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  • 特開-樹脂成形品の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115520
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/00 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
B29C45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024005104
(22)【出願日】2024-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2023020953
(32)【優先日】2023-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】505354626
【氏名又は名称】高瀬樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 幹夫
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AA11
4F206AA13
4F206AA28
4F206AA32
4F206AB11
4F206AB13
4F206AB28
4F206AE03
4F206AH17
4F206AH42
4F206AR12
4F206JA07
4F206JL02
(57)【要約】
【課題】導電性に優れるとともに、外観不良の発生を抑制した樹脂成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】熱可塑性樹脂と金属フィラーを混合することで混合組成物を得る工程と、前記混合組成物を成形機に投入し、樹脂成形品を成形する工程とを備え、前記金属フィラーは前記樹脂成形品に対して6.1~10重量%含まれることを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と金属フィラーを混合することで混合組成物を得る工程と、前記混合組成物を成形機に投入し、樹脂成形品を成形する工程とを備え、
前記金属フィラーは前記樹脂成形品に対して6.1~10重量%含まれることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記金属フィラーは、フィラー径30~100μm、フィラー長さ2~10mmであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂はポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート及びABS樹脂から選択される1種類以上であり、前記金属フィラーがステンレス鋼、銅、黄銅、メタルコート材から選択される1種類以上であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、表面外観に優れた樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂に導電性を付与する目的で導電材料を充填し、これを成形加工した成形品として、ICチップの搬送に使用されるICトレーやチップトレー、搬送用トレー、自動車部品等が挙げられる。
例えば、特許文献1には、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル及び炭素系導電材料(例えばカーボンブラック)を含む樹脂組成物の製造方法が開示されているが、このような樹脂組成物の成形品には、その表面に外観不良を生じることがあった。
例えば、気泡の発生により生じる突起や、剥離等により発生する樹脂異物のパーティクルによる外観不良を改善するために、超純水やドライエアーを用いて成形品を洗浄するなど、外観不良の改善に手間やコストが掛かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3844436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、導電性に優れるとともに、外観不良の発生を抑制した樹脂成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る樹脂成形品の製造方法は、熱可塑性樹脂と金属フィラーを混合することで混合組成物を得る工程と、前記混合組成物を成形機に投入し、樹脂成形品を成形する工程とを備え、前記金属フィラーは前記樹脂成形品に対して6.1~10重量%含まれることを特徴とする。
【0006】
本発明は、導電材料として金属フィラーを用い、熱可塑性樹脂と金属フィラーを混合した混合組成物を成形機にホッパー等を介して直接的に投入し、樹脂成形品を得る点に特徴がある。
本発明の製造方法では、例えば、マスターバッチペレットを造り、さらにこのペレットと希釈樹脂を混合してから樹脂成形品を成形する方法に比べて、金属フィラーの破断を抑制できる。
金属系は、炭素系に比べて比重が高く(例えば、ステンレス鋼、銅の比重は6~8g/cmであり、カーボンパウダー、カーボンファイバーの比重は約2g/cmである)、金属フィラーを用いることで炭素系より体積比率は1/3~1/4と低くなり、熱可塑性樹脂の流動性は上昇する。
金属フィラーの含有量が多いと導電性が高くなるが、多すぎると樹脂の流動性が低下するので、熱可塑性樹脂の流動性を上げて表面に外観不良を生じさせず、導電性にも優れる樹脂成形品を製造するためには、金属フィラーは樹脂成形品に対して6.1~10重量%含まれることが好ましい。
これにより、表面外観と導電性に優れた樹脂成形品を製造できる。
【0007】
本発明において、前記金属フィラーは、フィラー径30~100μm、フィラー長さ2~10mmであることが好ましい。
径の細い金属フィラーほど、その生産効率は低く、価格は高くなる。
本発明の製造方法によれば、フィラー径が大きくても、導電性や外観不良の低減が可能であり、例えば、フィラー径は30~100μmであってもよい。
【0008】
本発明において、前記熱可塑性樹脂はポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート及びABS樹脂から選択される1種類以上であり、前記金属フィラーがステンレス鋼、銅、黄銅、メタルコート材から選択される1種類以上であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導電性と表面外観に優れた樹脂成形品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】金属フィラー10重量%含有小型トレーの拡大写真を示す。
図2】カーボンパウダー25重量%含有小型トレーの拡大写真を示す。
図3】金属フィラー含有小型トレーの表面抵抗値を示す。
図4】カーボンパウダー含有小型トレーの表面抵抗値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、外観不良のうち、例えば、気泡の発生により生じる突起や、剥離等により発生する樹脂異物のパーティクル等の発生を抑制し、導電性に優れた樹脂成形品を製造することを目的とする。
これらの外観不良は、従来、超音波洗浄等にて除去していたのに対して、本発明においては、この工程が不要になり、特に洗浄工程を外注に頼っていた場合のコストダウンの効果は大きい。
本発明において、熱可塑性樹脂とは、例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネー及びABS樹脂等から選択される1種類以上が挙げられ、これらは公知の方法で製造されたものであれば、特に限定されるものではない。
金属フィラーは、例えば、ステンレス鋼、銅、黄銅、メタルコート材から選択される1種類以上が挙げられ、メタルコート材とは、繊維材の表面にメタルをコーティングしたものをいう。
金属フィラーのフィラー径は30~100μmであることが好ましく、フィラー長さは2~10mmが好ましい。
フィラー長さが長い方が表面抵抗値を下げるのに効果的であるが、長くなると樹脂との均一な混合が難しくなる。
従来の金属フィラーをあらかじめ熱可塑性樹脂中に存在させたマスターバッチペレットを造り、このペレットと希釈用の熱可塑性樹脂を混合する方法では、ペレットを造る際にフィラーが剪断されるが、本発明ではその恐れがなくなる。
本発明では、金属フィラーが6.1~10重量%になるように熱可塑性樹脂と混合することが好ましく、7~10重量%になるように混合することがより好ましい。
金属フィラーは短繊維でも長繊維でもよいが、長繊維の場合には10mm以下にカットして用いるのが好ましい。
なお、熱可塑性樹脂と金属フィラーの混合の際に、分散性を上げるためにカップリング剤(例えば、シランカップリング材等)を添加してもよい。
熱可塑性樹脂と金属フィラーを混合した混合組成物を、直接射出成形機や押出成形機等に投入するのが好ましいが、射出成形機等に熱可塑性樹脂と金属フィラーとの混合工程を設けてもよい。
なお、樹脂成形品の製造の際に、樹脂成形品の機能を阻害しない範囲で必要に応じて耐熱安定剤、耐候剤、滑剤等の添加剤を配合してもよい。
本発明における樹脂成形品の用途としては、例えば、ICトレー、チップトレー、搬送用トレー等に好適に使用できる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0012】
ステンレス鋼からなる金属フィラー(径30μm、長さ3mm)と、ポリフェニレンエーテルを適温(約100℃)で乾燥させ、金属フィラー0~10重量%となるようにポリフェニレンエーテルを混合し、射出成形機(FE80、日精樹脂工業株式会社製)にて、背圧約50kg/cm、樹脂温度300℃、金型温度80℃、充填速度約1.0秒の条件で射出成形して、金属フィラー含有小型トレーを得た。
また、カーボンパウダー7.5~25重量%となるようにポリフェニレンエーテルを混合し、同様に射出成形して、カーボンパウダー含有小型トレーを得た。
得られた小型トレーに対し、表面抵抗値の測定及び外観評価(気泡、剥離の有無の確認)をした。
【0013】
表面抵抗値の測定結果を、図3、4に示す。
図3に金属フィラー含有小型トレーを、図4にカーボンパウダー含有小型トレーの表面抵抗値を示す。
金属フィラー含有小型トレーでは、金属フィラーを6重量%より多く含有した場合に表面抵抗値が低下した。
具体的には、金属フィラー7、7.5、又は10重量%含有した場合に、それぞれ表面抵抗値が約1011、1011、10であった。
一方、図4に示すように、カーボンパウダーを含有することで表面抵抗値を約10にしようとすると、カーボンパウダー25重量%以上含有する必要があることがわかる。
【0014】
得られた小型トレーの拡大写真を、図1、2に示す。
図1に金属フィラー10重量%含有小型トレーを、図2にカーボンパウダー25重量%含有小型トレーを示す。
カーボンパウダー含有小型トレーの表面には、気泡及び剥離が認められるのに対し、金属フィラー含有小型トレーの表面には、気泡及び剥離が認められなかった。
金属フィラー含有小型トレーは、金属フィラー6、7、7.5、又は10重量%含有した場合のいずれも、表面に気泡及び剥離が認められなかった。
なお、図1に示した実施例の写真は、照光の下に撮影したので光の反射による繊維状の模様が現われているが、これは表面品質に直接関係していないものである。
このような繊維による模様は、公知のカップリング剤の添加にて改善されることも知られている。
図1
図2
図3
図4