(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115477
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】シリンジ用外筒組立体、シリンジおよびプレフィルドシリンジ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20240819BHJP
A61M 5/28 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
A61M5/315 512
A61M5/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021201
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003111
【氏名又は名称】あいそう弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】寺村 一孝
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE06
4C066FF05
4C066HH14
(57)【要約】
【課題】ガスケットの摺動性が良好で、ゴム材に起因する薬剤吸着及び溶出物が少なく、ガスケット摺動時における液体のリークが少ないプレフィルドシリンジを提供する。
【解決手段】プレフィルドシリンジ1は、外筒2、ガスケット3を備えるシリンジ用外筒組立体10と内部に充填された薬液8とを備える。ガスケットは、第1環状凹部36、第2環状凹部37を備える樹脂製ガスケット本体30、第1環状凹部に装着されたゴム製の第1弾性リング部材32、第2環状凹部に装着されたゴム製の第2弾性リング部材33を備える。第1環状凹部および第2環状凹部は、ガスケット本体30の中心軸に平行な筒状凹部側面36a、37aを備える。第1弾性リング部材および第2弾性リング部材は、外筒の内面と筒状凹部側面とによる押圧により弾性変形し、外筒の内面に密接した細い帯状密接部32a,33aを備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、前記外筒内に摺動可能に収納されたシリンジ用ガスケットとを備えるシリンジ用外筒組立体であって、
前記シリンジ用ガスケットは、先端が閉塞し後端が開口する筒状体であり、かつ、後端の開口より先端側に延びる内腔部を備える樹脂製ガスケット本体と、前記ガスケット本体の外面に装着されたゴム製かつ弾性変形可能な第1弾性リング部材および第2弾性リング部材とを備え、
前記ガスケット本体は、先端側の外側面に設けられた第1環状凹部と、前記第1環状凹部より所定長後端側の外側面に設けられた第2環状凹部とを備え、
前記第1弾性リング部材および前記第2弾性リング部材は、円柱状の中実線材により、無端のリング状に形成されており、前記第1弾性リング部材は、前記第1環状凹部に拡張された状態にて装着されており、前記第2弾性リング部材は、前記第2環状凹部に拡張された状態にて装着されており、前記ガスケット本体に装着された前記第1弾性リング部材および前記第2弾性リング部材は、外周縁が、前記ガスケット本体の外周面より外方に突出しており、さらに、
前記第1環状凹部および前記第2環状凹部は、前記ガスケット本体の中心軸にほぼ平行な筒状凹部側面と、前記筒状凹部側面の上端より、前記ガスケット本体の中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる環状平坦上面と、前記筒状凹部側面の下端より、前記ガスケット本体の中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる環状平坦下面とを備え、
前記第1弾性リング部材および前記第2弾性リング部材は、前記外筒の内面と前記筒状凹部側面とによる押圧により弾性変形し、弾性変形した前記第1弾性リング部材および前記第2弾性リング部材は、前記外筒の内面に密接した細い帯状密接部を形成し、さらに、前記弾性変形した前記第1弾性リング部材および前記第2弾性リング部材の上面は、前記環状平坦上面に当接し、前記弾性変形した前記第1弾性リング部材および前記第2弾性リング部材の下面は、前記環状平坦下面に当接していることを特徴とするシリンジ用外筒組立体。
【請求項2】
前記第1環状凹部および前記第2環状凹部は、縦断面形状において、側方が開口したコの字状となった環状凹部である請求項1に記載のシリンジ用外筒組立体。
【請求項3】
前記第1環状凹部および前記第2環状凹部は、向かい合う外側環状角部と、向かい合う内側環状角部とを備える請求項1に記載のシリンジ用外筒組立体。
【請求項4】
前記向かい合う外側環状角部の少なくとも一方は、縦断面が鋭角となった環状エッジを備えている請求項3に記載のシリンジ用外筒組立体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のシリンジ用外筒組立体と、前記シリンジ用外筒組立体の前記ガスケットに装着されたもしくは装着可能なプランジャとからなるシリンジ。
【請求項6】
前記ガスケット本体は、先端が閉塞し後端が開口する筒状体であり、かつ、後端の開口より先端側に延びる内腔部と、前記内腔部に形成されたガスケット側接続部とを備え、
前記プランジャは、前記ガスケット本体の後端面を押圧可能な先端側フランジ部を有する本体部と、前記本体部より、前方に突出し、前記ガスケット本体の前記内腔部に進入可能かつ前記ガスケット側接続部と接続可能なプランジャ側接続部とを備えている請求項5に記載のシリンジ。
【請求項7】
前記プランジャ側接続部は、前記プランジャの先端部の外面に設けられた螺旋状リブを備え、前記ガスケット側接続部は、前記プランジャ側接続部の前記螺旋状リブと螺合するための螺旋状螺合部を備える請求項6に記載のシリンジ。
【請求項8】
前記ガスケット側接続部は、前記螺旋状螺合部より先端側に位置する先端側内腔部と、前記先端側内腔部と前記螺旋状螺合部間に形成され、前記ガスケット側接続部の中心方向に延びる係合用リブを備え、
前記プランジャの前記プランジャ側接続部は、前記螺旋状リブより先端側に位置し、かつ、前記ガスケット側接続部の前記係合用リブを通過後前記係合用リブと係合可能な抜け止め用係合部を備えている請求項7に記載のシリンジ。
【請求項9】
前記シリンジは、前記外筒の先端開口部を封止する封止部材と、前記外筒内に形成された薬剤収納部に収納された薬剤とを備えている請求項5に記載のプレフィルドシリンジ。
【請求項10】
前記シリンジは、前記外筒の先端開口部を封止する封止部材と、前記外筒内に形成された薬剤収納部に収納された薬剤とを備えている請求項6、請求項7または請求項8に記載のプレフィルドシリンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジ用外筒組立体、シリンジおよび予め薬液が充填されたプレフィルドシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より多くのシリンジが使用されており、最近では、シリンジポンプに装着されて使用されるケースも多い。また、予め薬液が充填されたプレフィルドシリンジも近年多く利用されている。シリンジには、外筒内を液密状態にて摺動可能なガスケットが収納されている。ガスケットは、一般的に、弾性材料、特に、ゴム材を用いるものが多い。ゴム材を含む弾性材料は、一般的な合成樹脂より、薬剤吸着が高く、また溶出物が生じるおそれがあり、さらに材料コストも高いと言われている。
ガスケットとして、ガスケット本体と、ガスケット本体の側面に設けられた弾性リング部材を備えるものが提案されている。このようなタイプのものでガスケット本体を合成樹脂により形成すれば、全体を弾性材料により形成したガスケットより、薬剤吸着を減少させること、および弾性材料と薬液との接触面積を減らせることで弾性部材からの溶出物を軽減させることができる。
【0003】
ガスケットとして、ガスケット本体と、ガスケット本体の側面に設けられた弾性リング部材を備えるものとして、例えば、特許第7012936号公報(特許文献1)のものがある。
特許第7012936号公報のガスケット10は、シリンジバレル(1)内に圧入され、摺動状態で用いられる注射器用のガスケットである。ガスケット10は、シリンジバレル1の内径Dより細く、且つ前記シリンジバレル1に充填される注射液30に対して耐薬液性を有する硬質プラスチックで形成され、その外周全周にわたって凹設された凹溝18と、凹溝18から離れた接液面14側の端部の外周面に段状に形成されたリング装着部12とを含む本体部分11と、凹溝18に嵌め込まれ、シリンジバレル1の内周面2に摺接する摺接リング19と、ポリテトラフルオロエチレンで構成され、リング装着部12に装着されてシリンジバレル1の内周面2に摺接する止水リング13とで構成されている。凹溝18の接液面側の端部とリング装着部12のロッド側の端面との間に隔壁11kが設けられており、隔壁11kを介して互いに離間して設置された止水リング13と摺接リング19との間に隔壁11kの幅の空隙20が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許第7012936号公報のものでは、摺接リング19の幅が広く、かつ、圧迫時における変形を吸収する部分が、ガスケット本体とバレル間にしかなく、変形時には、バレル(外筒)との接触面積が増加し、ガスケット本体とバレル間により、押圧される部分も増加するため、高い摺動抵抗を有するものとなる。さらに、シリンジバレル1の内周面2に摺接するポリテトラフルオロエチレンで構成された止水リング13もガスケット移動時における摺動抵抗を生じる。
そこで、本発明の目的は、ガスケット本体を合成樹脂により形成したガスケット本体とその外周に設けられたゴム製の弾性リング部材を備えるガスケットを用いたシリンジ用外筒組立体であって、ガスケットの摺動性が良好であり、ゴム材に起因する薬剤吸着が少なく、またゴム材からの溶出物が少なく、さらに、保管時およびガスケット摺動時における液体のリークが少ないシリンジ用外筒組立体、シリンジおよび予め薬液が充填されたプレフィルドシリンジを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 外筒と、前記外筒内に摺動可能に収納されたシリンジ用ガスケットとを備えるシリンジ用外筒組立体であって、
前記シリンジ用ガスケットは、先端が閉塞し後端が開口する筒状体であり、かつ、後端の開口より先端側に延びる内腔部を備える樹脂製ガスケット本体と、前記ガスケット本体の外面に装着されたゴム製かつ弾性変形可能な第1弾性リング部材および第2弾性リング部材とを備え、
前記ガスケット本体は、先端側の外側面に設けられた第1環状凹部と、前記第1環状凹部より所定長後端側の外側面に設けられた第2環状凹部とを備え、
前記第1弾性リング部材および前記第2弾性リング部材は、円柱状の中実線材により、無端のリング状に形成されており、前記第1弾性リング部材は、前記第1環状凹部に拡張された状態にて装着されており、前記第2弾性リング部材は、前記第2環状凹部に拡張された状態にて装着されており、前記ガスケット本体に装着された前記第1弾性リング部材および前記第2弾性リング部材は、外周縁が、前記ガスケット本体の外周面より外方に突出しており、さらに、
前記第1環状凹部および前記第2環状凹部は、前記ガスケット本体の中心軸にほぼ平行な筒状凹部側面と、前記筒状凹部側面の上端より、前記ガスケット本体の中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる環状平坦上面と、前記筒状凹部側面の下端より、前記ガスケット本体の中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる環状平坦下面とを備え、
前記第1弾性リング部材および前記第2弾性リング部材は、前記外筒の内面と前記筒状凹部側面とによる押圧により弾性変形し、弾性変形した前記第1弾性リング部材および前記第2弾性リング部材は、前記外筒の内面に密接した細い帯状密接部を形成し、さらに、前記弾性変形した前記第1弾性リング部材および前記第2弾性リング部材の上面は、前記環状平坦上面に当接し、前記弾性変形した前記第1弾性リング部材および前記第2弾性リング部材の下面は、前記環状平坦下面に当接しているシリンジ用外筒組立体。
【0007】
(2) 前記第1環状凹部および前記第2環状凹部は、縦断面形状において、側方が開口したコの字状となった環状凹部である上記(1)に記載のシリンジ用外筒組立体。
(3) 前記第1環状凹部および前記第2環状凹部は、向かい合う外側環状角部と、向かい合う内側環状角部とを備える上記(1)または(2)に記載のシリンジ用外筒組立体。
(4) 前記向かい合う外側環状角部の少なくとも一方は、縦断面が鋭角となった環状エッジを備えている上記(3)に記載のシリンジ用外筒組立体。
(5) 上記(1)から(4)のいずれかに記載のシリンジ用外筒組立体と、前記シリンジ用外筒組立体の前記ガスケットに装着されたもしくは装着可能なプランジャとからなるシリンジ。
(6) 前記ガスケット本体は、先端が閉塞し後端が開口する筒状体であり、かつ、後端の開口より先端側に延びる内腔部と、前記内腔部に形成されたガスケット側接続部とを備え、
前記プランジャは、前記ガスケット本体の後端面を押圧可能な先端側フランジ部を有する本体部と、前記本体部より、前方に突出し、前記ガスケット本体の前記内腔部に進入可能かつ前記ガスケット側接続部と接続可能なプランジャ側接続部とを備えている上記(5)に記載のシリンジ。
(7) 前記プランジャ側接続部は、前記プランジャの先端部の外面に設けられた螺旋状リブを備え、前記ガスケット側接続部は、前記プランジャ側接続部の前記螺旋状リブと螺合するための螺旋状螺合部を備える上記(6)に記載のシリンジ。
(8) 前記ガスケット側接続部は、前記螺旋状螺合部より先端側に位置する先端側内腔部と、前記先端側内腔部と前記螺旋状螺合部間に形成され、前記ガスケット側接続部の中心方向に延びる係合用リブを備え、
前記プランジャの前記プランジャ側接続部は、前記螺旋状リブより先端側に位置し、かつ、前記ガスケット側接続部の前記係合用リブを通過後前記係合用リブと係合可能な抜け止め用係合部を備えている上記(7)に記載のシリンジ。
(9) 前記シリンジは、前記外筒の先端開口部を封止する封止部材と、前記外筒内に形成された薬剤収納部に収納された薬剤とを備えている上記(5)に記載のプレフィルドシリンジ。
(10) 前記シリンジは、前記外筒の先端開口部を封止する封止部材と、前記外筒内に形成された薬剤収納部に収納された薬剤とを備えている上記(5)から(9)のいずれかに記載の記載のプレフィルドシリンジ。
【発明の効果】
【0008】
外筒と、外筒内に摺動可能に収納されたシリンジ用ガスケットとを備えるシリンジ用外筒組立体であって、シリンジ用ガスケットは、先端が閉塞し後端が開口する筒状体であり、かつ、後端の開口より先端側に延びる内腔部を備える樹脂製ガスケット本体と、ガスケット本体の外面に装着されたゴム製かつ弾性変形可能な第1弾性リング部材および第2弾性リング部材とを備え、ガスケット本体は、先端側の外側面に設けられた第1環状凹部と、第1環状凹部より所定長後端側の外側面に設けられた第2環状凹部とを備え、第1弾性リング部材および第2弾性リング部材は、円柱状の中実線材により、無端のリング状に形成されており、第1弾性リング部材は、第1環状凹部に拡張された状態にて装着されており、第2弾性リング部材は、第2環状凹部に拡張された状態にて装着されており、ガスケット本体に装着された第1弾性リング部材および第2弾性リング部材は、外周縁が、ガスケット本体の外周面より外方に突出している。さらに、第1環状凹部および第2環状凹部は、ガスケット本体の中心軸にほぼ平行な筒状凹部側面と、筒状凹部側面の上端より、ガスケット本体の中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる環状平坦上面と、筒状凹部側面の下端より、ガスケット本体の中心軸に対してほぼ直交する方向に延びる環状平坦下面とを備え、第1弾性リング部材および第2弾性リング部材は、外筒の内面と筒状凹部側面とによる押圧により弾性変形し、弾性変形した第1弾性リング部材および第2弾性リング部材は、外筒の内面に密接した細い帯状密接部を形成し、さらに、弾性変形した第1弾性リング部材および第2弾性リング部材の上面は、環状平坦上面に当接し、弾性変形した第1弾性リング部材および第2弾性リング部材の下面は、環状平坦下面に当接している。
上記のガスケット本体を合成樹脂により形成したガスケット本体とその外周に設けられたゴム製の弾性リング部材を備えるガスケットを用いたシリンジ用外筒組立体であっても、ガスケットの摺動性が良好であり、ゴム材に起因する薬剤吸着が少なく、またゴム材からの溶出物が少なく、さらに、弾性変形した第1弾性リング部材および第2弾性リング部材は、外筒の内面に密接した細い帯状密接部を有し、かつそれらが所定距離離間していることにより、保管時およびガスケット摺動時における液体のリークが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施例のシリンジ用外筒組立体を用いたプレフィルドシリンジの正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例のシリンジ用外筒組立体を用い、かつプランジャが装着されたプレフィルドシリンジの正面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示したプレフィルドシリンジにおいてシリンジ用外筒組立のみを縦断面にて示した図である。
【
図4】
図4は、本発明のシリンジ用外筒組立体およびプレフィルドシリンジに使用されるガスケットの拡大正面図である。
【
図8】
図8は、
図2に示したプレフィルドシリンジのガスケットの第1弾性リング部材および第2弾性リング部材付近の拡大断面図である。
【
図9】
図9は、
図2に示したプレフィルドシリンジに用いられているガスケットの第1環状凹部および第2環状凹部付近の拡大断面図である。
【
図10】
図10は、
図1および
図3に示したプレフィルドシリンジに使用されるプランジャの正面図である。
【
図14】
図14は、本発明の他の実施例のシリンジ用外筒組立体を用いたプレフィルドシリンジの正面図である。
【
図15】
図15は、本発明の他の実施例のシリンジ用外筒組立体を用い、かつプランジャが装着されたプレフィルドシリンジの正面図である。
【
図16】
図16は、
図15に示したプレフィルドシリンジのプレフィルドシリンジにおいてシリンジ用外筒組立のみを縦断面にて示した図である。
【
図17】
図17は、
図14ないし
図16に示したシリンジ用外筒組立体およびプレフィルドシリンジに使用されるガスケットの拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のシリンジ用外筒組立体、シリンジおよび予め薬液が充填されたプレフィルドシリンジについて説明する。
本発明のプレフィルドシリンジ1は、本発明のシリンジ用外筒組立体10を用いたシリンジ20に薬液8を充填したものとなっている。
本発明のシリンジ用外筒組立体10は、外筒2と、外筒2内に摺動可能に収納されたシリンジ用ガスケット3とを備える。
【0011】
シリンジ用ガスケット3は、先端が閉塞し後端が開口する筒状体であり、かつ、後端の開口より先端側に延びる内腔部を備える樹脂製ガスケット本体30と、ガスケット本体30の外面に装着されたゴム製かつ弾性変形可能な第1弾性リング部材32および第2弾性リング部材33とを備える。
【0012】
ガスケット本体30は、先端側の外側面に設けられた第1環状凹部36と、第1環状凹部36より所定長後端側の外側面に設けられた第2環状凹部37とを備える。第1弾性リング部材32および第2弾性リング部材33は、円柱状の中実線材により、無端のリング状に形成されており、第1弾性リング部材32は、第1環状凹部36に拡張された状態にて装着されており、第2弾性リング部材33は、第2環状凹部37に拡張された状態にて装着されており、ガスケット本体30に装着された第1弾性リング部材32および第2弾性リング部材33は、外周縁が、ガスケット本体30の外周面より外方に突出している。
【0013】
第1環状凹部36および第2環状凹部37は、ガスケット本体30の中心軸にほぼ平行な筒状凹部側面36a、37aと、筒状凹部側面36a、37aの上端より、ガスケット本体30の中心軸に対してほぼ直交する方向(外側)に延びる環状平坦上面36b,37bと、筒状凹部側面36a、37aの下端より、ガスケット本体30の中心軸に対してほぼ直交する方向(外側)に延びる環状平坦下面36c,37cとを備える。
【0014】
第1弾性リング部材32および第2弾性リング部材33は、外筒2の内面と筒状凹部側面36a、37aとによる押圧により弾性変形し、弾性変形した第1弾性リング部材32および第2弾性リング部材33は、外筒2の内面に密接した細い帯状密接部32a,33aを形成し、さらに、弾性変形した第1弾性リング部材32および第2弾性リング部材33の上面は、環状平坦上面36b,37bに当接し、弾性変形した第1弾性リング部材32および第2弾性リング部材33の下面は、環状平坦下面36c,37cに当接している。
【0015】
シリンジ用ガスケット3は、樹脂製ガスケット本体30と、ガスケット本体30の外面に装着されたゴム製かつ弾性変形可能な第1弾性リング部材32および第2弾性リング部材33とを備える。
【0016】
ガスケット本体30は、本体部31、先端部34、後端部35、後端の開口より先端側に延びる内腔部38とを備える。先端部34は、閉塞端であり、先端に向かってテーパー状に縮径している。
【0017】
そして、本体部31は、円筒状に延びており、その先端側の外側面に第1環状凹部36が設けられている。この実施例では、先端部34の後端より後端側、言い換えれば、本体部の先端に第1環状凹部36が設けられている。さらに、本体部31であり、かつ第1環状凹部36より所定長後端側の外側面に設けられた第2環状凹部37を備える。先端部34の先端面は、先端側に向かってテーパー状に縮径するテーパー部となっている。
【0018】
第1環状凹部36および第2環状凹部37は、
図4、
図5、
図8および
図9に示すように、ガスケット本体30の中心軸にほぼ平行な筒状凹部側面36a、37aと、筒状凹部側面36a、37aの上端より、ガスケット本体30の中心軸に対してほぼ直交する方向(外側)に延びる環状平坦上面36b,37bと、筒状凹部側面36a、37aの下端より、ガスケット本体30の中心軸に対してほぼ直交する方向(外側)に延びる環状平坦下面36c,37cとを備える。上述の通り、第1環状凹部36および第2環状凹部37は、縦断面形状において、側方が開口したコの字状となった環状凹部となっている。
【0019】
また、この実施例では、
図9に示すように、第1環状凹部36および第2環状凹部37は、向かい合う外側環状角部61,63(65,67)と、向かい合う内側環状角部62,64(66,68)とを備える。さらに、この実施例では、向かい合う外側環状角部61,63(65,67)の少なくとも一方、具体的には、第1環状凹部36の外側環状角部63、第2環状凹部37の2つの外側環状角部65,67は、縦断面が鋭角となった環状エッジを備えている。
【0020】
そして、第1環状凹部36および第2環状凹部37の深さ、具体的には、筒状凹部側面36a、37aの外径は、ガスケット本体30の最大外径部(この実施例では、第2環状凹部37の下部側の外側環状角部67)の外径より、0.5~3.0mm、好ましくは、1.0~2.0mm小さいことが好ましい。また、第1環状凹部36および第2環状凹部37の軸方向長さ、具体的には、筒状凹部側面36a、37aの軸方向長は、0.5~3.0mmであることが好ましく、特に、1.0~2.0mmであることが好ましい。
また、この実施例では、第1環状凹部36および第2環状凹部37の深さ、軸方向長は、ほぼ同じものとなっている。
【0021】
そして、第1環状凹部36には、第1弾性リング部材32が、拡張された状態にて装着されており、同様に、第2環状凹部37には、第2弾性リング部材33が、拡張された状態にて装着されている。このため、第1弾性リング部材32の内面は、第1環状凹部36の筒状凹部側面36aに密接しており、第2弾性リング部材33の内面は、第2環状凹部37の筒状凹部側面37aに密接している。
【0022】
第1弾性リング部材32および第2弾性リング部材33は、円柱状の中実線材により、無端のリング状に形成されている。また、ガスケット本体30に装着された状態において、第1弾性リング部材32および第2弾性リング部材33は、外周縁が、ガスケット本体30の外周面(最大外径部)より外方に突出している。
【0023】
さらに、
図1、
図8に示すように、第1弾性リング部材32は、外筒2の内面と第1環状凹部36の筒状凹部側面36aとによる押圧により弾性変形し、弾性変形した第1弾性リング部材32は、外筒2の内面に密接した細い帯状密接部32aを形成している。また、弾性変形した第1弾性リング部材32の上面は、環状平坦上面36bに当接し、弾性変形した第1弾性リング部材32の下面は、環状平坦下面36cに当接している。よって、第1弾性リング部材32は、外筒内面、第1環状凹部36の筒状凹部側面36aとの密接部において、液密状態を形成しており、さらに、第1弾性リング部材32は、環状平坦上面36b、環状平坦下面36cに当接することにより、ガスケット本体30からの移動が確実に規制されている。また、第1弾性リング部材32と環状平坦上面36b、環状平坦下面36cの当接は、ガスケット本体30と第1弾性リング部材32間の液密状態保持に貢献している。
【0024】
同様に、第2弾性リング部材33は、外筒2の内面と筒状凹部側面37aとによる押圧により弾性変形し、弾性変形した第2弾性リング部材33は、外筒2の内面に密接した細い帯状密接部33aを形成している。また、弾性変形した第2弾性リング部材33の上面は、環状平坦上面37bに当接し、弾性変形した第2弾性リング部材33の下面は、環状平坦下面37cに当接している。よって、第2弾性リング部材33は、外筒内面、第2環状凹部37の筒状凹部側面37aとの密接部において、液密状態を形成しており、さらに、第2弾性リング部材33は、環状平坦上面37b、環状平坦下面37cに当接することにより、ガスケット本体30からの移動が確実に規制されている。また、第2弾性リング部材33と環状平坦上面37b、環状平坦下面37cの当接は、ガスケット本体30と第2弾性リング部材33間の液密状態保持に貢献している。
【0025】
第1弾性リング部材32および第2弾性リング部材33は、円柱状の中実線材により、無端のリング状に形成されている。ガスケット本体への非装着時における第1弾性リング部材32の内径は、第1環状凹部36の筒状凹部側面36aの外径より、0.5~3.0mm、特に、1.0~2.0mm小さいことが好ましい。また、ガスケット本体への非装着時における第2弾性リング部材33の内径は、第2環状凹部37の筒状凹部側面37aの外径より、0.5~3.0mm、特に、1.0~2.0mm小さいことが好ましい。
【0026】
また、第1弾性リング部材32の線材の直径は、ガスケット本体への装着時において、第1環状凹部36に進入し、筒状凹部側面36aに当接可能なものであればよく、同様に、第2弾性リング部材33の線材の直径は、ガスケット本体への装着時において、第2環状凹部37に進入し、筒状凹部側面37aに当接可能なもの
であればよい。
【0027】
第1弾性リング部材32および第2弾性リング部材33の形成材料としては、従来からガスケットに使用されている公知のものが使用できる。例えば、ゴム、エラストマーが挙げられる。ゴムとしては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、シリコーンゴムが好ましく、特に、架橋物が好ましい。エラストマーとしては、例えば、ポリ塩化ビニル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー及びこれらの混合物が好ましい。上記ゴム、エラストマーの中でも、特に、スチレン-ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン系エラストマーが、好適な硬度、弾性特性を有し、γ線滅菌、電子線滅菌、高圧蒸気滅菌などの各種滅菌方法が採用可能であることから好ましい。
【0028】
ガスケット本体30の形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンのような樹脂が好ましい。また、ガスケット本体30は、内部が視認可能な透明性を有することが好ましい。ガスケット本体30は、直径が5~30mm、全長が5~30mm程度のものが一般的と考える。
【0029】
また、ガスケット本体の先端側部分、第1弾性リング部材32および第2弾性リング部材33の外面に低薬剤吸着性物質等を被覆したものであってもよい。
低薬物吸着層の材質としては、従来からラミネートガスケットに使用されている公知のものが使用できる。低薬物吸着層の材質としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂が挙げられる。具体的に、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、超高分子量ポリエチレン、ポリ(4-メチルペンテン-1)、環状ポリオレフィン等が好ましく、フッ素系樹脂としては、四フッ化エチレン-パーフルオロエトキシエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等が好ましい。
【0030】
また、第1弾性リング部材32および第2弾性リング部材33の外面に潤滑剤の塗布を行うことが好ましい。また、潤滑剤は、外筒の内面に塗布してもよい。潤滑剤としては、シリコーンオイルが好適である。また、ガスケット本体表面に、当該表面にて固化することにより形成されたシリコーン系樹脂層を設けることにより、シリコーンオイル等の潤滑剤を用いないものであってもよい。
【0031】
そして、ガスケット本体30は、後端部35の内面にプランジャを装着するためガスケット側接続部35aを備えている。特に、この実施例では、ガスケット側接続部35aは、ガスケット本体30の上述した第2環状凹部37より後端側となる後端部35内に形成されている。このため、ガスケット3へのプランジャの装着作業時に、第2環状凹部37に装着された第2弾性リング部材33に影響を与えること、具体的には、第2弾性リング部材33と外筒2の内面間のシール性に影響を与えることがない。また、ガスケット側接続部35aは、ガスケット本体30の上述した第1環状凹部36より離間した後端部35内に形成されている。このため、ガスケット3へのプランジャの装着作業時に、第1環状凹部36に装着された第1弾性リング部材32に影響を与えること、具体的には、第1弾性リング部材32と外筒2の内面間のシール性に影響を与えることがない。
【0032】
そして、ガスケット側接続部35aは、後端部35の内面に、後述するプランジャ4のプランジャ側接続部40に設けられた螺旋状リブ(螺旋状突出部)42と螺合するための螺旋状螺合部(螺旋状凹部)79と、螺旋状螺合部79より先端側にプランジャ4の先端部を収納するための収納部38aを備える。さらに、この実施例では、ガスケット本体30は、螺旋状螺合部79の付近かつ先端側に位置するプランジャ抜け止め用環状突出部76を備えている。
【0033】
具体的には、ガスケット本体30は、
図2、
図5に示すように、後端部35の内部に形成されたプランジャを装着するためのガスケット側接続部35aを備える。ガスケット本体30が、内部を視認可能な透明性を有する場合、プランジャ装着作業時にガスケット3のガスケット側接続部35aの目視が可能であり、プランジャのガスケット側接続部への装着を目視しながら行うことができ、装着作業を安心かつ確実に行うことができる。
【0034】
また、後端部35は、側面に複数の軸方向に延びる側板部を備える。後端部35の後端には、プランジャ4の押圧部48と当接可能な円盤状の後端側フランジ部73を備える。複数の側板部は、本体部31と後端側フランジ部73を接続するとともに、両者間を補強している。また、この実施例では、
図5に示すように、後端側フランジ部73は、平板部と平板部より所定長後端方向に延びるカラー部とを備えている。特に、この実施例のガスケット本体30では、後端側フランジ部73は、平板部より後端方向に若干延びる外側カラー77と内側カラー78を備えている。外側カラー77と内側カラー78は同心円状に設けられている。また、外側カラー77および内側カラー78の先端(自由端)は平坦になっている。そして、内側カラー78の先端(自由端)は、外側カラー77の先端(自由端)より若干突出するものとなっている。
【0035】
ガスケット本体30の内腔部38の内面には、後述するプランジャ4のプランジャ側接続部(装着用先端部)40を収納し装着するためのガスケット側接続部35aを備えている。ガスケット側接続部35aは、装着用先端部40の螺旋状突出部42(42a,42b)と螺合するための螺旋状凹部79と、螺旋状凹部79の付近かつ先端側に設けられ、装着用先端部40の係合部41と係合するための係合用リブ76とを備える。
図8に示すように、ガスケット本体30は、後端に拡径開口部を備え、拡径開口部より縮径する内腔部の内面に螺旋状凹部79が設けられている。螺旋状凹部79は、ガスケット本体30の後端開口より若干先端側となる位置に始端を有し、所定長先端側に延びるものとなっている。螺旋状凹部79は、二条(二本)の螺旋状凹部を備えている。このような複数(具体的には、二条)の螺旋状凹部を備えることが好ましいが、螺旋状凹部は、一条(一本)のみであってもよい。
【0036】
ガスケット側接続部は、上記の螺旋状凹部79の付近かつ先端側に設けられた係合用リブ76を備えている。この係合用リブ76は、後述するプランジャ4の装着用先端部40の係合部41と係合する。係合用リブ76の内面は、先端側に向かって縮径する環状テーパー状内面となっている。このようなものとすることにより、後述するプランジャ4の係合部41の進入および通過が、容易なものとなる。また、係合用リブ76の先端面は、起立面、言い換えれば、本体部70の中心軸にほぼ直交する環状平坦面となっている。このため、後述するプランジャ4の係合部との係合後の離脱を防止する。なお、係合用リブは、環状リブであることが好ましいが、破線状(非連続)のものであってもよい。
【0037】
外筒2は、透明もしくは半透明材料により、好ましくは、酸素透過性、水蒸気透過性の少ない材料により形成された筒状体である。
この実施例の外筒2は、
図1、
図2に示すように、ノズル部22と、カラー23とを備える。
【0038】
ノズル部22は、外筒2の先端に設けられており、外筒内の薬液等を排出するための先端開口部を備えるとともに先端に向かってテーパー状に縮径するように形成されている。カラー23は、ノズル部22を取り囲むようにノズル部22と同心的に円筒状に形成されている。また、カラー23は、先端が開口しており、カラー23の内径および外径は後端から先端までほぼ同一径となっている。また、カラー23の先端開口からはノズル部22の先端部が突出しており、ノズル部22およびカラー23の先端部は、ノズル部22およびカラー23を封止部材(シールキャップ)5内に収納しやすくするため面取り加工されている。
【0039】
カラー内周面には、後述する封止部材(シールキャップ)5のノズル収納部53に形成されたネジ山(キャップ側螺合部)54と螺合するためのネジ溝(外筒側螺合部)25が形成されている。これにより、外筒2とシールキャップ5はカラー内周面とノズル収納部外周面との間で螺合する。また、ネジ溝(外筒側螺合部)25は、シールキャップ5を外筒から取り外した後注射針(注射針のハブ)を取り付ける部分となる。
【0040】
外筒は、
図1、
図2および
図3に示すように、フランジ24を有する。フランジ24は、外筒2の後端全周より垂直方向に突出するように形成された楕円ドーナツ状の円盤部である。フランジ24は、
図1、
図2、
図3に示すように向かい合う幅広となった2つの把持部を備え、さらに、把持部の先端面側には、複数のリブが形成されている。
【0041】
外筒2の形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンのような樹脂が好ましい。
【0042】
封止部材であるシールキャップ5は、
図1、
図2、
図3に示すように、閉塞端51と、ノズル収納部53とカラー収納部52を備えている。
【0043】
ノズル収納部53は、シールキャップ5の中央部に設けられ、先端が閉塞し円筒状である。ノズル収納部53の内径は、ノズル部22より若干大きく作製され、先端から後端まで後端に向かって若干テーパー状に拡径しており、後端開口からノズル部全体を収納するものとなっている。
【0044】
ノズル収納部53の内側閉塞面(閉塞端51の内面)には、外筒2の先端開口部を液密に密封するためのシール部材55が収納されている。シール部材55としては、外筒2の先端開口部を液密に密封可能なように弾性部材であることが好ましい。シール部材の形成材料としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等の合成ゴム、オレフィン系エラストマーやスチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー等を使用することが好ましい。
【0045】
また、ノズル収納部53の外面には、外筒2のカラー23の内面に形成されたネジ溝(外筒側螺合部)25と螺合するためのネジ山(キャップ側螺合部)54が形成されている。これにより、外筒2とシールキャップ5は、ノズル収納部の外面とカラーの内面との間で螺合する。
【0046】
カラー収納部52は、ノズル収納部53を取り囲むように形成され先端が閉塞した円筒状体であり、カラー収納部の内面とノズル収納部の外面との間にカラー23を収納する。また、円筒状に形成されたカラー収納部52は、ノズル収納部53と同心状となっており、カラー収納部52の内径は、先端から後端までほぼ同一径となっている。
【0047】
また、
図1に示すようにシールキャップ5の外側面(カラー収納部52の外周面)には、シールキャップを回転させる時指等が滑らないようにするために縦方向に刻み加工が施されている。
【0048】
シールキャップの形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ-(4-メチルペンテン-1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンのような樹脂が好ましい。
【0049】
そして、本発明のプレフィルドシリンジ1では、
図3に示すように、外筒内に形成された薬剤収納部に薬剤8が充填されている。
薬剤8としては、どのような薬剤でもよいが、例えば、シクロスポリン、ベンゾジアゼピン系薬剤、塩化ナトリウム注射液、ビタミン剤、ミネラル類などの薬液、さらには、抗生物質、タンパク製剤等の粉末状もしくは凍結乾燥薬剤あるいは液剤が使用される。本発明のプレフィルドシリンジは、特にシリンジポンプを用いて投与するタイプのプレフィルドシリンジに適しているので、充填される薬剤としてはそのような投与手段を用いることに適した薬剤であることが好ましく、ニトログリセリン注射液、硝酸イソソルビド注射液、ドパミン塩酸塩(塩酸ドパミン)注射液、ドブタミン塩酸塩注射液、塩酸モルヒネ注射液、などが挙げられる。
【0050】
図1,
図10ないし
図13に示すように、プランジャ4は、ガスケット3への装着時(具体的には、ガスケット3のガスケット本体30への装着時)において、ガスケット本体30の後端側フランジ部73の後端面を押圧可能な押圧部48と、押圧部48より先端側に突出し、ガスケット本体30の内腔部38に進入可能なプランジャ側接続部40を備える。プランジャ4は、ガスケット3への装着時において、プランジャ側接続部40の先端部がガスケット本体30の内面に接触しないものとなっている。
【0051】
プランジャ4は、
図10および
図11に示すように、断面十字状に形成されたシャフト部47を備え、その先端に押圧部48が設けられている。押圧部48は、ガスケット本体30の後端面を押圧可能に円盤状に形成されている。また、シャフト部47の途中には補強用リブ47aが設けられ、後端には、プランジャ押圧部49が設けられている。
【0052】
そして、プランジャ4のプランジャ側接続部40は、押圧部48より先端方向に突出する小径筒状部であり、ガスケット本体30のガスケット側接続部35aの螺旋状凹部79と螺合可能な螺旋状突出部42(42a,42b)と、螺旋状突出部42の付近かつ先端側に設けられ、ガスケット本体30の係合用リブ76と係合する係合部41とを備える。
【0053】
係合部41は、プランジャ4の先端に形成されている。そして、この実施例のプランジャ4では、係合部41は、
図10ないし
図13に示すように、プランジャ4の爪部43a,43b,43c,43dの外面に形成された突起部46a,46b,46c,46dにより構成されている。突起部46a,46b,46c,46dは、爪部43a,43b,43c,43dの先端より所定長後端側に設けられた突出部である。突起部46a,46b,46c,46dは、プランジャ4の先端部がガスケット本体30の中空部に押し込まれることにより、ガスケット本体30の係合用リブ76を乗り越え、係合用リブ76と係合する。
【0054】
そして、この実施例のプランジャ4では、
図10ないし
図13に示すように、複数の爪部43a,43b,43c,43dは、ほぼ同一円周上に配置されている。具体的には、複数の爪部43a,43b,43c,43dは、プランジャの中心軸に対して等角度となるように複数(具体的には、4つ)設けられており、隣り合う爪部間には、スリット44a,44b,44c,44dが設けられている。スリット44a,44b,44c,44dは、先端部の先端より後端側にかつ突起部46a,46b,46c,46dの形成部を越えて延びるものとなっている。また、爪部43a,43b,43c,43dの外面は、爪部の先端側より突起部に向かって傾斜する傾斜面45a,45b,45c,45dとなっている。
【0055】
このようなものとすることにより、ガスケット本体30の係合用リブ76との係合が容易なものとなる。なお、爪部43a,43b,43c,43dは、ガスケット本体30への装着時に内側に若干弾性変形する。また、突起部46a,46b,46c,46dの後端面は、起立面、言い換えれば、プランジャ4の中心軸にほぼ直交する環状平坦面となっている。このため、後述するプランジャ4の係合部との係合後の離脱を防止する。なお、爪部の数としては、4つに限定されるものではなく、3~8程度が好適である。
【0056】
そして、係合部41に近接しかつ後端側に螺旋状突出部42が設けられている。この実施例のプランジャ4では、
図10ないし
図13に示すように、プランジャ側接続部40を形成する筒状部の中央部外面に螺旋状突出部42(42a,42b)が形成されている。
【0057】
また、この実施例におけるプランジャ4では、
図10ないし
図13に示すように、上述したガスケット本体30の螺旋状凹部79に対応するように、二条(二本)の螺旋状突出部42a,42bが形成されている。螺旋状突出部42a,42bは、プランジャ4のプランジャ側接続部40を形成する筒状部の中央部に始端および終端を有する短い螺旋状となっている。このような複数(具体的には、二条)の螺旋状突出部を備えることが好ましいが、螺旋状突出部リブは、一条(一本)のみであってもよい。
【0058】
また、螺旋状突出部42a,42bの先端側端部には、平坦部42c,42d(プランジャ側接続部40を形成する筒状部の中心軸に直交する平面部)を備えている。そして、螺旋状突出部42a,42bは、この平坦部の後端より螺旋状に後端側に延びるものとなっている。さらに、プランジャ4のプランジャ側接続部40は、螺旋状突出部42(42a,42b)より基端側の外面に、螺旋状突出部42より高さが低い螺旋状リブ85を備えていてもよい。この螺旋状リブ85は、プランジャ4をガスケット本体30に装着した時、ガスケット本体30の螺旋状凹部79を形成する螺旋状山部79aと向かい合うように形成されている。このため、プランジャ4をガスケット本体30に装着した時のクリアランスを減少させ、ガタツキを抑制する。
【0059】
プランジャ4の構成材料としては、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の硬質もしくは半硬質樹脂を用いることが好ましい。
【0060】
次に、
図14から
図16に示す実施例シリンジ用外筒10a、シリンジ20aおよびプレフィルドシリンジ50について説明する。
この実施例において用いられているガスケット9は、ガスケット本体90と、ガスケット本体90に取り付けられたゴム製の第1リング弾性部材32と、ゴム製の第2リング弾性部材33とを備える。
【0061】
ガスケット本体90は、上述したガスケット本体30と同様に、第1環状凹部36と、第1環状凹部36より所定長基端側の外側面に設けられた第2環状凹部37とを備える。そして、第1環状凹部36に第1リング弾性部材32が拡張された状態にて装着されており、第2環状凹部37に第2リング弾性部材33が拡張された状態にて装着されている。ガスケット本体90に装着された第1リング弾性部材32および第2リング弾性部材33は、外周縁が、ガスケット本体の外周面(最大外径部)より外方に突出している。
【0062】
第1リング弾性部材32、第2リング弾性部材33については、上述したものと同じである。また、第1環状凹部36、第2環状凹部37の形状、装着された状態における第1リング弾性部材32、第2リング弾性部材33について、
図8、
図9に示し、上述したものと同じである。
【0063】
具体的には、
図14、
図8に示すように、第1弾性リング部材32は、外筒2の内面と第1環状凹部36の筒状凹部側面36aとによる押圧により弾性変形し、弾性変形した第1弾性リング部材32は、外筒2の内面に密接した細い帯状密接部32aを形成している。また、弾性変形した第1弾性リング部材32の上面は、環状平坦上面36bに当接し、弾性変形した第1弾性リング部材32の下面は、環状平坦下面36cに当接している。よって、第1弾性リング部材32は、外筒内面、第1環状凹部36の筒状凹部側面36aとの密接部において、液密状態を形成しており、さらに、第1弾性リング部材32は、環状平坦上面36b、環状平坦下面36cに当接することにより、ガスケット本体90からの移動が確実に規制されている。また、第1弾性リング部材32と環状平坦上面36b、環状平坦下面36cの当接は、ガスケット本体90と第1弾性リング部材32間の液密状態保持に貢献している。
【0064】
同様に、第2弾性リング部材33は、外筒2の内面と筒状凹部側面37aとによる押圧により弾性変形し、弾性変形した第2弾性リング部材33は、外筒2の内面に密接した細い帯状密接部33aを形成している。また、弾性変形した第2弾性リング部材33の上面は、環状平坦上面37bに当接し、弾性変形した第2弾性リング部材33の下面は、環状平坦下面37cに当接している。よって、第2弾性リング部材33は、外筒内面、第2環状凹部37の筒状凹部側面37aとの密接部において、液密状態を形成しており、さらに、第2弾性リング部材33は、環状平坦上面37b、環状平坦下面37cに当接することにより、ガスケット本体90からの移動が確実に規制されている。また、第2弾性リング部材33と環状平坦上面37b、環状平坦下面37cの当接は、ガスケット本体90と第2弾性リング部材33間の液密状態保持に貢献している。
【0065】
この実施例におけるガスケット本体90は、
図17ないし
図19に示すように、閉塞した先端と、後端開口より先端側に延びる内腔部92を有する筒状体である。
ガスケット本体90は、先端側に向かってテーパー状に縮径するテーパー状先端部91を有する。また、ガスケット本体90は、外面の先端側に設けられた第1環状凹部36と、第1環状凹部36より所定長基端側の外側面に設けられた第2環状凹部37とを備えている。
【0066】
そして、ガスケット本体90は、内腔部92を備え、この内腔部92が、ガスケット側接続部87を備えている。そして、ガスケット側接続部87は、上述したガスケット3と同様に、第1環状凹部36およびそれに装着された第1リング弾性部材32よりも後端側に位置している。このため、ガスケット9へのプランジャ4aの装着作業において、第1環状凹部36およびそれに装着された第1リング弾性部材32に影響を与えることが少なく、液密性の低下を防止している。
【0067】
ガスケット側接続部87(内腔部92)は、
図18に示すように、内面に、プランジャ4aのプランジャ側接続部40aの螺旋状リブ84、85と螺合するための螺旋状螺合部93と、螺旋状螺合部93より先端側にプランジャ4aのプランジャ側接続部40aの先端部の螺旋状リブ形成部位を収納するための収納部92aを備える。さらに、この実施例では、ガスケット本体90は、螺旋状螺合部(螺旋状凹部)93の付近かつ先端側に位置するプランジャ抜け止め用環状突出部94を備える。さらに、環状突出部94は、プランジャ側接続部40aの螺旋状リブ84、85とガスケット本体90の螺旋状螺合部93との螺合の進行により、環状突出部94に到達した螺旋状リブ84、85を収納部92aに誘導するための誘導部95を備えている。誘導部95は、リブ欠損部により形成されている。なお、誘導部は、リブ欠損部に限定されるものではなく、凹部、薄肉部などでもよく、さらには、環状突出部全体が脆弱であってもよい。なお、この実施例では、収納部92aは、環状突出部94より先端側に設けられている。
【0068】
螺旋状螺合部93は、内腔部92の開口部付近に始端93aを有し、先端方向に所定長延び、かつ、環状突出部94の欠損部95付近に終端93bを有している。
【0069】
この実施例では、螺旋状螺合部93は、後述するプランジャ4aの先端部であるプランジャ側接続部40aの螺旋状リブ84、85に対応するように、二条(二本)の螺旋状螺合部93となっている。そして、この実施例のガスケット本体では、二条(二本)の螺旋状螺合部を形成するために、
図18および
図19に示すように、2本の螺旋状突起96a,96bを備えている。なお、上記のような複数(具体的には、二条)の螺旋状螺合部を備えることが好ましいが、螺旋状螺合部(螺旋状突起)は、一条(一本)のみであってもよい。
【0070】
そして、この実施例では、螺旋状螺合部93は、ガスケット本体90の内腔部92の内壁面より突出する螺旋状突起96間により形成された溝状部分となっている。螺合部93は、ガスケット本体90の螺旋状リブ84、85と螺合可能であり、かつ、螺旋状リブを先端方向に誘導可能となっている。螺旋状突起96は、内腔部92の開口部付近に始端を有し、先端方向に所定長延び、かつ、環状突出部94の欠損部95を若干越えた位置に終端を有している。
【0071】
そして、ガスケット本体90は、螺旋状螺合部93の付近かつ螺旋状螺合部93より先端側に位置する部位の内面に設けられたプランジャ抜け止め用環状突出部94を備えている。この実施例のガスケットでは、環状突出部94は、ガスケット3の中心軸に対してほぼ直交する方向に延びるものとなっている。なお、環状突出部94は、ガスケット3の中心軸に対して直交する方向に延びることが望ましいが、直交状態より若干斜めとなっていてもよい。
また、ガスケット本体90は、環状突出部94より先端側にプランジャ4aのプランジャ側接続部40aの螺旋状リブ形成部位を収納するための収納部92aを備えている。
【0072】
さらに、この実施例のガスケット本体90では、上述したように、螺旋状螺合部93は、二条の螺旋状リブに対応する二条の螺旋状螺合部となっており、これに対応するように、また
図19にも示すように、環状突出部の欠損部は、ほぼ向かい合う位置に2つ設けられている。言い換えれば、このガスケット本体90では、
図19に示すように、2つに区分された環状突出部94a、94bと、両者間に位置する2つの欠損部95a,95bを備えるものとなっている。さらに、
図19に示すように、環状突出部94(94a,94b)は、欠損部95(95a,95b)に向かって徐々にリブが小さくなっていることが好ましい。このようにすることにより、ガスケット本体90の螺旋状リブ84、85の環状突出部94の通過、言い換えれば、収納部92aへの進入がより容易なものとなる。なお、欠損部は当該部分のリブが完全に欠損していなくても、ガスケット本体90の螺旋状リブを誘導する機能を有する程度に欠損していれば良い。
【0073】
そして、
図18に示すように、螺旋状螺合部93の幅、言い換えれば、螺旋状突起96と環状突出部94との距離は、欠損部95に向かって(同様に、螺旋状螺合部93の終端93bに向かって)狭くなるものとなっている。このため、ガスケット本体90の螺旋状リブ84、85の環状突出部94の欠損部95への誘導を確実なものとしている。また、ガスケット本体90の螺旋状螺合部93を形成するための螺旋状突起96の突出高さは、環状突出部94の突出高さより、高いものであることが好ましい。
【0074】
さらに、ガスケット本体90は、先端部内面の中央部に後端側に突出する突起部97を備えている。
そして、この実施例のプランジャ4aは、
図14に示すように、上述したプランジャ4と同等に、ガスケット9への装着時(具体的には、ガスケット9のガスケット本体90への装着時)において、ガスケット本体90の後端面を押圧可能な押圧部48と、押圧部48より先端側に突出し、ガスケット本体90の内腔部92に進入可能なプランジャ側接続部40aを備える。プランジャ4aは、ガスケット9への装着時において、プランジャ側接続部40aの先端がガスケット本体90の内面に接触しないものとなっている。
【0075】
プランジャ4aのプランジャ側接続部40aの筒状部81の先端部外面には、螺旋状リブ84、85が形成されている。また、この実施例におけるプランジャ4aでは、
図14に示すように、上述したガスケット本体90の螺旋状螺合部93に対応するように、二条(二本)の螺旋状リブ84、85が形成されている。螺旋状リブ84、85は、プランジャ4aのプランジャ側接続部40aの先端付近に始端を有し、所定長後端側に延びるものとなっている。このような複数(具体的には、二条)の螺旋状リブを備えることが好ましいが、螺旋状リブは、一条(一本)のみであってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 プレフィルドシリンジ
2 外筒
3 ガスケット
4 プランジャ
5 封止部材
30 ガスケット本体
32 第1弾性リング状部材
33 第2弾性リング状部材