(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115580
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240820BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20240820BHJP
A45D 29/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B41J2/165
B41J2/17
B41J2/165 301
A45D29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021260
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中原 翔太
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB07
2C056EB30
2C056EC07
2C056EC26
2C056EC29
(57)【要約】
【課題】印刷ヘッドの状態を容易に管理する。
【解決手段】印刷装置1が、加熱によりインクを吐出させる印刷ヘッド41のインクを吐出させる前の印刷ヘッド41の温度である「第1の温度」と、インクの吐出を行った後の印刷ヘッド41の温度である「第2の温度」と、を取得する取得手段と、取得手段により取得された印刷ヘッド41の「第1の温度」と、「第2の温度」と、に基づいて、印刷ヘッド41のインク吐出状態を判定する判定手段として機能する制御部11と、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱によりインクを吐出させる印刷ヘッドの前記インクを吐出させる前の前記印刷ヘッドの温度である第1の温度と、インクの吐出を行った後の前記印刷ヘッドの温度である第2の温度と、を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記印刷ヘッドの前記第1の温度と、前記第2の温度と、に基づいて、前記印刷ヘッドのインク吐出状態を判定する判定手段と、
を備える、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
加熱によりインクを吐出させる印刷ヘッドの前記インクを吐出させる前の前記印刷ヘッドの温度である第1の温度と、インクの吐出を行った後の前記印刷ヘッドの温度である第2の温度と、を取得する取得手段と、
前記印刷ヘッドのインク吐出状態を回復させる保守を行うヘッド保守部と、
前記取得手段により取得された前記印刷ヘッドの前記第1の温度と、前記第2の温度と、に基づいて、前記ヘッド保守部における保守処理を行わせる保守制御部と、を備える、ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
前記印刷ヘッドは、インクを吐出させて排出するインク排出動作を行う前に予備加熱を行うものであり、
前記第1の温度は前記予備加熱後の前記印刷ヘッドの温度であり、前記第2の温度は、前記予備加熱後、インク排出動作を行った後の前記印刷ヘッドの温度である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記第1の温度と、前記第2の温度と、の差分の程度によって前記印刷ヘッドのインク吐出状態を判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記第1の温度と、前記第2の温度と、の差分が所定の閾値以下である場合に、前記印刷ヘッドのインク吐出状態が良好であると判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記印刷ヘッドのインク吐出状態を回復させる保守を行うヘッド保守部と、
前記ヘッド保守部における保守処理を行わせる保守制御部と、
を備え、
前記保守制御部は、前記判定手段による判定結果に基づいて前記ヘッド保守部において保守処理を行わせる、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記ヘッド保守部は、前記印刷ヘッドのインク吐出面をワイピングするワイプ機構を含んでいる、
ことを特徴とする請求項2又は請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記ヘッド保守部は、前記印刷ヘッド内に貯留されているインクを撹拌する撹拌機構を含んでいる、
ことを特徴とする請求項2又は請求項6に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記判定手段は、前記印刷ヘッドのインク吐出状態の良・不良及び不良の場合における不良の程度を判定し、
前記保守制御部は、前記判定手段が判定した不良の程度に応じて前記ヘッド保守部における保守処理を行わせる、
ことを特徴とする請求項6に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記ヘッド保守部は、前記印刷ヘッドのインク吐出面をワイピングするワイプ機構と、前記印刷ヘッド内に貯留されているインクを撹拌する撹拌機構と、を含み、
前記保守制御部は、前記判定手段が判定した不良の程度が軽微である場合には前記ワイプ機構によるワイピングを行わせ、前記判定手段が判定した不良の程度が甚大である場合には撹拌機構による撹拌動作を行わせる、
ことを特徴とする請求項6に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記印刷ヘッドのインク吐出状態が、前記ヘッド保守部における保守処理によっては回復することができない程度に不良であると、前記判定手段が判定したときは、インク吐出状態が不良であることを報知手段により報知する、
ことを特徴とする請求項6に記載の印刷装置。
【請求項12】
加熱によりインクを吐出させる印刷ヘッドの前記インクを吐出させる前の前記印刷ヘッドの温度である第1の温度と、インクの吐出を行った後の前記印刷ヘッドの温度である第2の温度と、を取得する取得工程と、
前記取得工程において取得された前記印刷ヘッドの前記第1の温度と、前記第2の温度と、に基づいて、前記印刷ヘッドのインク吐出状態を判定する判定工程と、
を含むことを特徴とする印刷制御方法。
【請求項13】
コンピュータに、
加熱によりインクを吐出させる印刷ヘッドの前記インクを吐出させる前の前記印刷ヘッドの温度である第1の温度と、インクの吐出を行った後の前記印刷ヘッドの温度である第2の温度と、を取得する取得機能と、
前記取得機能により取得された前記印刷ヘッドの前記第1の温度と、前記第2の温度と、に基づいて、前記印刷ヘッドのインク吐出状態を判定する判定機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式の印刷ヘッドにより指の爪等にネイルデザイン(以下単に「デザイン」ともいう)の印刷を行う印刷装置(ネイルプリンタ)が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
このような印刷装置では、印刷ヘッドにインク詰まりが発生することがある。印刷ヘッドにインク詰まりが発生したままの状態で印刷を行うと、印刷品位の低下を引き起こすため、これを解消することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実際に印刷する前に印刷ヘッドにインク詰まりが生じているか否かを把握することは難しい。インク詰まりが生じていることに気づかずに印刷を行うと仕上がり品質の悪い印刷結果となってしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、印刷ヘッドの状態を容易に管理することのできる印刷装置、印刷制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の印刷装置は、
加熱によりインクを吐出させる印刷ヘッドの前記インクを吐出させる前の前記印刷ヘッドの温度である第1の温度と、インクの吐出を行った後の前記印刷ヘッドの温度である第2の温度と、を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記印刷ヘッドの前記第1の温度と、前記第2の温度と、に基づいて、前記印刷ヘッドのインク吐出状態を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、印刷ヘッドの状態を容易に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態における印刷装置の要部外観構成を示す模式的な斜視図である。
【
図2】印刷装置の内部を上から見た場合の印刷装置の内部要部構成を示す模式的な平面図である。
【
図3】実施形態における印刷装置の概略の制御構成を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態の印刷ヘッドのインク吐出前後における温度変化例を示すグラフである。
【
図5】印刷ヘッドのインク吐出前後における温度変化に関する数値例を示す表である。
【
図6】本実施形態における印刷制御処理を示すフローチャートである。
【
図7】本実施形態における印刷制御処理の一変形例を示すフローチャートである。
【
図8】本実施形態における印刷制御処理の一変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1から
図8を参照しつつ、本発明に係る印刷装置、印刷制御方法及びプログラムの一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
例えば以下の実施形態では、印刷装置1が手の指Uの爪Tを印刷対象としてこれに印刷する印刷装置(ネイルプリント装置)である場合を例に説明するが、本発明における印刷装置は、指Uの爪Tを印刷対象とするものに限るものではなく、例えば足の指の爪を印刷対象とする印刷装置でもよい。さらに印刷装置1は、爪Tに印刷するものに限定されず、例えばネイルチップや各種アクセサリの表面等、人の爪以外の爪様のものや紙等の各種被印刷媒体を印刷対象とするものでもよい。
【0010】
図1は、本実施形態における印刷装置の要部外観構成を示す模式的な斜視図である。
図2は、印刷装置の内部を上から見た場合の印刷装置の内部要部構成を示す模式的な平面図である。また
図3は、実施形態における印刷装置の概略の制御構成を示すブロック図である。
なお、以下の実施形態において、上下、左右及び前後は、
図1に示した向きをいうものとする。また、X方向、Y方向は、
図1等に示した方向をいうものとする。本実施形態においてX方向は印刷装置1の左右方向であり、Y方向は印刷装置1の前後方向である。
【0011】
図1に示すように、印刷装置1は、ほぼ箱形に形成された筐体2を有している。
筐体2の上面(天板)には操作部21及び表示部22が設置されている。
なお、筐体2各部の形状や各部の配置等は、図示例に限定されず、適宜設定可能である。例えば、操作部21や表示部22は、筐体2の上面ではなく側面や背面等に設けられていてもよい。また、図示例では、操作部21が1つのボタンで構成されている場合を示しているが、操作部21は筐体2の上面等に設けられた複数のボタン等で構成されていてもよい。その他、筐体2にはインジケータ等が設けられていてもよい。
【0012】
操作部21は、ユーザが各種入力を行う各種操作ボタン等である。
操作部21が操作されると操作に応じた操作信号が後述の制御部11に出力され、制御部11が操作信号に従った制御を行い、印刷装置1の各部を動作させる。例えば操作部21が電源スイッチボタンである場合、ボタン操作に応じて印刷装置1の電源がON/OFFされる。
【0013】
表示部22は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(有機ELD)、その他のディスプレイ(フラットディスプレイ)を含んでいる。表示部22は、後述の制御部11から入力される表示信号に基づいて、ディスプレイに各種画像や情報を表示させる。
本実施形態において表示部22は、後述するようにインク吐出状態を報知する報知手段としても機能する。
なお、本実施形態の表示部22のディスプレイは、タッチパネルと一体的に構成されていてもよく、この場合にはタッチパネルが、ユーザによるタッチ操作を受け付け、各種入力を行う操作部21としても機能する。
【0014】
印刷装置1の筐体2の前面側(
図1においてY方向の手前側)であって装置の左右方向(
図1におけるX方向)のほぼ中央部には、印刷装置1による印刷時に指Uを挿入する開口部である指挿入口23が形成されている。
筐体2の内部には、指配置部3、印刷機構4、ヘッド保守部7(
図2参照)、撮影部5(
図3参照)等を備えた図示しない装置本体が収容されている。
【0015】
指配置部3は、筐体2の内部であって指挿入口23に対応する位置に配置されている。
指配置部3は指挿入口23に対応する開口部を有し、指挿入口23から挿入された指U(印刷対象である爪Tに対応する指U)を開口部内に受け入れ、印刷に適した位置に保持する。
図2に示すように、指配置部3は、例えば指Uを載せる部分である配置部本体31と指配置部3の手前側(
図1及び
図2におけるY方向の手前側)を囲むように設けられた枠状部33等を備えている。例えば配置部本体31は昇降可能な構成を有しており、配置部本体31が上方向に上がることで配置部本体31に配置された指Uが枠状部33との間で挟み込まれて位置が固定される。なお、指Uを固定する構成はこれに限定されない。
また枠状部33よりもY方向の奥側(
図1における装置後方)は上方が開放された窓部32となっており、指配置部3内に配置された指Uの爪Tの表面が、窓部32から露出するようになっている。
【0016】
印刷機構4は、
図3に示すように、印刷ヘッド41、印刷ヘッド41を移動させるためのヘッド移動機構48等を備えている。
本実施形態において印刷機構4は、印刷ヘッド41によって印刷対象である指Uの爪T等に印刷を施す。印刷機構4は後述する制御部11によって、その動作が制御される。
【0017】
本実施形態の印刷ヘッド41は、印刷対象面(爪表面)に対向する面が、インクを吐出させる複数のノズルのインク吐出口(ノズル口)を備えたインク吐出面(いずれも図示せず)となっており、インクを微滴化し、インク吐出面から印刷対象である爪T等の表面に対して直接にインクを吹き付けて印刷を行うインクジェット方式のインクジェットヘッドである。印刷ヘッド41の構成は特に限定されないが、例えばインク吐出面等の吐出機構部とインクを貯留するインクカートリッジ(いずれも図示せず)とが一体となったカートリッジ一体型のヘッドである。
印刷ヘッド41は、例えば、シアン(C;CYAN)、マゼンタ(M;MAGENTA)、イエロー(Y;YELLOW)等、ネイルデザイン(以下単に「デザイン」ともいう)の印刷を行うためのインク(デザイン印刷用のカラーインク)を吐出可能となっている。なお、印刷装置1は、印刷ヘッド41として、下地を形成する塗料として白色等の下地用インクを吐出可能な下地用のヘッド等を備えていてもよい。なお、印刷ヘッド41に備えられるインクの種類はこれに限定されない。
【0018】
印刷ヘッド41は、前記ノズルからインクを吐出させる機構としてインク吐出部411を備えている。本実施形態のインク吐出部411は、例えば所定の駆動信号を印加することによって発熱する発熱体(抵抗発熱体)を含む、サーマル方式の吐出部である。インク吐出部411は発熱体に駆動信号を印加することで個々のノズルごとに局所的に加熱を行う。加熱されたノズル内では気泡が発生し、これによりノズル内のインクが吐出される。
ノズルにはインクカートリッジに貯留されたインクが順次送られるようになっており、ノズルに詰まり等がない状態であればノズル内にはインクが充填された状態となっている。
【0019】
また本実施形態では、印刷ヘッド41が予備加熱部412を備えており、印刷ヘッド41内の温度が一定の温度になるように、印刷動作前に予め目標温度(
図5に示す例では50度)まで加熱するようになっている。なお、予備加熱部412の構成は特に限定されない。例えば予備加熱部412は、インク吐出部411の発熱体と同様に駆動信号を印加することで発熱する抵抗発熱体を含んでもよいし、その他の各種ヒータを含んでいてもよい。
印刷ヘッド41の温度は、印刷装置1が置かれている場所の雰囲気温度(周囲温度)に左右されるが、印刷動作前に予備加熱を行うことで、周辺の温度環境によらず一定の温度の状態で印刷動作を行うことができる。これにより、印刷ヘッド41からのインク吐出が安定する。
【0020】
また印刷ヘッド41には印刷ヘッド41内の温度を検知する温度検知部413が設けられている。温度検知部413は、例えばインク吐出部411のノズルの近傍等に設けられる。なお、温度検知部413の具体的な構成や、設けられる位置等は特に限定されない。
予備加熱部412により加熱された印刷ヘッド41内の温度、インクの排出動作が行われた後の印刷ヘッド41内の温度等は、随時温度検知部413により検知され、検知結果は後述の制御部11に取得される。
【0021】
なお、予備加熱部412による予備加熱においては、後述する制御部11によりフィードバック制御が行われる。すなわち予備加熱においては印刷ヘッド41の温度が随時温度検知部413によって取得され、制御部11では検知された温度が目標温度(
図5に示す例では50度)に到達するまで予備加熱部412に駆動信号を印加する。そして印刷ヘッド41の温度が目標温度に達すると、制御部11による駆動信号の印加が停止され、予備加熱が終了する。
【0022】
ヘッド移動機構48は、
図2に示すように、印刷ヘッド41を装置の左右方向(X方向)に移動させるためのX方向移動機構450及び印刷ヘッド41を装置の前後方向(Y方向)に移動させるためのY方向移動機構470を備えている。
X方向移動機構450は、X方向移動モータ45(
図3参照)を含んでおり、X方向移動モータ45が駆動することにより印刷ヘッド41を装置の左右方向(X方向)に移動させる。また、Y方向移動機構470は、Y方向移動モータ47(
図3参照)を含んでおり、Y方向移動モータ47が駆動することにより印刷ヘッド41を装置の前後方向(Y方向)に移動させる。X方向移動モータ45、Y方向移動モータ47は、例えばステッピングモータである。
【0023】
筐体2の上面(天板)の内側であって、指配置部3に配置された指Uの爪Tの上方に対応する位置には、指配置部3から露出する爪T(爪Tを含む指U)を撮影して画像(爪画像)を取得することのできる撮影部5が固定されている。
撮影部5は、例えば200万画素以上の画素を有するCCD(Charge Coupled Device)型やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型等の固体撮影素子とレンズ等を備えて構成された小型カメラ等であるカメラ51と、撮影対象を照明する白色LED等で構成された光源52とを備えている(
図3参照)。
なお撮影部5は、指配置部3に載置された指Uの爪T等を撮影可能な位置に配置されていればよく、その具体的な配置は特に限定されない。
【0024】
また
図2に示すように、印刷装置1は、印刷機構4の印刷ヘッド41が移動できる範囲内にメンテナンス領域Armを有している。メンテナンス領域Armの位置は特に限定されないが、印刷ヘッド41による印刷動作を阻害しない位置であり、例えばY方向の後方位置(
図2参照)等に設けられる。
メンテナンス領域Armには、ヘッド保守部7が配置されている。ヘッド保守部7では、印刷ヘッド41のインク吐出面、ノズル等の汚れの除去やノズル内に生じた目詰まり等を解消させる保守処理が行われる。保守処理を行うことにより、印刷ヘッド41のインク吐出状態を良好な状態に回復させることができる。
【0025】
保守処理の具体的内容、ヘッド保守部7として何を備えるかは適宜設定される。
本実施形態で想定される保守処理としては、例えば印刷ヘッド41のノズルのインク吐出口からインクを強制的に吐出させるインク排出処理がある。インク排出処理ではインク吐出部411の発熱体に駆動信号を印加して各ノズルを加熱し、ノズル内で気泡を発生させてインクを吐出させる。このため、本実施形態のヘッド保守部7には、印刷ヘッド41から強制的に吐出されたインクを受けて貯留する図示しない廃インク部が含まれる。
インク吐出口から廃インク部にインクを強制的に吐出(排出)させることで、ノズル内、インク流路内のエアや不純物、粘度の上がったインク等をインクとともに外部に排出させることができる。
【0026】
この他、保守処理としては、インク吐出面等をワイピングするワイプ処理が行われてもよい。
保守処理としてワイプ処理が行われる場合には、ヘッド保守部7にワイプブレードが配置される。この場合、印刷ヘッド41をメンテナンス領域Armに移動させてインク吐出面等をワイプブレードに接触させた状態で印刷ヘッド41を前後方向(又は左右方向)に移動させることで、インク吐出面等に付着した汚れや残留インク等をワイプブレードによりかき取り、除去することができる。
【0027】
なお、印刷ヘッド41の保守処理は、メンテナンス領域Arm内のヘッド保守部7によって行われるものに限定されない。
例えば印刷ヘッド41の吐出不良の原因がインクカートリッジ内のインク成分の分離や沈降によるものである場合には、保守処理としてインクカートリッジ内のインクを撹拌することが好ましい。インクを撹拌する具体的な手法は限定されないが、例えばインクカートリッジ内のインクをかき混ぜることができる程度に激しく印刷ヘッド41を前後・左右に移動させることが考えられる。この場合には、印刷機構のヘッド移動機構48が、印刷ヘッド41内に貯留されているインクを撹拌する撹拌機構として機能する。また、表示部22等に撹拌が必要である旨を表示させてユーザに印刷ヘッド41の取り外しを促し、装置外において手動又は専用の撹拌装置等を用いた自動により、撹拌動作を行うよう求めてもよい。
【0028】
このように印刷ヘッド41の保守処理としては、インク排出処理、ワイプ処理及び撹拌処理等が考えられるが、本実施形態では、このうちインク排出処理については印刷前の準備動作等として実施する構成となっている。
ワイプ処理及び撹拌処理については行わない構成となっていてもよいし、行うことはできるが、一定の条件の下でのみ行うようになっていてもよい。印刷ヘッド41の保守処理の詳細については後述する。
【0029】
また
図3に示すように、この他、印刷装置1は、通信部25、制御装置10等を備えている。
【0030】
通信部25は、例えば印刷装置1と連携して動作する外部機器がある場合に当該外部機器との間で情報の送受信が可能に構成されたものである。印刷装置1と通信する外部機器としては、例えばスマートフォンやタブレット等の携帯端末が想定される。なお印刷装置と通信する外部機器は特に限定されず、例えばノート型又は定置型のパソコンや、ゲーム用の端末装置等であってもよい。
印刷装置1と外部機器との間での通信は、例えば無線LAN等により行われる。なお、印刷装置1と外部機器との間での通信はこれに限定されず、いかなる方式によるものでもよい。例えば、インターネット等のネットワーク回線を使うものであってもよいし、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi等の近距離無線通信規格に基づく無線通信を行うものであってもよい。また、この通信は無線に限定されず、有線接続により両者間で各種データの送受信が可能な構成としてもよい。通信部25は通信する相手側の通信方式に対応するアンテナチップ等を備えている。
【0031】
印刷装置1に搭載される制御装置10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有する制御部11と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)を有する記憶部12とを備え、印刷装置1を制御するコンピュータである。
【0032】
記憶部12には、印刷装置1を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的には、記憶部12のROM等には、プログラム記憶領域121が設けられており、プログラム記憶領域121には、例えば各種の印刷制御処理を行うための印刷制御プログラム等の各種プログラムが格納されている。制御部11がこれらのプログラムをRAMの作業領域に展開して実行することによって、印刷装置1の各部が統括制御される。すなわち、制御部11の各機能は、制御部11のCPUと記憶部12のプログラム記憶領域121等に記憶されたプログラムとの協働によって実現される。
【0033】
制御部11は、まず印刷機構4の印刷ヘッド41やヘッド移動機構48を構成するX方向移動モータ45、Y方向移動モータ47等の動作を制御する。
また制御部11は、撮影部5のカメラ51及び光源52の動作を制御して、爪画像(爪Tを含む指Uの画像)等を撮影させ、撮影によって得られた画像データを取得する。
また制御部11は、表示部22の表示動作を制御し、表示部22に各種の報知画面やメッセージ画面等を表示させる。
さらに制御部11は、通信部25を制御して各種外部機器とデータの送受信を可能とする。
【0034】
また、特に本実施形態の制御部11は、取得手段として温度検知部413から印刷ヘッド41の温度を取得する。
また制御部11は、判定手段として、取得された印刷ヘッド41の温度に基づいて、印刷ヘッド41のインク吐出状態を判定する。
【0035】
本実施形態の印刷ヘッド41は、前述のように加熱によりインクを吐出させるものであり、取得手段としての制御部11は、インクを吐出させる前の印刷ヘッド41の温度である「第1の温度T1」と、インクの吐出を行った後の印刷ヘッド41の温度である「第2の温度T2」と、を取得する。
そして制御部11は、判定手段として、「第1の温度T1」と、「第2の温度T2」と、に基づいて印刷ヘッド41のインク吐出状態を判定する。
【0036】
なお本実施形態では、前述のように、印刷ヘッド41は、インクを吐出させて排出するインク排出動作を行う前に制御部11が予備加熱部412を動作させて予備加熱を行う。このため、本実施形態において、インクを吐出させる前の印刷ヘッド41の温度である「第1の温度T1」とは、予備加熱後の印刷ヘッド41の温度である。前述のように予備加熱ではフィードバック制御が行われ、印刷ヘッド41の温度が所定の目標温度となるように制御される。そして予備加熱が終了すると、印刷準備としてインク排出処理が行われる。このため、本実施形態ではインクを吐出させる前の印刷ヘッド41の温度である「第1の温度T1」は、予備加熱の目標温度である。
【0037】
図4は、本実施形態の印刷ヘッドのインク吐出前後における温度変化例を示すグラフである。
図4に示すように、予備加熱を開始すると印刷ヘッド41の温度が上がっていく。印刷ヘッド41の温度は温度検知部413によって検知されて制御部11に取得される。予備加熱がフィードバック制御をかけながら行われることで所定の目標温度まで温度が上昇すると、制御部11が駆動信号の印加を止めて、それ以上温度が上がり過ぎないように予備加熱を終了する。
予備加熱の目標温度(「第1の温度T1」)を何度に設定するかは適宜設定されるが、例えば
図5に示す例では50度である。印刷ヘッド41の温度は装置が置かれている場所の雰囲気温度(周囲温度)等に左右されるが目標温度を一定に設定することで、周囲温度等により目標温度に到達するまでの時間に長短は生じても、予備加熱が終了した際の温度(「第1の温度T1」)は、ほぼ目標温度(
図5に示す例では、50度)に揃う。
【0038】
また、本実施形態において「第2の温度T2」は、予備加熱後、インク排出動作を行った後の印刷ヘッド41の温度である。「第2の温度T2」は温度検知部413によって検知されてもよいし、発熱体(抵抗発熱体)で検出されて制御部11に出力される値であってもよい。なお「第2の温度T2」も個々のノズルの温度ではなく「第1の温度T1」と同様に印刷ヘッド41全体としての温度である。
【0039】
サーマル式の印刷ヘッドでは、各ノズルの発熱体を発熱させてインクを吐出させるため、インクを吐出させる際には印刷ヘッド全体としても温度が上昇する。
しかし、印刷ヘッド41のインク吐出状態が不良である場合には、通常の温度上昇以上の過度の温度上昇が発生する。
【0040】
過度の温度上昇の要因としては、例えば印刷ヘッド41のノズルが詰まっている場合には各ノズルの発熱体を発熱させてもインクがノズルから吐出されず、吐出のために加えたエネルギーが印刷ヘッド41内部から逃げないことが考えられる。
また例えばインクを貯留するインクカートリッジからノズルまでのインク流路内でインク詰まり等が生じている場合には、各ノズルにインクが充填されず、ノズルが空の状態となっていることが考えられる。ノズルにインクが充填されていない場合には、発熱体が発熱した際に、インクを介さず直接ノズルに熱が伝わり続ける等の理由により、ノズルの温度が過度に上昇することが考えられる。
【0041】
そしてこれらの要因によりノズルの温度が過度に上昇すると、ひいては印刷ヘッド41全体の温度も過度に上昇する。
ノズルにインクが詰まる等により印刷ヘッド41のインク吐出状態が不良である場合には、吐出不良の生じているノズルの数やノズル等の詰まりの程度が大きいほど印刷ヘッド41全体としての温度も上昇する。
【0042】
本実施形態では、このようなインク吐出の際の温度上昇の仕方に着目し、判定手段としての制御部11が、「第1の温度T1」と「第2の温度T2」との差分の程度を見ることによって印刷ヘッド41のインク吐出状態(ノズルの詰まり具合等)を判定する。
【0043】
図4において「第2の温度T2_1」は、ノズル詰まり等が生じている吐出不良のノズルがないか、その数が少ない場合、目詰まりの程度が比較的軽微な場合の印刷ヘッド41についてインク排出動作後に取得した「第2の温度T2」である。この場合にはインク排出動作を行ってもそれほど温度が上昇しない。このため、「第1の温度T1」と「第2の温度T2」(
図4においてT2_1)との温度差が小さい。
これに対して、
図4における「第2の温度T2_2」は、ノズル詰まりが発生している吐出不良のノズルが多く存在する場合や詰まり具合がひどい場合の印刷ヘッド41についてインク排出動作後に取得した「第2の温度T2」である。この場合にはインク排出動作を行うと印刷ヘッド41全体の温度が大きく上昇する。このため、「第1の温度T1」と「第2の温度T2」(
図4においてT2_2)との温度差が大きい。
【0044】
本実施形態の例では、
図5に示すように、例えば「第2の温度T2」が「第1の温度T1」+5度以内(「第1の温度T1」と「第2の温度T2」との差分が5度以内)であれば「D1」とし、「第2の温度T2」が「第1の温度T1」+10度以内(「第1の温度T1」と「第2の温度T2」との差分が10度以内)であれば「D2」とし、「第2の温度T2」が「第1の温度T1」+15度以内(「第1の温度T1」と「第2の温度T2」との差分が15度以内)であれば「D3」とする。なお「第2の温度T2」の上昇の程度は、吐出不良のノズルの数や詰まり具合のひどさに対応する。前述のように「第1の温度T1」は予備加熱の目標温度にほぼ揃っている。このため「第1の温度T1」と「第2の温度T2」との差分が大きいほど(
図5に示す例ではD1<D2<D3の順に)、印刷ヘッド41のインク吐出状態が悪いといえる。
【0045】
判定手段としての制御部11は、こうした「第1の温度T1」と「第1の温度T2」との差分の程度によって、印刷ヘッド41のインク吐出状態の良・不良及び不良の場合における不良の程度を判定する。
例えば「第1の温度T1」と「第2の温度T2」との差分が「D1」等、所定の閾値以下である場合には、ノズル詰まりが発生していないか、発生していても軽微であると考えられる。このため制御部11は、印刷ヘッド41のインク吐出状態は良好であると判定する。
これに対して「第1の温度T1」と「第2の温度T2」との差分が「D2」、「D3」と大きくなるにつれて、印刷ヘッド41においてノズル詰まりが発生しているノズル数が多いか発生しているノズル詰まりの程度がひどいことが考えられる。そこで制御部11は、「第1の温度T1」と「第2の温度T2」との差分の程度に応じて不良の程度を判定する。
【0046】
なお、インク排出動作後に取得した温度が高すぎる場合には、エラーとして印刷動作に移行しないようにすることが好ましい。
本実施形態ではエラーとされる温度(
図5において「エラー対象温度T3」)を70度以上(「第1の温度T1」+20度以上)とする例を示している。
なお、
図5に示した値は一例であり、それぞれ適宜設定が可能である。例えば制御部11が、インク吐出状態が良好であると判定する「所定の閾値」(
図5における「D1」)は「第2の温度T2」が「第1の温度T1」+5度以内の場合(
図5参照)に限定されない。また「エラー対象温度T3」は、70度以上に限定されず、適宜設定される。
【0047】
本実施形態において、制御部11はヘッド保守部7における保守処理を行わせる保守制御部としても機能する。制御部11が判定手段として判定した印刷ヘッド41のインク吐出状態(ノズルの詰まり具合等の状況)に応じて印刷ヘッド41のインク吐出状態を回復させる保守処理を行わせる。
【0048】
印刷ヘッド41の保守処理としては、前述のように、インク排出処理、ワイプ処理及び撹拌処理等が考えられる。このうち、インク排出処理は印刷動作の準備段階として行われるが、ワイプ処理及び撹拌処理については、印刷装置1に当該処理に対応するヘッド保守部7が設けられているか否かによって対応が異なる。
また印刷装置1がインク排出処理、ワイプ処理及び撹拌処理の全てを行うことが可能である場合でも、どのような保守処理を行うかはインク吐出状態の不良の程度によって異なる。
例えば制御部11が判定手段として判定した不良の程度が軽微である場合には、インク排出処理を行わせるとともに、ワイプ機構によるワイピングを行わせ、判定手段として判定した不良の程度が甚大である場合にはさらに撹拌機構による撹拌動作を行わせる。
なお、ヘッド保守部7の構成による対応の違いについては後に詳述する。
【0049】
また制御部11は、表示部22の表示動作を制御し、表示部22に各種の報知画面やメッセージ画面等を表示させるようになっている。
本実施形態において、印刷ヘッド41のインク吐出状態が、ヘッド保守部7における保守処理によっては回復することができない程度に不良であると、判定手段としての制御部41が判定したときは、インク吐出状態が不良であることを報知する報知画面を表示部22に表示させる。この場合、表示部22が報知手段として機能する。
【0050】
次に、
図6から
図8を参照しつつ、本実施形態における印刷装置1の作用、印刷制御方法について説明する。
図6から
図8は、本実施形態における印刷制御処理を示すフローチャートである。
前述のように、印刷装置1にどのようなヘッド保守部7が設けられているかによって、印刷ヘッド41の保守処理が必要な場合の対応が異なる。以下、印刷ヘッド41の保守処理として、インク排出処理だけが予定されている場合(ワイプ処理及び撹拌処理を行うヘッド保守部7を有さない場合)、インク排出処理とワイプ処理とが予定されている場合(撹拌処理を行う撹拌機構を有さない場合)、インク排出処理、ワイプ処理及び撹拌処理が全て可能である場合(インク排出処理、ワイプ処理に対応するヘッド保守部7及び撹拌処理を行う撹拌機構を有する場合)に分けて説明する。
【0051】
図6は、印刷ヘッド41の保守処理として、インク排出処理だけが予定されている場合の処理を示すフローチャートである。
【0052】
この場合には、まず印刷動作前に印刷ヘッド41の予備加熱を行う(ステップS1)。制御部11は、フィードバック制御をかけながら予備加熱部412により予備加熱を行い、予備加熱の目標温度(
図5に示す例では50度)に到達したら予備加熱を終了する。そして、予備加熱後の印刷ヘッド41の温度を温度検知部413により検知し、制御部11は検知結果を「第1の温度T1」として取得する(ステップS2)。
【0053】
次に制御部11は、インク吐出部411の発熱部を発熱させて印刷ヘッド41からのインク排出処理を行う(ステップS3)。そしてインク排出後の印刷ヘッド41の温度を温度検知部413により検知させて、その検知結果を「第2の温度T2」として取得する(ステップS4)。
制御部11は判定手段として、インク排出処理後に取得した印刷ヘッド42の温度(「第2の温度T2」)が、エラー対象温度T3以上か否かを判断する(ステップS5)。「第2の温度T2」がエラー対象温度T3以上である場合(ステップS5;YES)、例えば
図5に示す例では「第2の温度T2」が70度以上である場合には、制御部11は、保守処理によってはインク吐出状態の回復を見込めない程度に吐出不良の程度が悪い、と判断して、ノズル状態が不良である旨を表示部22に表示させてユーザに報知し、処理を終了する(ステップS6)。なお、この場合には印刷ヘッド41の交換をユーザに求めるメッセージ等も併せて表示部22に表示させてもよい。
【0054】
他方、「第2の温度T2」がエラー対象温度T3以上ではない場合(ステップS5;NO)には、制御部11はさらに「第2の温度T2」と「第1の温度T1」との差分が「D1」以上であるか否かを判定する(ステップS7)。そして「第2の温度T2」と「第1の温度T1」との差分が「D1」よりも小さい場合(ステップS7;NO)には、制御部11は、印刷ヘッド41(印刷ヘッドのノズル)のインク吐出状態は良好であるとして印刷動作に移行し(ステップS8)、処理を終了する。
【0055】
一方「第2の温度T2」と「第1の温度T1」との差分が「D1」以上である場合(ステップS7;YES)には、制御部11は、インク排出処理の実施回数が所定の回数(
図6においてN回)以上であるか否かを判断する(ステップS9)。
印刷ヘッド41のインク吐出状態はインクを強制的に排出する動作を繰り返すことで目詰まりしていた汚れ等が押し流されて回復することがある。ただ何度インク排出を繰り返しても改善しない場合にはインクの無駄な廃棄を繰り返すだけとなり好ましくない。
【0056】
このため、インク排出処理の実施回数がすでにN回以上である場合(ステップS9;YES)には、制御部11は、インク排出処理では何回繰り返してもインク吐出状態の回復は望めないと判断し、ノズル状態が不良である旨を表示部22に表示させてユーザに報知し、処理を終了する(ステップS6)。この場合、印刷ヘッド41の交換をユーザに求めるメッセージ等も併せて表示部22に表示させてもよいことは上記と同様である。
他方、インク排出処理の実施回数が未だN回に満たない場合(ステップS9;NO)には、制御部11は、ステップS1に戻って再度処理を繰り返すように各部を制御する。
【0057】
なお、印刷ヘッド41の保守処理は、例えば指1本分の爪について印刷動作が終わるごとに、次の印刷動作に移る前に行われる。このため指1本分の爪について印刷動作が終了するとインク排出処理の回数もリセットされ、改めてカウントが開始される。
指1本分の爪について印刷動作が終わるごとに印刷ヘッド41の保守処理を行うことで、複数本の指の爪に順次印刷を行う場合でも常にインク吐出状態の良好な状態を保って高品位の印刷を行うことができる。なお、保守処理を行うタイミング(インク排出処理の回数がリセットされるタイミング)は指1本分の爪について印刷動作が終わるごとに限定されず、例えば片手5本分の指の爪に印刷を行うごと、両手10本分の指の爪に印刷を行うごと、のように予定された一連の印刷が終了するごとであってもよい。
また「所定の回数」(N回)を何回とするかは、適宜設定される。
【0058】
次に
図7は、印刷ヘッド41の保守処理として、インク排出処理とワイプ処理との2種類が予定されている場合の処理を示すフローチャートである。
【0059】
この場合も、まず印刷動作前に印刷ヘッド41の予備加熱を行い(ステップS11)、予備加熱後の印刷ヘッド41の温度を制御部11が「第1の温度T1」として取得する(ステップS12)。次に印刷ヘッド41からのインク排出処理を行い(ステップS13)、インク排出後の印刷ヘッド41の温度を制御部11が「第2の温度T2」として取得する(ステップS14)。
【0060】
制御部11は判定手段として、インク排出処理後に取得した印刷ヘッド41の温度(「第2の温度T2」)が、エラー対象温度T3以上か否かを判断する(ステップS15)。「第2の温度T2」がエラー対象温度T3以上である場合(ステップS15;YES)には、制御部11は、ノズル状態が不良である旨を表示部22に表示させてユーザに報知して処理を終了する(ステップS16)。なお、ステップS11からステップS16は、
図6におけるステップS1からステップS6と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0061】
一方、「第2の温度T2」がエラー対象温度T3以上ではない場合(ステップS15;NO)には、制御部11はインク排出処理の実施回数が所定の回数(
図7においてN回)以上であるか否かを判断する(ステップS17)。
インク排出処理の実施回数がすでにN回以上である場合(ステップS17;YES)には、制御部11は、ノズル状態が不良である旨を表示部22に表示させてユーザに報知し、処理を終了する(ステップS16)。この場合、印刷ヘッド41の交換をユーザに求めるメッセージ等も併せて表示部22に表示させてもよいことは
図6に置いて説明したのと同様である。
【0062】
他方、インク排出処理の実施回数が未だN回に満たない場合(ステップS17;NO)には、制御部11はさらに「第2の温度T2」と「第1の温度T1」との差分が「D1」以上であるか否かを判定する(ステップS18)。そして「第2の温度T2」と「第1の温度T1」との差分が「D1」よりも小さい場合(ステップS18;NO)には、印刷ヘッド41(印刷ヘッドのノズル)のインク吐出状態は良好な状態に回復したとして印刷動作に移行し(ステップS19)、処理を終了する。
【0063】
一方「第2の温度T2」と「第1の温度T1」との差分が「D1」以上である場合(ステップS18;YES)には、制御部11は保守制御部として、印刷ヘッド41の保守処理としてワイプ処理を行う(ステップS20)。具体的には印刷ヘッド41をメンテナンス領域Armに移動させ、印刷ヘッド41のインク吐出面にワイプブレードを接触させて、印刷ヘッド41を前後(又は左右)に移動させることによりインク吐出面に付着した汚れ等をかき取り、除去する動作を行わせる。なお、ワイプブレード側を移動させる機構を有する場合には、印刷ヘッド41を固定した状態でワイプブレード側を移動させてもよい。
【0064】
さらに、制御部11は「第2の温度T2」と「第1の温度T1」との差分が「D2」以上であるか否かを判定する(ステップS21)。そして「第2の温度T2」と「第1の温度T1」との差分が「D2」よりも小さい場合(ステップS21;NO)、つまり「第2の温度T2」と「第1の温度T1」との差分が「D1」以上であり、かつ、「D2」未満である場合には、印刷ヘッド41のインク吐出状態は、ワイプ処理を行えば回復させることができるレベルであると判定手段としての制御部11により判断される。このため、制御部11は、ワイプ処理を行った後はノズルの目詰まり等が解消し、印刷ヘッド41(印刷ヘッド41のノズル)のインク吐出状態は良好な状態に回復したとして印刷動作に移行し(ステップS19)、処理を終了する。
【0065】
他方、インク排出処理の実施回数が未だN回に満たない場合(ステップS21;YES)には、制御部11は、ステップS1に戻って再度処理を繰り返すように各部を制御する。
このように、印刷装置1がワイプ処理を行う機構を備えている場合には、インク排出処理とワイプ処理とを組み合わせて、インク吐出状態の回復を試みるようになっている。
【0066】
さらに
図8は、印刷ヘッド41の保守処理として、インク排出処理、ワイプ処理及び撹拌処理の3種類が予定されている場合の処理を示すフローチャートである。
【0067】
なお、
図8におけるステップS31からステップS37は、
図7におけるステップS21からステップS27と同様であるため、説明を省略する。
【0068】
インク排出処理の実施回数が未だN回に満たない場合(ステップS37;NO)には、
制御部11はさらに「第2の温度T2」と「第1の温度T1」との差分が「D3」以上であるか否かを判定する(ステップS38)。そして「第2の温度T2」と「第1の温度T1」との差分が「D3」よりも大きい場合(ステップS38;NO)には、制御部11は保守制御部2として、印刷ヘッド41の保守処理として撹拌処理を行う(ステップS40)。具体的には例えば印刷ヘッド41を激しく前後左右に移動させるようにヘッド移動機構48の各モータ45,47等を制御する。この場合、ヘッド移動機構48がヘッド保守部として機能する
【0069】
なお、撹拌処理の内容はこれに限定されない。例えば印刷機構4に、印刷ヘッド41に振動を与えるような機構を備えて、印刷ヘッド41(特にインクを貯留するカートリッジ部分)を振動させ、内部のインクを撹拌してもよい。または、表示部22等にインクの撹拌処理が必要である旨等を表示させて、ユーザに印刷ヘッド41を装置から取り外させ、手動又は印刷装置1外の装置にセットすることで自動で、撹拌処理を行わせてもよい。
撹拌処理が行われた後は、ステップS1に戻って、一連の処理を繰り返す。これにより、インク成分の分離、沈降が原因でノズルの目詰まり等を起こし、インク吐出状態が悪くなっているような場合に、インク吐出状態を回復させることができる。
【0070】
他方「第2の温度T2」と「第1の温度T1」との差分が「D3」よりも小さい場合(ステップS18;NO)には、制御部11はさらに「第2の温度T2」と「第1の温度T1」との差分が「D1」以上であるか否かを判定する(ステップS40)。そして「第2の温度T2」と「第1の温度T1」との差分が「D1」よりも小さい場合(ステップS40;NO)には、制御部11は、印刷ヘッド41(印刷ヘッド41のノズル)のインク吐出状態は良好であるとして印刷動作に移行し(ステップS41)、処理を終了する。
【0071】
一方「第2の温度T2」と「第1の温度T1」との差分が「D1」以上である場合(ステップS40;YES)には、制御部11は、印刷ヘッド41の保守処理としてワイプ処理を行う(ステップS42)。なお、ワイプ処理の詳細は、
図7のステップS20で説明したものと同様であることから説明を省略する。
【0072】
そしてワイプ処理後に、制御部11は「第2の温度T2」と「第1の温度T1」との差分が「D2」以上であるか否かを判定する(ステップS43)。そして「第2の温度T2」と「第1の温度T1」との差分が「D2」よりも小さい場合(ステップS43;NO)、つまり「第2の温度T2」と「第1の温度T1」との差分が「D1」以上であり、かつ、「D2」未満である場合には、制御部11は、ノズルの目詰まり等がワイプ処理を行ったことで解消し、印刷ヘッド41(印刷ヘッドのノズル)のインク吐出状態は良好な状態に回復したとして印刷動作に移行し(ステップS41)、処理を終了する。
このように、印刷装置1がワイプ処理の他、撹拌処理についても想定している場合には、インク排出処理とワイプ処理と撹拌処理とを組み合わせて、インク吐出状態の回復を試みるようになっている。
【0073】
このように、印刷ヘッド41のインク排出処理前後の温度変化(「第2の温度T2」と「第1の温度T1」との差分)を見ることで、実際の印刷前に印刷ヘッド41(印刷ヘッド41のノズル)のインク吐出状態を推測することはできる。このため、適宜必要な保守処理を行うことができ、吐出不良の状態で印刷が行われるのを防いで、印刷品位が低下するのを防ぐことができる。
【0074】
以上のように、本実施形態によれば、印刷装置1が、印刷ヘッド41の温度を取得する取得手段として機能し、取得された印刷ヘッド41の温度に基づいて、印刷ヘッド41のインク吐出状態を判定する判定手段として機能する制御部11を備えている。
これにより、印刷ヘッド41の温度を見るという比較的簡易な手法により、印刷ヘッド41のインク吐出状態を把握することができ、印刷ヘッド41の状態を容易に管理することが可能となる。
【0075】
また本実施形態の印刷ヘッド41は、加熱によりインクを吐出させるものであり、取得手段としての制御部11は、インクを吐出(排出)させる前の印刷ヘッド41の温度である「第1の温度T1」と、インクの吐出(排出)を行った後の印刷ヘッド41の温度である「第2の温度T2」と、を取得し、判定手段として、「第1の温度T1」と、「第2の温度T2」と、に基づいて印刷ヘッド41のインク吐出状態を判定する。
加熱によりインクを吐出させるサーマル方式の印刷ヘッド41では、インクを廃インク部等に吐出させて排出するインク排出処理を行うと通常でも多少印刷ヘッド41の温度が上昇する。しかし、吐出不良の状態でインク排出処理を行うと、通常の場合以上に各ノズルの温度、ひいては印刷ヘッド41自体の温度が上昇する。このため、「第1の温度T1」と「第2の温度T2」とを取得すればこれらに基づいて印刷ヘッド41のインク吐出状態を適切に判定することができる。
【0076】
また本実施形態の印刷ヘッド41は、インクを吐出させて排出するインク排出動作を行う前に予備加熱を行うものであり、「第1の温度T1」は予備加熱後の印刷ヘッド41の温度であり、「第2の温度T2」は、予備加熱後、インク排出動作を行った後の印刷ヘッド41の温度である。
印刷ヘッド41の温度は装置周辺の雰囲気温度(周囲温度)等に左右されるが、予備加熱では一定の目標温度までの加熱が行われるため、予備加熱が終了した際の温度(「第1の温度T1」)は、ほぼ一定(
図5に示す例では、50度)に揃えることができる。このため、装置周辺の雰囲気温度(周囲温度)等によらず、印刷ヘッド41の温度変化を適切に見ることができる。
【0077】
また本実施形態において判定手段としての制御部11は、「第1の温度T1」と、「第2の温度T2」と、の差分が所定の閾値以下である場合に、印刷ヘッド41のインク吐出状態が良好であると判定する。
吐出不良の状態にある印刷ヘッド41でインク排出処理を行うと、各ノズルの温度、ひいては印刷ヘッド41自体の温度がインク吐出状態が正常である場合よりも上昇する。このため、差分が所定の閾値以下であれば吐出状態が良好であることが推測できる。
【0078】
また本実施形態において判定手段としての制御部11は、「第1の温度T1」と、「第2の温度T2」と、の差分の程度によって印刷ヘッド41のインク吐出状態を判定する。
印刷ヘッド41(印刷ヘッド41のノズル)のインク吐出状態が悪いほど、インク排出動作を行った後の印刷ヘッド41の温度(「第2の温度T2」)は、上昇する。このような温度変化に基づいて簡易に印刷ヘッド41のインク吐出状態を把握することができる。
【0079】
また本実施形態では、印刷ヘッド41のインク吐出状態を回復させる保守を行うヘッド保守部7、ヘッド保守部7における保守処理を行わせる保守制御部として機能する制御部11とを備え、保守制御部としての制御部11は、インク吐出状態の判定結果に基づいてヘッド保守部7において印刷ヘッド41の保守処理を行わせる。
これにより、印刷ヘッド41のインク吐出状態を回復させるための適切な動作をさせることができる。
【0080】
また本実施形態のヘッド保守部7は、印刷ヘッド41のインク吐出面をワイピングするワイプ機構を含んでいる。
これにより、ノズル面等にインクが付着することでノズルの目詰まりが発生しているような場合には、ワイピングにより印刷ヘッド41のインク吐出状態を回復させることができる。
【0081】
また本実施形態のヘッド保守部7は、印刷ヘッド41内に貯留されているインクを撹拌する撹拌機構を含んでいる。
これにより、例えばインクカートリッジに貯留されたインク成分の分離、沈降等によりインク流路が目詰まりしているような場合でも、印刷ヘッド41のインク吐出状態を回復させることができる。
【0082】
また本実施形態において判定手段としての制御部11は、印刷ヘッド41のインク吐出状態の良・不良及び不良の場合における不良の程度を判定し、制御部11は判定手段として判定した不良の程度に応じて、保守制御部として、ヘッド保守部7における保守処理を行わせる。
これにより、過不足ない保守処理により印刷ヘッド41のインク吐出状態を回復させることができる。
【0083】
また本実施形態のヘッド保守部7が、印刷ヘッド41のインク吐出面をワイピングするワイプ機構と、印刷ヘッド41内に貯留されているインクを撹拌する撹拌機構と、を含んでいる場合には、保守制御部としての制御部11は、判定手段として判定した不良の程度が軽微である場合にはワイプ機構によるワイピングを行わせ、判定手段として判定した不良の程度が甚大である場合には撹拌機構による撹拌動作を行わせる。
これにより、印刷ヘッド41のインク吐出状態の不良の程度に応じた対応を行って吐出状態を回復させることができる。
【0084】
また本実施形態では、判定手段としての制御部11が、印刷ヘッド41のインク吐出状態がヘッド保守部7における保守処理によっては回復することができない程度に不良であると判定したときには、インク吐出状態が不良であることを報知手段により報知する。
ヘッド保守部7における保守処理によっては対応しきれないほど印刷ヘッド41のインク吐出状態が悪化している場合には、ユーザによる印刷ヘッド41の交換等の作業が必要となる。この点、インク吐出状態が不良であることを報知させることで、ユーザが状況を把握し、適切な対応を取ることができるようになる。
【0085】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0086】
例えば、制御部11が、「第1の温度T1」と「第2の温度T2」とを取得した後の判定処理は、「第1の温度T1」と「第2の温度T2」とに基づいて行われればよく、両者の差分に基づいて行われることは必須ではない。差分以外によってインク排出処理後の温度変化(「第1の温度T1」に対する「第2の温度T2」の上昇の程度)を見てもよい。
【0087】
また、制御部11が、「第1の温度T1」と「第2の温度T2」とを取得した後の処理は、
図6から
図8に例示したものに限定されない。
例えば「第2の温度T2」がエラー対象温度T3以上か否かをはじめに判断することは必須ではなく、判定処理の途中で判断してもよい。
また、インク吐出実施回数が所定回数以上か否かの判断を行う順番も図示例に限定されない。
【0088】
さらに、印刷装置1が行うことのできる保守処理が複数ある場合に、それらすべてを行うことは必須ではない。
例えば保守処理としてインク排出処理、ワイプ処理、撹拌処理を行うことができる場合に、吐出不良が生じている原因がインク吐出面の汚れ等ではなく、インク成分の分離・沈降に由来することが特定できる場合には、インク排出処理の後、ワイプ処理を試みずに、撹拌処理に移行するようにしてもよい。
【0089】
また、ワイプ処理や撹拌処理を行った後には、必ずインク排出処理を行い、ノズル内やインク流路内に残留しているインクや汚れ等を押し流すようにしてもよいし、ワイプ処理や撹拌処理後にはインク排出処理には行かずにすぐに印刷動作に移行してもよい。
また、「第2の温度T2」を取得する前に行われるインク排出処理と、ワイプ処理や撹拌処理を行った後に行うインク排出処理とは同一内容でなくてもよい。例えばワイプ処理や撹拌処理の後に行うインク排出処理では「第2の温度T2」を取得する前に行われるインク排出処理の場合よりも吐出させるインク量を少なくする等してもよい。この場合には保守処理で消費されるインクの量を抑えることができる。
【0090】
さらに、印刷装置1が行うことのできる保守処理は、実施形態に示したものに限定されない。
例えばヘッド保守部7には廃インク部のみを設けて、ワイプ処理に相当する保守処理を装置外で行う構成としてもよい。この場合、制御部11が印刷ヘッド41を装置から取り外してワイプ処理等を行うようにユーザに求めるメッセージ等を表示部22等に表示させる。
この場合には印刷装置1に搭載される保守処理用の部品を少なくすることができる。
例えばワイプ処理を行うためのワイプブレードが装置外に設けられる場合、ユーザが装置外に取り出した印刷ヘッド41のインク吐出面をワイプブレードに押し当てて自らワイプブレードによるインク吐出面の汚れ等のかき取り、除去等を行ってもよい。
【0091】
またヘッド保守部7に、ワイプ機構の代わりに、又はワイプ機構とともに、印刷ヘッド41のインク吐出面に不織布等を押し当ててインク吐出面やノズル等に付着しているインクや汚れ等を吸着させて除去する機構を設けてよい。またこのような保守処理を装置外で行ってもよく、この場合にはユーザが印刷ヘッド41装置外に取り出して不織布等を用いてインク吐出面等をメンテナンスする。
【0092】
また本実施形態では、制御部11が判定手段として、印刷ヘッド41のインク吐出状態の良・不良及び不良の場合における不良の程度を判定し、この判定結果に応じて、ヘッド保守部7における保守処理を行わせる場合を例示したが、ヘッド保守部7における保守処理は判定結果に応じて行われる場合に限定されない。
例えば、インクを吐出させる前の印刷ヘッド41の温度である「第1の温度」と、インクの吐出を行った後の印刷ヘッド41の温度である「第2の温度」と、を取得して、取得された印刷ヘッド41の「第1の温度」と、「第2の温度」と、に基づいて、制御部11が保守制御部としてヘッド保守部7における保守処理を行わせてもよい。
【0093】
また本実施形態では、印刷装置1が単体で印刷動作を完結できるように構成し、操作部21や報知手段として機能する表示部22も印刷装置1が備えるものとしたが、印刷装置1の構成はこれに限定されない。
例えば印刷装置1が端末装置等の外部機器と連携して印刷システムを構成してもよい、この場合には、印刷装置1には印刷処理を行う印刷機構等、最低限の機構を備え、その他の機能については、連携する外部機器と分担する。
具体的には、例えばネイルデザインの選択、印刷を行う爪の指の指種の選択等を外部機器の操作部で行ってもよいし、外部機器の表示部がインク吐出状態が不良であること等を報知する報知手段として機能し、各種の報知画面の表示等を行ってもよい。この場合には、印刷装置1が操作部21や表示部22を備えなくてもよい。
【0094】
また、本実施形態では印刷装置1の制御部11が、印刷ヘッド41の温度を取得する取得手段、取得された印刷ヘッド41の温度に基づいて、印刷ヘッド41のインク吐出状態を判定する判定手段として機能する場合を例示したが、取得手段、判定手段として機能するのは印刷装置1の制御部11に限定されない。
例えば印刷ヘッド41の温度(「第1の温度T1」及び「第2の温度T2」)が温度検知部413によって検知されると、検知結果が外部機器の制御部に送られて、外部機器の制御部において印刷ヘッド41のインク吐出状態を判定するようにしてもよい。この場合には、外部機器の制御部が取得手段、判定手段として機能する。また、外部機器の制御部が取得手段、判定手段として機能するためのプログラムや必要なデータ(例えば
図5に示す各項目の数値等)も外部機器側の記憶部等に格納される。
【0095】
また印刷装置は、加熱によりインクを吐出させるサーマル方式の印刷ヘッドを備えるものであればよく、印刷対象等は特に限定されない。例えば紙等に印刷を行う印刷装置でもよい。
【0096】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0097】
1 印刷装置
3 指配置部
4 印刷機構
41 印刷ヘッド
411 インク吐出部
412 予備加熱部
413 温度検知部
5 撮影部
51 カメラ
52 光源
7 ヘッド保守部
10 制御装置
11 制御部
12 記憶部
21 操作部
22 表示部
Arm メンテナンス領域