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特開2024-115522曲管、曲線構造物、曲線構造物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115522
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】曲管、曲線構造物、曲線構造物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 58/10 20060101AFI20240819BHJP
   F16L 1/028 20060101ALI20240819BHJP
   F16L 9/12 20060101ALI20240819BHJP
   F16L 9/22 20060101ALI20240819BHJP
   F16L 13/10 20060101ALI20240819BHJP
   F16L 43/00 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
F16L58/10
F16L1/028 R
F16L1/028 T
F16L9/12
F16L9/22
F16L13/10
F16L43/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024008861
(22)【出願日】2024-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2023020767
(32)【優先日】2023-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】吉井 孝育
【テーマコード(参考)】
3H013
3H019
3H024
3H111
【Fターム(参考)】
3H013DA01
3H019EA11
3H019EA19
3H024EA04
3H024EB01
3H024EB08
3H024EC04
3H024ED06
3H024ED12
3H024EE06
3H111AA01
3H111BA15
3H111BA26
3H111CA33
3H111CA39
3H111CB04
3H111CB14
3H111DA08
(57)【要約】
【課題】防護工等に含まれるアルカリ性の成分により劣化することを抑制した曲管、その曲管を用いた曲線構造物および曲線構造物の製造方法を提供する。
【解決手段】一端面が管軸方向に対して傾斜した複数の短管を、曲管状となるように端面同士を突き合せた状態で接合される連結部31を含む曲管1であって、連結部31の外周面31aを覆うように設けられた第1FRP層21と、第1FRP層21の外周面21aを覆うように設けられた第2FRP層22と、を有し、第2FRP層22に含まれる樹脂が、イソフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂、テレフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂およびエポキシ樹脂から選択される少なくとも1種を含む、曲管1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端面が管軸方向に対して傾斜した複数の短管を、曲管状となるように端面同士を突き合せた状態で接合される連結部を含む曲管であって、
前記連結部の外周面を覆うように設けられた第1FRP層と、
前記第1FRP層の外周面を覆うように設けられた第2FRP層と、を有し、
前記第2FRP層に含まれる樹脂が、イソフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂、テレフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂およびエポキシ樹脂から選択される少なくとも1種を含む、曲管。
【請求項2】
前記第1FRP層に含まれる樹脂と前記第2FRP層に含まれる樹脂が異なる、請求項1に記載の曲管。
【請求項3】
前記第2FRP層に含まれる樹脂が複数の樹脂からなる混合物であり、
前記混合物の成分のうち40質量%以上が、イソフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂、テレフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の曲管。
【請求項4】
前記短管が3つ以上の短管からなる曲管において、
前記第2FRP層は、前記曲管の両端部を除く、前記短管の外周面全体を覆っている、請求項1に記載の曲管。
【請求項5】
コンクリートに埋設された前記曲管において、
前記第2FRP層は、前記短管におけるコンクリートに埋設される範囲全体を覆っている、請求項1または4に記載の曲管。
【請求項6】
前記第2FRP層の厚さが0.2mm以上である、請求項1または4に記載の曲管。
【請求項7】
敷設された管路と、防護工と、を有し、
前記管路は、曲線部を有し、
前記防護工は、前記管路の曲線部の一部または全部を覆い、
前記曲線部は、請求項1に記載の曲管からなる、曲線構造物。
【請求項8】
管路を敷設する工程と、
前記管路の曲線部の一部または全部を覆う防護工を形成する工程と、を有し、
前記曲線部は、請求項1に記載の曲管からなる、曲線構造物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化プラスチック管(Fiberglass Reinforced Plastic Pipes、以下、「FRP管」と略す。)、強化プラスチック複合管(Fiberglass Reinforced Plastic Mortar Pipes、以下、「FRPM管」と略す。)で施工されるパイプラインの曲線部に用いられる曲管、その曲管を用いた曲線構造物および曲線構造物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FRP管やFRPM管からなる管路の曲線部において、同質曲管あるいは多節曲管が用いられている(例えば、特許文献1参照)。曲管は、少なくとも一端面が管軸方向に対して傾斜した複数の繊維強化プラスチック製短管を、曲管状となるように端面同士を突き合わせた状態で接合したものである。各繊維強化プラスチック製短管は、それぞれの突き合わせ部の外周面に、繊維の方向性がランダムな布状体とクロス状に織られた補強繊維とを樹脂含浸させて積層した積層体を形成することによって接合されており、前記積層体が互いに隣接するものと連続するように形成されている。
【0003】
曲管は、土中に埋設して用いられる。土中に埋設された曲管は、土圧で撓みが発生した際に上記積層体に過大な応力が発生し、上記積層体が破壊する可能性がある。よって、土中に曲管を埋設する際、曲管が撓むのを防止するために、曲管の周囲に撓み防護工を打設する。
【0004】
曲管の管路に内圧が加わった場合、曲線部にスラスト力として、曲線部が管路から離脱する力が発生する。曲線部が離脱するのを防止するために、スラスト防護工を打設する。防護工は、通常、コンクリート(無筋コンクリート、鉄筋コンクリート、ソイルセメント)を打設することで施工される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-140867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
同質曲管の積層体で積層用樹脂として一般的に用いられている液状不飽和ポリエステル樹脂は、アルカリ性の物質と接すると加水分解を起こす可能性がある。
【0007】
直管は、工程内にてヒーターを用いて設備で完全硬化させることができる。これに対して、同質曲管の積層体を形成する場合、ハンドレイアップ法(人手積層)で、積層後に自然硬化させるため、硬化の程度が不十分となる可能性がある。よって、直管部分(外面)よりも外面積層の部分の方が加水分解を起こしやすい。
【0008】
また、コンクリートは、浸水することでアルカリ性になることが知られている。同質曲管の曲線部に形成される積層体にはコンクリートからなる防護工が打設されるため、積層体にはアルカリ性に対する考慮が必要である。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、防護工等に含まれるアルカリ性の成分により劣化することを抑制した曲管、その曲管を用いた曲線構造物および曲線構造物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]一端面が管軸方向に対して傾斜した複数の短管を、曲管状となるように端面同士を突き合せた状態で接合される連結部を含む曲管であって、
前記連結部の外周面を覆うように設けられた第1FRP層と、
前記第1FRP層の外周面を覆うように設けられた第2FRP層と、を有し、
前記第2FRP層に含まれる樹脂が、イソフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂、テレフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂およびエポキシ樹脂から選択される少なくとも1種を含む、曲管。
[2]前記第1FRP層に含まれる樹脂と前記第2FRP層に含まれる樹脂が異なる、[1]に記載の曲管。
[3]前記第2FRP層に含まれる樹脂が複数の樹脂からなる混合物であり、
前記混合物の成分のうち40質量%以上が、イソフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂、テレフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂から選択される少なくとも1種である、[1]または[2]に記載の曲管。
[4]前記短管が3つ以上の短管からなる曲管において、
前記第2FRP層は、前記曲管の両端部を除く、前記短管の外周面全体を覆っている、[1]に記載の曲管。
[5]コンクリートに埋設された前記曲管において、
前記第2FRP層は、前記短管におけるコンクリートに埋設される範囲全体を覆っている、[1]または[4]に記載の曲管。
[6]前記第2FRP層の厚さが0.2mm以上である、[1]または[4]に記載の曲管。
[7]敷設された管路と、防護工と、を有し、
前記管路は、曲線部を有し、
前記防護工は、前記管路の曲線部の一部または全部を覆い、
前記曲線部は、[1]に記載の曲管からなる、曲線構造物。
[8]管路を敷設する工程と、
前記管路の曲線部の一部または全部を覆う防護工を形成する工程と、を有し、
前記曲線部は、[1]に記載の曲管からなる、曲線構造物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、防護工等に含まれるアルカリ性の成分により劣化することを抑制した曲管、その曲管を用いた曲線構造物および曲線構造物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る曲管を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る曲管に防護工を設けた状態を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る曲管の製造方法を示す断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る曲管の製造方法を示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る曲管を示す断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る曲管に防護工を設けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の曲管、その曲管を用いた曲線構造物および曲線構造物の製造方法について、実施形態を示して説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る曲管を示す断面図である。図2図6は、本発明の一実施形態に係る曲管に防護工を設けた状態を示す断面図である。
なお、以下の説明で用いる図面は、その特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は、実際とは異なる場合がある。
【0015】
[曲管]
図1に示すように、本実施形態の曲管1は、第1短管11と、第2短管12と、第1FRP層21と、第2FRP層22と、を有する。
曲管1は、一端面が管軸方向に対して傾斜した第1短管11と第2短管12を、曲管状となるように端面同士を突き合せた状態で接合される連結部31を含む。
曲管1は、一方の端部(図1では、第1短管11の端部)が継手80と接続される。
【0016】
第1FRP層21は、連結部31の外周面31aを覆うように設けられている。第2FRP層22は、第1FRP層21の外周面21aを覆うように設けられている。
【0017】
「第1短管、第2短管」
第1短管11および第2短管12としては、例えば、JIS A-5350に規定される強化プラスチック複合管や、JSWAS K-2に規定される下水道用強化プラスチック複合管)等が挙げられる。第1短管11の内径は、例えば、500mm~2600mmである。第1短管11の厚みは、例えば、8.5mm~31.5mmである。第2短管12の内径は、例えば、500mm~2600mmである。第2短管12の厚みは、例えば、8.5mm~31.5mmである。
【0018】
「第1FRP層」
第1FRP層21は、強化プラスチック複合管協会規格K-112に記載されているような曲管継ぎ目部の強度を担保する積層構造である。
第1FRP層21は、ガラス基材と、ガラス基材に含浸させた樹脂(以下、「第1樹脂」と言う。)とを含む。
【0019】
ガラス基材としては、例えば、汎用のEガラス、ECRガラス、Rガラス、Cガラス等が挙げられる。これらのなかでも、ECRガラスは、耐アルカリ性、耐酸性に優れる。よって、強度を負担するガラス基材として、ECRガラス製のものを用いれば、万一、埋設後、土壌が酸性に傾いた時にも第1FRP層21の性能が保持されることを期待できる。 ガラス基材の形態としては、例えば、チョップドストランドマット、ガラスクロス、ロービングクロス、ガラスペーパー等が挙げられる。
【0020】
第1樹脂としては、例えば、オルソフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂等のハンドレイアップ用汎用樹脂が挙げられる。
【0021】
第1FRP層21における連結部31の外周面31aからの厚さが最も大きい部分の厚さは、2mm以上20mm以下が好ましく、2mm以上10mm以下がより好ましい。第1FRP層21の厚さが前記下限値以上であると、曲管1の内水圧に関する性能を担保できる。なお、第1FRP層21の厚さが前記下限値未満では、第1FRP層21と第2FRP層22の積層部に欠損が生じやすく、曲管1の内水圧の負荷時にウィーピングを起こす可能性が高い。第1FRP層21の厚さが前記上限値以下であると、第1FRP層21の途中で硬化が始まったり、亀裂、層間剥離が生じたりすることを抑制できる。なお、亀裂、層間剥離が生じたりする場合には、第1FRP層21を一度に積層するのではなくて、いくつかの層に分けて積層を行うことが好ましい。
【0022】
「第2FRP層」
第2FRP層22は、ガラス基材と、ガラス基材に含浸させた樹脂(以下、「第2樹脂」と言う。)とを含む。
【0023】
第2FRP層22に含まれるガラス基材としては、第1FRP層21と同様のものを用いることができる。
【0024】
第2樹脂としては、ハンドレイアップで一般的に用いられる汎用の樹脂のなかから、耐アルカリ性に優れる熱硬化性樹脂が用いられる。第2樹脂、すなわち、熱硬化性樹脂は、イソフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂、テレフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂およびエポキシ樹脂から選択される少なくとも1種を含む。これらの熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、第2樹脂は、その他の高耐食性樹脂を含んでいてもよい。
【0025】
本実施形態の曲管1では、第1FRP層21に含まれる樹脂と第2FRP層22に含まれる樹脂は、同一であってもよく、異なっていてもよい。第1FRP層21に含まれる樹脂と第2FRP層22に含まれる樹脂とが同一である場合、例えば、積層時に第1FRP層21と第2FRP層22とを連続して積層でき、曲管1が製造しやすくなる。
【0026】
第2FRP層22に含まれる第2樹脂が複数の樹脂からなる混合物であり、前記混合物の成分のうち40質量%以上が、イソフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂、テレフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂およびエポキシ樹脂から選択される少なくとも1種であることが好ましい。すなわち、第2樹脂は、前記の樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。前記混合物の成分のうち100質量%が前記の4種の樹脂から選択される少なくとも1種であることが特に好ましい。前記混合物の成分のうち40質量%以上が前記の4種の樹脂から選択される少なくとも1種であると、第2FRP層22の耐アルカリ性が高くなる。なお、第1FRP層21、第2FRP層22の両方とも、イソフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂、テレフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂およびエポキシ樹脂のいずれかで構成されている(前記の4種の樹脂から選択される少なくとも1種で構成されている)と、第2FRP層22のみ上記樹脂のいずれかで構成されているときよりも、耐アルカリ性が強くなる。ここで例えば、第1FRP層21に含まれる第1樹脂が、複数の樹脂からなる混合物(第1混合物)であってもよく、第2FRP層22に含まれる第2樹脂が、複数の樹脂からなる混合物(第2混合物)であってもよい。そして、第1混合物の成分のうち40質量%以上が前記の4種の樹脂(イソフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂、テレフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂およびエポキシ樹脂)から選択される少なくとも1種であってもよく、第2混合物の成分のうち40質量%以上が前記の4種の樹脂から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0027】
第2FRP層22の厚さは、0.2mm以上が好ましい。第2FRP層22の厚さが前記下限値未満であると、第2FRP層22のピンホールが発生しやすくなり、第1FRP層21にアルカリの成分が到達しやすくなる。
【0028】
第2FRP層22は、後述するように、第1短管11と第2短管12におけるコンクリートに埋設される範囲全体、すなわち、第1短管11と第2短管12の連結部(曲線部)31に形成される、第1FRP層21と第2FRP層22とから構成される積層体を覆うコンクリートからなる防護工全体を覆うことが好ましい。これにより、防護工50に含まれるアルカリ性の成分により、第1短管11と第2短管12が劣化することを抑制できる。
【0029】
「内層」
本実施形態の曲管1は、連結部31の内周面31bを覆うように内層41が設けられていてもよい。
内層41は、連結部31の内面の平滑性の向上や、連結部31の止水性の向上を目的として設けられる。
内層41は、ガラス基材と、ガラス基材に含浸させた樹脂(以下、「第3樹脂」と言う。)とを含む。
【0030】
内層41に含まれるガラス基材としては、第1FRP層21と同様のものを用いることができる。
【0031】
第3樹脂としては、汎用樹脂(例えば、オルソフタル酸系を含む、一般的な液状不飽和ポリエステル樹脂)や、第1樹脂または第2樹脂と同様のものを用いることができる。
【0032】
内層41の厚さは、連結部31の内面の流路断面の確保の観点から、5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。
通常、内層41は内面平滑性の向上のために積層されるが、強度の向上を目的として積層される場合は、内層41の厚さが厚くなる場合がある。その場合は、曲管1の内面を適宜、研削して流路断面積の確保を行うことも可能である。
【0033】
図2に示すように、本実施形態の曲管1は、第1FRP層21と第2FRP層22とから構成される積層体を覆うコンクリートからなる防護工50を有していてもよい。
【0034】
本実施形態の曲管1によれば、連結部31の外周面31aを覆うように設けられた第1FRP層21と、第1FRP層21の外周面21aを覆うように設けられた第2FRP層22と、を有し、第2FRP層22に含まれる樹脂が、イソフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂、テレフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂およびエポキシ樹脂から選択される少なくとも1種を含むため、防護工50等に含まれるアルカリ性の成分により劣化することを抑制できる。
【0035】
[曲管の製造方法]
本実施形態の曲管の製造方法は、複数の短管を連結する工程(以下、「第1の工程」と言う。)と、短管同士の連結部の外周面を覆うように第1FRP層を形成する工程(以下、「第2の工程」と言う。)と、第1FRP層を覆うように第2FRP層を形成する工程(以下、「第3の工程」と言う。)とを有する。
【0036】
以下、図1図3および図4を参照して、本実施形態の曲管の製造方法を説明する。
【0037】
「第1の工程」
第1の工程では、第1短管11と第2短管12を、曲管状となるように端面同士を突き合せて接合し、第1短管11と第2短管12を連結する連結部31を形成する。
【0038】
第1短管11と第2短管12の接合方法は、特に限定されず、例えば、接着剤によって接着する方法を例示できる。接着剤としては、エポキシ系の接着剤を例示できる。
【0039】
「第2の工程」
第2の工程では、第1短管11と第2短管12の連結部31の外周面31aを覆うように第1FRP層21を形成する。
【0040】
「第3の工程」
第3の工程では、第1FRP層21の外周面21aを覆うように第2FRP層22を形成する。
【0041】
以下、第1FRP層21と第2FRP層22を積層する方法を説明する。
第1FRP層21と第2FRP層22を積層する方法としては、例えば、図3に示すように、連結部31の外周面31aに近い層(第1FRP層21)から、曲管1の外表面に近い層(第2FRP層22)にいくに従って順に、第1FRP層21を構成するガラス基材21Aと第2FRP層22を構成するガラス基材22Aの幅を広げる方法が挙げられる。すなわち、連結部31の外周面31aに接するガラス基材21Aの幅よりも、第1FRP層21の外周面21aを覆うガラス基材22Aの幅を広げる。
ガラス基材21Aを配置した後、ガラス基材21Aに上記の第1樹脂を含浸させて、第1FRP層21を形成する。同様に、ガラス基材22Aを配置した後、ガラス基材22Aに上記の第2樹脂を含浸させて、第2FRP層22を形成する。
【0042】
また、第1FRP層21と第2FRP層22を積層する方法としては、例えば、図4に示すように、曲管1の管軸方向にガラス基材21A、ガラス基材22Aをラップさせながら、ガラス基材21Aに対してガラス基材22Aを管軸方向にずらして積層していく方法が挙げられる。すなわち、連結部31の外周面31aに接するガラス基材21Aよりも、第1FRP層21の外周面21aを覆うガラス基材22Aを管軸方向にずらして積層する。
ガラス基材21Aを配置した後、ガラス基材21Aに上記の第1樹脂を含浸させて、第1FRP層21を形成する。同様に、ガラス基材22Aを配置した後、ガラス基材22Aに上記の第2樹脂を含浸させて、第2FRP層22を形成する。
【0043】
[曲線構造物]
本発明の一実施形態に係る曲線構造物は、敷設された管路と、防護工とを有する。
前記管路は、曲線部を有する。
前記防護工は、前記管路の曲線部の一部または全部を覆う。
前記曲線部は、上述の実施形態の曲管1からなる。
【0044】
本実施形態の曲線構造物における防護工は、上記防護工50と同様である。防護工50は、例えば、コンクリートブロック等により形成される。例えば、このような防護工50が曲管1に構成されることにより、曲線構造物自体の重量と、受働土圧面積と、を増やすことができ、例えば、背面の滑動が抑制される。
【0045】
本実施形態の曲線構造物によれば、前記曲線部が上述の実施形態の曲管1からなるため、防護工等に含まれるアルカリ性の成分により、前記曲線部が劣化することを抑制できる。
【0046】
[曲線構造物の製造方法]
本発明の一実施形態に係る曲線構造物の製造方法は、管路を敷設する工程と、前記管路の曲線部の一部または全部を覆う防護工を形成する工程とを有する。
前記曲線部は、上述の実施形態の曲管1からなる。
【0047】
本実施形態の曲線構造物の製造方法によれば、管路を敷設した後、前記管路の曲線部の一部または全部を覆う防護工を形成し、前記曲線部が上述の実施形態の曲管1からなるため、防護工等に含まれるアルカリ性の成分により、前記曲線部が劣化することを抑制できる。
【0048】
[他の実施形態]
なお、本発明は、上記の実施形態に限定するものではない。
【0049】
例えば、以下に示すような変形例を採用してもよい。
【0050】
[曲管]
図5に示すように、本実施形態の曲管100は、第1短管111と、第2短管112と、第3短管113と、第1FRP層121と、第2FRP層122と、を有する。
曲管100は、一端面が管軸方向に対して傾斜した第1短管111と第2短管112と第3短管113とを、曲管状となるように端面同士を突き合せた状態で接合される連結部131を含む。
【0051】
第1FRP層121は、連結部131の外周面131aを覆うように設けられている。第2FRP層122は、第1FRP層121の外周面121aを覆うように設けられている。第2FRP層122は、曲管100の両端部、すなわち、継手80と接続される部分を除く、第1短管111と第2短管112と第3短管113の外周面全体を覆っている。
【0052】
本実施形態の曲管100によれば、第2FRP層122が、直管と接続される部分を除く、第1短管111と第2短管112と第3短管113の外周面全体を覆っているため、曲管100がコンクリートからなる防護工50で覆われた場合であっても、防護工50に含まれるアルカリ性の成分により、第1短管11と第2短管12が劣化することを抑制する効果をより高められる。なお、曲管100のうち防護工50で覆われた部分は、防護工50に含まれるアルカリ性の成分により劣化したとしても、補修は不可能である。そこで、予め第2FRP層122が、直管と接続される部分を除く、第1短管111と第2短管112と第3短管113の外周面全体を覆っていることが好ましい。
【0053】
以上、この発明の実施の形態を図面により詳述してきたが、実施の形態はこの発明の例示にしか過ぎないものである。よって、この発明は実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施の形態に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、実施の形態に複数の実施例や変形例がこの発明のものとして開示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。さらに、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。
【実施例0054】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
[実施例1]
「積層板の作製」
第1FRP層として、チョップドストランドマット(ECR 450番手)にオルソフタル酸系の汎用樹脂を含浸させたものと、ロービングクロス(ECR 570番手)とを交互積層した積層板を準備した。
次に、第1FRP層の一面を覆うように第2FRP層を形成した。第2FRP層は、チョップドストランドマット(ECRガラス 450番手)にビスフェノール系ビニルエステル樹脂を含浸させてハンドレイアップを施して形成して、実施例1の積層板とした。
第2FRP層の厚さを1.1mmとした。
【0056】
「促進耐久性試験」
下記の方法により、曲管の促進耐久性試験を行った。
促進試験として上記の積層板を40mm×40mmに切り出して、60℃の水酸化ナトリウム水溶液に、5時間浸漬した。
5時間後、水酸化ナトリウム水溶液から積層板を引き上げて洗浄し、乾燥後に表面を目視観察した。
促進耐久性試験前の積層板の一面の状態を100(初期値)とした。積層板の一面の状態が66以上の場合を「○」、積層板の一面の状態が66未満の場合を「×」と評価した。結果を表1に示す。
また、促進耐久性試験後の曲管の状態を目視により観察した。亀裂がない場合を「○」、亀裂がある場合を「×」と評価した。結果を表1に示す。
【0057】
[実施例2]
第2FRP層を構成する樹脂として、イソフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の積層板を作製した。
得られた積層板の促進耐久性試験を実施例と同様にして行った。結果を表1に示す。
【0058】
[実施例3]
第2FRP層を構成する樹脂として、テレフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の積層板を作製した。
得られた積層板の促進耐久性試験を実施例と同様にして行った。結果を表1に示す。
【0059】
[実施例4]
第2FRP層を構成する樹脂として、エポキシ樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の積層板を作製した。
得られた積層板の促進耐久性試験を実施例と同様にして行った。結果を表1に示す。
【0060】
[実施例5]
第2FRP層を構成する樹脂として、ビスフェノール系ビニルエステル樹脂(50質量%)とオルソフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂(50質量%)を混合したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例5の積層板を作製した。
得られた積層板の促進耐久性試験を実施例と同様にして行った。結果を表1に示す。
【0061】
[実施例6]
第2FRP層を構成する樹脂として、ビスフェノール系ビニルエステル樹脂(40質量%)とオルソフタル酸系液状不飽和ポリエステル樹脂(60質量%)を混合したものを用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例6の積層板を作製した。
得られた積層板の促進耐久性試験を実施例と同様にして行った。結果を表1に示す。
【0062】
[実施例7]
第2FRP層の厚さを0.25mmとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例7の積層板を作製した。
得られた積層板の促進耐久性試験を実施例と同様にして行った。結果を表1に示す。
【0063】
[比較例1]
第2FRP層を設けなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の積層板を作製した。
得られた積層板の促進耐久性試験を実施例と同様にして行った。結果を表1に示す。
【0064】
[比較例2]
第2FRP層の厚さを0.1mmとしたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の積層板を作製した。
得られた積層板の促進耐久性試験を実施例と同様にして行った。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1に示す結果から、実施例1~実施例7の積層板は、アルカリ性の成分により劣化することを抑制する効果に優れる。
【符号の説明】
【0067】
1 曲管
11 第1短管
12 第2短管
21 第1FRP層
22 第2FRP層
31 連結部
41 内層
50 防護工
図1
図2
図3
図4
図5
図6