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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115474
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】断熱保温ボトル
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/38 20060101AFI20240819BHJP
   A47J 41/02 20060101ALI20240819BHJP
   A47J 27/00 20060101ALI20240819BHJP
   B65D 23/00 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
B65D81/38 E
A47J41/02 102D
A47J27/00 101C
B65D23/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021193
(22)【出願日】2023-02-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】518394813
【氏名又は名称】株式会社DESIGN WORKS ANCIENT
(74)【代理人】
【識別番号】100082083
【弁理士】
【氏名又は名称】玉田 修三
(72)【発明者】
【氏名】宮下 慎司
【テーマコード(参考)】
3E062
3E067
4B002
4B055
【Fターム(参考)】
3E062AA09
3E062AB02
3E062AC10
3E062BA20
3E062BB01
3E062BB09
3E067AA03
3E067AB26
3E067BA03A
3E067BB11A
3E067BC03A
3E067BC07A
3E067CA18
3E067EA17
3E067EA32
3E067EB27
3E067FA04
3E067FC01
3E067GA13
4B002AA02
4B002BA31
4B002BA44
4B002CA31
4B055AA50
4B055BA36
4B055FB01
(57)【要約】
【課題】磁場発生源の上に載せるだけで液体内容物を加温したり保温したりすることのできる断熱保温ボトルを提供する。
【解決手段】二重壁容器10の内筒30と外筒40との相互間隙間が断熱性空間Sになっている。断熱性空間Sを、内筒30の胴体壁32の周囲にのみ形成し、二重壁容器10の底壁12をステンレスのような金属素材で一重に形成する。二重壁容器10の底壁12は、内筒30の胴体壁32に一体に形成しても別部材により形成してもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場発生源の上に載置することにより液体内容物が加熱される断熱保温ボトルであって、
内筒とこの内筒を覆う外筒とを有する二重壁容器の内筒と外筒との相互間隙間によって断熱性空間が形成され、上記二重壁容器の底壁が金属素材の一重壁でなることを特徴とする断熱保温ボトル。
【請求項2】
上記二重壁容器の底壁が、上記内筒の胴体壁に継ぎ目なく連続して一体に形成された底板部でなる請求項1に記載した断熱保温ボトル。
【請求項3】
上記内筒が、底板部と上記内筒の胴体壁の下端部とを一体に有する下部部材と、上記内筒の胴体壁の下端部を除く残余部分によって形成された上部部材と、に分割されていて、これらの下部部材と上部部材との分割箇所同士が接合されていると共に、上記下部部材に含まれる上記底板部が上記二重壁容器の底壁として構成されている請求項1に記載した断熱保温ボトル。
【請求項4】
上記内筒及び上記外筒の各胴体壁の下端開口を覆う底板部とこの底板部の周縁部から立ち上げられて上記各胴体壁の下端部同士の重なり箇所を取り囲むリブ部とを有する底板部材の上記リブ部と、上記二重壁容器の内筒及び外筒の各胴体壁の下端部同士の重なり箇所と、が接合されていると共に、底板部材に含まれる上記底板部が上記二重壁容器の底壁として構成されている請求項1に記載した断熱保温ボトル。
【請求項5】
上記二重壁容器の底壁の下側に耐熱性を有する合成樹脂素材でなる底面カバーが重ね合わされている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載した断熱保温ボトル。
【請求項6】
上記外筒の胴体壁に、封止材によって封印された空気抜き孔が設けられ、上記二重壁容器の底壁の下側に耐熱耐熱性を有する合成樹脂素材でなる底面カバーが重ね合わされていると共に、この底面カバーが上記空気抜き孔を覆うように上方に延設されている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載した断熱保温ボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱保温ボトル、特に磁場発生源の上に載置することにより液体内容物が加温される断熱保温ボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
図8は断熱保温ボトルに採用される二重壁容器10の基本的構成の従来例を説明的に示した縦断正面図である。二重壁容器10は、その基本的構成として、内筒30とこの内筒30を覆う外筒40とを有している。また、内筒30が胴体壁32と底板部33とを一体に有している。同様に、外筒40が胴体壁42と底板部43とを一体に有している。そして、内筒30及び外筒40の各胴体壁32,42の上端部同士が接合されて封止されている。内筒30や外筒40の材料としてステンレスが用いられている場合には、上記各胴体壁32,42の上端部同士の接合手段には溶接による手段が多く採用されている。図8においては溶接による封止部に符号11を付してある。
【0003】
この断熱保温ボトル100において、内筒30と外筒40との相互間隙間は断熱性空間Sとされていて、この断熱性空間Sが、二重壁容器10の製作工程中で行われる減圧処理によりほぼ真空状態に保たれている。また、従来の断熱保温ボトルでは、断熱性空間Sが、内筒30の胴体壁32の周囲及び内筒30の底板部33の下側に連続するように形成されている。
【0004】
これに対し、先行例1には、チタン又はチタン合金でなる内容器と外容器とによって真空二重瓶を構成した保温ポットについての記述がなされている(特許文献1参照)。このものでは、真空二重瓶の外側下部に電磁波発生部が配置されていて、当該真空二重瓶と電磁波発生部とが一体化された一物品を構成している。また、電磁波発生部により生じさせた磁場を利用した加温作用を内容器に及びやすくするために、外容器の底部中央を窪ませ、その窪みの中に電磁波発生部を配置することによって、内容器の底部を電磁波発生部に近接させている。
【0005】
さらに先行例2には、内外容器間を真空空間とした真空二重容器でなる保温ボトルが示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-198022号公報
【特許文献2】特開2003-135276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の状況の下でなされたものであり、それ自体は磁場発生源を備えていないけれども、磁場発生源を利用することによって液体内容物を加温したり保温したりすることのできる断熱保温ボトルを提供することを目的としている。さらに具体的には、電磁調理器などの加温原理に採用されている誘電加熱(IH)や、ケーブルを接続することなくスマートフォンなどを充電できる規格であるQi(登録商標)規格の誘導起電力を利用した磁場発生源に置くだけで、水やコーヒーなどの液体内容物を加温したり保温したりすることのできる断熱保温ボトルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る断熱保温ボトルは、磁場発生源の上に載置することにより液体内容物が加熱される断熱保温ボトルであって、内筒とこの内筒を覆う外筒とを有する二重壁容器の内筒と外筒との相互間隙間によって断熱性空間が形成され、上記二重壁容器の底壁が金属素材の一重壁でなる、というものである。
【0009】
この断熱保温ボトルによれば、二重壁容器の底壁が金属素材の一重壁でなる、という構成を備えることにより、当該断熱保温ボトルを磁場発生源の上に載置したときに、金属素材で形成されている一重壁でなる二重壁容器の底壁が磁場発生源に近接して配置される。このため、磁場発生源で生じた磁場による渦電流発生作用が二重壁容器の一重壁の底壁に及んで発熱することで断熱保温ボトルに入れた液体内容物を温めることになり、液体内容物の加温や保温に、上記した誘電加熱(IH)や上記したQi(登録商標)規格の誘導起電力を効率よく利用できるようになる。また、内筒の胴体壁の周囲にのみ形成されている断熱性空間が液体内容物を保温することに役立つ。
【0010】
本発明に係る断熱保温ボトルでは、二重壁容器の底壁の構成として様々な態様を採用することが可能である。
【0011】
その1つの態様は、上記二重壁容器の底壁が、上記内筒の胴体壁に継ぎ目なく連続して一体に形成された底板部でなる、というものである。このような二重壁容器の底壁は、金属材料にプレス成形法の1つである「深絞り成形法」を適用して内筒を有底状に成形することにより容易に形成することが可能である。したがって、この構成を採用することにより、必要になる溶接箇所の数を減らして当該断熱保温ボトルの製作コストや製作工数を削減することが可能になる。
【0012】
他の1つの態様は、上記内筒が、底板部と上記内筒の胴体壁の下端部とを一体に有する下部部材と、上記内筒の胴体壁の下端部を除く残余部分によって形成された上部部材と、に分割されていて、これらの下部部材と上部部材との分割箇所同士が接合されていると共に、上記下部部材に含まれる上記底板部が上記二重壁容器の底壁として構成されている、というものである。このような二重壁容器の底壁は、内筒の胴体壁に内向きに突き出た突起構造が設けられている場合のように、「深絞り成形法」を適用して成形することが困難な内筒を成形する場合に有益である。
【0013】
さらに他の1つの態様は、上記内筒及び上記外筒の各胴体壁の下端開口を覆う底板部とこの底板部の周縁部から立ち上げられて上記各胴体壁の下端部同士の重なり箇所を取り囲むリブ部とを有する底板部材の上記リブ部と、上記二重壁容器の内筒及び外筒の各胴体壁の下端部同士の重なり箇所と、が接合されていると共に、底板部材に含まれる上記底板部が上記二重壁容器の底壁として構成されている、というものである。このような二重壁容器の底壁は、底板部材を別途製作してその底板部を当該底壁とする場合に有益である。
【0014】
本発明では、上記二重壁容器の底壁の下側に耐熱性を有する合成樹脂素材でなる底面カバーが重ね合わされている、という構成を採用することが可能である。これによれば、底壁は一重壁であることから液体内容物の熱が直接に一重壁の底壁に伝わるが、底面カバーにより一重壁の底壁に直接に手が触れるという事態が未然に防止されるため、使用中に火傷するといった危険がなくなり、取扱い上の安全性が向上する。また、底面カバーをすることで、一重壁の底壁に伝わっている液体内容物の熱が外に逃げにくくなるので保温の効果がある。
【0015】
本発明では、上記外筒の胴体壁に、封止材によって封印された空気抜き孔が設けられ、上記二重壁容器の底壁の下側に耐熱性を有する合成樹脂素材でなる底面カバーが重ね合わされていると共に、この底面カバーが上記空気抜き孔を覆うように上方に延設されている、という構成を採用することが可能である。この構成を採用することにより、二重壁容器の製作工程中で行われる減圧処理により断熱性空間をほぼ真空状態に保つことが可能であることは勿論、減圧処理に必要な空気抜き孔や封止材が、底面カバーにより覆われて見えなくなって当該断熱保温ボトルの見栄えが向上する。また、この発明においても底面カバーにより、底壁に直接に手が触れるという事態が未然に防止されると共に、一重壁の底壁に伝わっている液体内容物の熱が外に逃げにくくなる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明に係る断熱保温ボトルは、それ自体は磁場発生源を備えていないけれども、磁場発生源を利用することによって液体内容物を加温したり保温したりすることができるようになる、という効果を奏する。このため、電磁調理器などの加温原理に採用されている誘電加熱(IH)を利用したり、あるいは、ケーブルを接続することなくスマートフォンなどを充電できる規格であるQi(登録商標)規格の誘導起電力を利用したりして、水やコーヒーなどの液体内容物を加温したり保温したりすることができるようになる、という利便性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る断熱保温ボトルの一部破断正面図である。
図2図1のII部拡大断面図である。
図3図1のIII部拡大断面図である。
図4図1のIV部拡大断面図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る断熱保温ボトルの要部を示した縦断正面図である。
図6】本発明のさらに他の実施形態に係る断熱保温ボトルの要部を示した縦断正面図である。
図7】断熱保温ボトルに入れた液体内容物を加温又は保温する場合の使用例を示した概略斜視図である。
図8】断熱保温ボトルに採用される二重壁容器の基本的構成の従来例を説明的に示した縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明の実施形態に係る断熱保温ボトル100の一部破断正面図、図2図1のII部拡大断面図、図3図1のIII部拡大断面図、図4図1のIV部拡大断面図である。
【0019】
図1に例示した断熱保温ボトル100は、内筒30とこの内筒30を覆う外筒40とを有する二重壁容器10を備えている。また、内筒30が胴体壁32と底板部33とを一体に有しているのに対して、外筒40は、胴体壁42のみを有し、底板部を有していない。
ている。そして、図2に拡大して示したように、内筒30の胴体壁32は、その上端部が外向きに開くように折れ曲がっていて、この折れ曲がり部34に外筒40の胴体壁42の上端が突き合わされ、その突き合わせ箇所イが溶接により接合されて封止されている。また、図3にも拡大して示されているように、内筒30の胴体壁32の下端部には、外筒40の胴体壁42の下端部が外側から重ね合わされ、その重なり箇所ロが溶接により接合されて封止されている。
【0020】
この断熱保温ボトル100において、内筒30と外筒40とによって形成されている二重壁容器10は、内筒30の胴体壁32と外筒40の胴体壁42との相互間隙間によって形成された断熱性空間Sを有しているけれども、この断熱性空間Sは、内筒30の胴体壁32の周囲にのみ限定して形成されている。そして、上記した内筒30の底板部33が二重壁容器10の底壁12を構成している。したがって、この実施形態において、二重壁容器10の底壁12は全面に平坦な一重壁でなる。
【0021】
図4に拡大して示したように、内筒30の胴体壁32の上端近傍箇所に、環状の内向き膨出部35が形成されていて、この内向き膨出部35の上面がパッキン座36とされている。これに対し、図1に示したように、外筒40の胴体壁42の上端部に外ねじ部材44が固定されていて、この外ねじ部材44にねじ込まれた開閉蓋50のパッキン51が、上記パッキン座36に弾接することにより、二重壁容器10の上端開口が密封状態で塞がれるようになっている。
【0022】
さらに、図1に示したように、外筒40には、その胴体壁42の下端近傍の1箇所に窪み部45が形成されている。そして、図3に拡大して示したように、この窪み部45に、封止材46によって封印された空気抜き孔47が設けられている。この空気抜き孔47は、二重壁容器10の製作工程中で行われる減圧処理により断熱性空間Sをほぼ真空状態にまで減圧するのに必要であり、封止材46は、断熱性空間Sをほぼ真空状態に保つのに必要である。また、図1のように、二重壁容器10の底壁12(内筒30の底板部33が相当している。)の下側に、シリコン樹脂のような耐熱素材でなる底面カバー60が重ね合わされ、しかも、この底面カバー60が上記空気抜き孔47を有する窪み部45を覆うように上方に延設されている。図1において、符号61は、底面カバー60の筒状の延設部を示している。この底面カバー60は、上記した窪み部45を外側から覆って見えなくすることにより、断熱保温ボトル100の見栄えを向上させることに役立っている。また、底壁12は一重壁であることから液体内容物の熱が直接に一重壁の底壁12に伝わるが、底面カバー60により一重壁の底壁60に直接に手が触れるという事態が未然に防止されるため、使用中に火傷するといった危険がなくなり、取扱い上の安全性が向上する。加えて、底面カバー60をすることで、一重壁の底壁12に伝わっている液体内容物の熱が外に逃げにくくなるので保温の効果がある。また、符号62は底面カバー60の上側に設けた凹部であり、この凹部62により一重壁の底壁12と底面カバー60との間に断熱空気層を形成することにより、さらに液体内容物の熱が外に逃げにくくなっている。
【0023】
図1に示した断熱保温ボトル100において、有底筒状の内筒30は、胴体壁32の上端近傍箇所に環状の内向き膨出部35を有していることにより、ステンレスのような金属材料を深絞り成形して製作することには困難が伴う。そこで、この実施形態では、有底筒状の内筒30の構成に一定の工夫が講じられている。すなわち、この実施形態では、内筒30を、底板部33及び胴体壁32の下端部を一体に有する下部部材37aと、胴体壁32の下端部を除く残余部分によって形成された上部部材37bとに分割し、これらの下部部材37aと上部部材37bとの分割箇所38同士を溶接により密封状態に接合してある。こうすることにより、深絞り成形を採用しなくても、内向き膨出部35を有する内筒30を成形することが可能になる。
【0024】
図5は本発明の他の実施形態に係る断熱保温ボトル100の要部を示した縦断正面図である。この実施形態では、有底筒状の内筒30における胴体壁32が、図1に示した内向き膨出部35のような内向きの突起構造を有していない。このため、ステンレスのような金属材料にプレス成形法の1つである「深絞り成形法」を適用して内筒30を有底筒状に容易に成形することが可能である。こうすることにより、内筒30の胴体壁32に継ぎ目なく連続する底板部33が一体に形成され、この底板部33によって二重壁容器10の底壁12が全面に構成される。
【0025】
図5の実施形態においても、外筒40の胴体壁42にはその下端近傍の1箇所に窪み部45が形成され、この窪み部45に、封止材46によって封印された空気抜き孔47が設けられている。この空気抜き孔47や封止材46の役割は、図1図3を参照して説明したところと同様である。また、二重壁容器10の底壁12(内筒30の底板部33が相当している。)の下側に、シリコン樹脂のような耐熱素材でなる底面カバー60が重ね合わされ、この底面カバー60が空気抜き孔47を有する窪み部45を覆うように上方に延設されている。図5において、符号61は、底面カバー60の筒状の延設部を示している。この底面カバー60による作用は、図1を参照して説明したとことろと同様である。
【0026】
図6は本発明のさらに他の実施形態に係る断熱保温ボトル100の要部を示した縦断正面図である。この実施形態では、内筒30及び外筒40が共に胴体壁32,42のみを有していて、内筒30が底板部33を有していない。そこで、二重壁容器10の底壁12を構成するために次のような工夫を講じている。すなわち、この実施形態では、別途製作した底板部材70が使用される。図6に示したように、底板部材70は、内筒30及び外筒40の各胴体壁32,42の下端開口を覆う底板部71とこの底板部71の周縁部から立ち上げられた筒状のリブ部72とを一体に有している。そして、この底板部材70のリブ部72を上記各胴体壁32,42の下端部同士の重なり箇所ロに外側から取り囲むように嵌合し、併せて、底板部71によって各胴体壁32,42の下端開口を覆わせ、その状態で重なり箇所ロにリブ部72を溶接して接合してある。これにより、底板部材70に含まれる上記底板部71が二重壁容器10の底壁12を全面に構成するようになる。
【0027】
図6の実施形態においても、外筒40の胴体壁42の下端近傍の1箇所に窪み部45が形成され、この窪み部45に、封止材46によって封印された空気抜き孔47が設けられている。この空気抜き孔47や封止材46の役割は、図1図3を参照して説明したところと同様である。また、図示していないけれども、二重壁容器10の底壁12(底板部材70の底板部71が相当している。)の下側に、シリコン樹脂のような耐熱素材でなる底面カバーが重ね合わされ、この底面カバーが上記空気抜き孔47ないし窪み部45を覆うように上方に延設されている。この底面カバーによる作用は、図1を参照して説明したとことろと同様である。
【0028】
以上説明した各実施形態において、内筒30や外筒40にはステンレスが採用されている。このため、発錆などが抑えられて耐用性が向上するという利点がある。
【0029】
また、この断熱保温ボトル100において、二重壁容器10の底壁12は、その全面がステンレス製の平坦な一重壁によって形成されている。このため、二重壁容器10の底壁12が磁場発生源に近接すると、磁場発生源で生じた磁場による渦電流発生作用が一重壁の底壁12におよび、底壁12が発熱することで二重壁容器10の液体内容物に熱が伝わって加温され、内筒30と外筒40との相互間隙間の断熱性空間Sの作用により保温される。
【0030】
図7は断熱保温ボトル100に入れた液体内容物を加温又は保温する場合の使用例を示した概略斜視図である。この使用例では、磁場発生源200として、ケーブルを接続することなくスマートフォンなどを充電できる規格であるQi(登録商標)規格の充電器を利用している。同図のように、断熱保温ボトル100を磁場発生源200としての充電器の上に載置すると、ステンレスで形成されている平坦な一重壁でなる二重壁容器10の底壁12(図1図5図6など参照)が磁場発生源200に近接して配置される。このため、Qi(登録商標)規格の誘導起電力を利用した磁場発生源200を利用して、水やコーヒーなどの液体内容物を加温したり保温したりすることが可能になる。同様の作用は、誘電加熱(IH)作用を発揮する磁場発生源の上に断熱保温ボトル100を載置することによっても発揮される。
【0031】
調査の結果、二重壁容器10の内容量が180mlの断熱保温ボトル100に25℃の水を入れ、この断熱保温ボトル100を、図7のように、スマートフォン充電時の消費電力15~18Wh程度のQi(登録商標)規格の充電器(磁場発生源200)の上に載置して30分程度放置したところ、水が25℃から60℃程度にまで加温されて昇温することを確認した。このことにより、たとえば、オフィスのデスクなどの上で、Qi(登録商標)規格の充電器の上に断熱保温ボトル100を載置しておくだけで、60℃程度に保温された白湯やコーヒーを飲んだりすることが可能になる。また、あらかじめ沸騰させた熱湯を断熱保温ボトル100に入れて60℃程度に保温することも可能である。
【0032】
上記した各実施形態に採用されている底面カバー60は、その厚さが厚すぎると、二重壁容器10の底壁12が磁場発生源200から離れすぎて満足のいく加温作用が得られなくなる。したがって、底面カバー60の厚さは、磁場発生源200による加温作用が得られる範囲内に定めておくことが望ましい。
【0033】
なお、図1図8においては、説明の便宜上、同一又は相応する要素には同一符号を付してある。
【符号の説明】
【0034】
10 二重壁容器
12 二重壁容器の底壁
30 内筒
32 内筒の胴体壁
33,71 底板部
37a 下部部材
37b 上部部材
38 下部部材と上部部材との分割箇所
40 外筒
42 外筒の胴体壁
46 封止材
47 空気抜き孔
60 底面カバー
61 延設部
70 底板部材
72 リブ部
100 断熱保温ボトル
200 磁場発生源
S 断熱性空間が
ロ 内筒の胴体壁と外筒の胴体壁との下端部同士の重なり箇所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-10-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デスクの上で、スマートフォンを充電するためのQi(登録商標)の充電器でなる磁場発生源の上に載置することにより液体内容物が加熱され、その液体内容物を飲むことが可能である断熱保温ボトルであって、
内筒とこの内筒を覆う外筒とを有する二重壁容器と、この二重壁容器の上端開口を密封状態で塞ぐことが可能な開閉蓋とを有し、
上記二重壁容器の内筒と外筒との相互間隙間によって断熱性空間が形成され、かつ、この断熱性空間が上記内筒の胴体壁の周囲にのみ形成されていると共に、上記二重壁容器の底壁が金属素材の平坦な一重壁でなり、
上記二重壁容器の底壁の下側全体に耐熱性を有する合成樹脂素材でなる底面カバーが重ね合わされていると共に、底面カバーの上側に設けられた凹部により上記底壁と底面カバーとの間に断熱空気層が形成され、且つ底面カバーの下側の周囲に接地面が設けられ、上記接地面以外の部分に凹部が設けられていることを特徴とする断熱保温ボトル。
【請求項2】
上記二重壁容器の底壁が、上記内筒の胴体壁に継ぎ目なく連続して一体に形成された底板部でなる請求項1に記載した断熱保温ボトル。
【請求項3】
上記内筒が、底板部と上記内筒の胴体壁の下端部とを一体に有する下部部材と、上記内筒の胴体壁の下端部を除く残余部分によって形成された上部部材と、に分割されていて、これらの下部部材と上部部材との分割箇所同士が接合されていると共に、上記下部部材に含まれる上記底板部が上記二重壁容器の底壁として構成されている請求項1に記載した断熱保温ボトル。
【請求項4】
上記内筒及び上記外筒の各胴体壁の下端開口を覆う底板部とこの底板部の周縁部から立ち上げられて上記各胴体壁の下端部同士の重なり箇所を取り囲むリブ部とを有する底板部材の上記リブ部と、上記二重壁容器の内筒及び外筒の各胴体壁の下端部同士の重なり箇所と、が接合されていると共に、底板部材に含まれる上記底板部が上記二重壁容器の底壁として構成されている請求項1に記載した断熱保温ボトル。
【請求項5】
上記外筒の胴体壁に、封止材によって封印された空気抜き孔が設けられ、上記二重壁容器の底壁の下側に耐熱性を有する合成樹脂素材でなる底面カバーが重ね合わされていると共に、この底面カバーが上記空気抜き孔を覆うように上方に延設されている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載した断熱保温ボトル。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱保温ボトル、特に磁場発生源の上に載置することにより液体内容物が加温される断熱保温ボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
図8は断熱保温ボトルに採用される二重壁容器10の基本的構成の従来例を説明的に示した縦断正面図である。二重壁容器10は、その基本的構成として、内筒30とこの内筒30を覆う外筒40とを有している。また、内筒30が胴体壁32と底板部33とを一体に有している。同様に、外筒40が胴体壁42と底板部43とを一体に有している。そして、内筒30及び外筒40の各胴体壁32,42の上端部同士が接合されて封止されている。内筒30や外筒40の材料としてステンレスが用いられている場合には、上記各胴体壁32,42の上端部同士の接合手段には溶接による手段が多く採用されている。図8においては溶接による封止部に符号11を付してある。
【0003】
この断熱保温ボトル100において、内筒30と外筒40との相互間隙間は断熱性空間Sとされていて、この断熱性空間Sが、二重壁容器10の製作工程中で行われる減圧処理によりほぼ真空状態に保たれている。また、従来の断熱保温ボトルでは、断熱性空間Sが、内筒30の胴体壁32の周囲及び内筒30の底板部33の下側に連続するように形成されている。
【0004】
これに対し、先行例1には、チタン又はチタン合金でなる内容器と外容器とによって真空二重瓶を構成した保温ポットについての記述がなされている(特許文献1参照)。このものでは、真空二重瓶の外側下部に電磁波発生部が配置されていて、当該真空二重瓶と電磁波発生部とが一体化された一物品を構成している。また、電磁波発生部により生じさせた磁場を利用した加温作用を内容器に及びやすくするために、外容器の底部中央を窪ませ、その窪みの中に電磁波発生部を配置することによって、内容器の底部を電磁波発生部に近接させている。
【0005】
さらに先行例2には、内外容器間を真空空間とした真空二重容器でなる保温ボトルが示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-198022号公報
【特許文献2】特開2003-135276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の状況の下でなされたものであり、それ自体は磁場発生源を備えていないけれども、磁場発生源を利用することによって液体内容物を加温したり保温したりすることのできる断熱保温ボトルを提供することを目的としている。さらに具体的には、ケーブルを接続することなくスマートフォンなどを充電できる規格であるQi(登録商標)規格の誘導起電力を利用した磁場発生源に置くだけで、水やコーヒーなどの液体内容物を加温したり保温したりすることのできる断熱保温ボトルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る断熱保温ボトルは、デスクの上で、スマートフォンを充電するためのQi(登録商標)規格の充電器でなる磁場発生源の上に載置することにより液体内容物が加熱され、その液体内容物を飲むことが可能である断熱保温ボトルであって、内筒とこの内筒を覆う外筒とを有する二重壁容器と、この二重壁容器の上端開口を密封状態で塞ぐことが可能な開閉蓋とを有し、上記二重壁容器の内筒と外筒との相互間隙間によって断熱性空間が形成され、かつ、この断熱性空間が上記内筒の胴体壁の周囲にのみ形成されていると共に、上記二重壁容器の底壁が金属素材の平坦な一重壁でなり、上記二重壁容器の底壁の下側全体に耐熱性を有する合成樹脂素材でなる底面カバーが重ね合わされていると共に、底面カバーの上側に設けられた凹部により上記底壁と底面カバーとの間に断熱空気層が形成され、且つ底面カバーの下側の周囲に接地面が設けられ、上記接地面以外の部分に凹部が設けられている、というものである。
【0009】
この断熱保温ボトルによれば、二重壁容器の底壁が金属素材の一重壁でなる、という構成を備えることにより、当該断熱保温ボトルを磁場発生源の上に載置したときに、金属素材で形成されている一重壁でなる二重壁容器の底壁が磁場発生源に近接して配置される。このため、磁場発生源で生じた磁場による渦電流発生作用が二重壁容器の一重壁の底壁に及んで発熱することで断熱保温ボトルに入れた液体内容物を温めることになり、液体内容物の加温や保温に、上記したQi(登録商標)規格の誘導起電力を効率よく利用できるようになる。また、内筒の胴体壁の周囲にのみ形成されている断熱性空間が液体内容物を保温することに役立つ。
【0010】
本発明に係る断熱保温ボトルでは、二重壁容器の底壁の構成として様々な態様を採用することが可能である。
【0011】
その1つの態様は、上記二重壁容器の底壁が、上記内筒の胴体壁に継ぎ目なく連続して一体に形成された底板部でなる、というものである。このような二重壁容器の底壁は、金属材料にプレス成形法の1つである「深絞り成形法」を適用して内筒を有底状に成形することにより容易に形成することが可能である。したがって、この構成を採用することにより、必要になる溶接箇所の数を減らして当該断熱保温ボトルの製作コストや製作工数を削減することが可能になる。
【0012】
他の1つの態様は、上記内筒が、底板部と上記内筒の胴体壁の下端部とを一体に有する下部部材と、上記内筒の胴体壁の下端部を除く残余部分によって形成された上部部材と、に分割されていて、これらの下部部材と上部部材との分割箇所同士が接合されていると共に、上記下部部材に含まれる上記底板部が上記二重壁容器の底壁として構成されている、というものである。このような二重壁容器の底壁は、内筒の胴体壁に内向きに突き出た突起構造が設けられている場合のように、「深絞り成形法」を適用して成形することが困難な内筒を成形する場合に有益である。
【0013】
さらに他の1つの態様は、上記内筒及び上記外筒の各胴体壁の下端開口を覆う底板部とこの底板部の周縁部から立ち上げられて上記各胴体壁の下端部同士の重なり箇所を取り囲むリブ部とを有する底板部材の上記リブ部と、上記二重壁容器の内筒及び外筒の各胴体壁の下端部同士の重なり箇所と、が接合されていると共に、底板部材に含まれる上記底板部が上記二重壁容器の底壁として構成されている、というものである。このような二重壁容器の底壁は、底板部材を別途製作してその底板部を当該底壁とする場合に有益である。
【0014】
本発明では、上記二重壁容器の底壁の下側に耐熱性を有する合成樹脂素材でなる底面カバーが重ね合わされている、という構成を採用している。これによれば、底壁は一重壁であることから液体内容物の熱が直接に一重壁の底壁に伝わるが、底面カバーにより一重壁の底壁に直接に手が触れるという事態が未然に防止されるため、使用中に火傷するといった危険がなくなり、取扱い上の安全性が向上する。また、底面カバーをすることで、一重壁の底壁に伝わっている液体内容物の熱が外に逃げにくくなるので保温の効果がある。
【0015】
本発明では、上記外筒の胴体壁に、封止材によって封印された空気抜き孔が設けられ、上記二重壁容器の底壁の下側に耐熱性を有する合成樹脂素材でなる底面カバーが重ね合わされていると共に、この底面カバーが上記空気抜き孔を覆うように上方に延設されている、という構成を採用することが可能である。この構成を採用することにより、二重壁容器の製作工程中で行われる減圧処理により断熱性空間をほぼ真空状態に保つことが可能であることは勿論、減圧処理に必要な空気抜き孔や封止材が、底面カバーにより覆われて見えなくなって当該断熱保温ボトルの見栄えが向上する。また、この発明においても底面カバーにより、底壁に直接に手が触れるという事態が未然に防止されると共に、一重壁の底壁に伝わっている液体内容物の熱が外に逃げにくくなる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明に係る断熱保温ボトルは、それ自体は磁場発生源を備えていないけれども、磁場発生源を利用することによって液体内容物を加温したり保温したりすることができるようになる、という効果を奏する。このため、ケーブルを接続することなくスマートフォンなどを充電できる規格であるQi(登録商標)規格の誘導起電力を利用して、水やコーヒーなどの液体内容物を加温したり保温したりすることができるようになる、という利便性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る断熱保温ボトルの一部破断正面図である。
図2図1のII部拡大断面図である。
図3図1のIII部拡大断面図である。
図4図1のIV部拡大断面図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る断熱保温ボトルの要部を示した縦断正面図である。
図6】本発明のさらに他の実施形態に係る断熱保温ボトルの要部を示した縦断正面図である。
図7】断熱保温ボトルに入れた液体内容物を加温又は保温する場合の使用例を示した概略斜視図である。
図8】断熱保温ボトルに採用される二重壁容器の基本的構成の従来例を説明的に示した縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明の実施形態に係る断熱保温ボトル100の一部破断正面図、図2図1のII部拡大断面図、図3図1のIII部拡大断面図、図4図1のIV部拡大断面図である。
【0019】
図1に例示した断熱保温ボトル100は、内筒30とこの内筒30を覆う外筒40とを有する二重壁容器10を備えている。また、内筒30が胴体壁32と底板部33とを一体に有しているのに対して、外筒40は、胴体壁42のみを有し、底板部を有していない。そして、図2に拡大して示したように、内筒30の胴体壁32は、その上端部が外向きに開くように折れ曲がっていて、この折れ曲がり部34に外筒40の胴体壁42の上端が突き合わされ、その突き合わせ箇所イが溶接により接合されて封止されている。また、図3にも拡大して示されているように、内筒30の胴体壁32の下端部には、外筒40の胴体壁42の下端部が外側から重ね合わされ、その重なり箇所ロが溶接により接合されて封止されている。
【0020】
この断熱保温ボトル100において、内筒30と外筒40とによって形成されている二重壁容器10は、内筒30の胴体壁32と外筒40の胴体壁42との相互間隙間によって形成された断熱性空間Sを有しているけれども、この断熱性空間Sは、内筒30の胴体壁32の周囲にのみ限定して形成されている。そして、上記した内筒30の底板部33が二重壁容器10の底壁12を構成している。したがって、この実施形態において、二重壁容器10の底壁12は全面に平坦な一重壁でなる。
【0021】
図4に拡大して示したように、内筒30の胴体壁32の上端近傍箇所に、環状の内向き膨出部35が形成されていて、この内向き膨出部35の上面がパッキン座36とされている。これに対し、図1に示したように、外筒40の胴体壁42の上端部に外ねじ部材44が固定されていて、この外ねじ部材44にねじ込まれた開閉蓋50のパッキン51が、上記パッキン座36に弾接することにより、二重壁容器10の上端開口が密封状態で塞がれるようになっている。
【0022】
さらに、図1に示したように、外筒40には、その胴体壁42の下端近傍の1箇所に窪み部45が形成されている。そして、図3に拡大して示したように、この窪み部45に、封止材46によって封印された空気抜き孔47が設けられている。この空気抜き孔47は、二重壁容器10の製作工程中で行われる減圧処理により断熱性空間Sをほぼ真空状態にまで減圧するのに必要であり、封止材46は、断熱性空間Sをほぼ真空状態に保つのに必要である。また、図1のように、二重壁容器10の底壁12(内筒30の底板部33が相当している。)の下側に、シリコン樹脂のような耐熱素材でなる底面カバー60が重ね合わされ、しかも、この底面カバー60が上記空気抜き孔47を有する窪み部45を覆うように上方に延設されている。図1において、符号61は、底面カバー60の筒状の延設部を示している。この底面カバー60は、上記した窪み部45を外側から覆って見えなくすることにより、断熱保温ボトル100の見栄えを向上させることに役立っている。また、底壁12は一重壁であることから液体内容物の熱が直接に一重壁の底壁12に伝わるが、底面カバー60により一重壁の底壁60に直接に手が触れるという事態が未然に防止されるため、使用中に火傷するといった危険がなくなり、取扱い上の安全性が向上する。加えて、底面カバー60をすることで、一重壁の底壁12に伝わっている液体内容物の熱が外に逃げにくくなるので保温の効果がある。また、符号62は底面カバー60の上側に設けた凹部であり、この凹部62により一重壁の底壁12と底面カバー60との間に断熱空気層を形成することにより、さらに液体内容物の熱が外に逃げにくくなっている。
【0023】
図1に示した断熱保温ボトル100において、有底筒状の内筒30は、胴体壁32の上端近傍箇所に環状の内向き膨出部35を有していることにより、ステンレスのような金属材料を深絞り成形して製作することには困難が伴う。そこで、この実施形態では、有底筒状の内筒30の構成に一定の工夫が講じられている。すなわち、この実施形態では、内筒30を、底板部33及び胴体壁32の下端部を一体に有する下部部材37aと、胴体壁32の下端部を除く残余部分によって形成された上部部材37bとに分割し、これらの下部部材37aと上部部材37bとの分割箇所38同士を溶接により密封状態に接合してある。こうすることにより、深絞り成形を採用しなくても、内向き膨出部35を有する内筒30を成形することが可能になる。
【0024】
図5は本発明の他の実施形態に係る断熱保温ボトル100の要部を示した縦断正面図である。この実施形態では、有底筒状の内筒30における胴体壁32が、図1に示した内向き膨出部35のような内向きの突起構造を有していない。このため、ステンレスのような金属材料にプレス成形法の1つである「深絞り成形法」を適用して内筒30を有底筒状に容易に成形することが可能である。こうすることにより、内筒30の胴体壁32に継ぎ目なく連続する底板部33が一体に形成され、この底板部33によって二重壁容器10の底壁12が全面に構成される。
【0025】
図5の実施形態においても、外筒40の胴体壁42にはその下端近傍の1箇所に窪み部45が形成され、この窪み部45に、封止材46によって封印された空気抜き孔47が設けられている。この空気抜き孔47や封止材46の役割は、図1図3を参照して説明したところと同様である。また、二重壁容器10の底壁12(内筒30の底板部33が相当している。)の下側に、シリコン樹脂のような耐熱素材でなる底面カバー60が重ね合わされ、この底面カバー60が空気抜き孔47を有する窪み部45を覆うように上方に延設されている。図5において、符号61は、底面カバー60の筒状の延設部を示している。この底面カバー60による作用は、図1を参照して説明したとことろと同様である。
【0026】
図6は本発明のさらに他の実施形態に係る断熱保温ボトル100の要部を示した縦断正面図である。この実施形態では、内筒30及び外筒40が共に胴体壁32,42のみを有していて、内筒30が底板部33を有していない。そこで、二重壁容器10の底壁12を構成するために次のような工夫を講じている。すなわち、この実施形態では、別途製作した底板部材70が使用される。図6に示したように、底板部材70は、内筒30及び外筒40の各胴体壁32,42の下端開口を覆う底板部71とこの底板部71の周縁部から立ち上げられた筒状のリブ部72とを一体に有している。そして、この底板部材70のリブ部72を上記各胴体壁32,42の下端部同士の重なり箇所ロに外側から取り囲むように嵌合し、併せて、底板部71によって各胴体壁32,42の下端開口を覆わせ、その状態で重なり箇所ロにリブ部72を溶接して接合してある。これにより、底板部材70に含まれる上記底板部71が二重壁容器10の底壁12を全面に構成するようになる。
【0027】
図6の実施形態においても、外筒40の胴体壁42の下端近傍の1箇所に窪み部45が形成され、この窪み部45に、封止材46によって封印された空気抜き孔47が設けられている。この空気抜き孔47や封止材46の役割は、図1図3を参照して説明したところと同様である。また、図示していないけれども、二重壁容器10の底壁12(底板部材70の底板部71が相当している。)の下側に、シリコン樹脂のような耐熱素材でなる底面カバーが重ね合わされ、この底面カバーが上記空気抜き孔47ないし窪み部45を覆うように上方に延設されている。この底面カバーによる作用は、図1を参照して説明したとことろと同様である。
【0028】
以上説明した各実施形態において、内筒30や外筒40にはステンレスが採用されている。このため、発錆などが抑えられて耐用性が向上するという利点がある。
【0029】
また、この断熱保温ボトル100において、二重壁容器10の底壁12は、その全面がステンレス製の平坦な一重壁によって形成されている。このため、二重壁容器10の底壁12が磁場発生源に近接すると、磁場発生源で生じた磁場による渦電流発生作用が一重壁の底壁12におよび、底壁12が発熱することで二重壁容器10の液体内容物に熱が伝わって加温され、内筒30と外筒40との相互間隙間の断熱性空間Sの作用により保温される。
【0030】
図7は断熱保温ボトル100に入れた液体内容物を加温又は保温する場合の使用例を示した概略斜視図である。この使用例では、磁場発生源200として、ケーブルを接続することなくスマートフォンなどを充電できる規格であるQi(登録商標)規格の充電器を利用している。同図のように、断熱保温ボトル100を磁場発生源200としての充電器の上に載置すると、ステンレスで形成されている平坦な一重壁でなる二重壁容器10の底壁12(図1図5図6など参照)が磁場発生源200に近接して配置される。このため、Qi(登録商標)規格の誘導起電力を利用した磁場発生源200を利用して、水やコーヒーなどの液体内容物を加温したり保温したりすることが可能になる
【0031】
調査の結果、二重壁容器10の内容量が180mlの断熱保温ボトル100に25℃の水を入れ、この断熱保温ボトル100を、図7のように、スマートフォン充電時の消費電力15~18Wh程度のQi(登録商標)規格の充電器(磁場発生源200)の上に載置して30分程度放置したところ、水が25℃から60℃程度にまで加温されて昇温することを確認した。このことにより、たとえば、オフィスのデスクなどの上で、Qi(登録商標)規格の充電器の上に断熱保温ボトル100を載置しておくだけで、60℃程度に保温された白湯やコーヒーを飲んだりすることが可能になる。また、あらかじめ沸騰させた熱湯を断熱保温ボトル100に入れて60℃程度に保温することも可能である。
【0032】
上記した各実施形態に採用されている底面カバー60は、その厚さが厚すぎると、二重壁容器10の底壁12が磁場発生源200から離れすぎて満足のいく加温作用が得られなくなる。したがって、底面カバー60の厚さは、磁場発生源200による加温作用が得られる範囲内に定めておくことが望ましい。
【0033】
なお、図1図8においては、説明の便宜上、同一又は相応する要素には同一符号を付してある。
【符号の説明】
【0034】
10 二重壁容器
12 二重壁容器の底壁
30 内筒
32 内筒の胴体壁
33,71 底板部
37a 下部部材
37b 上部部材
38 下部部材と上部部材との分割箇所
40 外筒
42 外筒の胴体壁
46 封止材
47 空気抜き孔
60 底面カバー
61 延設部
70 底板部材
72 リブ部
100 断熱保温ボトル
200 磁場発生源
S 断熱性空間が
ロ 内筒の胴体壁と外筒の胴体壁との下端部同士の重なり箇所