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  • 特開-水硬性組成物用表面美観向上剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115543
(43)【公開日】2024-08-26
(54)【発明の名称】水硬性組成物用表面美観向上剤
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20240819BHJP
   C04B 24/02 20060101ALI20240819BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20240819BHJP
   C04B 24/16 20060101ALI20240819BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B24/02
C04B24/26 E
C04B24/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024019953
(22)【出願日】2024-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2023020543
(32)【優先日】2023-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【弁理士】
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】名越 悠登
(72)【発明者】
【氏名】川上 博行
(72)【発明者】
【氏名】島田 恒平
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PB15
4G112PB22
4G112PB31
(57)【要約】
【課題】水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕の原因となる、水硬性組成物中の気泡の挙動を制御して、前記硬化体の表面美観を向上させることのできる、水硬性組成物用表面美観向上剤の提供。
【解決手段】バブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である、水硬性組成物用表面美観向上剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である、
水硬性組成物用表面美観向上剤。
【請求項2】
水硬性組成物用表面美観向上剤用界面活性剤であって、
下記水硬性組成物のブリーディング水に対して0.05質量%濃度の界面活性剤を添加して得られる測定用水溶液をバブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である、
水硬性組成物用表面美観向上剤用界面活性剤。
〔水硬性組成物のブリーディング水〕5Lのポリボトルに水道水4kg、普通ポルトランドセメント1kgを投入し、十分に振とうさせた後、ポリボトルを20℃環境下で24時間静置する。ポリボトルの上澄み液を5Cろ紙で濾過し、普通ポルトランドセメントのブリーディング水を得る。
【請求項3】
請求項2に記載の水硬性組成物用表面美観向上剤用界面活性剤を含有する、水硬性組成物用表面美観向上剤。
【請求項4】
請求項2に記載の水硬性組成物用表面美観向上剤用界面活性剤が、アルキル基の平均炭素数が9以上12以下であり、エチレンオキシドの平均付加モル数が1以上6以下の、ポリオキシエチレンアルキルエーテルである、請求項1又は3記載の水硬性組成物用表面美観向上剤。
【請求項5】
請求項2に記載の水硬性組成物用表面美観向上剤用界面活性剤が、ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(2)デシルエーテル及びポリオキシエチレン(3)デシルエーテルから選ばれる1種以上である、請求項1又は3に記載の水硬性組成物用表面美観向上剤。
【請求項6】
更に、セメント分散剤を含有する、請求項1又は3に記載の水硬性組成物用表面美観向上剤。
【請求項7】
前記セメント分散剤が、下記一般式(1b)で示される単量体(1b)と、下記一般式(2b)で示される単量体(2b)とを構成単量体として含む共重合体を含む、請求項6に記載の水硬性組成物用表面美観向上剤。
【化1】
〔式中、
1b、R2b、R3b:同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基又は(CH2)rCOOM2であり、(CH2)rCOOM2は、COOM1又は他の(CH2)rCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。
1、M2:同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基
r:0以上2以下の数
を示す。〕
【化2】
〔式中、
4b、R5b: 同一でも異なっていても良く、水素原子又はメチル基
6b:水素原子又は-COO(AO)n17b
7b:水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
AO:炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基
n1:AOの平均付加モル数であり、4以上200以下の数
q1:0以上2以下の数
p1:0又は1
を示す。〕
【請求項8】
更に、下記一般式(c)で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物を含有する、請求項1又は3に記載の水硬性組成物用表面美観向上剤。
1c-O-[(EO)n・(PO)m]-SO3M (c)
〔式中、R1cは平均炭素数4以上20以下の炭化水素基、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基、nはEOの平均付加モル数で1以上50以下の数、mはPOの平均付加モル数で0以上10以下の数であり、EOとPOはブロック又はランダムに結合してもよい。Mは対陽イオンを示す。〕
【請求項9】
さらに、消泡剤を含む、請求項1又は3に記載の表面美観向上剤。
【請求項10】
請求項1又は3に記載の表面美観向上剤、水硬性粉体及び水を含有する水硬性組成物。
【請求項11】
請求項2に記載の界面活性剤の添加量が、水硬性粉体100質量部に対して0.005質量部以上1.0質量部以下である、請求項10記載の水硬性組成物。
【請求項12】
バブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である水硬性組成物用表面美観向上剤と、水硬性粉体と、水とを混合して水硬性組成物を調製する工程、調製された前記水硬性組成物を型枠に充填し、硬化させる工程、硬化した前記水硬性組成物を脱型する工程、を有する水硬性組成物の硬化体の製造方法。
【請求項13】
バブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である界面活性剤を、水硬性粉体と水を含有する水硬性組成物に添加する、水硬性組成物の硬化体の表面美観向上方法。
【請求項14】
下記水硬性組成物のブリーディング水に対して0.05質量%濃度の界面活性剤を添加して得られる測定用水溶液をバブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である界面活性剤の、水硬性組成物用表面美観向上剤としての使用。
〔水硬性組成物のブリーディング水〕
5Lのポリボトルに、水道水4kg及び普通ポルトランドセメント1kgを投入し、十分に振とうさせた後、ポリボトルを20℃環境下で24時間静置する。ポリボトルの上澄み液を5Cろ紙で濾過し、普通ポルトランドセメントのブリーディング水を得る。
【請求項15】
請求項2の水硬性組成物用表面美観向上剤用界面活性剤を含む水溶液αと下記セメント分散剤を含む水溶液βを組み合わせた、水硬性組成物の硬化体用表面美観向上用キット。
〔セメント分散剤〕下記一般式(1b)で示される単量体(1b)と、下記一般式(2b)で示される単量体(2b)とを構成単量体として含む共重合体。
【化1】
〔式中、
1b、R2b、R3b:同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基又は(CH2)rCOOM2であり、(CH2)rCOOM2は、COOM1又は他の(CH2)rCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。
1、M2:同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基
r:0以上2以下の数
を示す。〕
【化2】
〔式中、
4b、R5b: 同一でも異なっていても良く、水素原子又はメチル基
6b:水素原子又は-COO(AO)n17b
7b:水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
AO:炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基
n1:AOの平均付加モル数であり、4以上200以下の数
q1:0以上2以下の数
p1:0又は1
を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用表面美観向上剤用界面活性剤、水硬性組成物用表面美観向上剤、水硬性組成物、水硬性組成物の硬化体の製造方法、水硬性組成物の硬化体の表面美観向上方法、界面活性剤の水硬性組成物用表面美観向上剤としての使用及び表面美観向上用キット、に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートに代表される水硬性組成物は、例えば型枠に未硬化の硬化性組成物を充填し、後工程で乾燥や化学反応により硬化させ、硬化体を得る工程により製造することができる。硬化体の価値を左右する要因の一つに、表面の美観が挙げられる。これは、文字通り硬化体表面の美しさを意味し、表面美観に優れるほど、製品価値が高く評価される傾向にある。
【0003】
硬化体の表面美観を損なう原因のひとつとしては、硬化体表面に露出する気泡痕が挙げられる。この問題に対して、硬化後に気泡痕を隠すための補修工程を追加する策が講じられているが、コストや労働力の確保等の観点から、好ましくない。
【0004】
特許文献1には、特定の脂肪酸アルカノールアミド、ポリカルボン酸系分散剤及び特定の溶剤を含有する水硬性組成物用表面美観向上剤が開示されている。特許文献2には、特定のエマルション樹脂、水系溶媒及び前記樹脂の乳化重合に用いるノニオン系乳化剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)を含む、セメント添加剤に用いられる樹脂エマルションが開示されており、前記樹脂エマルションを含むセメント添加剤を用いることでセメント組成物の硬化物の表面美観を向上させることができる開示がある。
【0005】
また、水硬性組成物を硬化させる際に用いる型枠に、離型剤を塗布することにより、前記組成物中の気泡の浮上を促して完全に硬化する前に前記組成物と型枠の界面に生じた気泡を減らす対策も講じられている。例えば、特許文献3には、特定の脂肪酸アルカノールアミドを含む型枠剥離剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-196282号公報
【特許文献2】特開2019- 26506号公報
【特許文献3】特開2018-130957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕の原因となる、水硬性組成物中の気泡の挙動をより良好に制御して、前記硬化体の表面美観を向上させることのできる、水硬性組成物用表面美観向上剤を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、バブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である界面活性剤を含有する、水硬性組成物用表面美観向上剤を提供する。
【0009】
また本発明は、水硬性組成物用表面美観向上剤用界面活性剤であって、下記水硬性組成物のブリーディング水に対して0.05質量%濃度の界面活性剤を添加して得られる測定用水溶液をバブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である、水硬性組成物用表面美観向上剤用界面活性剤を提供する。
【0010】
〔水硬性組成物のブリーディング水〕
5Lのポリボトルに、水道水4kg及び普通ポルトランドセメント1kgを投入し、十分に振とうさせた後、ポリボトルを20℃環境下24時間静置する。ポリボトルの上澄み液を5Cろ紙で濾過し、普通ポルトランドセメントのブリーディング水を得る。
【0011】
また本発明は、前記した水硬性組成物用表面美観向上剤、水硬性粉体、及び水を含有する水硬性組成物を提供する。
【0012】
また本発明は、バブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である水硬性組成物用表面美観向上剤と、水硬性粉体と、水とを混合して水硬性組成物を調製する工程、調製された前記水硬性組成物を型枠に充填し、硬化させる工程、硬化した前記水硬性組成物を脱型する工程、を有する水硬性組成物の硬化体の製造方法を提供する。
【0013】
また本発明は、バブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である界面活性剤を、水硬性粉体と水を含有する水硬性組成物に添加する、水硬性組成物の硬化体の表面美観向上方法を提供する。
【0014】
また本発明は、前記した水硬性組成物のブリーディング水に対して0.05質量%濃度の界面活性剤を添加して得られる測定用水溶液をバブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である界面活性剤の、水硬性組成物用表面美観向上剤としての使用を提供する。
【0015】
また本発明は、前記した水硬性組成物用表面美観向上剤用界面活性剤を含む水溶液αと下記セメント分散剤を含む水溶液βを組み合わせた、水硬性組成物の硬化体用表面美観向上用キットを提供する。
【0016】
〔セメント分散剤〕下記一般式(1b)で示される単量体(1b)と、下記一般式(2b)で示される単量体(2b)とを構成単量体として含む共重合体。
【化1】
〔式中、
1b、R2b、R3b:同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基又は(CH2)rCOOM2であり、(CH2)rCOOM2は、COOM1又は他の(CH2)rCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。
1、M2:同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基
r:0以上2以下の数
を示す。〕
【化2】
〔式中、
4b、R5b: 同一でも異なっていても良く、水素原子又はメチル基
6b:水素原子又は-COO(AO)n17b
7b:水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
AO:炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基
n1:AOの平均付加モル数であり、4以上200以下の数
q1:0以上2以下の数
p1:0又は1
を示す。〕
【発明の効果】
【0017】
本発明の水硬性組成物用表面美観向上剤を使用すると、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕の原因となる、水硬性組成物中の気泡の挙動を制御することができ、水硬性組成物の硬化体の表面美観を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)比較例1の水硬性組成物の硬化体表面の写真。(b)比較例2の水硬性組成物の硬化体表面の写真。
図2】実施例2の水硬性組成物の硬化体表面の写真。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者らは、上記した動的表面張力を満たす特定の界面活性剤が、水硬性組成物中の気泡、特に気泡痕として目立つような数cm単位の粗大気泡に吸着して、型枠からの気泡の引き剥がしを可能にすることを見出した。これにより、水硬性組成物と型枠との間の気泡が減少し、水硬性組成物の硬化体の表面気泡痕が低減されて表面美観性が向上することを見出した。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、このような効果が発現する理由は以下のように推測される。コンクリートのような水硬性組成物は、例えば金属製の型枠に離型油を塗布し、流し込み及び加振によって型枠内に充填され、硬化される。硬化時にはダイラタント性によりコンクリートの塑性化が解かれていくが、塑性化が解かれてしまうと型枠に付着して形成された気泡はコンクリートによって押さえつけられてしまうため、界面活性剤の作用によって引き剥がすことはできなくなる。したがって塑性化が解かれる1000ms秒程度の時間より前に気泡を引き剥がすことが望ましい。ここで汎用の離型油の多くは、気体界面において概ね25~35mN/m程度の動的表面張力を示すことが知られている。そこで気液界面の泡膜寿命1000msにおいて35mN/m以下の動的表面張力を示すような界面活性剤であれば、例えば、水硬性組成物と型枠とが離型油を介して接触した部分に出現した気泡、特に、気泡痕として目立つ大きさ(数cm単位)の粗大な気泡に吸着し、引き剥がしを行うことができると推測される。
【0020】
また一方、本発明における特定の界面活性剤は、泡膜寿命10msにおける動的表面張力が55mN/m以上であり、(他の界面活性剤よりも)気泡に対する吸着が比較的遅く行われる。そのため、微細気泡(表面積がけた違いに大きい)の表面に界面活性剤が拘束されず、水中に自由な界面活性剤が十分量残存するため、本来のターゲットである粗大気泡の表面に吸着できることから、本発明における特定の界面活性剤は、粗大気泡への改質効果が高いと考えられる。
【0021】
このような作用機構により、本発明の水硬性組成物用表面美観向上剤を含有する水硬性組成物を、離型剤を塗布した型枠に充填した際、前記水硬性組成物と前記離型剤とが接触する部位に出現する気泡が、順次、水硬性組成物内部へ移動し、表面での気泡痕を低減し、表面美観性を向上させると考えられる。
【0022】
<水硬性組成物用表面美観向上剤用界面活性剤>
本発明の例示的な実施形態において、本発明は、下記水硬性組成物のブリーディング水に対して0.05質量%濃度の界面活性剤を添加して得られる測定用水溶液をバブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である、水硬性組成物用表面美観向上剤用界面活性剤〔以下、「本発明の界面活性剤」である。
【0023】
〔水硬性組成物のブリーディング水〕
5Lのポリボトルに、水道水4kg及び普通ポルトランドセメント1kgを投入し、十分に振とうさせた後、ポリボトルを20℃環境下で24時間静置する。ポリボトルの上澄み液を5Cろ紙で濾過し、普通ポルトランドセメントのブリーディング水を得る。普通ポルトランドセメントは製造業者、産地、銘柄を特に指定するものではなく、任意の普通ポルトランドセメントを用いることができる。
【0024】
本発明における気液界面での動的界面張力は本発明の界面活性剤が支配的であり、セメント粒子やブリーディング水中に存在するイオン種、その他の任意成分の影響をほとんど受けない。その理由は定かではないが、以下の様に推察される。
【0025】
本発明の界面活性剤は疎水性がやや強く、水中にはあまり拡散せず、ほとんどが気液界面に配位すると推察される。そのため、溶存するイオン種やセメント粒子、セメント分散剤等の可溶性高分子化合物の影響を受けないと推察される。一方、消泡剤や空気連行剤、製品安定剤等も気液界面に配位することが推察されるが、表面美観向上剤中の任意成分として通常使用される範囲においては、これら任意成分が気液界面に配位する量〔「配位量」ともいう〕は、本発明の界面活性剤が気液界面に配位する量(配位量)と比較して、添加量及び活性剤の特性の観点から、極めて少ないことが推察され、以上の理由で影響をほとんど受けないと推察される。
【0026】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の界面活性剤の動的表面張力は、前記した水硬性組成物のブリーディング水に対して0.05質量%濃度の界面活性剤を添加して調製した測定用水溶液を用いて、例えば、KRUSS社製BP100、20℃、キャピラリー径:0.2~0.3mm、測定時間:10ms~10000ms)により測定される。
【0027】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の界面活性剤は、前記した水硬性組成物のブリーディング水に対して0.05質量%濃度の界面活性剤を添加して得られる測定用水溶液をバブルプレッシャー法(20℃)により測定したときの泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)は、55mN/m以上、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量削減効果の観点から、58mN/m以上が好ましく、60mN/m以上がより好ましく、そして、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)は、35mN/m以下、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、33mN/m以下が好ましく、31mN/m以下がより好ましく、29mN/m以下がさらに好ましい。
【0028】
また、本発明の別の例示的な実施形態において、本発明の界面活性剤としては、0.3質量%濃度の前記界面活性剤水溶液をバブルプレッシャー法(20℃)により測定したときの泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ3)は、55mN/m以上、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量削減効果の観点から、58mN/m以上が好ましく、60mN/m以上がより好ましく、そして、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ4)は、35mN/m以下、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、33mN/m以下が好ましく、31mN/m以下がより好ましく、29mN/m以下が更に好ましく、気泡痕量低減効果の観点から、28mN/m以下がより更に好ましい。
【0029】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の界面活性剤としては、前記σ1が55mN/m以上であり、前記σ2が35mN/m以下の界面活性剤、具体的には、前記σ1が55mN/m以上であり、前記σ2が35mN/m以下のノニオン性界面活性剤が好ましく、より具体的には、前記σ1が55mN/m以上であり、前記σ2が35mN/m以下の、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルアルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミンから選ばれる1種以上のノニオン性界面活性剤がより好ましく、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、更に具体的には、前記σ1が55mN/m以上であり、前記σ2が35mN/m以下の、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが更に好ましい。
【0030】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の界面活性剤として、前記σ1が55mN/m以上であり、前記σ2が35mN/m以下のノニオン性界面活性剤である場合、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、アルキル基の平均炭素数が、9以上が好ましく、10以上がより好ましく、そして、12以下が好ましく、11以下がより好ましい、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを用いることができる。
【0031】
なお、前記アルキル基の平均炭素数は、アルキル基の炭素数が異なる2種類以上のポリオキシアルキレンアルキルエーテルを使用する場合、本発明の界面活性剤に含まれるすべてのポリオキシアルキレンエーテルの含有割合と、各ポリオキシアルキレンアルキルエーテル中のアルキル基の炭素数から算出される重量平均炭素数とする。
【0032】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の界面活性剤が、前記σ1が55mN/m以上であり、前記σ2が35mN/m以下のノニオン性界面活性剤である場合、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、アルキレンオキシドはエチレンオキシド又はプロピレンオキシドが好ましく、エチレンオキシドがより好ましい、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを用いることができる。
【0033】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の界面活性剤が、前記σ1が55mN/m以上であり、前記σ2が35mN/m以下のポリオキシエチレンアルキルエーテルである場合、エチレンオキシドの平均付加モル数が、1以上が好ましく、2以上がより好ましく、そして、6以下が好ましく、5以下がより好ましい。
【0034】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の界面活性剤が、前記σ1が55mN/m以上であり、前記σ2が35mN/m以下のポリオキシプロピレンアルキルエーテルである場合、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、プロピレンオキシドの平均付加モル数が、0以上が好ましく、そして、6以下が好ましく、4以下がより好ましい。
【0035】
なお、前記アルキレンオキシドの平均付加モル数は、例えば、エチレンオキシドの炭素数が異なる2種類以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルを使用する場合、本発明の界面活性剤に含まれるすべてのポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有割合と、各ポリオキシエチレンアルキルエーテル中のエチレンオキシドの平均付加モル数の重量平均値とする。
【0036】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の界面活性剤として、前記σ1が55mN/m以上であり、前記σ2が35mN/m以下のノニオン性界面活性剤である場合、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、アルキル基の平均炭素数が、9以上が好ましく、そして、12以下が好ましく、エチレンオキシドの平均付加モル数が、1以上が好ましく、そして、6以下が好ましい、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いることができる。
【0037】
また、本発明の別の例示的な実施形態において、本発明の界面活性剤として、前記σ1が55mN/m以上であり、前記σ2が35mN/m以下のポリオキシエチレンアルキルエーテルである場合、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、エチレンオキシドの付加モル数0であるポリオキシエチレンアルキルエーテル、即ち、前記したポリオキシエチレンアルキルエーテルの原料であるアルキル基を有するアルキルアルコールを含むものを用いることができる。この場合、本明細書において、前記アルキル基を有するアルキルアルコールは、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルの一部とみなす。
【0038】
本発明の界面活性剤として、前記σ1が55mN/m以上であり、前記σ2が35mN/m以下のポリオキシエチレンアルキルエーテルである場合、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル中、前記アルキル基を有するアルキルアルコールの含有量は、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましく、そして、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
【0039】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の界面活性剤として、前記σ1が55mN/m以上であり、前記σ2が35mN/m以下のノニオン性界面活性剤である場合、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、ノニオン性界面活性剤のHLBが、5以上が好ましく、7以上がより好ましく、そして14以下が好ましく、12以下がより好ましく、11以下が更に好ましい。
【0040】
ここで、HLBとは、親水性疎水性バランス(HydrophileLipophile Balance)の略であって、化合物が親水性か親油性かを知る指標となるものである。一般的なノニオン性界面活性剤では、0~20の値をとる。HLB値が小さい程、親油性が強いことを示す。HLBは例えば、グリフィン法で算出される。
【0041】
グリフィン法によるHLBは、下記式より算出される。
HLB=(親水部の式の分子量の総和/分子量)×20
【0042】
また、本発明の例示的な実施形態において、本発明の界面活性剤として、前記σ1が55mN/m以上であり、前記σ2が35mN/m以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、更にポリオキシエチレンアルキルエーテルである場合、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、更にポリオキシエチレンアルキルエーテルのHLBが、5以上が好ましく、7以上がより好ましく、そして14以下が好ましく、12以下がより好ましく、11以下が更に好ましい。
【0043】
ポリオキシアルキレン基を有するノニオン性界面活性剤の場合には、HLBは、グリフィン法による具体的な下記式より算出される。
HLB値=〔(ノニオン性界面活性剤中のポリオキシアルキレン基部分の分子量)/(ノニオン性界面活性剤の分子量)〕×20
【0044】
なお、ノニオン性界面活性剤中のポリオキシアルキレン基部分の分子量は、オキシアルキレン基の平均付加モル数の値を用いて算出するものとする。
【0045】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(2)デシルエーテル及びポリオキシエチレン(3)デシルエーテルから選ばれる1種以上が好ましく、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテル及びポリオキシエチレン(2)デシルエーテルから選ばれる1種以上がより好ましい。
【0046】
本発明の例示的な実施形態において、本発明によれば、前記した水硬性組成物のブリーディング水に対して0.05質量%濃度の界面活性剤を添加して得られる測定用水溶液をバブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である界面活性剤を、水硬性組成物用表面美観向上剤として使用する方法が提供される。前記σ1及び前記σ2である界面活性剤(例えばノニオン性界面活性剤、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル)は、前記した本発明の界面活性剤の具体例や好ましい態様と同じにすることができる。
【0047】
本発明の例示的な実施形態において、本発明によれば、水硬性組成物用表面美観向上剤に適用される界面活性剤の選択方法であって、バブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である界面活性剤を選択することを含む、界面活性剤の選択方法が提供される。前記σ1及び前記σ2である界面活性剤(例えばノニオン性界面活性剤、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル)は、前記した本発明の界面活性剤の具体例や好ましい態様と同じにすることができる。
【0048】
また、本発明の別の例示的な実施形態において、本発明によれば、水硬性組成物用表面美観向上剤に適用される界面活性剤の選択方法であって、前記した水硬性組成物のブリーディング水に対して0.05質量%濃度の界面活性剤を添加して得られる測定用水溶液をバブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である界面活性剤(例えばノニオン性界面活性剤、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル)を選択することを含む、水硬性組成物用表面美観向上剤に適用される界面活性剤の選択方法が提供される。前記σ1及び前記σ2である界面活性剤(例えばノニオン性界面活性剤、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル)は、前記した本発明の界面活性剤の具体例や好ましい態様と同じにすることができる。
【0049】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の界面活性剤を用いて、後述する水硬性組成物用表面美観向上剤を調製することができる。即ち、本発明の例示的な実施形態において、本発明によれば、バブルプレッシャー法(20℃)により測定したときの泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である界面活性剤〔「本発明の界面活性剤」ともいう〕を含有する、水硬性組成物用表面美観向上剤が提供される。
【0050】
<水硬性組成物用表面美観向上剤>
本発明の例示的な実施形態において、本発明によれば、バブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である、水硬性組成物用表面美観向上剤(以下、「本発明の美観向上剤」ともいう)が提供される。
本発明において、本発明の美観向上剤とは、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕を低減さて、水硬性組成物の硬化体表面の美観を向上させる剤をいう。
【0051】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上剤は、バブルプレッシャー法(20℃)により測定したときの泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、58mN/m以上が好ましく、60mN/m以上がより好ましく、そして、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、33mN/m以下が好ましく、31mN/m以下がより好ましく、29mN/m以下が更に好ましい。
【0052】
また、本発明の別の例示的な実施形態において、本発明によれば、界面活性剤を含有する水硬性組成物用表面美観向上剤であって、前記した水硬性組成物のブリーディング水に対して0.05質量%濃度の界面活性剤を添加して得られる測定用水溶液をバブルプレッシャー法(20℃)により測定したときの泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である、水硬性組成物用表面美観向上剤(以下、「本発明の美観向上剤」ともいう)が提供される。
【0053】
本発明の美観向上剤という場合、上記2つの水硬性組成物用表面美観向上剤を含む。
【0054】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上剤が界面活性剤を含有する場合、前記界面活性剤は、前記した本発明の水硬性組成物用表面美観向上剤用界面活性剤〔以下、「本発明の界面活性剤」ともいう。(A)成分ともいう〕を用いることができる。
【0055】
また、本発明の例示的な実施形態において、本発明の界面活性剤を含有する場合、本発明の美観向上剤は、前記した水硬性組成物のブリーディング水に対して0.05質量%濃度の界面活性剤を添加して得られる測定用水溶液をバブルプレッシャー法(20℃)により測定したときの泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が、55mN/m以上、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、58mN/m以上が好ましく、60mN/m以上がより好ましく、そして、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、33mN/m以下が好ましく、31mN/m以下がより好ましく、29mN/m以下が更に好ましい。
【0056】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の界面活性剤を含有する場合、本発明の界面活性剤の含有量は、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上が更に好ましく、そして、表面美観向上剤の保存安定性の観点から、8.0質量%以下が好ましく、4.0質量%以下がより好ましい。
【0057】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上剤が、前記σ1が55mN/m以上であり、前記σ2が35mN/m以下の界面活性剤を含有する場合、前記σ1が55mN/m以上であり、前記σ2が35mN/m以下の界面活性剤の含有量は、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上が更に好ましく、そして、表面美観向上剤の保存安定性の観点から、8.0質量%以下が好ましく、4.0質量%以下がより好ましい。
【0058】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する場合、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量は、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、0.05質量%が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上が更に好ましく、そして、表面美観向上剤の保存安定性の観点から、8.0質量%以下が好ましく、4.0質量%以下がより好ましい。
【0059】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物用表面美観向上剤は、取り扱い性の観点から、液体状のものが好ましい。そのため、本発明の水硬性組成物用表面美観向上剤は、均一溶液等の液体状で用いることが好ましく、水を含有するもの、更には水溶液がより好ましい。即ち、本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物用表面美観向上剤として、本発明の界面活性剤を含有する水溶液を用いることができる。
【0060】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物用表面美観向上剤は、本発明の界面活性剤が少量でも優れた表面美観向上を示すが、具体的な一態様として、セメント分散剤、製品安定剤、消泡剤等を含有することができる。
【0061】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物用表面美観向上剤としては、更に、(B)セメント分散剤〔以下、(B)成分ともいう〕を含有することができる。
【0062】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の(B)成分としては、リグニンスルホン酸系重合体、ポリカルボン酸系重合体、ナフタレン系重合体、メラミン系重合体、及びフェノール系重合体から選ばれる1種以上のセメント分散剤が挙げられ、分散性の観点から、リグニンスルホン酸系重合体、ポリカルボン酸系重合体、及びナフタレン系重合体から選ばれる1種以上のセメント分散剤が好ましく、水硬性組成物の流動保持性の観点から、ポリカルボン酸系分散剤がより好ましい。
【0063】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の(B)成分として用いるポリカルボン酸系重合体としては、例えば、ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステルと(メタ)アクリル酸等のカルボン酸との共重合体(例えば特開平8-12397号公報に記載の化合物等)、ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールと(メタ)アクリル酸等のカルボン酸との共重合体、ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールとマレイン酸等のジカルボン酸との共重合体等を用いることができる。ここで、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれるカルボン酸の意味である。
【0064】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の(B)成分としては、下記一般式(1b)で示される単量体(1b)と、下記一般式(2b)で示される単量体(2b)とを構成単量体として含む共重合体を含有する、ポリカルボン酸系分散剤が好ましく、前記共重合体であるポリカルボン酸系分散剤がより好ましい。
【0065】
【化1】
【0066】
〔式中、
1b、R2b、R3b:同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基又は(CH2)rCOOM2であり、(CH2)rCOOM2は、COOM1又は他の(CH2)rCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。
1、M2:同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基
r:0以上2以下の数、を示す。〕
【0067】
【化2】
【0068】
〔式中、
4b、R5b: 同一でも異なっていても良く、水素原子又はメチル基
6b:水素原子又は-COO(AO)n17b
7b:水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
AO:炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基
n1:AOの平均付加モル数であり、4以上200以下の数
q1:0以上2以下の数
p1:0又は1、を示す。〕
【0069】
前記一般式(1b)中、R1b、R2b、R3bは、同一でも異なっていてもよく、少なくとも一つはメチル基で残りは水素原子が好ましく、R1bは水素原子、R2bはメチル基、R3bは水素原子がより好ましい。前記一般式(1b)中、(CH)rCOOM1については、COOM1又は他の(CH)rCOOM1と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。前記一般式(1b)中、M1、M2は同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又はアルケニル基であってよく、M1、M2のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、及びアルケニル基は、それぞれ、炭素数1以上4以下が好ましい。
【0070】
前記一般式(1b)中、M1、M2は、同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、又はアルキルアンモニウム基が好ましく、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、又はアンモニウム基がより好ましく、水素原子、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属(1/2原子)が更に好ましく、水素原子、又はアルカリ金属がより更に好ましい。前記一般式(1b)中、(CH)rCOOM1のrは、1が好ましい。
【0071】
前記一般式(2b)中、R4b、R5bは同一でも異なっていても良く、水素原子又はメチル基であってよく、表面美観向上の観点から、R4bは水素原子、R5bはメチル基が好ましい。前記一般式(2b)中、R6bは水素原子又は-COO(AO)n17bであってよく、表面美観向上の観点から水素原子が好ましい。前記一般式(2b)中、R7bは水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基であってよく、メチル基が好ましい。前記一般式(2b)中、AOは炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基であってよく、エチレンオキシ基が好ましい。AOはエチレンオキシ基を含むことが好ましい。
【0072】
前記一般式(2b)中、n1は、AOの平均付加モル数であり、水硬性組成物の粘性及び分散性の観点から、4以上であってよく、5以上が好ましく、10以上がより好ましく、20以上が更に好ましく、そして、200以下であってよく、150以下が好ましく、120以下がより好ましく、60以下が更に好ましい。前記一般式(2b)中、q1は0以上2以下の数であってよく、0が好ましい。前記一般式(2b)中、p1は0又は1であってよく、1が好ましい。
【0073】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の(B)成分として用いる前記共重合体としては、構成単量体中の単量体(1b)と単量体(2b)の合計量が、90質量%以上が好ましく、92質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、そして、100質量%以下である。この合計量は、100質量%であってもよい。
【0074】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の(B)成分として用いる前記共重合体としては、単量体(1b)と単量体(2b)の合計中の単量体(1b)の割合が、水硬性組成物の分散性の観点から、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上が更に好ましく、5質量%以上が更に好ましく、そして、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下が更に好ましく、25質量%以下が更により好ましい。
【0075】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の(B)成分として用いる共重合体としては、重量平均分子量は、水硬性組成物の分散性の観点から、10,000以上が好ましく、20,000以上がより好ましく、30,000以上が更に好ましく、35,000以上がより更に好ましく、そして、100,000以下が好ましく、90,000以下がより好ましく、80,000以下が更に好ましい。
【0076】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の(B)成分として用いる共重合体としては、重量平均分子量は、それぞれ、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されたものである。
【0077】
*GPC条件
装置:GPC(HLC-8320GPC)東ソー株式会社製
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー株式会社製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CHCN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算(分子量既知の単分散ポリエチレングリコール、分子量87,500、250,000、145,000、46,000、24,000)
【0078】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の(B)成分として用いる前記共重合体としては、例えば、以下の共重合体から選ばれる1種以上が挙げられる。
・ポリカルボン酸系共重合体1;メタクリル酸/メトキシポリエチレングリコール(23)モノメタクリレート(重合比75/25モル比)共重合体、重量平均分子量=50,000(カッコ内はエチレンオキシドの平均付加モル数)
・ポリカルボン酸系共重合体2;メタクリル酸/メトキシポリエチレングリコール(120)モノメタクリレート(重合比80/20モル比)共重合体、重量平均分子量=50,000(カッコ内はエチレンオキシドの平均付加モル数)
・ポリカルボン酸系共重合体3;アクリル酸/ポリエチレングリコール(50)イソプレニルエーテル(重合比75/25モル比)共重合体、重量平均分子量=50,000(カッコ内はエチレンオキシドの平均付加モル数)
【0079】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の(B)成分として上記に挙げたポリカルボン酸系共重合体1、2、3を併用する場合、前記共重合体1/前記共重合体2/前記共重合体3の質量比で、例えば、50/25/25の質量比で使用することができる。このように複数のポリカルボン酸系共重合体を使用する場合、各ポリカルボン酸系共重合体のエチレンオキシドの平均付加モル数を前記共重合体の配合割合で質量平均を取って、(併用された)ポリカルボン酸系共重合体中のエチレンオキシドの平均付加モル数とする。
【0080】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上剤中、本発明の(B)成分の含有量は、水硬性組成物の流動保持性の観点から、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、そして、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0081】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物用表面美観向上剤としては、更に、(C)製品安定剤〔以下、(C)成分ともいう〕を含有することができる。
【0082】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の(C)成分としては、具体的には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸又はその塩、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル硫酸又はその塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテル(但し、本発明の(A)成分を除く)、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、等が挙げられる。
【0083】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の(C)成分としては、以下の下記一般式(c)で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物〔以下、(c-1)成分という〕が好ましい。
【0084】
1c-O-[(EO)n・(PO)m]-SO3M (c)
〔式中、R1cは平均炭素数4以上20以下の炭化水素基、EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基、nはEOの平均付加モル数で1以上50以下の数、mはPOの平均付加モル数で0以上10以下の数であり、EOとPOはブロック又はランダムに結合してもよい。Mは対陽イオンを示す。〕
【0085】
前記一般式(c)中、R1cは平均炭素数4以上20以下の炭化水素基であってよく、界面活性剤との相溶性、水への溶解性の観点から、8以上が好ましく、10以上がより好ましく、12以上が更に好ましく、16以上がより更に好ましく、そして、20以下が好ましく、そして、18以下がより好ましい。R1cは、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又は直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基が好ましく、直鎖若しくは分岐鎖のアルケニル基、更に好ましくは直鎖のアルケニル基がより好ましい。
【0086】
前記一般式(c)中、nはEOの平均付加モル数で1以上50以下の数であってよく、一液安定性の観点から、2以上が好ましく、10以上がより好ましく、15以上が更に好ましく、20以上がより更に好ましく、そして、40以下が好ましく、35以下がより好ましく、30以下が更に好ましく、25以下がより更に好ましい。なお、水硬性組成物への過剰な空気連行は水硬性組成物硬化体の強度低下の要因となることから、本発明の(C)成分の水硬性組成物への空気連行性は小さいことが好ましい。
【0087】
前記一般式(c)中、mはPOの平均付加モル数で0以上10以下の数であってよく、界面活性剤との相溶性、水への溶解性の観点から、5以下が好ましく、3以下がより好ましく、1以下が更に好ましい。EOとPOはブロック又はランダムに結合してもよく、製造性の観点から、ブロック付加が好ましい。本発明の界面活性剤との相溶性及び水硬性組成物への空気連行性の観点から、mは0が好ましい。
【0088】
前記一般式(c)中、Mとしては、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等から選ばれる無機イオン、モノエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン、モルホリニウムイオン等から選ばれる有機アンモニウムイオンが挙げられ、入手性の観点から、ナトリウムイオンが好ましい。
【0089】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の(c-1)成分としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(平均炭素数が18、ポリオキシエチレン平均付加モル数が23)、等を使用することができる。
【0090】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の(C)成分としては、前記(c-1)成分と、前記(c-1)成分以外の成分〔以下、(c-2)成分という〕を合わせて使用することもできる。前記(c-2)成分は、具体的には、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル;オクチルジメチルアミン、デシルジメチルアミン等、が挙げられる。
【0091】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の(C)成分としては、製品安定性及びコスト削減の観点から、(c-1)ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸又はその塩、(c-2)フェニルグリコールから選ばれる1種以上が好ましく、(c-1)ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸又はその塩及び(c-2)フェニルグリコールがより好ましく、具体的には、(c-1)平均炭素数18でエチレンオキシドの平均付加モル数23のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸又はその塩及び(c-2)フェニルグリコール、がより好ましい。
【0092】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の(C)成分としては、前記(c-1)成分と前記(c-2)成分の合計含有量中、前記(c-1)成分と前記(c-2)成分の含有量の質量比である(c-2)/(c-1)は、製品安定性の観点から、0.050以上が好ましく、0.10以上がより好ましく、そして、コスト削減の観点から、1.0以下が好ましく、0.50以下がより好ましく、具体的には0.125が特に好ましい。前記製品安定剤は、対陽イオンとして、ナトリウム等のアルカリ金属塩が好ましい。
【0093】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上剤中、本発明の(C)成分の含有量は、製品安定性の観点から、1.0質量%以上が好ましく、5.0質量%以上がより好ましく、そして、コスト削減の観点から、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0094】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上剤は、更に、(D)消泡剤〔以下、(D)成分ともいう〕を含有することができる。
【0095】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の(D)成分としては、HLBが3未満の消泡剤が挙げられる。具体的には、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル系消泡剤(本発明の(A)成分を除く)、ポリアルキレングリコールアルキルエステル系消泡剤、ポリオールポリエーテル系消泡剤、ポリアルキレングリコールブロックポリマー系消泡剤、シリコーン系消泡剤、更にこれらのうち、HLBが3未満の消泡剤が挙げられる。本発明の例示的な実施形態において、本発明の(D)成分としては、水硬性組成物中の空気量を調整する観点及び表面美観向上剤の保存安定性の観点から、HLBが3未満のポリアルキレングリコールアルキルエーテル系消泡剤(本発明の(A)成分を除く)、HLBが3未満のポリアルキレングリコールアルキルエステル系消泡剤及びHLBが3未満のシリコーン系消泡剤から選ばれる1種以上が好ましく、HLBが3未満のポリアルキレングリコールアルキルエーテル系消泡剤がより好ましい。なお、消泡剤のHLBは、前記したHLB値の算出はグリフィン法の算出法を用いる。
【0096】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上剤中、本発明の(D)成分の含有量は、水硬性組成物中の空気量を調整する観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、そして、表面美観向上剤の保存安定性の観点から、0.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましい。
【0097】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上剤としては、さらに具体的な一態様として、前記(A)成分、前記(B)成分、前記(C)成分及び前記(D)成分を含有することができる。
【0098】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上剤として、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分の合計含有量中、(A)成分の含有量は、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、1.0質量%以上が好ましく、3.0質量%以上がより好ましく、そして、表面美観向上剤の保存安定性の観点から、そして、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0099】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上剤として、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分の合計含有量中、(B)成分の含有量は、水硬性組成物の流動保持性の観点から、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、そして、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましい。
【0100】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上剤として、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分の合計含有量中、(C)成分の含有量は、製品安定性の観点から、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、そして、コスト削減の観点から、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0101】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上剤として、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分の合計含有量中、(D)成分の含有量は、水硬性組成物中の空気量を調整する観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、そして、表面美観向上剤の保存安定性の観点から、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。
【0102】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上剤として、(A)成分と(B)成分の質量比である(A)/(B)が、硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、そして、コスト削減の観点から、1.0以下が好ましく、0.5以下がより好ましい。
【0103】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上剤として、(A)成分と(D)成分の質量比である(A)/(D)が、製品安定性の観点から、10以上が好ましく、15以上がより好ましく、そして、水硬性組成物中の空気量を調整する観点から、100以下が好ましく、50以下がより好ましい。
【0104】
また、本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上剤としては、さらに具体的な一態様として、水硬性組成物を調製するときに使用される練り水に配合することができる。
【0105】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上剤として、具体的には、前記練り水中、(A)成分の含有量は、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、そして、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、前記範囲内になるように本発明の美観向上剤を添加することができる。本発明の美観向上剤として、具体的には、前記練り水中、(B)成分の含有量は、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、そして、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、前記範囲内になるように本発明の美観向上剤を添加することができる。本発明の美観向上剤として、具体的には、前記練り水中、(C)成分の含有量は、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、そして、0.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、前記範囲内になるように本発明の美観向上剤を添加することができる。本発明の美観向上剤として、具体的には、前記練り水中、(D)成分の含有量は、0.0001質量%以上が好ましく、0.0005質量%以上がより好ましく、そして、0.01質量%以下が好ましく、0.005質量%以下がより好ましく、前記範囲内になるように本発明の美観向上剤を添加することができる。
【0106】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上剤としては、更に、炭素数8以上20以下のアルキル基又は炭素数8以上20以下のアルケニル基を有し、糖縮合度が1以上5以下である(ポリ)グリコシドの少なくとも1種〔以下、本発明の(ポリ)グリコシドともいう〕を含有することができる。この場合、前述した動的表面張力を有する本発明の界面活性剤の含有量に対する(ポリ)グリコシドの含有量の質量比、即ち、(ポリ)グリコシド/(A)成分(質量比)は、0以上が好ましく、そして、0.05以下が好ましく、0.01以下がより好ましい。本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上剤としては、水硬性組成物硬化体の強度発現性の観点から、(ポリ)グリコシド/(A)成分(質量比)は0が好ましい。
【0107】
本発明の例示的な実施形態において、本発明で用いる(ポリ)グリコシドとしては、炭素数8以上20以下のアルキル基又は炭素数8以上20以下のアルケニル基を有し、糖縮合度が1以上5以下である(ポリ)グリコシドの少なくとも1種である。
【0108】
本発明の例示的な実施形態において、本発明で用いる(ポリ)グリコシドとしては、アルキル基又はアルケニル基の炭素数は8以上が好ましく、そして、20以下が好ましく、18以下がより好ましく、16以下が更に好ましく、14以下がより更に好ましく、12以下がより更に好ましい。本発明の(ポリ)グリコシドは、一液安定性の観点から、炭素数8以上20以下のアルキル基を有するものが好ましい。
【0109】
本発明の例示的な実施形態において、本発明で用いる(ポリ)グリコシドとしては、糖縮合度は、水溶性の観点から、1以上が好ましく、そして、5以下がより好ましく、4以下が更に好ましく、3以下より更に好ましく、2以下がより更に好ましい。
【0110】
本発明の例示的な実施形態において、本発明で用いる(ポリ)グリコシドを構成する糖としては、具体的にはグルコース、マルトース、スクロースが挙げられる。本発明の例示的な実施形態において、本発明で用いる(ポリ)グリコシドは、炭素数8以上20以下のアルキル基又は炭素数8以上20以下のアルケニル基を有し、糖縮合度が1以上5以下である(ポリ)グルコシドの少なくとも1種が好ましく、炭素数8以上20以下のアルキル基を有し、糖縮合度が1以上5以下である(ポリ)グルコシドの少なくとも1種が好ましい。
【0111】
<水硬性組成物>
本発明の例示的な実施形態において、本発明によれば、バブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である水硬性組成物用表面美観向上剤、水硬性粉体及び水を含有する水硬性組成物が提供される。本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物としては、前記水硬性組成物用表面美観向上剤の具体例及び好ましい態様は、前記した本発明の水硬性組成物用表面美観向上剤〔以下、「本発明の美観向上剤」ともいう。〕と同じにすることができる。
【0112】
また、本発明の別の例示的な実施形態において、本発明によれば、前記した水硬性組成物のブリーディング水に対して0.05質量%濃度の界面活性剤を添加して得られる測定用水溶液をバブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である界面活性剤、水硬性粉体及び水を含有する水硬性組成物が提供される。本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物としては、前記界面活性剤の具体例及び好ましい態様は、前記した本発明の水硬性組成物用表面美観向上剤用界面活性剤〔以下、「本発明の界面活性剤」ともいう。(A)成分ともいう。〕と同じにすることができる。
【0113】
本発明の水硬性組成物という場合、上記2つの水硬性組成物を含む。
【0114】
本発明の例示的な実施形態において、本発明で用いる水硬性粉体としては、セメントが挙げられる。本発明で用いるセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、エコセメント(例えばJIS R5214等)が挙げられる。これらの中でも、本発明で用いるセメントとしては、普通ポルトランドセメント、耐硫酸性ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメントが好ましく、普通ポルトランドセメントがより好ましい。
【0115】
また、本発明の例示的な実施形態において、本発明で用いるセメントとしては、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム等を含むことができ、また、非水硬性の石灰石微粉末等を含むことができる。
【0116】
本発明の例示的な実施形態において、本発明で用いる水硬性粉体としては、セメントと混合されたシリカヒュームセメントや高炉セメントを用いることができる。
【0117】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物中、本発明の美観向上剤としては、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、0.001質量部以上が好ましく、0.005質量部以上がより好ましく、0.010質量部以上が更に好ましく、0.03質量部以上がより更に好ましく、そして、10質量部以下が好ましく、3.0質量部以下がより好ましく、2.5質量部以下が更に好ましく、2.0質量部以下がより更に好ましく、1.0質量部以下がより好ましい。
【0118】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物中、本発明の界面活性剤の含有量は、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、0.001質量部以上が好ましく、0.005質量部以上がより好ましく、0.010質量部以上が更に好ましく、0.03質量部以上がより更に好ましく、そして、10質量部以下が好ましく、3.0質量部以下がより好ましく、2.5質量部以下が更に好ましく、2.0質量部以下がより更に好ましく、1.0質量部以下がより好ましい。
【0119】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物としては、本発明の美観向上剤又は本発明の界面活性剤の他に、(B)セメント分散剤〔以下、(B)成分ともいう〕を含有することができる。本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物としては、前記セメント分散剤の具体例及び好ましい態様は、前記した本発明の美観向上剤に含有される(B)セメント分散剤と同じにすることができる。
【0120】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物として(B)成分を含有する場合、(B)成分の含有量は、水硬性組成物の流動性向上の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、0.10質量部以上が好ましく、0.20質量部以上がより好ましく、そして、水硬性組成物の硬化体の耐久性の観点から1.0質量部以下が好ましく、0.50質量部以下がより好ましい。
【0121】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物として前記した本発明の美観向上剤を含み、前記美観向上剤が(B)成分としてセメント分散剤を含有する場合、本発明の水硬性組成物中、(B)成分の全含有量は、水硬性組成物の流動性向上の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、0.10質量部以上が好ましく、0.20質量部以上がより好ましく、そして、水硬性組成物の硬化体の耐久性の観点から1.0質量部以下が好ましく、0.50質量部以下がより好ましい。
【0122】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物としては、本発明の美観向上剤又は本発明の界面活性剤の他に、更に、(C)製品安定剤〔以下、(C)成分ともいう〕を含有することができる。本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物としては、前記(C)成分の具体例及び好ましい態様は、前記した本発明の美観向上剤に含有される(C)製品安定剤と同じにすることができる。
【0123】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物として前記製品安定剤を含有する場合、(C)成分の含有量は、製品安定性の観点から、水硬性粉体100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.02質量部以上がより好ましく、そして、コスト削減の観点から、1.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以下がより好ましい。
【0124】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物として前記(c-1)成分を含有する場合、前記(c-1)成分の含有量は、製品安定性の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.02質量部以上がより好ましく、そして、コスト削減の観点から、1.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以下がより好ましい。
【0125】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物としては、本発明の美観向上剤又は本発明の界面活性剤の他に、更に、(D)消泡剤〔以下、(D)成分ともいう〕を含有することができる。本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物としては、前記消泡剤の具体例及び好ましい態様は、前記した本発明の美観向上剤に含有される(D)消泡剤と同じにすることができる。
【0126】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物として前記(D)成分を含有する場合、(D)成分の含有量は、水硬性組成物の硬化体の耐久性の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、0.0001質量部以上が好ましく、0.0005質量部以上がより好ましく、そして、1.0質量部以下が好ましく、0.5質量部以下がより好ましい。
【0127】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物として前記した本発明の美観向上剤を含み、前記美観向上剤が(D)成分として消泡剤を含有する場合、本発明の水硬性組成物中、(D)成分の全含有量は、水硬性組成物の硬化体の耐久性の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、0.0001質量部以上が好ましく、0.0005質量部以上がより好ましく、そして、1.0質量部以下が好ましく、0.5質量部以下がより好ましい。
【0128】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物としては、本発明の美観向上剤又は本発明の界面活性剤の他に、更に、空気連行剤を含有することができる。
【0129】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物として空気連行剤を含有する場合、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、空気連行剤の拡散係数は、本発明の界面活性剤の拡散係数よりも小さいものを用いることが好ましい。
【0130】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物として空気連行剤を含有する場合、具体的には、ロジン酸、アルキル硫酸又はその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸又はその塩(但し、本発明の(c-1)成分を除く)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸又はその塩等が挙げられる。本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物として用いる空気連行剤としては、水硬性組成物の硬化体の耐久性向上の観点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸又はその塩(但し、本発明の(c-1)成分を除く)が好ましい。
【0131】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物として前記空気連行剤を含有する場合、空気連行剤の含有量は、水硬性組成物の硬化体の耐久性の観点から、水硬性粉体100質量部に対して、0.001質量部以上が好ましく、0.01質量部以上がより好ましく、そして、1.0質量部以下が好ましく、0.5質量部以下がより好ましい。
【0132】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物は、具体的な一態様として、本発明の(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、水硬性粉体及び水を含有することができる。また、本発明の別の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物として、本発明の(A)成分、(B)成分、(D)成分、水硬性粉体及び水を含有することができる。
【0133】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物として、(A)成分と(B)成分の質量比である(A)/(B)が、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、そして、コスト削減の観点から、1.0以下が好ましく、0.5以下がより好ましい。
【0134】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物として、(A)成分と(D)成分の質量比である(A)/(D)が、製品安定性の観点から、10以上が好ましく、15以上がより好ましく、そして、水硬性組成物中の空気量を調整する観点から、100以下が好ましく、50以下がより好ましい。
【0135】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物として、作業性と経済性の観点から、水/水硬性粉体比〔水硬性組成物中の水と水硬性粉体(水の質量/水硬性粉体の質量×100)、通常W/Pと略記され、水硬性粉体がセメントの場合はW/Cと略記される。〕が、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、そして、95%以下が好ましく、80%以下がより好ましい。
【0136】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物として、前記水硬性組成物中に含有される空気量について特に限定されないが、水硬性組成物の硬化体の耐久性の観点から、0%以上が好ましく、3.0%以下が好ましい。本発明の水硬性組成物中の空気量が前記範囲内になるように、本発明の(D)成分として前記消泡剤の添加量を調整することができる。
【0137】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物としては、更に骨材を含有することができる。骨材として細骨材や粗骨材等が挙げられ、細骨材は山砂、陸砂、川砂、砕砂が好ましく、粗骨材は山砂利、陸砂利、川砂利、砕石が好ましい。用途によっては、軽量骨材を使用することができる。なお、骨材の用語は、「コンクリート総覧」(1998年6月10日、技術書院発行)による。
【0138】
骨材は、コンクリートやモルタル等の調製に用いられる通常の範囲で用いることができる。水硬性組成物がコンクリートの場合、粗骨材の使用量は、コンクリートの性状の観点から、嵩容積50%以上が好ましく、55%以上がより好ましく、60%以上が更に好ましく、そして、100%以下が好ましく、90%以下がより好ましく、80%以下が更に好ましい。嵩容積は、コンクリート1m中の粗骨材の容積(空隙を含む)の割合である。また、水硬性組成物がコンクリートの場合、細骨材の使用量は、型枠等への充填性を向上する観点から、500kg/m以上が好ましく、600kg/m以上がより好ましく、700kg/m以上が更に好ましく、そして、1000kg/m以下が好ましく、900kg/m以下が好ましい。水硬性組成物がモルタルの場合、細骨材の使用量は、800kg/m以上が好ましく、900kg/m以上がより好ましく、1000kg/m以上が更に好ましく、そして、2000kg/m以下が好ましく、1800kg/m以下がより好ましく、1700kg/m以下が更に好ましい。
【0139】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物としては、上記成分以外に更にその他の成分を含有することもできる。例えば、遅延剤、増粘剤、防水剤、流動化剤、早強剤等が挙げられる。
【0140】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物に含有される早強剤としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、シアン酸塩、チオシアン酸塩、チオ硫酸塩、ギ酸塩から選ばれる化合物、又はアルカノールアミン、グリセリン誘導体、ホルムアルデヒド誘導体、カテコール誘導体から選ばれる有機化合物、ポルトランドセメントの水和生成物(C-S-H、及び水酸化カルシウム)のナノ粒子、が挙げられる。
【0141】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物としては、コンクリート、モルタルを用いることができる。本発明の水硬性組成物は、セルフレベリング用、耐火物用、プラスター用、軽量又は重量コンクリート用、空気連行用、補修用、プレパックド用、トレーミー用、地盤改良用、グラウト用、寒中用等の何れの分野においても有用である。
【0142】
<水硬性組成物の製造方法>
本発明の例示的な実施形態において、本発明によれば、バブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である水硬性組成物用表面美観向上剤〔以下、「本発明の美観向上剤」ともいう〕と、水硬性粉体と、水とを混合して調製する、水硬性組成物の製造方法が提供される。
【0143】
また、本発明の例示的な実施形態において、本発明によれば、本発明の水硬性組成物用表面美観向上剤用界面活性剤〔以下、「本発明の界面活性剤」ともいう。(A)成分ともいう。〕と、水硬性粉体と、水とを混合して調製する、水硬性組成物の製造方法であって、前記界面活性剤が、前記した水硬性組成物のブリーディング水に対して0.05質量%濃度の界面活性剤を添加して得られる測定用水溶液をバブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である、水硬性組成物の製造方法が提供される。
【0144】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物の製造方法で用いる本発明の美観向上剤の、具体例及び好ましい態様は、本発明の水硬性組成物用表面美観向上剤と同じにすることができる。また、本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物の製造方法で用いる本発明の界面活性剤及び任意成分の、具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の水硬性組成物用表面美観向上剤で述べた界面活性剤及び任意成分と同じにすることができる。また、本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物の製造方法で用いる水硬性粉体の、具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の水硬性組成物と同じにすることができる。また、本発明の水硬性組成物用表面美観向上剤、及び水硬性組成物で述べた事項は、本発明の水硬性組成物の製造方法に適宜適用することができる。
【0145】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物の製造方法としては、本発明の界面活性剤、水硬性粉体と、水とを混合して水硬性組成物を調製することができる。また、本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物の製造方法としては、本発明の界面活性剤と任意成分、水硬性粉体と、水とを混合して水硬性組成物を調製することができる。
【0146】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物の製造方法としては、本発明の界面活性剤と前記した任意成分とを別々に水硬性粉体と混合して水硬性組成物を調製することができるが、本発明の例示的な実施形態として、予め、本発明の界面活性剤と任意成分とを混合すると、新しくタンクを増設する必要がなく、それらを一体化したものを水硬性粉体と混合することができる。即ち、本発明の水硬性組成物の製造方法として、本発明の美観向上剤と水硬性粉体とを混合することができる。
【0147】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物の製造方法に用いる各成分、水硬性粉体、水の混合量は、本発明の水硬性組成物で述べた各成分、水硬性粉体、水の含有量を混合量に置き換えて適用することができる。
【0148】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物の製造方法として、本発明の界面活性剤及び任意成分とセメント等の水硬性粉体とを円滑に混合する観点から、本発明の界面活性剤、任意成分、水とを予め混合した後に、水硬性粉体と混合することができる。また、本発明の別の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物の製造方法として、水を含有する本発明の美観向上剤、(必要に応じて水硬性組成物に用いる任意成分)、水とを予め混合した後に、水硬性粉体と混合することができる。
【0149】
また、本発明の別の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物の製造方法として、セメント等の水硬性粉体に対して本発明の美観向上剤を添加して混合することができる。本発明の別の例示的な実施形態において、本発明の美観向上剤は、水硬性粉体に対して、本発明の界面活性剤及び任意成分が、前述の添加量(含有量)となるように添加されることが好ましい。
【0150】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物の製造方法として、具体的には、本発明の美観向上剤の添加量は、固形分の質量部として、水硬性粉体100質量部に対して、表面美観改善の観点から、0.001質量部以上が好ましく、0.005質量部以上がより好ましく、0.01質量部以上が更に好ましく、0.03質量部以上がより更に好ましく、そして、高流動性の確保による表面美観改善の観点から、10質量部以下が好ましく、3.0質量部以下がより好ましく、2.5質量部以下が更に好ましく、2.0質量部以下がより更に好ましく、1.0質量部以下がより更に好ましい。
【0151】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物の製造方法として、モルタルミキサー、強制二軸ミキサー等のミキサーを用いて混合することができる。また混合時間は、1分間以上が好ましく、2分間以上がより好ましく、そして、5分間以下が好ましく、3分間以下がより好ましい。水硬性組成物の調製にあたっては、水硬性組成物で説明した材料や薬剤及びそれらの量を用いることができる。
【0152】
<水硬性組成物の硬化体の製造方法>
本発明の例示的な実施形態において、本発明によれば、バブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である水硬性組成物用表面美観向上剤〔以下、「本発明の美観向上剤」ともいう〕と、水硬性粉体と、水とを混合して水硬性組成物を調製する工程、調製された前記水硬性組成物を型枠に充填し、硬化させる工程、硬化した前記水硬性組成物を脱型する工程、を有する水硬性組成物の硬化体の製造方法〔以下、「本発明の硬化体の製造方法」ともいう〕が提供される。
【0153】
また、本発明の別の例示的な実施形態において、本発明によれば、水硬性組成物用表面美観向上剤と、水硬性粉体と、水とを混合して水硬性組成物を調製する工程、調製された前記水硬性組成物を型枠に充填し、硬化させる工程、硬化した前記水硬性組成物を脱型する工程、を有する水硬性組成物の硬化体の製造方法であって、前記水硬性組成物用表面美観向上剤〔以下、「本発明の美観向上剤」ともいう〕が、前記した水硬性組成物のブリーディング水に対して0.05質量%濃度の界面活性剤を添加して得られる測定用水溶液をバブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である界面活性剤〔以下、「本発明の界面活性剤」ともいう。(A)成分ともいう。〕を含有する、水硬性組成物の硬化体の製造方法〔以下、「本発明の硬化体の製造方法」ともいう〕が提供される。
【0154】
本発明の硬化体の製造方法という場合、上記2つの本発明の硬化体の製造方法を含む。
【0155】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物の硬化体の製造方法で用いる、本発明の界面活性剤及び任意成分の、具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の水硬性組成物用表面美観向上剤と同じにすることができる。また、本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物の製造方法で用いる本発明の美観向上剤の、具体例及び好ましい態様は、本発明の水硬性組成物用表面美観向上剤と同じにすることができる。また、本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物の硬化体の製造方法で用いる水硬性粉体の、具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の水硬性組成物と同じにすることができる。また、本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物の硬化体の製造方法で用いる本発明の水硬性組成物用表面美観向上剤、及び水硬性組成物で述べた事項は、本発明の水硬性組成物の硬化体の製造方法に適宜適用することができる。
【0156】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物の硬化体の製造方法に含まれる水硬性組成物を調製する工程としては、本発明の水硬性組成物の製造方法と同じにすることができる。
【0157】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物の硬化体の製造方法に含まれる水硬性組成物の調製により得られた水硬性組成物は、更に、水硬性組成物を型枠に充填し養生し硬化させる。
【0158】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物の硬化体の製造方法に含まれる、前記水硬性組成物を型枠に充填し、硬化させる工程において用いる型枠としては、建築物の型枠、コンクリート製品用の型枠等が挙げられる。型枠への充填方法として、ミキサーから直接投入する方法、水硬性組成物をポンプで圧送して型枠に導入する方法等が挙げられる。
【0159】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物の硬化体の製造方法に含まれる、前記水硬性組成物を型枠に充填し、硬化させる工程において用いる型枠には、脱型時の水硬性組成物硬化体の剥離性の観点から、離型剤を塗布することが好ましい。離型剤は(1)灯油、軽油、スピン油、トランス油、マシン油等の鉱物油、(2)ポリアルキレングリコール等の合成油、(3)菜種、やし、パーム、大豆油等の植物油、(4)油脂、(5)脂肪酸エステル等が使用でき、上記をそのまま塗布する「油系離型剤」でも、水に乳化させた「水系離型剤」でもよい。
【0160】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物の硬化体の製造方法に含まれる、前記水硬性組成物を型枠に充填し、硬化させる工程としては、水硬性組成物の養生の際、硬化を促進するために加熱養生し、硬化を促進させることができる。ここで、加熱養生は、40℃以上80℃以下の温度で水硬性組成物を保持して硬化を促進することができる。
【0161】
本発明の例示的な実施形態において、硬化した前記水硬性組成物は、脱型して、水硬性組成物の硬化体を得ることができる。脱型の際には、水硬性組成物の硬化体は十分な圧縮強度が得られていることが好ましい。脱型時の圧縮強度は、例えば「2023年制定 土木学会標準示方書[施工編]解説表8.8.1」に記載の強度以上であることが好ましい。
【0162】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物の硬化体の製造方法により得られるコンクリート製品用型枠を用いる水硬性組成物の硬化体としては、土木用製品では、コンクリートパイル、コンクリートポール、護岸用の各種ブロック製品、ボックスカルバート製品、トンネル工事等に使用されるセグメント製品、橋脚の桁製品等が挙げられ、建築用製品では、カーテンウォール製品、柱、梁、床板に使用される建築部材製品等が挙げられる。
【0163】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の水硬性組成物の硬化体の製造方法に含まれる水硬性組成物の調製としては、水硬性粉体に水を接触させてから脱型するまでの時間は、脱型に必要な強度を得る観点と製造サイクルを向上する観点から、16時間以上72時間以下が好ましい。
【0164】
<水硬性組成物の硬化体の表面美観向上方法>
本発明の例示的な実施形態において、本発明によれば、バブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である界面活性剤〔以下、「本発明の界面活性剤」ともいう〕を、水硬性粉体と水を含有する水硬性組成物に添加する、水硬性組成物の硬化体の表面美観向上方法〔以下、「本発明の美観向上方法」ともいう〕が提供される。
【0165】
また、本発明の例示的な実施形態において、本発明によれば、水硬性粉体と水を含有する水硬性組成物に、本発明の界面活性剤を添加する、水硬性組成物の硬化体の表面美観向上方法であって、前記界面活性剤が、前記した水硬性組成物のブリーディング水に対して0.05質量%濃度の界面活性剤を添加して得られる測定用水溶液をバブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である〔以下、「本発明の界面活性剤」ともいう〕、水硬性組成物の硬化体の表面美観向上方法〔以下、「本発明の美観向上方法」ともいう〕が提供される。
【0166】
また、本発明の例示的な実施形態において、本発明によれば、水硬性粉体と水を含有する水硬性組成物に、本発明の水硬性組成物用表面美観向上剤〔以下、「本発明の美観向上剤」ともいう〕を添加する、水硬性組成物の硬化体の表面美観向上方法であって、前記美観向上剤が、バブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である〔以下、「本発明の美観向上剤」ともいう〕、水硬性組成物の硬化体の表面美観向上方法〔以下、「本発明の美観向上方法」ともいう〕が提供される。
【0167】
本発明の本発明の美観向上方法という場合、上記3つの本発明の美観向上方法を含む。
【0168】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上方法に用いられる本発明の界面活性剤及び任意成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の水硬性組成物用表面美観向上剤用界面活性剤で述べたものと同じにすることができる。また、本発明の美観向上方法に用いられる本発明の美観向上剤及び任意成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の水硬性組成物用表面美観向上剤で述べたものと同じにすることができる。また、本発明の美観向上方法に用いられる水硬性粉体の具体例及び好ましい態様は、本発明の水硬性組成物で述べたものと同じにすることができる。また、本発明の美観向上剤、水硬性組成物及びその硬化体の製造方法で述べた事項は、本発明の美観向上方法に適宜適用することができる。
【0169】
<水硬性組成物の硬化体用表面美観向上キット>
本発明の例示的な実施形態において、本発明によれば、本発明の界面活性剤を含む第1の剤と、前記したセメント分散剤を含む第2の剤を組み合わせた、水硬性組成物の硬化体用表面美観向上キットが提供される。即ち、本発明の例示的な実施形態において、本発明によれば、前記した水硬性組成物のブリーディング水に対して0.05質量%濃度の界面活性剤を添加して得られる測定用水溶液をバブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である界面活性剤〔以下、「本発明の界面活性剤」ともいう〕を含む第1の剤と、前記したセメント分散剤〔以下、「本発明のセメント分散剤」ともいう〕を含む第2の剤を組み合わせた、水硬性組成物の硬化体用表面美観向上キット〔以下、「本発明の美観向上キット」ともいう〕が提供される。
【0170】
また、本発明の別の例示的な実施形態において、本発明によれば、本発明の界面活性剤を含む水溶液αと、前記したセメント分散剤を含む水溶液βを組み合わせた、水硬性組成物の硬化体用表面美観向上キットが提供される。即ち、本発明の例示的な実施形態において、本発明によれば、前記した水硬性組成物のブリーディング水に対して0.05質量%濃度の界面活性剤を添加して得られる測定用水溶液をバブルプレッシャー法(20℃)により測定したとき、泡膜寿命10msにおける動的表面張力(σ1)が55mN/m以上であり、泡膜寿命1000msにおける動的表面張力(σ2)が35mN/m以下である界面活性剤〔以下、「本発明の界面活性剤」ともいう〕を含む水溶液αと、前記したセメント分散剤〔以下、「本発明のセメント分散剤」ともいう〕を含む水溶液βを組み合わせた、水硬性組成物の硬化体用表面美観向上キット〔以下、「本発明の美観向上キット」ともいう〕が提供される。
【0171】
本発明の美観向上キットという場合、上記2つの美観向上キットを含む。
【0172】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上キットとしては、具体的には、本発明の界面活性剤を含む水溶液αと、前記した本発明のセメント分散剤を含む水溶液βを、分離した状態で含んで構成される。
【0173】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上キットとしては、本発明の水硬性組成物用表面美観向上剤用界面活性剤、水硬性組成物用表面美観向上剤、水硬性組成物、水硬性組成物の製造方法、水硬性組成物の硬化体の製造方法、水硬性組成物の硬化体の表面美観向上方法で述べた事項を、本発明の界面活性剤を含む第1の剤、好ましくは前記水溶液α及び前記した本発明のセメント分散剤を含む第2の剤、好ましくは前記水溶液βに、適宜適用することができる。
【0174】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上キットとしては、成分を分けて保存できる容器に収容し、使用時に混合して用いることができる。本発明の例示的な実施形態において、本発明の界面活性剤を含む第1の剤、好ましくは前記水溶液αと本発明のセメント分散剤を含む第2の剤、好ましくは前記水溶液βとを、それぞれ分離して保持する容器に充填してなるキットが好ましい。
【0175】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の界面活性剤の量としては、前記第1の剤、好ましくは前記水溶液α中、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がより好ましく、そして、100質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0176】
本発明の例示的な実施形態において、本発明のセメント分散剤としては、前記一般式(1b)で示される単量体(1b)と、前記一般式(2b)で示される単量体(2b)とを構成単量体として含む共重合体が好ましく、本発明のセメント分散剤の量としては、前記共重合体の含有量が、前記第2の剤、好ましくは前記水溶液β中、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、そして、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
【0177】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上キットとしては、水溶液αと水溶液βとの相溶性の観点から、任意成分である製品安定剤を、本発明の界面活性剤を含む第1の剤、好ましくは前記水溶液αと、本発明のセメント分散剤を含む第2の剤、好ましくは前記水溶液βの少なくとも何れかに含むことが好ましい。
【0178】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上キットとしては、水硬性組成物の空気連行性の観点から、任意成分である消泡剤または空気連行剤を、本発明の界面活性剤を含む第1の剤、好ましくは前記水溶液αと、本発明のセメント分散剤を含む第2の剤、好ましくは前記水溶液βの少なくとも何れかに含むことが好ましい。
【0179】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上キットとしては、水硬性組成物の空気連行性の観点から、任意成分である消泡剤を、本発明の界面活性剤を含む第1の剤、好ましくは前記水溶液αと、本発明のセメント分散剤を含む第2の剤、好ましくは前記水溶液βの少なくとも何れかに含むことが好ましく、水硬性組成物の空気連行性の観点から、任意成分である空気連行剤を、本発明の界面活性剤を含む第1の剤、好ましくは前記水溶液αと、本発明のセメント分散剤を含む第2の剤、好ましくは前記水溶液βの少なくとも何れかに含むことが好ましい。
【0180】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上キットとしては、発明の界面活性剤を含む第1の剤、好ましくは前記水溶液αと、本発明のセメント分散剤を含む第2の剤、好ましくは前記水溶液β、は、本発明の界面活性剤と本発明のセメント分散剤、好ましくは本発明のセメント分散剤である前記した共重合体の質量比である「界面活性剤/セメント分散剤」が、水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、10/90以上が好ましく、そして、90/10以下が好ましく、前記範囲で混合される。
【0181】
本発明の例示的な実施形態において、本発明の美観向上キットとしては、発明の界面活性剤を含む第1の剤と、本発明のセメント分散剤を含む第2の剤は、水と混合して用いられ、本発明の界面活性剤と、本発明のセメント分散剤、好ましくは本発明のセメント分散剤である前記した共重合体、との合計含有量が、水100質量部に対して水硬性組成物の硬化体表面の気泡痕量低減効果の観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.15質量部以上がより好ましく、そして、1質量部以下が好ましく、0.5質量部以下がより好ましい。
【実施例0182】
水硬性組成物の配合を表1に、また、評価結果を表2に示した。表中の化合物は以下のものである。()内の数字はエチレンオキシドの平均付加モル数を示す。尚、(A)成分のHLBはグリフィン法によるHLBである。
【0183】
<比較例で用いた界面活性剤>
・パーム核油脂脂肪酸ジエタノールアミド:製品名「アミノーン PK02―S」、花王(株)製
【0184】
<実施例で用いた界面活性剤>
・ポリオキシエチレン(3)デシルエーテル;製造例1で得られる界面活性剤(0.3質量%濃度の界面活性剤水溶液をバブルプレッシャー法(20℃)により測定したときの前記σ3が56mN/m、前記σ4が29mN/m)、HLB 9.1
・ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテル:製造例2で得られる界面活性剤(0.3質量%濃度の界面活性剤水溶液をバブルプレッシャー法(20℃)により測定したときの前記σ3が62mN/m、前記σ4が25mN/m)、HLB 10.8
・ポリオキシエチレン(2)デシルエーテル;製造例3で得られる界面活性剤(0.3質量%濃度の界面活性剤水溶液をバブルプレッシャー法(20℃)により測定したときの前記σ3が60mN/m、前記σ4が25mN/m)、HLB 7.2
【0185】
〔製造例1〕ポリオキシエチレン(3)デシルエーテルの調製
デシルアルコール1060g(6.71モル)と水酸化カリウム(純分86%)4.36g(0.067モル)を、撹拌装置、温度計、EO導入管付きの2Lオートクレーブに仕込み、窒素置換した後、110℃、-0.101MPaで30分間脱水した。その後、初期窒素圧0.005MPa、155±5℃にてエチレンオキサイド884g(20.1モル)を前記混合反応物に供給して反応させた。その後、酢酸を4.095g(0.068モル)加えて中和した。得られた生成物の平均EO付加モル数をH-NMRで確認したところ、平均EO付加モル数は3モルであった。
【0186】
〔製造例2〕ポリオキシエチレン(2)デシルエーテルの調製
前記製造例1のエチレンオキサイド884g(20.1モル)を、エチレンオキサイド590g(13.4モル)に代えた以外は、前記製造例1と同様に反応させた。得られた生成物の平均EO付加モル数をH-NMRで確認したところ、平均EO付加モル数は2モルであった。
【0187】
〔製造例3〕ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテルの調製
ラウリルアルコール1250g(6.71モル)と水酸化カリウム(純分86%)4.36g(0.067モル)を、撹拌装置、温度計、EO導入管付きの2Lオートクレーブに仕込み、窒素置換した後、110℃、-0.101MPaで30分間脱水した。その後、初期窒素圧0.005MPa、155±5℃にエチレンオキサイド1474g(33.5モル)を前記混合反応物に供給して反応させた。その後、酢酸を4.095g(0.068モル)加えて中和した。得られた生成物の平均EO付加モル数をH-NMRで確認したところ、平均EO付加モル数は5モルであった。
【0188】
【表1】
【0189】
水と水硬性粉体の質量比(W/C)は、水硬性粉体100質量部に対して水30質量部である。細骨材は水硬性粉体100質量部に対して115質量部である。また、用いた成分は以下のものである。
・W:練り水(水道水(和歌山市上水道水))
・C:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製、密度3.16g/cm
・S:細骨材(京都府城陽産山砂、密度2.50g/cm
・G:粗骨材(兵庫県西島産安山岩砕石(直径10~20mmの砕石/直径5~10mmの砕石を質量比1/1で混合したもの)、密度2.63g/cm
【0190】
(1)水硬性組成物の調製
表1に示す配合条件で、強制二軸ミキサー((株)IHI製)内に、粗骨材(G)、半量の細骨材(S)、半量のセメント(C)、残りの半量の細骨材(S)、の順に投入し、15秒間空練りした。その後、下記組成の練り水を投入して、90秒間本練りして、水硬性組成物を調製した。前記練り水は、表2に示す界面活性剤、下記(B)成分、下記(C)成分及び下記(D)成分を含有し、前記練り水中の各成分の濃度は、表2記載の界面活性剤を0.05質量%、下記(B)成分を0.82質量%、下記(C)成分を0.15質量%(前記(C)成分中、下記(c-2)成分と下記(c-1)成分の質量比である(c-2)/(c-1)は0.125)、下記(D)成分を0.0033質量%となるように調製した。
【0191】
<前記(1)の水硬性組成物の調製で用いる任意成分>
・(B)ポリカルボン酸系分散剤;メタクリル酸/メトキシポリエチレングリコール(23)モノメタクリレート共重合体(カッコ内はエチレンオキシドの平均付加モル数)
・(C)(c-1)前記一般式(c)で表される化合物;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(前記一般式(c)中、R1cは平均炭素数18の炭化水素基、nは23、mは0、Mはナトリウムイオンを示す。)、(c-2);フェノキシエタノール、ダウ・ケミカル社製
・(D)消泡剤;シリコーン系消泡剤(アンチフォーム E-20、花王(株)製、グリフィン法によるHLBは、構造が不明なため計算不可)
【0192】
(2)動的表面張力測定
(2-1)界面活性剤の動的表面張力測定
0.3質量%濃度の界面活性剤水溶液を、KRUSS社製のバブルプレッシャー式動的表面張力計「製品名:BP100」を用いて、バブルプレッシャー法(20℃、キャピラリー径:0.2~0.3mm、測定時間:10ms~10000ms)により、界面活性剤の動的表面張力(σ3及びσ4)を測定した。
【0193】
(2-2)水硬性組成物用表面美観向上剤の動的表面張力測定
容量5Lのポリボトルに水道水4kg、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製、密度3.16g/cm)1kgを投入し、十分に振とうさせた後、ポリボトルを20℃環境下で24時間静置した。ポリボトルの上澄み液を5Cろ紙で濾過し、普通ポルトランドセメントのブリーディング水を得た。得られたブリーディング水に対して、表2記載の(A)界面活性剤を0.05質量%、下記(B)を0.82質量%、下記(C)を0.15質量%、下記(D)を0.0033質量%となるように調製した。得られた水溶液の動的表面張力を前記(2-1)記載の方法で測定した。結果を表2に示した。
【0194】
<前記(2-2)の水硬性組成物用表面美観向上剤に含まれる任意成分>
(B):ポリカルボン酸系分散剤;メタクリル酸/メトキシポリエチレングリコール(23)モノメタクリレート(重合比75/25モル比)共重合体(カッコ内はオキシエチレン基の平均付加モル数)
(C):(c-1)前記一般式(c)で表される化合物;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(前記一般式(c)中、R1cは平均炭素数18の炭化水素基、nは23、mは0、Mはナトリウムイオンを示す。)
(D):シリコーン系消泡剤(アンチフォーム E-20、花王(株)製)
【0195】
(3)水硬性組成物の硬化体の気泡痕量測定
(3-1)水硬性組成物の硬化体の作成
上記で得られた水硬性組成物を、0.1m×0.2m×0.5mの鋼製型枠に、0.2m×0.5mの面から無振動で充填して、20℃下で養生を行い、硬化させた。水硬性組成物の調製から24時間後に硬化した前記水硬性組成物の硬化体を型枠から脱型した。なお、型枠の内側には、油性ストレートタイプの離型剤を塗布した。
【0196】
(3-2)水硬性組成物の硬化体の気泡痕量測定
脱枠した前記硬化体の一面(0.2m×0.5mの面)の表面をプラスチック製のブラシで擦って薄皮を剥がし、その表面をスマートフォンで撮影した画像データを、ImageJを用いて2色化し(気泡痕がある箇所は黒、その他の箇所は白)、各色の比率から前記硬化体表面を占める気泡痕の面積割合を下記式により算出し、気泡痕量(面積%)とした。結果を表2に示した。
気泡痕量(面積%)=[気泡痕の面積(m)/流し込んだ側の0.2m×0.5mの面(m)]×100
【0197】
【表2】
【0198】
実施例1~3の結果から、本発明の水硬性組成物用表面美観向上剤を用いた水硬性組成物の硬化体は、その表面の気泡痕1%未満と、気泡痕が少ないことが確認できた。
図1
図2