(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115461
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】路面描画機能を有する車両
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/00 20060101AFI20240819BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B60Q1/00 G
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021176
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100182051
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 直宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 育郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 研太郎
(72)【発明者】
【氏名】木下 真
【テーマコード(参考)】
3K339
5H181
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339AA16
3K339AA43
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA03
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3K339BA22
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3K339EA07
3K339EA10
3K339FA05
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3K339GB01
3K339HA03
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3K339KA39
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3K339MA05
3K339MA07
3K339MA10
3K339MB05
3K339MB06
3K339MC03
3K339MC13
3K339MC17
3K339MC26
3K339MC36
3K339MC39
3K339MC41
3K339MC48
3K339MC77
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF24
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】車両からの路面描画を改善する。
【解決手段】路面描画機能を有する車両は、走行中の車両において路面描画のための投光をして、走行中の車両の周囲の路面に路面描画像を描画可能な投光部材と、投光部材により路面描画像が描画されている投光範囲より広い検出範囲を検出可能な検出デバイスと、検出デバイスの検出に応じて、投光部材による路面描画のための投光を制御する制御部と、を有する。制御部は、検出デバイスの検出範囲についての、少なくとも投光範囲の外となる外側部分の路面について、路面描画の適否を判断し、路面描画に不適と判断される路面部分を路面描画像が通過する際には、投光部材からの、路面描画像のための投光を抑制する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の車両において路面描画のための投光をして、走行中の前記車両の周囲の路面に路面描画像を描画可能な投光部材と、
前記投光部材により前記路面描画像が描画されている投光範囲より広い検出範囲を検出可能な検出デバイスと、
前記検出デバイスの検出に応じて、前記投光部材による路面描画のための投光を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記検出デバイスの前記検出範囲についての、少なくとも前記投光範囲の外となる外側部分の路面について、路面描画の適否を判断し、
路面描画に不適と判断される路面部分を前記路面描画像が通過する際には、前記投光部材からの、前記路面描画像のための投光を抑制する、
路面描画機能を有する車両。
【請求項2】
前記検出デバイスの前記検出範囲は、前記投光部材の前記投光範囲と比べて、少なくとも前記車両の進行方向の前側において広い、
請求項1記載の、路面描画機能を有する車両。
【請求項3】
前記制御部は、
前記検出デバイスの前記検出範囲を、複数の区間に分割し、
各区間ごとに、少なくとも前記車両のドライバへ向けた反射不足の有無を判断し、
反射不足となる区画に対応する路面部分を前記路面描画像が通過する際に、前記投光部材からの、前記路面描画像のための投光を抑制する、
請求項2記載の、路面描画機能を有する車両。
【請求項4】
前記制御部は、
反射不足部分となっている区画に対応する路面部分を、前記路面描画像が通過する前に、前記投光部材からの、前記路面描画像のための投光を停止し、
反射不足部分となっている区画に対応する路面部分を通過した後に、前記投光部材からの、前記路面描画像のための投光を再開する、
請求項3記載の、路面描画機能を有する車両。
【請求項5】
前記検出デバイスにより投光させるための複数の投光パターンを記録する記録部材、を有し、
前記制御部は、
前記検出デバイスから複数の投光パターンを同時に出力する場合には、各投光パターンに対応する路面描画像ごとに、路面描画に不適と判断される前記路面部分についての通過を判断し、投光を制御する、
請求項1から4のいずれか一項記載の、路面描画機能を有する車両。
【請求項6】
前記記録部材は、複数の投光パターンの少なくとも一部について、互いに関連付けて記録し、
前記制御部は、
前記検出デバイスから、関連付けられている複数の投光パターンから選択される投光パターンを投光する場合には、関連付けに係る複数の投光パターンに対応する複数の路面描画像の全体について、路面描画に不適と判断される前記路面部分についての通過を判断し、投光をしないように制御する、
請求項5記載の、路面描画機能を有する車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面描画機能を有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3では、車両から投光することにより、車両が走行している路面に各種のパターンを描画することを開示している。
このようなパターンを路面に描画することにより、車両は、そのドライバなどに対して、車両の走行に関する情報などを、路面を通じて提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-055691号公報
【特許文献2】特開2020-111284号公報
【特許文献3】特開2015-164828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように車両からの投光により路面に描画される路面描画像は、その車両のドライバなどにより容易に視認できるものになるとは限らない。
たとえば路面が光を全反射的に反射するものである場合、車両から路面描画のための投光をしたとしても、そのほとんどが対向車などへ向けて反射されてしまい、投光した車両へ向けて戻る光量が少なくなる。この場合、投光した車両のドライバには、路面描画像が薄くなり、容易に視認することが難しくなる可能性がある。
その一方で、路面がたとえば強い正反射を生じるように全反射的な反射をするものなどである場合、対向車のドライバや、車両へ向かって歩行する歩行者には、路面を通じて強い光が照射されてしまう危惧がある。このような強い反射は、路面描画像の一部においても生じる可能性がある。
【0005】
このように車両からの路面描画には、改善することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施の形態に係る路面描画機能を有する車両は、走行中の車両において路面描画のための投光をして、走行中の前記車両の周囲の路面に路面描画像を描画可能な投光部材と、前記投光部材により前記路面描画像が描画されている投光範囲より広い検出範囲を検出可能な検出デバイスと、前記検出デバイスの検出に応じて、前記投光部材による路面描画のための投光を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記検出デバイスの前記検出範囲についての、少なくとも前記投光範囲の外となる外側部分の路面について、路面描画の適否を判断し、路面描画に不適と判断される路面部分を前記路面描画像が通過する際には、前記投光部材からの、前記路面描画像のための投光を抑制する、ものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明において、検出デバイスは、投光部材により路面描画像が描画されている投光範囲より広い検出範囲を検出可能とされている。
そして、検出デバイスの検出に応じて投光部材による路面描画のための投光を制御する制御部は、検出デバイスの検出範囲についての、少なくとも投光範囲の外となる外側部分の路面について、路面描画の適否を判断する。また、制御部は、路面描画に不適と判断される路面部分を路面描画像が通過する際には、投光部材からの、路面描画像のための投光を抑制する。
これにより、本発明では、路面描画に不適と判断される路面部分を路面描画像が通過する際には、投光部材からの、路面描画像のための投光を抑制する、ことができる。本発明では、十分な視認性が得られない路面部分での路面描画を抑制することができる。また、本発明では、該路面部分において強い反射が生じ難くなり、対向車のドライバや、車両へ向かって歩行する歩行者に対して、路面を通じて強い光を照射しないようにすることが期待できる。
このように本発明では、路面描画のための投光を制御して、車両からの路面描画を改善することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る自動車の走行状態の一例の説明図である。
【
図2】
図2は、
図1の自動車に設けられる制御系の説明図である。
【
図3】
図3は、
図1の自動車の前端部での、右ヘッドランプモジュールおよび左ヘッドランプモジュールの構造および配置の模式的な説明図である。
【
図4】
図4は、
図2の車外カメラによる撮像画像の説明図である。
【
図5】
図5は、
図2の描画制御装置が実行する、第一実施形態での路面描画制御のフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図5の路面描画制御の下での、路面描画の変化を説明する図である。
【
図7】
図7は、
図2の描画制御装置が実行する、第二実施形態での路面描画制御のフローチャートである。
【
図8】
図8は、
図2の描画制御装置が実行する、第三実施形態での路面描画制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0010】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る自動車1の走行状態の一例の説明図である。
図1には、片側一車線の道路を走行する自動車1が示されている。自動車1は、車両の一例である。車両には、この他にもたとえば、バス、トラック、モータサイクル、パーソナルモビリティ、などがある。なお、自動車1は、運転支援を含む自動運転により走行可能なものでもよい。
【0011】
道路の対向車線には、対向車2が走行している。また、路肩には、歩行者3がいる。
このような走行環境において、自動車1のドライバは、たとえば自動車1の進行方向である前側などに注意を払いながら道路の車線を逸脱しないように操作して、自動車1を走行させる。
また、自動車1は、走行環境が暗い場合、前灯を点灯させる。
図1には、ロービームでの前灯の照射範囲18と、ハイビームでの前灯の照射範囲17と、が破線により示されている。なお、後述する車外カメラ35は、自動車1の車室の前部に設けられている。車外カメラ35は、ロービームでの前灯の照射範囲18と、ハイビームでの前灯の照射範囲17との全体を含む広い画角で、自動車1の前側を撮像している。
【0012】
ところで、このような自動車1では、自動車1から路面に対して可視光を照射して、図形を描画することについての研究開発が進められている。
たとえば、
図1には、道路標識などを模した簡易図形による路面描画像11、自車車線の左右両側に沿って延在する車線境界線12、自車の路肩側の側方に描画される路肩境界線13、が示されている。ここで、路面描画像11は、自車のドライバなどのために、自車の進行方向前方に描画されている。車線境界線12と路肩境界線13とは、路肩の歩行者3や対向車2へ向けて描画されている。
また、
図1の右側には、路面描画像11の元になる複数の投光パターン60が示されている。ここでは、左折指示の投光パターン61、直進指示の投光パターン67、右折指示の投光パターン65、制限速度の投光パターン62、停止位置を示すための投光パターン63、横断禁止を示すための投光パターン64、右折指示の投光パターン65、積雪や凍結の注意喚起のためのピクトグラムによる投光パターン66、が例示されている。自動車1は、複数の投光パターン60から、走行状態や走行環境に応じたものを選択し、その投光パターンに対応する投光を実行すればよい。
この路面描画像11などのパターンを路面に描画することにより、自動車1は、そのドライバなどに対して、自動車1の走行に関する情報などを、路面を通じて提供することができる。
【0013】
しかしながら、このように自動車1からの投光により路面に描画される路面描画像11は、その自動車1のドライバなどにより容易に視認できるものになるとは限らない。
たとえば路面が全反射的に光を反射するものである場合、自動車1から路面描画のための投光をしたとしても、そのほとんどが対向車などへ向けて反射されてしまい、投光した車両へ向けて戻る光量が少なくなる。この場合、投光した自動車1のドライバには、路面描画像11が薄くなり、容易に視認することが難しくなる可能性がある。
その一方で、路面がたとえば強い正反射を生じるように全反射的な反射をするものなどである場合、対向車2のドライバや、自動車1へ向かって歩行する歩行者3には、路面を通じて強い光が照射されてしまう危惧がある。このような強い反射は、路面描画像11の一部においても生じる可能性がある。
このように自動車1からの路面描画には、改善することが求められる。
【0014】
図2は、
図1の自動車1に設けられる制御系20の説明図である。
図2の自動車1の制御系20は、複数の制御装置と、それらが接続される車ネットワーク26と、を有する。
【0015】
車ネットワーク26は、自動車1のためのたとえばCAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)に準拠した有線の通信ネットワークでよい。車ネットワーク26は、LANなどの通信用ネットワークでも、これらを組み合わせたものであってもよい。車ネットワーク26の一部には、無線方式の通信ネットワークが含まれてよい。車ネットワーク26に接続される上述した各種の機器は、車ネットワーク26を通じて、情報を相互に送受できる。
【0016】
また、
図2には、複数の制御装置の例として、描画制御装置21、前灯制御装置22、操作制御装置23、検出制御装置24、通信制御装置25、が示されている。車ネットワーク26には、これ以外の制御装置、たとえば走行制御装置、空調制御装置などが接続されてよい。また、
図2に示す各制御装置などは、複数に分割されて、車ネットワーク26に接続されてよい。
【0017】
前灯制御装置22には、自動車1の前端部に設けられる右ヘッドランプモジュール31、左ヘッドランプモジュール32、が接続される。右ヘッドランプモジュール31、および左ヘッドランプモジュール32は、自動車1の前側へ投光する前灯部材である。
また、本実施形態の右ヘッドランプモジュール31、および左ヘッドランプモジュール32は、後述するように路面描画のための投光モジュール53を有する。本実施形態において、右ヘッドランプモジュール31の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32の投光モジュール53とは、走行中の自動車1において路面描画のための投光をして、走行中の自動車1の周囲の路面に路面描画像11を描画可能な投光部材として機能する。
【0018】
前灯制御装置22は、車ネットワーク26を通じて取得する、不図示のランプ操作レバーの操作の情報や不図示のオートライト用の光量センサの検出値の情報に応じて、右ヘッドランプモジュール31の点灯状態、および左ヘッドランプモジュール32の点灯状態を制御する。ランプ操作レバーには、一般的に、ロービーム点灯、ハイビーム点灯、消灯、の操作状態が設定可能になっている。
そして、前灯制御装置22は、右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32の点灯状態の情報を、車ネットワーク26を通じて他の制御装置へ出力してよい。
【0019】
操作制御装置23には、ドライバなどの乗員が操作するための各種の操作部材が接続される。
図2には、操作部材として、ワイパー操作レバー33が例示されている。ワイパー操作レバー33は、自動車1のフロントガラスの外面をワイプする不図示のワイパー装置の動作を操作するためのレバーである。ワイパー操作レバー33には、一般的に、間欠駆動、連続駆動、高速な連続駆動、停止、の操作状態が設定可能になっている。
そして、操作制御装置23は、ワイパー操作レバー33などの各種の操作部材の操作状態の情報を、車ネットワーク26を通じて他の制御装置へ出力してよい。
【0020】
検出制御装置24には、自動車1の走行状態や走行環境などを検出するための各種の検出部材が接続される。
図2には、検出部材として、雨滴センサ34、車外カメラ35、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機36、が例示されている。
そして、検出制御装置24は、雨滴センサ34の検出情報などを、車ネットワーク26を通じて他の制御装置へ出力してよい。
【0021】
雨滴センサ34は、自動車1のフロントガラスの外面に設けられ、雨滴センサ34の雨滴による濡れに応じた通電状態の変化に基づいて、降雨の有無、降雨量を検出できる。
【0022】
車外カメラ35は、
図1に示すように、自動車1のフロントガラスの内側となる車室において、前向きに設けられる。このような車外カメラ35は、自動車1の進行方向である前側を撮像することができる。なお、車外カメラ35は、自動車1に複数で設けられてもよい。複数の車外カメラ35は、自動車1の周囲を分割して撮像してよい。また、車外カメラ35は、360度カメラでも、ステレオカメラでも、よい。
そして、車外カメラ35の撮像画像には、路面に投光により描画されている像が、その検出像として含まれ得る。
また、自動車1の周囲を検出するものとしては、車外カメラ35の他にも、Lidar、レーザ、などがある。Lidarやレーザの検出情報は、車外カメラ35の撮像画像と同様に、自動車1の周囲の情報として用いることが可能である。
このように自動車1に設けられる車外カメラ35、Lidar、レーザ、などは、路面描画像11が投光されている路面を検出可能な検出デバイスとして機能できる。
そして、車外カメラ35、Lidar、レーザ、などは、路面描画像11が投光されている路面の投光範囲より広い検出範囲となる路面を検出可能に設けられている。
【0023】
GNSS受信機36は、複数のGNSS衛星からの電波を受信して、GNSS受信機36が設けられる自動車1の位置および時刻の情報を検出する。
【0024】
通信制御装置25には、通信デバイス37が接続される。通信デバイス37は、不図示の基地局などを通じてサーバ装置との間で情報を送受する。基地局は、たとえば5G用の基地局、ADAS(Advanced Driver Assistance Systems)やITS(Intelligent Transport Systems)用の基地局でよい。5G用の基地局には、サーバ装置の機能を実装可能なものがある。また、通信デバイス37は、V2X(Vehicle to X)通信により、直接的には他の自動車1などとの間で通信してもよい。
そして、通信制御装置25は、車ネットワーク26から取得する情報を通信デバイス37から基地局またはサーバ装置へ送信したり、通信デバイス37が基地局またはサーバ装置から受信する情報を車ネットワーク26へ出力したり、してよい。
【0025】
描画制御装置21は、メモリ41、タイマ42、通信ポート43、入出力ポート45、CPU44、および、これらが接続される内部バス46、を有する。制御系20に設けられる制御装置は、基本的に、描画制御装置21と同様の構造を備えてよい。
【0026】
入出力ポート45には、右ヘッドランプモジュール31、左ヘッドランプモジュール32、が接続される。
【0027】
通信ポート43は、車ネットワーク26に接続される。通信ポート43は、車ネットワーク26から情報を取得し、描画制御装置21が出力する情報を、車ネットワーク26へ出力する。
【0028】
タイマ42は、時間または時刻を計測する。タイマ42の時刻は、GNSS受信機36の時刻により校正されてよい。
【0029】
メモリ41は、たとえば半導体メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)、などで構成されてよい。HDDは、不揮発性メモリである。RAMは、揮発性メモリである。メモリ41は、CPU44が実行するプログラム、プログラム実行中に使用する各種の情報を、データとして記録する。メモリ41は、たとえば
図1に示す複数の投光パターン60のデータを記録する。
【0030】
CPU44は、メモリ41に記録されているプログラムを読み込んで実行する。これにより、CPU44は、描画制御装置21の制御部として機能する。本実施形態において、CPU44は、投光部材53,53による路面描画のための投光を制御する制御部として機能する。
制御部としてのCPU44は、描画制御装置21の動作を制御する。また、制御部としてのCPU44は、通信ポート43を通じて、右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32へ信号を出力する。これにより、制御部としてのCPU44は、右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32に設けられる路面描画のための投光モジュール53を制御する。右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32は、路面描画のための投光パターンで点灯する。路面には、たとえば
図1に示すように、投光パターンに対応した路面描画像11が描画され得る。
このように制御部としてのCPU44は、検出デバイスとしての車外カメラ35の検出(撮像画像)に応じて、投光部材53,53による路面描画のための投光を制御することができる。
【0031】
図3は、
図1の自動車1の前端部での、右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32の構造および配置の模式的な説明図である。
図3には、自動車1の前端部が示されている。
【0032】
自動車1の前端部の右端には、右ヘッドランプモジュール31が設けられる。右ヘッドランプモジュール31は、ロービーム用の複数のLED(Light Emitting Diode)51、ハイビーム用の複数のLED52、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)式の投光モジュール53、を有する。
自動車1の前端部の左端には、左ヘッドランプモジュール32が設けられる。右ヘッドランプモジュール31は、ロービーム用の複数のLED51、ハイビーム用の複数のLED52、MEMS式の投光モジュール53、を有する。
なお、投光モジュール53は、この他にもたとえば、DMD(Digital Micromirror Device)方式のものでもよい。
【0033】
MEMS式の投光モジュール53は、たとえば、三色光源の光をMEMS素子により反射して投光するものであればよい。MEMS素子は、画像信号により反射状態が制御され得る。
また、右ヘッドランプモジュール31または左ヘッドランプモジュール32は、MEMS式の投光モジュール53以外の画像を路面に描画できるものを用いてもよい。
MEMS式の投光モジュール53は、ロービーム用の複数のLED51およびハイビーム用の複数のLED52の全体による照射範囲の内側に投光できるとともに、外側にも投光できるものでよい。
図1の歩行者3へ横断禁止を示すための描画パターンの一部は、ロービーム用の複数のLED51およびハイビーム用の複数のLED52の全体による照射範囲の外側にある。
【0034】
そして、
図3では、右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53が投光して、路面に、右折指示の投光パターン65に対応する、右折指示のための路面描画像11が描画されている。
また、左ヘッドランプモジュール32のMEMS式の投光モジュール53が投光して、路面に、制限速度の投光パターン62に対応する、左折指示のための路面描画像11が描画されている。
この場合、右折指示のための路面描画像11と、左折指示のための路面描画像11とが描画されている路面部分が、投光範囲となる。
なお、右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32のMEMS式の投光モジュール53とは、協働して複数の大きな路面描画像11を路面に描画してもよい。
制御部としてのCPU44は、右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32のMEMS式の投光モジュール53とを、投光パターンにしたがって制御することにより、複数の投光パターンに対応する複数の路面描画像11を路面に描画することが可能である。
また、制御部としてのCPU44は、同時に描画しない複数の投光パターンについて、同一の路面部分に描画してもよいが、
図1に示すように、個別の路面部分に描画してもよい。特に、
図1のように、右折指示のための路面描画像11と、右折指示のための路面描画像11と、右折指示のための路面描画像11とは、それぞれの方向に応じて描画する路面部分の位置をずらすことにより、ドライバの理解を促しやすくなると考えられる。
【0035】
このように右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32のMEMS式の投光モジュール53とは、投光パターンにしたがって路面描画像11を投光する投光部材として機能できる。
そして、右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53は、
図1に示すように、右ヘッドランプモジュール31によるハイビームでの路面の投光範囲についての前端部を除くように、路面描画のための投光を実行するとよい。
また、左ヘッドランプモジュール32のMEMS式の投光モジュール53は、
図1に示すように、左ヘッドランプモジュール32によるハイビームでの路面の投光範囲についての前端部を除くように、路面描画のための投光を実行するとよい。
【0036】
図4は、
図2の車外カメラ35による撮像画像70の説明図である。
図4の撮像画像70は、
図1の走行状態での、自動車1の車外カメラ35により撮像されたものである。
このため、
図4の撮像画像70には、自動車1が走行している道路とともに、対向車2の像71と、歩行者3の像72と、複数の路面描画像11に対応する複数の検出像73と、路面の水たまり4の像75、とが含まれている。路面の水たまり4の像75は、ハイビームが投光されても、そのほとんどが対向車2などへ向けて反射されてしまい、投光した自動車1へ向けて戻る光量が少なくなる。このように対向車2などへ向けて強い反射が生じる部分は、他の路面部分と比べて輝度が低なって暗くなる。
車外カメラ35は、投光部材53,53により路面描画像11が描画されている投光範囲(複数の路面描画像11が描画されている路面部分)より広い範囲を、検出範囲として検出している。
また、車外カメラ35の検出範囲は、投光部材53,53の投光範囲と比べて、少なくとも自動車1の進行方向の前側に広くなる範囲を検出している。
そして、撮像画像70には、路面の水たまり4の像75は、投光範囲の上側に位置する。この場合、自動車1が前へ走行すると、その走行にしたがって前へ移動する投光範囲は、撮像画像70において、路面の水たまり4の像75と重なる可能性がある。すなわち、
図4の投光範囲は、自動車1が前へ走行すると、将来的には撮像画像70において
図4のものより上側の予測範囲77へ移動すると考えられる。
また、
図4において、撮像画像70は、格子状に配列された複数の区画76に分割されている。ここで、区画76は、撮像画像70において、投光範囲と水たまり4などの輝度が低い路面部分との重なりを判定するための単位である。
【0037】
図5は、
図2の描画制御装置21が実行する、第一実施形態での路面描画制御のフローチャートである。
描画制御装置21の制御部としてのCPU44は、
図5の路面描画制御を繰り返しに実行する。
なお、制御系20において描画制御機能が前灯制御装置22に実装されている場合、前灯制御装置22のCPUが、制御部として、
図5の路面描画制御を繰り返しに実行してよい。
【0038】
ステップST1において、路面描画のための投光を制御するCPU44は、路面描画の要否を判断する。路面描画の要求は、制御系20の各種の制御装置により生成されてよい。たとえば、前灯制御装置22が、前灯を点灯させる場合、路面描画を要求する情報を生成して、車ネットワーク26を通じて描画制御装置21へ出力してよい。路面描画の要求がある場合、CPU44は、処理をステップST2へ進める。路面描画の要求がない場合、CPU44は、本制御を終了する。
【0039】
ステップST2において、CPU44は、メモリ41に記録されている複数の投光パターン60から、路面描画に使用する投光パターンを選択する。CPU44は、複数の投光パターンを選択しても、1つの投光パターンを選択してもよい。
【0040】
ステップST3において、CPU44は、右ヘッドランプモジュール31の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32の投光モジュール53とを制御して、選択した投光パターンにしたがう光を、路面に照射する。これにより、路面には、投光パターンに対応する路面描画像11が描画される。
【0041】
ステップST4において、CPU44は、車外カメラ35の撮像画像70を取得する。車外カメラ35の撮像画像70には、
図4に例示するように、ステップST3で出力された路面描画像11が描画されている路面が撮像され得る。この場合、車外カメラ35は、検出像を検出する検出デバイスとして機能する。
【0042】
ステップST5において、CPU44は、取得した撮像画像70を解析して、撮像画像70における検出像73の画像部分を、投光範囲として抽出する。CPU44は、たとえば選択している投光パターンとパターンマッチングする画像部分を、投光範囲として抽出してよい。
図4の場合、CPU44は、2つの検出像72の部分を、投光範囲として抽出すればよい。また、CPU44は、2つの検出像72を囲う矩形領域を、投光範囲として抽出してもよい。
【0043】
ステップST6において、CPU44は、投光範囲の将来位置を予測する。CPU44は、たとえば、自動車1が現在の車速で所定時間の移動をした場合における、投光範囲の将来位置を予測してよい。
CPU44は、
図4の予測範囲77を、投光範囲の将来位置として予測してよい。
また、
図4に示すように、予測範囲77は、ステップST5で抽出した現在の投光範囲と比べて、撮像画像70において上側となる。予測範囲77は、現在の投光範囲と比べて、少なくとも投光範囲の前外となる外側部分の路面に対応するものとなる。
【0044】
ステップST7において、CPU44は、将来予測した投光範囲が、撮像画像に含まれる反射不足(反射光量不足による欠損部分)と重なるか否かを判断する。
ここで、反射不足となる部分は、たとえば
図4の路面の水たまり4の像75の部分である。路面の水たまり4は、光を全反射的に反射してしまう。その結果、自動車1のドライバへ向けて戻ってくるように反射する光は、弱くなる。
そして、CPU44は、
図4に示すように撮像画像70を複数の区間76に分割し、各区間76ごとに、少なくとも自動車1のドライバへ向けた反射不足(反射光量不足による欠損部分)の有無を判断する。これにより、CPU44は、
図4の撮像画像70において、水たまり4の像75を含む1つの区画76を、反射不足の区画として特定できる。
その上で、CPU44は、投光範囲の将来位置である
図4の予測範囲77が、反射不足の区画76と重なるか否かを判断する。そして、
図4では、予測範囲77が、反射不足の区画76と重なっている。この場合、CPU44は、処理をステップST8へ進める。
これに対し、予測範囲77が反射不足の区画76と重なっていない場合、CPU44は、処理をステップST12へ進める。
【0045】
ステップST8から、CPU44は、反射不足となる区画に対応する路面部分を路面描画像11が通過する際に、路面への投光を抑制する処理を開始する。CPU44は、まず、路面描画像11が、反射不足となる区画に対応する路面部分の通過を開始するか否かを判断する。CPU44は、たとえば、ステップST7において予測範囲77が反射不足の区画76と重なり始めるタイミングを、タイマ42にセットし、そのタイミングとなっているか否かに基づいて、路面描画像11が、反射不足となる区画に対応する路面部分の通過を開始するか否かを判断してよい。
そして、路面描画像11が、反射不足となる区画に対応する路面部分の通過を開始しない場合、CPU44は、本処理を繰り返す。路面描画像11が、反射不足となる区画に対応する路面部分の通過を開始するタイミングになると、CPU44は、処理をステップST9へ進める。
【0046】
ステップST9において、CPU44は、投光部材53,53からの、路面描画像のための投光を抑制するために、投光部材53,53からの、路面描画像11のための投光を停止する。
ここで、CPU44は、路面描画像11の全体ではなく、その中の、反射不足となる区画に対応する路面部分と重なる部分のみについて、路面描画像11のための投光を停止してもよい。
また、CPU44は、路面描画像11についての、反射不足となる区画に対応する路面部分と重なる部分のみについて、路面描画像11のための投光の光量を減らしてもよい。
【0047】
ステップST10において、CPU44は、路面描画像11が、反射不足となる区画に対応する路面部分の通過を完了するか否かを判断する。CPU44は、たとえば、ステップST7において予測範囲77が反射不足の区画76を通過し終えるタイミングを、タイマ42にセットし、そのタイミングとなっているか否かに基づいて、路面描画像11が、反射不足となる区画に対応する路面部分の通過を完了するか否かを判断してよい。
そして、路面描画像11が、反射不足となる区画に対応する路面部分の通過を完了しない場合、CPU44は、本処理を繰り返す。路面描画像11が、反射不足となる区画に対応する路面部分の通過を完了するタイミングになると、CPU44は、処理をステップST11へ進める。
【0048】
ステップST11において、CPU44は、投光部材53,53からの、路面描画像11のための投光の抑制を終えるために、投光部材53,53からの、路面描画像11のための投光を再開する。
ここで、CPU44は、路面描画像11の全体について、通常の路面描画のための光量で、路面描画像11のための投光を開始してよい。
このように、CPU44は、反射不足部分となっている区画に対応する路面部分を通過した後に、投光部材53,53からの、路面描画像11のための投光を再開することができる。
また、ステップST8からステップST11の処理により、CPU44は、路面描画に不適と判断される路面部分を路面描画像11が通過する際には、投光部材53,53からの、路面描画像11のための投光を抑制する、ことができる。
その後、CPU44は、処理をステップST12へ進める。
【0049】
ステップST12において、CPU44は、路面描画を終了するか否かを判断する。CPU44は、たとえば路面描画の要求がない場合、路面描画を終了すると判断してよい。この場合、CPU44は、本制御を終了する。
たとえば路面描画の要求が残っている場合、CPU44は、路面描画を終了しないと判断し、処理をステップST2へ戻す。この場合、CPU44は、ステップST2からステップST12の処理を繰り返して、路面描画を継続する。
【0050】
このように、CPU44は、検出デバイスとしての車外カメラ35による路面の検出(撮像画像)に基づいて、路面描画像11が反射不足の路面部分を通過するか否かを予測して判断する。そして、CPU44は、路面描画のための投光を、反射不足の路面部分については抑制するように制御することができる。これにより、本実施形態では、路面描画機能を使用している自動車1のドライバが視認し難い路面描画像11を、路面に描画しないように抑制できる。また、本実施形態では、反射不足の路面部分に対して、通常通りの強い投光により路面描画像11を実行することに起因する、対向車2のドライバなどへの強い光の照射を未然的に抑制できる。
【0051】
図6は、
図5の路面描画制御の下での、路面描画の変化を説明する図である。
図6において、時間は、時刻T1から時刻T3へ向かって流れる。
自動車1は、図面において右から左へ向かって走行している。この場合、路面描画像11も、図面の右から左へ向かって移動することになる。
そして、
図6の各時刻には、路面描画像11とともに、路面において反射光量不足を生じる水たまり4が示されている。
【0052】
時刻T1では、路面描画像11の進行方向に、水たまり4がある。この場合、CPU44は、
図5のステップST7において将来予測の投光範囲が、撮像画像に含まれる水たまり4の反射不足部分の区画76と重なると予測判断する。CPU44は、ステップST8からステップST11の処理を実行する。
そして、時刻T2では、路面描画像11が、水たまり4の直前の位置にいる。CPU44は、ステップST8においてこの時刻T2を待ち、ステップST9の処理により、路面描画像11のための投光を停止する。
また、時刻T3では、路面描画像11が、水たまり4と重なっている。この間、CPU44は、路面描画像11のための投光を停止したまま、ステップST10において通過を待つ。
その後、時刻T4では、路面描画像11が、水たまり4の通過を完了している。CPU44は、ステップST10においてこの時刻T4を待ち、ステップST11の処理により、路面描画像11のための投光を再開する。
これにより、CPU44は、路面描画像11が、路面の水たまり4と重なる期間において、路面描画を中断または減光し、通過後には、路面描画を再開することができる。
【0053】
以上のように、本実施形態において、検出デバイスとしての車外カメラ35は、投光部材53,53により路面描画像が描画されている投光範囲より広い検出範囲を検出可能とされる。ここで、車外カメラ35の検出範囲は、投光部材53,53が実際に投光している投光範囲と比べて、少なくとも自動車1の進行方向の前側において広くなっている。予測が可能である。
そして、車外カメラ35の検出(撮像画像70)に応じて投光部材53,53による路面描画のための投光を制御する制御部としてのCPU44は、予測範囲77を用いて、撮像画像70での検出範囲についての、少なくとも投光範囲の前外となる外側部分の路面について、路面描画の適否を判断する。ここで、CPU44は、撮像画像70による検出範囲を、複数の区間76に分割し、区間76ごとに、少なくとも自動車1のドライバへ向けた反射不足(反射光量不足による欠損部分)の有無を判断することにより、路面描画の適否を判断している。
また、CPU44は、反射不足の区画となっていて路面描画に不適と判断される路面部分を路面描画像11が通過する際に、投光部材53,53からの、路面描画像のための投光を抑制する。ここで、CPU44は、反射不足部分となっている区画76に対応する路面部分を、路面描画像11が通過する前に、投光部材53,53からの、路面描画像11のための投光を停止し、反射不足部分となっている区画76に対応する路面部分を通過した後に、投光部材53,53からの、路面描画像11のための投光を再開する。
これにより、本実施形態では、路面描画に不適と判断される路面部分を路面描画像11が通過する際には、投光部材53,53からの、路面描画像11のための投光を抑制できる。本実施形態では、十分な視認性が得られない路面部分での路面描画を抑制することができる。また、本実施形態では、該路面部分において強い反射を生じ難くなり、対向車2のドライバや、自動車1へ向かって歩行する歩行者3に対して、路面を通じて強い光を照射しないようにすることが期待できる。
【0054】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る自動車1の路面描画装置について説明する。
本実施形態は、複数の路面描画像11を同時に路面を描画する場合に、路面描画像11ごとに投光を制御し得る例について説明する。
以下において、主に上述した実施形態との相違点について説明する。
【0055】
図7は、
図2の描画制御装置21が実行する、第二実施形態での路面描画制御のフローチャートである。
描画制御装置21の制御部としてのCPU44は、
図7の路面描画制御を繰り返しに実行する。
なお、制御系20において描画制御機能が前灯制御装置22に実装されている場合、前灯制御装置22のCPUが、
図7の路面描画制御を繰り返しに実行してもよい。
ステップST1からステップST4、ステップST5からステップST11、およびステップST12は、上述した実施形態と同様である。
ただし、ステップST4の後において、CPU44は、処理をステップST21へ進める。
【0056】
ステップST21において、CPU44は、複数の路面描画像11に対応して、撮像画像70に含まれている複数の検出像73から、1つを選択する。複数の路面描画像11は、
図1、
図3に示すように、原則的に互いに重ならないように、路面の異なる部分に投光されるとよい。この場合、CPU44は、撮像画像70から、各検出像73を個別に抽出することが可能である。その後、CPU44は、処理をステップST5へ進める。この場合、CPU44は、ステップST5からステップST11の処理を、実行する。CPU44は、このステップST5からステップST11の処理は、ステップST21で選択している路面描画像11についてのみの、投光制御を実行する。ステップST7において、予測範囲77が反射不足の区画76と重なっていないと判断する場合、CPU44は、処理をステップST22へ進める。また、CPU44は、ステップST11の処理の後、処理をステップST22へ進める。
【0057】
ステップST22において、CPU44は、撮像画像70からの、検出像73の選択が終了したか否かを判断する。撮像画像70に未選択の検出像73が残っている場合、CPU44は、選択が終了していないと判断し、処理をステップST21へ戻す。この場合、CPU44は、未選択の検出像73をステップST21において選択し、ステップST5からステップST11の処理を、実行する。そして、撮像画像70に未選択の検出像73が残っていなくなると、CPU44は、選択が終了していると判断し、処理をステップST12へ進める。
【0058】
以上のように、本実施形態では、制御部としてのCPU44は、路面描画のための複数の投光パターン60を記録する記録部材としてのメモリ42から、複数の投光パターンを選択して、同時に出力させることができる。本実施形態では、複数の路面描画像11により、リッチな情報を提供することができる。
しかも、本実施形態では、同時に出力している複数の路面描画像11を1つにまとめて投光を制御するのではなく、各投光パターンに対応する路面描画像11ごとに、路面描画に不適と判断される路面部分についての通過を判断し、投光を制御することができる。これにより、本実施形態では、複数の路面描画像11を同時に描画することにより広い範囲の路面に対して描画することになり、複数の路面描画像11の一部が路面描画に不適と判断される路面部分を通過し易くなると考えられるが、そのような状態においても路面描画像11ごとに投光の抑制を制御することが可能である。本実施形態では、同時に描画している複数の路面描画像11を、路面描画に不適と判断される路面部分を通過する路面描画像11ごとに投光を制御して、残りの路面描画像11を維持することが可能である。
【0059】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る自動車1の路面描画装置について説明する。
以下において、主に上述した実施形態との相違点について説明する。
【0060】
本実施形態は、複数の投光パターン60が、記録部材としてのメモリ41において、グルーピング化されている場合での、路面描画像11ごとの投光制御の例について説明する。
図1の複数の投光パターン60の中では、左折指示の投光パターン61と、直進指示の投光パターン67と、右折指示の投光パターン65と、が、1つにグルーピングされている。制御部としてのCPU44は、この投光パターン60のグルーピングを利用して、路面描画像11ごとの投光を制御する。
また、
図1に示すように、左折指示の投光パターン61の路面描画像11と、直進指示の投光パターン67の路面描画像11と、右折指示の投光パターン65の路面描画像11とは、路面において異なる位置に投光され得る。
このようなグルーピングを活用することにより、CPU44は、たとえば左折指示の路面描画像11から直進指示の路面描画像11へ投光を切り替える場合においても、その切り替え直後の直進指示の路面描画像11が反射不足となってしまうことを起き難くすることが可能になる。
【0061】
図8は、
図2の描画制御装置21が実行する、第三実施形態での路面描画制御のフローチャートである。
描画制御装置21の制御部としてのCPU44は、
図8の路面描画制御を繰り返しに実行する。
なお、制御系20において描画制御機能が前灯制御装置22に実装されている場合、前灯制御装置22のCPUが、
図8の路面描画制御を繰り返しに実行してもよい。
ステップST1からステップST4、ステップST5からステップST11、およびステップST12は、上述した実施形態と同様である。
ただし、ステップST4の後において、CPU44は、処理をステップST31へ進める。
【0062】
ステップST31において、CPU44は、複数の路面描画像11に対応して、撮像画像70に含まれている複数の検出像73から、1つを選択する。また、CPU44は、選択している検出像73のグループを、メモリ41から選択する。これにより、CPU44は、検出像73のグループを選択する。なお、
図1の複数の投光パターン60において、左折指示の投光パターン61、直進指示の投光パターン67、および、右折指示の投光パターン65以外のものは、グルーピングされていない。この場合、CPU44は、検出像73に対応する単独の投光パターンを、そのグループとして選択すればよい。
【0063】
ステップST32において、CPU44は、撮像画像70における、選択したグループに属する1乃至複数の投光パターンによる路面描画のためのグループ投光範囲を抽出する。
これにより、CPU44は、たとえば
図1の右折指示の路面描画像11を投光している場合、それに対応するグループ投光範囲として、
図1の3つの路面描画像11を含む路面部分に対応する、グループ投光範囲を、撮像画像70から抽出する。
【0064】
ステップST33において、CPU44は、グループ投光範囲の将来位置を予測する。CPU44は、たとえば、自動車1が現在の車速で所定時間の移動をした場合における、グループ投光範囲の将来位置を予測してよい。
その後、CPU44は、処理をステップST7へ進める。CPU44は、将来予測したグループ投光範囲が、撮像画像に含まれる反射不足(反射光量不足による欠損部分)と重なるか否かを判断する。そして、将来予測したグループ投光範囲が反射不足部分と重なる場合、CPU44は、選択している検出像73について、ステップST8からステップST11の処理により、通過の際の光量を減らすように制御する。
その後、CPU44は、処理をステップST22へ進める。CPU44は、CPU44は、撮像画像70からの検出像73の選択が終了するまで、上述したステップST31からのグループ投光範囲に基づく制御を実行する。そして、撮像画像70に未選択の検出像73が残っていなくなると、CPU44は、選択が終了していると判断し、処理をステップST12へ進める。
【0065】
以上のように、本実施形態では、記録部材としてのメモリ41は、複数の投光パターン60の少なくとも一部について、グループ化により互いに関連付けて記録する。そして、制御部としてのCPU44は、撮像画像70から選択した検出像73に対応する投光パターンがメモリ41においてグループ化により他の投光パターンと関連付けられている場合には、その複数の投光パターンに対応する複数の路面描画像11の範囲を、グループ投光範囲とし、グループ投光範囲の全体での将来位置を予測し、路面の反射不足となっている部分との重なりを判断する。そして、グループ投光範囲の全体が、路面描画に不適と判断される路面部分を通過する場合には、CPU44は、そのグループ投光範囲の全体が通過するまで、投光を抑制するように制御することができる。
このように本実施形態では、グループ化により関連付けられている複数の投光パターンから選択される投光パターンを投光する場合には、関連付けに係る複数の投光パターンに対応する複数の路面描画像の全体(グループ投光範囲)について、路面描画に不適と判断される路面部分についての通過を判断し、投光をしないよう制御することができる。これにより、本実施形態では、グループ化により互いに関連付けて記録されている複数の投光パターンは、そのいずれかの路面描画像11が、路面描画に不適と判断される路面部分を通過することになる場合には、その全体が投光されないようにできる。通過後に路面描画像11が切り替えられた場合、その路面描画像11は、光量不足の路面部分を通過した状態で、投光され得る。
【0066】
以上の実施形態は、本発明に好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0067】
上述した実施形態では、投光部材としての投光モジュール53は、右ヘッドランプモジュール31または左ヘッドランプモジュール32において、前灯用のLED51,52と一体化されて自動車1に設けられている。
この他にもたとえば、投光部材としての投光モジュール53は、右ヘッドランプモジュール31または左ヘッドランプモジュール32とは別体として、自動車1に設けられてもよい。
また、自動車1に設ける投光モジュール53は、1つでも、3つ以上であってもよい。1つの投光モジュール53や、3つ目の投光モジュール53は、自動車の前面部の幅方向中央に設けてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…自動車(車両)、2…対向車、3…歩行者、4…水たまり、11…路面描画像、12…車線境界線、13…路肩境界線、20…制御系、21…描画制御装置、22…前灯制御装置、23…操作制御装置、24…検出制御装置、25…通信制御装置、26…車ネットワーク、31…右ヘッドランプモジュール、32…左ヘッドランプモジュール、33…ワイパー操作レバー、34…雨滴センサ、35…車外カメラ(検出デバイス)、36…GNSS受信機、37…通信デバイス、41…メモリ、42…タイマ、43…通信ポート、44…CPU(制御部)、45…入出力ポート、46…内部バス、51,52…LED、53…投光モジュール(投光部材)、60…複数の投光パターン、70…撮像画像、73…検出像、75…路面の水たまりの像、76…区画、77…予測範囲