(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115541
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】運転支援装置及び運転支援方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024019582
(22)【出願日】2024-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2023020674
(32)【優先日】2023-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023207414
(32)【優先日】2023-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】新間 貴英
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佑季
(72)【発明者】
【氏名】大石 啓之
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀明
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL07
5H181LL11
(57)【要約】
【課題】構成の複雑化を抑えつつ、車両発進時により早いタイミングで適切に警報を行うことができる運転支援装置及び運転支援方法を提供する。
【解決手段】運転支援装置1は、車両発進後に衝突の可能性がある対象物を検出する対象物検出部21と、対象物検出部21により対象物が検出された場合に、フットブレーキの状態を示すフットブレーキ信号Saに基づいて、フットブレーキオンが規定時間以上継続したかを判断する第1判断部22と、第1判断部22によりフットブレーキオンが規定時間以上継続したと判断された場合に、フットブレーキ信号Saに基づいて、フットブレーキオフに移行したかを判断する第2判断部23と、第2判断部23によりフットブレーキオフに移行したと判断された場合に、予告警報を発生させる予告警報制御部26aとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて車両の運転者に警報を行う運転支援装置であって、
車両発進後に衝突の可能性がある対象物を検出する対象物検出手段と、
前記対象物検出手段により前記対象物が検出された場合に、フットブレーキの状態を示すフットブレーキ信号に基づいて、フットブレーキオンが規定時間以上継続したかを判断する第1判断手段と、
前記第1判断手段によりフットブレーキオンが前記規定時間以上継続したと判断された場合に、前記フットブレーキ信号に基づいて、フットブレーキオフに移行したかを判断する第2判断手段と、
前記第2判断手段によりフットブレーキオフに移行したと判断された場合に、警報を発生させる警報制御手段と、
を備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記第2判断手段によりフットブレーキオフに移行したと判断されていない場合に、車速がゼロを超えたかを判断する第3判断手段をさらに備え、
前記警報制御手段は、前記第3判断手段により車速がゼロを超えたと判断された場合に、警報を発生させる
ことを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記警報制御手段は、
前記警報の発生から一定時間内は、前記第1判断手段によるフットブレーキオンが前記規定時間以上継続したかの判断処理を非実行とする
ことを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記警報制御手段は、
前記警報の発生から前記一定時間が経過した後、警報を発生させる
ことを特徴とする請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記警報制御手段は、
前記警報の発生から前記一定時間が経過した後、警報発生のイベントを記録させる
ことを特徴とする請求項4に記載の運転支援装置。
【請求項6】
イグニッションスイッチがオフとされた解除状態であるか、又は、シフトポジションが車両を後退方向に進行させるためのリバース位置とされた解除状態であるかを判断する第4判断手段をさらに備え、
前記第2判断手段は、前記第1判断手段によりフットブレーキオンが前記規定時間以上継続したと判断された場合であっても、前記第4判断手段に前記解除状態であると判断された場合、フットブレーキオフに移行したかの判断処理を非実行とする
ことを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記対象物検出手段は、
車両の前方の領域であって、車両の左側面と右側面との間を含む領域である自車幅エリアに位置する物体を、車両発進後に衝突の可能性がある前記対象物として検出する第1検出手段と、
車両の前方の領域であって、前記自車幅エリアに対して車幅方向における外側に隣接する領域である左右レーンエリアに位置し、かつ前記自車幅エリアに向かって移動中の物体を、車両発進後に衝突の可能性がある前記対象物として検出する第2検出手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記第2検出手段は、
前記左右レーンエリアに位置し、かつ前記自車幅エリアに向かって予め定められた前記車幅方向の速度閾値を超える速度で移動中の物体を、車両発進後に衝突の可能性がある前記対象物として検出する
ことを特徴とする請求項7に記載の運転支援装置。
【請求項9】
前記第2検出手段は、
前記速度閾値として、車両の前後方向における車両と物体との距離に応じて異なる値を用いて前記対象物を検出する
ことを特徴とする請求項8に記載の運転支援装置。
【請求項10】
車両に搭載されて車両の運転者に警報を行う運転支援装置の運転支援方法であって、
車両発進後に衝突の可能性がある対象物を検出する対象物検出工程と、
前記対象物検出工程において前記対象物が検出された場合に、フットブレーキの状態を示すフットブレーキ信号に基づいて、フットブレーキオンが規定時間以上継続したかを判断する第1判断工程と、
前記第1判断工程においてフットブレーキオンが前記規定時間以上継続したと判断された場合に、前記フットブレーキ信号に基づいて、フットブレーキオフに移行したかを判断する第2判断工程と、
前記第2判断工程においてフットブレーキオフに移行したと判断された場合に、警報を発生させる警報制御工程と、
を備えることを特徴とする運転支援装置の運転支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置及び運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の発進時に衝突の可能性がある歩行者や自転車等の対象物が存在する場合に警報を発する運転支援装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。この運転支援装置によれば、車両発進時において運転者の確認不足や視界不良等があったとしても、対象物への衝突の回避に寄与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載のような運転支援装置において車速が0km/hを超えたときに警報を行うことが考えられる。これにより、運転者が車両を発進させる意思がない車両停車時において対象物が検出される毎に、都度警報が発せられてしまう事態を防止することができる。
【0005】
しかし、このような運転支援装置は、車速が0km/hを超えたときに警報を行うため、警報タイミングがやや遅い場合がある。そこで、本件発明者らは、運転者がフットブレーキを離したタイミングで警報を行うことを検討しているが、この場合、運転者がサイドブレーキを引いてフットブレーキを離した場合(すなわち停車中)にも警報が発せられることとなってしまう。よって、運転支援装置がサイドブレーキの信号を入力する構成が考慮されるが、サイドブレーキからの信号を入力するための構成(入力部及び配線等)が必要となってしまい、構成の複雑化を招いてしまう。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、構成の複雑化を抑えつつ、車両発進時により早いタイミングで適切に警報を行うことができる運転支援装置及び運転支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の運転支援装置は、車両に搭載されて車両の運転者に警報を行う運転支援装置であって、車両発進後に衝突の可能性がある対象物を検出する対象物検出手段と、前記対象物検出手段により前記対象物が検出された場合に、フットブレーキの状態を示すフットブレーキ信号に基づいて、フットブレーキオンが規定時間以上継続したかを判断する第1判断手段と、前記第1判断手段によりフットブレーキオンが前記規定時間以上継続したと判断された場合に、前記フットブレーキ信号に基づいて、フットブレーキオフに移行したかを判断する第2判断手段と、前記第2判断手段によりフットブレーキオフに移行したと判断された場合に、警報を発生させる警報制御手段と、を備える。
【0008】
本発明の運転支援方法は、車両に搭載されて車両の運転者に警報を行う運転支援装置の運転支援方法であって、車両発進後に衝突の可能性がある対象物を検出する対象物検出工程と、前記対象物検出工程において前記対象物が検出された場合に、フットブレーキの状態を示すフットブレーキ信号に基づいて、フットブレーキオンが規定時間以上継続したかを判断する第1判断工程と、前記第1判断工程においてフットブレーキオンが前記規定時間以上継続したと判断された場合に、前記フットブレーキ信号に基づいて、フットブレーキオフに移行したかを判断する第2判断工程と、前記第2判断工程においてフットブレーキオフに移行したと判断された場合に、警報を発生させる警報制御工程と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、構成の複雑化を抑えつつ、車両発進時により早いタイミングで適切に警報を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る運転支援装置を示す構成図である。
【
図2】比較例に係る運転支援装置の警報の様子を示す第1のタイミングチャートである。
【
図3】比較例に係る運転支援装置の警報の様子を示す第2のタイミングチャートである。
【
図4】本実施形態に係る運転支援装置の様子を示す第1のタイミングチャートである。
【
図5】本実施形態に係る運転支援装置の様子を示す第2のタイミングチャートである。
【
図6】本実施形態に係る運転支援装置による運転支援方法を示すフローチャートである。
【
図7】本実施形態に係る運転支援装置による運転支援方法における本警報処理を示すフローチャートである。
【
図8】本実施形態に係る運転支援装置における警報猶予時間を用いた本警報処理を示す説明図である。
【
図9】他の実施形態に係る運転支援装置を示す構成図である。
【
図10】他の実施形態に係る運転支援装置の対象物検出部が検出する対象物と検出するエリアとを模式的に示した図である。
【
図11】他の実施形態に係る運転支援装置による運転支援方法のうち、
図6のS1に対応するステップの詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0012】
図1は、本実施形態に係る運転支援装置を示す構成図である。運転支援装置1は、車両に搭載されて車両の運転者に警報を行うものであって、特に車両の停車状態から発進時において衝突の危険性がある場合に警報を行うものである。この運転支援装置1は、カメラ10と、制御装置20と、スピーカ30とを備えて構成されている。
【0013】
カメラ10は、例えば自車両の前方を撮像するものである。スピーカ30は、運転者に向けて警報を発するものである。制御装置20は、カメラ10に撮像された画像に基づいて処理を行い、警報を行うか否かの判断等を行うものである。また、制御装置20は、フットブレーキ信号Sa、車速信号Sb、イグニッション(以下IGN)信号Sc、及びバック信号Sdを入力する。
【0014】
フットブレーキ信号Saは、フットブレーキの状態、すなわち運転者により操作されるフットブレーキが踏まれた状態であるか、フットブレーキが踏まれていない状態であるかを示す信号である。このフットブレーキ信号Saは、フットブレーキが踏まれているときにオンとなり、踏まれていないときにオフとなる。車速信号Sbは、車速に関する信号であって、車両の車速センサからの車速パルスや、他の機器からの車速を示すCAN(Controller Area Network)通信等の信号である。また、車速信号Sbは、GPS(Global Positioning System)を利用した位置情報から求められる信号であってもよい。IGN信号Scは、イグニッションスイッチ(IGNスイッチ)がオンされたときにオンとなり、IGNスイッチがオフされたときにオフとなるものである。バック信号Sdは、例えば車両のバックランプに紐づいて入力される信号であって、バックランプの点灯時にオンとなり、バックランプの非点灯時にオフとなるものである。制御装置20は、このような各種信号Sa~Sdに基づいて処理を実行することとなる。以下、制御装置20の詳細を説明する。
【0015】
制御装置20は、対象物検出部(対象物検出手段)21と、第1~第4判断部(第1~第4判断手段)22~25と、警報制御部(警報制御手段)26とを備えている。警報制御部26は、警報を行う際にスピーカ30の動作を制御するものであり、予告警報制御部26aと、本警報制御部26bとを備えている。予告警報制御部26aは、スピーカ30より予告警報を発生させる制御を行うものであり、本警報制御部26bは、スピーカ30より本警報を発生させる制御を行うものである。ここで、予告警報とは、本警報の前段階で発せられる予備的な警報である。一方、本警報は、より対象物への衝突の可能性が高まった場合や、対象物への衝突を回避したヒヤリハット時に発せられる警報である。特に、ヒヤリハット時の本警報は、運転支援装置1がデジタルタコメータに適用される場合、イベント記録されることの通知としても機能することとなる。
【0016】
対象物検出部21は、車両発進後に衝突の可能性がある対象物(歩行者や自転車等)を検出するものである。この対象物検出部21は、例えばカメラ10によって得られた時系列の画像データから移動物体を検知し、その移動物体が車両の走行領域に進入してくるか等を判断することで、衝突の可能性がある対象物を検出する。なお、対象物検出部21は、カメラ10により得られた画像データに加えて、又は、カメラ10により得られた画像データに代えて、コーナーセンサ等のセンサからの情報や、レーダー装置を利用して求められる対象物までの距離情報等に基づいて、衝突の可能性がある対象物を検出してもよい。
【0017】
第1判断部22は、対象物検出部21により対象物が検出された場合に、フットブレーキ信号Saに基づいて、フットブレーキオンの状態、すなわちフットブレーキが踏まれている状態が規定時間以上継続したかを判断するものである。ここで、本件発明者らは、鋭意検討した結果、運転者がフットブレーキをある程度長い時間踏む場合、運転者が再発進の意思があることを見出した。一方、本件発明者らは、車両停車中において運転者がフットブレーキを短い時間しか踏まない場合、運転者がサイドブレーキを引いてフットブレーキを離した可能性が高いことを見出した。このため、第1判断部22は、フットブレーキオンが規定時間以上継続したか否かを判断することで、サイドブレーキの状態を示す信号を入力することなく、運転者に再発進の意思があるかを判断することとなる。なお、規定時間については、個人差があることから、運転者毎に設定されることが好ましい。
【0018】
第2判断部23は、第1判断部22によりフットブレーキオンが規定時間以上継続したと判断された場合に、フットブレーキオフに移行したかを判断するものである。予告警報制御部26aは、第2判断部23によりフットブレーキオフに移行したと判断された場合に、予告警報を発生させるものである。ここで、第2判断部23によりフットブレーキオフとなったと判断された場合とは、運転者に再発進の意思がある状態でフットブレーキが踏まれない状態に変化した場合といえる。このため、予告警報制御部26aは、今後車両が動き出す可能性が高いと判断し、予告警報を発生させることとなる。なお、ここで発せられる警報は、予告警報となるが、特に予告警報に限らず、本警報であってもよい。さらに、本実施形態に係る運転支援装置1は、予告警報と本警報との2種類の警報を発生させるものであるが、特にこれに限らず、警報は1種類であってもよいし、3種類以上であってもよい。
【0019】
第3判断部24は、第2判断部23によりフットブレーキオフに移行したと判断されていないにも拘らず、車速信号Sbに基づいて車速が規定値(例えば0km/h)を超えたかを判断するものである。また、予告警報制御部26aは、第3判断部24により車速が規定値を超えたと判断された場合に、対象物への衝突の可能性があると判断して予告警報を発生させる。これにより、フットブレーキから足が離れておらず、フットブレーキが緩く踏まれたまま、車両がクリープ現象により走行してしまうような場合においても、衝突の回避につなげることができる。
【0020】
第4判断部25は、警報の必要がなくなった解除状態であるかを判断するものである。第4判断部25は、例えばIGN信号Scに基づいてIGNオフとされたか、又は、バック信号Sdに基づいてシフトポジションが車両を後退させるリバース位置にあるかを判断するものである。ここで、これらの場合、車両前方への再発進の意思がないといえる。このような場合、第4判断部25は、解除状態であると判断する。また、第2判断部23は、第4判断部25により解除状態であると判断された場合、第1判断部22によりフットブレーキオンが規定時間以上継続した場合であっても、フットブレーキオフに移行したか否かの判断処理について非実行とする。すなわち、解除状態である場合には、運転者に車両前方への再発進の意思がないといえることから、予告警報の必要がなくフットブレーキオフに移行したことの判断についても必要がない。よって、第2判断部23は、第4判断部25により解除状態であると判断された場合、フットブレーキオフに移行したか否かの判断処理について非実行とする。
【0021】
なお、第4判断部25は、上記に限らず、例えば車速が所定値以上となった場合に、解除状態であると判断してもよい。この場合は、例えば対象物検出部21により対象物が検出されたものの、実際には対象物が衝突の可能性がないものであり、車両が普通に走行を開始した場合といえる。よって、第4判断部25は、このような場合についても、予告警報の必要がないことから、解除状態であると判断してもよい。
【0022】
次に、本実施形態に係る運転支援装置1の警報の様子を説明するが、これに先立って、比較例に係る運転支援装置の警報の様子を説明する。
図2及び
図3は、比較例に係る運転支援装置の警報の様子を示すタイミングチャートである。
【0023】
図2に示すように、まず、比較例に係る運転支援装置において、時刻0に車両発進後に衝突の可能性がある対象物が検出されているとする(対象物検出:ON)。また、時刻0において車両の車速がゼロであると判断されている(車速0Km/h超:OFF)。この場合、対象物が検出されているものの車両が停車中であることから、警報は発せられていない(警報:OFF)。
【0024】
その後、時刻Taにおいて車両が発進させられたとする(時刻Taの破線参照)。しかし、この時点において運転支援装置が車両発進を認識するまでタイムラグがあり、車速がゼロであると認識されている。次いで、時刻Tbにおいて運転支援装置は車両発進を認識する。すなわち、車速がゼロを超えたと認識する(車速0Km/h超:ON)。このとき、比較例に係る運転支援装置は、対象物が検出されており車速がゼロを超えていることから、衝突を回避すべく警報を発することとなる(警報:ON)。なお、
図2においては時刻Tbにおいて警報が発せられているが、警報発生までにタイムラグがあり時刻Tbよりもやや遅れて警報が発せられる場合もある。
【0025】
また、
図3に示すように、ヒヤリハット時に警報が行われる場合もある。
図3に示す例において、まず時刻0に車両発進後に衝突の可能性がある対象物が検出されているとする(対象物検出:ON)。また、時刻0において車両の車速がゼロであると判断されている(車速0Km/h超:OFF)。
【0026】
その後、時刻Tcにおいて運転者が車両を発進させたとする(車速0Km/h超:ON)。次に、時刻Tdにおいて運転者が対象物を認識して急ブレーキ等を行って車両を停車させたとする(車速0Km/h超:OFF)。すなわち、ヒヤリハットが発生したとする。この場合、比較例に係る運転支援装置は、ヒヤリハットを運転者に知らせるべく警報を発することとなる(警報:ON)。
【0027】
しかし、比較例に係る運転支援装置は、いずれの例においても警報タイミングが早いとはいえず、改善の余地がある。
【0028】
図4は、本実施形態に係る運転支援装置1の様子を示す第1のタイミングチャートである。まず、時刻0に車両発進後に衝突の可能性がある対象物が検出されているとする(対象物検出:ON)。また、時刻0においてフットブレーキが踏まれ(フットブレーキ:ON)、車両の車速がゼロであると判断されている(車速0Km/h超及び車速xkm/h超:OFF)。この場合、対象物が検出されているものの車両が停車中であることから、警報は発せられていない(予告警報及び本警報:OFF)。なお、xは、任意の正の数よりなる所定の速度値を示すものである。
【0029】
その後、時刻T11において第1判断部22は、フットブレーキが規定時間以上継続して踏まれ続けたと判断する。この時点において運転支援装置1は、運転者に再発進の意思があるものと判断する。次いで、時刻T12において第2判断部23は、フットブレーキがオフに移行したと判断する(フットブレーキ:OFF)。これにより、予告警報制御部26aは、予告警報を発する制御を実行し、スピーカ30より予告警報が発せられる(予告警報:ON)。
【0030】
その後、実際に車両が発進して時刻Tbにおいて車速がゼロを超えたと判断される(車速0Km/h超:ON)。ここで、
図2に示した比較例における運転支援装置は、時刻Tbにおいて警報が発せられていた。これに対して、本実施形態に係る運転支援装置1は、時刻Tbより前の時刻T12において予告警報を発生させている。従って、車両発進時により早いタイミングで警報を発することができる。
【0031】
その後、本警報の条件が満たされると時刻T13において本警報が発せられる。一例を挙げると、本実施形態に係る運転支援装置1において、時刻T13に車速がxkm/hを超えたと判断されると(車速xkm/h超:ON)、本警報制御部26bは、本警報を発する制御を実行し、スピーカ30より本警報が発せられる(本警報:ON)。
【0032】
図5は、本実施形態に係る運転支援装置1の様子を示す第2のタイミングチャートである。まず、時刻0に車両発進後に衝突の可能性がある対象物が検出されているとする(対象物検出:ON)。また、時刻0においてフットブレーキが踏まれ(フットブレーキ:ON)、車両の車速がゼロであると判断されている(車速xkm/h超:OFF)。この場合、対象物が検出されているものの車両が停車中であることから、警報は発せられていない(予告警報及び本警報:OFF)。
【0033】
その後、時刻T21においてフットブレーキがオフに移行したとする(フットブレーキ:OFF)。この時点ではフットブレーキがオンとなってから規定時間が経過した時刻T22には到達していない。よって、第1判断部22は、フットブレーキオンが規定時間以上継続したと判断せず、スピーカ30からは予告警報が発せられない(予告警報:OFF)。
【0034】
すなわち、車両停車状態においてフットブレーキオンが規定時間以上継続することなくフットブレーキがオフとなった場合は、サイドブレーキを引いてフットブレーキを踏まなくなった状態である可能性が高く、再発進の意思があるとは言い難い。よって、フットブレーキがオフとなった段階で予告警報は発せられないこととなる。これにより、適切な警報を行うことができる。しかも、予告警報を発しない判断にあたっては、サイドブレーキの信号について入力不要となっている。よって、サイドブレーキ信号の入力に関する構成の複雑化が防止されており、構成の複雑化についても抑えることができる。
【0035】
図6は、本実施形態に係る運転支援装置1による運転支援方法を示すフローチャートである。なお、
図6に示す処理は再発進時における衝突を回避するためのものであり、
図6に示すフローチャートは車両速度が特定速度以下であることを条件に開始される。
【0036】
まず、
図6に示すように、制御装置20は、対象物検出部21により対象物が検出されたかを判断する(S1)。対象物が検出されていない場合(S1:NO)、対象物が検出されたと判断されるまで、この処理が繰り返される。
【0037】
一方、対象物が検出された場合(S1:YES)、制御装置20は、車速信号Sbに基づいて車速がゼロであるかを判断する(S2)。車速がゼロでない場合(S2:NO)、処理はステップS8に移行する。
【0038】
車速がゼロである場合(S2:YES)、第1判断部22は、フットブレーキオンが規定時間以上継続したかを判断する(S3)。フットブレーキオンが規定時間以上継続していない場合(S3:NO)、処理はステップS8に移行する。
【0039】
フットブレーキオンが規定時間以上継続した場合(S3:YES)、制御装置20は、運転者に再発進の意思がある可能性が高いと判断する。その後、第4判断部25は、解除状態であるかを判断する(S4)。すなわち、第4判断部25は、例えばIGNスイッチがオフであるか、車両後退状態であるか、車両が普通に走行した状態であるか等を判断して、解除状態であるかを判断する。
【0040】
第4判断部25が解除状態であると判断した場合(S4:YES)、
図6に示す処理は終了する。一方、第4判断部25が解除状態でないと判断した場合(S4:NO)、第2判断部23は、フットブレーキがオフに移行したかを判断する(S5)。
【0041】
フットブレーキがオフに移行した場合(S5:YES)、予告警報制御部26aは、予告警報を発する制御を実行する(S7)。その後、処理はステップS8に移行する。一方、フットブレーキがオフに移行していない場合(S5:NO)、第3判断部24は、車速がゼロを超えたかを判断する(S6)。
【0042】
車速がゼロを超えていない場合(S6:NO)、処理はステップS4に移行する。一方、車速がゼロを超えた場合(S6:YES)、予告警報制御部26aは、予告警報を発する制御を実行する(S7)。その後、処理はステップS8に移行する。
【0043】
ステップS8において本警報制御部26bは本警報処理を実行し(S8)、
図6に示す処理は終了する。この処理において本警報制御部26bは、例えば対象物が検出された状態のまま、車速がxkm/hを超えた場合に、本警報を発する制御を実行する。なお、本警報については、これらに限らず、例えば
図3に示すようにヒヤリハット時に発せられるものであってもよい。また、本警報がヒヤリハット時に発せられる場合には、イベントとして記録が行われることとなる。
【0044】
このようにして、本実施形態に係る運転支援装置1及び運転支援方法によれば、フットブレーキオンが規定時間以上継続したかを判断する。ここで、車両が再発進を前提として停車する場合には、運転者はフットブレーキを踏み続ける傾向がある。一方、駐車時等の場合にはフットブレーキを踏んだ後にサイドブレーキを引いてフットブレーキを離すことから、フットブレーキオンが規定時間以上継続し難い傾向がある。よって、フットブレーキオンが規定時間以上継続してからフットブレーキオフに移行したときに警報を発生させることで、サイドブレーキの信号を入力する構成を新たに設ける必要がなく、フットブレーキを離したタイミングで警報することができる。従って、構成の複雑化を抑えつつ、車両発進時により早いタイミングで適切に警報を行うことができる。
【0045】
また、フットブレーキオフに移行したと判断されていない場合に、車速がゼロを超えたとき、警報を発生させるため、例えばフットブレーキを緩く踏んだまま、クリープ現象によって発進してしまうような場合においても適切に警報を発生させることができる。
【0046】
また、IGNスイッチオフやシフトポジションがリバース位置とされた場合、フットブレーキオンが規定時間以上継続していてもフットブレーキオフへの移行を判断しないこととなる。この場合、運転者に再発進の意思がない可能性が高く警報の必要性が低くなることから、フットブレーキオフへの移行を判断せず、誤った警報の可能性を減じることができる。
【0047】
ところで、例えば市街地の信号や交差点などにおいて、車両がフットブレーキのオン・オフによる停止及び発進を繰り返し行う場合、警報が連続して発生され得る。警報が連続して発生すると、運転者がわずらわしさを感じたり、警報による注意喚起効果が低下したりするおそれがある。そこで、本実施形態の運転支援装置1は、予告警報と本警報との間に警報猶予時間を設けることで、車両が停止及び発進を繰り返し行った場合でも、1度のみ警報を発生させて運転手に注意喚起し、以降の警報猶予時間内には警報を発生させない。具体的には、
図6に示した本警報処理(S8)において、本警報制御部26bは
図7に示す処理を実行する。
【0048】
図7は、本実施形態に係る運転支援装置1による運転支援方法における本警報処理を示すフローチャートである。
図7に示す処理は、
図6に示した本警報処理(S8)の一例を示す。
図6のステップS7で予告警報が発生された後、
図7に示す処理が開始される。
【0049】
予告警報が発生された後、本警報制御部26bは、フットブレーキがオンに移行したかを判断する(S81)。フットブレーキがオンに移行した場合(S81:YES)、及び、フットブレーキがオンに移行していない場合(S81:NO)において車速ゼロを超えたと本警報制御部26bが判断した場合(S82:YES)、処理はステップS83に移行する。
【0050】
ステップS83において、本警報制御部26bは、予告警報発生時点からの経過時間が警報猶予時間以上になったかを判断する。警報猶予時間が経過していない場合(S83:NO)、警報猶予時間が経過したと判断されるまで、この処理が繰り返される。一方、警報猶予時間が経過した場合(S83:YES)、処理はステップS84に移行する。
【0051】
ステップS84において、本警報制御部26bは、スピーカ30に本警報を発生させる。その後、本警報制御部26bは、本警報発生のイベント記録処理を行う(S85)。
【0052】
ステップS82において、車速ゼロを超えない場合(S82:NO)、本警報制御部26bは、予告警報発生時点からの経過時間が警報猶予時間以上になったかを判断する(S86)。警報猶予時間が経過していない場合(S86:NO)、処理はステップS81に戻る。一方、警報猶予時間が経過したと判断された場合(S86:YES)、処理はS84に進む。
【0053】
図8は、本実施形態に係る運転支援装置1における警報猶予時間を用いた警報発生動作を示す説明図である。
図8に示す様に、フットブレーキがオンされて車両が停止し(T31)、フットブレーキオンが規定時間以上継続した後、フットブレーキオフに移行した時点(T32)で、予告警報制御部26aの制御により予告警報が発生する。
【0054】
図7に示したステップS83,S86の処理を行わない場合、予告警報の発生(T32)後、フットブレーキがオンに移行した時点(T33)で本警報が発生する。また、この場合、フットブレーキがオンに移行した(T33)後にフットブレーキがオフに移行した時点(T34)において、フットブレーキオンが規定時間以上継続したとの条件を満たせば、新たな予告警報が発生する。このように、連続して警報が発生すると、運転者がわずらわしさを感じたり、警報による注意喚起効果が低下したりするおそれがある。
【0055】
運転支援装置1は、
図7に示したステップS83,S86の処理を行うので、予告警報の発生(T32)後、フットブレーキがオンに移行して車両が停止し(T33)、フットブレーキがオフに移行して車両が発進する(T34)が、警報は発生されない。そして、予告警報の発生から警報猶予時間が経過した時点で、本警報制御部26bの制御により、本警報が発生する(T35)。
【0056】
このようにして、本実施形態に係る運転支援装置1及び運転支援方法によれば、予告警報発生(S7)後、警報猶予時間内においては、第1判断部22による判断処理が実行されない、即ち、警報発生の前提となる、警報発生条件を満たすか否かの判断処理が行われない。よって、警報猶予時間内には警報が発生されない。このため、例えば市街地の信号や交差点などにおいて、車両が頻繁に停止及び発進を行う際、余分な警報発生が行われなくなるため、運転者のわずらわしさを低減できる。尚、警報猶予時間は、例えば運転者毎に、設定可能とされてもよい。
【0057】
また、本実施形態に係る運転支援装置1及び運転支援方法によれば、初めの予告警報発生(S7)から一定時間(警報猶予時間)が経過した後に、本警報が発生されるので、運転者に改めて注意喚起を行うことができる。
【0058】
さらに、本実施形態に係る運転支援装置1及び運転支援方法によれば、初めの予告警報発生(S7)から一定時間(警報猶予時間)が経過した後に、警報発生のイベントが記録されるので、不要な警報発生及びイベント記録が連続することを防止できる。よって、例えば、車両が停止及び発進を繰り返した場合であっても、例えば5秒間の警報猶予時間を一つの場面ととらえて、一つの警報発生イベントとして記録できる。したがって、イベント数による運転者評価を行う際、実情に合ったカウントに基づく正しい運転者評価が可能となる。
【0059】
図9は、他の実施形態に係る運転支援装置を示す構成図である。なお、上述の実施形態と同様の構成には同一の符号を付し、上述の実施形態についての説明を援用する。
【0060】
図9に示すように、他の実施形態に係る運転支援装置1aの対象物検出部21は第1検出部(第1検出手段)21aと第2検出部(第2検出手段)21bとを備えている。第1検出部21aと第2検出部21bとは、いずれも衝突の可能性がある対象物を検出するものであるが、対象物を検出するエリアと検出する条件とが異なる。
【0061】
図10は他の実施形態に係る運転支援装置1aの対象物検出部21が検出する対象物と検出するエリアとを模式的に示した図である。第1検出部21aは
図10に示すように自車幅エリア27に位置する物体33、
図10では歩行者を、車両発進後に衝突の可能性がある対象物として検出するものである。ここでいう自車幅エリア27とは車両29の前方の領域であって、車両29の左側面30aと右側面30bとの間を含む領域である。より具体的には、車両29の前方の領域であって、平面視で左側面30aと右側面30bとを前方に延長した仮想線31a、31bの間の領域であり、車両29の車幅方向Aにおける中央32を含む領域である。つまり、自車幅エリア27は、車両29が発進、ここでは直進した場合に通過するエリアである。
【0062】
第1検出部21aは自車幅エリア27に位置する物体33であれば、その物体33が移動中であるか否かを問わずに対象物として検出する。
図10では立ち止まっていて移動していない歩行者34と、移動中の歩行者35a~35cが自車幅エリア27に物体33として位置しているが、第1検出部21aは、いずれの物体33も対象物として検出する。自車幅エリア27は車両29が発進した場合に通過するエリアであるため、自車幅エリア27に位置する物体33は、いずれも車両29が発進した場合に衝突する可能性がある。そこで自車幅エリア27に位置する物体33を対象物として検出することで、これらの物体33が車両発進後の車両29に衝突する危険性を下げられる。
【0063】
なお自車幅エリア27の幅WSは例えば車両29の車幅であり、自車幅エリア27の車幅方向両端は例えば車両29の左側面30aと右側面30bとを前方に延長した仮想線31a、31bである。ただし、幅WSを車幅より広くして、自車幅エリア27の車幅方向両端を仮想線31a、31bより外側にすることで自車幅エリア27を広げてもよい。このように自車幅エリア27を広げることで、サイドミラーのように車両29の側面から側方に突設された構造物と物体33との衝突も確実に回避できる。
【0064】
また自車幅エリア27の、車両29の前後方向の長さLは例えば車両29の前方に物体33が位置していた場合、車両発進後にフットブレーキを踏んでも衝突を回避できない可能性がある距離より長いことが好ましい。つまり発進直後にフットブレーキを踏んだ場合の制動距離より長い方が好ましく、具体的な長さLは例えば数m程度である。
【0065】
図9に示す第2検出部21bは、
図10に示すように左右レーンエリア28に位置し、かつ自車幅エリア27に向かって移動中の物体33を、車両発進後に衝突の可能性がある対象物として検出するものである。ここでいう左右レーンエリア28とは、車両29の前方の領域であって、自車幅エリア27に対して車幅方向Aにおける外側に隣接する領域である。
図10では自車幅エリア27に対して車幅方向Aにおける車両29の左側の左右レーンエリア28が左レーンエリア28aであり、右側の左右レーンエリア28が右レーンエリア28bである。
【0066】
例えば
図10において物体33として、左レーンエリア28aに、立ち止まっていて移動していない歩行者37と、自車幅エリア27に向かって移動中の歩行者36aと、自車幅エリア27から離れる向きに移動中の歩行者36bが位置していたとする。また右レーンエリア28bに、自車幅エリア27に向かって移動中の歩行者36cと、自車幅エリア27から離れる向きに移動中の歩行者36dが位置していたとする。この場合、第2検出部21bは、自車幅エリア27に向かって移動中の歩行者36a、36cを車両発進後に衝突の可能性がある対象物として検出する。一方で第2検出部21bは、自車幅エリア27から離れる向きに移動中の歩行者36b、36d、及び立ち止まっていて移動していない歩行者37は検出しない。なお図示はしていないが、左右レーンエリア28内を自車幅エリア27の左右両端に平行に移動中の物体33も検出しない。
【0067】
左右レーンエリア28は、自車幅エリア27の側方に隣接するエリアであるため、車両29が発進した場合に通過するエリアではない。そのため、左右レーンエリア28に位置する物体33は、車両29が発進した時点で衝突する可能性は低い。一方で左右レーンエリア28に位置する物体33でも自車幅エリア27に向かって移動中の物体33は、車両29が発進した後に自車幅エリア27に進入する可能性があり、この場合は衝突の可能性が高くなる。ただし自車幅エリア27から離れる向きに移動中の歩行者36b、36d、及び立ち止まっていて移動していない歩行者37のような物体33は車両29が発進した後でも自車幅エリア27に進入する可能性は低いので衝突する可能性は非常に低い。
【0068】
そこで、第2検出部21bは、左右レーンエリア28に位置する物体33のうち、自車幅エリア27に向かって移動中の歩行者36a、36cを対象物として検出する。これにより、第2検出部21bは左右レーンエリア28に位置する物体33のうち、車両29が発進した後で衝突する可能性が高い物体33のみを検出することができる。具体的には第2検出部21bが、歩道で車両29の前後方向に沿って移動中の歩行者のように、車両29と衝突の可能性が極めて低いものを対象物と検出する可能性を低くでき、衝突の可能性が高い物体33のみを検出できる。また、第2検出部21bが、移動しない物体33を検出しないことで、第2検出部21bが、看板や電信柱のように、車道の外側に設置され、車両29と衝突する可能性の極めて低い構造物を対象物として誤検出する可能性も下げられる。
【0069】
第2検出部21bは、左右レーンエリア28に位置し、かつ自車幅エリア27に向かって移動中の物体33の全てを、必ずしも車両発進後に衝突の可能性がある対象物として検出する必要はない。例えば第2検出部21bは、左右レーンエリア28に位置し、かつ自車幅エリア27に向かって予め定められた車幅方向Aの速度閾値を超える速度で移動中の物体33を、車両発進後に衝突の可能性がある対象物として検出してもよい。
【0070】
物体33は例えば車両29の前方をカメラ10で撮像して得た画像からエッジ抽出等の画像解析を行うことで抽出されるが、カメラ10のレンズの曲率や物体33とカメラ10との距離によっては画像の隅が丸く歪む場合がある。この場合、車両前後方向に沿って移動しており、本来は衝突の可能性がある対象物として検出しないはずの物体33であっても、撮像した画像の隅を移動する際に丸く歪んだ部分に沿って車両29の中央32、つまり、自車幅エリア27に向かって移動中に見える。このように画像が歪んだ場合は車両前後方向に沿って移動している物体33も、画面上では速度に車幅方向成分が生じる場合がある。しかしながら画面が歪むことで生じた速度の車幅方向成分よりも速い速度を、車幅方向Aの速度閾値としていれば、画面が歪むことで自車幅エリア27に向かって移動するように見える物体33を第2検出部21bは検出しない。従って、第2検出部21bが、歪んだ部分を移動中の物体33が自車幅エリア27に向かって移動中であると誤認する可能性を大幅に下げられる。また、自車幅エリア27に向かって移動中でも、移動速度が遅く、発進時に車両29まで到達し得ない物体33がある場合でも、その物体33の移動速度を超える速度が速度閾値であれば第2検出部21bは検出しない。そのため、速度閾値を設けることで、発進時に車両29まで到達し得ない物体33を第2検出部21bが対象物として検出する可能性も低くできる。このように車幅方向Aの速度閾値を設けることで、車両29に衝突する可能性がある対象物を第2検出部21bが検出する精度を高められる。
【0071】
なお、
図9では速度閾値21cを第2検出部21bが記憶している例を示したが、第2検出部21bとは別の図示しない記憶部等に速度閾値21cを記憶させてもよい。
【0072】
速度閾値21cは必ずしも1つの値である必要はない。例えば第2検出部21bは、速度閾値21cとして、車両29の前後方向における車両29と物体33との距離に応じて異なる値を用いて対象物を検出してもよい。具体的には第2検出部21bは、車両29と物体33との距離が近くなるほど速度閾値21cを低くして、距離が遠くなるほど速度閾値21cを高くすればよい。
【0073】
車両29と物体33との距離は近くなるほど、物体33の移動速度が比較的低速でも車両29に衝突する可能性が高くなるが、車両29と物体33との距離が遠くなるほど物体33が比較的高速でも車両29に衝突する可能性が低くなる。そこで、第2検出部21bが、車両29と物体33との距離に応じて異なる速度閾値21cを用い、速度閾値21cに対して距離に応じた重みづけをすることで、車両29に衝突する可能性が高い物体33の検出精度を高められる。
【0074】
図11は他の実施形態に係る運転支援装置1aによる運転支援方法のうち、車両発進後に衝突の可能性がある対象物を検出するステップ、つまり
図6のS1に対応するステップの詳細を示すフローチャートである。まず、
図11に示すように、対象物検出部21はカメラ10等を用いて自車幅エリア27及び左右レーンエリア28を撮像して映像データを取得する(S11)。
【0075】
次に対象物検出部21は画像解析等の公知の手段を用いて歩行者等の物体33を映像データから抽出し、抽出した物体33の座標、ここでは平面上の座標値を検出する(S12)。座標値が検出されると対象物検出部21の第1検出部21aは、検出された座標値が自車幅エリア27内であるかを判断する(S13)。座標値が自車幅エリア27内である場合(S13:YES)、対象物検出部21の第1検出部21aは、抽出した物体33を検出対象とする(S16)。
【0076】
座標値が自車幅エリア27内でない場合(S13:NO)、対象物検出部21の第2検出部21bは、検出された座標値が左右レーンエリア28内であるかを判断する(S14)。座標値が左右レーンエリア28内でない場合(S14:NO)、処理はステップS17に移行する。
【0077】
検出された座標値が左右レーンエリア28内である場合(S14:YES)、対象物検出部21の第2検出部21bは、検出された物体33の移動方向が自車幅エリア27に向かう方向であるかを判断する(S15)。移動方向が自車幅エリア27に向かう方向の場合(S15:YES)、対象物検出部21の第2検出部21bは、抽出した物体33を検出対象とする(S16)。移動方向が自車幅エリア27に向かう方向でない場合(S15:NO)、処理はステップS17に移行する。なお、速度閾値21cを用いる場合、第2検出部21bはステップS15において、物体33の車幅方向の速度成分が速度閾値21cを超える場合は、抽出した物体33を検出対象とし(S16)、速度閾値21c以下の場合はステップS17に移行すればよい。
【0078】
ステップS17において、対象物検出部21の第2検出部21bは、抽出した物体33を検出対象としない。ある物体33に対して、ステップS16又はステップS17が終わると、対象物検出部21は抽出した全ての物体33に対してステップS12~S17のフローを繰り返す。
【0079】
このように他の実施形態によれば、第1検出部21aは、自車幅エリア27に位置する物体33を、車両発進後に衝突の可能性がある対象物として検出する。自車幅エリア27は車両29が発進した場合に通過するエリアであるため、自車幅エリア27に位置する物体33を検出することで、車両29が発進した場合に衝突する可能性がある物体33を確実に第1検出部21aが対象物として検出できる。また第2検出部21bは、左右レーンエリア28に位置し、かつ自車幅エリア27に向かって移動中の物体33も、車両発進後に衝突の可能性がある対象物として検出する。そのため、自車幅エリア27外から自車幅エリア27内に進入する可能性がある物体33を第2検出部21bが検出できる。よって左右レーンエリア28に位置する物体33のうち、衝突の可能性がある物体33のみを第2検出部21bが対象物として検出できる。このように、他の実施形態では自車幅エリア27と左右レーンエリア28とで衝突の可能性がある物体33の検出条件を異ならせ、物体33の位置や移動方向に応じて車両29に衝突する可能性を判断する。そのため、他の実施形態では車両29に衝突する可能性が高い物体33の検出精度を高められる。
【0080】
また、他の実施形態によれば、第2検出部21bは、左右レーンエリア28に位置し、かつ自車幅エリア27に向かって予め定められた速度閾値21cを超える速度で移動中の物体33を、車両発進後に衝突の可能性がある対象物として検出する。そのため、実際は自車幅エリア27に向けて移動していないが、撮像した画像が歪んでいるために画像上では自車幅エリア27に向けて移動している物体33を、実際に自車幅エリア27に向けて移動していると第2検出部21bが判断する可能性を下げられる。また発進時までに車両29まで到達し得ない物体33を第2検出部21bが検出する可能性を下げられる。よって他の実施形態では車両29に衝突する可能性が高い物体33の検出精度を高められる。
【0081】
さらに、他の実施形態によれば、第2検出部21bは、速度閾値21cとして、車両29と物体33との距離が近くなるほど速度閾値21cを低くする等して車両29と物体33との距離に応じて異なる値を用いて対象物を検出する。そのため、第2検出部21bは同じエリアにある物体33でも、距離と速度との違いにより車両29と衝突する可能性が異なる物体33に対して、検出の際に衝突する可能性に応じた重みづけを行うことができる。よって他の実施形態では、車両29に衝突する可能性が高い物体33の検出精度を高められる。
【0082】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で適宜他の技術を組み合わせてもよい。さらに、可能な範囲で公知又は周知の技術を組み合わせてもよい。
【0083】
例えば、上記実施形態において対象物はカメラ10からの画像に基づいて検出されるが、特にこれに限らず、レーダー装置を利用する等、画像によらない検出が行われてもよい。さらに、本実施形態において対象物は歩行者や自転車を例示したが、特にこれに限らず、他の障害物であってもよい。
【0084】
さらに、上記実施形態においては予告警報と本警報との2種類の警報を発する構成を採用しているが、これに限らず、警報は1種又は3種以上であってもよい。
【0085】
加えて、本実施形態に係る運転支援装置1は、フットブレーキが踏まれているか否かを示すオンオフ信号を入力しているが、フットブレーキの状態がわかればオンオフ信号に限らず、フットブレーキの踏み込み量を示す信号を入力してもよい。
【符号の説明】
【0086】
1、1a:運転支援装置
21 :対象物検出部(対象物検出手段)
21a :第1検出部(第1検出手段)
21b :第2検出部(第2検出手段)
21c :速度閾値
22 :第1判断部(第1判断手段)
23 :第2判断部(第2判断手段)
24 :第3判断部(第3判断手段)
25 :第4判断部(第4判断手段)
26 :警報制御部(警報制御手段)
26a :予告警報制御部
26b :本警報制御部
27 :自車幅エリア
28 :左右レーンエリア
29 :車両
30 :スピーカ
30a :左側面
30b :右側面
33 :物体
A :車幅方向
Sa :フットブレーキ信号