(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115478
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】立体造形方法、及び立体造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/135 20170101AFI20240819BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240819BHJP
B29C 64/379 20170101ALI20240819BHJP
B33Y 40/20 20200101ALI20240819BHJP
【FI】
B29C64/135
B33Y10/00
B29C64/379
B33Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021202
(22)【出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096080
【弁理士】
【氏名又は名称】井内 龍二
(74)【代理人】
【識別番号】100194098
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 一
(72)【発明者】
【氏名】津田 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】江川 航平
(72)【発明者】
【氏名】神村 尊
(72)【発明者】
【氏名】中根 隆雄
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA39
4F213AA43
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL13
4F213WL23
4F213WL24
4F213WL32
4F213WL55
4F213WL67
4F213WL87
4F213WW02
4F213WW06
(57)【要約】
【課題】いわゆるコアシェル方式の立体造形方法において、シェルの厚さを薄くした場合であっても、コア材を硬化させる工程で、シェルに囲われた部分であるコア部の変形を防止することができ、かつコア材から生じるガスを排除することができ、コア材の成形不良を防止することができる立体造形方法を提供すること。
【解決手段】立体造形物の外形を規定するシェルの内側面に囲われた部分であるコア部に液相材料であるコア材を充填するコア材充填工程と、コア部内のコア材を硬化させるコア材硬化工程と、を含む立体造形方法であって、コア材硬化工程が、コア部の上面のシェル開口部を、シェルの変形が防止可能な構造で、かつコア材から発生するガスが通過可能な構造にして実施される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体造形物の外形を規定するシェルの内側面に囲われた部分であるコア部に液相材料であるコア材を充填するコア材充填工程と、
前記コア部内の前記コア材を硬化させるコア材硬化工程と、を含む立体造形方法であって、
前記コア材硬化工程が、
前記シェルの上面の開口部を、前記シェルの変形が防止可能な構造で、かつ前記コア材から発生するガスが通過可能な構造にした状態で実施されることを特徴とする立体造形方法。
【請求項2】
前記状態が、
前記シェルの上面の開口部に、前記コア材から発生するガスが通過可能なガス通過部を有する蓋部がシェル材で造形された状態であることを特徴とする請求項1記載の立体造形方法。
【請求項3】
前記状態が、
前記シェルの上面の開口部の一部に、前記シェルの変形が防止可能な形状を有する変形防止部がシェル材で造形された状態であることを特徴とする請求項1記載の立体造形方法。
【請求項4】
前記状態が、
前記シェルの上面の開口部に、前記コア材から発生するガスが通過可能なガス通過部を有する蓋体が被せられた状態であることを特徴とする請求項1記載の立体造形方法。
【請求項5】
前記状態が、
前記シェルの上面の開口部に、前記シェルの変形が防止可能な形状を有する拘束部材が取り付けられた状態であることを特徴とする請求項1記載の立体造形方法。
【請求項6】
前記コア材が熱硬化性樹脂からなり、
前記コア材硬化工程では、前記コア材に熱エネルギーを付与することにより、前記コア材を熱硬化させることを特徴とする請求項1~5のいずれかの項に記載の立体造形方法。
【請求項7】
前記コア材硬化工程の後に、
前記シェルの少なくとも一部を硬化後の前記コア材から分離させ、前記コア部の形状に倣った形状を有し前記コア材からなる立体造形物を得る分離工程を備えていることを特徴とする請求項1~5のいずれかの項に記載の立体造形方法。
【請求項8】
請求項7記載の立体造形方法を用いて立体造形物を製造することを特徴とする立体造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は立体造形方法、及び立体造形物の製造方法に関し、より詳細には、3Dプリンティングなどの付加製造技術を用いて立体造形物を造形する立体造形方法、及び立体造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3Dプリンティング技術を用いた製造装置の名称として、広く3Dプリンタという言葉が使われている。3Dプリンタは、3次元のCADデータをもとにコンピュータで造形物の断面形状を計算し、該造形物を薄い輪切り状の断面構成要素に分割して、その断面構成要素を種々の方法で形成し、それを積層させて目的とする造形物を造形する立体造形装置である。3Dプリンティング技術は、国際的にはAdditive Manufacturing Technologyと同義語として使われる場合が多く、日本語訳として、付加製造技術が用いられている。
【0003】
近年は、3Dプリンタで造形した造形物に対しても、実製品の量産前の評価目的で外観だけでなく剛性や強度が要求されるようになり、金属3Dプリンタや複合材3Dプリンタなどが注目されている。
【0004】
本出願人は、上記した付加製造技術に関連する技術の一つとして、下記の特許文献1記載の立体造形方法を提案している。特許文献1記載の立体造形方法は、造形槽内で複数回のシェルの造形とコア材の充填とを繰り返した後、活性エネルギー線の照射又は熱エネルギーの付与により前記コア材を一括して硬化させることを特徴としている。係る立体造形方法により、前記コア材により造形された部分に積層界面が存在しない、換言すれば、剛性、強度に方向性が無い立体造形物を造形することが可能となった。
【0005】
上記特許文献1記載の立体造形方法(以下この方法をコアシェル方式とも言う。)で立体造形物を得るにあたり、一般には外殻層を形成するシェルと、該シェルの内側の硬化したコア材とを合わせたものを立体造形物と呼んでいる。
[発明が解決しようとする課題]
【0006】
一方で、このコアシェル方式で立体造形物を得るにあたり、立体造形物の一体性が重視されたり、前記シェルの強度が問題視されたりする場合に、前記シェルの少なくとも一部を硬化後の前記コア材から分離させて、硬化後のコア材を主とする立体造形物が求められる場合がある。
【0007】
この場合、前記シェルと硬化後の前記コア材とは密着しているため、前記シェルに切削等による外力を加えて前記コア材から前記シェルを分離する工程が必要となる。
上記コアシェル方式においては、液相状態の前記コア材を一括して硬化させる際、前記コア材を歪みなく硬化させるために、前記シェルの厚さは、前記コア材の硬化時に変形しない十分な厚みを有していることが望ましい。
【0008】
一方で、前記シェルの厚みが増すほど、硬化後の前記コア材から前記シェルを分離しにくくなるため、硬化後の前記コア材から前記シェルを分離させる必要がある場合は、前記シェルの厚さは薄い方が望ましい。
しかしながら、前記シェルの厚さを薄くすると前記コア材を一括して硬化させる工程において、前記熱エネルギー等の付与によって前記シェルが軟化し、硬化前の前記コア材の自重等も加わって、前記シェルの形状が変形し、それに伴って、硬化後の前記コア材の形状も変形してしまうという課題があった。
【0009】
上記課題が生じる現象の一例について、
図10、11を用いて説明する。
図10、11は、上記コアシェル方式において、従来のコア材を一括して硬化させる工程の前後の状態を模式的に示す図である。
図10(a)は、シェルの厚さが厚い場合のコア材硬化前の状態を模式的に示す平面図であり、(b)は、(a)におけるb-b線断面図であり、(c)は、シェルの厚さが厚い場合のコア材硬化後の状態を模式的に示す平面図であり、(d)は、(c)におけるd-d線断面図である。
図11(a)は、シェルの厚さが薄い場合のコア材硬化前の状態を模式的に示す平面図であり、(b)は、(a)におけるb-b線断面図であり、(c)は、シェルの厚さが薄い場合のコア材硬化後の状態を模式的に示す平面図であり、(d)は、(c)におけるd-d線断面図である。
【0010】
なお、
図10、11に示した例では、シェル40は、上方に開口する有底箱形状に造形されて、シェル40で囲われた部分であるコア部50にコア材60が充填されている。
図10に示すように、シェル40の厚さが厚い場合は、コア材硬化前後でシェル40及びコア部50の変形はほとんど生じておらず、コア材60をほとんど歪みなく硬化させて、硬化コア材60aにすることが可能である。
【0011】
一方、
図11に示すように、シェル40の厚さが薄い場合は、
図11(c)、(d)に示すコア材硬化後において、シェル40の長手方向の外周面が少し膨らんだ状態となり、
図11(d)の断面図に示すように、シェル40の上部が少し広がった形態に変形し、これに伴いコア部50も変形することにより、硬化コア材60aが少し歪んだ形態となる。
このように、シェル40の厚さを薄くするとコア材60を一括して硬化させる工程において、加熱によってシェル40が軟化し、硬化前のコア材60の自重等も加わって、シェル40の形状が変形して、硬化コア材60aの寸法精度が低下する現象が生じることがある。
【0012】
このような現象に対して、シェル40の厚さを薄くした場合であっても、コア材60の硬化工程においてシェル40の変形が生じにくくするための方法の一例として、
図12に示す次の方法が考えられる。
図12(a)に示すように、コア部50にコア材60を充填する工程を終えた後、シェル40の開口部のコア材60の上面部分に存在する未硬化のシェル材2に活性化エネルギー線を照射して、シェル材2を硬化させて、
図12(b)に示すように、シェル40の開口部を封止する。その後、シェル40の開口部が封止された状態で、熱エネルギーを付与してコア材60を硬化させる工程を行う。
【0013】
しかしながら、
図12に示す方法では、コア材60を硬化させる工程において、熱エネルギーの付与によってコア材60から、コア材60内に内在、溶存しているガス(気体)が気泡となって発生した場合に、
図12(c)に示すように、気泡がシェル40との界面に溜まっていき、気泡による空隙60bが生じることがある。そして、空隙60bが残ったままコア材60が硬化されると、硬化コア材60aの表面に空隙60bに伴う窪みや隙間が形成されて、硬化コア材60aの成形不良が発生する懸念があるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段及びその効果】
【0015】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、いわゆるコアシェル方式の立体造形方法において、シェルの厚さを薄くした場合であっても、コア材を硬化させる工程で、シェルの変形を防止することができ、かつコア材から生じるガスを排除することができる立体造形方法、及び立体造形物の製造方法を提供することを目的とする。
【0016】
上記目的を達成するために本発明に係る立体造形方法(1)は、
立体造形物の外形を規定するシェルの内側面に囲われた部分であるコア部に液相材料であるコア材を充填するコア材充填工程と、
前記コア部内の前記コア材を硬化させるコア材硬化工程と、を含む立体造形方法であって、
前記コア材硬化工程が、
前記シェルの上面の開口部を、前記シェルの変形が防止可能な構造で、かつ前記コア材から発生するガスが通過可能な構造にした状態で実施されることを特徴としている。
【0017】
上記立体造形方法(1)によれば、前記コア材硬化工程が、前記シェルの上面の開口部を、前記シェルの変形が防止可能な構造で、かつ前記コア材から発生するガスが通過可能な構造にした状態で実施される。そのため、前記コア材硬化工程において、前記シェル及び前記コア部の変形を防止することができ、かつ前記コア材から発生したガスを前記シェルの外部へ排除することができ、硬化後のコア材に前記ガスによる空隙状の欠陥などの成形不良が発生する現象も防止することができる。
【0018】
また本発明に係る立体造形方法(2)は、上記立体造形方法(1)において、
前記状態が、
前記シェルの上面の開口部に、前記コア材から発生するガスが通過可能なガス通過部を有する蓋部がシェル材で造形された状態であることを特徴としている。
【0019】
上記立体造形方法(2)によれば、前記コア材硬化工程が、前記シェルの上面の開口部に、前記コア材から発生するガスが通過可能なガス通過部を有する蓋部がシェル材で造形された構造を有する状態で実施される。そのため、前記コア材硬化工程において、前記シェル材で造形された前記蓋部によって前記シェル及び前記コア部の変形を防止することができる。また、前記コア材から発生したガスを前記ガス通過部から前記シェルの外部へ排除することができ、硬化後のコア材に前記ガスによる空隙状の欠陥などの成形不良が発生する現象も防止することができる。
【0020】
また本発明に係る立体造形方法(3)は、上記立体造形方法(1)において、
前記状態が、
前記シェルの上面の開口部の一部に、前記シェルの変形が防止可能な形状を有する変形防止部がシェル材で造形された状態であることを特徴としている。
【0021】
上記立体造形方法(3)によれば、前記コア材硬化工程が、前記シェルの上面の開口部の一部に、前記シェルの変形が防止可能な形状を有する変形防止部がシェル材で造形された構造を有する状態で実施される。そのため、前記コア材硬化工程において、前記シェル材で造形された前記変形防止部によって前記シェル及び前記コア部の変形を防止することができる。また、前記変形防止部は前記シェルの上面の開口部の一部に形成されているので、前記コア材から発生したガスを前記シェルの上面の開口部のうち前記変形防止部が形成されていない部分を通して外部へ排除することができ、硬化後のコア材に前記ガスによる空隙状の欠陥などの成形不良が発生する現象も防止することができる。
【0022】
また本発明に係る立体造形方法(4)は、上記立体造形方法(1)において、
前記状態が、
前記シェルの上面の開口部に、前記コア材から発生するガスが通過可能なガス通過部を有する蓋体が被せられた状態であることを特徴としている。
【0023】
上記立体造形方法(4)によれば、前記コア材硬化工程が、前記シェルの上面の開口部に、前記コア材から発生するガスが通過可能なガス通過部を有する蓋体が被せられた構造を有する状態で実施される。そのため、前記コア材硬化工程において、前記シェルの上面の開口部に被せられた前記蓋体によって前記シェル及び前記コア部の変形を防止することができる。また、前記コア材から発生したガスを前記ガス通過部から外部へ排除することができ、硬化後のコア材に前記ガスによる空隙状の欠陥などの成形不良が発生する現象も防止することができる。
【0024】
また本発明に係る立体造形方法(5)は、上記立体造形方法(1)において、
前記状態が、
前記シェルの上面の開口部に、前記シェルの変形が防止可能な形状を有する拘束部材が取り付けられた状態であることを特徴としている。
【0025】
上記立体造形方法(5)によれば、前記コア材硬化工程が、前記シェルの上面の開口部に、前記シェルの変形が防止可能な形状を有する拘束部材が取り付けられた構造を有する状態で実施される。そのため、前記コア材硬化工程において、前記シェルの上面の開口部の一部に取り付けられた前記拘束部材で前記シェル及び前記コア部の変形を防止することができる。また、前記拘束部材は前記シェルの上面の開口部の一部に取り付けられるので、前記コア材から発生したガスを前記シェルの上面の開口部のうち前記拘束部材が取り付けられていない部分を通して外部へ排除することができ、硬化後のコア材に前記ガスによる空隙状の欠陥などの成形不良が発生する現象も防止することができる。
【0026】
また本発明に係る立体造形方法(6)は、上記立体造形方法(1)~(5)のいずれかにおいて、
前記コア材が熱硬化性樹脂からなり、
前記コア材硬化工程では、前記コア材に熱エネルギーを付与することにより、前記コア材を熱硬化させることを特徴としている。
【0027】
上記立体造形方法(6)によれば、前記コア材が熱硬化性樹脂からなるので、前記コア材充填工程を常温、常圧環境下で容易に行え、かつ前記コア材硬化工程において、前記コア材全体を一体化させた状態に効率良く硬化させることができる。
【0028】
また、上記立体造形方法(6)によれば、前記シェルが物性としてガラス転移温度を有し、該ガラス転移温度が前記コア材の熱硬化温度よりも低く、前記コア材硬化工程が、前記熱硬化温度以上の温度条件で実施される場合であっても、前記シェルが前記コア材の自重に耐えきれずに変形する現象を防止することができ、かつ前記コア材から発生したガスを前記シェルの外部へ排除することができ、硬化後のコア材に前記ガスによる空隙状の欠陥などの成形不良が発生する現象も防止することができる。
【0029】
また本発明に係る立体造形方法(7)は、上記立体造形方法(1)~(6)のいずれかにおいて、
前記コア材硬化工程の後に、
前記シェルの少なくとも一部を硬化後の前記コア材から分離させ、前記コア部の形状に倣った形状を有し前記コア材からなる立体造形物を得る分離工程を備えていることを特徴としている。
【0030】
上記立体造形方法(7)によれば、前記シェルの厚さを従来よりも薄くした場合であっても、前記コア材硬化工程において前記シェルの変形を防止することができ、さらに、前記コア材硬化工程後に前記分離工程を含んでいるので、前記シェルの少なくとも一部を硬化した前記コア材から容易に分離させることが可能となり、前記コア部の形状に倣った形状を有する硬化したコア材を主とする立体造形物を効率良く得ることができる。
【0031】
また本発明に係る立体造形物の製造方法は、上記立体造形方法(1)~(7)のいずれかを用いて立体造形物を製造することを特徴としている。
【0032】
上記立体造形物の製造方法によれば、前記立体造形物を製造する場合に、上記立体造形方法(1)~(7)のいずれかにより得られる効果を奏することとなり、前記コア材硬化工程において、前記シェル及び前記コア部の変形を防止でき、かつ硬化後のコア材の成形不良も防止でき、硬化したコア材の寸法形状の精度を高めることができる。そして、前記シェルの厚みを薄くすることができるので前記シェルの分離が容易となり、寸法形状の精度の高い、硬化後のコア材を主とする立体造形物を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施の形態(1)に係る立体造形方法に用いる立体造形装置の構成例を示す概略図である。
【
図2】実施の形態(1)に係る立体造形方法の一例を説明するための図であり、(a)はシェル造形工程、(b)はコア材充填工程を説明するための図である。
【
図3】実施の形態(1)に係る立体造形方法の一例を説明するための図であり、(a)は蓋部造形工程を説明するための図であり、(b)は蓋部造形工程後の立体造形物の平面図である。
【
図4】実施の形態(1)に係る立体造形方法におけるコア材硬化工程の一例を説明するための図であり、(a)はコア材硬化前、(b)はコア材硬化後の状態を示す断面図である。
【
図5】実施の形態(1)に係る立体造形方法における分離工程の一例を説明するための図であり、(a)はシェル分離前、(b)、(c)はシェル分離後の状態を示す断面図である。
【
図6】(a)、(b)は、別の実施の形態に係る立体造形方法によりシェルの開口部に変形防止部が造形された後の立体造形物の平面図である。
【
図7】実施の形態(2)に係る立体造形方法におけるコア材硬化工程の一例を説明するための図であり、(a)はコア材硬化前、(b)はコア材硬化後の状態を示す断面図である。
【
図8】別の実施の形態に係る立体造形方法におけるコア材硬化工程で用いられる拘束部材の一例を示す図であり、(a)は拘束部材がシェルに取り付けられた状態を示す平面図、(b)は(a)におけるb-b線断面図である。
【
図9】別の実施の形態に係る立体造形方法におけるコア材硬化工程で用いられる拘束部材の別の一例を示す図であり、(a)は拘束部材がシェルに取り付けられた状態を示す平面図、(b)は(a)におけるb-b線断面図である。
【
図10】コアシェル方式において、従来のコア材を一括して硬化させる工程の前後の立体造形物の状態の一例を模式的に示す図であり、(a)は、シェルの厚さが厚い場合のコア材硬化前の状態を模式的に示す平面図であり、(b)は、(a)におけるb-b線断面図であり、(c)は、シェルの厚さが厚い場合のコア材硬化後の状態を模式的に示す平面図であり、(d)は、(c)におけるd-d線断面図である。
【
図11】コアシェル方式において、従来のコア材を一括して硬化させる工程の前後の立体造形物の状態の一例を模式的に示す図であり、(a)は、シェルの厚さが薄い場合のコア材硬化前の状態を模式的に示す平面図であり、(b)は、(a)におけるb-b線断面図であり、(c)は、シェルの厚さが薄い場合のコア材硬化後の状態を模式的に示す平面図であり、(d)は、(c)におけるd-d線断面図である。
【
図12】(a)~(c)は、コア材を硬化する工程においてシェルの変形が生じにくくするための従来の方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る立体造形方法、及び立体造形物の製造方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、図面に記載しているシェルやコア部の形態などは、本発明の主旨が容易に理解できるように模式的に描かれており、これらの形態に限定されるものではない。
【0035】
図1は、実施の形態(1)に係る立体造形方法に用いる立体造形装置の構成例を示す概略図である。
立体造形装置10は、複合材3Dプリンタとしての機能を備え、造形が行われる造形槽11、レーザー光学系12、コア材供給系13、及び熱硬化手段16を主たる構成要素としている。
【0036】
造形槽11内には、シェル材2として、例えば、液相材料である光硬化性樹脂が貯留されており、図示しない光硬化性樹脂調整系により、その液面位置を所定位置に維持、調整可能となっている。シェル材2には、例えば、エポキシ系、アクリル系などの公知の紫外線硬化樹脂などが使用可能である。また、造形槽11内には造形台15が設けられている。造形台15は、造形中の造形物を支持するためのものであり、図示しない駆動機構により図中z軸方向の任意の位置に移動(昇降)かつ設置可能となっている。
【0037】
レーザー光学系12は、紫外線レーザー光源12a、及び走査光学系12bを備えている。紫外線レーザー光源12aから紫外線レーザー光12cが出射され、出射された紫外線レーザー光12cは、走査光学系12bの駆動により、シェル材2の液面上(すなわちxy平面)の所定範囲を走査させることが可能となっている。
【0038】
シェル材2は、活性エネルギー線の一つである紫外線レーザー光12cの照射により、
図1にて硬化済み紫外線硬化樹脂層3で示すように液面から所定の深さだけ硬化するようになっている。この硬化深度は、紫外線レーザー光源12aの出力を調整することにより、ある程度の幅で調整可能となっており、例えば、0.1mm~0.4mm程度の範囲で調整されている。
【0039】
したがって、造形台15上面をシェル材2の液面から所定の硬化深度だけ沈めた深さに位置させ、シェル材2の液面の任意の位置へ紫外線レーザー光12cを照射することにより、造形台15上に任意の面積の硬化済み紫外線硬化樹脂層3が形成される。そして、造形台15上に硬化済み紫外線硬化樹脂層3が形成された後、硬化深度分だけ造形台15を下降させ、シェル材2の液面の任意の位置へ紫外線レーザー光12cを照射することにより、硬化済み紫外線硬化樹脂層3の上に硬化済み紫外線硬化樹脂層3が積層されるようになっている。
【0040】
そして、造形台15の下降とシェル材2液面への紫外線レーザー光12cの照射とを繰り返し実施することにより、硬化済み紫外線硬化樹脂層3の積層が進行し、3次元形状の硬化済み紫外線硬化樹脂層3を得ることが可能となっている。
本実施の形態では、このようにして造形された造形物をシェル4(
図2参照)と呼ぶ。また、このシェル4は、コア材6を充填するための外殻層として機能するものであり、シェル4の内側面に囲われた部分のうち底面を有する部分をコア部5(
図2参照)と呼ぶ。
【0041】
コア材供給系13は、コア材6を内部に貯留するコア材タンク13a中から、ポンプ13bで配管系13c、13dを順に介して送りながらコア材6を供給し、ノズル14先端からコア材6を吐出する。ノズル14は図示しないノズル移動機構により、図中xyz各方向に移動かつ固定可能となっている。このため配管系13dはノズル14の移動に追随するようフレキシブルな構造及び材料で構成されている。
【0042】
コア材6は、例えば、エポキシ系、アクリル系など公知の液相材料である熱硬化性樹脂の中に強化材が均一に分散された複合材で構成されている。前記強化材は、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、及びアラミド繊維のうちの少なくとも1つを含む繊維状の強化材でもよいし、シリカ等の無機材料粉などでもよい。コア材6にはシェル材2よりも高比重なものが使用されている。また、コア材6の粘度は、シェル材2の粘度よりも2倍以上であることが好ましい。
【0043】
熱硬化手段16は、コア材硬化工程で使用されるものであり、加熱対象を密閉可能なチャンバを有する加熱炉で構成されている。ここでの加熱対象は、造形槽11から取り出された、コア材6が充填されたシェル4(
図4参照)であり、熱硬化手段16は、その加熱炉内をコア材6の熱硬化温度よりも高い温度まで昇降させることが可能となっている。
【0044】
本実施の形態では、熱硬化手段16を用いて、コア材6が充填されたシェル4を加熱するコア材硬化工程が、シェル4の上面の開口部を、シェル4の変形が防止可能な構造で、かつコア材6から発生するガスが通過可能な構造にした状態で実施されることを特徴の一つとしている。
実施の形態(1)では、その一形態として、シェル4の上面の開口部に、コア材6から発生するガスが通過可能なガス通過部4bを有する蓋部4aがシェル材2で造形された構造を有する状態でコア材硬化工程が実施されるようになっている(
図4参照)。
【0045】
そして、熱硬化手段16を用いて、シェル4に充填されているコア材6に熱エネルギーを付与し、コア材6の熱硬化温度よりも高い温度まで昇温させて、ガス通過部4bを有する蓋部4aでシェル4が変形する現象を抑えた状態で、コア材6を一括して熱硬化させることが可能となっている。
シェル4は、物性としてガラス転移温度Tgsを有し、このガラス転移温度Tgsはコア材6の熱硬化温度Tpcよりも低い値となっている。
熱硬化手段16を用いたコア材硬化工程では、コア材6が充填されたシェル4の上面にガス通過部4bを有する蓋部4aがシェル材2で造形された状態で加熱が行われる。そのため、熱硬化手段16の内部をコア材6の熱硬化温度Tpcよりも高い温度まで上昇させて、シェル4が軟らかくなったとしても、シェル4がコア材6の自重に耐えきれずに変形するのを蓋部4aによって抑えることができ、これによりコア部5の変形を防止することが可能となっている。
【0046】
この硬化したコア材6を本実施の形態では硬化コア材6a(
図4参照)と呼び、この硬化コア材6aが本実施の形態における立体造形物を主として構成する。
そのため、コア部5が後に形成される立体造形物の形状になるようにシェル4が造形されている。そして、このコア部5にコア材6を充填してからコア材6を熱硬化させることにより、硬化コア材6aを主とする所望の形状を有する立体造形物を得ることが可能となっている。
本方法によれば、硬化コア材6aにより形成される立体造形物には積層界面が存在しないため、剛性、強度に方向性が無い立体造形物を造形することが可能となっている。
【0047】
次に、実施の形態(1)に係る立体造形方法の一例について、
図2~5を用いて説明する。
実施の形態(1)に係る立体造形方法では、最初に立体造形装置10によってシェル4の造形、及び造形されたシェル4内へのコア材6の充填が行われる。
具体的には、まず、ノズル14が紫外線レーザー光12cの照射範囲から退避した状態において、造形台15上のシェル材2の液面の任意の位置への紫外線レーザー光12cの照射、及び硬化深度分の造形台15の降下が交互に行われることにより、
図2(a)に示すように所望の形状のコア部5を有するシェル4が造形される。上記のようにしてシェル4を造形する工程をシェル造形工程という。
図2に示すシェル4は、上面に矩形の開口部を有する有底箱形状に造形されている。また、シェル4の厚さは、特に限定されないが、後に分離工程を有する場合は、例えば、1mm程度以下となるように薄く造形することが好ましい。
【0048】
次に、
図2(b)に示すようにシェル4内に形成されたコア部5内へノズル14が移動し、ノズル14からコア部5へコア材6が吐出されることにより、コア部5内へのコア材6の充填が進行する。上記のようにしてシェル4の内側面に囲われた部分であるコア部5へコア材6を充填する工程をコア材充填工程という。
【0049】
本実施の形態では、コア材充填工程は、シェル4が造形槽11内のシェル材2に浸漬した状態で実施され、コア材6の充填前には、
図2(a)に示すようにコア部5にシェル材2が存在する。そして、シェル材2より比重が大きいコア材6がコア部5に充填されていくにしたがって、コア部5内のシェル材2は押し上げられ、
図2(b)に示すように、シェル4の上部に設けられた開口部を経てコア部5からシェル4の外部へシェル材2が押し出されて、シェル材2からコア材6への置換が行われる。
【0050】
なお、上記のシェル造形工程、及びコア材充填工程は交互に複数回ずつ実施されてもよい。すなわち、所定の高さまでシェル4を造形し、そのシェル4によって形成されるコア部5にコア材6を充填した後、さらにシェル4を増築し、そして増築されたシェル4によって新たに形成されたコア部5にコア材6を充填する、という工程を繰り返し行っても良い。このようにシェル4の造形を複数回に分割することで、特にコア部5が複雑な形状を有する場合にも、段階的にコア材6を充填することによってコア部5の隅々までコア材6を充填することが可能となる。なお、上記シェル造形工程およびコア材充填工程は、通常室温(例えば、20℃~30℃)環境下にて実施される。
【0051】
そして、コア材充填工程が完了すると、次にシェル4の上面の開口部に、コア材6から発生するガスが通過可能なガス通過部4bを有する蓋部4aをシェル材2で造形する工程(蓋部造形工程)が実施される(
図3参照)。
具体的には、コア材充填工程が完了すると、ノズル14が紫外線レーザー光12cの照射範囲から退避させられる。その後、シェル4の開口部の上面、換言すれば、コア材6の上面にあるシェル材2の液面に対して、ガス通過部4bとなる部分を除く位置への紫外線レーザー光12cの照射、及び硬化深度分の造形台15の降下が交互に行われる。この動作により、シェル4の開口部のコア材6の上面にあるシェル材2が硬化されていき、
図3(a)、(b)に示すように、シェル4の開口部にガス通過部4bを有する蓋部4aが造形される。
【0052】
なお、蓋部造形工程では、蓋部4aの造形時におけるシェル材2の硬化深度が、シェル4の造形時におけるシェル材2の硬化深度よりも深くなる条件で紫外線レーザー光12cを照射してもよい。例えば、硬化深度が深くなるように紫外線レーザー光12cの走査条件を調整することにより、0.5mm程度の深さのシェル材2を一度の走査で硬化させることも可能である。
【0053】
そして、蓋部造形工程が完了すると、次に造形槽11内にある造形台15をシェル材2の液面よりも上に上昇させて、コア材6が充填され、かつ蓋部4aが造形されたシェル4を造形台15から取り外し、次のコア材硬化工程に進む。
【0054】
コア材硬化工程では、
図4(a)に示すように、コア部5にコア材6が充填され、上面にガス通過部4bを有する蓋部4aが造形された状態のシェル4を熱硬化手段16に投入して、コア材6の硬化処理を開始する。
すなわち、シェル4を熱硬化手段16内に載置し、熱硬化手段16内をコア材6の熱硬化温度Tpcよりも高い温度まで上昇させることにより、シェル4及びコア材6を含む造形物全体が加熱されて、コア材6の硬化が始まり、硬化が進行していく。そこから所定時間経過するとコア材6全体の硬化が完了して、
図4(b)に示すように、コア部5に硬化コア材6aが形成される。
【0055】
コア材硬化工程では、シェル4の上面の開口部に、コア材6から発生するガスが通過可能なガス通過部4bを有する蓋部4aが造形された構造を有する状態で加熱が実施される。そのため、コア材6が加熱されて硬化していく際に、コア材6の中にガスが気泡となって生じたとしても、これらガスがガス通過部4bからシェル4の外部へ排除されるようになっている。
また、コア材硬化工程において、シェル4のガラス転移温度Tgs以上の温度で加熱されて、シェル4が軟らかくなったとしても、シェル4の上面を覆う蓋部4aによって、シェル4の側壁がコア材6の自重に耐えきれずに変形する現象を抑えることが可能となっている。
【0056】
なお、コア部5に充填されたコア材6全体を硬化させるためには、本実施の形態のようにコア材6として熱硬化性樹脂からなる材料を使用し、コア材硬化工程では、例えば光エネルギーによる硬化よりも熱エネルギーによるコア材6の硬化を実施することが好ましい。
【0057】
コア材硬化工程が完了した後、熱硬化手段16内からシェル4(コア部5に硬化コア材6aが形成された状態のシェル4)を取り出し、次の分離工程に進む。
【0058】
この分離工程は、シェル4の少なくとも一部を硬化コア材6aから分離させる工程である。
図5(a)に示すように、切削工具などの工具17を用いて、不要なシェル4や蓋部4aを硬化コア材6aから分離することによって、
図5(b)に示すように、コア部5の形状に倣った形状を有する硬化コア材6aからなる立体造形物1が得られる。
【0059】
なお、
図5(b)に示す例では、全てのシェル4が分離されて硬化コア材6aのみからなる立体造形物1が得られているが、これに限らず、
図5(c)に示すように、シェル4の一部が残され、このシェル4の一部と硬化コア材6aとを合わせたものを立体造形物1と呼んでもよい。
【0060】
上記実施の形態(1)に係る立体造形方法によれば、コア材硬化工程が、シェル4の上面の開口部に、コア材6から発生するガスが通過可能なガス通過部4bを有する蓋部4aがシェル材2で造形された構造を有する状態で実施される。そのため、コア材硬化工程において、加熱によりシェル4が軟らかくなったとしても、シェル材2で造形された蓋部4aによってシェル4及びコア部5の変形を防止することができ、シェル4の厚さを、シェル4が分離しやすいように1mm程度以下に薄くした場合であっても、シェル4及びコア部5の変形を防止することができる。また、コア材硬化工程において、加熱によってコア材6から、コア材6内に内在、溶存しているガスが気泡となって発生した場合に、ガスを蓋部4aに形成されたガス通過部4bからシェル4の外部へ排除することができ、硬化コア材6aに前記ガスによる空隙状の欠陥などの成形不良が発生する現象も防止することができる。
【0061】
また上記実施の形態(1)に係る立体造形方法によれば、コア材6が熱硬化性樹脂からなるので、コア材充填工程を常温、常圧環境下で容易に行え、かつコア材硬化工程において、コア材6全体を一体化させた状態に効率良く硬化させることができる。
【0062】
また上記実施の形態(1)に係る立体造形方法によれば、シェル4の厚さを従来よりも薄くした場合であっても、コア材硬化工程においてシェル4の変形を防止することができる。さらに、コア材硬化工程後に分離工程を含んでいるので、シェル4の少なくとも一部を硬化コア材6aから容易に分離させることが可能となり、コア部5の形状に倣った形状を有する硬化コア材6aを主とする立体造形物1を効率良く得ることができる。
【0063】
また上記実施の形態(1)に係る立体造形方法を用いて立体造形物1を製造することにより、立体造形物1を製造する場合に、上記立体造形方法により得られる効果を奏することとなる。すなわち、コア材硬化工程において、シェル4及びコア部5の変形を防止でき、かつ硬化コア材6aの成形不良も防止でき、硬化コア材6aの寸法形状の精度を高めることができる。そして、シェル4の厚みを従来よりも薄くすることができるのでシェル4の分離が容易となり、寸法形状の精度の高い硬化コア材6aを主とする立体造形物を製造することが可能となる。
【0064】
また、別の実施の形態に係る立体造形方法では、上記した蓋部造形工程に代えて、シェル4の上面の開口部の一部に、シェル4の変形が防止可能な形状を有する変形防止部4c、4d(
図6参照)をシェル材2で造形する工程(変形防止部造形工程)を行うようにしてもよい。そして、変形防止部造形工程後のコア材硬化工程が、シェル4の上面の開口部の一部に、変形防止部4c、4dがシェル材2で造形された構造を有する状態で実施されるようにしてもよい。
【0065】
図6(a)、(b)は、別の実施の形態に係る立体造形方法によりシェルの開口部に変形防止部が造形された後の状態の一例を示す平面図である。
図6(a)に示した、変形防止部造形工程後の立体造形物は、シェル4の外形が平面視略長方形の箱状であり、シェル4の内側面に囲われた部分であるコア部5にコア材6が充填され、シェル4の上面の開口部のうち平面視において向かい合う長辺の略中央部が連結された帯状の変形防止部4cがシェル材2から造形されたものとなっている。
【0066】
また、
図6(b)に示した、別の変形防止部造形工程後の立体造形物は、シェル4の外形が平面視略長方形の箱状であり、シェル4の内側面に囲われた部分であるコア部5にコア材6が充填され、シェル4の上面の開口部のうち平面視において4辺の略中央部に角部が連結されたひし形形状をした変形防止部4dがシェル材2から造形されたものとなっている。
【0067】
なお、変形防止部4c、4dの形態は、
図6(a)、(b)に示した形態に限定されるものではなく、シェル4の形状に応じて、コア材硬化工程においてシェル4の変形が想定される開口部の任意の箇所に、その変形を抑えることができる形態に適宜造形すればよい。
【0068】
上記した別の実施の形態に係る立体造形方法によれば、コア材硬化工程が、シェル4の上面の開口部の一部に、シェル4の変形が防止可能な形状を有する変形防止部4c、4dがシェル材2で造形された構造を有する状態で実施される。そのため、コア材硬化工程において、シェル材2で造形された変形防止部4c、4dによってシェル4及びコア部5の変形を防止することができる。また、変形防止部4c、4dはシェル4の上面の開口部の一部に形成されているので、コア材6から発生したガスをシェル4の上面の開口部のうち変形防止部4c、4dが造形されていない部分を通して外部へ排除することができ、硬化コア材6aに前記ガスによる空隙状の欠陥などの成形不良が発生する現象も防止することができる。
【0069】
なお、上記した実施の形態に係る立体造形方法における蓋部造形工程や変形防止部造形工程は、シェル材2の造形槽11内において、紫外線レーザー光12cを走査させてシェル材2を硬化させる描画法で行われているが、蓋部4a(
図3参照)、変形防止部4c、4d(
図6参照)の造形方法は、前記描画法に限定されるものではない。
【0070】
例えば、別の形態では、コア材充填工程後、造形槽11内にある造形台15をシェル材2の液面よりも上に上昇させた後、造形台15上のシェル4の開口部の上側に、ガスを通過させる部分に紫外光が照射されないように形成されたマスクパターンを配置し、該マスクパターンの上方から紫外光ランプを照射して、マスクパターンの形状にシェル材2を硬化させる転写法を用いて、蓋部4a、変形防止部4c、4dを造形する方法を採用してもよい。
【0071】
図7は、実施の形態(2)に係る立体造形方法におけるコア材硬化工程の一例を説明するための図であり、(a)はコア材硬化前、(b)はコア材硬化後の状態を示す図である。
なお、実施の形態(2)に係る立体造形方法におけるシェル造形工程とコア材充填工程は、上記した実施の形態(1)に係る立体造形方法と略同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0072】
実施の形態(2)に係る立体造形方法では、コア材充填工程後の蓋部造形工程を行わずに、コア材充填工程後のコア材硬化工程が、シェル4の上面の開口部に、コア材6から発生するガスが通過可能なガス通過部7aを有する蓋体7が被せられた構造を有する状態で実施されるようになっている。
蓋体7は、シェル4の上面の開口部に冠着可能な形状を有し、コア材硬化工程において熱変形しにくい材料、例えば、金属などで構成されている。ガス通過部7aは、ガスを排出可能な貫通孔からなり、蓋体7に複数箇所、所定間隔で設けられている。
【0073】
実施の形態(2)に係る立体造形方法におけるコア材硬化工程では、
図7(a)に示すように、コア材6が充填された状態のシェル4の上面の開口部に、コア材6から発生するガスが通過可能なガス通過部7aを有する蓋体7を被せ、蓋体7が被せられたシェル4を熱硬化手段16に投入して、コア材6の硬化処理を開始する。
すなわち、ガス通過部7aを有する蓋体7が被せられたシェル4を熱硬化手段16内に載置し、熱硬化手段16内をコア材6の熱硬化温度Tpcよりも高い温度まで上昇させることにより、シェル4及びコア材6を含む造形物全体が加熱されて、コア材6の硬化が始まり、硬化が進行していく。そこから所定時間経過するとコア材6全体の硬化が完了して、
図7(b)に示すように、コア部5に硬化コア材6aが形成される。
【0074】
コア材硬化工程では、シェル4の上面の開口部にガス通過部7aを有する蓋体7が被せられた状態で加熱が実施されるので、コア材6が加熱されて硬化していく際に、コア材6の中にガスによる気泡が生じたとしても、これらガスがガス通過部7aを通って外部へ排除されるようになっている。
また、コア材硬化工程において、シェル4のガラス転移温度Tgs以上の温度で加熱されて、シェル4が軟らかくなったとしても、シェル4の上面に被せられた蓋体7によって、シェル4の側壁がコア材6の自重に耐えきれずに変形する現象を抑えることが可能となっている。
【0075】
そして、コア材硬化工程が完了した後、熱硬化手段16内から蓋体7が被せられたシェル4(コア部5に硬化コア材6aが形成された状態のシェル4)を取り出し、蓋体7をシェル4から取り外した後、分離工程に進む。
分離工程は、上記した実施の形態(1)に係る立体造形方法と同様の方法で行うことができ、分離工程によって、
図5に示したように、全てのシェル4が分離されて硬化コア材6aのみからなる立体造形物1や、シェル4の一部と硬化コア材6aとで構成された立体造形物1を得ることができる。
【0076】
上記実施の形態(2)に係る立体造形方法によれば、コア材硬化工程が、シェル4の上面の開口部に、コア材6から発生するガスが通過可能なガス通過部7aを有する蓋体7が被せられた構造を有する状態で実施される。そのため、コア材硬化工程において、シェル4の上面の開口部に被せられた蓋体7によってシェル4及びコア部5の変形を防止することができ、シェル4の厚さを1mm程度以下に薄くすることが可能となる。また、コア材硬化工程において、加熱によってコア材6から発生したガスをガス通過部7aから造形物の外へ排除することができ、硬化コア材6aに前記ガスによる空隙状の欠陥などの成形不良が発生する現象も防止することができる。
【0077】
なお、別の実施の形態に係る立体造形方法では、上記したシェル4の開口部に、ガス通過部7aを有する蓋体7が被せられた状態でコア材硬化工程を行う方法に代えて、
図8、
図9に示すように、シェル4の開口部に、シェル4の変形が防止可能な形状を有する拘束部材8、8Aが取り付けられた状態でコア材硬化工程を行うようにしてもよい。
【0078】
図8、9は、別の実施の形態に係る立体造形方法におけるコア材硬化工程で用いられる拘束部材の一例を説明するための図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるb-b線断面図である。
図8(a)、(b)は、コア材硬化工程を行う前の立体造形物の一例を示しており、該立体造形物は、シェル4が略長方形の箱形状を有し、シェル4の内側面に囲われた部分であるコア部5にコア材6が充填され、シェル4の上面の開口部のうち平面視において向かい合う長辺の略中央部分に下向きコ字形状を有する拘束部材8が取り付けられた構造となっている。
【0079】
また、
図9(a)、(b)に示した、コア材硬化工程を行う前の別の立体造形物は、シェル4が略長方形の箱形状を有し、シェル4の内側面に囲われた部分であるコア部5にコア材6が充填され、シェル4の上面の開口部のうち平面視において4辺の略中央部部分にひし形形状をした拘束部材8Aが取り付けられた構造となっている。
【0080】
拘束部材8、8Aは、シェル4の上面の開口部の一部分に嵌着可能な形状を有し、コア材硬化工程において熱変形しにくい材料、例えば、金属などで構成されている。なお、拘束部材8、8Aは、
図8、9に示した形態に限定されるものではなく、コア材硬化工程においてシェル4の変形が想定される箇所に嵌着可能な様々な形状を採用することができる。
【0081】
上記した別の実施の形態に係る立体造形方法によれば、コア材硬化工程が、シェル4の上面の開口部に、シェル4の変形が防止可能な形状を有する拘束部材8、8Aが取り付けられた構造を有する状態で実施される。そのため、コア材硬化工程において、シェル4の上面の開口部の一部に取り付けられた拘束部材8、8Aによってシェル4及びコア部5の変形を防止することができる。また、拘束部材8、8Aはシェル4の上面の開口部の一部に取り付けられるので、コア材6から発生したガスをシェル4の上面の開口部のうち拘束部材8、8Aが取り付けられていない部分を通して造形物の外部へ排除することができ、硬化後のコア材に前記ガスによる空隙状の欠陥などの成形不良が発生する現象も防止することができる。
【0082】
本発明は、以上の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
なお、上記実施の形態では、シェル4の造形に用いられるシェル材2が液相材料である場合について説明したが、シェル4の造形は、液相材料を硬化させる方法(液相重合法)に限定されるものではなく、たとえば熱溶解積層方式(Fused Deposition Molding、FDM)等の他の付加製造の方法などが適用されてもよい。
また、コア材6はコア部5に充填後一度に硬化させることが可能であれば、熱硬化性樹脂に限らずたとえば光硬化性樹脂などから構成されていても構わない。
【0083】
本発明は、3Dプリンタなどの付加製造技術の分野において広く適用可能であり、係る分野に本発明を適用することにより、例えば、自動車、航空機、ロボットなどの各種産業機器に用いられる部品、介護用品、スポーツ用品など、特に、軽量且つ高強度が要求される部品、製品の試作のみならず、量産化を実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0084】
1 立体造形物
2 シェル材
3 硬化済み紫外線硬化樹脂層
4、40 シェル
4a 蓋部
4b ガス通過部
4c、4d 変形防止部
5、50 コア部
6、60 コア材
6a、60a 硬化コア材
60b 空隙
7 蓋体
7a ガス通過部
8、8A 拘束部材
10 立体造形装置
11 造形槽
12 レーザー光学系
12a 紫外線レーザー光源
12b 走査光学系
12c 紫外線レーザー光
13 コア材供給系
13a コア材タンク
13b ポンプ
13c、13d 配管系
14 ノズル
15 造形台
16 熱硬化手段
17 工具