(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115595
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】内燃機関の制御システム
(51)【国際特許分類】
F02D 41/34 20060101AFI20240820BHJP
F02M 51/00 20060101ALI20240820BHJP
F02M 61/10 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
F02D41/34
F02M51/00 A ZHV
F02M61/10 D
F02M61/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021291
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 誠人
【テーマコード(参考)】
3G066
3G301
【Fターム(参考)】
3G066AA02
3G066BA51
3G066DC04
3G066DC06
3G301HA04
3G301JA03
3G301LB02
3G301LB04
3G301MA11
3G301NA05
3G301NC02
3G301PB03Z
3G301PF04Z
(57)【要約】
【課題】中間領域を使用せず燃料噴射量を満足させることができる内燃機関の制御システムを提供する。
【解決手段】内燃機関を制御システムは、内燃機関に搭載され、燃料噴射弁を最大位置まで開弁するフルリフト領域と、最大位置よりも手前まで開弁するパーシャルリフト領域と、を有する第1燃料噴射弁と、前記第1燃料噴射弁と異なる位置に配置される第2燃料噴射弁と、前記第1燃料噴射弁に供給される燃料の圧力を調整する圧力調整装置と、前記内燃機関を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第1燃料噴射弁による燃料噴射量が、前記フルリフト領域と前記パーシャルリフト領域との間の領域の中間領域の燃料噴射量となる場合、前記第1燃料噴射弁のパーシャルリフト領域を使用しながら前記第2燃料噴射弁による燃料噴射量を調整する第1制御、および、前記圧力調整装置によって前記第1燃料噴射弁の前記燃料の圧力を調整する第2制御のいずれか一方を優先して実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に搭載され、燃料噴射弁を最大位置まで開弁するフルリフト領域と、最大位置よりも手前まで開弁するパーシャルリフト領域と、を有する第1燃料噴射弁と、
前記第1燃料噴射弁と異なる位置に配置される第2燃料噴射弁と、
前記第1燃料噴射弁に供給される燃料の圧力を調整する圧力調整装置と、
前記内燃機関を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記第1燃料噴射弁による燃料噴射量が、前記フルリフト領域と前記パーシャルリフト領域との間の領域の中間領域の燃料噴射量となる場合、
前記第1燃料噴射弁の前記パーシャルリフト領域を使用しながら前記第2燃料噴射弁による燃料噴射量を調整する第1制御、および、前記圧力調整装置によって前記第1燃料噴射弁の前記燃料の圧力を調整する第2制御のいずれか一方を優先して実行する、
内燃機関の制御システム。
【請求項2】
前記第1燃料噴射弁は、前記内燃機関の筒内に燃料を噴射する筒内噴射弁であり、前記第2燃料噴射弁は、前記内燃機関のポートに燃料を噴射するポート噴射弁である、
請求項1に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記要求燃料噴射量の変化割合が所定割合より大きい場合、前記第1制御を優先して実行する、
請求項1に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記要求燃料噴射量の変化割合が所定割合以下の場合、前記第2制御を優先して実行する、
請求項1に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項5】
前記車両は、アクセルを有し、
前記制御装置は、前記燃料噴射量の変化が、前記アクセルに起因する場合、第1制御を優先して実行する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の内燃機関の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関に搭載される燃料噴射弁のパーシャルリフト領域と、フルリフト領域と、を切り替えて制御する内燃機関の制御システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような内燃機関の制御システムでは、パーシャルリフト領域と、フルリフト領域との間にある中間領域が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような中間領域では、燃料噴射弁の噴射量が安定しない。特許文献1の内燃機関の制御システムでは、このような中間領域における噴射量のずれを学習することによって、安定させようとしている。
【0005】
本開示の課題は、中間領域を使用せず燃料噴射量を満足させることができる内燃機関の制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る内燃機関の制御システムは、内燃機関に搭載され、燃料噴射弁を最大位置まで開弁するフルリフト領域と、最大位置よりも手前まで開弁するパーシャルリフト領域と、を有する第1燃料噴射弁と、前記第1燃料噴射弁と異なる位置に配置される第2燃料噴射弁と、前記第1燃料噴射弁に供給される燃料の圧力を調整する圧力調整装置と、前記内燃機関を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第1燃料噴射弁による燃料噴射量が、前記フルリフト領域と前記パーシャルリフト領域との間の領域の中間領域の燃料噴射量となる場合、前記第1燃料噴射弁のパーシャルリフト領域を使用しながら前記第2燃料噴射弁による燃料噴射量を調整する第1制御、および、前記圧力調整装置によって前記第1燃料噴射弁の前記燃料の圧力を調整する第2制御のいずれか一方を優先して実行する。
【0007】
この内燃機関の制御システムによれば、第1燃料噴射弁による燃料噴射量が、フルリフト領域とパーシャルリフト領域との間の領域の中間領域の燃料噴射量となる場合、第1制御、および、第2制御の少なくともいずれか一方によって燃料噴射量を満足させる。これによって中間領域を使用せず燃料噴射量を満足させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、中間領域を使用せず燃料噴射量を満足させることができる内燃機関の制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態による電動車両のシステム図。
【
図2】本開示の一実施形態による内燃機関のシステム図。
【
図3】パーシャルリフト領域とフルリフト領域を示す図。
【
図4】燃料噴射量が増加する場合におけるエンジン制御装置による制御手順を示すフローチャート。
【
図5】燃料噴射量が増加する場合におけるパーシャルリフト領域とフルリフト領域の切り替えを示すタイミングチャート。
【
図6】燃料噴射量が減少する場合におけるエンジン制御装置による制御手順を示すフローチャート。
【
図7】燃料噴射量が減少する場合におけるパーシャルリフト領域とフルリフト領域の切り替えを示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の内燃機関1は、内燃機関1と、モータ(FrM)2と、を動力源として車輪C1を駆動する電動車両(車両の一例)Cに搭載される。しかし、内燃機関1は、内燃機関1のみを動力源とする車両に搭載されてもよい。
【0012】
電動車両Cは、内燃機関1と、モータ2と、発電機(GEN)4と、リチウムイオン電池などの二次電池を含む駆動用電池(BT)6と、トランスアクスル8と、を有する。トランスアクスル8は、複数のギヤとクラッチ8aを有する。内燃機関1は、トランスアクスル8を介して発電機4と、車軸10と連結される。トランスアクスル8は、クラッチ8aが開放状態の場合、内燃機関1と車軸10との動力伝達が遮断され、クラッチ8aが接続状態の場合、内燃機関1の動力が車軸10に伝達される。モータ2は、トランスアクスル8を介して車軸10と連結される。電動車両Cはこのほか、車両制御装置12と、内燃機関1を制御するエンジン制御装置(制御装置の一例)14と、電動車両Cのユーザが操作するアクセルペダル(アクセルの一例)16と、モータ2および発電機4を制御するインバータ18と、充電ボタン(図示なし)と、を有してもよい。また、本実施形態では電動車両Cは、外部電源に接続可能な充電器20と、駆動用電池6からの電力を、例えば家電などの外部機器に供給可能な給電装置22と、を有するプラグインハイブリッド車(PHEV)である。しかし、電動車両Cはこのような装置を有さないハイブリッド車両であってもよい。
【0013】
本実施形態の電動車両Cは、EVモード、シリーズモード、パラレルモード、充電モードなどの各モードを有する。電動車両Cは、EVモードの場合、駆動用電池6からの電力によってモータ2を駆動する。電動車両Cは、シリーズモードの場合、内燃機関1によって発電機4を駆動し、発電機4によって発電した電力を用いてモータ2を駆動する。電動車両Cは、パラレルモードの場合、クラッチ8aを接続し、内燃機関1の動力を用いて車軸10を駆動する。すなわち、電動車両Cは、パラレルモードでは内燃機関1の動力を駆動力として用いる。電動車両Cは、充電モードでは、内燃機関1によって発電機4を駆動し、発電機4によって発電した電力を駆動用電池6に蓄電する。電動車両Cは、アクセルペダル16の踏み込み状態や充電ボタンの操作状態に応じて、車両制御装置12が各モードを切り替え、インバータ18を介してモータ2および発電機4を制御するとともに、エンジン制御装置14に内燃機関1を制御させる。
【0014】
図2に示すように、内燃機関1は、筒内噴射弁(第1燃料噴射弁の一例)30と、ポート噴射弁(第2燃料噴射弁の一例)32と、高圧ポンプ(圧力調整装置の一例)34と、を備える。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の内燃機関1は、4つの気筒36を備える。しかし、内燃機関1は、1つ以上の気筒を有すればよい。
図2に示すように、筒内噴射弁30、およびポート噴射弁32は、各気筒にそれぞれ一つずつ設けられる。
【0016】
筒内噴射弁30は、各気筒36のシリンダ内に燃料を噴射する装置である。筒内噴射弁30は、高圧ポンプ34に接続され、ポート噴射弁32よりも高圧の燃料が供給される。
筒内噴射弁30は、噴射孔への燃料流路を開閉するニードル(図示なし)を有し、ニードルのリフト量を最大位置にするフルリフト領域Fと、ニードルをゼロ位置から最大位置までの間のリフト量とするパーシャルリフト領域Pと、を切り替え可能な燃料噴射弁である。
図3に示すように、筒内噴射弁30は、パーシャルリフト領域Pと、フルリフト領域Fの間に中間領域Mを含む。中間領域Mは、エンジン制御装置14から指示される燃料噴射量(要求燃料噴射量の一例、以下明細書において要求噴射量Iqと記す)に対し、実際の燃料噴射量(以下明細書において実噴射量Irと記す)が正確に追従できない領域である。例えば、中間領域Mはニードルがバウンスすることで燃料噴射量が安定しない領域であり、要求噴射量Iqに対し実噴射量Irが落ち込んだりする。したがって、中間領域Mでは、実際の燃料噴射量が不足する。なお、
図3では、要求噴射量Iqのうち筒内噴射弁30に振り分けられた筒内要求噴射量IqDIと、筒内噴射弁30の実噴射量である実筒内噴射量IrDIを用いて中間領域Mを示している。
【0017】
図2に示すように、ポート噴射弁32は、各気筒36の吸気ポート40に燃料を噴射する装置である。ポート噴射弁32は、燃料タンク38の低圧ポンプ38aを介して燃料が供給される。
【0018】
高圧ポンプ34は、燃料タンク38の低圧ポンプ38aを介して供給される燃料を昇圧する装置である。本実施形態の高圧ポンプ34は、内燃機関1のカム軸42と同軸上に配置されるポンプカム42aによってプランジャ34aを駆動する機械式ポンプである。高圧ポンプ34は、レギュレータ34bを有し、レギュレータ34bによって筒内噴射弁30に供給する燃料の圧力が調整できる。高圧ポンプ34は、このような機械式ポンプに限らず、モータによってプランジャ、またはインペラを駆動する電動式ポンプであってもよい。
【0019】
エンジン制御装置14は、少なくとも、筒内噴射弁30、ポート噴射弁32および高圧ポンプ34と電気的に接続され、内燃機関1を制御する制御装置である。エンジン制御装置14は、実際には、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等とを含むマイクロコンピュータによって構成されるECU(Electrоnic Control Unit)である。エンジン制御装置14は、メモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、内燃機関1の様々な制御を実行する。なお、内燃機関1の制御はエンジン制御装置14のほか、車両制御装置12によって実行してもよい。車両制御装置12は、エンジン制御装置14と同様に、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等とを含むマイクロコンピュータによって構成されるECU(Electrоnic Control Unit)である。車両制御装置12は、メモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、電動車両Cの様々な制御を実行する。
【0020】
次に
図4から
図7を用いて、エンジン制御装置14が実行する制御手順について説明する。なお、エンジン制御装置14は、要求噴射量Iqに基づいて、筒内噴射弁30に噴射させる筒内要求噴射量IqDI、およびポート噴射弁32に噴射させるポート要求噴射量IqPFIを算出する。エンジン制御装置14は、筒内要求噴射量IqDIおよびポート要求噴射量IqPFIを各燃料噴射弁の噴射期間に相当するパルス幅に変換し、筒内噴射弁30およびポート噴射弁32のそれぞれに送信する。筒内噴射弁30およびポート噴射弁32は、エンジン制御装置14から送信されたパルス幅に従って、燃料を噴射する。また、エンジン制御装置14は、図示しない空燃比センサから空燃比を取得し、空燃比から実噴射量Irを推定し、実噴射量Irが要求噴射量Iqとなるようにフィードバック制御する。
【0021】
まず、
図4および
図5を用いて、要求噴射量Iqが増加する場合について説明する。要求噴射量Iqが増加する場合とは、触媒の暖機時に実噴射量Irを増加させる場合、内燃機関1の出力を増加させる場合、などである。
【0022】
図4に示すように、ステップS1では、エンジン制御装置14は、筒内要求噴射量IqDIがパーシャルリフト領域Pか否か判断する。エンジン制御装置14は、パーシャルリフト領域Pであると判断した場合(ステップS1 YES)、ステップS2に処理を進める。ステップS2では、エンジン制御装置14は、フルリフト領域Fに移行するか否か判断する。エンジン制御装置14は、要求噴射量Iqの変化によってフルリフト領域Fに移行するか否か判断してもよい。エンジン制御装置14は、フルリフト領域Fに移行すると判断した場合(ステップS2 YES)、ステップS3に処理を進める。
【0023】
ステップS3ではエンジン制御装置14は、筒内要求噴射量IqDIが中間領域Mか否か判断する。エンジン制御装置14は、筒内要求噴射量IqDIが中間領域Mであると判断した場合(ステップS3 YES)、ステップS4に処理を進める。
【0024】
ステップS4ではエンジン制御装置14は、要求噴射量Iqの変化割合ΔIqが第1所定割合ΔIq1より大きいか否か判断する。第1所定割合ΔIq1は、例えば、内燃機関1が出力を大幅に増加させる場合における、要求噴射量Iqの変化割合ΔIqに相当すればよい。内燃機関1が出力を大幅に増加させる場合とは、例えば、アクセルペダル16の踏み込み量が50%以上増加した場合などである。エンジン制御装置14は、要求噴射量Iqの変化割合ΔIqが第1所定割合ΔIq1より大きいと判断した場合(ステップS4 YES)、ステップS5に処理を進める。
【0025】
ステップS5においてエンジン制御装置14は、筒内噴射弁30のパーシャルリフト領域を使用しながらポート噴射弁32による燃料噴射量を調整する第1制御を第2制御より優先して実行する。より具体的には、エンジン制御装置14は、筒内要求噴射量IqDIをパーシャルリフト領域に留め、要求噴射量Iqに不足する燃料噴射量を、ポート要求噴射量IqPFIを増加させて調整する。エンジン制御装置14は、第1制御を実行するとステップS6に処理を進める。
【0026】
ステップS6では、エンジン制御装置14は、ポート要求噴射量IqPFIが上限値以上か否か判断する。ポート要求噴射量IqPFIの上限値は、実ポート噴射量IrPFIがこれ以上増加した場合、内燃機関1の燃焼の悪化、または排気ガスの悪化を招くおそれのある値である。したがって、ポート要求噴射量IqPFIの上限値は、内燃機関1に求められる負荷や回転数によって異なる値である。エンジン制御装置14は、ポート要求噴射量IqPFIが上限値以上であると判断した場合(ステップS6 YES)、ステップS7に処理を進める。
【0027】
ステップS7ではエンジン制御装置14は、筒内噴射弁30の高圧ポンプ34によって燃料の圧力(燃圧)を調整する第2制御を追加して実行する。より具体的には、エンジン制御装置14は、筒内要求噴射量IqDIをパーシャルリフト領域に留めながらも、燃圧を上昇させることによって実筒内噴射量IrDIを増加させる。これによって、要求噴射量Iqに対して不足する燃料噴射量を筒内噴射弁30によって調整することができる。このため、ポート要求噴射量IqPFIを減らすことができる。エンジン制御装置14は、ステップS7の処理を実行するとステップS8に処理を進める。
【0028】
ステップS8ではエンジン制御装置14は、筒内要求噴射量IqDIが中間領域Mを通過したか否か判断する。エンジン制御装置14は、筒内要求噴射量IqDIが中間領域Mを通過したと判断した場合(ステップS8 YES)、ステップS9に処理を進める。
【0029】
ステップS9ではエンジン制御装置14は、筒内要求噴射量IqDIをフルリフト領域の燃料噴射量に切り替え、ステップS1に処理を進める。
【0030】
ステップS1においてエンジン制御装置14が、筒内要求噴射量IqDIがパーシャルリフト領域Pではなく、フルリフト領域Fであると判断した場合(ステップS1 NO)、エンジン制御装置14は、ステップS1の処理を繰り返し、フルリフト領域Fによる運転を継続する。
【0031】
ステップS2においてエンジン制御装置14が、筒内要求噴射量IqDIがフルリフト領域Fに移行しないと判断した場合、ステップS1に処理を進め、パーシャルリフト領域Pによる運転を継続する。
【0032】
ステップS3においてエンジン制御装置14が、筒内要求噴射量IqDIが中間領域Mではないと判断した場合、ステップS1に処理を進め、パーシャルリフト領域Pによる運転を継続する。
【0033】
ステップS4においてエンジン制御装置14が、要求噴射量Iqの変化割合ΔIq(増加割合)が第1所定割合ΔIq1以下であると判断した場合(ステップS4 NO)、エンジン制御装置14は、ステップS10に処理を進める。
【0034】
ステップS6においてエンジン制御装置14が、ポート要求噴射量IqPFIが上限値未満であると判断した場合(ステップS6 NO)、エンジン制御装置14は、ステップS8に処理を進める。
【0035】
ステップS8においてエンジン制御装置14が、筒内要求噴射量IqDIが中間領域Mを通過していないと判断した場合(ステップS8 NO)、エンジン制御装置14は、ステップS4に処理を進める。
【0036】
ステップS10ではエンジン制御装置14は、筒内噴射弁30の高圧ポンプ34によって燃料の圧力を調整する第2制御を第1制御より優先して実行する。このとき、エンジン制御装置14は、パーシャルリフト領域Pを使用しながら第2制御を実行する。エンジン制御装置14は、第2制御を実行すると、ステップS11に処理を進める。
【0037】
ステップS11ではエンジン制御装置14は、要求噴射量Iqが筒内噴射弁30のパーシャルリフト領域Pにおいて噴射可能な最大噴射量DImaxより大きいか否か判断する。エンジン制御装置14は、要求噴射量Iqが最大噴射量DImaxより大きいと判断した場合(ステップS11 YES)、ステップS12に処理を進める。
【0038】
ステップS12ではエンジン制御装置14は、筒内噴射弁30のパーシャルリフト領域を使用しながらポート噴射弁32による燃料噴射量を調整する第1制御を追加で実行する。エンジン制御装置14は、ステップS12の処理を実行すると、ステップS8に処理を進める。
【0039】
ステップS11においてエンジン制御装置14は、要求噴射量Iqが最大噴射量DImax以下であると判断した場合(ステップS11 NO)、第2制御を継続しながらステップS8に処理を進める。
【0040】
このような制御手順による具体的な例を、
図5のタイミングチャートを用いて説明する。
図5のタイミングチャートは、要求噴射量Iqが増加し、筒内要求噴射量IqDIがパーシャルリフト領域Pからフルリフト領域Fへ移行する場合の例である(
図4のステップS1 YES,ステップS2 YESにおける例)。
図5の要求噴射量Iqの実線のグラフは、要求噴射量Iqの変化割合ΔIqが第1所定割合ΔIq1より大きい場合の一例である(
図4のステップS4 YESの例)。
図5の要求噴射量Iqの破線のグラフは、要求噴射量Iqの変化割合ΔIqが第1所定割合ΔIq1以下の場合の一例である(
図4のステップS4 NOの例)。
【0041】
図5の時刻T0から時刻T1に示すように、エンジン制御装置14はパーシャルリフト領域Pでは、パーシャルリフト噴射フラグをオンすることによって、筒内噴射弁30にパーシャルリフトによる燃料噴射を実行させる。時刻T1に示すように、エンジン制御装置14は、要求噴射量Iqの増加に伴い、筒内要求噴射量IqDIが中間領域Mに入ると判断した場合(ステップS3 YESの例)、移行制御フラグをオンにする。
【0042】
時刻T1から時刻T2のパーシャルリフト噴射フラグに示すように、エンジン制御装置14は、パーシャルリフト噴射フラグをオンに維持したまま筒内要求噴射量IqDIを時刻T1で下げた後、時刻T2まで一定にする。すなわち、筒内要求噴射量IqDIをパーシャルリフト領域Pのパルス幅のまま一定にする。このように筒内要求噴射量IqDIを一定にすることによって、要求噴射量Iqに対して燃料噴射量が不足する。
【0043】
時刻T1から時刻T2のポート要求噴射量IqPFIに実線で示すように、要求噴射量Iqの変化割合ΔIqが第1所定割合ΔIq1より大きい場合、エンジン制御装置14は、要求噴射量Iqに対して不足する燃料噴射量をポート噴射弁32による燃料噴射量を増加させて調整する第1制御を実行する。ポート噴射弁32による燃料噴射がポート要求噴射量IqPFIの下限値PFIminを下回らないようにする必要があるので、時刻T1直前と直後とで燃料噴射量が急変しないように、時刻T1で筒内要求噴射量IqDIを下げる。
【0044】
時刻T3のポート要求噴射量IqPFIおよびDI燃圧に実線で示すように、ポート要求噴射量IqPFIが上限値PFImaxに到達した場合(
図4のステップS6 YESの一例)、要求噴射量Iqに対して不足する燃料噴射量を筒内噴射弁30の燃圧を上昇させることによって調整する第2制御を追加で実行する。時刻T3から時刻T4のポート要求噴射量IqPFIおよびDI燃圧に実線で示すように、このときポート要求噴射量IqPFIを上限値PFImaxに維持したまま、第2制御を実行してもよい。
【0045】
このように、変化割合ΔIqが第1所定割合ΔIq1より大きい場合、ポート要求噴射量IqPFIの下限値PFIminを下回ることがない。また、変化割合ΔIqが第1所定割合ΔIq1より大きい場合、内燃機関1の出力をより迅速に上昇させる必要がある。このような場合、ポート噴射弁32の実ポート噴射量IrPFIを増加させる方が、燃圧を上昇させることによって筒内噴射弁30の実筒内噴射量IrDI量を増加させるよりも、より迅速に内燃機関1の出力を増加させることができる。すなわち、ポート噴射弁32の噴射量を上昇させる方が、筒内噴射弁30の燃圧を上昇させるよりもレスポンス良く内燃機関1の出力を上昇させられる。
【0046】
さらに、本実施形態ではステップS4において、エンジン制御装置14は、要求噴射量Iqの変化割合ΔIqが第1所定割合ΔIq1より大きいか否かをアクセルペダル16の開度であるアクセル開度Thによって判断してもよい。より具体的には、エンジン制御装置14は、要求噴射量Iqの変化が、アクセルペダル16の踏み込み量(アクセル開度Thと同じ)の変化に起因するか否か判断し、アクセルペダル16の踏み込み量の変化に起因する場合、要求噴射量Iqの変化割合ΔIqが第1所定割合ΔIq1より大きいと判断してもよい。一方、アクセルペダル16の踏み込み量の変化に起因しない場合、要求噴射量Iqの変化割合ΔIqが第1所定割合ΔIq1以下であると判断してもよい。アクセルペダル16の踏み込み量の変化に起因しない場合とは、例えば、触媒昇温の際にエンジン制御装置14が要求噴射量Iqを増加させる場合である。そのほか、アクセルペダル16の踏み込み量の変化に起因しない場合とは、充電スイッチが押された場合もしくは給電中において内燃機関1が発電機4を駆動し発電状態にあり、発電量を増加させるためにエンジン制御装置14が要求噴射量Iqを増加させる場合などである。
【0047】
本実施形態の電動車両Cは、アクセルペダル16が踏み込まれるとシリーズモード、またはパラレルモードに移行し、内燃機関1に要求される出力が増加する。この場合、内燃機関1は、レスポンス良く出力を増加させることが好ましい。このため、中間領域Mにおいて第1制御を優先することが好ましい。一方、アクセルペダル16の踏み込み量の変化に起因しない場合は、エンジン制御装置14は、内燃機関1の静粛性を優先し、内燃機関1の出力を緩やかに増加させることが好ましい。このような場合、中間領域Mにおいてポート要求噴射量IqPFIが下限値とならないように、第2制御を優先することが好ましい。
【0048】
時刻T1から時刻T2のポート要求噴射量IqPFIおよびDI燃圧に破線で示すように、要求噴射量Iqの変化割合ΔIqが第1所定割合ΔIq1以下の場合、エンジン制御装置14は、要求噴射量Iqに対して不足する燃料噴射量を筒内噴射弁30の燃圧を上昇させることによって調整する第2制御を実行する。
【0049】
時刻T2のポート要求噴射量IqPFIおよびDI燃圧に破線で示すように、要求噴射量Iqが増加し、要求噴射量Iqが筒内噴射弁30のパーシャルリフト領域Pにおいて噴射可能な最大噴射量DImaxを超えた場合(ステップS11 YESの一例)、具体的には、筒内噴射弁30のパーシャルリフト領域Pにおけるパルス幅、及びDI燃圧を最大にしたとしても要求噴射量Iqに届かない場合、エンジン制御装置14は、第1制御を追加で実行する。時刻T2から時刻T4のポート要求噴射量IqPFIおよびDI燃圧に破線で示すように、このとき燃圧を維持したまま、もしくは漸減させながら、第1制御を実行してもよい。また、時刻T2直前と直後とで燃料噴射量が急変しないように、時刻T2で筒内要求噴射量IqDIを下げる。
【0050】
このように、変化割合ΔIqが第1所定割合ΔIq1以下の場合、ポート要求噴射量IqPFIが下限値PFIminを下回るおそれがある。また、変化割合ΔIqが第1所定割合ΔIq1以下の場合、内燃機関1の出力は緩やかに上昇させればよい。このような場合、燃圧を上昇させることによって、筒内噴射弁30の実筒内噴射量IrDI量を増加させる。これによって、ポート要求噴射量IqPFIが下限値PFImin以上となってからポート噴射弁32による燃料噴射を開始できる。この結果、内燃機関1の燃焼や排気ガスを良好に維持できる。
【0051】
次に、
図6および
図7を用いて、要求噴射量Iqが減少する場合について説明する。要求噴射量Iqが減少する場合とは、内燃機関1の出力を減少させる場合などである。
【0052】
図6に示すように、ステップS21では、エンジン制御装置14は、筒内要求噴射量IqDIがフルリフト領域Fか否か判断する。エンジン制御装置14は、フルリフト領域Fであると判断した場合(ステップS21 YES)、ステップS22に処理を進める。ステップS2では、エンジン制御装置14は、パーシャルリフト領域Pに移行するか否か判断する。エンジン制御装置14は、要求噴射量Iqの変化によってパーシャルリフト領域Pに移行するか否か判断してもよい。エンジン制御装置14は、パーシャルリフト領域Pに移行すると判断した場合(ステップS22 YES)、ステップS23に処理を進める。
【0053】
ステップS23ではエンジン制御装置14は、筒内要求噴射量IqDIが中間領域Mか否か判断する。エンジン制御装置14は、筒内要求噴射量IqDIが中間領域Mであると判断した場合(ステップS23 YES)、ステップS24に処理を進める。
【0054】
ステップS24では、エンジン制御装置14は、要求噴射量Iqの変化割合ΔIq(減少割合)が第2所定割合ΔIq2より大きいか否か判断する。第2所定割合ΔIq2は、例えば、内燃機関1が出力を大幅に減少させる場合における、要求噴射量Iqの変化割合ΔIqに相当すればよい。内燃機関1が出力を大幅に減少させる場合とは、例えば、アクセルペダル16の踏み込み量が50%以上減少した場合などである。エンジン制御装置14は、要求噴射量Iqの変化割合ΔIqが第2所定割合ΔIq2より大きいと判断した場合(ステップS24 YES)、ステップS25に処理を進める。
【0055】
ステップS25ではエンジン制御装置14は、筒内要求噴射量IqDIをフルリフト領域Fからパーシャルリフト領域Pに切り替え、ステップS26に処理を進める。
【0056】
ステップS26においてエンジン制御装置14は、筒内噴射弁30のパーシャルリフト領域を使用しながらポート噴射弁32による燃料噴射量を調整する第1制御を優先して実行する。より具体的には、エンジン制御装置14は、筒内要求噴射量IqDIをフルリフト領域Fからパーシャルリフト領域Pに切り替え(ステップS25参照)、要求噴射量Iqに不足する燃料噴射量を、ポート要求噴射量IqPFIを増加させたのち減少させて調整する。エンジン制御装置14は、第1制御を実行するとステップS27に処理を進める。
【0057】
ステップS27では、エンジン制御装置14は、ポート要求噴射量IqPFIが下限値PFImin以下か否か判断する。エンジン制御装置14は、ポート要求噴射量IqPFIが下限値PFImin以下であると判断した場合(ステップS27 YES)、ステップS28に処理を進める。
【0058】
ステップS28ではエンジン制御装置14は、筒内噴射弁30のパーシャルリフト領域を使用しながら高圧ポンプ34によって燃料の圧力(燃圧)を調整する第2制御を追加して実行する。より具体的には、エンジン制御装置14は、筒内要求噴射量IqDIをパーシャルリフト領域に留めながらも、燃圧を上昇させることによって実筒内噴射量IrDIを増加させる。これによって、ポート要求噴射量IqPFIを下限値PFIminに維持しながら、要求噴射量Iqに対して不足する燃料噴射量を筒内噴射弁30によって調整することができる。エンジン制御装置14は、ステップS28の処理を実行するとステップS29に処理を進める。
【0059】
ステップS29ではエンジン制御装置14は、筒内要求噴射量IqDIが中間領域Mを通過したか否か判断する。エンジン制御装置14は、筒内要求噴射量IqDIが中間領域Mを通過したと判断した場合(ステップS28 YES)、ステップS1に処理を進める。
【0060】
ステップS21においてエンジン制御装置14が、筒内要求噴射量IqDIがフルリフト領域Fではなく、パーシャルリフト領域Pであると判断した場合(ステップS21 NO)、エンジン制御装置14は、ステップS1の処理を繰り返し、パーシャルリフト領域Pによる運転を継続する。
【0061】
ステップS22においてエンジン制御装置14が、筒内要求噴射量IqDIが、パーシャルリフト領域Pに移行しないと判断した場合、ステップS1に処理を進め、フルリフト領域Fによる運転を継続する。
【0062】
ステップS23においてエンジン制御装置14が、筒内要求噴射量IqDIが中間領域Mではないと判断した場合、ステップS21に処理を進め、フルリフト領域Fによる運転を継続する。
【0063】
ステップS24においてエンジン制御装置14が、要求噴射量Iqの変化割合ΔIqが第2所定割合ΔIq2以下であると判断した場合(ステップS24 NO)、エンジン制御装置14は、ステップS30に処理を進める。
【0064】
ステップS27においてエンジン制御装置14が、ポート要求噴射量IqPFIが下限値PFIminより大きいと判断した場合(ステップS27 NO)、エンジン制御装置14は、ステップS29に処理を進める。
【0065】
ステップS29においてエンジン制御装置14が、筒内要求噴射量IqDIが中間領域Mを通過していないと判断した場合(ステップS29 NO)、エンジン制御装置14は、ステップS26に処理を進める。
【0066】
ステップS30ではエンジン制御装置14は、筒内噴射弁30の高圧ポンプ34によって燃料の圧力を調整する第2制御を優先して実行する。このときエンジン制御装置14は、筒内要求噴射量IqDIのフルリフト領域Fを維持しながら燃圧を下げる。エンジン制御装置14は、第2制御を実行すると、ステップS31に処理を進める。
【0067】
ステップS31ではエンジン制御装置14は、要求噴射量Iqが筒内噴射弁30のフルリフト領域Fにおいて噴射可能な最小噴射量DIminより小さいか否か判断する。エンジン制御装置14は、要求噴射量Iqが最小噴射量DIminより小さいと判断した場合(ステップS31 YES)、ステップS32に処理を進める。
【0068】
ステップS32ではエンジン制御装置14は、筒内要求噴射量IqDIをフルリフト領域Fからパーシャルリフト領域Pに切り替え、ステップS33に処理を進める。
【0069】
ステップS33ではエンジン制御装置14は、筒内噴射弁30のパーシャルリフト領域を使用しながらポート噴射弁32による燃料噴射量を調整する第1制御を追加で実行する。エンジン制御装置14は、ステップS33の処理を実行すると、ステップS34に処理を進める。
【0070】
ステップS34ではエンジン制御装置14は、筒内要求噴射量IqDIが中間領域Mを通過したか否か判断する。エンジン制御装置14は、筒内要求噴射量IqDIが中間領域Mを通過したと判断した場合(ステップS34 YES)、ステップS1に処理を進める。
【0071】
ステップS31においてエンジン制御装置14は、要求噴射量Iqが筒内噴射弁30のフルリフト領域Fにおいて噴射可能な最小噴射量DImin以上であると判断した場合(ステップS31 NO)、第2制御を継続しながらステップS34に処理を進める。
【0072】
ステップS34においてエンジン制御装置14が、筒内要求噴射量IqDIが中間領域Mを通過していないと判断した場合(ステップS34 NO)、エンジン制御装置14は、ステップS33に処理を進め、第1制御を追加した状態を継続する。
【0073】
このような制御手順による具体的な例を、
図7のタイミングチャートを用いて説明する。
図7のタイミングチャートは、要求噴射量Iqが減少し、筒内要求噴射量IqDIがフルリフト領域Fからパーシャルリフト領域Pへ移行する場合の例である(
図6のステップS21 YES,ステップS22 YESにおける例)。
図7の要求噴射量Iqの実線のグラフは、要求噴射量Iqの変化割合ΔIqが第2所定割合ΔIq2より大きい場合の一例である(
図6のステップS24 YESの例)。
図7の要求噴射量Iqの破線のグラフは、要求噴射量Iqの変化割合ΔIqが第2所定割合ΔIq2以下の場合の一例である(
図6のステップS24 NOの例)。
【0074】
図7の時刻T0から時刻T1に示すように、エンジン制御装置14はフルリフト領域Fでは、パーシャルリフト噴射フラグをオフすることによって、筒内噴射弁30にフルリフトによる燃料噴射を実行させる。時刻T1に示すように、エンジン制御装置14は、要求噴射量Iqの減少に伴い、筒内要求噴射量IqDIが中間領域Mに入ると判断した場合(ステップS23 YESの例)、移行制御フラグをオンにする。
【0075】
時刻T1から時刻T2のパーシャルリフト噴射の実線に示すように、要求噴射量Iqの変化割合ΔIqが第2所定割合ΔIq2より大きい場合、エンジン制御装置14は、パーシャルリフト噴射フラグをオンに切り替え、筒内要求噴射量IqDIを一定にする。すなわち、筒内要求噴射量IqDIをパーシャルリフト領域Pのパルス幅のまま一定にする。このように筒内要求噴射量IqDIを一定にすることによって、要求噴射量Iqに対して燃料噴射量が不足する。
【0076】
時刻T1から時刻T2のポート要求噴射量IqPFIに実線で示すように、エンジン制御装置14は、要求噴射量Iqに対して不足する燃料噴射量をポート噴射弁32による燃料噴射量を増加させたのち減少させて調整する第1制御を実行する。
【0077】
時刻T3のポート要求噴射量IqPFIおよびDI燃圧に実線で示すように、ポート要求噴射量IqPFIが下限値PFIminに到達した場合(
図6のステップS27 YESの一例)、要求噴射量Iqに対して不足する燃料噴射量を筒内噴射弁30の燃圧を下降させることによって調整する第2制御を追加で実行する。時刻T3から時刻T4のポート要求噴射量IqPFIおよびDI燃圧に実線で示すように、このときポート要求噴射量IqPFIを下限値PFIminに維持したまま、第2制御を実行してもよい。
【0078】
このように、変化割合ΔIqが第2所定割合ΔIq2より大きい場合、内燃機関1の出力をより迅速に下降させる必要がある。このような場合、筒内噴射弁30をフルリフト領域Fからパーシャルリフト領域Pに切り替え、ポート噴射弁32の実ポート噴射量IrPFIによって内燃機関1の出力を低下させる方が、燃圧を下降させることによって筒内噴射弁30の実筒内噴射量IrDI量を減少させるよりも、より迅速に内燃機関1の出力を減少させることができる。すなわち、ポート噴射弁32の噴射量を調整する方が、筒内噴射弁30の燃料圧力を上昇させるよりもレスポンス良く内燃機関1の出力を下降させられる。
【0079】
さらに、本実施形態ではステップS24においてステップS4と同様に、エンジン制御装置14は、要求噴射量Iqの変化割合ΔIqが第1所定割合ΔIq1より大きいか否かをアクセルペダル16の開度であるアクセル開度Thによって判断してもよい。
【0080】
本実施形態の電動車両Cは、アクセルペダル16の踏み込み量が減ると、内燃機関1に要求される出力が減少する。この場合、内燃機関1は、レスポンス良く出力を減少させることが好ましい。このため、中間領域Mにおいて要求噴射量Iqに対して不足する燃料をポート噴射弁32の噴射で調整することが好ましい。一方、アクセルペダル16の踏み込み量の変化に起因しない場合は、エンジン制御装置14は、内燃機関1の静粛性を優先し、内燃機関1の出力を緩やかに減少させることが好ましい。このような場合、中間領域Mにおいてポート要求噴射量IqPFIが下限値PFIminとならないように、第2制御を優先することが好ましい。
【0081】
時刻T1から時刻T2のポート要求噴射量IqPFIおよびDI燃圧に破線で示すように、要求噴射量Iqの変化割合ΔIqが第2所定割合ΔIq2以下の場合、エンジン制御装置14は、要求噴射量Iqの減少に対応した燃料噴射量を筒内噴射弁30の燃圧を下降させることによって調整する第2制御を実行する。
【0082】
時刻T2のパーシャルリフト噴射フラグ、ポート要求噴射量IqPFI、筒内要求噴射量IqDI、およびDI燃圧に破線で示すように、要求噴射量Iqが筒内噴射弁30のフルリフト領域Fにおいて噴射可能な最小噴射量DIminより小さい場合(ステップS31 YESの一例)、エンジン制御装置14は、第1制御を追加で実行してもよい。エンジン制御装置14は、時刻T2において、パーシャルリフト噴射フラグをオンに切り替え、筒内要求噴射量IqDIをパーシャルリフト領域に切り替えてもよい。時刻T2から時刻T3のDI燃圧に破線で示すように、このときエンジン制御装置14は、燃圧を下降させた状態を維持したまま、第1制御を実行してもよい。
【0083】
このように、変化割合ΔIqが第2所定割合ΔIq2以下の場合、内燃機関1の出力は緩やかに下降させればよい。このような場合、燃圧を下降させることによって、筒内噴射弁30の実筒内噴射量IrDI量を減少させる。これによって、実ポート噴射量IrPFIが下限値PFIminを下回ることを防止しながら、内燃機関1の出力を低下させることができる。この結果、内燃機関1の燃焼や排気ガスを良好に維持できる。
【0084】
以上説明した通り、本開示によれば、中間領域Mを使用せず要求噴射量Iqを満足させることができる内燃機関の制御システムを提供できる。
【0085】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0086】
上記実施形態では、筒内噴射弁30、ポート噴射弁32、を備える内燃機関を例に説明したが、本開示はこれに限定されない。第1燃料噴射弁は、筒内噴射弁30に限らず、パーシャルリフト領域Pとフルリフト領域Fを切り替え可能な燃料噴射弁であれば、どのような燃料噴射弁であってもよい。また、第2燃料噴射弁は、吸気ポート40に燃料を噴射するポート噴射弁32に限らず、第1燃料噴射弁と異なる位置に配置される燃料噴射弁であればどのような燃料噴射弁であってもよい。
【0087】
上記実施形態では、エンジン制御装置14がアクセルペダル16の踏み込み量であるアクセル開度Thを用いて、要求噴射量Iqが増減したか否かを判断する例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。アクセル開度Thは、アクセルペダル16が実際に踏み込まれた量に限らず、例えば車両制御装置12が演算した値などであってもよい。すなわち、電動車両Cがクルーズコントロールもしくは自動運転によって走行中において、車両制御装置12は、内燃機関1に要求する出力(以下要求出力)を演算する。この場合、車両制御装置12が電動車両Cを加減速させるために要求出力を増減させた場合、エンジン制御装置14は、燃料噴射量をアクセルに起因して増加させたと判断してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1:内燃機関,4:発電機
14:エンジン制御装置,16:アクセルペダル
30:筒内噴射弁,32:ポート噴射弁,34:高圧ポンプ
F:フルリフト領域,M:中間領域,P:パーシャルリフト領域
ΔIq:変化割合,ΔIq1:第1所定割合,ΔIq2:第2所定割合