(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011556
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】被せ蓋付き角形缶
(51)【国際特許分類】
B65D 21/032 20060101AFI20240118BHJP
B65D 1/18 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B65D21/032
B65D1/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113641
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】390031369
【氏名又は名称】本州製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097205
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】梶原 健司
(72)【発明者】
【氏名】石川 准也
(72)【発明者】
【氏名】森下 直
【テーマコード(参考)】
3E006
3E033
【Fターム(参考)】
3E006AA02
3E006BA01
3E006CA05
3E006DA03
3E006DB05
3E033AA06
3E033BA07
3E033BA13
3E033DD05
3E033EA06
3E033FA01
3E033FA02
3E033GA03
(57)【要約】
【課題】左右方向の配列を隙間なく行え、上下方向の積み重ねを容易かつ安定的に行うことができる被せ蓋付き角形缶の提供。
【解決手段】略四角形状の筒体の一端を開口部13とし他端を閉塞する底部15を備えた容器本体部17と、開口部13を覆うように嵌め込まれる被せ蓋18と、を有する被せ蓋付き角形缶11であって、容器本体部17は、前記筒体の他端の側と底部15との接合により底部15から突出した環状の脚部25が形成され、被せ蓋18は、開口部13を覆う蓋天面部27と、蓋天面部27の外周端から垂下する蓋側面部28と、を有し、蓋天面部27には、蓋天面部27の表面の外周側に設けられた所定幅の平坦な外周帯30と、外周帯30の各辺の内周に沿って設けられた外周帯30より高く底部15より低い高さの凸部31と、が形成される構成となる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略四角形状の筒体の一端を開口部とし他端を閉塞する底部を備えた容器本体部と、前記開口部を覆うように嵌め込まれる被せ蓋と、を有する被せ蓋付き角形缶であって、
前記容器本体部は、前記筒体の他端の側と前記底部との接合により前記底部から突出した環状の脚部が形成され、
前記被せ蓋は、前記開口部を覆う蓋天面部と、前記蓋天面部の外周端から垂下する蓋側面部と、を有し、
前記蓋天面部には、前記蓋天面部の表面の外周側に設けられた所定幅の平坦な外周帯と、前記外周帯の内周の各辺に沿って設けられた前記外周帯より高く前記底部より低い高さの凸部と、が形成される被せ蓋付き角形缶。
【請求項2】
前記脚部の向かい合う脚部間の内法がいずれも前記脚部間に位置する凸部の外法より大きく、一方の脚部の内側から向かい合う他方の脚部の外側までの距離が、前記一方の脚部が当接する凸部の外端から向かい合う前記他方の脚部が載置する外周帯の外端までの距離より小さくなるように前記凸部が形成される請求項1に記載の被せ蓋付き角形缶。
【請求項3】
前記凸部は、連続した所定幅の突条部として形成される請求項1又は2に記載の被せ蓋付き角形缶。
【請求項4】
前記凸部は、所定幅の突条部片として形成される請求項1又は2に記載の被せ蓋付き角形缶。
【請求項5】
前記凸部は、前記外周帯の内側全体に形成される請求項1又は2に記載の被せ蓋付き角形缶。
【請求項6】
前記凸部は、前記被せ蓋と一体に形成される請求項1又は2に記載の被せ蓋付き角形缶。
【請求項7】
前記凸部は、前記被せ蓋に貼設されてなる請求項1又は2に記載の被せ蓋付き角形缶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略四角形状の筒体の一端の側を開口部とし他端の側を閉塞する底部を備えた容器本体部と、この開口部を覆うように嵌め込まれる被せ蓋と、を有する被せ蓋付き角形缶に関する。
【背景技術】
【0002】
米菓、ビスケット等の菓子、ペースト状の食品材料等を保管するために、被せ蓋付き角形缶(以下適宜「蓋付き角形缶」と略す。)が使用されている。この被せ蓋付き角形缶は、例えば容量が18L又は9Lの容器で、4隅をR処理された略四角形状の筒体に底部を設け、上部を開口部とする容器本体と、該容器本体の上部開口部に嵌め込んで容器本体内部を封止する着脱可能な被せ蓋と、を備えたものである。菓子類等を収容した、多数の蓋付き角形缶の保管に際しては、前後左右方向に密接させる平面的な配置をすると共に、上下方向に数段積み重ねた配置がなされている。
【0003】
上下方向の積み重ねに際しては、下段に位置する蓋付き角形缶の被せ蓋の上に、上段に位置する蓋付き角形缶の底部を載置しているが、下段の蓋付き角形缶に対して上段の蓋付き角形缶の位置が横方向へ移動(ズレ)すると安定性を欠き、特に3段以上の積み重ねをする際は荷崩れのおそれが生じる。このような蓋付き角形缶の上下方向の積み重ねによる荷崩れを防止するために、蓋板の外周囲に突起列を設け、上段として載置する蓋付き角形缶の底部外周を突起列の内側周面部に当接させる蓋付き角形缶(テーブルパン)が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の蓋付き角形缶(テーブルパン)によれば、蓋板の上に載置された蓋付き角形缶の外周を蓋板の外周に設けた突起列の内側に当接させるので、突起列が外壁の役割を果たすので安定した積み重ねが可能と考えられが、特許文献1に記載の蓋付き角形缶は胴部が底部側に向けて縮径する形状である。そのため、蓋板の外周に形成された突起列に当接させて載置することができるが、胴部の径が一定の角形缶では蓋板の外周に形成された突起列に当接させた載置は寸法的に難しい点がある。蓋板の横方向サイズを拡大して上記突起列を形成することも可能であるが、隣接する蓋付き角形缶の被せ蓋同士が干渉を引き起こして無駄な隙間を生じ、配列に支障が発生する等の問題も生じる。
【0006】
本発明は、左右方向の配列を隙間なく行え、上下方向の積み重ねを容易かつ安定的に行うことができる被せ蓋付き角形缶の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る被せ蓋付き角形缶は、略四角形状の筒体の一端を開口部とし他端を閉塞する底部を備えた容器本体部と、前記開口部を覆うように嵌め込まれる被せ蓋と、を有する被せ蓋付き角形缶であって、前記容器本体部は、前記筒体の他端の側と前記底部との接合により前記底部から突出した環状の脚部が形成され、前記被せ蓋は、前記開口部を覆う蓋天面部と、前記蓋天面部の外周端から垂下する蓋側面部と、を有し、前記蓋天面部には、前記蓋天面部の表面の外周側に設けられた所定幅の平坦な外周帯と、前記外周帯の内周の各辺に沿って設けられた前記外周帯より高く前記底部より低い高さの凸部と、が形成される構成となる。
【0008】
このような構成によれば、被せ蓋付き角形缶の上に上段となる同種の被せ蓋付き角形缶を積み重ねると、上段の被せ蓋付き角形缶の脚部が下段の被せ蓋付き角形缶の被せ蓋の外周帯に載置されるので、蓋付き缶が横方向の移動でズレを生じた場合でも、脚部のズレを凸部により抑えられるので、安定した積み重ねが可能となる。凸部は外周帯より高く底部より低い高さであるから、上段の被せ蓋付き角形缶の底部とは所定の隙間を有するので、上段に設けた被せ蓋付き角形缶が前後左右の移動をした場合でも脚部が凸部に当接され、移動を抑えることができる。凸部は外周帯の内周の各辺に沿って設けられていればよく、連続的なもの、不連続なものでもよい。また、被せ蓋付き角形缶は、角部を隅丸部とする隅丸六面体で隅丸立方体、隅丸直方体のいずれも含むものである。
【0009】
本発明に係る被せ蓋付き角形缶において、前記脚部の向かい合う脚部間の内法がいずれも前記脚部間に位置する凸部の外法より大きく、一方の脚部の内側から向かい合う他方の脚部の外側までの距離が、前記一方の脚部が当接する凸部の外端から向かい合う前記他方の脚部が載置する外周帯の外端までの距離より小さくなるように前記凸部が形成される構成とすることができる。
【0010】
このような構成によれば、前記脚部の向かい合う脚部間の内法が、いずれも前記脚部間に位置する凸部の外法より大きいので、向かい合う脚部の間に凸部が収まり、脚部は平坦な外周帯に載置される。更に、一方の脚部の内側から向かい合う他方の脚部の外側までの距離が、前記一方の脚部が当接する凸部の外端から向かい合う前記他方の脚部が載置する外周帯の外端までの距離より小さくなるように前記凸部が形成されるので、上段の被せ蓋付き角形缶が横方向にずれた場合、一対の脚部のうち一方の脚部の内側が凸部に当接したときに、他方の脚部の外側が外周帯の外端より内側に位置するので、上段の被せ蓋付き角形缶の傾きの発生を抑えることができる。
【0011】
本発明に係る被せ蓋付き角形缶において、前記凸部は、連続した所定幅の凸条部として形成される構成とすることができる。
【0012】
このような構成によれば、連続した所定幅の凸条部として形成されるので、上段の被せ蓋付き角形缶の前後左右の横方向のズレを抑制することができる。連続した所定幅の凸条部、すなわち環状の凸条部である。凸条部は、矩形型、半円の山形のいずれでもよい。
【0013】
本発明に係る被せ蓋付き角形缶において、前記凸部は、所定幅の突条部片として形成される構成とすることができる。
【0014】
このような構成によれば、前記凸部が、環状の凸条部の代わりに、前記外周帯の各辺の内周に沿って所定幅の突条部片として形成されることで、前後左右の横方向のズレを抑制することができる。また、外周帯の内周の四隅毎にL字形で所定幅の凸条部片として形成されてもよい。
【0015】
本発明に係る被せ蓋付き角形缶において、前記凸部は、前記外周帯の内側全体に形成される構成とすることができる。
【0016】
このような構成によれば、外周帯の内側全体を凸部とすることで、上段の被せ蓋付き角形缶の前後左右の横方向のズレを抑制することができる。
【0017】
本発明に係る被せ蓋付き角形缶において、前記凸部は、前記被せ蓋と一体に形成される構成とすることができる。
【0018】
このような構成によれば、被せ蓋の成形の際に凸部も一体に成形することができる。例えば、鋼板を材質とする被せ蓋の成形の際に、凸部も一体にプレス成形することができる。合成樹脂等で被せ蓋を成形する場合も、射出成形等により凸部を一体に成形することができる。
【0019】
本発明に係る被せ蓋付き角形缶において、前記凸部は、前記被せ蓋に貼設されてなる構成とすることができる。
【0020】
このような構成によれば、合成樹脂等で形成された凸部を接着剤で被せ蓋に貼り付けることで容易に凸部を形成することができる。また、金属で凸部を形成した場合は、留め具、スポット溶接等で被せ蓋に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る被せ蓋付き角形缶によれば、被せ蓋付き角形缶の上に被せ蓋付き角形缶を積み重ねると、上段の被せ蓋付き角形缶の脚部の前後左右への横方向の移動(ズレ)を下段の被せ蓋付き角形缶の被せ蓋に形成された凸部により抑えられるので、安定した積み重ねが可能となる
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る被せ蓋付き角形缶を上下2段に積み重ねた斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す被せ蓋付き角形缶から被せ蓋を取り外した状態の斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す下段の被せ蓋付き角形缶の被せ蓋に載置された、上段の被せ蓋付き角形缶の脚部との部分拡大斜視図である。
【
図5A】
図5A~5Cは、2段積みされた蓋付き角形缶の移動(ズレ)と傾きの関係を説明するための図で、
図5Aは、下段の被せ蓋付き角形缶の被せ蓋と、その上に載置された上段の被せ蓋付き角形缶の脚部との模式図(その1)である。
【
図5B】
図5Bは、
図5Aの上段の被せ蓋付き角形缶が横方向に移動したときの模式図(その2)である。
【
図5C】
図5Cは、
図5Bの上段の被せ蓋付き角形缶が更に奥行方向に移動したときの模式図(その3)である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の第1実施形態における下段の被せ蓋付き角形缶の被せ蓋と、その上に載置された上段の被せ蓋付き角形缶の脚部との位置関係を示す断面模式図(その1)である。
【
図6B】
図6Bは、本発明の第1実施形態における下段の被せ蓋付き角形缶の被せ蓋と、その上に載置された上段の被せ蓋付き角形缶の脚部との位置関係を示す断面模式図(その2)である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の第2実施形態に係る被せ蓋付き角形缶の被せ蓋の平面図である。
【
図8A】
図8Aは、本発明の第2実施形態の変形例に係る被せ蓋付き角形缶の被せ蓋の平面図である。
【
図9A】
図9Aは、本発明の第3実施形態に係る被せ蓋付き角形缶の被せ蓋の平面図である。
【
図10A】
図10Aは、本発明の第4実施形態に係る被せ蓋付き角形缶の被せ蓋の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る被せ蓋付き角形缶を上下2段に積み重ねた斜視図、
図2は
図1に示す被せ蓋付き角形缶から被せ蓋を取り外した状態の斜視図、
図3Aは
図1に示す被せ蓋付き角形缶の被せ蓋の平面図、
図3Bは
図3AのX-X線断面図、
図4は
図1に示す下段の被せ蓋付き角形缶の被せ蓋に載置された上段の被せ蓋付き角形缶の脚部との部分拡大斜視図、
図5A~5Cは2段積みされた蓋付き角形缶の移動(ズレ)と傾きの関係を説明するための図で、
図5Aは下段の被せ蓋付き角形缶の被せ蓋と、その上に載置された上段の被せ蓋付き角形缶の脚部との模式図(その1)、
図5Bは
図5Aの上段の被せ蓋付き角形缶が横方向に移動したときの模式図(その2)、
図5Cは
図5Bの上段の被せ蓋付き角形缶が更に奥行方向に移動したときの模式図(その3)、
図6Aは本発明の第1実施形態における下段の被せ蓋付き角形缶の被せ蓋と、その上に載置された上段の被せ蓋付き角形缶の脚部との位置関係を示す断面模式図(その1)、
図6Bは本発明の第1実施形態における下段の被せ蓋付き角形缶の被せ蓋と、その上に載置された上段の被せ蓋付き角形缶の脚部との位置関係を示す断面模式図(その2)である。
【0025】
図1、
図2において、本発明の第1実施形態に係る被せ蓋付き角形缶11(11a、11b)(適宜、「蓋付き角形缶」と略す。)は、9リットル缶(半缶、天切缶)であり、所定厚さ(例えば、0.32mm、0.27mm)の鋼板で形成されている。なお、本実施形態は9リットル缶(半缶)であるが、18リットル缶(一斗缶)もサイズの相違はあるが同様の構成である。蓋付き角形缶11(11a、11b)は、略四角柱形状の筒体となる胴部12(12a、12b)の両端の一方である上端を開口部13(13a、13b)、他方の下端を端板との接合により閉塞して底部15(15a、15b)を形成した容器本体部17(17a、17b)と、開口部13(13a、13b)を覆うように嵌め込まれる被せ蓋18(18a、18b)と、を有する。胴部12(12a、12b)の各表面には、下横桟補強ビード22(22a、22b)及び枠型補強ビード23(23a、23b)がプレス加工により形成されている。
【0026】
端板による底部15(15a、15b)は、その周囲が胴部12(12a、12b)の端部との巻締による接合の際に、折り曲げにより形成された環状の脚部25(25a、25b)に囲まれている(
図4参照)。脚部25(25a、25b)は、胴部12(12a、12b)の軸方向に向けて底部15(15a、15b)から突き出しており、脚部25は底部15に対して略垂直方向に突き出した状態である。脚部25(25a、25b)の先端側は、底部15の外周端部と胴部12の先端部との接合部である巻締部26が形成されている。
【0027】
図1~
図3Bに示すように、被せ蓋18(18a、18b)は、容器本体部17(17a、17b)の開口部13(13a、13b)蓋天面部27(27a、27b)と、蓋天面部27の外周囲から垂下する蓋側面部28(28a、28b)と、を有する。蓋天面部27(27a、27b)は、外周側に設けられた所定幅で平坦な外周帯30(30a、30b)と、外周帯30(30a、30b)の各辺の内周に沿って設けられた凸部31(31a、31b)と、を有する。
図3A、
図3Bに示すように、凸部31は、蓋天面部27の表面に形成された断面が半円弧の突出部で、鋼板製の被せ蓋18をプレス成形する際に同時に形成される。凸条部である凸部31は、
図3Aの平面視で全体が方形状の枠形を成している。
【0028】
被せ蓋18の蓋天面部27は、開口部13と略相似形であり、蓋天面部27の外周側に設けられた所定幅で平坦な外周帯30を有する。そして
図4に示すように、凸部31aは外周帯30よりもたかく、底部15bの高さより低く形成されているので、蓋付き角形缶11a、11bを2段に積み重ねた場合、下段の蓋付き角形缶11aの被せ蓋18aの外周帯30aの上に、上段の蓋付き角形缶11bの脚部25bが載置される。上段の蓋付き角形缶11bが矢印32方向に移動する(横ズレ)ときは、蓋付き角形缶11bの脚部25bが蓋付き角形缶11aの被せ蓋18aの凸部31aに当接して移動が抑えられることになる。脚部25bは蓋付き角形缶11bの底部15bの周囲に底部15bから突出するように形成され、凸部31aも外周帯30aの各辺の内周に沿って形成されているので、矢印32方向以外の横方向の移動に対しても、脚部30aが凸部31に当接するので移動が抑えられることになる。
【0029】
次に、
図5A~
図5Bを参照して、上下2段に積み重ねた蓋付き角形缶11a、11bにおいて、上段の蓋付き角形缶11bの横ズレと傾きの関係を説明する。
図5Aに示すように、下段の蓋付き角形缶11aの被せ蓋18aの外周帯30aの上に、上段の蓋付き角形缶11bの脚部25bが載置されている(
図2参照)。上段の蓋付き角形缶11bは、横ズレが発生する前の状態であり、被せ蓋18aに形成された凸部31aと脚部25bは所定の隙間を設けた状態となっている。
【0030】
図5Bに示すように、上段の蓋付き角形缶11bが衝撃等の力により矢印33方向の移動(横ズレ)が発生すると、外周帯30aの幅の長さ、凸部31aの外法の長さ、及び脚部25b間の長さの関係によっては、脚部25bの一部が外周帯30aの外側に突き出る場合がある。このような場合には、上段の蓋付き角形缶11bは不安定な状態となるものの、平面視で4辺からなる脚部25bのうち、1辺のみが外周帯30aの外側に突き出るが、残りの3辺が外周帯30aに載置されているので、上段の蓋付き角形缶11bは傾きを生じることがない。
【0031】
次に
図5Cに示すように、上段の蓋付き角形缶11bが、
図5Bの状態から更に矢印34方向に移動(横ズレ)すると、蓋付き角形缶11bの脚部25bの2辺が外周帯30aの外側に突き出ることになる。この場合には、4辺ある脚部25bのうち2辺が突き出ることになり、安定を欠いた上段の蓋付き角形缶11bは突き出た脚部25bの側に沈むように傾きが発生することになる。上記より、4辺ある脚部25bのうち外周帯30aから突き出た脚部25bが1辺のみの場合には傾きが生じないが、2辺の場合には傾きが生じることが分かる。これより、上下に積み重ねた蓋付き角形缶11の上段に位置する蓋付き角形缶11bの脚部25bにおいて、4辺ある脚部25bのうち外周帯30aから突き出た脚部25bについては1辺を限度とするように、脚部25b、外周帯30a及び凸部31aの長さ関係を定めることができる。ただし、4辺すべてが外周帯30aから突き出ることがないように定めることもできる。本実施形態のおいては、4辺すべてが外周帯30aから突き出ることがないように、上記長さ関係を定めるものとする。以下に具体的な長さ関係を説明する。
【0032】
図6Aに示すように、上段の蓋付き角形缶11bの脚部25bが、下段の蓋付き角形缶11aの蓋部18aの外周帯30aに載置されている。このとき、凸部31aの高さChに対して底部15bの高さBhとは、Bh>Chの不等式が成立する必要がある。すなわち、上段の蓋付き缶11bが安定して蓋部18aの上に載置されるには、凸部31aと底部15bとが接触することがないように、凸部31aについてはその高さが底部15bの高さより低く形成されている必要がある。9リットル缶(半缶)についての本実施形態においては、凸部31aの高さChは2.5mm、底部の高さBhは3.3mmである。
【0033】
更に、脚部25bの間に凸部31aが位置し、脚部25bが被せ蓋18aの外周帯30a(幅W)に載置されるために、向かい合う脚部25bの間の内法Laが、脚部25bの間に位置する凸部31aの外法L1より大きい必要がある。すなわち、La>L1の不等式が成立する必要がある。LaがL1より小さいと、脚部25bが凸部31aに乗り上げて、蓋付き角形缶11a、11bの安定した積み上げができないからである。本実施形態においては、外周帯30aの幅の長さWは2.1mm、向かい合う脚部25bの内法(長さ)Laは234.2mm、脚部25bの間に位置する凸部31aの外法(長さ)L1は233.8mmである。
【0034】
次に、脚部25bが外周帯30aの外側に突き出るのを防止するための、脚部25b、外周帯30a及び凸部31aの長さ関係を説明する。
図6Bに示すように、上段の蓋付き角形缶11bが矢印35方向に移動(横ズレ)したが、一方の脚部25b1の内側が凸部31aに当接してそれ以上の移動が抑えられた状態となっている。このとき、向かい合う他方の脚部25b2が載置する外周帯30aの外側に突き出るのを防止するためには、脚部25b2が外周帯30aの外端より内側に位置する必要がある。すなわち、一方の脚部25b1の内側から向かい合う他方の脚部25b2の外側までの距離Lbが、一方の脚部25b1が当接する凸部31aの外端から向かい合う他方の脚部25b2が載置される外周帯30aの外端までの距離L2より小さくなる、Lb<L2の不等式が成立する必要がある。上記不等式の範囲であれば、上段の蓋付き角形缶11bが横方向に移動(横ズレ)した場合でも、一方の脚部25b1の移動が凸部31により抑えられ、他方の脚部25b2は外周帯30aに載置されるので、上段の蓋付き角形缶11bの傾きを防止することができる。本実施形態においては、距離Lbは235.85mm、距離L2は235.9mmである。
【0035】
上記した3つの不等式、(1)Bh>Ch、(2)La>L1、(3)Lb<L2のうち、(1)については何れの底部15b、凸部31aとの間においても高さの大小関係が成り立つ必要があり、(2)については向かい合う脚部間の内法がいずれも前記脚部間に位置する凸部の外法より大きいという大小関係が成り立つ必要がある。(3)については少なくとも向かい合う一対の脚部について、凸部及び外周帯との大小関係を必要とするものである。(3)は
図5Bで説明したように、4辺のうち1辺が外周帯より外側へ突き出ていても上段の蓋付き角形缶11bの傾きは発生しないからである。しかしながら、本実施形態においては、向かい合う一対の脚部の他に、これと交差する他の一対の脚部についても(3)の大小関係が成り立つようにしている。これにより、本実施形態では、上段の蓋付き角形缶11bが横方向に移動(横ズレ)しても、いずれの脚部25bも外周帯30aから外側へ突き出ることが無い。
【0036】
(第2実施形態)
次に
図7A、
図7Bを参照して本発明の第2実施形態に係る被せ蓋付き角形缶について説明する。第1実施形態との相違点は、被せ蓋41に設けられた凸部45の形状と取付け構造である。その他の要素は第1実施形態と同様であるので、共通する要素は同一名称、同一符号を使用して説明する。
図7Aは本発明の第2実施形態に係る被せ蓋付き角形缶の被せ蓋の平面図、
図7Bは
図7AのA-A線断面図である。
図8Aは本発明の第2実施形態の変形例に係る被せ蓋付き角形缶の被せ蓋の平面図、
図8Bは
図8AのA1-A1線断面図である。
【0037】
図7A、
図7Bに示すように、蓋付き角形缶11aの被せ蓋41の蓋天面部27の表面の外周側に所定幅の外周帯30と、外周帯30の各辺の内周に沿って凸部45(45a、45b、45c、45d)と、が設けられている。凸部45の高さは第1実施形態と同様、下段となる蓋付き角形缶11aの被せ蓋41(18a)の上に蓋付き角形缶11bを積み重ねたときに、上段の蓋付き角形缶11bの底部15bの高さよりも低く形成されている(
図6A参照)。第1実施形態の凸部31は、外周帯30の内周に沿って連続的に形成された環状の凸条部であるのに対し、本実施形態の凸部45は、四隅において、凸部を省略した不連続な棒状の凸条部片である凸条部を4本配置したものである。
【0038】
上記したように、不連続な棒状の凸条部であるが、第1実施形態で説明した3つの不等式、(1)Bh>Ch、(2)La>L1、(3)Lb<L2を満足するのは同様である。上記3つの不等式を満足することで、上段の蓋付き角形缶11bの横移動(横ズレ)に対しても傾きを抑えることができる。なお、上記(3)の不等式は少なくとも向かい合う一対の脚部について成立すればよいのも第1実施形態同様である。外周帯30の幅の長さも第1実施形態と同様である。
【0039】
本実施形態の凸部45(45a、45b、45c、45d)は、例えば硬質の合成樹脂による凸条の部材を接着剤により蓋天面部27に貼着により貼設することで形成される。これにより、凸部の形成及び貼着の作業がより容易となるものである。また、被せ蓋41をプレス成形する際に、同時に4つの凸部45(45a、45b、45c、45d)を形成することもできる。凸部45(45a、45b、45c、45d)の長さ(長手方向)は、例えば、210mm以下の適当な値、幅の長さ(短手方向)は、例えば、5.0mm程度の適当な値に設定することができる。
【0040】
(変形例)
第2実施形態の変形例として、
図8A、
図8Bを参照して説明する。上記したように、本実施形態の凸部45は、4隅を省略した不連続のもので、4つの凸条部からなるとしているが、変形例として、4つの棒状の凸条部(凸条部片)を設けずに、4隅にL字形状の凸部(凸条部片)を設けることができる。
図8A、
図8Bに示すように、被せ蓋41aの蓋天面部27の表面の外周側に所定幅の外周帯30と、外周帯30の各辺の内周に沿った隅部に凸部46(46a、46b、46c、46d)と、が設けられている。凸部46の高さは第1実施形態と同様、下段となる蓋付き角形缶11aの被せ蓋41aの上に蓋付き角形缶11bを積み重ねたときに、上段の蓋付き角形缶11bの底部15bの高さよりも低く形成されている。また、上記した3つの不等式を満足する点も同様で、これにより上段の蓋付き缶11bの横移動(横ズレ)による傾きを防止することができる。凸部46(46a、46b、46c、46d)は、第2実施形態と同様に、例えば硬質の合成樹脂による凸条の部材を接着剤により蓋天面部27に貼着により貼設することで形成される。これにより、凸部の形成及び貼着の作業がより容易となるものである。
【0041】
(第3実施形態)
次に
図9A、
図9Bを参照して本発明の第3実施形態に係る被せ蓋付き角形缶について説明する。第1実施形態との相違点は、被せ蓋51に設けられた凸部55の形状と取付け構造である。その他の要素は第1実施形態と同様であるので、共通する要素は同一名称、同一符号を使用する。
図9Aは本発明の第3実施形態に係る被せ蓋付き角形缶の被せ蓋の平面図、
図9Bは
図9AのB-B線断面図である。
【0042】
図9A、
図9Bに示すように、蓋付き角形缶11aの被せ蓋51の蓋天面部27の表面の外周側に所定幅の外周帯30と、外周帯30の内部の側に凸部55と、が設けられている。凸部55の高さは第1実施形態と同様、下段となる蓋付き角形缶11aの被せ蓋51(18a)の上に蓋付き角形缶11bを積み重ねたときに、上段の蓋付き角形缶11bの底部15bの高さよりも低く形成されている(
図6A参照)。第1実施形態の凸部31は、外周帯30の内周に沿って連続的に形成された環状の凸条部であるのに対し、本実施形態の凸部55は、外周帯30の内側に沿ったものであり、かつ内側全体に設けられている。凸部55は、例えば硬質の合成樹脂による板状部材であり、接着剤により蓋天面部27に貼着による貼設することで形成される。本実施形態においては、凸部55の形成及び貼着の作業がより容易となるものである。本実施形態の凸部55は板状部材であるが、第1実施形態で説明した3つの不等式、(1)Bh>Ch、(2)La>L1、(3)Lb<L2を満足するのは同様である。上記3つの不等式を満足することで、上段の蓋付き角形缶11bの横移動(横ズレ)に対しても傾きを抑えることができる。なお、上記(3)の不等式は少なくとも向かい合う一対の脚部について成立すればよいのも第1実施形態同様である。外周帯30の幅の長さも第1実施形態と同様である。
【0043】
(第4実施形態)
次に
図10A、
図10Bを参照して本発明の第4実施形態に係る被せ蓋付き角形缶について説明する。第1実施形態との相違点は、被せ蓋61に設けられた凸部55の形状と取付け構造である。その他の要素は第1実施形態と同様であるので、共通する要素は同一名称、同一符号を使用する。
図10Aは本発明の第3実施形態に係る被せ蓋付き角形缶の被せ蓋の平面図、
図10Bは
図10AのC-C線断面図である。
【0044】
図10A、
図10Bに示すように、蓋付き角形缶11aの被せ蓋61の蓋天面部27の表面の外周側に所定幅の外周帯30と、外周帯30の内部の側に凸部65と、が設けられている。凸部65の高さは第1実施形態と同様、下段となる蓋付き角形缶11aの被せ蓋61(18a)の上に蓋付き角形缶11bを積み重ねたときに、上段の蓋付き角形缶11bの底部15bの高さよりも低く形成されている(
図6A参照)。本実施形態の凸部65は、第1実施形態の凸部31と同様に外周帯30の内周に沿って連続的に形成された環状の凸条部である。相違点は、第1実施形態の凸部31が被せ蓋18のプレス成形の際に同時に成形されるのに対して、本実施形態の凸部65は、例えば、硬質の合成樹脂からなる板状部材を蓋天面部27に貼着による貼設したものとすることができる。本実施形態の凸部65は、形成及び貼着の作業が容易となるものである。本実施形態の凸部65は板状部材であるが、第1実施形態で説明した3つの不等式、(1)Bh>Ch、(2)La>L1、(3)Lb<L2を満足するのは同様である。上記3つの不等式を満足することで、上段の蓋付き角形缶11bの横移動(横ズレ)に対しても傾きを抑えることができる。なお、上記(3)の不等式は少なくとも向かい合う一対の脚部について成立すればよいのも第1実施形態同様である。外周帯30の幅の長さも第1実施形態と同様である。
【0045】
以上、本発明のいくつかの実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上、説明したように、本発明に係る被せ蓋付き角形缶は、保管時の積み重ねによる荷崩れ防止のために、蓋天面部には、蓋天面部の表面の外周側に設けられた所定幅の平坦な外周帯と、外周帯の各辺の内周に沿って設けられた、外周帯より高く前記底部より低い高さの凸部と、が形成されるので、被せ蓋付き角形缶の上に被せ蓋付き角形缶を積み重ねると、上段の被せ蓋付き角形缶の脚部の前後左右への横方向の移動(ズレ)を下段の被せ蓋付き角形缶の被せ蓋の凸部により抑えられるので、安定した積み重ねが可能となるという効果を奏し、所謂18リットル缶、9リットル缶等の被せ蓋付き角形缶として有用である。
【符号の説明】
【0047】
11(11a、11b) 被せ蓋付き角形缶(蓋付き角形缶)
12(12a、12b) 胴部
13(13a、13b) 開口部
15(15a、15b) 底部
17(17a、17b) 本体部
18(18a、18b) 被せ蓋
22(22a、22b) 下横桟補強ビード
23(23a、23b) 枠型補強ビード
25(25a、25b) 脚部
25b1、25b2 脚部
26 巻締部
27(27a、27b) 蓋天面部
28(28a、28b) 蓋側面部
30(30a、30b) 外周帯
31(31a、31b) 凸部
41、41a、51、61 被せ蓋
45(45a、45b、45c、45d) 凸部
46(46a、46b、46c、46d) 凸部
55、56 凸部