくズーム操作環を適度に摺動させることが可能である。よって、第五の態様は、簡易かつ適度にズーム操作環を外筒に対して軸方向へ摺動させる観点からより一層効果的である。
【0076】
本発明の第六の態様に係る撮像装置(1)は、第一の態様から第五の態様のいずれかのズームレンズを有する。第六の態様によれば、第一の態様と同様に、ズームレンズを解体することなくシート材を外側に露出させることが可能であることから、ズームレンズの内外を連通する通気路に介在するシート材を外側から簡易に検査することができる。
【0077】
前記構成によれば、前述の通気路を有する従来のズームレンズに対して部品を増やすことなく、ズームレンズを解体せずに二重環構造を摺動させるだけで、シート材の点検を外側から実施することが可能である。このような本発明は、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)における、消費と生産とのパターンに関する目標12「つくる責任、つかう責任」等の達成にも貢献することが期待される。
【0078】
本発明は上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
1 撮像装置
10 本体
20 ズームレンズ
21 外筒
22 マウント
23 ズーム操作環
24 ズームラバー
25 カム環
26 第一レンズ群摺動枠
27 フィルタネジ枠
28 第一レンズ群保持枠
30 シート材
31 隙間
32 シーリング材
40、51 ビス
50 コマ部材
231 本体部
232 段部
233、261 貫通孔
234、262 開口端
235 凸部
236 嵌合孔
237 案内嵌合孔
251 凹条
252 凹部
253、263 ネジ孔
271 ネジ部
272 ビス孔