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特開2024-115533コーティング顆粒、コーティング顆粒を含む製剤及びそれらの製造方法
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  • 特開-コーティング顆粒、コーティング顆粒を含む製剤及びそれらの製造方法 図1
  • 特開-コーティング顆粒、コーティング顆粒を含む製剤及びそれらの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115533
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】コーティング顆粒、コーティング顆粒を含む製剤及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/26 20060101AFI20240819BHJP
   A61K 31/4365 20060101ALI20240819BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20240819BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240819BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240819BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240819BHJP
【FI】
A61K9/26
A61K31/4365
A61K31/165
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/10
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024018044
(22)【出願日】2024-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2023020931
(32)【優先日】2023-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000209049
【氏名又は名称】沢井製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中道 克樹
(72)【発明者】
【氏名】中谷 匡利
(72)【発明者】
【氏名】東山 陽一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 悠作
(72)【発明者】
【氏名】松川 卓也
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA41
4C076BB01
4C076DD46
4C076EE13A
4C076EE32
4C076FF01
4C076GG16
4C086CB29
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA20
4C086ZC80
4C206GA19
4C206GA37
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA72
4C206NA20
4C206ZC80
(57)【要約】
【課題】製造効率の改善と製剤の均一性の改善を実現するコーティング顆粒を提供する。または、製造効率の改善と製剤の均一性の改善を実現するコーティング顆粒を含む製剤を提供する。または、それらの製造方法を提供する。
【解決手段】100℃以下のガラス転移点を有する医薬的に許容される添加剤で構成されたコアと、原薬及び医薬的に許容される溶融成分を含み、コア上に配置された原薬含有層と、を含み、溶融成分は、原薬の融点よりも低い第1の融点を有するコーティング顆粒が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
100℃以下のガラス転移点を有する医薬的に許容される添加剤で構成されたコアと、
原薬及び医薬的に許容される溶融成分を含み、前記コア上に配置された原薬含有層と、を含み、
前記溶融成分は、前記原薬の融点よりも低い第1の融点を有する、コーティング顆粒。
【請求項2】
医薬的に許容されるポリマーを含み、前記原薬含有層上に配置されたポリマー含有層を更に含む、請求項1に記載のコーティング顆粒。
【請求項3】
滑沢剤と、固着を防止する添加剤とを含み、前記ポリマー含有層上に配置されたオーバーコート層を更に含む、請求項2に記載のコーティング顆粒。
【請求項4】
原薬の融点に対して77℃以下のガラス転移点を有する医薬的に許容される添加剤で構成され、前記原薬を配置するコアと、
前記原薬及び医薬的に許容される溶融成分を含み、前記コアの上に配置された原薬含有層と、を含み、
前記溶融成分は、前記原薬の融点よりも低い第1の融点を有する、コーティング顆粒。
【請求項5】
医薬的に許容されるポリマーを含み、前記原薬含有層上に配置されたポリマー含有層を更に含む、請求項4に記載のコーティング顆粒。
【請求項6】
滑沢剤と、固着を防止する添加剤とを含み、前記ポリマー含有層上に配置されたオーバーコート層を更に含む、請求項5に記載のコーティング顆粒。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のコーティング顆粒と、
医薬的に許容される1つ以上の添加剤と、を含む製剤。
【請求項8】
100℃以下のガラス転移点を有する医薬的に許容される添加剤で構成されたコアと、原薬と、医薬的に許容される溶融成分と、を混合しながら、前記コアの前記ガラス転移点以上且つ前記溶融成分の第1の融点以上の第1の温度に加熱して、前記コア上に、前記原薬と前記溶融成分とを含む原薬含有層を形成することを含み、
前記第1の融点は、前記原薬の融点よりも低い、コーティング顆粒の製造方法。
【請求項9】
医薬的に許容されるポリマーを添加し、前記原薬含有層が形成された前記コアと混合しながら、前記第1の融点以上の第2の温度に加熱して、前記原薬含有層上に、前記ポリマーを含むポリマー含有層を更に形成する、請求項8に記載のコーティング顆粒の製造方法。
【請求項10】
滑沢剤と、固着を防止する添加剤とを添加し、前記ポリマー含有層上に、前記滑沢剤と、前記固着を防止する添加剤とを含むオーバーコート層を更に形成する、請求項9に記載のコーティング顆粒の製造方法。
【請求項11】
原薬の融点に対して77℃以下のガラス転移点を有する医薬的に許容される添加剤で構成されたコアと、前記原薬と、医薬的に許容される溶融成分と、を混合しながら、前記コアの前記ガラス転移点以上且つ前記溶融成分の第1の融点以上の第1の温度に加熱して、前記コア上に、前記原薬と前記溶融成分とを含む原薬含有層を形成することを含み、
前記第1の融点は、原薬の融点よりも低い、コーティング顆粒の製造方法。
【請求項12】
医薬的に許容されるポリマーを添加し、前記原薬含有層が形成された前記コアと混合しながら、前記第1の融点以上の第2の温度に加熱して、前記原薬含有層上に、前記ポリマーを含むポリマー含有層を更に形成する、請求項11に記載のコーティング顆粒の製造方法。
【請求項13】
滑沢剤と、固着を防止する添加剤とを添加し、前記ポリマー含有層上に、前記滑沢剤と、固着を防止する添加剤とを含むオーバーコート層を更に形成する、請求項12に記載のコーティング顆粒の製造方法。
【請求項14】
請求項8乃至13の何れか1項に記載のコーティング顆粒の製造方法により製造したコーティング顆粒と、
医薬的に許容される1つ以上の添加剤と、を混合する、製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、コーティング顆粒に関する。または、本発明の一実施形態は、その顆粒の製造方法に関する。または、本発明の一実施形態は、その顆粒を含む製剤に関する。または、本発明の一実施形態は、その製剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原薬の苦味を抑制する方法として、原薬を含む粒子をコーティングする方法が知られている。粒子をコーティングする方法は、湿式法と乾式法に大別される。湿式法は、コーティング剤を溶剤に溶解又は懸濁させた液を薬剤に噴霧した後、溶剤を蒸発させる工程を含むことから、長時間の製造時間を必要とする。
【0003】
また、製剤一錠に対する原薬の含有量が多い製剤においては、湿式法を用いて原薬粒子にコーティングを施すと、一錠あたりの質量が増大し、且つコーティング工程を含む製造工程全体に多大な時間が必要となる。また、製造性の改善(打錠ばらつきの軽減)や、製剤の均一性の改善を目的として、原薬に流動性を付与する場合も、原薬の含有量が多い場合には、原薬特性の影響が大きくなることから、大幅な原薬の改質が必要となる。また、原薬に流動性を付与するために、流動性の良い添加剤を多く添加する必要もある。しかしながら、流動性の良い添加剤を増量すると、原薬含有率が低くなり、結果として製剤が大型化する問題もある。
【0004】
一方、乾式法として、例えば、特許文献1には、ビルダグリプチン粒子と、ビルダグリプチン粒子上に配置されたワックス層と、ワックス層上に配置され、胃溶性高分子及び凝集防止剤を含む胃溶性高分子層と、を含むことを特徴とするビルダグリプチン含有コーティング粒子が記載されている。また、製造効率の観点から、例えば、特許文献2には、コア及びそれを覆うワックス層を有する粒子に乾式でポリマーを付着させるレイアリング工程後に、粒子を解砕することを含む、多層粒子の製造方法が記載されている。しかし、特許文献1及び特許文献2においては、素錠の質量のばらつき軽減といった製剤の均一性の改善についての十分な検討がなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-123537号公報
【特許文献2】特許第6067154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一実施形態は、製造効率を改善しつつ、従来の乾式コーティングよりも製剤の均一性の改善を実現するコーティング顆粒を提供することを目的の一つとする。または、本発明の一実施形態は、製造効率を改善しつつ、従来の乾式コーティングよりも製剤の均一性の改善を実現するコーティング顆粒の製造方法を提供することを目的の一つとする。または、本発明の一実施形態は、製造効率を改善しつつ、従来の乾式コーティングよりも製剤の均一性の改善を実現するコーティング顆粒を含む製剤を提供することを目的の一つとする。または、本発明の一実施形態は、製造効率を改善しつつ、従来の乾式コーティングよりも製剤の均一性の改善を実現するコーティング顆粒を含む製剤の製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によると、100℃以下のガラス転移点を有する医薬的に許容される添加剤で構成されたコアと、原薬及び医薬的に許容される溶融成分を含み、コア上に配置された原薬含有層と、を含み、溶融成分は、原薬の融点よりも低い第1の融点を有する、コーティング顆粒が提供される。
【0008】
医薬的に許容されるポリマーを含み、原薬含有層上に配置されたポリマー含有層を更に含んでもよい。
【0009】
滑沢剤と、粒子同士の固着を防止する添加剤とを含み、ポリマー含有層上に配置されたオーバーコート層を更に含んでもよい。
【0010】
また、本発明の一実施形態によると、原薬の融点に対して77℃以下のガラス転移点を有する医薬的に許容される添加剤で構成され、原薬を配置するコアと、原薬及び医薬的に許容される溶融成分を含み、コアの上に配置された原薬含有層と、を含み、溶融成分は、原薬の融点よりも低い第1の融点を有する、コーティング顆粒が提供される。
【0011】
医薬的に許容されるポリマーを含み、原薬含有層上に配置されたポリマー含有層を更に含んでもよい。
【0012】
滑沢剤と、粒子同士の固着を防止する添加剤とを含み、ポリマー含有層の上に配置されたオーバーコート層を更に含んでもよい。
【0013】
また、本発明の一実施形態によると、前記何れかに記載のコーティング顆粒と、医薬的に許容される1つ以上の添加剤と、を含む製剤が提供される。
【0014】
また、本発明の一実施形態によると、100℃以下のガラス転移点を有する医薬的に許容される添加剤で構成されたコアと、原薬と、医薬的に許容される溶融成分と、を混合しながら、コアのガラス転移点以上且つ溶融成分の第1の融点以上の第1の温度に加熱して、コア上に、原薬と溶融成分とを含む原薬含有層を形成することを含み、第1の融点は、原薬の融点よりも低い、コーティング顆粒の製造方法が提供される。
【0015】
医薬的に許容されるポリマーを添加し、原薬含有層が形成されたコアと混合しながら、第1の融点以上の第2の温度に加熱して、原薬含有層上に、ポリマーを含むポリマー含有層を更に形成してもよい。
【0016】
滑沢剤と、固着を防止する添加剤とを添加し、ポリマー含有層上に、滑沢剤と、固着を防止する添加剤とを含むオーバーコート層を更に形成してもよい。
【0017】
また、本発明の一実施形態によると、原薬の融点に対して77℃以下のガラス転移点を有する医薬的に許容される添加剤で構成されたコアと、原薬と、医薬的に許容される溶融成分と、を混合しながら、コアのガラス転移点且つ第1の融点以上の第1の温度に加熱して、コア上に、原薬と溶融成分とを含む原薬含有層を形成することを含み、第1の融点は、原薬の融点よりも低い、コーティング顆粒の製造方法が提供される。
【0018】
医薬的に許容されるポリマーを添加し、原薬含有層が形成されたコアと混合しながら、第1の融点以上の第2の温度に加熱して、原薬含有層上に、ポリマーを含むポリマー含有層を更に形成してもよい。
【0019】
滑沢剤と、固着を防止する添加剤とを添加し、ポリマー含有層上に、滑沢剤と、固着を防止する添加剤とを含むオーバーコート層を更に形成してもよい。
【0020】
また、本発明の一実施形態によると、前記何れかに記載のコーティング顆粒の製造方法により製造したコーティング顆粒と、医薬的に許容される1つ以上の添加剤と、を混合する、製剤の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一実施形態によると、製造効率の改善と製剤の均一性の改善を実現するコーティング顆粒が提供される。または、本発明の一実施形態によると、製造効率の改善と製剤の均一性の改善を実現するコーティング顆粒の製造方法が提供される。または、本発明の一実施形態によると、製造効率の改善と製剤の均一性の改善を実現するコーティング顆粒を含む製剤が提供される。または、本発明の一実施形態によると、製造効率の改善と製剤の均一性の改善を実現するコーティング顆粒を含む製剤の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るコーティング顆粒10を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係るコーティング顆粒10の製造方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明に係るコーティング顆粒、コーティング顆粒を含む製剤及びそれらの製造方法について説明する。なお、本発明のコーティング顆粒、コーティング顆粒を含む製剤及びそれらの製造方法は、以下に示す実施の形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態及び後述する実施例で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るコーティング顆粒10を示す模式図である。コーティング顆粒10は、コア11、コア11上に配置された原薬含有層13を含む。一実施形態において、コーティング顆粒10は、原薬含有層13上に配置されたポリマー含有層15を更に含んでもよい。さらに、コーティング顆粒10は、ポリマー含有層15上に配置されたオーバーコート層17を含んでもよい。
【0025】
コーティング顆粒10において、コア11は、原薬を配置するための基剤である。後述するように、本発明に係るコーティング顆粒10は乾式コーティング法により製造されることから、コア11は、その表面に原薬を付着可能な、又は付着しやすい医薬的に許容される添加剤で構成される。本発明の一実施形態において、コア11は、100℃以下のガラス転移点を有する医薬的に許容される添加剤で構成される。多くの原薬は、100℃よりも高い融点を有している。このため、コア11のガラス転移点よりも高く、原薬の融点に対して低い100℃以下の温度にコア11を加熱することにより、コア11の表面が軟化し、コア11の表面に原薬を付着させることができる。
【0026】
また、本発明の一実施形態において、コア11は、原薬の融点に対して77℃以下のガラス転移点を有する医薬的に許容される添加剤で構成されてもよい。換言すると、コア11のガラス転移点は原薬の融点よりも低く、且つ、コア11のガラス転移点と原薬の融点の温度差は77℃以上である。コア11のガラス転移点と、原薬の融点が近接している場合、コア11の表面を軟化させるための加熱時に、類縁物質の生成等の熱による影響を原薬が受ける懸念がある。しかし、原薬の融点と、コア11を構成する添加剤のガラス転移点がこのような温度差を有することにより、コア11を構成する添加剤のガラス転移点よりも高い温度、且つ、原薬の融点よりも十分に低い温度で、コア11の表面を軟化させることが可能であり、原薬が受ける熱による影響を低減することができる。
【0027】
本実施形態に係るコーティング顆粒10のコア11として利用可能な添加剤としては、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(オイドラギット(登録商標)EPO、ガラス転移点:45℃)、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(オイドラギット(登録商標)RSPO、ガラス転移点:58℃)、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(オイドラギット(登録商標)RLPO、ガラス転移点:63℃)、及び乾燥メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(登録商標)L100-55、ガラス転移点:96℃)から選択することができる。コア11として用いる添加剤としては、コーティング顆粒10に含む原薬の融点に対して77℃以下のガラス転移点を有する添加剤をこれらの添加剤から選択することができる。
【0028】
本発明の一実施形態において、原薬含有層13は、コア11上に配置される層であり、原薬131及び医薬的に許容される溶融成分を含む。
【0029】
本実施形態に係るコーティング顆粒10において、原薬131は、コア11を構成する添加剤のガラス転移点よりも高い融点を有する薬剤から選択することができる。原薬131は、例えば、コア11を構成する添加剤として選択可能な乾燥メタクリル酸コポリマーLDのガラス転移点である96℃よりも高い融点を有する薬剤である。本発明の一実施形態において、原薬131として、クロピドグレル硫酸塩(融点:177℃)、ラコサミド(融点:140~146℃)、イグラチモド(融点:238~242℃)、及びプレガバリン(融点:176~178℃)を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
本実施形態に係るコーティング顆粒10において、溶融成分は、常温で固体であり、原薬131の融点よりも低い第1の融点を有する。また、コア11が、原薬131の融点に対して77℃以下のガラス転移点を有する医薬的に許容される添加剤で構成される場合にも、溶融成分は、原薬131の融点よりも低い第1の融点を有する。なお、本明細書において、「常温」とは、15℃以上25℃以下の温度を示す。
【0031】
本実施形態に係るコーティング顆粒10の原薬含有層13が含む溶融成分としては、ショ糖脂肪酸エステル、常温で固体のポリエチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン、ラウロマクロゴール、ステアリン酸、硬化油及びカルナウバロウ等から選択される1つのワックスを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本発明の一実施形態において、原薬含有層13が結合剤を含んでもよい。原薬含有層13が含む結合剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース等から選択することができるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
本発明の一実施形態において、ポリマー含有層15は、任意の層であり、原薬含有層13上に配置される層であってもよく、医薬的に許容されるポリマーを含んでもよい。
【0034】
本発明の一実施形態において、ポリマー含有層15は、原薬の苦味等の味をマスキングする機能を有する層であってもよい。または、本発明の一実施形態において、ポリマー含有層15は、コーティング顆粒10に腸溶性や徐放性の機能を付与することができる。
【0035】
本実施形態に係るコーティング顆粒10のポリマー含有層15が含むポリマーとしては、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(オイドラギット(登録商標)EPO)、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(オイドラギット(登録商標)RSPO)、及びアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(オイドラギット(登録商標)RLPO)から、選択することができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
また、本発明の一実施形態において、ポリマー含有層15は、滑沢剤を更に含んでもよい。滑沢剤を含むことにより、ポリマー含有層15を形成する工程において、ポリマー含有層15を形成したコーティング顆粒10同士の凝集を防止することができる。
【0037】
本実施形態に係るコーティング顆粒10のポリマー含有層15が含む滑沢剤としては、タルク、軽質無水ケイ酸、酸化チタン、含水二酸化ケイ素、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及びステアリン酸マグネシウムから選択される1つ以上の添加剤を例示することができるが、これらに限定されるものでない。
【0038】
本発明の一実施形態において、オーバーコート層17は、ポリマー含有層15上に配置される層である。本発明の一実施形態において、オーバーコート層17は、滑沢剤173と、顆粒同士の固着を防止する添加剤を含んでもよい。
【0039】
本発明の一実施形態において、オーバーコート層17が含む滑沢剤173として、上述した1つ以上の滑沢剤を選択することができるため、詳細な説明は、省略する。また、本発明の一実施形態において、オーバーコート層17が含む固着を防止する添加剤として、乳糖、エリスリトール、マンニトール及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
以上説明したように、本発明に係るコーティング顆粒10は、100℃以下のガラス転移点を有する医薬的に許容される添加剤で構成されたコアと、原薬及び医薬的に許容される溶融成分を含み、コア上に配置された原薬含有層と、を含み、溶融成分は、原薬の融点よりも低い第1の融点を有することにより、製剤の均一性の改善を実現することができる。または、本発明の一実施形態において、コーティング顆粒10は、粒度分布のばらつきを抑制するとともに、流動性に優れた原薬含有顆粒を実現することができる。
【0041】
[製剤]
本発明の一実施形態において、コーティング顆粒10を含む医薬組成物を提供することができる。さらに、コーティング顆粒10を含む医薬組成物を打錠した製剤を提供することができる。本発明の一実施形態に係る医薬組成物は、コーティング顆粒10に加えて、医薬的に許容される1つ以上の添加剤、を含む。また、本発明の一実施形態に係る製剤は、コーティング顆粒10に加えて、医薬的に許容される1つ以上の添加剤、を含む。
【0042】
本発明の一実施形態に係る医薬組成物又は製剤が含む医薬的に許容される添加剤としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、安定化剤、矯味剤及び滑沢剤等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本発明の一実施形態に係る医薬組成物又は製剤が含む賦形剤は、例えば、糖類、糖アルコール類、デンプン類、セルロース類、カルメロース類、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、ケイ酸塩類、リン酸塩、炭酸塩及び硫酸塩等から選択することができる。糖類としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、トレハロース、マルトース等が挙げられる。糖アルコール類としては、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、イソマルト等が挙げられる。また、デンプン類としては、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、デキストリン等が挙げられる。セルロース類としては、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。カルメロース類としては、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム等が挙げられる。ケイ酸塩類としては、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられる。リン酸塩としては、リン酸水素カルシウム等が挙げられる。炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。硫酸塩としては、硫酸カルシウム等が挙げられる。これらの賦形剤は、単独又は2種以上組み合わせて使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
本発明の一実施形態に係る医薬組成物又は製剤が含む結合剤は、例えば、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルセルロース及びメチルセルロースなどのセルロース類、ポビドン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール完全けん化物、ポリビニルアルコール部分けん化物、カルボキシビニルポリマー、ポリ塩化ビニルなどのビニル系高分子物質、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(E、RS)、メタクリル酸コポリマー(L、S、LD)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液などのアクリル系高分子物質、ステアリルアルコール、ゼラチン、デキストリン、アラビアゴム、プルラン、マクロゴール、デンプン等から選択することができるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
本発明の一実施形態に係る医薬組成物又は製剤が含む崩壊剤は、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム及びメチルセルロース等のセルロース類、部分アルファー化デンプン及びトウモロコシデンプン等のデンプン類、並びにクロスポビドン等から選択することができるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
本発明の一実施形態に係る医薬組成物又は製剤が含む安定化剤は、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスパラギン酸、アスパラギン酸ナトリウム、アルギニン、エデト酸ナトリウム、無水クエン酸、クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、ステアリン酸、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸マグネシウム等から選択することができるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
本発明の一実施形態に係る医薬組成物又は製剤が含む矯味剤は、例えば、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アスパラギン酸ナトリウム、アスパルテーム、カラメル、還元麦芽糖水アメ、グリチルリチン酸、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア抽出精製物、精製白糖、及びメントール等から選択することができるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
本発明の一実施形態に係る医薬組成物又は製剤が含む滑沢剤は、例えば、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、及びロイシン等から選択することができるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係る医薬組成物又は製剤は、100℃以下のガラス転移点を有する医薬的に許容される添加剤で構成されたコアと、原薬及び医薬的に許容される溶融成分を含み、コア上に配置された原薬含有層と、を含み、溶融成分が、原薬の融点よりも低い第1の融点を有するコーティング顆粒10を含むことにより、製剤の均一性の改善を実現することができる。または、本発明の一実施形態に係る医薬組成物又は製剤は、粒度分布のばらつきを抑制するとともに、流動性に優れたコーティング顆粒10を含むことにより、流動性の良い添加剤を多量に添加する必要がないため製剤を小型化し、優れた服用性を実現することができる。
【0050】
[コーティング顆粒の製造方法]
上述した本発明に係るコーティング顆粒10は、乾式コーティング法により好適に製造することができる。図2は、本発明の一実施形態に係るコーティング顆粒10の製造方法を説明する模式図である。例えば、コア11に原薬131と溶融成分133を混合しながら、コアのガラス転移点以上且つ溶融成分の第1の融点以上の第1の温度に加熱して、コア11に原薬131と溶融成分133を付着させて、コア11上に、原薬131と溶融成分133を含む原薬含有層13を形成する(工程S101)。コア11を構成する医薬的に許容される添加剤は、100℃以下のガラス転移点を有する。本発明の一実施形態において、コア11は、原薬131の融点に対して77℃以下のガラス転移点を有する。原薬131は、コア11を構成する添加剤のガラス転移点よりも高い融点を有する。また、第1の融点は、原薬131の融点よりも低い。
【0051】
第1の温度は、コア11の表面が軟化して原薬131と溶融成分133を付着させるとともに、コア11に付着した溶融成分133同士が結合して、コア11の表面に原薬131を固着させ、原薬含有層13を形成可能な温度範囲から選択される。第1の温度は、コア11のガラス転移点又は、溶融成分133の融点より1~10℃高い温度範囲から選択することができる。
【0052】
医薬的に許容されるポリマー151を添加し、原薬含有層13が形成されたコア11と混合しながら、第1の融点以上の第2の温度に加熱して、原薬含有層13にポリマー151を付着させ、原薬含有層13上に、ポリマー151を含むポリマー含有層15を更に形成してもよい(工程S103)。第2の温度に加熱することにより、原薬含有層13を構成する溶融成分133の一部を溶融させて、ポリマー151を原薬含有層13に付着させてもよい。または、第2の温度として、ポリマー151のガラス転移点以上に加熱することにより、ポリマー151の表面を軟化させて、ポリマー151を原薬含有層13に付着させてもよい。したがって、本実施形態においては、第2の温度は第1の温度と同じであってもよく、異なってもよい。
【0053】
ポリマー151の凝集によりコーティング顆粒10が凝集するのを防止するため、一実施形態において、ポリマー含有層15は滑沢剤153を含む。このため、ポリマー151とともに滑沢剤153を原薬含有層13に付着させる。
【0054】
また、一実施形態において、滑沢剤173と、固着を防止する添加剤171とを添加し、ポリマー含有層15上に、滑沢剤173と、固着を防止する添加剤171とを含むオーバーコート層17を更に形成してもよい(工程S105)。
【0055】
得られたコーティング顆粒10は、分級して医薬組成物又は製剤の製造に用いることが好ましい。
【0056】
以上のような製造方法により製造される本発明に係るコーティング顆粒10は、製剤の均一性の改善を実現することができる。または、本発明の一実施形態において、コーティング顆粒10は、粒度分布のばらつきを抑制するとともに、流動性に優れた原薬含有顆粒を実現することができる。
【0057】
[製剤の製造方法]
コーティング顆粒10と、医薬的に許容される1つ以上の添加剤とを、通常用いられる混合機を用いて混合することにより、医薬組成物を製造することができる。さらに、医薬組成物を、通常用いられる打錠機で圧縮成形(打錠)することにより、製剤を製造することができる。
【0058】
[かさ密度]
本明細書において、コーティング顆粒10のかさ密度は、第17改正日本薬局方に記載された測定方法に準じて測定することができる。
【0059】
[粒度分布]
本明細書において、コーティング顆粒10の平均粒子径は、第17改正日本薬局方に記載されたレーザー回折法による粒子径測定法に準じて測定することができる。
【実施例0060】
[実施例1]
原薬としてクロピドグレル硫酸塩 195.76g、コアとしてアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(Evonik Roehm、オイドラギット(登録商標)RSPO) 20g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業株式会社、L-HPC(登録商標)LH-31) 24g及びモノステアリン酸グリセリン(理研ビタミン株式会社、ポエム(登録商標)P-100) 25gを、高速撹拌造粒機(深江工業株式会社、ハイスピードミキサ、FS-GS-2J)に投入し、アジテータ回転数 500rpm、チョッパ回転数 2,000rpm、水温約85℃で30分間造粒して、実施例1のコーティング顆粒を得た。
【0061】
[実施例2]
アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(Evonik Roehm、オイドラギット(登録商標)RSPO)を40gに変更したこと以外は実施例1のコーティング顆粒の製造方法と同様の製造方法により、実施例2のコーティング顆粒を得た。
【0062】
[実施例3]
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業株式会社、L-HPC(登録商標)LH-31)を低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業株式会社、L-HPC(登録商標)LH-B1) 45gに変更したこと以外は実施例1のコーティング顆粒の製造方法と同様の製造方法により、実施例3のコーティング顆粒を得た。
【0063】
[実施例4]
コアとしてアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(Evonik Roehm、オイドラギット(登録商標)RSPO) 20gに加えて、乾燥メタクリル酸コポリマーLD(オイドラギット(登録商標)L100-55) 60g及びマクロゴール6000(日油株式会社、マクロゴール6000P)12gを用いたこと以外は実施例1のコーティング顆粒の製造方法と同様の製造方法により、実施例4のコーティング顆粒を得た。
【0064】
[実施例9]
コアとしてアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(Evonik Roehm、オイドラギット(登録商標)RSPO)を用いず、乾燥メタクリル酸コポリマーLD(Evonik Roehm、オイドラギット(登録商標)L100-55) 20g、及びマクロゴール6000(日油株式会社、マクロゴール6000P)12gを用い、モノステアリン酸グリセリン(理研ビタミン株式会社、ポエム(登録商標)P-100)を30gに変更したこと以外は実施例1のコーティング顆粒の製造方法と同様の製造方法により、実施例9のコーティング顆粒を得た。
【0065】
[比較例1]
比較例1として、コアを用いずに顆粒を製造した。具体的には、原薬としてクロピドグレル硫酸塩 195.76g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業株式会社、L-HPC(登録商標)LH-B1) 45g及びモノステアリン酸グリセリン(理研ビタミン株式会社、ポエム(登録商標)P-100) 25gを、高速撹拌造粒機(深江工業株式会社、ハイスピードミキサ、FS-GS-2J)に投入し、アジテータ回転数 500rpm、チョッパ回転数 2,000rpm、水温約85℃で30分間造粒して、比較例1のコーティング顆粒を得た。
【0066】
[かさ密度]
実施例1~4、9のコーティング顆粒及び比較例1の顆粒のそれぞれについて、120ml容量の容器にタップせずに充填し、その質量を測定して、かさ密度を算出した。
【0067】
[粒度分布]
実施例1~4、9コーティング顆粒及び比較例1の顆粒のそれぞれについて、レーザー回折・散乱法測定装置(ベックマン・コールター株式会社、LS 13 320)により、粒度分布を測定した。
【0068】
実施例1~4、9のコーティング顆粒及び比較例1の顆粒のかさ密度及び粒度分布の測定結果を表1に示す。
【表1】
【0069】
実施例1~4及び実施例9においては、表面に原薬を付着可能な、又は付着しやすい医薬的に許容される添加剤で構成されるコアを用いることにより、シャープな粒度分布を有するコーティング顆粒が得られることが明らかとなった。一方、そのようなコアを用いずに造粒した比較例1においては、ブロードな粒度分布となった。
【0070】
[実施例5]
実施例5として、原薬をクロピドグレル硫酸塩からラコサミドへ変更して、コーティング顆粒を製造した。詳細には、原薬としてラコサミド 500g、コアとしてアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(Evonik Roehm、オイドラギット(登録商標)RSPO) 90g及びモノステアリン酸グリセリン(理研ビタミン株式会社、リケマール(登録商標)S-100P) 60gを、高速撹拌造粒機(深江工業株式会社、ハイスピードミキサ、FS-GS-5J)に投入し、アジテータ回転数 500rpm、チョッパ回転数 2,000rpm、水温約85℃で30分間撹拌して、実施例5のコーティング顆粒を得た。造粒時の添加剤の温度は、約80℃であった。
【0071】
[実施例6]
実施例6として、ラコサミド 20g、コアとしてアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(オイドラギット(登録商標)EPO) 3.6g及びモノステアリン酸グリセリン(理研ビタミン株式会社、リケマール(登録商標)S-100P) 2.4gを、ミキサー・トルク・レオメーター3(Caleva Process Solutions Ltd.、MTR-3)に投入し、回転数 30rpm、水温約80℃で47分間撹拌して、実施例6のコーティング顆粒を得た。造粒時の添加剤の温度は、約80℃であった。
【0072】
[実施例10]
実施例10として、原薬としてラコサミド 200g、コアとしてアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(Evonik Roehm、オイドラギット(登録商標)RLPO) 36g及びモノステアリン酸グリセリン(理研ビタミン株式会社、リケマール(登録商標)S-100P) 24gを、高速撹拌造粒機(深江工業株式会社、ハイスピードミキサ、FS-GS-2J)に投入し、アジテータ回転数 500rpm、チョッパ回転数 2,000rpm、水温約90℃で30分間造粒して、実施例10のコーティング顆粒を得た。
【0073】
[比較例2]
比較例2として、コアを用いずに顆粒を製造した。具体的には、原薬としてラコサミド 23.3g及びモノステアリン酸グリセリン(理研ビタミン株式会社、リケマール(登録商標)S-100P) 2.8gを、ミキサー・トルク・レオメーター3(Caleva Process Solutions Ltd.、MTR-3)に投入し、回転数 50rpm、水温約80℃で30分間撹拌し、造粒時の添加剤の温度は、約80℃であった。なお、比較例2においては、核化が進行せず、顆粒を得ることはできなかった。
【0074】
[比較例5]
比較例5として、コアとしてアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(Evonik Roehm、オイドラギット(登録商標)RLPO)から、乾燥メタクリル酸コポリマーLD(Evonik Roehm、オイドラギット(登録商標)L100-55)へ変更したこと以外は実施例10のコーティング顆粒の製造方法と同様の製造方法により、比較例5のコーティング顆粒を得た。
【0075】
実施例5~6、実施例10及び比較例5のコーティング顆粒のかさ密度及び粒度分布を上述した方法により測定した。かさ密度及び粒度分布の測定結果を表2に示す。
【表2】
【0076】
実施例5~6及び実施例10の結果より、表面に原薬を付着可能な、又は付着しやすい医薬的に許容される添加剤で構成されるコアを用いることにより、ラコサミドを含むコーティング顆粒が得られることが明らかとなった。一方、そのようなコアも用いずに造粒した比較例2においては、顆粒を得ることはできなかった。また、ガラス転移点が、ラコサミドの融点よりも77℃以上低い実施例5~6及び実施例10ではラコサミドを含むコーティング顆粒が得られたのに対して、ガラス転移点が、ラコサミドの融点よりも44℃低い乾燥メタクリル酸コポリマーLDをコアとして用いた比較例5においては、ブロードな粒度分布となった。この結果より、原薬の融点に対するコアのガラス転移点の温度差が44℃よりも大きい(コアのガラス転移点が原薬の融点から44℃よりも低い)ことにより、製剤の均一性が改善されることが明らかとなった。
【0077】
[実施例7]
ラコサミドを含むコーティング顆粒を含む口腔内崩壊錠を製造した。詳細には、原薬としてラコサミド 500g、コアとしてアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(Evonik Roehm、オイドラギット(登録商標)RSPO) 90g及びモノステアリン酸グリセリン(理研ビタミン株式会社、リケマール(登録商標)S-100P) 60gを、高速撹拌造粒機(深江工業株式会社、ハイスピードミキサ、FS-GS-5J)に投入し、アジテータ回転数 500rpm、チョッパ回転数 2,000rpm、水温約85℃で30分間撹拌して、原薬含有層を形成した。この時の添加剤の温度は、約80℃であった。アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(オイドラギット(登録商標)EPO) 300g及びタルク(富士タルク工業株式会社、ML115) 100gを収量に応じて更に添加して、水温約45~70℃で50分間撹拌して、ポリマー含有層を形成した。この時の添加剤の温度は、45℃~65℃に徐々に上昇した。D-マンニトール(三菱商事フードテック株式会社、マンニットP)50g及びタルク(富士タルク工業株式会社、ML115) 50gを収量に応じて更に添加して、水温約70℃で50分間撹拌して、オーバーコート層を形成し、実施例7のコーティング顆粒を得た。この時の添加剤の温度は、60℃~70℃であった。
【0078】
実施例7のコーティング顆粒 210g、D-マンニトール・結晶セルロース・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース・クロスポビドン造粒物 270g、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(富士化学工業株式会社ノイシリン(登録商標)UFL-2) 15g及びステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社) 5gをポリ袋にて混合し、混合した粉末を、ロータリー打錠機(株式会社菊水製作所、VELA5)を用いて打錠して、実施例7の口腔内崩壊錠を得た。
【0079】
[硬度]
錠剤硬度計(DC-50、岡田精工)を用いて実施例7の口腔内崩壊錠の硬度を測定し、3錠の測定値の平均値を算出した。
【0080】
[崩壊時間]
実施例7の口腔内崩壊錠について、第17改正日本薬局方に準じて崩壊時間を測定した。
【0081】
実施例7の口腔内崩壊錠についての各測定結果を表3に示す。この結果より、実施例7の口腔内崩壊錠は、口腔内崩壊錠に求められる特性を有することが示された。
【表3】
【0082】
[製造時間]
ここで、実施例7の口腔内崩壊錠5000錠を製造するために必要な実施例7のコーティング顆粒を製造するための各工程に要した時間を表4に示す。なお、参考として、湿式法によりコーティング顆粒を製造する場合に想定される所要時間も掲載する。湿式法として、核粒子67.6mg、基剤15.3mgに対して、濃度23.1%のコーティング液を液噴霧速度5g/minで噴霧(原薬含有層形成時)し、コーティング粒子156mgに対して、コーティング量45.5mg、濃度11.5%のコーティング液を液噴霧速度約6g/minで噴霧(ポリマー含有層形成時)し、コーティング粒子210mgに対して、コーティング量20mg、濃度12.1%のコーティング液を液噴霧速度約4g/minで噴霧(オーバーコート層形成時)した。湿式法により口腔内崩壊錠5000錠を製造するために必要な顆粒を製造するために必要と想定される各工程の時間を、表4に記載する。
【表4】
【0083】
表4より、本実施例に係るコーティング顆粒の製造時間は、湿式法に比して大幅に短縮されることが明らかである。
【0084】
[実施例8]
服用性の観点から、ラコサミドを含むコーティング顆粒を含むフィルムコーティング錠の小型化について検討した。詳細には、原薬としてラコサミド 500g、コアとしてアンモニオアルキルメタクリレートコポリマー(Evonik Roehm、オイドラギット(登録商標)RSPO) 90g及びモノステアリン酸グリセリン(理研ビタミン株式会社、リケマール(登録商標)S-100P) 60gを、高速撹拌造粒機(深江工業株式会社、ハイスピードミキサ、FS-GS-5J)に投入し、アジテータ回転数 500rpm、チョッパ回転数 2,000rpm、水温約85℃で30分間造粒して、原薬含有層を有するコーティング顆粒を形成した。この時の添加剤の温度は、約80℃であった。
【0085】
実施例8のコーティング顆粒 130g、ケイ酸処理結晶セルロース(JRS PHARMA、PROSOLV(登録商標)SMCC50) 2.6g、クロスポビドンCとして(ISP Technologies社、POLYPLASDONE(登録商標)XL-10) 20g及びステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社) 2.4gをポリ袋にて混合し、混合した粉末を、ロータリー打錠機(株式会社菊水製作所、VELA5)を用いて打錠して、1錠あたり155mgの実施例8の素錠を得た。コーティング機(フロイント産業株式会社、HC-LABO20)を用い、OPADRY(登録商標)II(Colorcon社)を素錠1錠に5mgをコーティングし、実施例8のフィルムコーティング錠を得た。
【0086】
[比較例3]
比較例3として、従来の湿式造粒法により、ラコサミドを造粒し、フィルムコーティング錠を製造した。詳細には、原薬としてラコサミド 400g、結晶セルロース(旭化成株式会社、PH102) 112g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学工業株式会社、L-HPC(登録商標)LH-21) 100gをハイスピードミキサ(深江パウテック株式会社、LFS-GS-5J)を用いて混合した。ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社、HPC-SL)) 16gを精製水 620gに溶解した造粒液を調製し、ハイスピードミキサに添加して練合した。得られた混合物を流動層造粒装置(株式会社パウレック、MP01)にて乾燥し、篩22号で整粒して、比較例3の整粒末を得た。
【0087】
得られた整粒末の流動性が低かったため、比較例3の整粒末 427.8g、ケイ酸処理結晶セルロース(JRS PHARMA、PROSOLV(登録商標)SMCC50) 172.8g及びクロスポビドンCとして(ISP Technologies社、POLYPLASDONE(登録商標)XL-10) 55.2gをポリ袋にて混合し、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社) 6.6gを添加して更に混合し、混合した粉末を、ロータリー打錠機(株式会社菊水製作所、VELA5)を用いて打錠して、1錠あたり240mgの実施例8の素錠を得た。コーティング機(フロイント産業株式会社、HC-LABO20)を用い、OPADRY(登録商標)II(Colorcon社)を素錠1錠に10mgをコーティングし、比較例3のフィルムコーティング錠を得た。
【0088】
[比較例4]
比較例3の整粒末 155.0g、ケイ酸処理結晶セルロース(JRS PHARMA、PROSOLV(登録商標)SMCC50) 2.6g及びクロスポビドンCとして(ISP Technologies社、POLYPLASDONE(登録商標)XL-10) 20gをポリ袋にて混合し、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業株式会社) 2.4gを添加して更に混合し、混合した粉末を、ロータリー打錠機(株式会社菊水製作所、VELA5)を用いて打錠して、1錠あたり180mgの比較例4の素錠を得た。コーティング機(フロイント産業株式会社、HC-LABO20)を用い、OPADRY(登録商標)II(Colorcon社)を素錠1錠に5mgをコーティングし、比較例4のフィルムコーティング錠を得た。
【0089】
実施例8及び比較例3~4のフィルムコーティング錠の素錠各20錠について、重量を測定し、ばらつきを評価した。評価結果を表5に示す。
【表5】
【0090】
表5の結果より、比較例3のフィルムコーティング錠では、流動性の良いケイ酸処理結晶セルロースを多量に含むことにより、流動性の低い湿式造粒物の割合を希釈したため、フィルムコーティング錠の素錠が大型化した。また、比較例4の湿式造粒物は流動性が低かったため、比較例4のフィルムコーティング錠の素錠の質量のばらつきが大きくなることが明らかとなった。一方、実施例8の素錠では、溶融造粒物は流動性が高かったため、比較例3~4の素錠に比して素錠の質量のばらつきが小さく、流動性が高い添加剤を多量に添加する必要もなかったため、比較例3~4の素錠に比して素錠を小型化することが可能であることが示された。
【符号の説明】
【0091】
1 素錠、10 コーティング顆粒、11 コア、13 原薬含有層、15 ポリマー含有層、17 オーバーコート層、131 原薬、133 溶融成分、151 ポリマー、153 滑沢剤、171 固着を防止する添加剤、173 滑沢剤
図1
図2