(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115542
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】オリゴ糖の吸湿性の改善
(51)【国際特許分類】
C08L 5/16 20060101AFI20240819BHJP
【FI】
C08L5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024019853
(22)【出願日】2024-02-13
(62)【分割の表示】P 2023021172の分割
【原出願日】2023-02-14
(71)【出願人】
【識別番号】390021636
【氏名又は名称】塩水港精糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097825
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 久紀
(74)【代理人】
【識別番号】100137925
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 紀一郎
(72)【発明者】
【氏名】原 浩司
(72)【発明者】
【氏名】藤田 孝輝
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB05W
4J002AB05X
(57)【要約】
【課題】本発明はβ-サイクロデキストリンの水への溶解性を高めるための簡便な方法等を開発する。あわせて本発明は、オリゴ糖の吸湿性を改善するための簡便な方法等を開発する。
【解決手段】その解決手段は、溶解性向上についてはβ-サイクロデキストリンにα-サイクロデキストリンを混合したり、これらを含む組成物を製造したりすることによって実現される。また、吸湿性改善についてはオリゴ糖にα-サイクロデキストリンを混合したり、これらを含む組成物を製造したりすることによって実現される。また、両者を混合した後に、水に溶解し、乾燥することによっても、さらに吸湿性改善効果を向上させることができる。
これにより、β-サイクロデキストリンの有効性及びオリゴ糖の有効性をさらに各分野で発揮することができることとなる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-サイクロデキストリンを用いること、を特徴とするオリゴ糖の吸湿性を改善する方法。
【請求項2】
オリゴ糖に、α-サイクロデキストリンを混合することにより、該オリゴ糖の吸湿性を改善する方法。
【請求項3】
オリゴ糖に、α-サイクロデキストリンを混合して組成物を製造することにより、該オリゴ糖の吸湿性を改善する方法。
【請求項4】
オリゴ糖に、α-サイクロデキストリンを50%以上の割合で混合することにより、オリゴ糖の吸湿性を改善する方法。
【請求項5】
さらに、混合後に、溶解し、乾燥工程を経ることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
オリゴ糖に、α-サイクロデキストリンを50%以上の割合で混合して組成物を製造することにより、オリゴ糖の吸湿性を改善する方法。
【請求項7】
さらに、Bx30~Bx50に調整することを特徴とする、請求項1から4、6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
オリゴ糖に、α-サイクロデキストリンを50%以上の割合にて混合し、溶解し、その後乾燥することを特徴とする、オリゴ糖の吸湿性を改善する組成物の製造方法。
【請求項9】
α-サイクロデキストリンを有効成分としてなることを特徴とする、オリゴ糖の吸湿性を改善する剤。
【請求項10】
オリゴ糖が、ラクトスクロース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖のなかから選ばれる1以上であることを特徴とする、請求項1から4、6、8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
オリゴ糖が、ラクトスクロース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖のなかから選ばれる1以上であることを特徴とする、請求項9に記載の剤。
【請求項12】
α-サイクロデキストリンを有効成分として含有することを特徴とする、β-サイクロデキストリンの水への溶解性を高め、オリゴ糖の吸湿性を改善する剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な用途を有する物質であるサイクロデキストリン、特にその中でもβ-サイクロデキストリンが、主に室温以下での低温域において、水に対する溶解度がきわめて低いことに鑑み、当該溶解性を改善・向上させることができる技術を提供するものである。更に詳しくは、本発明は、β-サイクロデキストリンにα-サイクロデキストリンを混合すること等によって、β-サイクロデキストリンの溶解性を向上させることができる技術に関するものである。
また、同様に様々な用途を有する物質であるオリゴ糖、特にその中でも乳糖果糖オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖が、吸湿性を有することに鑑み、当該吸湿性を改善・向上させることができる技術をも提供するものである。更に詳しくは、本発明は、これらオリゴ糖に、α-サイクロデキストリンを混合すること等によって、オリゴ糖の吸湿性を改善することができる技術にも関するものである。
【背景技術】
【0002】
サイクロデキストリン(以下、シクロデキストリン、CD、環状オリゴ糖ということもある)は、グルコース残基がα-1,4-結合により環状に結合したオリゴ糖の一種であり、グルコース残基6個からなるα-サイクロデキストリン、7個からなるβ-サイクロデキストリン、8個からなるγ-サイクロデキストリンなどが知られている。
また、オリゴ糖は、ブドウ糖や果糖などの単糖が、グリコシド結合によって数個結合したものであって、分子量は300から1600程度のものである。オリゴ糖には様々な種類があり、スクロース、ラクトース、トレハロース、マルトース、イソマルトース等の二糖類や、ラクトスクロース、ラフィノース、マルトトリオース、1-ケストース等の三糖類、スタキオース、ニストース等の四糖類などがある。
【0003】
サイクロデキストリンには、様々な用途があり、例えば、不安定物質の安定化や揮発性物質の安定化、異臭のマスキング、難溶性・不溶性物質の可溶化などに用いられている。すなわち、医薬用途や食品用途等に幅広く用いられている。
また、オリゴ糖にも様々な用途があり、特に消化吸収されない難消化性のオリゴ糖にはビフィズス菌などの腸内善玉菌を増加させ腸内細菌叢を改善する効果を有することが知られており、様々な生理活性作用を期待されて健康食品等に活用されている。
【0004】
ここで、特にβ-サイクロデキストリンは水への溶解度が非常に低いという性質をもっているため、上記用途に応えることが困難となっている。具体的には、例えば25℃、100mLの条件下での水への溶解度は、α-CDが14.5g、β-CDが1.8g、γ-CDが23.2g程度となっている。
また、乳糖果糖オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖などオリゴ糖は高い吸湿性を有し、粉末性を維持しながら利用・流通させることが難しい、という性質を有している。よって、粉末状態での用途が制限され、上記有用性を活かしきれていない。
【0005】
よって、溶解度の低いβ-サイクロデキストリンは、薄い溶液で調製せざるを得ず、配合するときも高濃度で使用することはできず、単糖や低分子オリゴ糖のような糖類を混合したり、化学的に修飾したり、マルトースなどの糖を付加することによって溶解性を高めることを余儀なくされていた。具体的には、糖類との混合や、ヒドロキシプロピル基などの修飾CD、マルトシル基などの分岐CDなどが存在している。また、溶解度を向上させようとする技術として、例えば特許文献1(特表平8-508711)等を挙げることができる。
吸湿性の高いオリゴ糖については、オリゴ糖の粉末は時間の経過とともに吸湿が起こり飴状となるため、これに混合することで吸湿をおさえ、粉末状態を維持できる素材・混合方法が待ち望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況下、有用性の高いサイクロデキストリンの水への溶解度を向上させることができれば、濃い溶液にて調製することが可能となり、また、他物質に配合するときも高濃度で使用することも可能となるため、より有効に効率的に利用することが可能となる。
また、有用性の高いオリゴ糖の吸湿性を改善することができれば、バルク等での粉末製品化も可能となり、より有効に利用することができる。
【0008】
また、サイクロデキストリンは、上述したように、医薬用途や、食品用途等に使用することが想定されるため、可能な限り、化学的な修飾や、化学的な処理等は避けることが望ましい。
オリゴ糖についても同様である。
【0009】
このような技術的背景の下、上記修飾や付加等をすることなく、サイクロデキストリンの溶解性を向上させることができる技術が待ち望まれていた。当該課題が解決できれば、有用物質であるサイクロデキストリンの使用領域が大きく拡大するとともに、人体への影響も最小限に抑えることができる。また、製造コストの低減や、大量生産への途も開くことができると考えられる。大きな技術的貢献が期待できるのである。
オリゴ糖についても化学的処理等をすることなく、吸湿性を改善することができれば、上記と同様の貢献が期待できる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本願発明者らは、このような条件を満たすことができる物質や方法、条件等を鋭意検討した。その結果、意外に近縁な物質同士の混合に条件を満たす物質が存することを見い出した。すなわち、β-サイクロデキストリンに、α-サイクロデキストリンを混合すれば、これによって、上記修飾や付加等をすることなく、β-サイクロデキストリンの溶解性を高めることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
オリゴ糖についても、本願発明者らは、混合することで吸湿を抑え、粉末状態を維持できる素材、混合方法を検討した。その結果、ラクトスクロース(乳糖果糖オリゴ糖、以下「LS」ということもある)等のオリゴ糖にα-サイクロデキストリンを混合すれば、当該オリゴ糖の吸湿性を改善することができることを見い出した。
よって本願発明は、全体として、α-シクロデキストリンの性質、その使用方法に係る発明であるということも可能である。
【0011】
すなわち、本発明の実施形態は次のとおりである。
(1)α-サイクロデキストリンを用いること、を特徴とするβ-サイクロデキストリンの水への溶解性を高める方法。
(2)β-サイクロデキストリンに、α-サイクロデキストリンを混合することにより、β-サイクロデキストリンの水への溶解性を高める方法。
(3)β-サイクロデキストリンに、α-サイクロデキストリンを混合して組成物を製造することにより、β-サイクロデキストリンの水への溶解性を高める方法。
(4)β-サイクロデキストリンを10%~60%、α-サイクロデキストリンを40~77%の割合で混合することにより、β-サイクロデキストリンの水への溶解性を高める方法。
(5)β-サイクロデキストリンを10%~60%、α-サイクロデキストリンを40~77%の割合で混合して組成物を製造することにより、β-サイクロデキストリンの水への溶解性を高める方法。
(6)さらに、Bx.40~55に調整することを特徴とする、(1)から(5)のいずれかひとつに記載の方法。
(7)α-サイクロデキストリンを60~90%、好ましくは70~80%、特に好ましくは77%、β-サイクロデキストリンを10~40%、好ましくは20~30%、特に好ましくは23%の割合にて混合溶解し、その後濾過し、その後スプレードライすることを特徴とする、β-サイクロデキストリンの水への溶解性を高める組成物の製造方法。
(8)α-サイクロデキストリンを有効成分としてなることを特徴とする、β-サイクロデキストリンの水への溶解性を高める剤。
(9)α-サイクロデキストリンを用いること、を特徴とするオリゴ糖の吸湿性を改善する方法。
(10)オリゴ糖に、α-サイクロデキストリンを混合することにより、該オリゴ糖の吸湿性を改善する方法。
(11)オリゴ糖に、α-サイクロデキストリンを混合して組成物を製造することにより、該オリゴ糖の吸湿性を改善する方法。
(12)オリゴ糖に、α-サイクロデキストリンを50%以上、好ましくは60~70%の割合で混合することにより、オリゴ糖の吸湿性を改善する方法。
(13)さらに、混合後に、溶解し、乾燥工程を経ることを特徴とする、(9)~(12)のいずれかひとつに記載の方法。
(14)オリゴ糖に、α-サイクロデキストリンを50%以上、好ましくは60~70%の割合で混合して組成物を製造することにより、オリゴ糖の吸湿性を改善する方法。
(15)さらに、Bx30~Bx50に調整することを特徴とする、(9)から(14)のいずれかひとつに記載の方法。
(16)オリゴ糖に、α-サイクロデキストリンを50%以上、好ましくは60~70%の割合にて混合し、溶解し、その後乾燥することを特徴とする、オリゴ糖の吸湿性を改善する組成物の製造方法。
(17)α-サイクロデキストリンを有効成分としてなることを特徴とする、オリゴ糖の吸湿性を改善する剤。
(18)オリゴ糖が、ラクトスクロース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖のなかから選ばれる1以上であることを特徴とする、(9)から(16)のいずれかひとつに記載の方法。
(19)オリゴ糖が、ラクトスクロース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖のなかから選ばれる1以上であることを特徴とする、(17)に記載の剤。
(20)α-サイクロデキストリンを有効成分として含有することを特徴とする、β-サイクロデキストリンの水への溶解性を高め、オリゴ糖の吸湿性を改善する剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡便且つ効果的にβ-サイクロデキストリンの水への溶解性を高めることができる。これまでは、化学的に修飾したり、マルトースなどの糖を付加したりすることによって溶解性を高めてきたが、本発明により、これらの修飾や付加等をすることなく、溶解性を高めることが可能となる。
また本発明によれば、簡便且つ効果的にオリゴ糖、特にラクトスクロース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖の吸湿性を改善することができる。
【0013】
したがって、これまでβ-サイクロデキストリンは薄い溶液で調製し、配合するときも高濃度で配合することができなかったが、本発明によれば、あらかじめ濃い溶液で調製することが可能となり、また、高濃度で配合することも可能となる。
これにより、上記のように旺盛なβ-サイクロデキストリンの需要に応えることも可能となる、ということ等の効果が奏される。
また、本願技術により、上記オリゴ糖の吸湿性の高さゆえに困難であった、バルク等での粉末製品化も可能となる。これにより、旺盛なオリゴ糖の需要、すなわち特に粉末状での製品提供が可能となる等の効果が奏される。
【0014】
よって本発明は、食品業界、医薬品業界、その他業界において、様々な用途に用いることができるβ-サイクロデキストリンの溶解性を高め、高濃度、濃い溶液にて調製することも可能とし、さらなる同物質の用途の拡大、製造コスト等の削減、高濃度で用いることができることによる新たな使用方法等を提供することが可能なものである。すなわち、本発明は、技術的にも、経済的にも、価値が高いものである。
また、オリゴ糖も上記のように様々な分野で有用に使用されているが、従来のように例えば液体形態で流通させる必要をなくすことができる。粉末状体であれば、取り扱いも容易であるし、輸送コスト等も軽減できる。また、保存も容易となり、長期の保存品質維持に途をひらくものである。この点においても、本願発明の技術的価値は高い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】参考例1における配合1から5の加温・攪拌直後の溶解状態を試験管に入れた状態で撮影した図面代用写真である。左の試験管から順に配合1、2、3、4、5を示す。
【
図2】参考例1における配合6から8の加温・攪拌直後の溶解状態を試験管に入れた状態で撮影した図面代用写真である。左の試験管から順に配合6、7、8を示す。
【
図3】参考例1における配合9から11の加温・攪拌直後の溶解状態を試験管に入れた状態で撮影した図面代用写真である。左の試験管から順に配合9、10、11を示す。
【
図4】参考例1における配合1から5の加温攪拌後、1時間室温放置後の溶解状態を試験管に入れた状態で撮影した図面代用写真である。左の試験管から順に配合1、2、3、4、5を示す。
【
図5】参考例1における配合6から8の加温攪拌後、1時間室温放置後の溶解状態を試験管に入れた状態で撮影した図面代用写真である。左の試験管から順に配合6、7、8を示す。
【
図6】参考例1における配合9から11の加温攪拌後、1時間室温放置後の溶解状態を試験管に入れた状態で撮影した図面代用写真である。左の試験管から順に配合9、10、11を示す。
【
図7】参考例2におけるア.すなわち水(25℃)を加え、vortexで混合溶解直後の溶解状態を示した図面代用写真である。左3つの試験管がK-100のものであり、左からBx.30、Bx.40、Bx.50にて調製したものをそれぞれ示す。真ん中3つの試験管が試作品1のものであり、左からBx.30、Bx.40、Bx.50にて調製したものをそれぞれ示す。右3つの試験管がα-CDのものであり、左からBx.30、Bx.40、Bx.50にて調製したものをそれぞれ示す。
【
図8】参考例2におけるイ.すなわち上記ア.を約30分放置後の溶解状態を示した図面代用写真である。左3つの試験管がK-100のものであり、左からBx.30、Bx.40、Bx.50にて調製したものをそれぞれ示す。真ん中3つの試験管が試作品1のものであり、左からBx.30、Bx.40、Bx.50にて調製したものをそれぞれ示す。右3つの試験管がα-CDのものであり、左からBx.30、Bx.40、Bx.50にて調製したものをそれぞれ示す。
【
図9】参考例2におけるウ.すなわち上記ア.を約3時間放置後の溶解状態を示した図面代用写真である。左3つの試験管がK-100のものであり、左からBx.30、Bx.40、Bx.50にて調製したものをそれぞれ示す。真ん中3つの試験管が試作品1のものであり、左からBx.30、Bx.40、Bx.50にて調製したものをそれぞれ示す。右3つの試験管がα-CDのものであり、左からBx.30、Bx.40、Bx.50にて調製したものをそれぞれ示す。
【
図10】参考例2におけるエ.すなわち上記ウ.を加温溶解直後の溶解状態を示した図面代用写真である。左3つの試験管がK-100のものであり、左からBx.30、Bx.40、Bx.50にて調製したものをそれぞれ示す。真ん中3つの試験管が試作品1のものであり、左からBx.30、Bx.40、Bx.50にて調製したものをそれぞれ示す。右3つの試験管がα-CDのものであり、左からBx.30、Bx.40、Bx.50にて調製したものをそれぞれ示す。
【
図11】参考例2におけるオ.すなわち上記エ.を室温で2時間放置後の溶解状態を示した図面代用写真である。左3つの試験管がK-100のものであり、左からBx.30、Bx.40、Bx.50にて調製したものをそれぞれ示す。真ん中3つの試験管が試作品1のものであり、左からBx.30、Bx.40、Bx.50にて調製したものをそれぞれ示す。右3つの試験管がα-CDのものであり、左からBx.30、Bx.40、Bx.50にて調製したものをそれぞれ示す。
【
図12】参考例2における配合物のカ.すなわち上記エ.を室温で20時間放置後の溶解状態を示した図面代用写真である。左3つの試験管がK-100のものであり、左からBx.30、Bx.40、Bx.50にて調製したものをそれぞれ示す。真ん中3つの試験管が試作品1のものであり、左からBx.30、Bx.40、Bx.50にて調製したものをそれぞれ示す。右3つの試験管がα-CDのものであり、左からBx.30、Bx.40、Bx.50にて調製したものをそれぞれ示す。
【
図13】参考例3における水(25℃)溶解直後の状態を示した図面代用写真である。左の試験管が参考例2における試作品1のものであり、右の試験管が単純にα-CDとβ-CDとを77:23の割合で粉々混合したものである。
【
図14】参考例3における
図13の状態から、常温水で一晩放置した後の状態を示した図面代用写真である。左の試験管が参考例2における試作品1のものであり、右の試験管が単純にα-CDとβ-CDとを77:23の割合で粉々混合したものである。
【
図15】参考例3における加温溶解直後の状態を示した図面代用写真である。左の試験管が参考例2における試作品1のものであり、右の試験管が単純にα-CDとβ-CDとを77:23の割合で粉々混合したものである。
【
図16】参考例3における
図15の状態から、加温溶解3日後の状態を示した図面代用写真である。左の試験管が参考例2における試作品1のものであり、右の試験管が単純にα-CDとβ-CDとを77:23の割合で粉々混合したものである。
【
図17】実施例2における粉粉混合品の48時間後の状態を示した図面代用写真である。左から順に、α-CDの混合割合が70%、65%、60%のものを示す。
【
図18】同様に、実施例2における粉粉混合品の48時間後の状態を示した図面代用写真である。左から順に、α-CDの混合割合が55%、50%のものを示す。
【
図19】実施例2における凍結乾燥品の48時間後の状態を示した図面代用写真である。左から順に、α-CDの混合割合が70%、65%、60%のものを示す。
【
図20】同様に、実施例2における凍結乾燥品の48時間後の状態を示した図面代用写真である。左から順に、α-CDの混合割合が55%、50%のものを示す。
【
図21】実施例4におけるLS凍結乾燥品を粉砕したものの顕微鏡写真(図面代用写真)である。
【
図22】実施例4における
図21の品を、常温で成り行きの雰囲気下に1時間置いたものの顕微鏡写真(図面代用写真)である。
【
図23】実施例4における、LS-55P(その組成は後述する)と50%α-CDを溶解し、凍結乾燥したものの顕微鏡写真(図面代用写真)である。
【
図24】実施例4における
図23の品を、常温で成り行きの雰囲気下に1週間放置したものの顕微鏡写真(図面代用写真)である。
【
図25】実施例5におけるα-CDによる各種オリゴ糖の吸湿防止効果につき、48時間後の状態を示した図面代用写真である。縦は一番上から、LS、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖を示す。横は左からα-CDを50%含有するもの、同60%含有するもの、同70%含有するものを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明においては、β-サイクロデキストリンの水への溶解度を高めるために、α-サイクロデキストリンを用いることを特徴とするものである。
【0018】
サイクロデキストリンは、ブドウ糖が6~8個環状につながった非還元性のオリゴ糖で分子内に空洞を持ち、外側は親水性、内側は親油性を示すユニークな糖質である。
特に包接性(各種の分子を空洞内に包み込む性質)を有することは特徴的で、これを利用して品質の安定化や品質改善などの目的で、種々の用途に用いられている。
また、サイクロデキストリンは、食品への利用はもちろん、医薬品・化粧品の他、繊維・塗料などの工業製品にいたるまで、様々な分野で親しまれ、応用が始まっている。
【0019】
サイクロデキストリンは、澱粉に酵素(CD生成酵素、例えばバチルス・マセランス菌が生産するグルカノトランスフェラーゼなど)を作用させると、酵素の転移反応によりブドウ糖が環状に結合することにより生成することができる。
6個のブドウ糖が結合したものがα-CDであり、7個のブドウ糖が結合したものがβ-CD、8個結合したものがγ-CDである。
これらα-CD、β-CD、γ-CDは高純度なものも含めて、塩水港精糖株式会社より、製品化されており、入手に全く支障はない。
【0020】
本発明においては、上記β-サイクロデキストリンにα-サイクロデキストリンを用いることを特徴とするが、これらサイクロデキストリンは、どのように製造されたものであるかは問わない。
【0021】
本発明においては、β-サイクロデキストリンにα-サイクロデキストリンを用いることを本質とするが、β-サイクロデキストリンとα-サイクロデキストリンとを混合することが基本的な実施形態となる。例えば、両者の粉々混合物、それを水に溶解した溶液、これを乾燥した乾燥物等が例示される。その配合割合は、本願発明の技術的思想の範囲内において定めることができるが、例えば、β-サイクロデキストリンとα-サイクロデキストリンの合計量に対してβ-サイクロデキストリンの量を15~80%、好ましくは20~60%が例示される。具体例としては、例えばβ-サイクロデキストリン:α-サイクロデキストリン=23:77、40:60、40:40、48:32等とすることができる。この場合、β-CDとα-CDを単に上記割合にて混合して、β-CDの溶解性を高めることも可能であるし、また、β-CDとα-CDを上記割合にて含み、他の賦形剤等と混合して組成物とすることも可能である。希望するのであれば、β-CDとα-CDは混合することなく個々別々に使用してもよい。なお、配合割合において、合計値が100を超える場合は、当然のことながら、本発明から除外される。当業者の知識において、発明の効果を奏する範囲で合計が100を超えないよう、適宜定められることになる。
【0022】
上記のように組成物とする場合には、有効成分たるα-CDとβ-CDのほか、食品業界で認められる各種添加剤を含有することが可能である。例えば、その他の糖類、各種エキス、賦形剤等の、添加剤を添加、配合することができる。添加剤としては、次のものが例示される。例えば、ワサビ、メントール、テルペン類など香料、香辛料、精油、コエンザイムQ10、α-リポ酸、ビタミン類、不飽和脂肪酸、リコピン、ルチン、ローヤルゼリー、ヘスピリジン、クロセチン、フェルラ酸、アントシアニン、カテキン、イソフラボン、グルタチオン、茶エキス、かんきつ類エキス、卵白、ウコン(クルクミン)、ナリンジン、ラズベリーケトン、トコフェロール、プロポリス、カルニチン、キサントフモール、ガジュツ、高麗人参、霊芝、イチョウ葉、レスベラトロールなど。これらの種類、配合量等は、本発明の技術的思想の範囲内において、当業者の知識に基づき、適宜定めることができる。
【0023】
また、上記のようにβ-CDとα-CDを混合して溶液とする際、Bx.を定めて調製することもできる。本願発明によると、Bx.40、50、55程度とすることが可能である。広くは、Bx.を30~65、例えば30、40、50、55、60、30~65程度とすることが可能である。Bx.は、Brix(ブリックス)の略号であって、糖等の水溶性固形分の量を%で表したものである。このようにして液状の製品とすることもできる。
【0024】
更に、α-CDとβ-CDを混合溶解した後、スプレードライし、粉末とすることもできる。これにより、β-CDの含有比率を上昇させたり、Bx.を高くすることも可能となる。広くはBx.30~65、好ましくはBx.50~60程度のα-CDとβ-CDの混合溶液を、50℃以上に加温して完全溶解した後、スプレードライヤーにて噴霧乾燥して粉末を得ることができる。
【0025】
次に、本発明は、オリゴ糖に、α-CDを混合し、その吸湿性を抑え、粉末状態を維持することができる、という技術を含む。すなわち、本願発明は、全体としてα-CDの性質を利用する発明である、という共通した技術分野、技術的特徴を含むものであるということもできる。
【0026】
オリゴ糖は、ブドウ糖や果糖といった単糖がグリコシド結合によって数個結合した糖類で、300から1600程度の分子量を有するものである。オリゴ糖の中には、例えば腸内の善玉菌を増加させる、すなわち体内で消化されずに大腸に届いて有用菌の資化源となる機能や、血糖値をあげにくい機能を有するもの、低カロリーのものなどが存在し、プレバイオティクスの中心的な役割を果たしているものである。
【0027】
オリゴ糖の種類としては、上述したラクトスクロース(LS)、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖等が存在する。ラクトスクロースは、乳糖とショ糖を酵素反応させて製造することができ、ショ糖と同様の甘味質・物理特性を示すという特色がある。フラクトオリゴ糖は、タマネギ、にんにくなどに含まれるものであり、くせのない甘みを有する。ガラクトオリゴ糖は、母乳や牛乳に含まれるものであり、乳糖を酵素反応させて製造することもできる。イソマルトオリゴ糖は、ブドウ糖を主成分とするオリゴ糖である。
【0028】
また、フラクトオリゴ糖は、虫歯の原因を作りにくいことから虫歯予防効果やカルシウム吸収促進効果を有するとされている。ガラクトオリゴ糖は、ヒトの腸内でビフィズス菌を増やす効果があるとされている。そして、LSは、カルシウムの吸収を助け、骨を丈夫にするなどの効果を有するものである。このように、オリゴ糖は、非常に大きな健康補助効果を有するものであることが明らかとなっている。
【0029】
本発明は、このような有効性を有するオリゴ糖に、α-CDを適用することによって、オリゴ糖の吸湿性を改善することを基本的な技術的思想とする。その実施形態は、オリゴ糖にα-CDを混合することが基本的なものとなる。その混合割合は、本願発明の効果が奏される範囲内において定めることができるが、α-CDの含有割合を60%以上とすることが好適である。好ましくは65%以上、さらに好ましくは70%以上等とすることもできる。具体的には、オリゴ糖とα-CDの固形分を40:60、30:70等とすることができる。
【0030】
本発明は、単にオリゴ糖とα-CDを上記割合にて混合することもできるし、他に当業界において認められる賦形剤を混合してもよいことは上記と同様である。また、配合割合が全体として100を超える場合が除外されること、組成物の形態を採ることができること等も、上記と同様である。
【0031】
さらに、本発明は、オリゴ糖とα-CDを混合した後、溶解後に凍結乾燥することもできる。当該溶解の際のBx.も調整することもでき(Bx.25~65)、例えばBx.30程度に調整することもできる。
【0032】
乾燥の方法としては、凍結乾燥のほか、噴霧乾燥など、本願発明の効果を奏することができる当業者が用いる方法を用いることができる。噴霧乾燥では、Bx.50程度のより高いものでも実施可能である。また、組成物を造粒してもよい。
【0033】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内においてこれらの様々な変形が可能である。
【参考例1】
【0034】
〈β-CDを多く含む混合物の配合検討試験〉
β-CDの水への溶解性を改善する目的で、β-CDを多く含む混合物の配合を検討した。
【0035】
下記表1の割合にて、β-CDを多く含む混合物(配合1~11)を調製した。
【0036】
【0037】
調整方法は次のとおりである。1)試験管にα-CDまたはデキストリンA、Bを入れ、水を添加した。2)試験管を沸騰水中に入れ、α-CD又はデキストリンA、Bを完全に溶解させた。3)β-CDを加え、vortexにて混合後、沸騰水浴中でしばらく加温し、再度vortexにて混合した。尚、デキストリンA、Bは三和澱粉工業(株)製のサンデック♯FN70およびサンデック♯100である。
【0038】
結果を
図1から
図3、
図4から
図6に示す。まず、
図1から
図3は各配合の加温・攪拌直後の溶解状態を示す図である。加温・攪拌直後でβ-CDが溶解していたのは、配合1、2、6、7、9であった。この結果から、混合物として適していたのは、α-CDであり、以下、デキストリンA、デキストリンBの順で適していると考えられた。
【0039】
次に、上記各配合を加温攪拌後、1時間室温に放置して、試験管内の物質の溶解度を観察した。結果を
図4から
図6に示す。結果は、次のとおりであった。
すなわち、1時間室温放置後でも溶解していたのは、配合1、2、6であった。デキストリンA及びBは、大量に沈澱が発生していた。
【参考例2】
【0040】
〈市販品との水への溶解性比較試験〉
試作品1(本発明品。組成は次のとおり。:α-CD:β-CD=77:23)水への溶解性を市販品K-100およびα-100(いずれも塩水港精糖(株)製)と比較した。
【0041】
試作品1とK-100、α-100の配合割合・方法は下記表2のとおりである。
【0042】
【0043】
調整方法は次のとおりである。1)試験管に各種CDと水(25℃)を入れ、vortexで混合・溶解させた(Bx.は30、40、50で調製)。2)上記試験管を沸騰水中に入れ加温し、各種CDをvortexで完全に混合・溶解させた。
【0044】
結果を
図7に示す。これは、ア.すなわち水(25℃)を加え、vortexで混合溶解した直後の状態である。常温の水で混合した場合、試作品1とK-100は溶解しているように見えたが、α-100は溶解しなかった。また、K-100より試作品1の方が溶けやすく感じられた。
【0045】
次に結果を
図8に示す。これは、イ.すなわち上記ア.を約30分放置後の状態である。上記ア.を約30分室温で放置したところ、K-100は気泡が抜けてクリアになったが、試作品1は細かい結晶が析出してきた。おそらくβ-CDだと考えられる。
【0046】
結果を
図9に示す。これは、ウ.すなわち上記ア.を約3時間放置後の状態である。上記ア.を約3時間室温で放置したところ、試作品1ではβ-CDと思われる結晶の沈殿物が生じていた。常温溶解3時間後の沈殿物の量は、α-100が一番多く、以下、試作品1、K-100の順で多かった。
【0047】
結果を
図10に示す。これは、エ.すなわち上記ウ.を加温溶解直後の状態である。試作品1、K-100共に加温することで容易にクリアな溶液となった。α-100も加温することで溶解したが、Bx.40溶液、Bx.50溶液では溶解するのに時間を要した。
【0048】
結果を
図11に示す。これは、オ.すなわち上記エ.を室温で2時間放置後の状態である。完全に加熱溶解して2時間室温放置後、K-100は溶液が白っぽく濁っている感じになったが、Bx.50溶液でも沈澱は生じていない。
α-100も溶液が白っぽくなり、Bx.40溶液では僅かに、Bx.50溶液では多くのα-CDの結晶沈殿物が生じていた。
一方、試作品1では溶液は透明なままであったが、Bx.50溶液ではβ-CDと思われる結晶沈殿物が僅かに生じていた。
【0049】
結果を
図12に示す。これは、カ.すなわち上記エ.を室温で20時間放置後の状態である。完全に加熱溶解して20時間室温放置後、α-100についてはBx.30溶液でも僅かにα-CDの結晶沈澱が確認された。
K-100は、白いモヤッとしたものが沈澱しており、高分子の糖が沈澱している可能性が示唆された。また、Bx.50の溶液では結晶性の沈澱も確認された。
試作品1は、Bx.50溶液では多くの、Bx.40溶液でも僅かに結晶沈殿物が確認されたが、Bx.30溶液では沈澱物を生じない透明な溶液であった。
【参考例3】
【0050】
〈上記試作品1と粉々混合品との溶解性の比較試験〉
上記参考例2における試作品1と、α-CD、β-CDを77:23で粉々混合した粉末の溶解性(Bx.30)の比較試験を行った。
【0051】
結果を
図13に示す。α-CDとβ-CDを混合溶解してスプレードライした粉末(上記参考例2における試作品1)と、単純にα-CDとβ-CDを粉々混合した粉末では、常温水での溶解性に大きな違いが見られた。粉々混合品も有効であったが、試作品1の溶解性が圧倒的に良好であった。
常温水で溶解後一晩放置すると(
図14)、試作品1でも沈澱を生じたが、その量は粉々混合品よりも少なかった。
一方、加熱溶解するといずれの配合も完全に溶解し(
図15)、3日経過後でも沈澱等は一切生じていなかったが、粉々混合品は若干白っぽい溶液となっていた(
図15)。
【0052】
上記参考例から得られた知見をまとめるとおおむね次のようになる。すなわち、参考例2における試作品1は、常温の水で溶解した場合は、最初はK-100よりも溶けやすく感じたが、そのまま放置するとK-100よりも多くの沈殿物を生じた。
【0053】
加温溶解した場合は、時間が経過してもK-100よりも試作品1の方が透明な液体であり、今回参考例中で試作品1のBx.30溶液のみが、加熱溶解後20時間経過しても沈殿物を生じない透明な液体であった。
【0054】
加熱溶解20時間後の沈澱量は次のとおりであった。
α-CD(Bx.50)>α-CD(Bx.40)>試作品1(Bx.50)>K-100(Bx.50)>K-100(Bx.40)>K-100(Bx.30)=試作品1(Bx.40)>試作品1(Bx.30)。
【0055】
また、試作品1と同じ割合でα-CDとβ-CDを粉々配合したものと試作品1の溶解性を比較した場合、常温水での溶解性が明らかに違い、試作品1の方が溶けやすかった(参考例3等)。
【0056】
一般にCDは高濃度の状態で使用することは考えられないが、試作品1は加温溶解することでBx.30でもクリアな溶液状態を保った。
【0057】
なお、ほかの配合割合、Bx.のものであっても、従来技術のものよりも、β-CDの溶解性は高まっているものと考えられ、顕著な効果が奏されていると考えられる。
【実施例0058】
〈CD、デキストリンのLS吸湿防止効果比較試験〉
次に、LSにCD、デキストリンを混合することにより、その吸湿性がどの程度改善されるかを実証する試験を行った。
【0059】
(方法)LS-55P(LS55%以上、ショ糖10%以下、乳糖25%以下)とデキストリン、α、β、γ-CDを任意の比率で混合し、Bx.30に溶解後凍結乾燥した。β-CDは完全に溶解せず沈澱を生じたが、凍結乾燥した後よく混合した。それぞれ5gづつ秤量皿(プラスティック製)に入れ、湿度62%~76%の室内に静置し、重量変化及び吸湿によっておこる状態の変化を観察した。
【0060】
(結果)結果を表3に示す。高湿度下24時間の保存では、デキストリンでも混合比率70%では吸湿抑制効果がみられ、一部溶解にとどまっていたが、明らかにCDより効果は低かった。CDを比較するとα-CDは混合比率60%以上では溶解は見られず固形を維持し、優れた吸湿抑制を示し、60%以上では固化は見られるが解すことができるものであった。
【0061】
(方法)LS-55Pとα-CDを任意の比率で粉粉混合したものおよび、これをBx.30に溶解後凍結乾燥したものを調製し、それぞれ5gづつ秤量皿(プラスティック製)に入れ、湿度50%~61%の室内に静置し、重量変化及び吸湿によって起こる状態の変化を観察した。
(結果)結果を表4及び表5に示す。表4が粉粉混合品のものであり、表5が凍結乾燥品のものである。α-CDでは、粉粉混合ではα-CDの比率が55%以下では24時間後に溶解がみられ、60%以上では溶解までには至らないが、固化し流動性はみられなくなる。凍結乾燥ではα-CD25%以下では溶解がみられるが、50~60%では溶解せずに固化している。65%以上になると固化はするが、容易に解れ、流動性を回復する。尚、吸水率は、粉粉混合と凍結乾燥では異なり、粉粉混合では2.8%~4.6%であるが、凍結乾燥では6.7~9.5%であり、吸水量は多くなる。さらに長時間置くと、雰囲気の温度によって吸水と放湿を繰り返している。