(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115467
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】路面描画機能を有する車両
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/00 20060101AFI20240819BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240819BHJP
B60Q 1/08 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B60Q1/00 G
G08G1/16 C
B60Q1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021182
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100182051
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 直宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 育郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 研太郎
(72)【発明者】
【氏名】木下 真
【テーマコード(参考)】
3K339
5H181
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339AA22
3K339AA43
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA21
3K339BA22
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3K339CA30
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3K339EA06
3K339FA05
3K339FA08
3K339GB01
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3K339KA06
3K339LA01
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3K339MB01
3K339MB05
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3K339MC02
3K339MC03
3K339MC26
3K339MC36
3K339MC77
3K339MC90
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF24
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】車両からの路面描画を改善する。
【解決手段】路面描画機能を有する車両は、車両の前側の路面へ向けて路面描画のための投光が可能な投光部材と、投光部材による路面描画のための投光を制御する制御部と、投光部材により路面描画像が描画される車両の前側にいる先行車との車間距離を検出可能な検出デバイスと、を有する。制御部は、検出デバイスにより検出される車間距離に応じて、投光部材により路面に描画する路面描画像の位置を変更して、先行車の後端より自車側の路面に路面描画像を描画する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前側の路面へ向けて路面描画のための投光が可能な投光部材と、
前記投光部材による路面描画のための投光を制御する制御部と、
前記投光部材により路面描画像が描画される前記車両の前側にいる先行車との車間距離を検出可能な検出デバイスと、
を有し、
前記制御部は、
前記検出デバイスにより検出される前記車間距離に応じて、前記投光部材により路面に描画する路面描画像の位置を変更して、前記先行車の後端より自車側の路面に前記路面描画像を描画する、
路面描画機能を有する車両。
【請求項2】
前記制御部は、
自車から前記路面描画像までの距離が、前記検出デバイスにより検出される前記車間距離の半分以下となるように、前記投光部材により路面に描画する路面描画像の位置を変更する、
請求項1記載の、路面描画機能を有する車両。
【請求項3】
前記制御部は、
前記検出デバイスにより検出される前記車間距離が第一閾値の二倍以下になると、前記投光部材による投光を停止して、前記路面描画像の描画を停止する、
請求項1または2記載の、路面描画機能を有する車両。
【請求項4】
前記制御部は、
前記検出デバイスにより検出される前記車間距離が前記第一閾値より大きい第二閾値の二倍以下になると、前記投光部材による投光を制御して、前記投光部材により路面に描画する路面描画像を、通常のものから光量を抑えた簡易なものへ変更する、
請求項3記載の、路面描画機能を有する車両。
【請求項5】
前記制御部は、
前記投光部材により路面に描画する路面描画像の位置を、自車のクルーズコントロールの車間設定距離に基づいて、変更する、
請求項4記載の、路面描画機能を有する車両。
【請求項6】
前記制御部は、
前記車間距離が前記第二閾値以下になって前記投光部材から投光する簡易な前記路面描画像を、前記車両が走行する自車線において前記自車線の幅方向の端部に寄せて描画する、
請求項5記載の、路面描画機能を有する車両。
【請求項7】
前記投光部材として、前記車両の右側に設けられる右投光部材と、前記車両の左側に設けられる左投光部材と、を含み、
前記制御部は、
前記自車線の幅方向の端部に寄せて描画する簡易な前記路面描画像を、前記右投光部材および前記左投光部材の中で、簡易な前記路面描画像とは反対側にある投光部材から斜めに投光する、
請求項6記載の、路面描画機能を有する車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面描画機能を有する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~4では、車両から投光することにより、車両が走行している路面に各種のパターンを描画することを開示している。
このようなパターンを路面に描画することにより、車両は、そのドライバなどに対して、車両の走行に関する情報などを、路面を通じて提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-055691号公報
【特許文献2】特開2020-111284号公報
【特許文献3】特開2015-164828号公報
【特許文献4】特開2010-211404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように車両からの投光により路面に描画される路面描画像は、必ずしも望ましいものになるとは限らない。
車両が走行する道路には、先行車などが存在することがある。この場合、路面描画像の反射により、先行車の後方視認性を損なう可能性がある。
【0005】
このように車両からの路面描画には、改善することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施の形態に係る路面描画機能を有する車両は、車両の前側の路面へ向けて路面描画のための投光が可能な投光部材と、前記投光部材による路面描画のための投光を制御する制御部と、前記投光部材により路面描画像が描画される前記車両の前側にいる先行車との車間距離を検出可能な検出デバイスと、を有し、前記制御部は、前記検出デバイスにより検出される前記車間距離に応じて、前記投光部材により路面に描画する路面描画像の位置を変更して、前記先行車の後端より自車側の路面に前記路面描画像を描画する、ものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両は、投光部材により路面描画像が描画される車両の前側にいる先行車との車間距離を検出可能な検出デバイス、を有する。そして、投光部材による路面描画のための投光を制御する制御部は、検出デバイスにより検出される車間距離に応じて、投光部材により路面に描画する路面描画像の位置を変更して、先行車の後端より自車側の路面に路面描画像を描画する。
これにより、路面描画像は、その反射光により、先行車の後方視認性を損ない難くなることが期待できる。
このように本発明では、路面描画のための投光を制御して、車両からの路面描画を改善することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る自動車の走行状態の一例の説明図である。
【
図2】
図2は、
図1の自動車に設けられる制御系の説明図である。
【
図3】
図3は、
図1の自動車の前端部での、右ヘッドランプモジュールおよび左ヘッドランプモジュールの構造および配置の模式的な説明図である。
【
図4】
図4は、
図2のメモリに記録される複数の投光パターンの組み合わせの一例の説明図である。
【
図5】
図5は、
図2の描画制御装置が実行する、第一実施形態での路面描画制御のフローチャートである。
【
図6】
図6は、
図5のステップST9の投光出力設定の詳細な制御のフローチャートである。
【
図7】
図7は、先行車との車間距離が第二閾値以上であって、通常投光パターンによる路面描画像が路面に投光されている状態での、
図2の車外カメラによる撮像画像の説明図である。
【
図8】
図8は、先行車との車間距離が第二閾値未満であって、簡易投光パターンによる路面描画像が路面に投光されている状態での、
図2の車外カメラによる撮像画像の説明図である。
【
図9】
図9は、先行車との車間距離が第一閾値以下であって、路面描画が停止されている状態での、
図2の車外カメラによる撮像画像の説明図である。
【
図10】
図10は、
図2の描画制御装置が
図5のステップST9において実行する、第二実施形態での投光出力設定の詳細な制御のフローチャートである。
【
図11】
図11は、右ヘッドランプモジュールおよび左ヘッドランプモジュールによる、路面描画像のための投光変更の説明図である。
【
図12】
図12は、第二実施形態において先行車2との車間距離が第二閾値未満であって、簡易投光パターンによる路面描画像が路面に投光されている状態での、
図2の車外カメラによる撮像画像の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0010】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る自動車1の走行状態の一例の説明図である。
図1には、片側一車線の道路を走行する自動車1が示されている。自動車1は、車両の一例である。車両には、この他にもたとえば、バス、トラック、モータサイクル、パーソナルモビリティ、などがある。なお、自動車1は、運転支援を含む自動運転により走行可能なものでもよい。
【0011】
自動車1が走行する道路の自車線の前には、先行車2が走行している。また、道路の対向車線には、対向車が走行することがある。また、路肩には、歩行者がいることがある。
このような走行環境において、自動車1のドライバは、たとえば自動車1の進行方向である前側などに注意を払いながら、自車線を逸脱しないように操作して、自動車1を走行させる。
また、自動車1は、走行環境が暗い夜間の場合、前灯を点灯させる。
【0012】
ところで、自動車1では、道路の路面に、路面描画像11を描画することが研究されている。
これにより、自動車1のドライバは、前方からの視線を大きく動かすことなく、路面に描画されている路面描画像11から、自車の走行状態や走行環境についての情報を得ることができる。たとえば
図1では、後述する左折指示の通常投光パターン61に基づく路面描画像11が、自車線の路面に描画されている。この場合、自動車1のドライバは、前方からの視線を大きく外すことなく、まもなく左折する必要があることを路面を通じて認識し、それに備えるように走行を制御することができる。
【0013】
しかしながら、このように自動車1からの投光により路面に描画される路面描画像11は、必ずしも望ましいものになるとは限らない。
たとえば、自動車1が走行する道路では、
図1に示すように、先行車2が存在することがある。この場合、先行車2へ向かう路面描画像の反射光Refが発生する可能性がある。このような反射光Refは、場合によっては、先行車2からの後方視認性を損なう可能性がある。
このように自動車1からの路面描画には、改善することが求められる。
【0014】
図2は、
図1の自動車1に設けられる制御系20の説明図である。
図2の自動車1の制御系20は、複数の制御装置と、それらが接続される車ネットワーク26と、を有する。
【0015】
車ネットワーク26は、自動車1のためのたとえばCAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)に準拠した有線の通信ネットワークでよい。車ネットワーク26は、LANなどの通信用ネットワークでも、これらを組み合わせたものであってもよい。車ネットワーク26の一部には、無線方式の通信ネットワークが含まれてよい。車ネットワーク26に接続される上述した各種の機器は、車ネットワーク26を通じて、情報を相互に送受できる。
【0016】
また、
図2には、複数の制御装置の例として、描画制御装置21、前灯制御装置22、走行制御装置23、検出制御装置24、通信制御装置25、が示されている。車ネットワーク26には、これ以外の制御装置、たとえば空調制御装置などが接続されてよい。また、
図2に示す各制御装置などは、複数に分割されて、車ネットワーク26に接続されてよい。
【0017】
前灯制御装置22には、自動車1の前端部50に設けられる右ヘッドランプモジュール31、左ヘッドランプモジュール32、が接続される。右ヘッドランプモジュール31、および左ヘッドランプモジュール32は、自動車1の前側へ投光する前灯部材である。
また、本実施形態の右ヘッドランプモジュール31、および左ヘッドランプモジュール32は、後述するように路面描画のための投光モジュール53を有する。本実施形態において、右ヘッドランプモジュール31の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32の投光モジュール53とは、自動車1の少なくとも前側の路面へ向けて路面描画のための投光が可能な投光部材として機能する。
【0018】
前灯制御装置22は、車ネットワーク26を通じて取得する、不図示のランプ操作レバーの操作の情報や不図示のオートライト用の光量センサの検出値の情報に応じて、右ヘッドランプモジュール31の点灯状態、および左ヘッドランプモジュール32の点灯状態を制御する。ランプ操作レバーには、一般的に、ロービーム点灯、ハイビーム点灯、消灯、の操作状態が設定可能になっている。
そして、前灯制御装置22は、右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32の点灯状態の情報を、車ネットワーク26を通じて他の制御装置へ出力してよい。
【0019】
走行制御装置23は、自動車1の走行を制御する。走行制御装置23は、ドライバの運転操作に基づく走行制御のための制御値を生成しても、自動運転や運転支援による走行制御のための制御値を生成してもよい。
そして、自動運転や運転支援においてクルーズコントロールを実行する場合、走行制御装置23は、たとえば自車の速度に応じたクルーズコントロールのための設定車間距離を用いて、先行車2との車間を制御してよい。車速に応じた設定車間距離の情報は、走行制御装置23の不図示のメモリに記録されてよい。
【0020】
検出制御装置24には、自動車1の走行状態や走行環境などを検出するための各種の検出部材が接続される。
図2には、検出部材として、Lidar34、車外カメラ35、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機36、が例示されている。
そして、検出制御装置24は、Lidar34の検出情報などを、車ネットワーク26を通じて他の制御装置へ出力してよい。
【0021】
Lidar34は、自動車1の前部に設けられ、自動車1の進行方向である前側をレーザで走査して、自動車1の前側の空間情報を生成する。Lidar34が生成する空間情報には、道路の路面、対向車2、歩行者などが含まれ得る。
【0022】
車外カメラ35は、
図1に示すように、自動車1のフロントガラスの内側となる車室において、前向きに設けられる。このような車外カメラ35は、自動車1の進行方向である前側を撮像することができる。なお、車外カメラ35は、自動車1に複数で設けられてもよい。複数の車外カメラ35は、自動車1の周囲を分割して撮像してよい。また、車外カメラ35は、360度カメラでも、ステレオカメラでも、よい。
そして、車外カメラ35は、自動車1の進行方向である前側を撮像する。この場合、車外カメラ35の撮像画像には、道路の路面、対向車2、歩行者などが含まれ得る。
このように、車外カメラ35とLidar34とは、投光部材53により路面描画像11が描画される自動車1の前側を検出可能な検出デバイスとして機能できる。
また、車外カメラ35とLidar34とは、投光部材53により路面描画像11が描画される自動車1の前側にいる先行車2との車間距離を検出することも可能である。
【0023】
GNSS受信機36は、複数のGNSS衛星からの電波を受信して、GNSS受信機36が設けられる自動車1の位置および時刻の情報を検出する。
【0024】
通信制御装置25には、通信デバイス37が接続される。通信デバイス37は、不図示の基地局などを通じてサーバ装置との間で情報を送受する。基地局は、たとえば5G用の基地局、ADAS(Advanced Driver Assistance Systems)やITS(Intelligent Transport Systems)用の基地局でよい。5G用の基地局には、サーバ装置の機能を実装可能なものがある。また、通信デバイス37は、V2X(Vehicle to X)通信により、直接的には他の自動車1などとの間で通信してもよい。
そして、通信制御装置25は、車ネットワーク26から取得する情報を通信デバイス37から基地局またはサーバ装置へ送信したり、通信デバイス37が基地局またはサーバ装置から受信する情報を車ネットワーク26へ出力したり、してよい。
【0025】
描画制御装置21は、メモリ41、タイマ42、通信ポート43、入出力ポート45、CPU44、および、これらが接続される内部バス46、を有する。制御系20に設けられる制御装置は、基本的に、描画制御装置21と同様の構造を備えてよい。
【0026】
入出力ポート45には、右ヘッドランプモジュール31、左ヘッドランプモジュール32、が接続される。
【0027】
通信ポート43は、車ネットワーク26に接続される。通信ポート43は、車ネットワーク26から情報を取得し、描画制御装置21が出力する情報を、車ネットワーク26へ出力する。
【0028】
タイマ42は、時間または時刻を計測する。タイマ42の時刻は、GNSS受信機36の時刻により校正されてよい。
【0029】
メモリ41は、たとえば半導体メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、RAM(Random Access Memory)、などで構成されてよい。HDDは、不揮発性メモリである。RAMは、揮発性メモリである。メモリ41は、CPU44が実行するプログラム、プログラム実行中に使用する各種の情報を、データとして記録する。メモリ41は、後述する複数の投光パターン60のデータなどを記録してよい。
【0030】
CPU44は、メモリ41に記録されているプログラムを読み込んで実行する。これにより、CPU44は、描画制御装置21の制御部として機能する。本実施形態において、CPU44は、投光部材による路面描画のための投光を制御する制御部として機能する。
制御部としてのCPU44は、描画制御装置21の動作を制御する。また、制御部としてのCPU44は、通信ポート43を通じて右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32へ信号を出力する。これにより、制御部としてのCPU44は、右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32に設けられる路面描画のための投光モジュール53を制御する。右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32は、路面描画のための投光パターンで点灯する。路面には、たとえば
図1に示すように、投光パターンに対応した複数の路面描画像11が描画され得る。
【0031】
図3は、
図1の自動車1の前端部50での、右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32の構造および配置の模式的な説明図である。
図3には、自動車1の前端部50が示されている。
【0032】
自動車1の前端部50の右端には、右ヘッドランプモジュール31が設けられる。右ヘッドランプモジュール31は、ロービーム用の複数のLED(Light Emitting Diode)51、ハイビーム用の複数のLED52、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)式の投光モジュール53、を有する。
自動車1の前端部50の左端には、左ヘッドランプモジュール32が設けられる。右ヘッドランプモジュール31は、ロービーム用の複数のLED51、ハイビーム用の複数のLED52、MEMS式の投光モジュール53、を有する。
なお、投光モジュール53は、この他にもたとえば、DMD(Digital Micromirror Device)方式のものでもよい。
【0033】
MEMS式の投光モジュール53は、たとえば、三色光源の光をMEMS素子により反射して投光するものであればよい。MEMS素子は、画像信号により反射状態が制御され得る。
また、右ヘッドランプモジュール31または左ヘッドランプモジュール32は、MEMS式の投光モジュール53以外の画像を路面に描画できるものを用いてもよい。
【0034】
そして、
図3では、右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32のMEMS式の投光モジュール53とは、協働して、1つの大きな路面描画像11を路面に描画している。
なお、右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53は、単独で投光して、路面に、投光パターンに対応する、路面描画像11を描画してもよい。
また、左ヘッドランプモジュール32のMEMS式の投光モジュール53は、単独で投光して、路面に、投光パターンに対応する、路面描画像11を描画してもよい。
制御部としてのCPU44は、右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32のMEMS式の投光モジュール53とを、投光パターンにしたがって制御することにより、投光パターンに対応する、路面描画像11を路面に描画することができる。
このように右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53と、左ヘッドランプモジュール32のMEMS式の投光モジュール53とは、投光パターンにしたがって自動車1の前側の路面へ向けて路面描画のための投光が可能な投光部材として機能できる。この場合、右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53は、自動車1の右側に設けられる右投光部材である。左ヘッドランプモジュール32のMEMS式の投光モジュール53は、自動車1の左側に設けられる左投光部材である。
【0035】
図4は、
図2のメモリ41に記録される複数の投光パターン60の組み合わせの一例の説明図である。
図4の複数の投光パターン60には、複数の通常投光パターン61~66と、各通常投光パターンに対応する複数の簡易投光パターン81~85と、が含まれる。複数の通常投光パターン61~66と複数の簡易投光パターン81~85とは、個別に選択されて、路面描画像11のために使用される投光パターンである。
図4の複数の通常投光パターン61~66には、左折指示の通常投光パターン61、制限速度の通常投光パターン62、停止位置を示すための通常投光パターン63、横断禁止を示すための通常投光パターン64、右折指示の通常投光パターン65、路肩に歩行者または自転車がいることを注意喚起するためのピクトグラムによる通常投光パターン66、が例示されている。
図4の複数の簡易投光パターン81~85には、左折指示の簡易投光パターン81、停止位置を示すための簡易投光パターン83、横断禁止を示すための簡易投光パターン84、右折指示の簡易投光パターン85、が例示されている。
ここで、左折指示の簡易投光パターン81は、左折指示の通常投光パターン61より投光面積を小さくして簡易化した投光パターンである。
停止位置を示すための簡易投光パターン83は、停止位置を示すための通常投光パターン63より投光面積を小さくして簡易化した投光パターンである。
横断禁止を示すための簡易投光パターン84は、横断禁止を示すための通常投光パターン64より投光面積を小さくして簡易化した投光パターンである。
右折指示の簡易投光パターン85は、右折指示の通常投光パターン65より投光面積を小さくして簡易化した投光パターンである。
なお、
図4には、制限速度の通常投光パターン62についての簡易投光パターンと、路肩に歩行者または自転車がいることを注意喚起するためのピクトグラムによる通常投光パターン66についての簡易投光パターンとは、含まれていない。この場合、簡易投光パターンを投光する場合には、その投光がなされないことになる。この場合、路面には、路面描画像11が描画されなくなる。
そして、自動車1の制御部としてのCPU44は、複数の投光パターン60から、走行状態や先行車2との車間距離などに基づいて、要請に係る投光パターンを選択し、その投光パターンに対応する路面描画像11を路面に描画する。
【0036】
ここで、
図1および
図3を用いて、本実施形態での路面描画制御の概要を、説明する。
図1および
図3に示すように、自動車1の右側に設けられる右投光部材としての右ヘッドランプモジュール31のMEMS式の投光モジュール53と、自動車1の左側に設けられる左投光部材としての左ヘッドランプモジュール32のMEMS式の投光モジュール53とは、自車から第三閾値LT3となる距離から、自車から第一閾値LT1となる距離までの範囲であって、自車線の幅に相当する投光範囲17において、路面に投光して路面描画像11を描画することが可能である。
そして、この自車を基準として、第三閾値LT3となる距離から第一閾値LT1となる距離までの投光範囲17は、自車から第二閾値LT2となる距離の境界により、通常投光範囲18と、近接投光範囲19とに、分けられる。
本実施形態の左右の投光モジュール53,53は、先行車2との車間距離が確保されている場合には、制御部としてのCPU44の制御の下で、通常投光範囲18に路面描画像11を描画するように投光を制御する。左右の投光モジュール53,53は、協働して、
図4の複数の投光パターン60から選択されている通常投光パターンに基づいて、通常投光範囲18への投光を実行する。これにより、自車のドライバの視線移動は抑制される。自動車1のドライバは、前方への視線を維持しながら、路面描画像11を視認して、路面描画像11により提供される情報を取得することができる。
ただし、先行車2と自車とは、常に十分な車間距離を確保できるわけではない。このため、先行車2が自車へ近づいてきた場合、左右の投光モジュール53,53は、制御部としてのCPU44の制御の下で、先行車2との車間距離に応じて、路面描画像11の投光位置を自車へ近づける。この場合、路面描画像11の投光位置は、通常投光範囲18から、近接投光範囲19へ移動してよい。
そして、左右の投光モジュール53,53は、先行車2が自車へ近づいてきているために、制御部としてのCPU44の制御の下で、先行車2への反射光Refの影響を抑制するための制御も実行する。左右の投光モジュール53,53は、近接投光範囲19へ投光する場合、
図4の複数の投光パターン60から選択されている簡易投光パターンにより投光を実行する。簡易投光パターンは、通常投光パターンより投光面積が小さい。また、左右の投光モジュール53,53は、近接投光範囲19へ投光する場合、通常投光範囲18へ投光する場合より、減光する。これらの制御により、近接投光範囲19への投光による簡易な路面描画像12から先行車2への反射光Refは、削減されることが期待できる。自車へ近づいてきている先行車2への反射光Refは、抑制され得る。
【0037】
図5は、
図2の描画制御装置21が実行する、第一実施形態での路面描画制御のフローチャートである。
描画制御装置21の制御部としてのCPU44は、
図4の路面描画制御を繰り返しに実行する。
なお、制御系20において描画制御機能が前灯制御装置22に実装されている場合、前灯制御装置22のCPUが、制御部として、
図5の路面描画制御を繰り返しに実行してよい。
【0038】
ステップST1において、路面描画のための投光を制御するCPU44は、路面描画の要否を判断する。路面描画の要求は、制御系20の各種の制御装置により生成されてよい。たとえば、前灯制御装置22が、前灯を点灯させる場合、路面描画を要求する情報を生成して、車ネットワーク26を通じて描画制御装置21へ出力してよい。路面描画の要求がある場合、CPU44は、処理をステップST2へ進める。路面描画の要求がない場合、CPU44は、本制御を終了する。
【0039】
ステップST2において、CPU44は、先行車情報を取得する。
ここで、CPU44は、検出デバイスとしての車外カメラ35の最新の撮像画像や、Lidar34による最新の空間情報を取得し、それらの情報解析により、先行車2の情報を取得してよい。
また、CPU44は、先行車2の情報として、自車から先行車2までの車間距離L1の情報を取得してよい。
これにより、CPU44は、投光部材53により路面描画像11が描画される自動車1の前側にいる先行車2との車間距離L1の情報を取得することができる。
【0040】
ステップST3において、CPU44は、ステップST2で取得した自車から先行車2までの車間距離L1が、第三閾値LT3の距離の二倍以上であるか否かを判断する。そして、車間距離L1が、第三閾値LT3の距離の二倍以上である場合、CPU44は、処理をステップST5へ進める。これに対し、車間距離L1が、第三閾値LT3の距離の二倍以上でない場合、CPU44は、処理をステップST4へ進める。
【0041】
ステップST4において、CPU44は、ステップST2で取得した自車から先行車2までの車間距離L1が、第二閾値LT2の距離の二倍以上であるか否かを判断する。そして、車間距離L1が、第二閾値LT2の距離の二倍以上である場合、CPU44は、処理をステップST5へ進める。これに対し、車間距離L1が、第二閾値LT2の距離の二倍以上でない場合、CPU44は、処理をステップST6へ進める。
【0042】
ステップST5において、CPU44は、メモリ41に記録されている複数の投光パターン60から、要求に係る通常投光パターンを選択する。その後、CPU44は、選択した通常投光パターンによる投光により路面描画像11を路面に描画するために、処理をステップST9へ進める。
【0043】
ステップST6において、CPU44は、ステップST2で取得した自車から先行車2までの車間距離L1が、第一閾値LT1の距離の二倍以下であるか否かを判断する。そして、車間距離L1が、第一閾値LT1の距離の二倍以下である場合、CPU44は、処理をステップST8進める。これに対し、車間距離L1が、第一閾値LT1の距離の二倍以下でない場合、CPU44は、処理をステップST7へ進める。
【0044】
ステップST7において、CPU44は、メモリ41に記録されている複数の投光パターン60から、要求に係る簡易投光パターンを選択する。その後、CPU44は、選択した簡易投光パターンによる投光により路面描画像11を路面に描画するために、処理をステップST9へ進める。
なお、ステップST5では、通常投光パターンを選択している。すなわち、CPU44は、車間距離L1が第一閾値LT1より大きい第二閾値LT2の二倍以下になると、路面に描画する路面描画像のための投光パターンを、通常のものから、光量を抑えた簡易なものへ変更することになる。
【0045】
ステップST8において、CPU44は、投光部材53による投光を停止して、路面描画像11の描画を停止する。
これにより、CPU44は、検出される車間距離L1が第一閾値LT1の二倍以下になると、投光部材53による投光を停止して、路面描画像11の描画を停止することができる。
その後、CPU44は、処理をステップST11へ進める。
【0046】
ステップST9において、CPU44は、投光出力のための設定処理を実行する。投光出力のための設定処理の内容については、
図6において説明する。
たとえば、CPU44は、投光部材53により路面に描画する路面描画像11の位置を、自車の走行制御装置23のクルーズコントロールの車間設定距離に基づいて、変更してよい。
【0047】
ステップST10において、CPU44は、投光部材53からの投光を開始する。CPU44は、ステップST9での投光出力設定の下で、選択した投光パターンにしたがって投光部材53から投光させる。これにより、投光出力設定に対応する位置に、投光出力設定に対応するサイズにて、路面描画像11が描画されることになる。
【0048】
ステップST11において、CPU44は、路面描画を終了するか否かを判断する。CPU44は、たとえば路面描画の要求がない場合、路面描画を終了すると判断してよい。この場合、CPU44は、処理をステップST12へ進める。
たとえば路面描画の要求が残っている場合、CPU44は、路面描画を終了しないと判断し、処理をステップST2へ戻す。この場合、CPU44は、ステップST2からステップST11までの処理を繰り返して、路面描画のための制御を継続する。
【0049】
ステップST12において、CPU44は、投光部材53を制御して、投光部材53からの路面描画像11のための投光を停止する。これにより、道路90の路面には、路面描画像11が描画されなくなる。
その後、CPU44は、本制御を終了する。
【0050】
このように、制御部としてのCPU44は、検出される先行車2との車間距離L1に応じた位置の路面に、路面描画像11を描画することができる。
ただし、車間距離L1が第一閾値LT1の二倍以下である場合には、CPU44は、路面描画像11の描画を停止する。
【0051】
図6は、
図5のステップST9の投光出力設定の詳細な制御のフローチャートである。
描画制御装置21の制御部としてのCPU44は、ステップST9の投光出力設定処理において、
図6の路面描画制御を実行する。
【0052】
ステップST21において、CPU44は、自車の走行制御装置23のクルーズコントロールの車間設定距離を取得する。クルーズコントロールの車間設定距離は、基本的に自車の速度に応じて異なる。ただし、車間設定距離は、短い場合でも、基本的に、第三閾値LT3の距離の二倍以上とされていることが多い。車間設定距離が、第三閾値LT3の距離の二倍未満となる混雑時には、走行制御装置23は、クルーズコントロールによる走行制御を一時停止するものが多い。
【0053】
ステップST22において、CPU44は、検出される車間距離L1が、クルーズコントロールの車間設定距離以上であるか否かを判断する。
そして、車間距離L1が、クルーズコントロールの車間設定距離以上である場合、CPU44は、処理をステップST23へ進める。
これに対し、車間距離L1が、クルーズコントロールの車間設定距離以上でない場合、CPU44は、処理をステップST24へ進める。
【0054】
ステップST23において、CPU44は、投光描画像11の投光位置として、クルーズコントロールの車間設定距離の半分より少し自車へ近づく位置を、設定する。ここでは、αを用いて、距離を近づけている。
このように、CPU44は、投光部材53により路面に描画する路面描画像11の位置を、自車のクルーズコントロールの車間設定距離に基づいて、変更することができる。
また、CPU44は、自車から路面描画像11までの距離が、検出される車間距離L1の半分以下となるように、投光部材53により路面に描画する路面描画像11の位置を変更することができる。
その後、CPU44は、処理をステップST26へ進める。
【0055】
ステップST24において、CPU44は、投光描画像11の投光位置として、検出される車間距離L1の半分より少し自車へ近づく位置を、設定する。ここでは、αを用いて、距離を近づけている。
このように、CPU44は、自車から路面描画像11までの距離が、検出される車間距離L1の半分以下となるように、投光部材53により路面に描画する路面描画像11の位置を変更することができる。
【0056】
ステップST25において、CPU44は、検出される車間距離L1が、第二閾値LT2の距離の二倍以下であるか否かを判断する。そして、車間距離L1が、第二閾値LT2の距離の二倍以下である場合、CPU44は、処理をステップST28進める。これに対し、車間距離L1が、第二閾値LT2の距離の二倍以下でない場合、CPU44は、処理をステップST26へ進める。
【0057】
ステップST26において、CPU44は、路面描画像11が通常投光範囲18に投光されることになるため、投光パターンに基づく路面描画像11のサイズとして、通常のサイズを選択する。
【0058】
ステップST27において、CPU44は、路面描画像11が通常投光範囲18に投光されることになるため、投光パターンに基づく路面描画像11のための投光の光量として、通常の光量を選択する。その後、CPU44は、
図6の制御を終了し、処理を、
図5のステップST10へ進める。
【0059】
ステップST28において、CPU44は、路面描画像11が近接投光範囲19に投光されることになるため、投光パターンに基づく路面描画像11のサイズとして、通常より縮小されるサイズを選択する。
【0060】
ステップST29において、CPU44は、路面描画像11が近接投光範囲19に投光されることになるため、投光パターンに基づく路面描画像11のための投光の光量として、通常より減光した光量を選択する。その後、CPU44は、
図6の制御を終了し、処理を、
図5のステップST10へ進める。
【0061】
このように、CPU44は、検出される車間距離L1に応じて、投光部材53により路面に描画する路面描画像11の位置を変更して、先行車2の後端より自車側の路面に路面描画像11を描画することができる。
【0062】
次に、投光が制御されている各種の状態について、
図2の車外カメラ35による撮像画像70を用いて説明する。
自動車1のドライバは、車外カメラ35による撮像画像70と同様の前方を視認することができる。
【0063】
図7は、先行車2との車間距離L1が第二閾値LT2以上であって、通常投光パターンによる路面描画像11が路面に投光されている状態での、
図2の車外カメラ35による撮像画像70の説明図である。
この場合、車外カメラ35による撮像画像70には、先行車2の像71とともに、通常投光パターンによる路面描画像11の像73が含まれる。
自動車1のドライバは、先行車2の方向へ視線を向けながら、路面に描画されている通常投光パターンによる路面描画像11を、容易に視認することができる。
しかも、ここでの路面描画像11の位置は、
図6のステップST23またはステップST24の処理により、少なくとも先行車2との車間距離L1の半分より少し自車へ近づく位置とされている。
その結果、路面描画像11の反射光Refは、先行車2に到達し難くなると考えられる。先行車2での後方視認性は、損なわれ難い。
【0064】
図8は、先行車2との車間距離L1が第二閾値LT2未満であって、簡易投光パターンによる簡易な路面描画像12が路面に投光されている状態での、
図2の車外カメラ35による撮像画像70の説明図である。
この場合、車外カメラ35による撮像画像70には、先行車2の像71とともに、簡易投光パターンによる簡易な路面描画像12の像74が含まれる。
自動車1のドライバは、先行車2の方向へ視線を向けながら、路面に描画されている簡易投光パターンによる簡易な路面描画像12を、比較的容易に視認することができる。
しかも、ここでの簡易な路面描画像12の位置は、
図6のステップST24の処理により、先行車2との車間距離L1の半分より少し自車へ近づく位置とされている。
また、簡易投光パターンによる簡易な路面描画像12は、通常投光パターンによる路面描画像11と比べて、投光の面積が小さく、投光の光量が抑えられている。
その結果、
図7の場合と比べて先行車2が自車へ近づいているものの、路面描画像11の反射光Refは、先行車2に到達し難くなると考えられる。先行車2での後方視認性は、損なわれ難い。
【0065】
図9は、先行車2との車間距離L1が第一閾値LT1以下であって、路面描画が停止されている状態での、
図2の車外カメラ35による撮像画像70の説明図である。
この場合、車外カメラ35による撮像画像70には、先行車2の像71のみが含まれ、投光パターンによる路面描画像11,12の像が含まれない。
その結果、
図8の場合と比べて先行車2が自車へ近づいているものの、路面描画像11,12の反射光Refは生じない。先行車2での後方視認性は、損なわれ難い。
【0066】
以上のように、本実施形態の自動車1は、投光部材53により路面描画像が描画される自動車1の前側にいる先行車2との車間距離L1を検出可能な検出デバイス35、を有する。そして、投光部材53による路面描画のための投光を制御する制御部としてのCPU44は、検出される車間距離L1に応じて、投光部材53により路面に描画する路面描画像11,12の位置を変更して、先行車2の後端より自車側の路面に路面描画像11,12を描画することができる。
これにより、路面描画像11,12は、その反射光Refにより、先行車2の後方視認性を損ない難くなることが期待できる。
このように本実施形態では、路面描画のための投光を制御して、自動車1からの路面描画を改善することが期待できる。
【0067】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る自動車1の路面描画装置について説明する。
本実施形態は、上述した実施形態とは異なる投光出力設定により、投光部材53による路面描画のための投光を実行させる。
以下において、主に上述した実施形態との相違点について説明する。
【0068】
図10は、
図2の描画制御装置21が
図5のステップST9において実行する、第二実施形態での投光出力設定の詳細な制御のフローチャートである。
描画制御装置21の制御部としてのCPU44は、
図5の路面描画制御において、
図10の路面描画制御を実行する。
なお、制御系20において描画制御機能が前灯制御装置22に実装されている場合、前灯制御装置22のCPUが、
図5の路面描画制御において、
図10の路面描画制御を実行してよい。
ステップST21からステップST29は、上述した実施形態と同様である。
ただし、路面描画像11が近接投光範囲19に投光される場合のステップST29の処理の後、CPU44は、処理をステップST31へ進める。
【0069】
ステップST31において、CPU44は、近接投光範囲19における路面描画像11の投光横位置を設定する。路面描画像11の縦位置は、ステップST24において既に設定されている。
特段の投光横位置の設定がなされない場合、路面描画像11の投光横位置は、
図1または
図3に示すように、基本的に自車線の幅方向の中央とされる。したがって、ステップST31の処理を実行しない場合、近接投光範囲19における路面描画像11の投光横位置は、自車線の幅方向の中央に設定される。
そして、CPU44は、近接投光範囲19における路面描画像11の投光横位置として、自動車1が走行する自車線において自車線の幅方向の端部へ寄せる位置を設定する。
この際、
図1のように自車線の右側に隣接車線がある場合、CPU44は、隣接車線がない右側の路肩側の端部へ寄せるように、路面描画像11の投光横位置を設定すればよい。すなわち、自車線の幅方向の一方のみに隣接車線がある場合、CPU44は、その隣接車線とは反対側の端部に寄せるように、路面描画像11の投光横位置を設定すればよい。
なお、自車線の幅方向の両側双方に隣接車線がある場合、CPU44は、路面描画像11の投光横位置を、隣接車線がない側の端部へ寄せるように設定することができない。この場合、CPU44は、投光部材53による投光を停止して、近接投光範囲19での簡易な路面描画像12の描画を停止してもよい。
【0070】
ステップST32において、CPU44は、近接投光範囲19への投光に使用する投光部材53として、左右の投光モジュール53,53の中の一方を選択する。左右の投光モジュール53,53は、右投光部材および左投光部材である。
この際、CPU44は、簡易な路面描画像12を寄せるように設定した幅方向の端部とは反対側にある投光モジュール53を選択する。たとえば、自車線の幅方向の一方のみに隣接車線がある場合、CPU44は、その隣接車線の側の投光モジュール53を選択する。
そして、このように簡易な路面描画像12に使用する投光部材として、簡易な路面描画像12を寄せる側とは反対側による投光モジュール53を選択することにより、CPU44は、
図5のステップST10の投光出力において、選択した投光モジュール53のみから、簡易な路面描画像12のための投光を実行することになる。
【0071】
図11は、右ヘッドランプモジュール31および左ヘッドランプモジュール32による、路面描画像11,12のための投光変更の説明図である。
図11は、
図3に対応している。
そして、通常の路面描画像11は、通常投光範囲18において、自車線の幅方向の中央部に描画されている。
これに対し、簡易な路面描画像12は、近接投光範囲19において、自車線の幅方向の路肩側へ寄せて描画されている。簡易な路面描画像12は、
先行車2との車間距離が段階的に短くなる場合、路面描画像11,12は、通常投光範囲18では、自車線の幅方向の中央部において自車へ近づいた後、近接投光範囲19では、自車線の幅方向の路肩側へ寄った位置において自車へ近づくように、移動することになる。
また、近接投光範囲19における簡易な路面描画像12は、それとは自車線において反対側にある右ヘッドランプモジュール31の右側の投光モジュール53のみから、投光されることにより、自車線の幅方向の路肩側へ寄った位置に描画されている。
【0072】
このように、本実施形態において、自車線の幅方向の端部に寄せて描画する簡易な路面描画像12は、左右の投光モジュール53,53の中で、簡易な路面描画像12とは反対側にある投光部材からのみから投光される。この投光は、自車線の延在方向に対して、斜めになる。
その結果、先行車2が自車線の前において自車の近くにいるとしても、簡易な路面描画像12による反射光Refは、先行車2へ向かい難くなる。また、簡易な路面描画像12による反射光Refは、隣接車線へも向かい難くなる。
【0073】
図12は、第二実施形態において先行車2との車間距離L1が第二閾値LT2未満であって、簡易投光パターンによる簡易な路面描画像12が路面に投光されている状態での、
図2の車外カメラ35による撮像画像70の説明図である。
図12は、上述した実施形態での
図8に替わるものである。
この場合、簡易投光パターンによる簡易な路面描画像12の像74は、
図8と比べて、自車線の路肩側に寄った位置に、描画されている。
【0074】
以上の実施形態は、本発明に好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【0075】
上述した実施形態では、投光部材としての投光モジュール53は、右ヘッドランプモジュール31または左ヘッドランプモジュール32において、前灯用のLED51,52と一体化されて自動車1に設けられている。
この他にもたとえば、投光部材としての投光モジュール53は、右ヘッドランプモジュール31または左ヘッドランプモジュール32とは別体として、自動車1に設けられてもよい。
また、自動車1に設ける投光モジュール53は、1つでも、3つ以上であってもよい。1つの投光モジュール53や、3つ目の投光モジュール53は、自動車の前面部の幅方向中央に設けてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…自動車(車両)、2…先行車、11…通常の路面描画像、12…簡易な路面描画像、17…投光範囲、18…通常投光範囲、19…近接投光範囲、20…制御系、21…描画制御装置、22…前灯制御装置、23…走行制御装置、24…検出制御装置、25…通信制御装置、26…車ネットワーク、31…右ヘッドランプモジュール、32…左ヘッドランプモジュール、34…Lidar、35…車外カメラ(検出デバイス)、36…GNSS受信機、37…通信デバイス、41…メモリ、42…タイマ、43…通信ポート、44…CPU(制御部)、45…入出力ポート、46…内部バス、51,52…LED、53…投光モジュール(投光部材)、60…複数の投光パターン、61~66…通常投光パターン、81~85…簡易投光パターン、70…撮像画像70、71…先行車の像、73…通常路面描画像の検出像、74…簡易路面描画像の検出像、L1…先行車との車間距離、LT1…第一閾値の距離、LT2…第二閾値の距離、LT3…第三閾値の距離、Ref…路面描画像の反射光