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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115456
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】校正データ内蔵測定器
(51)【国際特許分類】
   G01D 18/00 20060101AFI20240819BHJP
   G01D 3/00 20060101ALI20240819BHJP
   G01J 1/42 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
G01D18/00
G01D3/00 C
G01J1/42 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021171
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】片岡 浩一
【テーマコード(参考)】
2F075
2F076
2G065
【Fターム(参考)】
2F075AA01
2F075AA06
2F075EE14
2F075EE16
2F075EE18
2F075FF02
2F075FF07
2F076AA06
2F076AA07
2F076AA18
2G065AA04
2G065AB09
2G065AB20
2G065BC22
2G065BC33
2G065BD06
2G065DA01
(57)【要約】
【課題】測定値を校正することを容易とする。
【解決手段】本開示に係る校正データ内蔵測定器10は、トレーサブルな測定をすることが可能である。校正データ内蔵測定器10は、センサ11と、校正データ内蔵測定器10の校正データを格納する校正データ管理部17と、校正データ内蔵測定器10の設定条件を格納する設定データ管理部16と、センサ11が測定した測定値を格納可能な記憶部12と、トレーサビリティ判定部18と、を備える。校正データは、上位基準器との測定結果の差分を示す複数の校正結果と、複数の校正条件とを含み、各校正結果は、当該校正結果を取得したときの校正条件と関連付けられている。トレーサビリティ判定部18は、設定条件及び測定値と複数の校正条件とを比較し、設定条件及び測定値と一致する校正条件がある場合は、校正条件と関連付けられている校正結果によって測定値を補正して校正済み測定値を算出し、算出した校正済み測定値を記憶部12に格納する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーサブルな測定をすることが可能な校正データ内蔵測定器であって、
センサと、
前記校正データ内蔵測定器の校正データを格納する校正データ管理部と、
前記校正データ内蔵測定器の設定条件を格納する設定データ管理部と、
前記センサが測定した測定値を格納可能な記憶部と、
トレーサビリティ判定部と、を備え、
前記校正データは、上位基準器との測定結果の差分を示す複数の校正結果と、複数の校正条件とを含み、
前記各校正結果は、当該校正結果を取得したときの前記校正条件と関連付けられており、
前記トレーサビリティ判定部は、
前記設定条件及び前記測定値と前記複数の校正条件とを比較し、
前記設定条件及び前記測定値と一致する前記校正条件がある場合は、前記校正条件と関連付けられている前記校正結果によって前記測定値を補正して校正済み測定値を算出し、
算出した前記校正済み測定値を前記記憶部に格納する、校正データ内蔵測定器。
【請求項2】
請求項1に記載の校正データ内蔵測定器において、
前記トレーサビリティ判定部は、前記設定条件及び前記測定値と一致する前記校正条件がない場合は、前記センサが測定した前記測定値をそのまま未校正測定値として前記記憶部に格納する、校正データ内蔵測定器。
【請求項3】
請求項2に記載の校正データ内蔵測定器において、
表示部をさらに備え、
前記トレーサビリティ判定部は、前記校正済み測定値又は前記未校正測定値を前記表示部に表示させる、校正データ内蔵測定器。
【請求項4】
請求項3に記載の校正データ内蔵測定器において、
前記トレーサビリティ判定部は、前記校正済み測定値を算出した場合は、前記校正済み測定値とともに、前記校正済み測定値がトレーサブルな値であることを示す表記を前記表示部に表示させる、校正データ内蔵測定器。
【請求項5】
請求項4に記載の校正データ内蔵測定器において、
前記校正データは、前記校正結果を取得した日時の情報をさらに含み、
前記トレーサビリティ判定部は、現在の日時が、前記校正結果を取得した日時に推奨校正期間を加算した日時を超過している場合は、前記表示部にアラームを表示させる、校正データ内蔵測定器。
【請求項6】
請求項4に記載の校正データ内蔵測定器において、
前記校正データは、前記校正結果を取得した日時の情報をさらに含み、
前記トレーサビリティ判定部は、現在の日時が、前記校正結果を取得した日時に推奨校正期間を加算した日時を超過している場合は、前記校正済み測定値を算出した場合であっても、前記校正済み測定値がトレーサブルな値であることを示す表記を前記表示部に表示させない、校正データ内蔵測定器。
【請求項7】
請求項1に記載の校正データ内蔵測定器において、
前記校正データ管理部は、複数の国の国家標準器に紐付けされた複数の校正データを格納しており、
前記トレーサビリティ判定部は、前記複数の校正データのうちユーザによって選択された校正データを用いて、前記校正済み測定値を算出する、校正データ内蔵測定器。
【請求項8】
請求項1に記載の校正データ内蔵測定器において、
前記校正データ内蔵測定器は、光パワーメータである、校正データ内蔵測定器。
【請求項9】
請求項8に記載の校正データ内蔵測定器において、
前記設定条件及び前記校正条件は、項目として、光の波長を含む、校正データ内蔵測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、校正データ内蔵測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、国家標準器に紐付けられた測定器がある。このような測定器は、トレーサブルな測定器とも称される。
【0003】
通常、このようなトレーサブルな測定器は、上位基準器によって測定値が校正される。上位基準器は、さらに上位の上位基準器によって校正される。このようにして上位基準器を辿っていくと最終的には国家標準器に辿りつく。このようにして、トレーサブルな測定器は、国家標準器に紐付けられる。
【0004】
例えば、特許文献1は、光パワー測定標準器を用いて測定値を校正することが可能な光パワーメータの校正装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2-150529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、測定器が測定した測定値を上位基準器によって校正する場合、同じ対象を測定したときの上位基準器との測定値の差分の情報を含む校正データを用いて、ユーザが手動で測定値を校正することが多かった。
【0007】
このようにユーザが手動で測定値を校正する場合、ユーザにかかる負担が大きかった。
【0008】
そこで、本開示は、測定値を校正することを容易とすることが可能な校正データ内蔵測定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
幾つかの実施形態に係る校正データ内蔵測定器は、トレーサブルな測定をすることが可能な校正データ内蔵測定器であって、センサと、前記校正データ内蔵測定器の校正データを格納する校正データ管理部と、前記校正データ内蔵測定器の設定条件を格納する設定データ管理部と、前記センサが測定した測定値を格納可能な記憶部と、トレーサビリティ判定部と、を備え、前記校正データは、上位基準器との測定結果の差分を示す複数の校正結果と、複数の校正条件とを含み、前記各校正結果は、当該校正結果を取得したときの前記校正条件と関連付けられており、前記トレーサビリティ判定部は、前記設定条件及び前記測定値と前記複数の校正条件とを比較し、前記設定条件及び前記測定値と一致する前記校正条件がある場合は、前記校正条件と関連付けられている前記校正結果によって前記測定値を補正して校正済み測定値を算出し、算出した前記校正済み測定値を前記記憶部に格納する。このような校正データ内蔵測定器によれば、測定値を校正することを容易とすることが可能である。
【0010】
一実施形態に係る校正データ内蔵測定器において、前記トレーサビリティ判定部は、前記設定条件及び前記測定値と一致する前記校正条件がない場合は、前記センサが測定した前記測定値をそのまま未校正測定値として前記記憶部に格納してもよい。これにより、校正済み測定値を算出できない場合は、校正していない測定値をそのまま記憶部に格納することができる。
【0011】
一実施形態に係る校正データ内蔵測定器において、表示部をさらに備え、前記トレーサビリティ判定部は、前記校正済み測定値又は前記未校正測定値を前記表示部に表示させてもよい。これにより、ユーザは、校正済み測定値又は測定値を確認することができる。
【0012】
一実施形態に係る校正データ内蔵測定器において、前記トレーサビリティ判定部は、前記校正済み測定値を算出した場合は、前記校正済み測定値とともに、前記校正済み測定値がトレーサブルな値であることを示す表記を前記表示部に表示させてもよい。これにより、ユーザは、表示部に表示されている値がトレーサブルな値であることを把握することができる。
【0013】
一実施形態に係る校正データ内蔵測定器において、前記校正データは、前記校正結果を取得した日時の情報をさらに含み、前記トレーサビリティ判定部は、現在の日時が、前記校正結果を取得した日時に推奨校正期間を加算した日時を超過している場合は、前記表示部にアラームを表示させてもよい。これにより、ユーザは、新たな校正データを校正データ管理部に格納する必要があることを認識することができる。
【0014】
一実施形態に係る校正データ内蔵測定器において、前記校正データは、前記校正結果を取得した日時の情報をさらに含み、前記トレーサビリティ判定部は、現在の日時が、前記校正結果を取得した日時に推奨校正期間を加算した日時を超過している場合は、前記校正済み測定値を算出した場合であっても、前記校正済み測定値がトレーサブルな値であることを示す表記を前記表示部に表示させなくてもよい。これにより、推奨校正期間を過ぎた校正結果によって校正された測定値をユーザがトレーサブルな値として用いることを防ぐことができる。
【0015】
一実施形態に係る校正データ内蔵測定器において、前記校正データ管理部は、複数の国の国家標準器に紐付けされた複数の校正データを格納しており、前記トレーサビリティ判定部は、前記複数の校正データのうちユーザによって選択された校正データを用いて、前記校正済み測定値を算出してもよい。これにより、ユーザは、所望の国の国家標準器に紐付けされた校正データによって測定値を校正することができる。
【0016】
一実施形態に係る校正データ内蔵測定器において、前記校正データ内蔵測定器は、光パワーメータであってもよい。
【0017】
一実施形態に係る校正データ内蔵測定器において、前記設定条件及び前記校正条件は、項目として、光の波長を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、測定値を校正することを容易とすることが可能な校正データ内蔵測定器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態に係る校正データ内蔵測定器の概略構成を示す図である。
図2】一実施形態に係る校正データ内蔵測定器の動作を示すフローチャートである。
図3】比較例に係る測定器の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、一実施形態に係る校正データ内蔵測定器10の概略構成を示す図である。図1を参照して、一実施形態に係る校正データ内蔵測定器10の構成及び機能について説明する。
【0021】
校正データ内蔵測定器10は、センサ11と、記憶部12と、表示部13と、入力部14と、通信部15と、設定データ管理部16と、校正データ管理部17と、トレーサビリティ判定部18とを備える。
【0022】
校正データ内蔵測定器10は、トレーサブルな測定をすることが可能な測定器である。すなわち、校正データ内蔵測定器10は、上位基準器によって校正することが可能であり、上位基準器を辿っていくと国家標準器に紐付けることができる。
【0023】
校正データ内蔵測定器10は、例えば光パワーメータであってよい。本実施形態においては、校正データ内蔵測定器10が光パワーメータである場合を例に挙げて説明することがあるが、これは一例である。校正データ内蔵測定器10は、光パワーメータ以外の測定器であってもよい。
【0024】
センサ11は、測定対象の物理量を測定するセンサである。校正データ内蔵測定器10が光パワーメータである場合、センサ11は、光パワーを測定する。センサ11が光パワーを測定するセンサである場合、センサ11は、光パワーを測定可能な任意の方式のセンサであってよい。
【0025】
記憶部12は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限定されない。記憶部12は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部12は、校正データ内蔵測定器10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部12は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、各種データなどを記憶していてよい。
【0026】
記憶部12は、センサ11が測定した測定値を格納することができる。また、記憶部12は、測定値を補正することによって算出された校正済み測定値を格納することができる。校正済み測定値の算出については、後述する。
【0027】
表示部13は、情報を表示する1つ以上の出力用インタフェースを含む。表示部13は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro Luminescent)ディスプレイなどを含んでいてよい。
【0028】
表示部13は、センサ11が測定した測定値を表示することができる。また、表示部13は、測定値を補正することによって算出された校正済み測定値を表示することができる。
【0029】
入力部14は、ユーザの操作に基づく入力情報を取得する1つ以上の入力用インタフェースを含む。例えば、入力部14は、ボタンなどを含んでいてよい。また、入力部14は、表示部13と一体となり、タッチスクリーンとして構成されていてもよい。
【0030】
入力部14は、ユーザが校正データ内蔵測定器10によって測定を行う際の校正データ内蔵測定器10の設定条件を、ユーザの操作によって取得することができる。例えば、校正データ内蔵測定器10が光パワーメータである場合、設定条件は、項目として、光の波長、測定レンジなどを含んでいてよい。
【0031】
通信部15は、有線通信に対応する通信モジュール及び無線通信に対応する通信モジュールの少なくとも一方を含む。校正データ内蔵測定器10は、通信部15を介して他の装置と通信可能である。
【0032】
設定データ管理部16は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限定されない。
【0033】
設定データ管理部16は、ユーザが校正データ内蔵測定器10によって測定を行う際の校正データ内蔵測定器10の設定条件を格納する。設定データ管理部16は、ユーザが校正データ内蔵測定器10によって測定を行う際の校正データ内蔵測定器10の設定条件を入力部14が取得すると、取得した設定条件を格納する。センサ11は、設定データ管理部16に格納された設定条件に設定される。
【0034】
校正データ管理部17は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限定されない。
【0035】
校正データ管理部17は、校正データを格納している。校正データは、校正データ内蔵測定器10が測定した測定値を、校正データ内蔵測定器10の上位基準器によって校正するためのデータである。上位基準器は、さらにその上位の上位基準器によって校正可能であり、辿っていくと最終的には国家標準器に辿りつく。
【0036】
校正データは、複数の校正結果と、複数の校正条件とを含む。校正結果は、同一の対象を測定したときの校正データ内蔵測定器10の測定結果と上位基準器の測定結果との差分を示す。校正条件は、校正結果を取得したときの校正データ内蔵測定器10の設定条件の情報及び測定条件の情報を含む。例えば、校正データ内蔵測定器10が光パワーメータである場合、校正条件は、設定条件の項目として、光の波長などを含んでいてよい。また、校正条件は、測定条件の項目として、入力パワーなどを含んでいてよい。
【0037】
校正データが含む複数の校正結果の各校正結果は、その校正結果を取得したときの校正条件と関連付けられて校正データに含まれている。
【0038】
校正データは、入力部14へのユーザの入力操作によって校正データ管理部17に予め格納されていてよい。あるいは、校正データは、通信部15を介して他の装置から取得することによって校正データ管理部17に予め格納されていてよい。
【0039】
トレーサビリティ判定部18は、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)若しくはGPU(Graphics Processing Unit)などの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。
【0040】
トレーサビリティ判定部18は、記憶部12に記憶されているプログラム、データなどを読み込み、各種機能を実行する。
【0041】
図2に示すフローチャートを参照して、校正データ内蔵測定器10の動作を説明する。
【0042】
ステップS101:入力部14は、測定を行う際の校正データ内蔵測定器10の設定条件を、ユーザの操作によって取得する。トレーサビリティ判定部18は、入力部14が取得した設定条件を設定データ管理部16に格納する。センサ11は、設定データ管理部16に格納された設定条件に設定される。
【0043】
ステップS102:ユーザは、ステップS101によって設定された設定条件によって測定を実行する。例えば、校正データ内蔵測定器10が光パワーメータである場合、ユーザは、校正データ内蔵測定器10を用いて光パワーを測定する。ユーザによって測定が実行されると、センサ11は、測定値を取得する。
【0044】
ステップS103:トレーサビリティ判定部18は、ステップS101において取得した設定条件及びステップS102において取得した測定値と、校正データ管理部17に格納されている校正データが含む複数の校正条件とを比較する。例えば、校正データ内蔵測定器10が光パワーメータである場合、トレーサビリティ判定部18は、ステップS101において取得した設定条件が含む波長と校正条件が含む設定条件の波長とを比較し、且つ、ステップS102において取得した測定値の入力パワーと校正条件が含む測定条件の入力パワーとを比較する。
【0045】
ステップS104:設定条件及び測定値と一致する校正条件がある場合(ステップS104のYes)、トレーサビリティ判定部18は、ステップS105に進む。設定条件及び測定値と一致する校正条件がない場合(ステップS104のNo)、トレーサビリティ判定部18は、ステップS107に進む。
【0046】
ステップS105:ステップS104においてYesと判定された場合、トレーサビリティ判定部18は、校正データが含む複数の校正結果のうち、設定条件と一致する校正条件と関連付けられている校正結果によって、センサ11が測定した測定値を補正して校正済み測定値を算出する。なお、本実施形態において、「校正済み測定値」は、校正結果によって補正された測定値のことを意味する。
【0047】
ステップS106:トレーサビリティ判定部18は、校正済み測定値を記憶部12に格納する。トレーサビリティ判定部18は、校正済み測定値を表示部13に表示させてよい。この際、トレーサビリティ判定部18は、校正済み測定値を表示部13に表示させるとともに、表示部13に表示している校正済み測定値がトレーサブルな値であることを示す表記を表示部13に表示させてよい。トレーサブルな値であることを示す表記は、例えば、「トレーサブル」というような文字であってもよいし、トレーサブルな値であることを示すシンボルであってもよい。これにより、表示部13に表示されている値がトレーサブルな値であることを、ユーザが確認することができる。
【0048】
トレーサビリティ判定部18は、校正済み測定値を記憶部12に格納する際、格納する値が校正済み測定値であること、すなわち校正結果によって補正された測定値であることを示す情報を、校正済み測定値とともに格納してよい。
【0049】
ステップS107:ステップS104においてNoと判定された場合、トレーサビリティ判定部18は、センサ11が測定した測定値を未校正測定値として記憶部12にそのまま格納する。トレーサビリティ判定部18は、未校正測定値を表示部13に表示させてよい。この際、トレーサビリティ判定部18は、未校正測定値を表示部13に表示させるとともに、表示部13に表示している未校正測定値が校正された値でないことを示す表記を表示部13に表示させてよい。これにより、表示部13に表示されている値がトレーサブルな値ではないことを、ユーザが確認することができる。
【0050】
トレーサビリティ判定部18は、未校正測定値を記憶部12にそのまま格納する際、格納する値が未校正測定値であること、すなわち校正されていない値であることを示す情報を、未校正測定値とともに格納してよい。
【0051】
以上のような一実施形態に係る校正データ内蔵測定器10によれば、測定値を校正することを容易とすることができる。より具体的には、校正データ内蔵測定器10は、校正データ内蔵測定器10の校正データを格納する校正データ管理部17を備えており、校正データ内蔵測定器10の内部に校正データを格納している。また、校正データ内蔵測定器10のトレーサビリティ判定部18は、設定条件及び測定値と複数の校正条件とを比較し、設定条件と一致する校正条件がある場合は、校正条件と関連付けられている校正結果によって測定値を補正して校正済み測定値を算出し、算出した校正済み測定値を記憶部12に格納する。このように、一実施形態に係る校正データ内蔵測定器10は、校正データ内蔵測定器10の内部に格納されている校正データのうちの適切な校正結果を用いて、測定値を自動で補正して校正済み測定値を算出することができる。これにより、一実施形態に係る校正データ内蔵測定器10は、測定値を校正結果で補正する際のユーザの手間を低減することができ、測定値を校正することを容易とすることができる。
【0052】
(推奨校正期間)
通常、トレーサブルな測定器には、推奨校正期間が設定されていることが多い。校正データ内蔵測定器10は、推奨校正期間を考慮した内容を表示部13に表示させてもよい。この場合の校正データ内蔵測定器10の動作について説明する。
【0053】
校正データ管理部17に格納されている校正データは、校正結果を取得した日時の情報をさらに含んでいる。
【0054】
トレーサビリティ判定部18は、現在の日時と、校正結果を取得した日時に推奨校正期間を加算した日時とを比較する。推奨校正期間の情報は、記憶部12に格納されていてよい。
【0055】
トレーサビリティ判定部18は、現在の日時が、校正結果を取得した日時に推奨校正期間を加算した日時を超過している場合は、表示部13にアラームを表示させてよい。これにより、ユーザは、校正データ管理部17が格納している校正データは推奨校正期間を過ぎたデータであり、新たな校正データを校正データ管理部17に格納する必要があることを認識することができる。また、これにより、校正データ内蔵測定器10は、推奨校正期間を過ぎた校正結果によって校正された測定値をユーザがトレーサブルな値として用いることを防ぐことができる。
【0056】
また、トレーサビリティ判定部18は、現在の日時が、校正結果を取得した日時に推奨校正期間を加算した日時を超過している場合は、校正済み測定値を算出した場合であっても、校正済み測定値がトレーサブルな値であることを示す表記を表示部13に表示させないようにしてよい。これにより、校正データ内蔵測定器10は、推奨校正期間を過ぎた校正結果によって校正された測定値をユーザがトレーサブルな値として用いることを防ぐことができる。
【0057】
(複数の国の国家標準器への対応)
校正データ管理部17は、複数の国の国家標準器に紐付けされた複数の校正データを格納していてもよい。この場合の校正データ内蔵測定器10の動作について説明する。
【0058】
入力部14は、校正データ管理部17に格納されている、複数の国の国家標準器に紐付けされた複数の校正データのうち、どの校正データを使用するかについてユーザによる選択操作を受け付ける。
【0059】
トレーサビリティ判定部18は、ユーザによって選択された校正データを用いて、校正済み測定値を算出する。すなわち、校正データ内蔵測定器10は、ユーザによって選択された校正データを用いて、図2に示したフローチャートの処理を実行する。
【0060】
これにより、例えば、ユーザが日本の国家標準器に紐付けされた校正データを選択した場合、校正データ内蔵測定器10は、日本の国家標準器に対してトレーサブルな測定をすることができる。また、例えば、ユーザがアメリカの国家標準器に紐付けされた校正データを選択した場合、校正データ内蔵測定器10は、アメリカの国家標準器に対してトレーサブルな測定をすることができる。
【0061】
(比較例)
図3は、比較例に係る測定器20の概略構成を示す図である。
【0062】
比較例に係る測定器20は、センサ11と、記憶部12と、表示部13と、入力部14と、通信部15と、設定データ管理部16とを備える。
【0063】
比較例に係る測定器20は、校正データ管理部17及びトレーサビリティ判定部18を備えていないという点で、図1に示した一実施形態に係る校正データ内蔵測定器10と相違する。
【0064】
比較例に係る測定器20は、測定器20の内部に校正データを有していない。そのため、比較例に係る測定器20は、測定値を自動で校正することができない。
【0065】
比較例に係る測定器20で測定した測定値を校正する場合、ユーザは、校正データ30を用いて校正済み測定値を算出する。
【0066】
校正データ30は、測定器20が測定した測定値を、測定器20の上位基準器によって校正するためのデータである。校正データ30は、測定器20には格納されておらず、測定器20の外部にあるデータである。校正データ30は、紙に印刷されたデータであってもよいし、コンピュータに格納されているデータであってもよい。
【0067】
比較例に係る測定器20を用いて測定する場合、測定値を校正データ30によって補正するためには、ユーザは、測定器20で測定した測定値を、校正データ30を参照して手動で補正しなければならない。
【0068】
これに対し、図1に示した一実施形態に係る校正データ内蔵測定器10は、校正データ内蔵測定器10で測定した測定値を、校正データを用いて自動で補正することができる。これにより、ユーザの手間を低減することができる。
【0069】
本開示は、その精神又はその本質的な特徴から離れることなく、上述した実施形態以外の他の所定の形態で実現できることは当業者にとって明白である。従って、先の記述は例示的であり、これに限定されない。開示の範囲は、先の記述によってではなく、付加した請求項によって定義される。あらゆる変更のうちその均等の範囲内にあるいくつかの変更は、その中に包含される。
【0070】
例えば、上述した各構成部の配置及び個数等は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の配置及び個数等は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0071】
例えば、上述した実施形態において、記憶部12、設定データ管理部16及び校正データ管理部17を別々の構成要素として示したが、これらの3つが1つのメモリに統合して構成されていてもよいし、これらの3つのうちの2つが1つのメモリに統合して構成されていてもよい。
【0072】
例えば、上述した実施形態において、測定器20が光パワーメータである場合の設定条件の項目の例として、波長及び測定レンジを挙げたが、設定条件の項目として、平均化時間などをさらに含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0073】
10 校正データ内蔵測定器
11 センサ
12 記憶部
13 表示部
14 入力部
15 通信部
16 設定データ管理部
17 校正データ管理部
18 トレーサビリティ判定部
20 測定器
30 校正データ
図1
図2
図3