(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011558
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】高増幅率リニアアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 7/06 20060101AFI20240118BHJP
F16H 49/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
H02K7/06 A
F16H49/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113649
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】391051496
【氏名又は名称】CKD日機電装株式会社
(72)【発明者】
【氏名】花谷 太郎
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607BB01
5H607CC03
5H607DD03
5H607EE52
(57)【要約】 (修正有)
【課題】永久磁石の吸引力を利用した力の増幅機構をもち、増幅率を構成要素である永久磁石形状及び永久磁石間の距離により容易に設定でき、且つ増幅率を高める事で装置の小型化若しくは高出力化できる特徴を持つアクチュエータに関する。
【解決手段】増幅される側の力の入力軸と増幅された力の出力軸とは直交する配置となり、出力軸と永久磁石の吸引力の方向は平行となる。吸引力は二つで一組の直方体形状等の永久磁石が平行に配置され、互いが非接触の状態を保ったまま、互いの吸引力発生方向である磁束のに向きを合わせた状態で、吸引面の範囲を重ねることで発生させる。重ねた範囲の増減は磁石間の相対位置に依存し、この事は吸引力の大きさである出力の大きさを一組の永久磁石間の相対位置で制御できることを意味する為、操作容易である永久磁石間の相対位置制御により出力の大きさ制御可能な構造となっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明は入力軸としての回転軸と出力軸としての直動軸の構成で、アクチュエータ内部に永久磁石の吸引力を利用した力の増幅機構をもち、増幅される力と増幅される力の比(以下増幅率)を装置内部の構成要素である永久磁石形状及び永久磁石間の距離により容易に設定できる事を利用した小型且つ高推力が特徴のアクチュエータに関するものである。
【請求項2】
本発明は入力軸としての直動軸と出力軸としての直動軸の構成で、アクチュエータ内部に永久磁石の吸引力を利用した力の増幅機構をもち、増幅率を装置内部の構成要素である永久磁石形状及び永久磁石間の距離により容易に設定できる事を利用して、一定値以下に抑えられた操作力を用いて必要な推力を得る事ができる特徴を持つアクチュエータに関するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁気リニアアクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、リニア駆動手段として、メカ式、空気式、磁気式など、様々なものが使用されている。
メカ式のリニア駆動手段としては、回転モータとボールねじやすべりねじ等の送りねじとの組み合わせ、回転モータとラックアンドピニオンとの組み合わせ等が一般に使用されており、高精度の位置決めが可能である。
【0003】
位置制御ができる簡易な機器(リニアアクチュエータ)としては、空気シリンダやソレノイドがある。電磁式のリニア駆動手段としては、一般的に、コイルと永久永久磁石などからなるリニアモータがあり、可動子と固定子が非接触で、高速動作や高精度の位置決めが可能であり、電流の大きさにより推力を可変できる。
【0004】
回転モータとボールねじとの組み合わせとしては、例えば、特許文献1に示されているような機構がある。
この機構は、
図1に示されるように、空状回転シャフト2を備えたモータ部1と、中空状回転シャフト2に貫通させた出力ロッド16-1とを備え、中空状回転シャフト2の回転運動を利用して出力ロッド16-1を直動させるようにしたリニアアクチュエータであって、 モータ部1と、中空状回転シャフト2の回転運動を出力ロッド16-1の直線運動に変換させる運動変換手段とをそれぞれモジュール化し、それらを着脱自在に連結した構成を有する。
【0005】
電磁式のソレノイドとしては、例えば、特許文献2に示されているような機構がある。
この機構は、
図1に示されるように、マイコン51は、駆動用コイル32とは別の検出用コイル61のインダクタンスの変化に基づいて、プランジャ34の移動不良を検出する。よって、例えば、従来技術のように、複雑な回路構成が必要無く、検出精度が良好なものとなり、且つ安価な構成となる。
また、従来技術のように、駆動用コイル32への駆動電流の供給を停止している状態で、プランジャ34の移動不良を検出するために、駆動用コイル32にパルス電流を供給する必要が無い。よって、駆動用コイル32の起磁力が小さくなって、駆動用コイル32の励磁に伴うプランジャ34の移動が不安定になることが回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
メカ式のリニア駆動手段では、摩耗、発塵、騒音、構成部品およびそれらの組付けに要求される精度が厳しいなどの問題がある。
【0009】
空気シリンダは、簡易に2位置制御ができるが、空気配管や圧空専用の機器・設備が必要であり、どちらか一方の端に固定している状態でも空気の供給が常時必要であり、それに必要となるコンプレッサや電磁弁は一般的に大きな電力を必要とする。
また、移動速度の制御能力が低く、排気音などの騒音も問題となる。
【0010】
電磁式のソレノイドも、簡易に2位置制御ができるが、吸引固定している状態で常時電力が必要であり、この問題はラッチ型では解決されるが、どちらも原理的にストロークが短く、動作時の騒音(吸引音)が大きいという問題がある。
また、原理的に移動速度の制御は困難である。
【0011】
電磁式の代表的なリニア駆動手段であるリニアモータでは、駆動に大きな電流が必要であり、可動子をある位置に固定しているときでも電力を常時消費するため、省エネルギーの観点で不利であり、発熱による支障を生じることも多い。
【0012】
特許文献1に記載された回転モータとボールねじとの組み合わせ式では、モータとボールねじを一体化し小型化に成功しているが、更に出力軸の推力を上げたいと考え且つ小型化を犠牲にしたくない場合には、ボールねじのリード長を短くする対応が有力となる。この場合、リード長を短くなる分だけ、モータ側の回転移動量が増える事で、移動にかかる時間が延びる。即ち高推力化が応答時間の低下に繋がる。
また、高推力化が進むほど、ボールねじ内の球に係る力は大きくなり、併せて球に発生する永久歪の量が大きくなることで、ボールねじとしての生涯動作可能回数が落ちる。即ち高推力化が耐久性の低下に繋がる。
【0013】
特許文献2に記載された電磁式ソレノイド式では、小型化と高推力化の両立が容易で、移動時間も短い利点がある反面、駆動用コイルにパルス電流を流す動作方式上、動作不良発生の可能性が比較的高い。
また動作時の騒音が大きい事に関連して、動作自体が衝撃を伴うものであり、生涯動作可能回数を低く設定せざるをえない。
【0014】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的は、小型高推力を実現し、且つ応答時間、耐久性及び動作安定性も犠牲にしない事を期待できるリニアアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する本発明のアクチュエータは、永久磁石の吸引力を利用した力の増幅機構をもち、増幅される力と増幅される力の比(以下増幅率)を装置内部の構成要素である永久磁石形状及び永久磁石間の距離により容易に設定でき、且つ増幅率を高める事で装置の小型化若しくは高出力化できる特徴を持つ。
【0016】
増幅される側の力を入力する軸(以下入力軸)と増幅された力が出力される軸(以下出力軸)とは直交する配置となり、出力軸と永久磁石の吸引力の方向は平行配置となる。
【0017】
一組の直方体形状若しくは一組の円弧形状の永久磁石は対向する形で、永久磁石間の吸引力が働く方向に配置される。
【0018】
一組の永久磁石は互いに同一形状であり、且つ保持力などの磁力としての諸特性について同一である事を基本とする。
【0019】
一組の永久磁石間の距離は常に一定以上の距離が確保され、隙間なく吸着する状態を避け、互いが非接触の状態が維持される。
【0020】
一組の永久磁石間に働く吸引力は、永久磁石同士が対向している面積に比例的に増減する事から、永久磁石間の相対位置を制御することで、対向面積を制御し、結果として吸引力の大小を制御する事ができる。
【0021】
一組の永久磁石間の吸引力をそのままリニアアクチュエータ出力として利用しているので、出力の大きさは永久磁石同士が隙間なしに吸引する際の吸引力以上には上がらない。
【0022】
この事は、例えそれが瞬間的なものであったとしても、過大な力の発生については懸念する必要がない事を意味する。
【0023】
永久磁石間は通常一定以上の隙間を保つ非接触での使用が前提である事から、永久磁石間の吸引力による力伝達部分では摩耗が発生せず、その分高い耐久性が期待できる。
【0024】
永久磁石の吸引力は常時働く為、力伝達の部分は常に安定的に動作する。
【0025】
以下、
図1を用いて本発明で使われる力の増幅に関する原理を説明する。
【0026】
図1(a)では、便宜上の座標としてXY座標を図の様に設定した上で、一組の直方体形状磁石の移動側(以下、移動側磁石)と一組の直方体形状磁石の固定側(以下、固定側磁石)を定めている。片方の磁石を固定としたのは本説明を簡単にする為であり、図では移動側磁石と固定側磁石は磁石間隙間の距離Dをあけつつ、平行に配置されている。紙面垂直方向である奥行方向については両磁石ともに同一且つ一定の長さがあり、且つ同一平面に配置されるとする。
【0027】
図1(a)では、移動側磁石と固定側磁石は、両者が完全に対向する相対位置から磁石長さL分だけX軸方向にずれている。この場合の対向面積はゼロとなる事から、磁石間の隙間Dが小さい場合には、磁石間での磁束が渡る部分が少なくなり、Y軸方向の吸引力はほとんど発生しない。
【0028】
図1(b)では、
図1(a)に対して移動側磁石がX軸方向にL/2だけ移動しており、完全に対向した時の半分の対向面積をもつ配置となっている。この時、磁石間隙間の距離が同じであるならば、完全に対向した状態で働く磁石間吸引力の半値となる吸引力がY方向吸引力Fyとして発生し、併せてX方向吸引力Fxが発生することになる。
【0029】
図1(c)上段の図では、
図1(b)に対して更に移動側磁石がX軸方向にL/2だけ移動しており、完全に対向した磁石間の配置となっている。この時、磁石間隙間の距離が同じであるならば、磁石間対向面積は最大となる事から、Y方向吸引力Fyは最大値となる。対してX方向吸引力Fxはほとんど発生しない。
【0030】
図1(c)下段の図は、同(a)から(c)の状態を一連の動きと捉えて、X方向吸引力FxとY方向吸引力Fyについてグラフ化したものである。このグラフでFyはX>0においてX位置の増加に伴う対向面積の増加により値を比例的に増加している。これに対して、FxはX>0においてX軸方向である対向面積を増やす方向に移動側磁石を引っ張る形で作用しているが、そのグラフは横軸X軸に対して台形形状と、値的に頭打ちになっている。
【0031】
換言するとFxは一定長さ以上であれば磁石長さLに依らず上限値を持ち、FyはLに比例的に値を増減させるという事になる。この事を利用して本発明では、増幅される力と増幅される力の比である増幅率を装置内部の構成要素である永久磁石形状及び永久磁石間の距離により容易に設定でき、更に増幅率を高める事で装置の小型化若しくは高出力化できる特徴を持つアクチュエータに関するものとなっている。
【0032】
図1(b’)はFxが値的に頭打ちになる事についての簡単な説明を与えている。同図においては磁石間隙間の距離が拡大された形で、且つ対向する面及びその近辺の面について発生している磁束が矢印付きの線として描かれている。磁石同士が対向している面においては大部分の磁束が曲がらずに真直ぐ移動側磁石から固定側磁石に渡っているのに対して、対向する範囲から外れる磁石端の部分では磁束は曲がりながら磁石間を渡る事になる。
【0033】
磁束の曲がりは所謂マクスウェルの応力が発生している事を意味しており、これがFxの発生の主因となる場合においては、同図中の磁束が曲がらず真直ぐな範囲が移動側磁石がX軸方向に移動することで増減したとしても、マクスウェルの応力が発生するのは別の磁石でいう端の部分になるのでFxはほとんど変化しない。この事が頭打ちの理由と考えられる。
【発明の効果】
【0034】
本発明により、永久磁石の吸引力を利用した力の増幅機構による小型高推力化を実現し、永久磁石の吸引力は常時作用する事から応答性と動作安定性は良好な状態を保つ事が可能で、且つ非接触力伝達方式により高耐久性を期待できる特徴を持つアクチュエータを構成し得る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2】本発明の第1実施形態におけるリニアアクチュエータの模式図
【
図3】本発明の第1実施形態におけるリニアアクチュエータの分解斜視図
【
図4】本発明の第2実施形態におけるリニアアクチュエータの模式図
【
図5】本発明の第2実施形態におけるリニアアクチュエータの分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の第一実施形態を
図2、
図3を用いて説明する。
本実施形態のリニアアクチュエータは、入力として回転力を与え且つ移動側磁石の位置を制御する為の入力軸部22と、入力軸側磁石との間で発生する吸引力を出力として取り出す出力軸部23及び出力軸にに対して永久磁石の吸引方向とは逆方向に力を作用させるバックスプリング部24を備える。
【0037】
入力軸部22は、サーボモータ1とジョイントアーム2、ジョイントブロック4及びラジアルベアリング7を備える。サーボモータ1の回転軸と入力軸部の中心軸は同軸上に置かれ、続く出力軸23及びバックスプリング部24の中心軸とも同軸上に配置される。
【0038】
サーボモータ1がジョイントアーム2に取り付くラジアルベアリング7を介して出力軸部23にトルクを伝える構造であり、ラジアルベアリング7を介する事で出力軸が中心軸方向に移動した際にも接触を維持する事で途切れることなくトルクが伝達される。
【0039】
ジョイントアーム部25の中心軸周りの位置である角度(以下、アーム角度)は、サーボモータ1により制御される。
【0040】
出力軸部23は、移動側磁石部26と固定側磁石部27を備える。
【0041】
移動側磁石部26は、ジョイントボディ9とヨーク11と円弧形永久磁石であるマグネット12を備え、マグネット12の着磁方向は中心軸と平行とする。
【0042】
移動側磁石部26は、ボールスプラインシャフト13とアンギュララジアルベアリング8を備え、ボールスプラインシャフト13に対して中心軸周りにジョイントボディ9が回転できるように配置される。
【0043】
固定側磁石部27は、ボールスプラインナット14とヨーク11と円弧形永久磁石であるマグネット12を備え、マグネット12の着磁方向は中心軸と平行とする。
【0044】
移動側磁石部26が備えるマグネット12(以下、移動磁石)と固定側磁石部27が備えるマグネット12(以下、固定磁石)は、互いに吸引力がはたらくように極性を合わせて配置される。
【0045】
バックスプリング部24は、ボス16とスプリング側プレート17及びコイルスプリング18を備え、出力軸部23のボールスプラインシャフト13とボス16を介して締結される。
【0046】
バックスプリング部24のコイルスプリング18は、移動側磁石部のマグネット12と固定側磁石部のマグネット12との間に働く吸引力の大きさによらず、常に一定以上の距離がマグネット12同士間で確保されるように、当該ばね定数が決められ、適当なたわみを含んで配置される。
【0047】
移動側磁石部26のボールスプラインシャフト13はバックスプリング部24のコイルスプリング18によるばね反力を吸引力とは逆方向の力として受け、移動磁石と固定磁石間に働く吸引力についても各部の伝達を通して受ける。
【0048】
移動磁石と固定磁石間に働く吸引力の大きさは移動磁石と固定磁石との相対位置により決まり、中心軸周りに移動磁石の位置をサーボモータ1により変えさせる事により吸引力の大きさは可変となる。
【0049】
従ってボールスプラインシャフト13の位置はばね反力と吸引力との合力で決定され、且つ吸引力はサーボモータ1により可変な事から、サーボモータ1によりボールスプラインシャフト13の位置を決定できる事になる。
【0050】
換言すると永久磁石間吸引力をFとし、コイルスプリング18のばね定数をKとすると、移動磁石と固定磁石が完全に対向している状態、即ち最も吸引力が大きい状態を初期状態として、移動磁石の位置を変えることで、ボールスプラインシャフト13は初期状態からΔF/Kだけ永久磁石間吸引力とは逆方向に移動する。この事は、移動磁石の中心軸周りの位置を入力として、中心軸方向に変位又は推力を出力としたアクチュエータが構成されたことを意味する。
【0051】
以上が本発明の第一実施形態の説明となる。
【0052】
以下、本発明の第二実施形態を
図4、
図5を用いて説明する。 本実施形態のリニアアクチュエータは、入力として並進力を与え且つ移動側磁石の位置を制御する為のリニアモータ部118と、入力軸側磁石との間で発生する吸引力を出力として取り出す出力軸部120及び出力を受ける台部122を備える。
【0053】
入力軸部121は入力側リニアガイド112と入力側ブラケット111とマグネット109及びヨーク110を備える。
【0054】
座標系をリニアガイド112に平行な軸をX軸とし、出力軸部120内の出力側リニアガイド101に平行な軸をZ軸となる様に定めるとする。
【0055】
リニアモータ部118はリニア接続ブラケット119を介して入力側ブラケット111に接続し、リニアモータ部118の並進移動動作方向と入力側リニアガイド112は共にX軸に平行に置かれ、これによりマグネット109の位置は、リニアモータ部118により制御が可能となる。
【0056】
出力軸部120は、出力側リニアガイド101、プッシュバー102、プッシュバー105、コイルスプリング106、ボス107、マグネット104及びヨーク103を備える。
【0057】
マグネット104とマグネット105の着磁方向は共にZ軸に平行とし、両者は互いに吸引力がはたらくように極性を合わせて配置される。
【0058】
マグネット104はプッシュバー102とヨーク103を介してZ軸と平行なリニアガイド101に接続されることで、Z軸方向への移動が可能となり、両者の吸引力はプッシュバー103をプッシュバー105ごと押し下げる方向にはたらく。
【0059】
コイルスプリング106とボス107及びワーク115はプッシュバー105が押し下げられた際に ばね反力を生む事から、マグネット104のZ方向の位置は、マグネット109との吸引力とコイルスプリング106の反力の合力により決定される。
【0060】
マグネット109はX軸方向に移動可能で、マグネット104はZ軸方向に移動可能である事から、両者の間に常に一定以上の距離が確保されるように、コイルスプリング106のばね定数が決められ、適当なたわみを含んで配置される。
【0061】
マグネット104とマグネット109間に働く吸引力の大きさは両者の相対位置により決まり、X軸方向にマグネット109の位置をリニアモータ部118により変えさせる事により吸引力の大きさは可変となる。
【0062】
マグネット104のZ方向の位置は、マグネット109との吸引力とコイルスプリング106の反力の合力により決定され、吸引力はマグネット104のX方向の位置としてリニアモータ部118によか変な事から、リニアモータ部118の位置制御を通して、マグネット104のZ方向の位置を決定できる事になる。
【0063】
換言すると永久磁石間吸引力をFとし、コイルスプリング106のばね定数をKとすると、マグネット104とマグネット109が完全に対向している状態、即ち最も吸引力が大きい状態を初期状態として、マグネット109のX方向位置を変えることで、マグネット104は初期状態からΔF/Kだけ永久磁石間吸引力とは逆方向に移動する。この事は、マグネット109のX方向位置を入力として、Z軸方向に変位又は推力を出力としたアクチュエータが構成されたことを意味する。
【0064】
以上が本発明の第二実施形態の説明となる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
入力の回転軸と出力の直動軸をもつ第一実施形態で示したタイプについては、本発明の特徴である高増幅率特性と円弧形磁石採用による小形化の効果として、容積辺りの力の出力値が大きくできる事から、例えばバルブアクチュエータの様な、狭いスペースに収められるが高推力が要求される用途に適している。
【0066】
入力の直動軸と出力の直動軸をもつ第二実施形態で示したタイプについては、アクチュエータとしての小型化は狙わず、本発明の特徴である高増幅率特性を活かした高推力アクチュエータとしての使い方が考えられる。
図1で示した様に力の増幅に関してはX方向吸引力Fxが頭打ちになる事を利用して、磁石長さLを延ばすことで、Y方向吸引力Fyが上げることが可能であり、磁石長さLは必ずしも磁石単体である必要はなく、同一直方体形状の磁石を横に継いでゆけば容易にLを延ばすことができる。
【0067】
即ちFxを操作力と考えれば、一定値以下に抑えられた操作力を用いて必要とされる推力を得る為のアクチュエータとして、例えばプレス機などの用途が考えられる。
【0068】
尚、Fxが頭打ちになる事に関して、同じく
図1の記号を用いて力学エネルギーの観点から補足をすると、出力は推力FyとY軸方向の移動量δとの積であるFy・δで表され、入力は操作力Fxと磁石長さLとの積であるFx・Lで表される。磁石を介していたとしても出力のエネルギーが入力のエネルギーを越える事はなく、磁石間隙間の距離を適正にとり且つ磁石形状を均一な直方体形状とする場合には、磁石間の相対位置に対して出力である推力は線形的にふるまる事が判っている事から、ηを効率として次式のように書ける。
【0069】
Fy・δ=η(Fx・L)
【0070】
簡単の為η=1とし、δとLが管理された固定値であり、Fxが頭打ちになる事に注意して変形すると次式となる。
【0071】
Fy=(Fx/δ)・L ≒ A・L 但しAは定数
【0072】
即ち第二実施形態での本発明の使用では出力であるY軸推力Fyは磁石長さLに比例する事となり、上述の様に一定値以下に抑えられた操作力を用いて必要とされる推力を得る為のアクチュエータとしての産業上利用可能性がでてくる。
【符号の説明】
【0073】
1 ・・・サーボモータ
2 ・・・入力側プレート
3 ・・・ジョイントアーム
4 ・・・ジョイントブロック
5 ・・・セットカラー
6 ・・・ベアリングオサエ
7 ・・・ラジアルベアリング
8 ・・・アンギュララジアルベアリング
9 ・・・ジョイントボディ
10 ・・・ベアリングカラー
11 ・・・ヨーク
12 ・・・マグネット
13 ・・・ボールスプラインシャフト
14 ・・・ボールスプラインナット
15 ・・・出力側プレート
16 ・・・ボス
17 ・・・スプリング側プレート
18 ・・・コイルスプリング
19 ・・・エンドプレート
20 ・・・支柱
21 ・・・スプリング側支柱
22 ・・・入力軸部
23 ・・・出力軸部
24 ・・・バックスプリング部
25 ・・・ジョイントアーム部
26 ・・・移動側磁石部
27 ・・・固定側磁石部
101 ・・・出力側リニアガイド
102 ・・・プッシュバー
103 ・・・ヨーク
104 ・・・マグネット
105 ・・・プッシュバー
106 ・・・コイルスプリング
107 ・・・ボス
108 ・・・出力側ブラケット
109 ・・・マグネット
110 ・・・ヨーク
111 ・・・入力側ブラケット
112 ・・・入力側リニアガイド
113 ・・・U字ヨーク
114 ・・・プレート上
115 ・・・ワーク
116 ・・・支柱
117 ・・・プレート下
118 ・・・リニアモータ部
119 ・・・リニア接続ブラケット
120 ・・・出力軸部
121 ・・・入力軸部
122 ・・・台部
123 ・・・アクチュエータコア部