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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115584
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】弾性軸継手用継手本体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 3/74 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
F16D3/74 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021267
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】517413605
【氏名又は名称】ニッタ化工品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003465
【氏名又は名称】弁理士法人OHSHIMA&ASSOCIATES
(72)【発明者】
【氏名】浅図 真吾
(57)【要約】
【課題】 作業が簡単で生産性が良く、各層間にエアーが残留することを抑制可能な弾性軸継手用継手本体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 補強コードによって補強された補強ゴム層2を有するゴム積層体3からなり、略筒状に形成された、弾性軸継手用の継手本体1の製造方法であって、
(A)未加硫の補強ゴム層8を有する平板状の未加硫ゴム積層体10を得る工程と、
(B)外周面が外側に膨らむように湾曲形成された凸状ローラ12と、外周面が内側に凹むように湾曲形成された凹状ローラ13とを備えた成形装置11を用い、凸状ローラ12を回転させながら、前記(A)の工程で得られた未加硫ゴム積層体10を、凸状ローラ12と凹状ローラ13の間を通過させて未加硫ゴム積層体10を予備成形する工程と、
(C)前記(B)の工程で得られた予備成形後の未加硫ゴム積層体10を金型に収容して加硫成形する工程と、
を備えた構成とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強コードによって補強された補強ゴム層を有するゴム積層体からなり、略筒状に形成された、弾性軸継手用の継手本体の製造方法であって、
(A)未加硫ゴムシートと、補強コードに未加硫ゴムをトッピングしてなる未加硫補強ゴムシートとを積層して平板状の未加硫ゴム積層体を得る工程と、
(B)外周面の中心軸方向中央部が半径方向外側に膨らむように湾曲形成された凸状ローラと、外周面の中心軸方向中央部が半径方向内側に凹むように湾曲形成された凹状ローラとを備えた成形装置を用い、前記凸状ローラを回転させながら、前記(A)の工程で得られた平板状の未加硫ゴム積層体を、前記凸状ローラと前記凹状ローラの間を通過させることで、前記未加硫ゴム積層体を予備成形する工程と、
(C)前記(B)の工程で得られた予備成形後の前記未加硫ゴム積層体を金型に収容して加硫成形する工程と、
を備えた継手本体の製造方法。
【請求項2】
前記凹状ローラは、前記凸状ローラの周囲に間隔をおいて複数配置された請求項1に記載の継手本体の製造方法。
【請求項3】
前記(A)の工程において、前記未加硫ゴム積層体を加温し、加温状態の前記未加硫ゴム積層体を用いて前記(B)の工程を実行する請求項2に記載の継手本体の製造方法。
【請求項4】
前記凸状ローラ及び前記凹状ローラのうち少なくとも一方を加温して前記(B)の工程を実行する請求項2又は3に記載の継手本体の製造方法。
【請求項5】
前記(B)の工程において、予備成形後の前記未加硫ゴム積層体を前記凸状ローラから取り外し、前記未加硫ゴム積層体の長さ方向両端面及び幅方向両端面を未加硫ゴムで被覆したのちに、前記(C)の工程を実行する請求項1~3のいずれか1項に記載の継手本体の製造方法。
【請求項6】
前記複数の凹状ローラのうちの少なくとも1つは、一定の圧力を前記凸状ローラの中心軸に向って付勢可能とされた請求項2又は3に記載の継手本体の製造方法。
【請求項7】
前記継手本体は、周方向の1箇所に分断部を有する筒状体で、その中心軸方向における中央部が外方に膨らんだタイヤ状に成形された形状である請求項1~3のいずれか1項に記載の継手本体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、駆動軸から従動軸にトルクを伝達するための弾性軸継手に用いられる、補強コードによって補強された補強ゴム層を有するゴム積層体からなる継手本体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、駆動軸と従動軸との連結部には、駆動軸から従動軸にトルクを伝達するための軸継手が設けられている。この軸継手としては、衝撃の緩和や、振動の減衰、駆動軸および従動軸の設置誤差の吸収などを目的として、ゴム状弾性体からなる継手本体を備えた弾性軸継手が用いられることが多く、その継手本体を介してトルクを伝達するようになっている(特許文献1の図10参照 )。
【0003】
上記弾性軸継手は、回転軸1Aの端部と回転軸1Bの端部に固定される一対のフランジ2A及び2Bと、一対のフランジ2A及び2Bを連結するゴム製継手本体3とを備える。ゴム製継手本体3は、略筒状でその中心軸方向の中央部が半径方向外方に膨出したタイヤ状に形成される。さらに、ゴム製継手本体3は、剛性を高めるために、天然ゴムからなる内外層ゴム3A,3B間にナイロン等からなるタイヤコード3Cで補強した補強ゴムを複数枚重ね合わせた積層構造とされている(特許文献の段落0014参照)。
【0004】
上述したような内面ゴム層、補強ゴム層及び外面ゴム層を備えた積層構造を有する継手本体は、以下の方法で製造することができる。先ず、継手本体のタイヤ形状に合わせた形状を有する回転型(コアモールド)の外周面に、細長い帯状の未加硫ゴムシートを1周巻き付けてカットする。そして、未加硫ゴムシートをコアモールドに押し付けて、ある程度コアモールドに沿う形に成形した後、コアモールドを回転させながらステッチャーと呼ばれる円板状の回転ローラを内面ゴムシートの表面に押し付けて未加硫ゴムシートをコアモールドに密着させる。
【0005】
このとき、ステッチャーは、コアモールドの中心軸方向中央部から中心軸方向一端部側に移動させながら内面ゴムシートを押さえ付けることで内面ゴムシートの半分を隙間なくコアモールドに密着させることができる。同様に、ステッチャーをコアモールドの中心軸方向中央部から中心軸方向他端部側に移動させることで内面ゴムシート全体をコアモールドに密着させつつコアモールドと二面ゴムシートの間に溜まったエアーを抜くことが可能となる。これにより、未加硫の内面ゴム層を形成することができる。
【0006】
次に、補強コードに未加硫ゴムをトッピングした未加硫の補強ゴムシートを複数枚重ねた積層補強ゴムシートを細長いシート状にカットし、細長い積層補強ゴムシートを未加硫の内面ゴム層上に、前述と同様の方法で積層する。必要に応じてこの操作を繰り返すことにより、未加硫の内面ゴム層に複数層の未加硫補強ゴム層を形成することができる。その後、未加硫補強ゴム層上に細長い未加硫ゴムシートを前述と同様の方法で積層する。以上の操作により、コアモールド上に未加硫の内面ゴム層、補強ゴム層及び外面ゴム層が積層されるとともに、予備成形された未加硫ゴム積層体を得ることができる。以上のようにして得られた予備成形後の未加硫ゴム積層体は、コアモールドから取り外した後、金型内で加硫成形することで、継手本体を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-318275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記継手本体の製造方法では、コアモールドの外周面上に、少なくとも内面ゴム層、補強ゴム層及び外面ゴム層を各層ごとに積層する必要があり、手間がかかる上に、積層作業に熟練技術が必要とされていた。また、各層をタイヤ状に成形しつつ積層する過程で、各層の間にエアーが残留しやすく、加硫後にエアー入りの不具合が発生するという問題があった。
【0009】
そこで、本発明では、作業が簡単で生産性が良く、各層間にエアーが残留することを抑制可能な弾性軸継手用継手本体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の一態様として、補強コードによって補強された補強ゴム層を有するゴム積層体からなり、略筒状に形成された、弾性軸継手用の継手本体の製造方法であって、
(A)未加硫ゴムシートと、補強コードに未加硫ゴムをトッピングしてなる未加硫補強ゴムシートとを積層して平板状の未加硫ゴム積層体を得る工程と、
(B)外周面の中心軸方向中央部が半径方向外側に膨らむように湾曲形成された凸状ローラと、外周面の中心軸方向中央部が半径方向内側に凹むように湾曲形成された凹状ローラとを備えた成形装置を用い、前記凸状ローラを回転させながら、前記(A)の工程で得られた平板状の未加硫ゴム積層体を、前記凸状ローラと前記凹状ローラの間を通過させることで、前記未加硫ゴム積層体を予備成形する工程と、
(C)前記(B)の工程で得られた予備成形後の前記未加硫ゴム積層体を金型に収容して加硫成形する工程と、
を備えた構成とする。
【0011】
前記凹状ローラは、前記凸状ローラの周囲に間隔をおいて複数配置された構成としてもよい。
【0012】
前記(A)の工程において、前記未加硫ゴム積層体を加温し、加温状態の前記未加硫ゴム積層体を用いて前記(B)の工程を実行するようにしてもよい。
【0013】
前記凸状ローラ及び前記凹状ローラのうち少なくとも一方を加温して前記(B)の工程を実行するようにしてもよい。
【0014】
前記(B)の工程において、予備成形後の前記未加硫ゴム積層体を前記凸状ローラから取り外し、前記未加硫ゴム積層体の長さ方向両端面及び幅方向両端面を未加硫ゴムで被覆したのちに、前記(C)の工程を実行するようにしてもよい。
【0015】
前記複数の凹状ローラのうちの少なくとも1つは、前記凸状ローラの中心軸に向って、一定の圧力を付勢可能とされた構成としてもよい。
【0016】
前記製造方法において製造される継手本体は、周方向の1箇所に分断部を有する筒状体で、その中心軸方向における中央部が外方に膨らんだタイヤ状に成形された形状であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様に係る継手本体の製造方法によれば、予め平面上において未加硫ゴムシートと未加硫の補強ゴムシートとを積層して平板状の未加硫ゴム積層体を形成しておけばよいため、各層間のエアーの残留を抑制することが可能となる。得られた平板状の未加硫ゴム積層体は、所定のサイズにカットした後、凸状ローラと凹状ローラを備えた成形装置を通過させるという簡単な作業で、かつ短時間で予備成形を行うことができる。これにより、生産性に優れた継手本体の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の継手本体を示す平面図
図2図1のA-A拡大断面図
図3図1の継手本体を構成する未加硫ゴム積層体を示す斜視図
図4図3のB-B拡大断面図
図5図3の未加硫ゴム積層体を予備成形する成形装置を示す概略図
図6図5のD-D断面図
図7】予備成形後の未加硫ゴム積層体を示す平面図
図8図7のE-E拡大断面図
図9】本実施形態の継手本体を用いた弾性軸継手を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を基に説明する。図9は、本実施形態の継手本体が用いられた弾性軸継手を示す断面図である。弾性軸継手は、駆動軸21の端部と従動軸22の端部に固定される一対のフランジ23及び24と、一対のフランジ23及び24を連結するゴム製継手本体1とを備える。
【0020】
図1は本実施形態における継手本体1を示す平面図であり、図2図1のA-A断面図である。図示のごとく、本実施形態の継手本体1は、補強コードによって補強された補強ゴム層2を有するゴム積層体3からなる。より具体的に、ゴム積層体3は、内面ゴム層4、補強ゴム層2及び外面ゴム層5を備える。継手本体1は、周方向の1箇所に分断部6を有する略筒状とされ、その中心軸C方向の中央部が半径方向外方に膨出したタイヤ状に形成される。
【0021】
図9に示すように、継手本体1を一対のフランジ23及び24に組み入れる場合、継手本体1の分断部6を広げながら、一対のフランジ23及び24を跨ぐようにして継手本体1をセットする。なお、分断部6を広げながらセットした後の継手本体1は、図1に示すように元の状態に戻しておく。そして、継手本体1の中心軸C方向の端部を圧力リング25とフランジ23又は24で挟み込み、締結部材26によって圧力リング25とフランジ23又は24とを締めこむことで継手本体1をフランジ23及び24に固定する。このようにして、駆動軸21と従動軸22とを接続する弾性軸継手を組み立てることができる。本実施形態の継手本体1は、分断部6を有するため、すでに位置決めされた駆動軸21及び従動軸22の位置を移動することなく、駆動軸21と従動軸22とを弾性軸継手で接続することが可能となる。
【0022】
上記構成の本発明に係る継手本体1の製造方法は、次の(A)~(C)の工程を備える。
(A)未加硫ゴムシート7と、補強コードに未加硫ゴムをトッピングしてなる未加硫補強ゴムシート8とを積層して平板状の未加硫ゴム積層体10を得る工程
(B)外周面の中心軸方向中央部が半径方向外側に膨らむように湾曲形成された凸状ローラ12と、外周面の中心軸方向中央部が半径方向内側に凹むように湾曲形成された凹状ローラ13とを備えた成形装置11を用い、凸状ローラ12を回転させながら、前記(A)の工程で得られた平板状の未加硫ゴム積層体10を、凸状ローラ12と凹状ローラ13の間を通過させることで、未加硫ゴム積層体10を予備成形する工程
(C)前記(B)の工程で得られた予備成形後の前記未加硫ゴム積層体10を金型に収容して加硫成形する工程
以下、各工程について詳しく説明する。
【0023】
(A)の工程においては、図3及び図4に示すように、平面上において、内面ゴム層4を構成する未加硫ゴムシート7を広げて、その上に未加硫補強ゴムシート8を複数層積層する。そして、複数層積層した未加硫補強ゴム層8の上に外面ゴム層5を構成する未加硫ゴムシート9を積層する。これにより、未加硫内面ゴム層、複数層の未加硫補強ゴム層及び未加硫外面ゴム層が積層された平板状の未加硫ゴム積層体10が得られる。本発明では平面上において未加硫ゴムシート7、未加硫補強ゴムシート8及び未加硫ゴムシート9を積層するようにしたため、積層作業が容易であるとともに、各層間のエアーの残留を抑制することが可能となる。なお、図3では、平板状の未加硫ゴム積層体10を、継手本体1を成形するのに必要なサイズの細長い板状にカットした状態を示している。
【0024】
未加硫補強ゴムシート8は、繊維からなるすだれ織布(コード)に公知の未加硫ゴムをトッピング処理したシート状物からなる。コードに使用される繊維としては、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、アラミド、カーボンなどの有機繊維及びガラス、スチールなどの無機、金属繊維などが挙げられる。未加硫補強ゴム層8の積層数は、継手本体1に求められる剛性に応じて適宜決定される。一般的には、2層~10層積層したものが好適に使用される。本実施形態では補強ゴム層8は8層とされている。
【0025】
未加硫ゴムシート7及び9、並びに、補強ゴム層2を構成する未加硫補強ゴムシート8で用いられる未加硫ゴムのベース配合としては特に限定は無く、従来からこの分野において公知の配合であればいずれも使用可能であり、たとえば、耐摩耗性、耐水性、加工性において優れる天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)或いはNRとシス-1,4-ポリブタジエンゴム(BR)及び/又はSBRとのブレンド配合組成物等を挙げることができる。
【0026】
図5は、(B)の工程で用いられる、未加硫ゴム積層体10を予備成形するための成形装置11の概略図であり、図6図5のD-D断面図である。成形装置11は、外周面の中心軸C1方向中央部が半径方向外側に膨らむように湾曲形成された凸状ローラ12と、外周面の中心軸C2方向中央部が半径方向内側に凹むように湾曲形成された凹状ローラ13とを備える。凸状ローラ12は所定の回転速度で回転する回転ローラである。凸状ローラ12と、凹状ローラ13とは、互いの中心軸方向が平行で、かつ、互いの外周面が対向するように配置される。
【0027】
凸状ローラ12は、従来のコアモールドと同等の形状とすることができる。なお、凸状ローラ12は、外面の断面形状を最終的な製品である継手本体1の内面の断面形状と同形状とし、外径を製品の内径よりも7%~10%程度小さい径とするのが好ましい。これにより、(C)の工程における予備成形後の未加硫ゴム積層体の金型への収容をスムーズに行うことができる。
【0028】
未加硫ゴム積層体10を確実に予備成形するには、凹状ローラ13は、凸状ローラ12の周囲(周方向)に間隔をおいて複数配置するのが好ましく、4~6個配置するのがより好ましい。この場合、凹状ローラ13は、凸状ローラ12よりも小径とするのが好ましい。本実施形態では、凸状ローラ12よりも小径に形成された5つの凹状ローラ13a~13eが、凸状ローラ12の周囲に間隔をおいて配置される(以後、5つの凹状ローラを総称する場合は「凹状ローラ13」と表記し、各凹状ローラについて言及する場合は、「第1凹状ローラ13a」、「第2凹状ローラ13b」、「第3凹状ローラ13c」、「第4凹状ローラ13d」又は「第5凹状ローラ13e」のいずれかで表記する。)。
【0029】
凹状ローラ13は、外面の断面形状を製品の外面の断面形状と同形状とすることができる。凸状ローラ12と、凹状ローラ13とは、互いの外周面が所定の間隔をおいて対向するように配置することができる。すなわち、凸状ローラ12から未加硫ゴム積層体10の厚み分の間隔をおいて離れた固定位置に凹状ローラ13を配置することができる。なお、凹状ローラ13は、凸状ローラ12から未加硫ゴム積層体10の90%程度の厚み分の間隔をおいて離れた位置に配置するのが好ましい。これにより、予備成形後の未加硫ゴム積層体の形状をより製品形状に近づけることができ、(C)の工程における金型への収容をスムーズに行うことができる。
【0030】
図3に示すように、未加硫ゴム積層体10は、凸状ローラ12と凹状ローラ13の間の隙間に収まる幅で、凸状ローラ12に1周巻き付けが可能な長さの細長い板状に予めカットしておく。次いで、図5に示すように、細長い板状の未加硫ゴム積層体10を、長さ方向一端部から回転する凸状ローラ12と第1凹状ローラ13aの間に導入する。細長い板状の未加硫ゴム積層体10は、第1凹状ローラ13aから第5凹状ローラ13eまで順次押し付けられることによって、タイヤ状に予備成形されつつ凸状ローラ12の外周面に1周巻き付けられる。
【0031】
ただ、未加硫補強ゴムシート8を多層積層する場合や、未加硫ゴム積層体10の厚みが厚い場合は、未加硫ゴム積層体10の剛性が高くなる。このように剛性の高い平板状の未加硫ゴム積層体10を、凸状ローラ12と、凸状ローラ12に対してゴム積層体の厚み分の間隔をおいて対向配置された凹状ローラ13の間を通過させるのが困難となる場合がある。このような場合は、複数の凹状ローラ13のうちの少なくとも1つは、一定の圧力を凸状ローラ12の中心軸C1に向って付勢可能な構成とするのが好ましい。
【0032】
凸状ローラ12の中心軸C1に向って付勢可能な凹状ローラ13としては、第1凹状ローラ13aを含めるのが好ましい。この場合、第1凹状ローラ13aのみ付勢可能なローラとし、それ以外の凹状ローラ13b~13eは固定位置に配置すればよい。また、第1凹状ローラ13a及び第2凹状ローラ13bの2つを付勢可能なローラとしてもよいし、それ以上とすることも可能である。付勢可能な凹状ローラ13を複数用いる場合は、第1ローラ13aから段階的に付勢力を高めるのが好ましい。付勢可能な凹状ローラ13を用いることにより、剛性の高い未加硫ゴム積層体10であっても、無理なく徐々にタイヤ形状に成形することが可能となる。本実施形態の成形装置11では、第1凹状ローラ13aが凸状ローラ12の中心軸C1に向って一定の圧力を付勢可能とされ、それ以外の凹状ローラ13b~13eは固定位置に配置されている。
【0033】
具体的には、第1凹状ローラ13aの回転軸を回転可能に支持する支持部材14を、凹状ローラ12の中心軸C1に向って平行移動可能とし、スプリング等によって一定圧力を凸状ローラ12の中心軸C1方向(図3中、白抜き矢印の方向)に付勢可能な構成とすることができる。なお、付加する圧力は調整可能とされる。第2凹状ローラ13b~第5凹状ローラ13eは、凸状ローラ12の外周面から未加硫ゴム積層体10の厚み分の間隔をおいて一定位置で対向配置されている。上記構成の成形装置11では、平板状の未加硫ゴム積層体10が第1凹状ローラ13aを通過する時点で、未加硫ゴム積層体10の幅方向中央部がある程度半径方向外方に膨出するように湾曲形成され、第2凹状ローラ13b~第5凹状ローラ13eを通過する間に確実にタイヤ状に予備成形される。
【0034】
未加硫ゴム積層体10は加温しておき、その状態で成形装置11を用いて予備成形するのが好ましい。具体的には、未加硫ゴム積層体10は、70℃±10℃程度の範囲で加温するのが好ましい。未加硫ゴム積層体10は加温することにより軟化し、スムーズに予備成形することが可能となる。また、予備成形時に成形装置11の凸状ローラ12及び凹状ローラ13のうち少なくとも一方を加温しておくのが好ましく、凸状ローラ12及び凹状ローラ13の両方を加温しておくのがより好ましい。この場合、凸状ローラ12及び/又は凹状ローラ13の加温温度は、70℃±10℃とするのが好ましい。これにより、よりスムーズに予備成形することが可能となる。なお、未加硫ゴム積層体10は、凸状ローラ12と、凹状ローラ13(第1凹状ローラ13a~第5凹状ローラ13e)の間を1回通過させればよいが、予備成形の状況を見ながら、凸状ローラ12と、凹状ローラ13の間を複数回通過させてもよい。
【0035】
図7は予備成形後の未加硫ゴム積層体10を示す平面図であり、図8図5のE-E断面図である。図示のごとく、予備成形後の未加硫ゴム積層体10は、周方向の1箇所に分断部6を有する筒状体で、その中心軸C方向の中央部が半径方向外方に膨出したタイヤ状に形成される。予備成形後の未加硫ゴム積層体10は、分断部6を広げるようにして、凸状ロール12から取り外される。
【0036】
未加硫ゴム積層体10の長さ方向両端部及び幅方向両端部は補強ゴム層が露出した状態であるため、そのまま加硫成形すると耐久性に影響を及ぼす可能性が生じる。したがって、図8に示すように、未加硫ゴム積層体10の長さ方向両端部及び幅方向両端部にテープ状の未加硫ゴム15を貼着しておくのが望ましい。その後、(C)の工程として、長さ方向両端部及び幅方向両端部を未加硫ゴム15で被覆した後の未加硫ゴム積層体10は、金型に収容して加硫成形を行うことで継手本体1を得ることができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。具体的に、本実施形態では継手本体1は、周方向の1箇所に分断部6を有する略筒状で、その中心軸C方向の中央部が半径方向外方に膨出したタイヤ状に形成する場合について説明したが、分断部6のない筒状とすることも可能である。この場合、予備成形で得られた略筒状の未加硫ゴム積層体10の分断部6に未加硫ゴムを充填し、分断部のない筒状とした後に加硫成形すればよい。
【0038】
また、継手本体1は、その中心軸C方向の両端部にビードワイヤーが埋設されたものであってもよい。ビードワイヤーが埋設された継手本体1を製造する方法の一例としては、(A)の工程において、継手本体1を成形するのに必要なサイズの細長いシート状にカットした未加硫ゴムシート7の上に、未加硫ゴムシート7よりも幅広のサイズの未加硫補強ゴムシート8を、その幅方向の中心を未加硫ゴムシート7の幅方向の中心と合わせるようにして複数層積層する。その後、未加硫補強ゴムシート8の幅方向両端部の所定位置に2本のビードワイヤーを配置し、ビードワイヤーより幅方向外側の未加硫補強ゴムシート8部分を内側に折返す。そして、未加硫補強ゴムシート8の上に所定のサイズの細長いシート状にカットした未加硫ゴムシート9を積層すればよい。
【0039】
本実施形態に開示されている構成要件は互いに組合せ可能であり、組み合せることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 継手本体
2 補強ゴム層
3 ゴム積層体
4 内面ゴム層
5 外面ゴム層
6 分断部
7 未加硫ゴムシート
8 未加硫補強ゴムシート
9 未加硫ゴムシート
10 未加硫ゴム積層体
11 成形装置
12 凸状ローラ
13 凹状ローラ
14 支持部材
15 未加硫ゴム
21 駆動軸
22 従動軸
23 フランジ
24 フランジ
25 圧力リング
26 締結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9