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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115460
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】路面描画機能を有する車両
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/00 20060101AFI20240819BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240819BHJP
   B60Q 1/08 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B60Q1/00 G
G08G1/16 C
B60Q1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021175
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100182051
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 直宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 育郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 研太郎
(72)【発明者】
【氏名】木下 真
【テーマコード(参考)】
3K339
5H181
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339AA22
3K339AA43
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA22
3K339CA01
3K339CA30
3K339DA01
3K339EA01
3K339EA02
3K339EA06
3K339FA05
3K339FA08
3K339GB01
3K339HA03
3K339KA01
3K339KA06
3K339KA39
3K339LA01
3K339LA06
3K339MA01
3K339MA02
3K339MB01
3K339MB05
3K339MB10
3K339MC03
3K339MC13
3K339MC26
3K339MC77
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF24
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】車両からの路面描画を改善する。
【解決手段】路面描画機能を有する車両は、走行中の車両において路面描画のための投光をして、走行中の車両の周囲の路面に路面描画像を描画可能な投光部材と、降雨または降雨に伴う状態を検出する降雨検出部材と、降雨検出部材の検出に応じて、投光部材による路面描画のための投光を制御する制御部と、を有する。制御部は、降雨検出部材が降雨または降雨に伴う状態を検出する場合、降雨があるものとして、投光部材からの、路面描画像のための投光を抑制する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の車両において路面描画のための投光をして、走行中の前記車両の周囲の路面に路面描画像を描画可能な投光部材と、
前記車両において、降雨または降雨に伴う状態を検出する降雨検出部材と、
前記降雨検出部材の検出に応じて、前記投光部材による路面描画のための投光を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記降雨検出部材が降雨または降雨に伴う状態を検出する場合、降雨があるものとして、前記投光部材からの、前記路面描画像のための投光を抑制する、
路面描画機能を有する車両。
【請求項2】
前記降雨検出部材は、前記車両に設けられる雨滴センサ、または前記車両において降雨の際に作動するワイパー装置、であり、
前記制御部は、
前記雨滴センサが閾値以上の時間または量の降雨を検出している場合、または前記ワイパー装置が閾値以上の時間で作動している場合、降雨があるものとして、前記投光部材からの、前記路面描画像のための投光を抑制し、
前記雨滴センサが降雨を検出しなくなってから閾値以上の時間が経過した場合、または前記ワイパー装置が動作を停止してから閾値以上の時間が経過した場合、降雨が終了したものとして、前記投光部材からの、前記路面描画像のための投光を再開する、
請求項1記載の、路面描画機能を有する車両。
【請求項3】
前記降雨検出部材は、前記車両に設けられる車外カメラ、であり、
前記制御部は、
前記車外カメラが、降雨に伴う状態として、路面のスポット光を撮像している場合、降雨があるものとして、前記投光部材からの、前記路面描画像のための投光を抑制し、
前記車外カメラが、路面のスポット光を撮像しなくなった場合、降雨が終了したものとして、前記投光部材からの、前記路面描画像のための投光を再開する、
請求項1記載の、路面描画機能を有する車両。
【請求項4】
前記制御部は、降雨がある場合には、
前記路面描画像のための投光を止めることにより、前記路面描画像のための投光を抑制する、
請求項1から3のいずか一項記載の、路面描画機能を有する車両。
【請求項5】
前記制御部は、
降雨が閾値以上の時間または量である場合には、前記路面描画像のための投光を止めることにより、前記路面描画像のための投光を抑制し、
降雨が前記閾値以上の時間または量でない場合には、前記路面描画像のための投光位置を前記車両へ近づけるとともに減光することにより、前記路面描画像のための投光を抑制する、
請求項1から3のいずか一項記載の、路面描画機能を有する車両。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面描画機能を有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3では、車両から投光することにより、車両が走行している路面に各種のパターンを描画することを開示している。
このようなパターンを路面に描画することにより、車両は、そのドライバなどに対して、車両の走行に関する情報などを、路面を通じて提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-055691号公報
【特許文献2】特開2020-111284号公報
【特許文献3】特開2015-164828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように車両からの投光により路面に描画される路面描画像は、その車両のドライバなどにより容易に視認できるものになるとは限らない。
たとえば路面が雨で全面的に濡れている場合、車両から路面描画のための投光をしたとしても、そのほとんどが対向車などへ向けて反射されてしまい、投光した車両へ向けて戻る光量が少なくなる。この場合、投光した車両のドライバには、路面描画像が薄くなり、容易に視認することが難しくなる可能性がある。その一方で、路面がたとえば強い正反射を生じるように全反射的な反射をするものなどである場合、対向車のドライバや、車両へ向かって歩行する歩行者には、路面を通じて強い光が照射されてしまう危惧がある。
【0005】
このように車両からの路面描画には、改善することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施の形態に係る路面描画機能を有する車両は、走行中の車両において路面描画のための投光をして、走行中の前記車両の周囲の路面に路面描画像を描画可能な投光部材と、前記車両において、降雨または降雨に伴う状態を検出する降雨検出部材と、前記降雨検出部材の検出に応じて、前記投光部材による路面描画のための投光を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記降雨検出部材が降雨または降雨に伴う状態を検出する場合、降雨があるものとして、前記投光部材からの、前記路面描画像のための投光を抑制する、ものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両は、降雨または降雨に伴う状態を検出する降雨検出部材、を有する。そして、走行中の車両において路面描画のための投光をして、走行中の前記車両の周囲の路面に路面描画像を描画可能な投光部材による路面描画のための投光を制御する制御部は、前記降雨検出部材が降雨または降雨に伴う状態を検出する場合、降雨があるものとして、前記投光部材からの、前記路面描画像のための投光を抑制する。
これにより、本発明では、たとえば路面が雨で全面的に濡れている場合には、車両から路面描画のための投光を抑制することができる。本発明では、車両のドライバに視認し難い路面描画像を描画し続けないようにできる。また、本発明では、雨でぬれた路面で全面的な反射が生じ難くして、対向車のドライバや、車両へ向かって歩行する歩行者に対して、路面を通じて強い光を照射し難くすることができる。
このように本発明では、路面描画のための投光を制御して、車両からの路面描画を改善することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る自動車の走行状態の一例の説明図である。
図2図2は、図1の自動車に設けられる制御系の説明図である。
図3図3は、図1の自動車の前端部での、右ヘッドランプモジュールおよび左ヘッドランプモジュールの構造および配置の模式的な説明図である。
図4図4は、図2の描画制御装置が実行する、第一実施形態での路面描画制御のフローチャートである。
図5図5は、図2の車外カメラによる撮像画像の説明図である。
図6図6は、図2の描画制御装置が実行する、第二実施形態での路面描画制御のフローチャートである。
図7図7は、図2の描画制御装置が実行する、第三実施形態での路面描画制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0010】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る自動車1の走行状態の一例の説明図である。
図1には、片側一車線の道路を走行する自動車1が示されている。自動車1は、車両の一例である。車両には、この他にもたとえば、バス、トラック、モータサイクル、パーソナルモビリティ、などがある。なお、自動車1は、運転支援を含む自動運転により走行可能なものでもよい。
【0011】
道路の対向車線には、対向車2が走行している。また、路肩には、歩行者3がいる。
このような走行環境において、自動車1のドライバは、たとえば自動車1の進行方向である前側などに注意を払いながら道路の車線を逸脱しないように操作して、自動車1を走行させる。また、自動車1は、走行環境が暗い場合、前灯を点灯させてよい。なお、後述する車外カメラ35は、自動車1の車室の前部に設けられている。車外カメラ35の前には、フロントガラスがある。
【0012】
ところで、このような自動車1では、自動車1から路面に対して可視光を照射して、図形を描画することについての研究開発が進められている。
たとえば、図1には、道路標識などを模した簡易図形による路面描画像11、自車車線の左右両側に沿って延在する車線境界線12、自車の路肩側の側方に描画される路肩境界線13、が示されている。ここで、路面描画像11は、自車のドライバなどのために、自車の進行方向前方に描画されている。車線境界線12と路肩境界線13とは、路肩の歩行者3や対向車2へ向けて描画されている。
また、図1の右側には、路面描画像11の元になる複数の投光パターン60が示されている。ここでは、左折指示の投光パターン61、直進指示の投光パターン67、右折指示の投光パターン65、制限速度の投光パターン62、停止位置を示すための投光パターン63、横断禁止を示すための投光パターン64、右折指示の投光パターン65、積雪や凍結の注意喚起のためのピクトグラムによる投光パターン66、が例示されている。自動車1は、複数の投光パターン60から、走行状態や走行環境に応じたものを選択し、その投光パターンに対応する投光を実行すればよい。
この路面描画像11などのパターンを路面に描画することにより、自動車1は、そのドライバなどに対して、自動車1の走行に関する情報などを、路面を通じて提供することができる。
【0013】
しかしながら、このように自動車1からの投光により路面に描画される路面描画像11は、その自動車1のドライバなどにより容易に視認できるものになるとは限らない。
たとえば路面の水たまり4などにより全反射的に光を反射する路面部分がある場合、自動車1から路面描画のための投光をしたとしても、そのほとんどが対向車などへ向けて反射されてしまい、投光した車両へ向けて戻る光量が少なくなる。この場合、投光した自動車1のドライバには、路面描画像11が薄くなり、容易に視認することが難しくなる可能性がある。
その一方で、路面の水たまり4などにおいて全反射などが生じると、対向車2のドライバや、自動車1へ向かって歩行する歩行者3には、路面を通じて強い光が照射されてしまう危惧がある。このような強い反射は、路面描画像11の一部においても生じる可能性がある。図1の矢印破線19は、対向車2の前灯の光が、路面の水たまり4で全反射的に反射して、自動車1へ向けて強い光として反射されている状況を示している。
このように自動車1からの路面描画には、改善することが求められる。
【0014】
図2は、図1の自動車1に設けられる制御系20の説明図である。
図2の自動車1の制御系20は、複数の制御装置と、それらが接続される車ネットワーク26と、を有する。
【0015】
車ネットワーク26は、自動車1のためのたとえばCAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)に準拠した有線の通信ネットワークでよい。車ネットワーク26は、LANなどの通信用ネットワークでも、これらを組み合わせたものであってもよい。車ネットワーク26の一部には、無線方式の通信ネットワークが含まれてよい。車ネットワーク26に接続される上述した各種の機器は、車ネットワーク26を通じて、情報を相互に送受できる。
【0016】
また、図2には、複数の制御装置の例として、描画制御装置21、前灯制御装置22、操作制御装置23、検出制御装置24、通信制御装置25、ワイパー装置27、が示されている。車ネットワーク26には、これ以外の制御装置、たとえば走行制御装置、空調制御装置などが接続されてよい。また、図2に示す各制御装置などは、複数に分割されて、車ネットワーク26に接続されてよい。
【0017】
前灯制御装置22には、自動車1の前端部に設けられる右ヘッドランプモジュール31、左ヘッドランプモジュール32、が接続される。右ヘッドランプモジュール31、および左ヘッドランプモジュール32は、自動車1の前側へ投光する前灯部材である。
また、本実施形態の右ヘッドランプモジュール31、および左ヘッドランプモジュール32は、後述するように路面描画のための投光モジュール53を有する。本実施形態において、右ヘッドランプモジュール31の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32の投光モジュール53とは、走行中の自動車1において路面描画のための投光をして、走行中の自動車1の周囲の路面に路面描画像11を描画可能な投光部材として機能する。
【0018】
前灯制御装置22は、車ネットワーク26を通じて取得する、不図示のランプ操作レバーの操作の情報や不図示のオートライト用の光量センサの検出値の情報に応じて、右ヘッドランプモジュール31の点灯状態、および左ヘッドランプモジュール32の点灯状態を制御する。ランプ操作レバーには、一般的に、ロービーム点灯、ハイビーム点灯、消灯、の操作状態が設定可能になっている。
そして、前灯制御装置22は、右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32の点灯状態の情報を、車ネットワーク26を通じて他の制御装置へ出力してよい。
【0019】
操作制御装置23には、ドライバなどの乗員が操作するための各種の操作部材が接続される。図2には、操作部材として、ワイパー操作レバー33が例示されている。ワイパー操作レバー33は、自動車1のフロントガラスの外面をワイプするワイパー装置27の動作を操作するためのレバーである。ワイパー操作レバー33には、一般的に、間欠駆動、連続駆動、高速な連続駆動、停止、の操作状態が設定可能になっている。
そして、操作制御装置23は、ワイパー操作レバー33などの各種の操作部材の操作状態の情報を、車ネットワーク26を通じて、ワイパー装置27などの他の制御装置へ出力してよい。
【0020】
ワイパー装置27は、ワイパー操作レバー33が操作されると、自動車1のフロントガラスの外面をワイプする。ワイパー装置27は、自動車1のフロントガラスの外面に付着しているごみや雨滴を、フロントガラスの外面から除去する。
【0021】
検出制御装置24には、自動車1の走行状態や走行環境などを検出するための各種の検出部材が接続される。図2には、検出部材として、雨滴センサ34、車外カメラ35、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機36、が例示されている。
そして、検出制御装置24は、雨滴センサ34の検出情報などを、車ネットワーク26を通じて他の制御装置へ出力してよい。
【0022】
雨滴センサ34は、自動車1のフロントガラスの外面に設けられ、雨滴センサ34の雨滴による濡れに応じた通電状態の変化に基づいて、降雨の有無、降雨量を検出できる。
【0023】
車外カメラ35は、図1に示すように、自動車1のフロントガラスの内側となる車室において、前向きに設けられる。このような車外カメラ35は、自動車1の進行方向である前側を撮像することができる。なお、車外カメラ35は、自動車1に複数で設けられてもよい。複数の車外カメラ35は、自動車1の周囲を分割して撮像してよい。また、車外カメラ35は、360度カメラでも、ステレオカメラでも、よい。
そして、車外カメラ35の撮像画像には、路面に投光により描画されている像が、その検出像として含まれ得る。
また、自動車1の周囲を検出するものとしては、車外カメラ35の他にも、Lidar、レーザ、などがある。Lidarやレーザの検出情報は、車外カメラ35の撮像画像と同様に、自動車1の周囲の情報として用いることが可能である。
このように自動車1に設けられる車外カメラ35、Lidar、レーザ、などは、路面描画像11が投光されている路面を検出可能な検出デバイスとして機能できる。
そして、車外カメラ35、Lidar、レーザ、などは、路面描画像11が投光されている路面の投光範囲より広い検出範囲となる路面を検出可能に設けられている。
【0024】
GNSS受信機36は、複数のGNSS衛星からの電波を受信して、GNSS受信機36が設けられる自動車1の位置および時刻の情報を検出する。
【0025】
通信制御装置25には、通信デバイス37が接続される。通信デバイス37は、不図示の基地局などを通じてサーバ装置との間で情報を送受する。基地局は、たとえば5G用の基地局、ADAS(Advanced Driver Assistance Systems)やITS(Intelligent Transport Systems)用の基地局でよい。5G用の基地局には、サーバ装置の機能を実装可能なものがある。また、通信デバイス37は、V2X(Vehicle to X)通信により、直接的には他の自動車1などとの間で通信してもよい。
そして、通信制御装置25は、車ネットワーク26から取得する情報を通信デバイス37から基地局またはサーバ装置へ送信したり、通信デバイス37が基地局またはサーバ装置から受信する情報を車ネットワーク26へ出力したり、してよい。
【0026】
描画制御装置21は、メモリ41、タイマ42、通信ポート43、入出力ポート45、CPU44、および、これらが接続される内部バス46、を有する。制御系20に設けられる制御装置は、基本的に、描画制御装置21と同様の構造を備えてよい。
【0027】
入出力ポート45には、右ヘッドランプモジュール31、左ヘッドランプモジュール32、が接続される。
【0028】
通信ポート43は、車ネットワーク26に接続される。通信ポート43は、車ネットワーク26から情報を取得し、描画制御装置21が出力する情報を、車ネットワーク26へ出力する。
【0029】
タイマ42は、時間または時刻を計測する。タイマ42の時刻は、GNSS受信機36の時刻により校正されてよい。
【0030】
メモリ41は、たとえば半導体メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)、などで構成されてよい。HDDは、不揮発性メモリである。RAMは、揮発性メモリである。メモリ41は、CPU44が実行するプログラム、プログラム実行中に使用する各種の情報を、データとして記録する。メモリ41は、たとえば図1に示す複数の投光パターン60のデータを記録する。
【0031】
CPU44は、メモリ41に記録されているプログラムを読み込んで実行する。これにより、CPU44は、描画制御装置21の制御部として機能する。本実施形態において、CPU44は、投光部材53,53による路面描画のための投光を制御する制御部として機能する。
制御部としてのCPU44は、描画制御装置21の動作を制御する。また、制御部としてのCPU44は、通信ポート43を通じて、右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32へ信号を出力する。これにより、制御部としてのCPU44は、右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32に設けられる路面描画のための投光モジュール53を制御する。右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32は、路面描画のための投光パターンで点灯する。路面には、たとえば図1に示すように、投光パターンに対応した路面描画像11が描画され得る。
このように制御部としてのCPU44は、検出デバイスとしての車外カメラ35の検出(撮像画像)に応じて、投光部材53,53による路面描画のための投光を制御することができる。
【0032】
図3は、図1の自動車1の前端部での、右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32の構造および配置の模式的な説明図である。
図3には、自動車1の前端部が示されている。
【0033】
自動車1の前端部の右端には、右ヘッドランプモジュール31が設けられる。右ヘッドランプモジュール31は、ロービーム用の複数のLED(Light Emitting Diode)51、ハイビーム用の複数のLED52、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)式の投光モジュール53、を有する。
自動車1の前端部の左端には、左ヘッドランプモジュール32が設けられる。右ヘッドランプモジュール31は、ロービーム用の複数のLED51、ハイビーム用の複数のLED52、MEMS式の投光モジュール53、を有する。
なお、投光モジュール53は、この他にもたとえば、DMD(Digital Micromirror Device)方式のものでもよい。
【0034】
MEMS式の投光モジュール53は、たとえば、三色光源の光をMEMS素子により反射して投光するものであればよい。MEMS素子は、画像信号により反射状態が制御され得る。
また、右ヘッドランプモジュール31または左ヘッドランプモジュール32は、MEMS式の投光モジュール53以外の画像を路面に描画できるものを用いてもよい。
MEMS式の投光モジュール53は、ロービーム用の複数のLED51およびハイビーム用の複数のLED52の全体による照射範囲の内側に投光できるとともに、外側にも投光できるものでよい。図1の歩行者3へ横断禁止を示すための描画パターンの一部は、ロービーム用の複数のLED51およびハイビーム用の複数のLED52の全体による照射範囲の外側にある。
【0035】
そして、図3では、右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53が投光して、路面に、右折指示の投光パターン65に対応する、右折指示のための路面描画像11が描画されている。路面描画像11は、2つの投光モジュール53,53が投光可能な範囲において、同図に示すように異なる位置に描画することができる。また、路面描画像11のサイズも、2つの投光モジュール53,53が投光可能な範囲において、変更可能である。
なお、図3では、右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32のMEMS式の投光モジュール53とは、協働して複数の大きな路面描画像11を路面に描画してもよい。
制御部としてのCPU44は、右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32のMEMS式の投光モジュール53とを、投光パターンにしたがって制御することにより、投光パターンに対応する路面描画像11を路面に描画することが可能である。このように右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32のMEMS式の投光モジュール53とは、投光パターンにしたがって路面描画像11を投光する投光部材として機能できる。
【0036】
図4は、図2の描画制御装置21が実行する、第一実施形態での路面描画制御のフローチャートである。
描画制御装置21の制御部としてのCPU44は、図4の路面描画制御を繰り返しに実行する。
なお、制御系20において描画制御機能が前灯制御装置22に実装されている場合、前灯制御装置22のCPUが、制御部として、図4の路面描画制御を繰り返しに実行してよい。
【0037】
ステップST1において、路面描画のための投光を制御するCPU44は、路面描画の要否を判断する。路面描画の要求は、制御系20の各種の制御装置により生成されてよい。たとえば、前灯制御装置22が、前灯を点灯させる場合、路面描画を要求する情報を生成して、車ネットワーク26を通じて描画制御装置21へ出力してよい。路面描画の要求がある場合、CPU44は、処理をステップST2へ進める。路面描画の要求がない場合、CPU44は、本制御を終了する。
【0038】
ステップST2において、CPU44は、メモリ41に記録されている複数の投光パターン60から、路面描画に使用する投光パターンを選択する。CPU44は、複数の投光パターンを選択してもよい。
【0039】
ステップST3において、CPU44は、右ヘッドランプモジュール31の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32の投光モジュール53とを制御して、選択した投光パターンにしたがう光を、路面に照射する。これにより、路面には、投光パターンに対応する路面描画像11が描画される。
【0040】
ステップST4において、CPU44は、降雨の有無を判断する。
CPU44は、たとえば自動車1に設けられる雨滴センサ34から、降雨の検出情報を取得して、降雨の有無を判断してよい。
この他にもたとえば、CPU44は、自動車1に設けられるワイパー装置27から作動の情報を取得して、降雨の有無を判断してよい。ワイパー装置27は、基本的に降雨がある場合には作動している。
この場合、雨滴センサ34、またはワイパー装置27は、降雨検出部材として機能する。
そして、降雨がある場合、CPU44は、処理をステップST5へ進める。
降雨がない場合、CPU44は、本制御を終了する。この場合、ステップST3で開始された路面描画は、継続される。なお、CPU44は、次回以降の制御でのステップST1において、描画不要と判断するまで、路面描画を継続してよい。
【0041】
ステップST5において、CPU44は、降雨の状態として、降雨の継続時間または降雨量を判断する。降雨量が多い場合、雨滴センサ34の検出値は大きく変化する。ワイパー装置27の動作も、間欠動作から連続動作に切り替えられる。また、CPU44は、降雨開始からの経過時間を、タイマ42により計測させてよい。
そして、たとえば降雨の継続時間が閾値以上である場合、CPU44は、処理をステップST6へ進める。または、降雨量が閾値以上である場合、CPU44は、処理をステップST6へ進める。いずれの場合でもない場合、CPU44は、本処理を繰り返す。
【0042】
ステップST6において、CPU44は、ステップST3で開始した投光出力を停止する。CPU44は、右ヘッドランプモジュール31の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32の投光モジュール53とを制御して、これらの投光モジュール53からの出力を停止する。これにより、道路の路面描画像11は、消える。
このように、CPU44は、雨滴センサ34が閾値以上の時間または量の降雨を検出している場合、またはワイパー装置27が閾値以上の時間で作動している場合、所定の降雨があるものとして、投光部材53,53からの、路面描画像のための投光を止めるように抑制する。
【0043】
ステップST7において、CPU44は、降雨が終わったか否かを判断する。降雨が終わると、雨滴センサ34の検出値は、濡れていない状態での値へ戻る。ワイパー装置27は、動作を停止する。
そして、降雨が終わっていない場合、CPU44は、本処理を繰り返す。降雨が終わると、CPU44は、処理をステップST8へ進める。
【0044】
ステップST8において、CPU44は、降雨が終わってからの経過時間を判断する。CPU44は、降雨が終わってからの経過時間を、タイマ42により計測させてよい。
そして、たとえば降雨が終わってからの継続時間が閾値以上でない場合、CPU44は、処理をステップST7へ戻す。CPU44は、降雨が終わってからの継続時間が閾値以上となるまで、ステップST8からステップST9の処理を繰り返す。この間、投光部材53,53からの、路面描画像のための投光は、継続的に停止している。
降雨が終わってからの継続時間が閾値以上になると、CPU44は、処理をステップST9へ進める。
【0045】
ステップST9において、CPU44は、停止していた路面描画像のための投光を、再開する。CPU44は、右ヘッドランプモジュール31の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32の投光モジュール53とを制御して、選択した投光パターンにしたがう光を、路面に照射する。これにより、路面には、投光パターンに対応する路面描画像11が再度描画され始める。その後、CPU44は、本制御を終了する。
【0046】
このように制御部としてのCPU44は、降雨検出部材として機能する雨滴センサ34またはワイパー装置27の検出に応じて、投光部材53,53による路面描画のための投光を制御することができる。CPU44は、降雨検出部材が降雨または降雨に伴う状態を検出する場合、降雨があるものとして、投光部材53,53からの、路面描画像のための投光を抑制することができる。
【0047】
以上のように、本実施形態に係る自動車1は、降雨または降雨に伴う状態を検出する降雨検出部材34,27を有する。そして、走行中の自動車1において路面描画のための投光をして、走行中の自動車1の周囲の路面に路面描画像11を描画可能な投光部材53,53による路面描画のための投光を制御する制御部としてのCPU44は、降雨検出部材34,27が降雨または降雨に伴う状態を検出する場合、降雨があるものとして、投光部材53,53からの、路面描画像のための投光を抑制する。
これにより、本実施形態では、たとえば路面が雨で全面的に濡れている場合には、自動車1から路面描画のための投光を抑制することができる。本実施形態では、自動車1のドライバに視認し難い路面描画像11を描画し続けないようにできる。また、本実施形態では、雨でぬれた路面で全面的な反射が生じ難くして、対向車2のドライバや、自動車1へ向かって歩行する歩行者3に対して、路面を通じて強い光を照射し難くすることができる。
このように本実施形態では、路面描画のための投光を制御して、自動車1からの路面描画を改善することが期待できる。
【0048】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る自動車1の路面描画装置について説明する。
本実施形態は、上述した実施形態とは異なる降雨検出部材を用いて、路面描画像11を路面を描画するための投光を制御する例について説明する。
以下において、主に上述した実施形態との相違点について説明する。
【0049】
図5は、図2の車外カメラ35による撮像画像70の説明図である。
図5の撮像画像70は、図1の走行状態での、自動車1の車外カメラ35により撮像されたものである。
このため、図5の撮像画像70には、自動車1が走行している道路とともに、対向車2の像71と、歩行者3の像72と、路面描画像11に対応する検出像73と、路面の水たまり4の像75、とが含まれている。ここでは、路面の水たまり4の像75は、対向車2の前灯の光により、明るく光っている。
車外カメラ35は、投光部材53,53により路面描画像11が描画されている投光範囲(複数の路面描画像11が描画されている路面部分)より広い範囲を、検出範囲として検出している。
また、車外カメラ35の検出範囲は、投光部材53,53の投光範囲と比べて、少なくとも自動車1の進行方向の前側に広くなる範囲を検出している。
本実施形態では、このような撮像画像70が得られることに着目し、自動車1に設けられる車外カメラ35を、降雨検出部材として用いる。
【0050】
図6は、図2の描画制御装置21が実行する、第二実施形態での路面描画制御のフローチャートである。
描画制御装置21の制御部としてのCPU44は、図6の路面描画制御を繰り返しに実行する。
なお、制御系20において描画制御機能が前灯制御装置22に実装されている場合、前灯制御装置22のCPUが、図6の路面描画制御を繰り返しに実行してもよい。
ステップST1からステップST3は、上述した実施形態と同様である。
ただし、ステップST3の後において、CPU44は、処理をステップST11へ進める。
【0051】
ステップST11において、CPU44は、車外カメラ35により検出されている最新の撮像画像70を取得し、撮像画像70に基づいて、降雨に伴う状態を判断する。具体的には、CPU44は、撮像画像70が、降雨に伴う状態として、街灯、対向車、または先行車による光源以外の路面のスポット光を撮像していることを判断する。対向車2の前灯の光により明るく光っている路面の水たまり4の像75は、路面のスポット光となっている。
そして、撮像画像70が、路面のスポット光を含んでいない場合、CPU44は、降雨がないものとして、本制御を終了する。
これに対し、撮像画像70が、路面のスポット光を撮像して含んでいる場合、CPU44は、降雨があるものとして、処理をステップST6へ進める。CPU44は、ステップST6において投光を停止し、処理をステップST12へ進める。
【0052】
ステップST12において、CPU44は、車外カメラ35により検出されている最新の撮像画像70を取得し、撮像画像70に基づいて、降雨に伴う状態を判断する。具体的には、CPU44は、撮像画像70が、降雨に伴う状態として、路面のスポット光を撮像していないことを判断する。
そして、撮像画像70が、路面のスポット光を撮像して含んでいる場合、CPU44は、降雨があるものとして、本処理を継続する。
これに対し、撮像画像70が、路面のスポット光を含んでいない場合、CPU44は、降雨がないものとして、処理をステップST9へ進める。CPU44は、ステップST9において投光を再開し、本制御を終了する。
【0053】
以上のように、本実施形態において、制御部としてのCPU44は、車外カメラ35の撮像画像70に路面のスポット光が含まれている場合、降雨があるものとして、投光部材53,53からの、路面描画像のための投光を抑制するように制御できる。その後に車外カメラ35の撮像画像70に路面のスポット光が撮像されなくなると、CPU44は、降雨が終了したものとして、投光部材53,53からの、路面描画像のための投光を再開することができる。
【0054】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る自動車1の路面描画装置について説明する。
上述した実施形態では、降雨がある場合には路面描画のための投光を停止している。本実施形態では、降雨がある場合においても、できるかぎり路面描画のための投光を維持する例について説明する。
以下において、主に上述した実施形態との相違点について説明する。
【0055】
図7は、図2の描画制御装置21が実行する、第三実施形態での路面描画制御のフローチャートである。
描画制御装置21の制御部としてのCPU44は、図7の路面描画制御を繰り返しに実行する。
なお、制御系20において描画制御機能が前灯制御装置22に実装されている場合、前灯制御装置22のCPUが、図7の路面描画制御を繰り返しに実行してもよい。
ステップST1からステップST4、およびステップST5からステップST9は、上述した実施形態と同様である。
ただし、ステップST5において、たとえば降雨の継続時間が閾値以上であると判断した場合、または、降雨量が閾値以上であると判断した場合、CPU44は、処理をステップST21へ進める。
【0056】
ステップST21において、CPU44は、ステップST3で開始した投光を、ステップST6のように停止するのではなく、減光により抑制する。
この際、CPU44は、図1または図3に示すように、路面描画像11についての路面の投光位置を、自動車1に近い位置へ移動させる。
また、CPU44は、路面描画像11のサイズを小さくして、自動車1に近い位置に描画する。
それらの制御とともに、CPU44は、ステップST3で開始した投光を減光する。
その後、CPU44は、処理をステップST7へ進める。
【0057】
以上のように、本実施形態では、制御部としてのCPU44は、降雨が閾値以上の時間ではない場合、または降雨量が閾値以上ではない場合、路面描画像のための投光位置を自動車1へ近づけるとともに減光することにより、路面描画像11のための投光を維持する。これにより、軽度の降雨の場合には、路面描画像11による反射を抑制しながら、路面描画像11のための投光を継続することができる。
しかも、路面描画像11のための光量を減らしているにもかかわらず、路面描画像11の投光位置を自動車1に近づけているため、自動車1のドライバによる路面描画像11の視認性の低下を抑制することができる。
また、本実施形態では、路面描画像11のための光量を減らすとともに、路面描画像11のサイズを小さくしているため、路面描画像11から対向車2などへ向かう光量を抑制できる。特に、本実施形態では、路面描画像11の投光位置を自動車1に近づけているため、路面描画像11から対向車2などへ向けて反射される光は、実際に対向車2などへ到達し難くなる。
【0058】
以上の実施形態は、本発明に好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0059】
上述した実施形態では、投光部材としての投光モジュール53は、右ヘッドランプモジュール31または左ヘッドランプモジュール32において、前灯用のLED51,52と一体化されて自動車1に設けられている。
この他にもたとえば、投光部材としての投光モジュール53は、右ヘッドランプモジュール31または左ヘッドランプモジュール32とは別体として、自動車1に設けられてもよい。
また、自動車1に設ける投光モジュール53は、1つでも、3つ以上であってもよい。1つの投光モジュール53や、3つ目の投光モジュール53は、自動車の前面部の幅方向中央に設けてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…自動車(車両)、2…対向車、3…歩行者、4…水たまり、11…路面描画像、12…車線境界線、13…路肩境界線、20…制御系、21…描画制御装置、22…前灯制御装置、23…操作制御装置、24…検出制御装置、25…通信制御装置、26…車ネットワーク、27…ワイパー装置(降雨検出部材)、31…右ヘッドランプモジュール、32…左ヘッドランプモジュール、33…ワイパー操作レバー、34…雨滴センサ(降雨検出部材)、35…車外カメラ(降雨検出部材)、36…GNSS受信機、37…通信デバイス、41…メモリ、42…タイマ、43…通信ポート、44…CPU(制御部)、45…入出力ポート、46…内部バス、51,52…LED、53…投光モジュール(投光部材)、60…複数の投光パターン、70…撮像画像、73…検出像、75…路面の水たまりの像、

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7