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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115459
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】路面描画機能を有する車両
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/00 20060101AFI20240819BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240819BHJP
   F21V 14/04 20060101ALI20240819BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20240819BHJP
   B60Q 1/26 20060101ALI20240819BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20240819BHJP
   F21W 103/60 20180101ALN20240819BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240819BHJP
【FI】
B60Q1/00 G
G08G1/16 C
F21V14/04
F21V7/00 590
B60Q1/26 Z
F21W102:13
F21W103:60
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021174
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100182051
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 直宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 育郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 研太郎
(72)【発明者】
【氏名】木下 真
【テーマコード(参考)】
3K339
5H181
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339AA16
3K339AA36
3K339AA43
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA03
3K339BA21
3K339BA22
3K339BA30
3K339CA01
3K339DA01
3K339EA05
3K339EA07
3K339EA10
3K339FA05
3K339FA08
3K339FA20
3K339GB01
3K339HA03
3K339JA21
3K339KA02
3K339KA06
3K339KA27
3K339KA39
3K339LA06
3K339MA01
3K339MA02
3K339MA05
3K339MA07
3K339MA10
3K339MB05
3K339MB06
3K339MC03
3K339MC13
3K339MC17
3K339MC26
3K339MC39
3K339MC41
3K339MC48
3K339MC77
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF24
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】車両からの路面描画を改善する。
【解決手段】路面描画機能を有する車両は、車両の少なくとも前側の路面へ向けて路面描画のための投光が可能な投光部材と、投光部材による路面描画のための投光を制御する制御部と、投光部材が路面描画のための投光をする路面を検出可能な検出デバイスと、を有する。制御部は、検出デバイスの路面の検出に基づいて、車両において路面描画の少なくとも反射不足を判断することにより、路面描画のための投光を抑制するように制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の少なくとも前側の路面へ向けて路面描画のための投光が可能な投光部材と、
前記投光部材による路面描画のための投光を制御する制御部と、
前記投光部材が路面描画のための投光をする路面を検出可能な検出デバイスと、
を有し、
前記制御部は、
前記検出デバイスの路面の検出に基づいて、前記車両において路面描画の少なくとも反射不足を判断することにより、路面描画のための投光を抑制するように制御する、
路面描画機能を有する車両。
【請求項2】
前記検出デバイスは、路面に投光により描画されている像を検出像として検出可能であり、
路面描画のための投光を制御する前記制御部は、
前記検出デバイスにより検出される路面描画についての前記検出像における反射不足部分について判断し、反射不足部分が生じている場合には、前記投光部材からの路面描画のための投光を抑制するように抑制する、
請求項1記載の、路面描画機能を有する車両。
【請求項3】
路面描画のための投光を制御する前記制御部は、
前記検出デバイスにより検出される前記検出像と、前記投光部材により投光させている投光パターンとを比較し、
前記投光パターンとは全体的な不整合を生じていない前記検出像について、反射不足部分の有無を判断する、
請求項2記載の、路面描画機能を有する車両。
【請求項4】
路面描画のための投光を制御する前記制御部は、
前記検出デバイスにより検出される前記検出像に反射不足部分がある場合に、前記反射不足部分についての前記投光パターンとの関係性を判断し、
前記投光パターンにおける主部が描画されている場合には、前記反射不足部分への投光を減らすことにより抑制する、
請求項3記載の、路面描画機能を有する車両。
【請求項5】
前記車両の前側へ投光する前灯部材、を有し、
路面描画のための投光を制御する前記制御部は、
前記前灯部材により投光されている路面についての前記検出デバイスによる検出に基づいて、路面描画の少なくとも反射不足を予測判断することにより、路面描画のための投光を抑制するように制御する、
請求項1から4のいずれか一項記載の、路面描画機能を有する車両。
【請求項6】
路面描画のための投光を制御する前記制御部は、
前記投光部材により路面描画のための投光をする路面位置より前記車両の進行方向前側における前記前灯部材の投光範囲での路面について、反射不足を判断することにより、路面描画の少なくとも反射不足を予測判断する、
請求項5記載の、路面描画機能を有する車両。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面描画機能を有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3では、車両から投光することにより、車両が走行している路面に各種のパターンを描画することを開示している。
このようなパターンを路面に描画することにより、車両は、そのドライバなどに対して、車両の走行に関する情報などを、路面を通じて提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-055691号公報
【特許文献2】特開2020-111284号公報
【特許文献3】特開2015-164828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように車両からの投光により路面に描画される路面描画像は、その車両のドライバなどにより容易に視認できるものになるとは限らない。
たとえば路面が光を全反射的に反射するものである場合、車両から路面描画のための投光をしたとしても、そのほとんどが対向車などへ向けて反射されてしまい、投光した車両へ向けて戻る光量が少なくなる。この場合、投光した車両のドライバから見える路面描画像は、薄くなり、容易に視認され難しくなる可能性がある。
また、路面に描画される路面描画像は、車両の前灯装置が点灯している状態であっても、路面描画をしている車両のドライバなどから容易に視認できるように描画することが求められる。路面描画のために使用する光は、前灯装置よりも輝度を高くする必要がある。
その一方で、路面がたとえば強い正反射を生じるように全反射的な反射をするものなどである場合、対向車のドライバや、車両へ向かって歩行する歩行者には、路面を通じて前灯よりも強い光が照射されてしまう危惧がある。このような強い反射は、路面描画像の一部においても生じる可能性がある。
【0005】
このように車両からの路面描画には、改善することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施の形態に係る路面描画機能を有する車両は、車両の少なくとも前側の路面へ向けて路面描画のための投光が可能な投光部材と、前記投光部材による路面描画のための投光を制御する制御部と、前記投光部材が路面描画のための投光をする路面を検出可能な検出デバイスと、を有し、前記制御部は、前記検出デバイスの路面の検出に基づいて、前記車両において路面描画の少なくとも反射不足を判断することにより、路面描画のための投光を抑制するように制御する、ものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、投光部材による路面描画のための投光を制御する制御部は、検出デバイスの路面の検出に基づいて、車両において路面描画の少なくとも反射不足を判断する。そして、制御部は、車両における反射不足などに基づいて、路面描画のための投光を抑制するように制御する。これにより、本発明では、仮にたとえば路面に描画されている像が、路面描画をしている車両のドライバなどから、たとえば全体的に薄くて視認し難い場合には、路面描画のための投光を抑制するように制御することができる。
本発明では、十分な視認性が得られない路面描画をそのままし続けないようにすることができる。
また、路面がたとえば強い正反射を生じるように全反射的な反射をするものなどであっても、対向車のドライバや、車両へ向かって歩行する歩行者に対して、路面を通じて前灯より強い光を照射し続けることが起きないようにすることが期待できる。
このように本発明では、路面描画のための投光を制御して、車両からの路面描画を改善することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る自動車の走行状態の一例の説明図である。
図2図2は、図1の自動車に設けられる制御系の説明図である。
図3図3は、図1の自動車の前端部での、右ヘッドランプモジュールおよび左ヘッドランプモジュールの構造および配置の模式的な説明図である。
図4図4は、図2の描画制御装置が実行する、第一実施形態での路面描画制御のフローチャートである。
図5図5は、図2の車外カメラによる撮像画像の説明図である。
図6図6は、撮像画像に含まれている、路面描画の検出像の第一の例の説明図である。
図7図7は、撮像画像に含まれている、路面描画の検出像の第二の例の説明図である。
図8図8は、撮像画像に含まれている、路面描画の検出像の第三の例の説明図である。
図9図9は、撮像画像に含まれている、路面描画の検出像の第四の例の説明図である。
図10図10は、図2の描画制御装置が実行する、第二実施形態での路面描画制御のフローチャートである。
図11図11は、図2の描画制御装置が実行する、第三実施形態での路面描画制御のフローチャートである。
図12図12は、図11の路面描画制御の下での、路面描画の変化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0010】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る自動車1の走行状態の一例の説明図である。
図1には、片側一車線の道路を走行する自動車1が示されている。自動車1は、車両の一例である。車両には、この他にもたとえば、バス、トラック、モータサイクル、パーソナルモビリティ、などがある。なお、自動車1は、運転支援を含む自動運転により走行可能なものでもよい。
【0011】
道路の対向車線には、対向車2が走行している。また、路肩には、歩行者3がいる。
このような走行環境において、自動車1のドライバは、たとえば自動車1の進行方向である前側などに注意を払いながら道路の車線を逸脱しないように操作して、自動車1を走行させる。
また、自動車1は、走行環境が暗い場合、前灯を点灯させる。図1には、ロービームでの前灯の照射範囲と、ハイビームでの前灯の照射範囲と、が破線により示されている。
【0012】
ところで、このような自動車1では、自動車1から路面に対して可視光を照射して、図形を描画することについての研究開発が進められている。
たとえば、図1には、道路標識などを模した簡易図形による路面描画像11、自車車線の左右両側に沿って延在する車線境界線12、自車の路肩側の側方に描画される路肩境界線13、が示されている。ここで、路面描画像11は、自車のドライバなどのために、自車の進行方向前方に描画されている。車線境界線12と路肩境界線13とは、路肩の歩行者3や対向車2へ向けて描画されている。
また、図1の右側には、路面描画像11の元になる複数の投光パターン60が示されている。ここでは、左折指示の投光パターン61、制限速度の投光パターン62、停止位置を示すための投光パターン63、横断禁止を示すための投光パターン64、右折指示の投光パターン65、積雪や凍結の注意喚起のためのピクトグラムによる投光パターン66、が例示されている。自動車1は、複数の投光パターン60から、走行状態や走行環境に応じたものを選択し、その投光パターンに対応する投光を実行すればよい。
この路面描画像11などのパターンを路面に描画することにより、自動車1は、そのドライバなどに対して、自動車1の走行に関する情報などを、路面を通じて提供することができる。
【0013】
しかしながら、このように自動車1から投光して路面描画像11を路面に描画したとしても、その路面描画像11は、必ずしも、その自動車1のドライバなどにより容易に視認できるとは限らない。
たとえば路面が光を全反射的に反射するものである場合、自動車1から路面描画のための投光をしたとしても、そのほとんどが対向車などへ向けて反射されてしまい、投光した車両へ向けて戻る光量が少なくなる。この場合、路面描画を実行したとしても、投光した自動車1のドライバから見える路面描画像は、薄くなり、容易に視認され難しくなる可能性がある。
また、路面描画像11は、自動車1の前灯装置が点灯している状況下においても、路面描画をしている自動車1のドライバなどから容易に視認できるようにすることが求められる。この場合、路面描画のために使用する光は、前灯装置よりも輝度を高くする必要がある。
その一方で、路面がたとえば強い正反射を生じるように全反射的な反射をするものなどである場合、対向車2のドライバや、自動車1へ向かって歩行する歩行者3には、路面を通じて強い光が照射されることがある。路面描画のための光は、路面の水たまり4などにより路面で全反射的に強く反射して、その強い反射が路面描画像11の一部であったとしても、前灯の光よりも強い光として対向車2のドライバなどに照射される危惧がある。
このように自動車1の路面描画機能には、改善することが求められる。
【0014】
図2は、図1の自動車1に設けられる制御系20の説明図である。
図2の自動車1の制御系20は、複数の制御装置と、それらが接続される車ネットワーク26と、を有する。
【0015】
車ネットワーク26は、自動車1のためのたとえばCAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)に準拠した有線の通信ネットワークでよい。車ネットワーク26は、LANなどの通信用ネットワークでも、これらを組み合わせたものであってもよい。車ネットワーク26の一部には、無線方式の通信ネットワークが含まれてよい。車ネットワーク26に接続される上述した各種の機器は、車ネットワーク26を通じて、情報を相互に送受できる。
【0016】
また、図2には、複数の制御装置の例として、描画制御装置21、前灯制御装置22、操作制御装置23、検出制御装置24、通信制御装置25、が示されている。車ネットワーク26には、これ以外の制御装置、たとえば走行制御装置、空調制御装置などが接続されてよい。また、図2に示す各制御装置などは、複数に分割されて、車ネットワーク26に接続されてよい。
【0017】
前灯制御装置22には、自動車1の前端部に設けられる右ヘッドランプモジュール31、左ヘッドランプモジュール32、が接続される。右ヘッドランプモジュール31、および左ヘッドランプモジュール32は、自動車1の前側へ投光する前灯部材である。
また、本実施形態の右ヘッドランプモジュール31、および左ヘッドランプモジュール32は、後述するように路面描画のための投光モジュール53を有する。本実施形態において、右ヘッドランプモジュール31の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32の投光モジュール53とは、自動車1の少なくとも前側の路面へ向けて路面描画のための投光が可能な投光部材として機能する。
【0018】
前灯制御装置22は、車ネットワーク26を通じて取得する、不図示のランプ操作レバーの操作の情報や不図示のオートライト用の光量センサの検出値の情報に応じて、右ヘッドランプモジュール31の点灯状態、および左ヘッドランプモジュール32の点灯状態を制御する。ランプ操作レバーには、一般的に、ロービーム点灯、ハイビーム点灯、消灯、の操作状態が設定可能になっている。
そして、前灯制御装置22は、右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32の点灯状態の情報を、車ネットワーク26を通じて他の制御装置へ出力してよい。
【0019】
操作制御装置23には、ドライバなどの乗員が操作するための各種の操作部材が接続される。図2には、操作部材として、ワイパー操作レバー33が例示されている。ワイパー操作レバー33は、自動車1のフロントガラスの外面をワイプする不図示のワイパー装置の動作を操作するためのレバーである。ワイパー操作レバー33には、一般的に、間欠駆動、連続駆動、高速な連続駆動、停止、の操作状態が設定可能になっている。
そして、検出制御装置24は、ワイパー操作レバー33などの各種の操作部材の操作状態の情報を、車ネットワーク26を通じて他の制御装置へ出力してよい。
【0020】
検出制御装置24には、自動車1の走行状態や走行環境などを検出するための各種の検出部材が接続される。図2には、検出部材として、雨滴センサ34、車外カメラ35、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機36、が例示されている。
そして、検出制御装置24は、雨滴センサ34の検出情報などを、車ネットワーク26を通じて他の制御装置へ出力してよい。
【0021】
雨滴センサ34は、自動車1のフロントガラスの外面に設けられ、雨滴センサ34の雨滴による濡れに応じた通電状態の変化に基づいて、降雨の有無、降雨量を検出できる。
【0022】
車外カメラ35は、図1に示すように、自動車1のフロントガラスの内側となる車室において、前向きに設けられる。このような車外カメラ35は、自動車1の進行方向である前側を撮像することができる。なお、車外カメラ35は、自動車1に複数で設けられてもよい。複数の車外カメラ35は、自動車1の周囲を分割して撮像してよい。また、車外カメラ35は、360度カメラでも、ステレオカメラでも、よい。
そして、車外カメラ35の撮像画像には、路面に投光により描画されている像が、その検出像として含まれ得る。
また、自動車1の周囲を検出するものとしては、車外カメラ35の他にも、Lidar、レーザ、などがある。Lidarやレーザの検出情報は、車外カメラ35の撮像画像と同様に、自動車1の周囲の情報として用いることが可能である。
このように自動車1に設けられる車外カメラ35、Lidar、レーザ、などは、投光部材が路面描画のための投光をする路面を検出可能な検出デバイスとして機能できる。
【0023】
GNSS受信機36は、複数のGNSS衛星からの電波を受信して、GNSS受信機36が設けられる自動車1の位置および時刻の情報を検出する。
【0024】
通信制御装置25には、通信デバイス37が接続される。通信デバイス37は、不図示の基地局などを通じてサーバ装置との間で情報を送受する。基地局は、たとえば5G用の基地局、ADAS(Advanced Driver Assistance Systems)やITS(Intelligent Transport Systems)用の基地局でよい。5G用の基地局には、サーバ装置の機能を実装可能なものがある。また、通信デバイス37は、V2X(Vehicle to X)通信により、直接的には他の自動車1などとの間で通信してもよい。
そして、通信制御装置25は、車ネットワーク26から取得する情報を通信デバイス37から基地局またはサーバ装置へ送信したり、通信デバイス37が基地局またはサーバ装置から受信する情報を車ネットワーク26へ出力したり、してよい。
【0025】
描画制御装置21は、メモリ41、タイマ42、通信ポート43、入出力ポート45、CPU44、および、これらが接続される内部バス46、を有する。制御系20に設けられる制御装置は、基本的に、描画制御装置21と同様の構造を備えてよい。
【0026】
入出力ポート45には、右ヘッドランプモジュール31、左ヘッドランプモジュール32、が接続される。
【0027】
通信ポート43は、車ネットワーク26に接続される。通信ポート43は、車ネットワーク26から情報を取得し、描画制御装置21が出力する情報を、車ネットワーク26へ出力する。
【0028】
タイマ42は、時間または時刻を計測する。タイマ42の時刻は、GNSS受信機36の時刻により校正されてよい。
【0029】
メモリ41は、たとえば半導体メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)、などで構成されてよい。HDDは、不揮発性メモリである。RAMは、揮発性メモリである。メモリ41は、CPU44が実行するプログラム、プログラム実行中に使用する各種の情報を、データとして記録する。メモリ41は、たとえば図1に示す複数の投光パターン60のデータを記録する。
【0030】
CPU44は、メモリ41に記録されているプログラムを読み込んで実行する。これにより、CPU44は、描画制御装置21の制御部として機能する。本実施形態において、CPU44は、投光部材による路面描画のための投光を制御する制御部として機能する。
制御部としてのCPU44は、描画制御装置21の動作を制御する。また、制御部としてのCPU44は、通信ポート43を通じて右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32へ信号を出力する。これにより、制御部としてのCPU44は、右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32に設けられる路面描画のための投光モジュール53を制御する。右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32は、路面描画のための投光パターンで点灯する。路面には、たとえば図1に示すように、投光パターンに対応した路面描画像11が描画され得る。
【0031】
図3は、図1の自動車1の前端部での、右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32の構造および配置の模式的な説明図である。
図3には、自動車1の前端部が示されている。
【0032】
自動車1の前端部の右端には、右ヘッドランプモジュール31が設けられる。右ヘッドランプモジュール31は、ロービーム用の複数のLED(Light Emitting Diode)51、ハイビーム用の複数のLED52、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)式の投光モジュール53、を有する。
自動車1の前端部の左端には、左ヘッドランプモジュール32が設けられる。右ヘッドランプモジュール31は、ロービーム用の複数のLED51、ハイビーム用の複数のLED52、MEMS式の投光モジュール53、を有する。
なお、投光モジュール53は、この他にもたとえば、DMD(Digital Micromirror Device)方式のものでもよい。
【0033】
MEMS式の投光モジュール53は、たとえば、三色光源の光をMEMS素子により反射して投光するものであればよい。MEMS素子は、画像信号により反射状態が制御され得る。
また、右ヘッドランプモジュール31または左ヘッドランプモジュール32は、MEMS式の投光モジュール53以外の画像を路面に描画できるものを用いてもよい。
MEMS式の投光モジュール53は、ロービーム用の複数のLED51およびハイビーム用の複数のLED52の全体による照射範囲の内側に投光できるとともに、外側にも投光できるものでよい。図1の歩行者3へ横断禁止を示すための描画パターンの一部は、ロービーム用の複数のLED51およびハイビーム用の複数のLED52の全体による照射範囲の外側にある。
【0034】
そして、図3では、右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53が投光して、路面に、右折指示の投光パターン65に対応する、右折指示のための路面描画像11が描画されている。
また、左ヘッドランプモジュール32のMEMS式の投光モジュール53が投光して、路面に、左折指示の投光パターン61に対応する、左折指示のための路面描画像11が描画されている。
なお、右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32のMEMS式の投光モジュール53とは、協働して、図1に示すように、1つの大きな路面描画像11を路面に描画してもよい。
制御部としてのCPU44は、右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32のMEMS式の投光モジュール53とを、投光パターンにしたがって制御することにより、投光パターンに対応する路面描画像11を路面に描画することができる。
【0035】
このように右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32のMEMS式の投光モジュール53とは、投光パターンにしたがって路面描画像11を投光する投光部材として機能できる。
そして、右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53は、図1に示すように、右ヘッドランプモジュール31によるハイビームでの路面の投光範囲についての前端部を除くように、路面描画のための投光を実行するとよい。
また、左ヘッドランプモジュール32のMEMS式の投光モジュール53は、図1に示すように、左ヘッドランプモジュール32によるハイビームでの路面の投光範囲についての前端部を除くように、路面描画のための投光を実行するとよい。
【0036】
図4は、図2の描画制御装置21が実行する、第一実施形態での路面描画制御のフローチャートである。
描画制御装置21の制御部としてのCPU44は、図4の路面描画制御を繰り返しに実行する。
なお、制御系20において描画制御機能が前灯制御装置22に実装されている場合、前灯制御装置22のCPU44が、制御部として、図4の路面描画制御を繰り返しに実行してよい。
【0037】
ステップST1において、路面描画のための投光を制御するCPU44は、路面描画の要否を判断する。路面描画の要求は、制御系20の各種の制御装置により生成されてよい。たとえば、前灯制御装置22が、前灯を点灯させる場合、路面描画を要求する情報を生成して、車ネットワーク26を通じて描画制御装置21へ出力してよい。路面描画の要求がある場合、CPU44は、処理をステップST2へ進める。路面描画の要求がない場合、CPU44は、本制御を終了する。
【0038】
ステップST2において、CPU44は、メモリ41に記録されている複数の投光パターン60から、路面描画に使用する投光パターンを選択する。CPU44は、複数の投光パターンを選択しても、1つの投光パターンを選択してもよい。
【0039】
ステップST3において、CPU44は、右ヘッドランプモジュール31の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32の投光モジュール53とを制御して、選択した投光パターンにしたがう光を、路面に照射する。これにより、路面には、投光パターンに対応する路面描画像11が描画される。
【0040】
ステップST4において、CPU44は、車外カメラ35の撮像画像を取得する。車外カメラ35の撮像画像には、ステップST3で出力された路面描画像11が描画されている路面が撮像され得る。この場合、車外カメラ35は、検出像を検出する検出デバイスとして機能する。
【0041】
ステップST5において、CPU44は、車外カメラ35の撮像画像における路面描画像11と、選択している投光パターンとを比較して、路面描画についての適否判断を開始する。
この際、CPU44は、撮像画像から路面描画像11を含む検出像を切り出し、検出像と選択している投光パターンとを比較してよい。撮像画像での路面描画像11の位置および範囲は、ステップST3の制御において使用した投光方向や投光範囲に基づいて特定することが可能である。また、CPU44は、自動車1を基準とした路面の延在方向の角度などに基づいて、路面描画像11と正対している検出像を生成してもよい。
そして、CPU44は、まず、検出像と選択している投光パターンとの全体的な合致を判断するために、描画形状の不整合を判断する。
たとえば段差や凹凸がある路面に投光した場合、路面描画像11およびそれを撮像した検出像には、その段差や凹凸にしたがった歪みが含まれる。この場合、自動車1のドライバなどは、路面に描画されている路面描画像11を視認しても、その全体像を把握できないために、路面描画像11を理解できない可能性がある。
この他にもたとえば、路面に穴が開いている場合、路面描画像11およびそれを撮像した検出像には、その穴にしたがった歪みが含まれる。この場合、自動車1のドライバなどは、路面に描画されている路面描画像11を視認しても、その全体像を把握できないために、路面描画像11を理解できない可能性がある。
これらのようないずれかの欠陥が検出像に含まれている場合、CPU44は、検出像と選択している投光パターンとが全体的には合致していないと判断してよい。この場合、CPU44は、処理をステップST8へ進める。
これらのような欠陥がいずれも検出像に含まれている場合、CPU44は、検出像と選択している投光パターンとが全体的には合致していると判断してよい。この場合、CPU44は、検出像をさらに評価するために、処理をステップST6へ進める。
【0042】
ステップST6において、CPU44は、検出像について、全体的な光量不足があるか否かを判断する。
たとえば、路面が反射し易いものである場合、自動車1へ戻る光量が小さくなり、検出像の輝度(光量)は、全体的に低くなり得る。
そして、CPU44は、検出像を構成するすべての画素の輝度の平均値について、閾値以上となっているか否かを判断してよい。
この他にもたとえば、CPU44は、検出像を構成する一部の画素の輝度の平均値などを、第一閾値と比較してもよい。
ここでの第一閾値は、自動車1のドライバが路面描画像11をしっかりと視認できると考えられる輝度値としてよい。第一閾値は、自動車1の走行環境に応じて、たとえば昼間と夜間とで変化してよい。また、第一閾値は、前灯の点灯の有無や点灯状態などに応じて、変化してよい。
検出像について比較する値に第一閾値以下となるものが含まれている場合、CPU44は、検出像に全体的な光量不足があるとして、処理をステップST8へ進める。
検出像について比較する値に第一閾値以下となるものが含まれていない場合、CPU44は、検出像に全体的な光量不足がないとして、検出像をさらに評価するために、処理をステップST7へ進める。
【0043】
ステップST7において、CPU44は、自動車1における検出像について、反射不足部分があるか否かを判断する。ここで、反射不足部分とは、たとえば自動車1のドライバに向けた路面描画像11である場合、路面描画像11から自動車1のドライバへ向かって戻ってくる反射光の不足部分を意味する。路面描画像11に反射不足部分がある場合、車外カメラ35の撮像画像における検出像においても、反射不足部での輝度が、他の部分より低下し得る。
たとえば路面描画像11の一部に、図1に示すような水たまり4が重なる場合、路面描画像11には、その重なりの部分において反射不足部分が生じ得る。路面では、水溜まり4だけでなく、残雪、マンホール、なともある。
そして、CPU44は、検出像を構成する各々の画素の輝度値について、第二閾値以下となっているか否かを判断してよい。
ここでの第二閾値は、たとえば検出像を構成するすべての画素または一部の画素の輝度の平均値を基準として、反射不足として判断するための差分に相当する輝度の値としてよい。
また、CPU44は、第二閾値以下となっている画素についての、検出像を構成するすべての画素に対する画素数の割合などついて、さらに判断してもよい。画素数の割合が100%でない場合、それは部分となる。
そして、第二閾値以下となっている輝度値の画素が検出像に100%ではない所定割合以上の部分で含まれている場合、CPU44は、検出像について反射不足部分があると判断し、処理をステップST8へ進める。
第二閾値以下となっている輝度値の画素が検出像に所定割合未満で含まれていない場合、CPU44は、検出像について反射不足部分がないと判断し、処理をステップST9へ進める。
【0044】
ステップST8において、CPU44は、路面描画を中断する。CPU44は、ステップST3で開始した路面への照射を停止する。これにより、路面への路面描画像11の描画は中断する。その後、CPU44は、本制御を終了する。
これに対し、ステップST8へ処理を進めない場合、すなわちステップST7からステップST9へ処理を進める場合、CPU44は、ステップST3で開始した路面への照射を継続することになる。
【0045】
ステップST9において、CPU44は、路面描画を終了するか否かを判断する。CPU44は、たとえば路面描画の要求がない場合、路面描画を終了すると判断してよい。この場合、CPU44は、本制御を終了する。
たとえば路面描画の要求が残っている場合、CPU44は、路面描画を終了しないと判断し、処理をステップST2へ戻す。この場合、CPU44は、ステップST2からステップST9の処理を繰り返して、路面描画を継続する。
【0046】
このように、CPU44は、検出デバイスとしての車外カメラ35による路面の検出(撮像画像)に基づいて、路面描画像11の少なくとも反射不足を判断することにより、路面描画のための投光を制御することができる。そして、検出像において反射不足部分が所定割合以上で生じている場合には、投光モジュール53からの路面描画のための投光を止めるように抑制することができる。
また、CPU44は、投光パターンとは全体的な不整合を生じていない路面描画像11の検出像について、その輝度についての全体的な反射不足を判断するとともに、少なくとも検出像の複数部分での輝度の差を判断することにより、反射不足部分の有無を判断することができる。そして、検出像に反射不足部分がある場合には、CPU44は、路面描画のための投光を中断により抑制することができる。
なお、CPU44は、ステップST8において、投光を停止するのではなく、光量を減らすようにしてもよい。
【0047】
図5は、図2の車外カメラ35による撮像画像70の説明図である。
図5の撮像画像70は、図1の走行状態での、自動車1の車外カメラ35により撮像されたものである。
このため、図5の撮像画像70には、自動車1が走行している道路とともに、対向車2の像71と、歩行者3の像72と、路面描画像11の検出像73と、が含まれている。
【0048】
次に、図6から図9を用いて、自動車2のドライバへ向かって戻る光量が不足している反射不足部分を含む検出像73の例について説明する。
【0049】
図6は、撮像画像70に含まれている、路面描画の検出像73の第一の例の説明図である。
図7は、撮像画像70に含まれている、路面描画の検出像73の第二の例の説明図である。
図6の路面描画の検出像73と、図7の路面描画の検出像73とは、制限速度の投光パターン62に基づく路面描画像11についてのものである。
【0050】
そして、図6の第一の例の検出像73では、右上部分、左上部分、左下部分が、水たまり4により強い反射が生じて像欠け74を生じて、自動車2のドライバへ向かう光量が不足している。ただし、制限速度の値を表示する検出像73の中央の主部75は、欠けていない。
この場合、本実施形態でのCPU44は、図4のステップST7において、検出像73に反射不足部分が所定割合以上で含まれていると判断し、ステップST8において描画を中断してよい。
【0051】
また、図7の第二の例の検出像73では、右側から中央にかけての広い部分が、水たまり4による強い反射により像欠け74を生じて、自動車2のドライバへ向かう光量が不足している。この場合、制限速度の値を表示する検出像73の中央の主部75も、欠けている。
この場合、本実施形態でのCPU44は、図4のステップST7において、検出像73に反射不足部分が所定割合以上で含まれていると判断し、ステップST8において描画を中断してよい。
【0052】
図8は、撮像画像70に含まれている、路面描画の検出像73の第三の例の説明図である。
図9は、撮像画像70に含まれている、路面描画の検出像73の第四の例の説明図である。
図8の路面描画の検出像73と、図9の路面描画の検出像73とは、左折指示の投光パターン61に基づく路面描画像11についてのものである。
【0053】
そして、図8の第三の例の検出像73では、左上から中央にかけての広い部分が、水たまり4による強い反射により像欠け74を生じて、自動車2のドライバへ向かう光量が不足している。この場合、検出像73の中央の主部75において、進行方向を示す矢印の先端部分が、欠けている。
この場合、本実施形態でのCPU44は、図4のステップST7において、反射不足部分が検出像73に所定割合以上で含まれていると判断し、ステップST8において描画を中断してよい。
【0054】
また、図9の第四の例の検出像73では、上部分、右部分、下部分が、水たまり4による強い反射により像欠け74を生じて、自動車2のドライバへ向かう光量が不足している。ただし、検出像73の中央の主部75において、進行方向を示す矢印の先端部分は、欠けていない。
この場合、本実施形態でのCPU44は、図4のステップST7において、反射不足部分が検出像73に所定割合以上で含まれていると判断し、ステップST8において描画を中断してよい。
【0055】
以上のように、本実施形態では、路面描画のための投光を制御するCPU44は、自動車1に設けられる検出デバイスとしての車外カメラ35の路面の検出(撮像画像70)に基づいて、路面描画の少なくとも反射不足を判断する。そして、CPU44は、自動車1での反射不足などに基づいて、路面描画のための投光を制御する。これにより、本実施形態では、仮にたとえば路面に描画されている路面描画像11が、路面描画をしている自動車1のドライバなどから、たとえば全体的に薄くて視認し難くなったりしている場合には、路面描画のための投光を描画中断により抑制するように制御することができる。本実施形態では、十分な視認性が得られない路面描画を実行し続けないようにすることができる。また、路面で全反射的な反射が生じて、対向車2のドライバや、自動車1へ向かって歩行する歩行者3に対して、路面を通じて強い光を当て続けないようにできる。
特に、本実施形態において、車外カメラ35は、路面に投光されている路面描画像11の検出像73を撮像により検出可能である。そして、路面描画のための投光を制御するCPU44は、自動車1で検出される検出像73における反射不足部分について判断し、所定面積割合での反射不足部分が生じている場合には、路面描画のための投光を中断により抑制する。これにより、本実施形態では、路面に描画されている路面描画像11の一部が部分的に、路面描画をしている自動車1のドライバなどから視認し難くなっている場合においても、路面描画のための投光を中断により制御することができる。本実施形態では、路面に描画されている路面描画像11の一部が欠けているような場合においても、路面描画を実行し続けないようにすることができる。また、その欠けた一部における路面での反射が強くなって、対向車2のドライバや、自動車1へ向かって歩行する歩行者3に対して、路面を通じて強い光を当て続けないようにできる。
このように本実施形態では、自動車1からの路面描画について、路面描画のための投光が過剰とならないように抑制して、自動車1による路面描画を改善することが期待できる。
【0056】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る自動車1の路面描画装置について説明する。
本実施形態は、路面描画像11に光量不足となる欠けが生じている場合であっても、描画を継続することができる例について説明する。
以下において、主に上述した実施形態との相違点について説明する。
【0057】
図10は、図2の描画制御装置21が実行する、第二実施形態での路面描画制御のフローチャートである。
描画制御装置21の制御部としてのCPU44は、図10の路面描画制御を繰り返しに実行する。
なお、制御系20において描画制御機能が前灯制御装置22に実装されている場合、前灯制御装置22のCPUが、図10の路面描画制御を繰り返しに実行してよい。
ステップST1からステップST9は、上述した実施形態と同様である。
ただし、ステップST5において検出像73と選択している投光パターンとが全体的には合致していないと判断する場合、CPU44は、処理をステップST11へ進める。
また、ステップST6において検出像73に全体的な光量不足があると判断する場合、CPU44は、処理をステップST11へ進める。
また、ステップST7において自動車1での検出像73について反射不足部分があると判断する場合、CPU44は、処理をステップST11へ進める。
【0058】
ステップST11において、CPU44は、検出像73の主部75に基づいて、描画の適否についてさらに判断する。
そして、CPU44は、たとえば、検出像73の全体としては水たまり4などにより大きな欠けが生じているとしても、投光パターンの主部75に対応する検出像73の主部75について光量不足となる欠けが生じていない場合、描画を適と判断してよい。この場合、CPU44は、処理をステップST12へ進める。
これに対し、投光パターンの主部75に対応する検出像73の主部75において光量不足による欠けが生じている場合、描画を不適と判断してよい。この場合、CPU44は、処理をステップST8へ進める。この場合、CPU44は、路面描画を中断して、本制御を終了する。
【0059】
ステップST12において、CPU44は、検出像73において、光量不足となっている部分についての投光を部分的に抑制する。
ここで、CPU44は、検出像73において光量不足となっている部分についての投光の量を減らすように減光する。
【0060】
ステップST13において、CPU44は、最新の車外カメラ35の撮像画像70を取得して、検出像73において光量不足となっている部分についての投光の量が、十分となっているか否かを判断する。
減光量が十分となっていない場合、CPU44は、処理をステップST12へ戻す。CPU44は、減光量が十分になるまで、ステップST12からステップST13の処理を繰り返す。
減光量が十分になると、CPU44は、本制御を終了する。
【0061】
以上のように、本実施形態では、路面描画のための投光を制御するCPU44は、自動車1に設けられる検出デバイスとしての車外カメラ35により検出される検出像73に反射不足部分がある場合に、反射不足部分についての投光パターンの主部との関係性を判断する。そして、投光パターンの主部に対応する検出像73の主部75が反射不足部分とならずに描画されている場合には、検出像73において反射不足となっている部分についての投光量を減らして抑制することができる。
【0062】
たとえば上述した図6の第一の例の検出像73では、制限速度の値を表示する検出像73の中央の主部75は、欠けていない。
この場合、本実施形態でのCPU44は、図4のステップST11において主部75が欠けていないため描画が適であると判断し、ステップST12からステップST13において水たまり4によって反射不足となっている部分についての減光処理を実行してよい。
これに対し、図7の第二の例の検出像73では、制限速度の値を表示する検出像73の中央の主部75が、欠けている。
この場合、本実施形態でのCPU44は、図4のステップST11において主部75が欠けていて描画が不適であると判断し、ステップST8において描画を中断してよい。
【0063】
また、図8の第三の例の検出像73では、検出像73の中央の主部75において、進行方向を示す矢印の先端部分が、欠けている。
この場合、本実施形態でのCPU44は、図4のステップST11において主部75が欠けていて描画が不適であると判断し、ステップST8において描画を中断してよい。
これに対し、図9の第四の例の検出像73では、検出像73の中央の主部75において、進行方向を示す矢印の先端部分は、欠けていない。
この場合、本実施形態でのCPU44は、図4のステップST11において主部75が欠けていないため描画が適であると判断し、ステップST12からステップST13において水たまり4によって反射不足となっている部分についての減光処理を実行してよい。
【0064】
[第三実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る自動車1の路面描画装置について説明する。
本実施形態は、路面描画像11の光量不足による欠けが生じることを予測して、路面描画を制御する例について説明する。
以下において、主に上述した実施形態との相違点について説明する。
【0065】
図11は、図2の描画制御装置21が実行する、第三実施形態での路面描画制御のフローチャートである。
描画制御装置21のCPU44としてのCPU44は、図11の路面描画制御を繰り返しに実行する。
なお、制御系20において描画制御機能が前灯制御装置22に実装されている場合、前灯制御装置22のCPUが、図11の路面描画制御を繰り返しに実行してよい。
ステップST1からステップST9と、ステップST13とは、上述した実施形態と同様である。
ただし、ステップST4の処理の後、CPU44は、処理をステップST21へ進める。
【0066】
ステップST21において、CPU44は、ステップST4で取得した撮像画像70を用いて、自動車1が進行した場合での路面描画像11の変形に基づいて、路面描画の適否を予測して判断する。
たとえば、CPU44は、検出像73として検出している路面描画像11が、自動車1とともに進行した場合に、路面の段差、凹凸、穴などと重なることになるか否かを判断してよい。
そして、路面描画像11が路面の段差などと重なって変形することになると予測判断する場合、CPU44は、処理をステップST24へ進める。
路面描画像11が変形することになると予測判断しない場合、CPU44は、処理をステップST22へ進める。
【0067】
ステップST22において、CPU44は、ステップST4で取得した撮像画像70を用いて、自動車1が進行した場合での路面描画像11の全体的な光量不足に基づいて、路面描画の適否を予測して判断する。
たとえば、CPU44は、路面描画像11を撮像した検出像73が、自動車1とともに進行した場合に、路面の反射不足部分と全体的に重なることになるか否かを判断してよい。この場合、CPU44は、まず、撮像画像70に含まれるハイビームの照射範囲内において、反射光量が、他の部分より低くなっている部分を、路面の反射不足部分として抽出する。そして、CPU44は、そのハイビームについての反射光量不足部分の位置および範囲と、検出像73の位置および範囲との関係性に基づいて、路面の反射不足部分と全体的に重なることになるか否かを判断すればよい。
そして、路面の反射不足部分と全体的に重なることになると予測判断する場合、CPU44は、処理をステップST24へ進める。
路面の反射不足部分と全体的に重なることになると予測判断しない場合、CPU44は、処理をステップST23へ進める。
【0068】
ステップST23において、CPU44は、ステップST4で取得した撮像画像70を用いて、自動車1が進行した場合での路面描画像11の部分的な反射光量不足に基づいて、路面描画の適否を予測して判断する。
たとえば、CPU44は、路面描画像11を撮像した検出像73が、自動車1とともに進行した場合に、路面の反射不足部分と部分的に重なることになるか否かを判断してよい。
また、CPU44は、路面描画像11を撮像した検出像73の主部75が、自動車1とともに進行した場合に、路面の反射不足部分と部分的に重なることになるか否かを判断してもよい。
そして、路面の反射不足部分と部分的に重なることになると予測判断する場合、CPU44は、処理をステップST24へ進める。
路面の反射不足部分と部分的に重なることになると予測判断しない場合、CPU44は、処理をステップST9へ進める。この場合、CPU44は、路面描画をそのまま継続することになる。
【0069】
ステップST24において、CPU44は、路面描画像11が、予測判断をした反射光量不足部分の通過を開始するか否かを判断する。
CPU44は、たとえば、路面描画像11と路面の反射不足部分との距離と、自車の速度とに基づいて、路面描画像11が路面の反射光量不足部分を通過し始めるタイミングを演算することができる。
CPU44は、演算したタイミングがタイマ42により計測されていない場合、CPU44は、本処理を繰り返す。そして、CPU44は、演算したタイミングがタイマ42により計測されると、路面描画像11が、予測判断をした反射光量不足部分の通過を開始すると判断し、処理をステップST25へ進める。
【0070】
ステップST25において、CPU44は、路面描画像11が路面の反射不足部分を通過する場合に、路面描画像11の主部75について光量不足による欠けが生じるか否かを判断する。
そして、路面描画像11の主部75について光量不足による欠けが生じると判断する場合、CPU44は、処理をステップST8へ進める。この場合、CPU44は、路面描画を中断し、処理をステップST26へ進める。
これに対し、路面描画像11の主部75について光量不足による欠けが生じると判断しない場合、CPU44は、処理をステップST13へ進める。この場合、CPU44は、路面描画像11の主部75以外の残部76について、減光する。CPU44は、路面描画像11の残部76について、光量不足による欠けが生じる部分についてのみ、減光してもよい。その後、CPU44は、処理をステップST26へ進める。
【0071】
ステップST26において、CPU44は、路面描画像11が、予測判断をした反射光量不足部分を通過し終えるか否かを判断する。
CPU44は、たとえば、路面描画像11と路面の反射不足部分との距離と、自車の速度とに基づいて、路面描画像11が路面の反射光量不足部分を通過し終えるタイミングを演算することができる。
CPU44は、演算したタイミングがタイマ42により計測されていない場合、CPU44は、本処理を繰り返す。そして、CPU44は、演算したタイミングがタイマ42により計測されると、路面描画像11が、予測判断をした反射光量不足部分を通過したと判断し、処理をステップST27へ進める。
【0072】
ステップST27において、CPU44は、路面描画を再開する。CPU44は、ステップST3と同様に、右ヘッドランプモジュール31の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32の投光モジュール53とを制御して、選択した投光パターンにしたがう光を、路面に照射する。これにより、路面では、投光パターンに対応する路面描画像11の投光が再開される。その後、CPU44は、処理をステップST9へ進める。
【0073】
図12は、図11の路面描画制御の下での、路面描画の変化を説明する図である。
図12において、時間は、時刻T1から時刻T3へ向かって流れる。
自動車1は、図面において右から左へ向かって走行している。この場合、路面描画像11も、図面の右から左へ向かって移動することになる。
そして、図12の各時刻には、路面描画像11とともに、水たまり4が示されている。
【0074】
時刻T1では、路面描画像11の進行方向に、水たまり4がある。この場合、CPU44は、図11のステップST22またはステップST23の処理の後、ステップST24において水たまり4の通過開始を判断する。
そして、時刻T2では、路面描画像11が、水たまり4と重なっている。この場合、CPU44は、図11のステップST8またはステップST13の処理により、描画中断を実行する。路面には、路面描画像11のための光が照射されなくなる。なお、CPU44は、描画の反射光量不足部分の減光を実行してもよい。
その後、時刻T3では、路面描画像11が、水たまり4を通過している。この場合、CPU44は、図11のたとえばステップST27の処理により、描画を再開する。路面には、路面描画像11のための光が照射される。
これにより、CPU44は、路面描画像11が、路面の水たまり4と重なる期間において、路面描画を中断または減光し、通過後には、路面描画を再開することができる。
【0075】
以上のように、本実施形態において、CPU44は、前灯により投光されている路面についての車外カメラ35による検出に基づいて、路面描画の少なくとも反射不足を予測判断することにより、路面描画のための投光を制御することができる。
CPU44は、たとえば、路面描画のための投光をする路面位置より自動車1の進行方向の前側における前灯の投光範囲の路面について反射不足を判断することにより、路面描画の反射不足を予測判断することができる。
【0076】
以上の実施形態は、本発明に好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0077】
上述した実施形態では、投光部材としての投光モジュール53は、右ヘッドランプモジュール31または左ヘッドランプモジュール32において、前灯用のLED51,52と一体化されて自動車1に設けられている。
この他にもたとえば、投光部材としての投光モジュール53は、右ヘッドランプモジュール31または左ヘッドランプモジュール32とは別体として、自動車1に設けられてもよい。
また、自動車1に設ける投光モジュール53は、1つでも、3つ以上であってもよい。1つの投光モジュール53や、3つ目の投光モジュール53は、自動車の前面部の幅方向中央に設けてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…自動車(車両)、2…対向車、3…歩行者、4…水たまり、11…路面描画像、12…車線境界線、13…路肩境界線、20…制御系、21…描画制御装置、22…前灯制御装置、23…操作制御装置、24…検出制御装置、25…通信制御装置、26…車ネットワーク、31…右ヘッドランプモジュール、32…左ヘッドランプモジュール、33…ワイパー操作レバー、34…雨滴センサ、35…車外カメラ(検出デバイス)、36…GNSS受信機、37…通信デバイス、41…メモリ、42…タイマ、43…通信ポート、44…CPU(制御部)、45…入出力ポート、46…内部バス、51,52…LED、53…投光モジュール(投光部材)、60…複数の投光パターン、70…撮像画像、73…検出像、75…主部、76…残部


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12