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特開2024-11555鋳造用添加物、及び鋳造用添加物の供給装置
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  • 特開-鋳造用添加物、及び鋳造用添加物の供給装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011555
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】鋳造用添加物、及び鋳造用添加物の供給装置
(51)【国際特許分類】
   B22D 1/00 20060101AFI20240118BHJP
   B22D 11/108 20060101ALI20240118BHJP
   B22D 11/11 20060101ALI20240118BHJP
   C21C 7/04 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B22D1/00 E
B22D11/108 C
B22D11/108 E
B22D11/11 B
C21C7/04 J
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113640
(22)【出願日】2022-07-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】522285141
【氏名又は名称】松山 博英
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100152515
【弁理士】
【氏名又は名称】稲山 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】松山 博英
【テーマコード(参考)】
4E004
4K013
【Fターム(参考)】
4E004MC30
4E004NC01
4E004SB10
4K013CB01
4K013EA25
4K013EA28
(57)【要約】
【課題】取鍋の底部のノズルの近傍で溶湯から不純物を除去することが可能な鋳造用添加物、及び鋳造用添加物の供給装置を提供する。
【解決手段】鋳造用添加物1Aは、添加体10を少なくとも1つ有する。添加物10は、コア11と被覆12とを有する。コア11は、溶湯から不純物を除去する為の添加剤を含む。コア11は長尺状である。被覆12は、コア11を被覆する。被覆12は金属製である。鋳造用添加物1Aは、棒状を有する。鋳造用添加物1Aは、一端部18と他端部19とを結ぶ線分に沿った延伸方向Dに直線状に延びる。供給装置は、溶湯の湯面よりも上方に設けられ、鋳造用添加物1Aが滑り降りるスライド面を有するスライド機構を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶湯から不純物を除去する為の添加剤を含む長尺状のコアと、
前記コアを被覆する金属製の被覆と、
を備えた添加体を少なくとも1つ有する鋳造用添加物であって、
棒状を有し、一端部と他端部とを結ぶ線分に沿った延伸方向に直線状に延びることを特徴とする鋳造用添加物。
【請求項2】
1つの前記添加体を有し、
前記添加体は、
前記延伸方向に延びる円柱状を有し、
前記延伸方向の長さは、前記延伸方向と直交する平面で切断した場合の断面の直径の10倍以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の鋳造用添加物。
【請求項3】
1つの前記添加体を有し、
前記添加体の前記延伸方向の長さは、前記延伸方向と直交する平面で前記添加体を切断した場合の断面に外接する外接円の直径の10倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の鋳造用添加物。
【請求項4】
束ねられた複数の前記添加体を有することを特徴とする請求項1に記載の鋳造用添加物。
【請求項5】
前記延伸方向の長さは、前記延伸方向と直交する平面で前記複数の添加体を切断した場合の断面に外接する外接円の直径の10倍以上であることを特徴とする請求項4に記載の鋳造用添加物。
【請求項6】
前記延伸方向の単位長さ当たりの重さが、前記延伸方向の全域に亘って均一であることを特徴とする請求項1に記載の鋳造用添加物。
【請求項7】
前記延伸方向の単位長さ当たりの重さが、前記一端部から前記他端部に向けて次第に小さくなることを特徴とする請求項1に記載の鋳造用添加物。
【請求項8】
請求項1から7の何れかに記載の前記鋳造用添加物を供給する為の鋳造用添加物の供給装置であって、
前記溶湯の湯面よりも上方に設けられ、前記鋳造用添加物が滑り降りるスライド面を有するスライド機構を備えたことを特徴とする鋳造用添加物の供給装置。
【請求項9】
前記スライド機構は筒状を有することを特徴とする請求項8に記載の鋳造用添加物の供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋳造用添加物、及び鋳造用添加物の供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造の過程で溶湯中の不純物を除去する為に用いられる添加物として、コアードワイヤが知られている。又、特許文献1は、コアードワイヤを溶湯に供給する送線装置を開示する。送線装置は、コアードワイヤがコイル状に巻回されたコイル状物からコアードワイヤを引き出す。引き出されたコアードワイヤは、ガイドローラによってガイドされながら送り出され、取鍋内の溶湯に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-85699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
取鍋の底部に設けられたノズルに不純物が蓄積し、ノズルが閉塞するという問題がある。これに対し、ノズルの近傍で溶湯にコアードワイヤを反応させ、ノズルの近傍で溶湯から不純物を除去する方法が考えられる。
【0005】
しかし、上記の装置のように、コアードワイヤがコイル状に巻回されたコイル体からコアードワイヤを引き出して搬送し、溶湯に直接供給する方法では、取鍋のうちノズルの近傍までコアードワイヤを適切に送出することが難しい。従って、ノズルの近傍で溶湯から不純物を除去できないという問題点がある。
【0006】
本発明の目的は、取鍋の底部のノズルの近傍で溶湯から不純物を除去することが可能な鋳造用添加物、及び鋳造用添加物の供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る鋳造用添加物は、溶湯から不純物を除去する為の添加剤を含む長尺状のコアと、前記コアを被覆する金属製の被覆と、を備えた添加体を少なくとも1つ有する鋳造用添加物であって、棒状を有し、一端部と他端部とを結ぶ線分に沿った延伸方向に直線状に延びることを特徴とする。
【0008】
第1態様によれば、ユーザは、取鍋の底部のノズルの近傍まで鋳造用添加物を容易に移動させ、ノズルの近傍で溶湯から不純物を除去できる。
【0009】
第1態様において、1つの前記添加体を有し、前記添加体は、前記延伸方向に延びる円柱状を有し、前記延伸方向の長さは、前記延伸方向と直交する平面で切断した場合の断面の直径の10倍以上であってもよい。この場合、ユーザは、取鍋の底部のノズルの近傍まで鋳造用添加物を精度良く移動させることができる。
【0010】
第1態様において、1つの前記添加体を有し、前記添加体の前記延伸方向の長さは、前記延伸方向と直交する平面で前記添加体を切断した場合の断面に外接する外接円の直径の10倍以上であってもよい。この場合、ユーザは、取鍋の底部のノズルの近傍まで鋳造用添加物を精度良く移動させることができる。
【0011】
第1態様において、束ねられた複数の前記添加体を有してもよい。この場合、ユーザは、所望量の添加剤を、取鍋の底部のノズルの近傍で溶湯と反応させ、溶湯から不純物を除去できる。
【0012】
第1態様において、前記延伸方向の長さは、前記延伸方向と直交する平面で前記複数の添加体を切断した場合の断面に外接する外接円の直径の10倍以上であってもよい。この場合、ユーザは、取鍋の底部のノズルの近傍まで鋳造用添加物を精度良く移動させることができる。
【0013】
第1態様において、前記延伸方向の単位長さ当たりの重さが、前記延伸方向の全域に亘って均一であってもよい。この場合、ユーザは、取鍋のノズルに向けて鋳造用添加物を安定的に移動させることができる。
【0014】
第1態様において、前記延伸方向の単位長さ当たりの重さが、前記一端部から前記他端部に向けて次第に小さくなってもよい。この場合、ユーザは、取鍋のノズルに向けて鋳造用添加物を安定的に移動させることができる。
【0015】
本発明の第2態様に係る供給装置は、第1態様に係る前記鋳造用添加物を供給する為の鋳造用添加物の供給装置であって、前記溶湯の湯面よりも上方に設けられ、前記鋳造用添加物が滑り降りるスライド面を有するスライド機構を備えたことを特徴とする。
【0016】
第2態様によれば、供給装置は、スライド機構のスライド面に沿って鋳造用添加物を移動させることにより、取鍋の底部のノズルの近傍まで鋳造用添加物を移動させることができる。
【0017】
第2態様において、前記スライド機構は筒状を有してもよい。この場合、供給装置は、スライド機構のスライド面に沿って移動する鋳造用添加物の状態を安定化させることにより、取鍋の底部のノズルの近傍まで鋳造用添加物を精度良く移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】鋳造用添加物1Aの斜視図、及びI-I線を矢印方向から視た断面図である。
図2】実験結果を示す表である。
図3】鋳造用添加物1Bの斜視図、及びII-II線を矢印方向から視た断面図である。
図4】供給装置8の概要を示す図である。
図5】供給装置8により鋳造用添加物1が供給される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る鋳造用添加物1(1A、1B)及び供給装置8について、図面を参照して説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。図面に記載されている装置の構成は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0020】
鋳造の過程で取鍋中の溶湯から不純物を除去する為の方法として、溶湯に酸素を付加する方法がある。この方法では、酸素の付加により不純物の酸化物を溶湯中に生成させ、生成された不純物の酸化物を除去することにより、溶湯から不純物を除去する。しかしこの方法では、付加した酸素が溶湯中に残存する場合があるため、通常、この酸素を除去する為にアルミニウムが更に付加される。ここで、付加されたアルミニウムが溶湯に残存すると、取鍋の底部に設けられたノズルにアルミニウムが付着し、ノズルが閉塞する場合がある。従って、溶湯からアルミニウムを更に除去することが必要となる。
【0021】
溶湯からアルミニウムを除去する為の添加剤として、カルシウムシリコン(CaSi)、鉄カルシウム(FeCa)、純カルシウム(純Ca)等が知られている。ここで、取鍋の湯面に添加剤が直接投入される場合、湯面近傍の溶湯にのみ添加剤が反応してしまう。このためこの方法では、取鍋の底部に設けられたノズルの近傍の溶湯からアルミニウムを除去することが難しい。
【0022】
これに対し、本実施形態に係る鋳造用添加物1(1A、1B)は、ノズル近傍の溶湯に対して添加剤を直接反応させ、この部分で溶湯からアルミニウムを除去する。これにより、溶湯に残存するアルミニウムがノズルに付着してノズルが閉塞することを防止できる。又、供給装置8は、取鍋のノズルの近傍の溶湯に添加剤を直接反応させることが可能なように、鋳造用添加物1を溶湯に供給できる。
【0023】
<鋳造用添加物1A>
図1に示すように、鋳造用添加物1Aは、細長い棒状を有し、一端部18と他端部19との間に亘って延びる。一端部18と他端部19とを結ぶ線分に沿った方向を、「延伸方向D」という。
【0024】
鋳造用添加物1Aは、添加体10により構成される。添加体10は円柱状を有し、延伸方向Dに直線状に延びる。添加体10の延伸方向Dの長さを、L11と表記する。添加体10を延伸方向Dと直交する平面で切断した場合の断面の形状は、円形である。この断面の直径を、L12と表記する。添加体10の延伸方向の長さL11は、添加体10の断面の直径L12の10倍以上となる。
【0025】
以下、延伸方向Dと直交する平面で切断した場合の断面を、単に「断面」という。添加体10の延伸方向Dの長さL11を、「鋳造用添加物1Aの延伸方向Dの長さL11」という。添加体10の断面の直径L12を、「鋳造用添加物1Aの断面の直径L12」という。
【0026】
添加体10の重さは、延伸方向Dの全域に亘って均一である。従って、添加体10の延伸方向Dにおける単位長さ当たりの重さは、添加体10の延伸方向Dの全域に亘って均一となる。
【0027】
添加体10は、コア11及び被覆12を有する。コア11は長尺状を有し、延伸方向Dに延びる。コア11には、アルミニウムを除去する為の添加剤として、CaSi、FeCa、純Ca等が少なくとも含まれる。なお、コア11には、添加剤以外の材料(鉄、合金、安定剤等)が更に含まれていてもよい。被覆12は、コア11の側面に設けられ、コア11を被覆する。被覆12の材料の一例として、鉄が挙げられる。
【0028】
<試験結果>
鋳造用添加物1Aの延伸方向Dの長さL11と断面の直径L12との適切な関係を調べる為の試験を行った。CaSiを添加剤として含むコア11、及び、鉄製の被覆12を有する添加体10を含む鋳造用添加物1A(断面の直径L12:13mm)が使用された。そして、延伸方向Dの長さL11が10mm、40mm、70mm、100mm、130mm、160mm、190mm、220mm、250mm、500mmとなるように切断された合計10個のサンプルが用意された。
【0029】
各サンプルは、地表に対して1m上方の高さに配置された。このとき、鋳造用添加物1Aは、延伸方向Dが垂直方向を向き、一端部18が下方に配置され、他端部19が上方に配置された状態とされた。そして、この位置から各サンプルを自然落下させる試験が、合計10回ずつ行われた。そして、落下時における鋳造用添加物1Aの状態が評価された。試験結果を図2に示す。
【0030】
図2に示すように、延伸方向Dの長さL11を10mmとしたサンプルの場合、断面の直径L12(13mm)よりも延伸方向Dの長さL11の方が小さくなり、落下時における鋳造用添加物1Aの状態を評価することができなかった。又、延伸方向Dの長さL11を40mm、70mm、100mmとしたサンプルの場合、延伸方向Dが垂直方向に対して傾斜した状態で落下し、地表に到達する場合があった。これに対し、延伸方向Dの長さL11を130mm、160mm、190mm、220mm、250mm、500mmとしたサンプルの場合、10回の試験の全てにおいて、延伸方向Dが垂直方向に延びた状態で真っ直ぐ下方に落下し、地表に到達した。
【0031】
以上の結果から、鋳造用添加物1Aでは、延伸方向Dの長さL11を断面の直径L12の10倍以上(130mm以上)とすることによって、鋳造用添加物1Aを安定的に落下させることができることが明らかになった。
【0032】
<鋳造用添加物1B>
図3に示すように、鋳造用添加物1Bは、複数の添加体14を有する。複数の添加体14は、束ねられて纏められ、それぞれが互いに接触した状態で保持されている。各添加体14は、コア15及び被覆16を有する。コア15及び被覆16は、鋳造用添加物1Aのコア11及び被覆12(図1参照)を一回り小さくした形状を有する。コア15及び被覆16の材料は、鋳造用添加物1Aのコア11及び被覆12と同一である。鋳造用添加物1Bの延伸方向Dの長さを、L21と表記する。
【0033】
束ねられた複数の添加体14の断面に外接する円を、外接円17と定義する。外接円17は円形である。外接円17の直径を、L22と表記する。鋳造用添加物1Bの延伸方向Dの長さL21は、直径L22の10倍以上となる。
【0034】
各添加体14の重さは、延伸方向Dの全域に亘って均一である。従って、複数の添加体14が束ねられた鋳造用添加物1Bの延伸方向Dにおける単位長さ当たりの重さは、鋳造用添加物1Bの延伸方向Dの全域に亘って均一である。
【0035】
以下、鋳造用添加物1A、1Bを区別しない場合、「鋳造用添加物1」と総称する。
【0036】
<供給装置8>
図4は、鋳造用添加物1を取鍋9の溶湯90に供給する為の供給装置8を示す。供給装置8は、スライド機構81及び支持部82を有する。
【0037】
スライド機構81は、取鍋9に充填された溶湯90の湯面9Uに沿って延びる仮想平面E1よりも上方に設けられる。スライド機構81は、断面がコの字型を有する。スライド機構81の長さは、鋳造用添加物1の長さL11(図1参照)、L21(図3参照)よりも長い。スライド機構81は、溶湯90の湯面9Uに対して傾斜した方向に沿って延びる。スライド機構81には、下側に向けて凹んだ溝部8Dが形成される。溝部8Dは、スライド機構81の下端部81Bと上端部81Uとの間に亘って延びる。溝部8Dの底面を、「スライド面8S」という。支持部82は、スライド機構81を揺動可能に支持する。支持部82は、溶湯90の湯面9Uに対するスライド機構81の傾斜角度を調節可能である。
【0038】
<使用例>
図5を参照し、供給装置8を用いて鋳造用添加物1が溶湯90に供給される様子について説明する。はじめに、図5(A)に示すように、ユーザは、スライド機構81の溝部8Dのスライド面8Sに沿って延びる方向の延長線E2上の近傍に、取鍋9の底部のノズル9Hが配置されるよう、支持部82に対してスライド機構81を揺動させる。次にユーザは、スライド機構81の溝部8Dに鋳造用添加物1を配置し、下方に移動しないよう保持する。鋳造用添加物1の一端部18は、スライド機構81の下端部81Bよりも上方、且つ、スライド機構81の上端部81Uよりも下方に配置される。鋳造用添加物1の他端部19は、スライド機構81の上端部81Uよりも上方に配置される。
【0039】
次にユーザは、鋳造用添加物1を保持した状態を解除する。これにより、図5(B)に示すように、鋳造用添加物1は、溝部8Dのスライド面8Sに沿って滑り落ちる。鋳造用添加物1は、溝部8Dに沿って延びる方向の延長線E2に沿って下方に移動する。これにより、鋳造用添加物1の一端部18は、取鍋9の溶湯90内に進入する。
【0040】
更に鋳造用添加物1が下方に移動することにより、図5(C)に示すように、鋳造用添加物1の一端部18は、溶湯90のうちノズル9Hの近傍部分に到達する。又、鋳造用添加物1の被覆12(図1参照)は、溶湯90の熱により溶融し、コア11(図1参照)、15(図3参照)が露出する。露出したコア11、15に含まれる添加剤は、溶湯90と反応する。これにより、ノズル9Hの近傍の溶湯90からアルミニウムが除去される。
【0041】
図5(D)に示すように、鋳造用添加物1のコア11、15に含まれる添加剤と溶湯90との反応が進行することにより、鋳造用添加物1の長さは次第に短くなる。最終的に、鋳造用添加物1は、被覆12が全て溶融し、コア11、15の添加剤は全て溶湯90と反応する。以上により、溶湯90内での鋳造用添加物1の反応は終了する。なお、ユーザは、必要に応じ、新たな鋳造用添加物1をスライド機構81に配置し(図5(A)参照)、図5(B)~図5(D)の手順を繰り返す。
【0042】
<本実施形態の作用、効果>
鋳造用添加物1Aは、1つの添加体10により構成される。添加体10は、コア11及び被覆12を有する。又、鋳造用添加物1Bは、複数の添加体14により構成される。各添加体14は、コア15及び被覆16を有する。コア11、15は、溶湯90から不純物(アルミニウム)を除去する為の添加剤を含む。被覆12、16は、コア11、15を被覆する。鋳造用添加物1は棒状を有し、延伸方向Dに直線状に延びる。従って、鋳造用添加物1を使用するユーザは、取鍋9の底部のノズル9Hの近傍まで鋳造用添加物1を容易に移動させることができる。このためユーザは、ノズル9Hの近傍で、コア11、15の添加剤により溶湯90からアルミニウムを除去できる。従ってユーザは、鋳造用添加物1を使用することにより、ノズル9Hに不純物が付着してノズル9Hが閉塞する不具合の発生を抑制できる。
【0043】
更に、鋳造用添加物1Bは、複数の添加体14が束ねられた構造を有している。このため、鋳造用添加物1Bを使用するユーザは、取鍋9の底部のノズル9Hの近傍まで移動させる添加剤の量を、束ねる添加体14の数を調整することにより制御できる。このためユーザは、ノズル9Hの近傍で溶湯90から除去するアルミニウムの量に応じ、添加剤の量を調節できる。
【0044】
鋳造用添加物1Aの延伸方向Dの長さL11は、断面の直径L12の10倍以上である。又、鋳造用添加物1Bの延伸方向の長さL21は、断面の外接円17の直径L22の10倍以上である。この場合、ユーザは、取鍋9の底部のノズル9Hに向けて移動する鋳造用添加物1の状態を安定化させることができる。従ってユーザは、ノズル9Hの近傍に鋳造用添加物1を精度良く移動させることができる。
【0045】
鋳造用添加物1の延伸方向Dにおける単位長さ当たりの重さは、延伸方向Dの全域に亘って均一である。このためユーザは、取鍋9のノズル9Hに向けて移動する鋳造用添加物1の状態を安定化させることができる。従ってユーザは、ノズル9Hの近傍に鋳造用添加物1を精度良く移動させることができる。
【0046】
供給装置8は、溶湯90の湯面9Uに沿って延びる仮想平面E1よりも上方に設けられたスライド機構81を有する。スライド機構81は、鋳造用添加物1が滑り降りるスライド面8Sを有する。供給装置8、スライド面8Sに沿って鋳造用添加物1を移動させることにより、取鍋9の底部のノズル9Hの近傍まで鋳造用添加物1を移動させることができる。
【0047】
<変形例>
本発明は上記実施形態に限定されず、種々の変更が可能である。鋳造用添加物1のコア11、15に含まれる添加剤により溶湯から除去される不純物は、アルミニウムに限定されず、他の物質でもよい。コア11、15に含まれる添加剤は、除去対象となる物質に応じて適宜変更されてもよい。被覆12、16の材料は、溶湯の材料、温度等に応じて適宜変更されてもよい。
【0048】
添加体10、14は円柱状に限定されず、他の形状(例えば角柱状)でもよい。添加体10、14の断面は、多角形であってもよい。例えば、添加体10の断面が多角形である場合、この断面に外接する円が外接円として定義されてもよい。このとき、鋳造用添加物1Aの延伸方向Dの長さは、外接円の直径の10倍以上であってもよい。

又、添加体10、14の断面の直径は、延伸方向Dに亘って一律でなくてもよい。例えば添加体10、14の断面の直径は、一端部18から他端部19に向けて次第に小さくなってもよい。被覆12、16は、コア11、15の側面にのみ設けられる場合に限定されない。例えば、被覆12、16の一部はコア11、15の内部に入り込んでいてもよい。又、添加体10、14の延伸方向Dの両端部も被覆12、16により覆われていてもよい。
【0049】
鋳造用添加物1の延伸方向Dの単位長さ当たりの重さは、一端部18から他端部19に向けて次第に小さくなってもよい。この場合、鋳造用添加物1の延伸方向Dの単位長さ当たりの重さは、一端部18で最も重くなる。なお、鋳造用添加物1は、一端部18が下方に位置し、他端部19が上方に位置する状態で溶湯90に供給される。つまり、鋳造用添加物1は、延伸方向Dの単位長さ当たりの重さが最も重い一端部18を下方に向けた状態で、溶湯90内に供給される。この場合、取鍋9のノズル9Hの近傍に向けて移動する鋳造用添加物1の状態を安定化できる。従ってユーザは、取鍋9のノズル9Hに向けて鋳造用添加物1を安定的に移動させることができる。
【0050】
供給装置8のスライド機構81は、上下方向に貫通する貫通孔を有する筒状であってもよい。この場合、スライド機構81の貫通孔の内面は、鋳造用添加物1が滑り降りるときに接触するスライド面8Sを形成する。この場合、供給装置8は、スライド機構81のスライド面8Sに沿って移動する鋳造用添加物1の状態を安定化させることにより、取鍋9のノズル9Hの近傍まで鋳造用添加物1を精度良く移動させることができる。
【0051】
更に、供給装置8のスライド機構81を筒状とした場合、スライド機構81は垂直方向に延びていてもよい。この場合、供給装置8は、取鍋9の真上から真下に向けて鋳造用添加物1を移動させることにより、溶湯90に鋳造用添加物1を供給してもよい。
【符号の説明】
【0052】
鋳造用添加物1は、ユーザが取鍋9の溶湯90に直接投入することにより供給されてもよい。この場合、供給装置8は用いられなくてもよい。
【0053】
1、1A、1B :鋳造用添加物
8 :供給装置
10、14 :添加体
11、15 :コア
12、16 :被覆
81 :スライド機構
D :延伸方向
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-04-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶湯から不純物を除去する為の添加剤を含む長尺状のコアと、
前記コアを被覆する金属製の被覆と、
を備えた添加体を少なくとも1つ有する鋳造用添加物であって、
棒状を有し、一端部と他端部とを結ぶ線分に沿った延伸方向に直線状に延び
前記延伸方向の単位長さ当たりの重さが、前記一端部から前記他端部に向けて次第に小さくなることを特徴とする鋳造用添加物。
【請求項2】
1つの前記添加体を有し、
前記添加体は、
前記延伸方向に延びる円柱状を有し、
前記延伸方向の長さは、前記延伸方向と直交する平面で切断した場合の断面の直径の10倍以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の鋳造用添加物。
【請求項3】
1つの前記添加体を有し、
前記添加体の前記延伸方向の長さは、前記延伸方向と直交する平面で前記添加体を切断した場合の断面に外接する外接円の直径の10倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の鋳造用添加物。
【請求項4】
束ねられた複数の前記添加体を有することを特徴とする請求項1に記載の鋳造用添加物。
【請求項5】
前記延伸方向の長さは、前記延伸方向と直交する平面で前記複数の添加体を切断した場合の断面に外接する外接円の直径の10倍以上であることを特徴とする請求項4に記載の鋳造用添加物。