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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115464
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】路面描画機能を有する車両
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/00 20060101AFI20240819BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240819BHJP
   B60Q 1/08 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B60Q1/00 G
G08G1/16 C
B60Q1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021179
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100182051
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 直宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 育郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 研太郎
(72)【発明者】
【氏名】木下 真
【テーマコード(参考)】
3K339
5H181
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339AA22
3K339AA43
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA21
3K339BA22
3K339CA01
3K339CA30
3K339DA01
3K339EA01
3K339EA02
3K339EA06
3K339FA05
3K339FA08
3K339GB01
3K339HA03
3K339KA01
3K339KA06
3K339KA39
3K339LA06
3K339MA01
3K339MA02
3K339MA05
3K339MB01
3K339MB05
3K339MB10
3K339MC03
3K339MC17
3K339MC38
3K339MC45
3K339MC46
3K339MC47
3K339MC48
3K339MC52
3K339MC77
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC04
5H181FF04
5H181FF24
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】車両からの路面描画を改善する。
【解決手段】路面描画機能を有する車両は、路面描画のための投光が可能な投光部材と、投光部材による路面描画のための投光を制御する制御部と、投光部材により路面に描画されている路面描画像を検出可能な検出デバイスと、を有する。制御部は、検出デバイスによる路面描画像の検出に基づいて、路面描画像における輝点の発生の有無を判断する。制御部は、路面描画像に輝点が発生している場合には、投光部材による路面描画のための投光を抑制する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の少なくとも前側の路面へ向けて路面描画のための投光が可能な投光部材と、
前記投光部材による路面描画のための投光を制御する制御部と、
前記投光部材により路面に描画されている路面描画像を検出可能な検出デバイスと、
を有し、
前記制御部は、
前記検出デバイスによる前記路面描画像の検出に基づいて、前記路面描画像における輝点の発生の有無を判断し、
路面描画像に輝点が発生している場合には、前記投光部材による路面描画のための投光を抑制する、
路面描画機能を有する車両。
【請求項2】
前記検出デバイスは、前記投光部材が路面描画のための投光をする路面を撮像する車外カメラ、であり、
前記制御部は、
前記車外カメラの撮像画像に含まれる路面描画像の検出像における最大輝度を抽出し、
前記最大輝度が閾値以上である場合には、前記投光部材による路面描画のための投光を、減光することにより抑制する、
請求項1記載の、路面描画機能を有する車両。
【請求項3】
前記制御部は、
減光後の前記投光部材による投光の照度が下限照度以下であるか否かを判断し、
前記投光部材による投光の照度が下限照度以下である場合には、前記投光部材による路面描画のための投光を、停止することにより抑制する、
請求項2記載の、路面描画機能を有する車両。
【請求項4】
前記制御部は、
前記投光部材による路面描画のための投光を、停止することにより抑制した後、
路面描画像に輝点が発生していると判断した路面部分を通過するまで、前記投光部材による路面描画のための投光停止を維持し、
路面描画像に輝点が発生していると判断した路面部分を通過した後に、前記投光部材による路面描画のための投光を再開する、
請求項3記載の、路面描画機能を有する車両。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面描画機能を有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~4では、車両から投光することにより、車両が走行している路面に各種のパターンを描画することを開示している。
このようなパターンを路面に描画することにより、車両は、そのドライバなどに対して、車両の走行に関する情報などを、路面を通じて提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-055691号公報
【特許文献2】特開2020-111284号公報
【特許文献3】特開2015-164828号公報
【特許文献4】特開2016-215877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように車両からの投光により路面に描画される路面描画像は、路面に描画すれば良いというものではない。
路面の反射特性は、様々である。また、路面には、金属性のマンホールなどが設けられることがある。また、路面には、落下物などがある可能性がある。この場合、路面描画のための投光により、車両のドライバへ向けて、想定より強い光が反射して戻る可能性がある。
【0005】
このように車両からの路面描画には、改善することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施の形態に係る路面描画機能を有する車両は、車両の少なくとも前側の路面へ向けて路面描画のための投光が可能な投光部材と、前記投光部材による路面描画のための投光を制御する制御部と、前記投光部材により路面に描画されている路面描画像を検出可能な検出デバイスと、を有し、前記制御部は、前記検出デバイスによる前記路面描画像の検出に基づいて、前記路面描画像における輝点の発生の有無を判断し、路面描画像に輝点が発生している場合には、前記投光部材による路面描画のための投光を抑制する、ものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両は、投光部材により路面に描画されている路面描画像を検出可能な検出デバイス、を有する。そして、制御部は、検出デバイスによる路面描画像の検出に基づいて、路面描画像における輝点の発生の有無を判断する。路面描画像に輝点が発生している場合には、制御部は、投光部材による路面描画のための投光を抑制する。
これにより、車両は、路面描画をする路面部分に、路面描画像による輝点が発生している場合には、投光部材による路面描画のための投光を抑制することができる。
その結果、本発明では、投光部材による路面描画のための投光により、車両のドライバへ向けて、想定より強い光を反射させてしまうことを抑制できる。このように本発明では、車両からの路面描画を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る自動車の走行状態の一例の説明図である。
図2図2は、図1の平坦な路面を走行している自動車についての、路面描画の状態の説明図である。
図3図3は、図1の自動車に設けられる制御系の説明図である。
図4図4は、図1の自動車の前端部50での、右ヘッドランプモジュールおよび左ヘッドランプモジュールの構造および配置の模式的な説明図である。
図5図5は、図1の走行状態での車外カメラの撮像画像の説明図である。
図6図6は、路面に落下物が存在する走行状態であって、車外カメラ35の撮像画像70に輝点が発生している場合の説明図である。
図7図7は、図3の描画制御装置が実行する、路面描画制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車1の走行状態の一例の説明図である。
図1には、片側一車線の道路を走行する自動車1が示されている。自動車1は、車両の一例である。車両には、この他にもたとえば、バス、トラック、モータサイクル、パーソナルモビリティ、などがある。なお、自動車1は、運転支援を含む自動運転により走行可能なものでもよい。
【0011】
このような走行環境において、自動車1のドライバは、たとえば自動車1の進行方向である前側などに注意を払いながら道路の車線を逸脱しないように操作して、自動車1を走行させる。また、自動車1は、走行環境が暗い場合、前灯を点灯させてよい。図1には、破線により、前灯の照射範囲18が示されている。
【0012】
ところで、このような自動車1では、自動車1から路面に対して可視光を照射して、図形を描画することについての研究開発が進められている。
たとえば、図1には、道路標識などを模した簡易図形による路面描画像11、自車車線の左右両側に沿って延在する車線境界線12、自車の路肩側の側方に描画される路肩境界線13、が示されている。ここで、路面描画像11は、自車のドライバなどのために、自車の進行方向前方に描画されている。車線境界線12と路肩境界線13とは、路肩の歩行者や対向車2へ向けて描画されている。
また、図1の右側には、路面描画像11の元になる複数の投光パターン60が示されている。ここでは、左折指示の投光パターン61、直進指示の投光パターン67、右折指示の投光パターン65、制限速度の投光パターン62、停止位置を示すための投光パターン63、横断禁止を示すための投光パターン64、右折指示の投光パターン65、積雪や凍結の注意喚起のためのピクトグラムによる投光パターン66、が例示されている。自動車1は、複数の投光パターン60から、自車の走行状態や走行環境に応じたものを選択し、その投光パターンに対応する投光を実行すればよい。
この路面描画像11などのパターンを路面に描画することにより、自動車1は、そのドライバなどに対して、自動車1の走行に関する情報などを、路面を通じて提供することができる。
【0013】
しかしながら、このように自動車1からの投光により路面に描画される路面描画像11は、路面に描画すれば良いというものではない。
路面の反射特性は、様々である。また、路面には、金属性のマンホールなどが設けられることがある。また、路面には、落下物などがある可能性がある。これらの走行環境の場合、路面描画のための投光により、自動車1のドライバへ向けて、想定より強い光が反射して戻る可能性がある。
【0014】
図2は、図1の平坦な路面を走行している自動車1についての、路面描画の状態の説明図である。
この場合、自動車1は、平坦な路面部分91を走行しながら、道路の路面に投光することにより路面描画像11を描画する。自動車1は、基本的に予め定められた離間距離D1で自車から離れた位置に、路面描画像11を描画する。
そして、図2において路面描画像11が描画されている路面部分に、金属性のマンホールや高反射率の落下物があると、それにより反射された強い光が、自動車1のドライバへ向けて反射される可能性がある。
【0015】
このように車両からの路面描画には、改善することが求められる。
【0016】
図3は、図1の自動車1に設けられる制御系20の説明図である。
図3の自動車1の制御系20は、複数の制御装置と、それらが接続される車ネットワーク26と、を有する。
【0017】
車ネットワーク26は、自動車1のためのたとえばCAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)に準拠した有線の通信ネットワークでよい。車ネットワーク26は、LANなどの通信用ネットワークでも、これらを組み合わせたものであってもよい。車ネットワーク26の一部には、無線方式の通信ネットワークが含まれてよい。車ネットワーク26に接続される上述した各種の機器は、車ネットワーク26を通じて、情報を相互に送受できる。
【0018】
また、図3には、複数の制御装置の例として、描画制御装置21、前灯制御装置22、操作制御装置23、検出制御装置24、通信制御装置25、が示されている。車ネットワーク26には、これ以外の制御装置、たとえば走行制御装置、空調制御装置などが接続されてよい。また、図3に示す各制御装置などは、複数に分割されて、車ネットワーク26に接続されてよい。
【0019】
前灯制御装置22には、自動車1の前端部50に設けられる右ヘッドランプモジュール31、左ヘッドランプモジュール32、が接続される。右ヘッドランプモジュール31、および左ヘッドランプモジュール32は、自動車1の前側へ投光する前灯部材である。
また、本実施形態の右ヘッドランプモジュール31、および左ヘッドランプモジュール32は、後述するように路面描画のための投光モジュール53を有する。本実施形態において、右ヘッドランプモジュール31の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32の投光モジュール53とは、走行中の自動車1において路面描画のための投光をして、走行中の自動車1の周囲の路面に路面描画像11を描画可能な投光部材として機能する。
前灯制御装置22は、車ネットワーク26を通じて取得する、不図示のランプ操作レバーの操作の情報や不図示のオートライト用の光量センサの検出値の情報に応じて、右ヘッドランプモジュール31の点灯状態、および左ヘッドランプモジュール32の点灯状態を制御する。ランプ操作レバーには、一般的に、ロービーム点灯、ハイビーム点灯、消灯、の操作状態が設定可能になっている。
そして、前灯制御装置22は、右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32の点灯状態の情報を、車ネットワーク26を通じて他の制御装置へ出力してよい。
【0020】
操作制御装置23には、ドライバなどの乗員が操作するための各種の操作部材が接続される。図3には、操作部材として、ワイパー操作レバー33が例示されている。ワイパー操作レバー33は、自動車1のフロントガラスの外面をワイプする不図示のワイパー装置の動作を操作するためのレバーである。ワイパー操作レバー33には、一般的に、間欠駆動、連続駆動、高速な連続駆動、停止、の操作状態が設定可能になっている。
そして、操作制御装置23は、ワイパー操作レバー33などの各種の操作部材の操作状態の情報を、車ネットワーク26を通じて、などの他の制御装置へ出力してよい。
【0021】
検出制御装置24には、自動車1の走行状態や走行環境などを検出するための各種の検出部材が接続される。図3には、検出部材として、加速度センサ34、車外カメラ35、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機36、が例示されている。
そして、検出制御装置24は、加速度センサ34の検出情報などを、車ネットワーク26を通じて他の制御装置へ出力してよい。
【0022】
加速度センサ34は、走行する自動車2の加速度を検出する。加速度センサ34は、3軸方向の加速度を検出するものでよい。
検出制御装置24は、加速度センサ34の3軸方向の加速度から、ロール、ピッチ、ヨーの各方向での角速度、自車の移動速度や移動方向などの情報を生成してよい。
【0023】
車外カメラ35は、図1に示すように、自動車1のフロントガラスの内側となる車室の上部において、前向きに設けられる。このような車外カメラ35は、自動車1のドライバの視線と略同じ高さ位置から、自動車1の進行方向である前側を撮像することができる。なお、車外カメラ35は、360度カメラでも、ステレオカメラでも、よい。
そして、車外カメラ35の撮像画像には、路面に投光により描画されている路面描画像11が、その検出像として含まれ得る。
このように自動車1に設けられる車外カメラ35は、投光部材53により路面に描画されている路面描画像11を検出可能な検出デバイスとして機能できる。
この場合、車外カメラ35は、投光部材53,53が路面描画のための投光をする路面を撮像する。
【0024】
GNSS受信機36は、不図示のGNSS衛星からの電波を受信し、GNSS受信機36が設けられる自動車1の位置および時刻の情報を生成する。
【0025】
通信制御装置25には、通信デバイス37が接続される。通信デバイス37は、不図示の基地局などを通じてサーバ装置との間で情報を送受する。基地局は、たとえば5G用の基地局、ADAS(Advanced Driver Assistance Systems)やITS(Intelligent Transport Systems)用の基地局でよい。5G用の基地局には、サーバ装置の機能を実装可能なものがある。また、通信デバイス37は、V2X(Vehicle to X)通信により、直接的には他の自動車1などとの間で通信してもよい。
そして、通信制御装置25は、車ネットワーク26から取得する情報を通信デバイス37から基地局またはサーバ装置へ送信したり、通信デバイス37が基地局またはサーバ装置から受信する情報を車ネットワーク26へ出力したり、してよい。
【0026】
描画制御装置21は、メモリ41、タイマ42、通信ポート43、入出力ポート45、CPU44、および、これらが接続される内部バス46、を有する。制御系20に設けられる制御装置は、基本的に、描画制御装置21と同様の構造を備えてよい。
【0027】
入出力ポート45には、右ヘッドランプモジュール31、左ヘッドランプモジュール32、が接続される。
【0028】
通信ポート43は、車ネットワーク26に接続される。通信ポート43は、車ネットワーク26から情報を取得し、描画制御装置21が出力する情報を、車ネットワーク26へ出力する。
【0029】
タイマ42は、時間または時刻を計測する。タイマ42の時刻は、GNSS受信機36により生成される時刻により校正されてよい。
【0030】
メモリ41は、たとえば半導体メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)、などで構成されてよい。HDDは、不揮発性メモリである。RAMは、揮発性メモリである。メモリ41は、CPU44が実行するプログラム、プログラム実行中に使用する各種の情報を、データとして記録する。メモリ41は、たとえば図1に示す複数の投光パターン60のデータを記録する。
【0031】
CPU44は、メモリ41に記録されているプログラムを読み込んで実行する。これにより、CPU44は、描画制御装置21の制御部として機能する。本実施形態において、CPU44は、投光部材53,53による路面描画のための投光を制御する制御部として機能する。
制御部としてのCPU44は、描画制御装置21の動作を制御する。また、制御部としてのCPU44は、通信ポート43を通じて、右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32へ信号を出力する。これにより、制御部としてのCPU44は、右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32に設けられる路面描画のための投光モジュール53を制御する。右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32は、路面描画のための投光パターンで点灯する。路面には、たとえば図1に示すように、投光パターンに対応した路面描画像11が描画され得る。
このように制御部としてのCPU44は、検出デバイスとしての車外カメラ35の検出(撮像画像)に応じて、投光部材53,53による路面描画のための投光を制御することができる。
【0032】
図4は、図1の自動車1の前端部50での、右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32の構造および配置の模式的な説明図である。
図4には、自動車1の前端部50が示されている。
【0033】
自動車1の前端部50の右端には、右ヘッドランプモジュール31が設けられる。右ヘッドランプモジュール31は、ロービーム用の複数のLED(Light Emitting Diode)51、ハイビーム用の複数のLED52、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)式の投光モジュール53、を有する。
自動車1の前端部50の左端には、左ヘッドランプモジュール32が設けられる。右ヘッドランプモジュール31は、ロービーム用の複数のLED51、ハイビーム用の複数のLED52、MEMS式の投光モジュール53、を有する。
なお、投光モジュール53は、この他にもたとえば、DMD(Digital Micromirror Device)方式のものでもよい。
【0034】
MEMS式の投光モジュール53は、投光部材であり、たとえば、三色光源の光をMEMS素子により反射して投光するものであればよい。MEMS素子は、画像信号により反射状態が制御され得る。
また、右ヘッドランプモジュール31または左ヘッドランプモジュール32は、MEMS式の投光モジュール53以外の画像を路面に描画できるものを用いてもよい。
MEMS式の投光モジュール53は、ロービーム用の複数のLED51およびハイビーム用の複数のLED52の全体による照射範囲の内側に投光できるとともに、外側にも投光できるものでよい。図1の歩行者へ横断禁止を示すための描画パターンの一部は、ロービーム用の複数のLED51およびハイビーム用の複数のLED52の全体による照射範囲の外側にある。
【0035】
そして、図4では、右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53が協働して投光して、路面に、右折指示の投光パターン65に対応する、右折指示のための路面描画像11が描画されている。なお、路面描画像11は、2つの投光モジュール53,53が投光可能な範囲において任意の位置および任意のサイズに描画することができる。
なお、図4では、右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32のMEMS式の投光モジュール53とは、個別に、複数の路面描画像11を路面に描画してもよい。
制御部としてのCPU44は、右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32のMEMS式の投光モジュール53とを、投光パターンにしたがって制御することにより、投光パターンに対応する路面描画像11を路面に描画することが可能である。このように右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32のMEMS式の投光モジュール53とは、投光パターンにしたがって、自動車1の少なくとも前側の路面へ向けて路面描画のための投光が可能な投光部材として機能できる。
【0036】
図5は、図1の走行状態での車外カメラ35の撮像画像70の説明図である。
図5の撮像画像70は、図1の走行状態での、自動車1の車外カメラ35により撮像されたものである。図5において、CPU44は、投光モジュール53,53による投光を実行して、路面に路面描画像11を描画している。
このため、図2の撮像画像70には、自動車1が走行している道路とともに、その道路の路面に描画されている路面描画像11の検出像76が含まれている。
車外カメラ35の撮像画像70は、自動車1のドライバの視線と略同じ高さ位置から、自動車1の進行方向である前側の路面を見た画像となり得る。
この場合、自動車1のドライバは、路面に描画されている路面描画像11を容易に視認して、その表示内容を理解することができる。
【0037】
図6は、路面に落下物15が存在する走行状態であって、車外カメラ35の撮像画像70に輝点が発生している場合の説明図である。
路面には、図4に示すように、落下物15が存在することがある。
図6の撮像画像70は、このように路面に落下物15が存在する走行状態での、自動車1の車外カメラ35により撮像されたものである。図6において、CPU44は、投光モジュール53,53による投光を実行して、路面に路面描画像11を描画している。
また、図6の撮像画像70では、落下物15による輝点77が発生している。輝点77は、路面描画像11の検出像70の内側において発生している。その結果、路面描画像11は、描画パターンに対して完全に対応したものとして描画されていない。路面描画像11の左折指示の矢印の先端部分は、輝点77により、自動車1のドライバから視認し難くなっている。この場合、自動車1のドライバは、路面描画像11を一瞥するだけでは、左折の矢印を容易に認識し難いと予想される。
【0038】
図7は、図3の描画制御装置21が実行する、路面描画制御のフローチャートである。
描画制御装置21の制御部としてのCPU44は、の路面描画制御を繰り返しに実行する。
なお、制御系20において描画制御機能が前灯制御装置22に実装されている場合、前灯制御装置22のCPUが、制御部として、の路面描画制御を繰り返しに実行してよい。
【0039】
ステップST1において、路面描画のための投光を制御するCPU44は、路面描画の要否を判断する。路面描画の要求は、制御系20の各種の制御装置により生成されてよい。たとえば、前灯制御装置22が、前灯を点灯させる場合、路面描画を要求する情報を生成して、車ネットワーク26を通じて描画制御装置21へ出力してよい。路面描画の要求がある場合、CPU44は、処理をステップST2へ進める。路面描画の要求がない場合、CPU44は、本制御を終了する。
【0040】
ステップST2において、CPU44は、メモリ41に記録されている複数の投光パターン60から、路面描画に使用する投光パターンを選択する。CPU44は、複数の投光パターンを選択してもよい。
【0041】
ステップST3において、CPU44は、路面描画のための投光を開始する。CPU44は、右ヘッドランプモジュール31の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32の投光モジュール53とを制御して、ステップST2で選択した投光パターンにしたがう光を、路面に照射する。これにより、路面には、投光パターンに対応する路面描画像11が描画される。
【0042】
ステップST4において、CPU44は、車外カメラ35から、最新の撮像画像70を取得する。
【0043】
ステップST5において、CPU44は、ステップST4で取得した最新の撮像画像70に基づいて、路面描画像11の検出像76の輝点を抽出する。
CPU44は、たとえば、撮像画像70において、投光パターンと類似する像部分を、路面描画像11の検出像76として切り出す。
次に、CPU44は、切り出した検出像76において、最大輝度の画素を選択する。
次に、CPU44は、選択した画素の輝度値を、撮像画像70から取得する。
これにより、CPU44は、最新の撮像画像70における路面描画像11の検出像76の輝点を抽出することができる。
【0044】
ステップST6において、CPU44は、ステップST5で抽出した検出像76の輝点が、減光を必要とする輝点であるか否かを判断する。
CPU44は、ステップST5で抽出した検出像76の輝度値と、所定の閾値とを比較することにより、検出像76の輝点が、減光を必要とする輝点であるか否かを判断してよい。
ここで、閾値は、固定的な値でもよいが、たとえば自動車1の走行環境に応じて変動させるとよい。
たとえば、昼間に走行している自動車1では、太陽光の環境下で路面描画像11を視認可能な照度が得られるように、投光する必要がある。これに対し、夜間に走行をしている自動車1では、前灯の環境下で路面描画像11を視認可能な照度が得られるように、投光する必要がある。これらの間で路面描画像11が視認可能な照度は異なると考えられる。したがって、輝点と判断するための閾値も、自動車1の走行環境に応じて変動させるとよい。
また、輝点と判断するための閾値は、自動車1のドライバが路面描画像11を視認し難くなるような明るさに対応する値またはそれより暗い値とするとよい。これにより、ドライバの防眩を効果的に予防し得ると考えられる。
そして、検出像76の輝点が、閾値に基づいて減光を必要とする輝点であると判断する場合、CPU44は、処理をステップST7へ進める。
これに対し、検出像76の輝点が、閾値に基づいて減光を必要とする輝点であると判断しない場合、CPU44は、処理をステップST12へ進める。
なお、ここでは、図6のように路面描画像11の検出像76の一部に輝点77が生じている場合を主に説明している。ただし、上述したステップST5からステップST6の判定処理は、路面の反射により路面描画像11の検出像76の全体が輝点77のようになっている場合においても、同様に処理することができる。
【0045】
ステップST7において、CPU44は、投光部材53による路面描画のための投光を、減光する。
これにより、CPU44は、検出像76の最大輝度が、投光部材53の投光に基づいて予想される閾値以上の輝度となっている場合には、投光部材53による路面描画のための投光を、減光することにより抑制することができる。
【0046】
ステップST8において、CPU44は、減光後の投光部材53による投光の照度が、下限照度以下であるか否かを判断する。
ここで、下限照度の値は、基本的に自車のドライバが現時点での走行環境下で路面描画像11を視認可能となる程度に対応する値であればよい。下限照度は、たとえば昼夜で切り替えてよい。
すなわち、路面描画像11は、昼間、太陽光の環境下でドライバが視認可能となる必要がある。
これに対し、路面描画像11は、夜間、自車の前灯の環境下でドライバが視認可能となる必要がある。
下限照度の値は、自動車1の走行環境に応じて変動してよい。
そして、減光後の投光部材53による投光の照度が、下限照度以下である場合、CPU44は、処理をステップST9へ進める。
これに対し、減光後の投光部材53による投光の照度が、下限照度以下でない場合、CPU44は、処理をステップST12へ進める。
【0047】
ステップST9において、CPU44は、減光後の投光部材53による投光の照度が下限照度以下であって、路面描画像11をドライバが視認し難くなっていると予想されるため、投光部材53による路面描画のための投光を、停止する。
これにより、CPU44は、減光後の投光部材53による投光の照度が下限照度以下となっている場合には、投光部材53による路面描画のための投光を、停止することにより抑制できる。
【0048】
ステップST10において、CPU44は、停止している投光部材53による路面描画のための投光を再開するタイミングを判断する。
ここでは、CPU44は、輝点が発生していると判断した路面部分を、自動車1が通過したか否かに基づいて、投光の再開タイミングを判断する。
この際、CPU44は、車外カメラ35の新たな撮像画像70を取得して、撮像画像70に基づいて、輝点が発生していると判断した路面部分を自動車1が通過したか否かを判断してよい。
なお、CPU44は、投光停止後の経過時間をタイマ42により計測させて、タイマ42の計測時間が閾値を超えたか否かに基づいて、投光を再開するタイミングを判断してもよい。
また、CPU44は、現在の車速と離間距離D1とに基づいて、タイマ42の計測時間についての閾値を演算してよい。
そして、輝点を発生させた路面部分を自動車1が通過したと判断しない場合、CPU44は、本処理を繰り返す。この間、路面描画のための投光は、停止し続ける。
輝点が発生していると判断した路面部分を自動車1が通過したと判断すると、CPU44は、処理をステップST11へ進める。
【0049】
ステップST11において、CPU44は、投光部材53による路面描画のための投光を再開する。
これにより、CPU44は、投光部材53による路面描画のための投光を、停止することにより抑制した後、路面描画像11に輝点76が発生していると判断した路面部分を通過するまで、投光部材53による路面描画のための投光停止を維持することができる。また、CPU44は、路面描画像11に輝点77が発生していると判断した路面部分を通過した後に、投光部材53による路面描画のための投光を再開することができる。
【0050】
ステップST12において、CPU44は、描画を終了するか否かを判断する。CPU44は、たとえば路面描画の要求がない場合、路面描画を終了すると判断してよい。この場合、CPU44は、処理をステップST13へ進める。
たとえば路面描画の要求が残っている場合、CPU44は、路面描画を終了しないと判断し、処理をステップST4へ戻す。この場合、CPU44は、ステップST4からステップST12の処理を繰り返して、路面描画のための制御を継続する。
この繰り返しにより、路面描画像11に輝点77が発生している場合には、CPU44は、投光部材53による路面描画のための投光を、繰り返しに減光することができる。また、その結果として、減光後の投光部材53による投光の照度が下限照度以下になると、CPU44は、投光部材53による路面描画のための投光を停止することができる。
【0051】
ステップST13において、CPU44は、路面描画のための投光を停止する。CPU44は、右ヘッドランプモジュール31の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32の投光モジュール53とを制御して、路面への投光を停止する。その後、CPU44は、本制御を終了する。
【0052】
このように、制御部としてのCPU44は、検出デバイスである車外カメラ35による路面の検出に基づいて、路面描画像11における輝点の有無を判断することができる。また、CPU44は、路面描画像11に輝点77が発生している場合には、投光部材53による路面描画のための投光を、減光または停止により抑制するように制御することができる。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る自動車1は、投光部材53により路面に描画されている路面描画像11を検出可能な検出デバイスとして車外カメラ35、を有する。そして、制御部としてのCPU44は、車外カメラ35による路面描画像11の検出に基づいて、路面描画像11における輝点の発生の有無を判断する。路面描画像11に輝点が発生している場合には、CPU44は、投光部材53による路面描画のための投光を抑制する。
これにより、自動車1は、路面描画をする路面部分に、路面描画像11による輝点が発生している場合には、投光部材53による路面描画のための投光を抑制することができる。
その結果、本実施形態では、投光部材53による路面描画のための投光により、自動車1のドライバへ向けて、想定より強い光を反射させてしまうことを抑制できる。このように本実施形態では、自動車1からの路面描画を改善することができる。
【0054】
以上の実施形態は、本発明に好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0055】
上述した実施形態では、投光部材としての投光モジュール53は、右ヘッドランプモジュール31または左ヘッドランプモジュール32において、前灯用のLED51,52と一体化されて自動車1に設けられている。
この他にもたとえば、投光部材としての投光モジュール53は、右ヘッドランプモジュール31または左ヘッドランプモジュール32とは別体として、自動車1に設けられてもよい。
また、自動車1に設ける投光モジュール53は、1つでも、3つ以上であってもよい。1つの投光モジュール53や、3つ目の投光モジュール53は、自動車の前面部の幅方向中央に設けてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…自動車(車両)、2…対向車、3…先行車、11…路面描画像、12…車線境界線、13…路肩境界線、20…制御系、21…描画制御装置、22…前灯制御装置、23…操作制御装置、24…検出制御装置、25…通信制御装置、26…車ネットワーク、31…右ヘッドランプモジュール、32…左ヘッドランプモジュール、33…ワイパー操作レバー、34…加速度センサ、35…車外カメラ、36…GNSS受信機、37…通信デバイス、41…メモリ、42…タイマ、43…通信ポート、44…CPU(制御部)、45…入出力ポート、46…内部バス、51,52…LED、53…投光モジュール(投光部材)、60…複数の投光パターン、70…撮像画像、76…路面描画像の検出像、76…輝点


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7