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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115597
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】内燃機関の制御システム
(51)【国際特許分類】
   F02D 13/02 20060101AFI20240820BHJP
   F02N 11/00 20060101ALI20240820BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
F02D13/02 H
F02N11/00 G ZHV
F02D45/00 369
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021293
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金井 英輝
(72)【発明者】
【氏名】田ノ岡 渉
(72)【発明者】
【氏名】廣江 健太
(72)【発明者】
【氏名】柳川 健介
(72)【発明者】
【氏名】川辺 敬
【テーマコード(参考)】
3G092
3G384
【Fターム(参考)】
3G092AC02
3G092DA01
3G092DA02
3G092DA03
3G092FA31
3G092HD02Z
3G092HE08Z
3G092HF21Z
3G384AA28
3G384BA26
3G384BA31
3G384BA39
3G384CA03
3G384DA13
3G384EB08
3G384FA28Z
3G384FA46Z
3G384FA79Z
(57)【要約】
【課題】新規のモータリングを実現できる内燃機関の制御システムを提供する。
【解決手段】内燃機関の制御システムは、第1気筒と、前記第1気筒と異なる第2気筒と、を有する内燃機関と、前記内燃機関を駆動可能な回転電機と、前記回転電機を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記回転電機によって前記内燃機関を駆動し、前記第1気筒内の気体を、前記第1気筒から前記第2気筒に移動させる第1モータリング制御を実行する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1気筒と、前記第1気筒と異なる第2気筒と、を有する内燃機関と、
前記内燃機関を駆動可能な回転電機と、
前記内燃機関と、前記回転電機と、を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記回転電機によって前記内燃機関を駆動し、前記第1気筒内の気体を、前記第1気筒から前記第2気筒に移動させる第1モータリング制御を実行する、
内燃機関の制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記内燃機関の燃料カットを実行する場合、前記第1モータリング制御を実行する、請求項1に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項3】
前記気体を加熱する加熱装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記回転電機によって前記内燃機関を駆動し、前記加熱装置によって加熱された前記気体を前記第1気筒に移動させる第2モータリング制御を実行する、
請求項1または2に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記内燃機関の運転状態に応じて、前記第1モータリング制御および前記第2モータリング制御のいずれか一方に切り替える、
請求項3に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記回転電機に掛かる負荷に応じて、前記第1モータリング制御および前記第2モータリング制御のいずれか一方を優先する、
請求項3に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記内燃機関の極冷態始動を実行する場合、前記第1モータリング制御を優先して実行する、請求項4に記載の内燃機関の制御システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記内燃機関の冷態始動を実行する場合、前記第2モータリング制御を優先して実行する、請求項4に記載の内燃機関の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、モータと、内燃機関と、を有し、モータによって内燃機関を駆動するモータリングを実行する内燃機関の制御システムが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1の内燃機関の制御システムは、吸着触媒と電気ヒータとの間で空気を往復させ、吸着触媒を暖機するためのモータリングを実行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-185441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モータリングは、触媒の暖機以外にも利用できる。
【0005】
本開示の課題は、新規のモータリングを実現できる内燃機関の制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る内燃機関の制御システムは、第1気筒と、前記第1気筒と異なる第2気筒と、を有する内燃機関と、前記内燃機関を駆動可能な回転電機と、前記内燃機関と、前記回転電機と、を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記回転電機によって前記内燃機関を駆動し、前記第1気筒内の気体を、前記第1気筒から前記第2気筒に移動させる第1モータリング制御を実行する。
【0007】
この内燃機関の制御システムによれば、気体を第1気筒から第2気筒に移動させる第1モータリングを実行することによって、内燃機関を暖機することができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、新規のモータリングを実現できる内燃機関の制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態による電動車両のシステム図。
図2】本開示の一実施形態による内燃機関のシステム図。
図3】本開示の一実施形態によるファイアリングカムおよびモータリングカムのカムプロフィールを示す図。
図4】本開示の一実施形態によるモータリングカムによる各行程におけるカム作動を示す図。
図5】本開示の一実施形態による昇温モータリング時の気体の流れを示す図。
図6】本開示の一実施形態による保温モータリング時の気体の流れを示す図。
図7】本開示の一実施形態による制御装置が実行する制御手順を示すフローチャート。
図8】本開示の他の実施形態による保温モータリング時の気体の流れを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の内燃機関1の制御システム3は、内燃機関1と、モータ(FrM)2と、を動力源として車輪C1を駆動する電動車両Cに搭載される。しかし、内燃機関1は、内燃機関1のみを動力源とする車両に搭載されてもよい。
【0012】
電動車両Cは、内燃機関1と、モータ2と、発電機(GEN:回転電機の一例)4と、リチウムイオン電池などの二次電池を含む駆動用電池(BT:電池の一例)6と、トランスアクスル8と、を有する。発電機4は、内燃機関1に接続され、内燃機関1を駆動可能である。発電機4は、駆動用電池6からの電力によって力行する間は、内燃機関1を駆動するモータリングを行う。一方、発電機4は、内燃機関1の運転中において内燃機関1に駆動されて発電する。したがって、発電機4は、力行と発電が可能なモータ・ジェネレータである。トランスアクスル8は、複数のギヤとクラッチ8aを有する。内燃機関1は、トランスアクスル8を介して発電機4と、車軸10と連結される。トランスアクスル8は、クラッチ8aが開放状態の場合、内燃機関1と車軸10との動力伝達が遮断され、クラッチ8aが接続状態の場合、内燃機関1の動力が車軸10に伝達される。モータ2は、トランスアクスル8を介して車軸10と連結される。電動車両Cはこのほか、車両制御装置(制御装置の一例)12と、内燃機関1を制御するエンジン制御装置14と、電動車両Cのユーザが操作するアクセルペダル16と、モータ2および発電機4を制御するインバータ18と、充電ボタン(図示なし)と、を有してもよい。また、本実施形態では電動車両Cは、外部電源に接続可能な充電器20と、駆動用電池6からの電力を、例えば家電などの外部機器に供給可能な給電装置22と、を有するプラグインハイブリッド車(PHEV)である。しかし、電動車両Cはこのような装置を有さないハイブリッド車両であってもよい。
【0013】
本実施形態の電動車両Cは、EVモード、シリーズモード、パラレルモード、充電モードなどの各モードを有する。電動車両Cは、EVモードの場合、駆動用電池6からの電力によってモータ2を駆動する。電動車両Cは、シリーズモードの場合、内燃機関1によって発電機4を駆動し、発電機4によって発電した電力を用いてモータ2を駆動する。電動車両Cは、パラレルモードの場合、クラッチ8aを接続し、内燃機関1の動力を用いて車軸10を駆動する。電動車両Cは、充電モードでは、内燃機関1によって発電機4を駆動し、発電機4によって発電した電力を駆動用電池6に蓄電する。電動車両Cは、アクセルペダル16の踏み込み状態や充電ボタンの操作状態に応じて、車両制御装置12が各モードを切り替え、インバータ18を介してモータ2および発電機4を制御するとともに、エンジン制御装置14に内燃機関1を制御させる。
【0014】
図2に示すように、内燃機関1は、ポート噴射弁30と、点火プラグ32と、吸気カム34と、吸気弁35と、排気カム36と、排気弁37と、加熱装置38と、触媒40と、スロットル42と、温度センサ44と、を備える。本実施形態では内燃機関1は、ポート噴射弁30から噴射される燃料と吸気との混合気に、点火プラグ32によって火花を点火するガソリンエンジンである。また、図1および図2に示すように、本実施形態では内燃機関1は、4つの気筒50を有し、それぞれの気筒に2つの吸気弁35と2つの排気弁37が配置されている。温度センサ44は、触媒40の温度を検知することによって加熱装置38の作動温度を検知するセンサである。
【0015】
本実施形態の吸気カム34および排気カム36は、それぞれファイアリングカムとモータリングカムとを有する。図2に示すように、吸気カム34は、吸気カム34の吸気ファイアリングカムと吸気モータリングカムとを切り替える吸気カム切り替え装置34aを有する。排気カム36は、排気カム36の排気ファイアリングカムと排気モータリングカムとを切り替える排気カム切り替え装置36aを有する。
【0016】
図3に示すように、ファイアリングカムは、内燃機関1の吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程の順に合わせて吸気弁35および排気弁37を開閉する。具体的には、図3の破線で示す吸気ファイアリングカムおよび排気ファイアリングカムのカムプロフィールに示すように、ファイアリングカムは、吸気行程において吸気弁35を開いて閉じる。ファイアリングカムは、圧縮行程および膨張行程において吸気ファイアリングカムおよび排気ファイアリングカムによって吸気弁35と排気弁37とを閉じた状態にする。ファイアリングカムは、排気行程では、排気ファイアリングカムによって排気弁37を開いて閉じる。このようにファイアリングカムは、内燃機関1を吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程の順に遷移させ、混合気を燃焼させる際に使用するカムである。
【0017】
モータリングカムは、保温モータリング制御(第1モータリング制御の一例)と、昇温モータリング制御(第2モータリング制御の一例)と、を実現するためのカムである。モータリングカムは、吸気行程または膨張行程に相当するタイミング(図2のピストン48が下降するタイミング)において排気弁37を開く状態にすることによって、排気通路46にある気体(本実施形態では排気通路46内の空気)を気筒50に吸い込む。モータリングカムは、排気行程または圧縮行程に相当するタイミング(図2のピストン48が上昇するタイミング)において排気弁37を開いた状態にすることによって、気筒50内の気体を排気通路46に戻す。
【0018】
具体的には、図3の実線で示す吸気モータリングカムおよび排気モータリングカムのプロフィールに示すように、モータリングカムは、吸気行程から圧縮行程に渡って排気モータリングカムを使用して排気弁37を開く。モータリングカムは、膨張行程から排気行程に渡っても同様に、排気モータリングカムを使用して排気弁37を開く。この間、モータリングカムは、吸気モータリングカムを使用して全行程において吸気弁35を閉じた状態にする。すなわち、排気モータリングカムは、楕円形状のカムである。吸気モータリングカムは、カム山のない円形状のカムである。
【0019】
また、内燃機関1が複数の気筒50を有する場合、モータリングカムは、昇温モータリング制御時において、気筒50から出た気体が別の気筒に吸い込まれることを防止することができる。具体的には、図4に示すように、モータリングカムは、部分的に排気モータリングカムの作動を止める休筒を実行することによって、排気弁37を閉じた状態にすることが可能である。
【0020】
図4の実線は昇温モータリング制御時の排気モータリングカムの作動を示す。モータリングカムは、図4の実線に示すように、昇温モータリング時において吸気通路49(図2参照)にある気体が気筒50内に流入することを防止するため、一部の気筒50は吸気弁35に加えて排気弁37を開かない状態にし、休筒する。
【0021】
図4の実線および図5に示すように、例えば、第1気筒50aのピストン48が下降している場合、第1気筒50aの吸気弁35は閉じ排気弁37を開く(図4の第1気筒の膨張行程、排気行程参照)。同様に第4気筒50dのピストン48も下降しているため、第4気筒50dの吸気弁35は閉じ排気弁37を開く(図4の第4気筒の吸気行程、圧縮行程参照)。一方、モータリングカムは、第1気筒50aに隣接する第2気筒50bを、吸気弁35および排気弁37が開かない休筒状態にする(図4の第2気筒参照)。モータリングカムは、第4気筒50dに隣接する第3気筒50cも同様に休筒状態にする(図4の第3気筒参照)。図5に示すように、モータリングカムは、このように作動することによって、第1気筒50aおよび第4気筒50dに排気通路46の気体を取り込ませて、再び排気通路46に排出し、排気通路46内の気体を気筒50と加熱装置38との間で往復移動させる。モータリングカムは、昇温モータリング制御中に第2気筒50bおよび第3気筒50cについても同様に、休筒させていない間に気体を気筒50と加熱装置38との間で往復移動させる。
【0022】
図4の破線は保温モータリング制御時の排気モータリングカムの作動を示す。気筒50が4つの場合、図4の破線および図6に示すように、第1気筒50aにおける気筒50から気体が排出されている間に、第2気筒50bの排気弁37が開く。図6に示すように、モータリングカムは、このような作動をすることによって、第1気筒50aの気体を第2気筒50bに流す。モータリングカムは、第4気筒50dの気体も同様に、第3気筒50cに流す。また、モータリングカムは、第2気筒50bの気体を第1気筒50aに流す。モータリングカムは、第3気筒50cも同様に第4気筒50dに流す。このように、モータリングカムは、保温モータリング制御中にひとつの気筒50の気体を別の気筒50に移動させる。
【0023】
図2に示すように、加熱装置38は、排気通路46内の気体を加熱する装置である。本実施形態の加熱装置38は、電熱線によって気体を加熱する電気式のヒータである。加熱装置38は、低電圧バッテリ52に電気的に接続される。低電圧バッテリ52は、駆動用電池6の電力が降圧されて供給される。
【0024】
昇温モータリング制御において加熱装置38は、気体の加熱を実行する。昇温モータリング制御では、加熱装置38を使用して加熱された気体が排気通路46と加熱装置38との間を往復移動する。これによって、加熱された気体が第1気筒50aから第4気筒50dに供給される。
【0025】
車両制御装置12は、インバータ18を介して発電機4と電気的に接続され、発電機4を制御する。また、車両制御装置12は、少なくとも保温モータリング制御、および昇温モータリング制御などの指示をエンジン制御装置14に発信し、エンジン制御装置14に内燃機関1を制御させる。車両制御装置12は、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等とを含むマイクロコンピュータによって構成されるECU(Electrоnic Control Unit)である。車両制御装置12は、メモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、電動車両Cの様々な制御を実行する。
【0026】
また、車両制御装置12は、駆動用電池6のコントロールユニット(図示せず)と電気的に接続され、駆動用電池6の充電率SOC、および電池温度などの情報を、駆動用電池6のコントロールユニットから取得可能である。
【0027】
エンジン制御装置14は、内燃機関1が備える各種装置と電気的に接続され、内燃機関1を制御する制御装置である。エンジン制御装置14は、実際には、演算装置と、メモリと、入出力バッファ等とを含むマイクロコンピュータによって構成されるECU(Electrоnic Control Unit)である。エンジン制御装置14は、メモリに格納されたマップおよびプログラムに基づいて、内燃機関1の様々な制御を実行する。なお、内燃機関1の制御はエンジン制御装置14のほか、車両制御装置12によって実行してもよい。
【0028】
エンジン制御装置14は、車両制御装置12から保温モータリング制御、または昇温モータリング制御の指示を車両制御装置12から取得すると、内燃機関1がファイアリング状態の場合は、ファイアリングを停止(燃料噴射と点火を停止)し、モータリングカムに切り替える。また、エンジン制御装置14は、昇温モータリング制御の指示を取得すると、加熱装置38を作動させる。
【0029】
次に車両制御装置12が実行する制御手順について、図7のフローチャートを用いて説明する。車両制御装置12は、例えば内燃機関1の始動条件が成立した場合、または、内燃機関1の停止もしくは燃料カット条件が成立した場合、モータリングを実行する条件が成立したと判断して制御手順を開始する。
【0030】
ステップS1では車両制御装置12は、内燃機関1の温度Tを取得する。本実施形態では内燃機関の温度Tは、電動車両Cの外気温である。しかし、内燃機関1の温度Tは、例えば、内燃機関1の水温、温度センサ44によって取得した触媒40の温度など、種々の値を用いて取得すればよい。車両制御装置12は、内燃機関1の温度Tを取得すると、ステップS2に処理を進める。
【0031】
ステップS2では車両制御装置12は、極冷態始動か否か判断する。本実施形態では車両制御装置12は、ステップS1において取得した温度Tが外気温の場合、摂氏マイナス10度以下である場合、極冷態始動であると判断する。しかし、車両制御装置12は、水温などに基づいて極冷態始動か否かを判断してもよい。車両制御装置12は、極冷態始動であると判断した場合(ステップS2 YES)、ステップS3に処理を進める。
【0032】
ステップS3では車両制御装置12は、モータリング可能時間を取得する。モータリング可能時間は、例えば極冷態始動時における保温モータリング制御による発電機4の出力(発電機4による内燃機関1のモータリングで消費する電力)と、駆動用電池6の充電率SOCの関係、あるいは駆動用電池6の出力可能な電力に基づいて車両制御装置12が算出してもよい。車両制御装置12は、モータリング可能時間を取得するとステップS4に処理を進める。
【0033】
ステップS4では車両制御装置12は、保温モータリング制御を実行する。具体的には、車両制御装置12は、保温モータリング制御を開始すると、発電機4を力行させ内燃機関1をモータリングする。また、車両制御装置12は、エンジン制御装置14に保温モータリングを実行するための信号を送信する。さらに、エンジン制御装置14は、吸気カム切り替え装置34aおよび排気カム切り替え装置36aを制御し、モータリングカムに切り替える。なお、車両制御装置12は、電動車両Cが走行中である場合、電動車両Cが停車中である場合に比べて、保温モータリング制御による内燃機関1の回転数(以下モータリング回転数)を低くする。具体的には、電動車両Cが走行中は、モータリング回転数を内燃機関1の初爆域(例えば600rpm程度)とし、電動車両Cが停止中はアイドル域(例えば700rpm程度)としてもよい。これによって、発電機4によるエネルギ消費を抑制できる。車両制御装置12は、保温モータリング制御を実行するとステップS5に処理を進める。
【0034】
ステップS5では車両制御装置12は、昇温モータリング制御を実行可能か否か判断する。車両制御装置12は、昇温モータリング制御が実行可能か否かを、発電機4に掛かる負荷、または駆動用電池6が出力可能な電力によって判断してもよい。また、車両制御装置12は、保温モータリング制御によって内燃機関1が暖機され、内燃機関1のフリクションが低下した場合に昇温モータリングを実行可能と判断してもよい。車両制御装置12は、昇温モータリングを実行可能と判断した場合(ステップS5 YES)、ステップS6に処理を進める。
【0035】
ステップS6では車両制御装置12は、昇温モータリング制御を実行する。具体的には、加熱装置38をオンにするとともにモータリングカムに休筒を実行させ、気筒50に加熱装置38によって温められた気体を供給する。車両制御装置12は、昇温モータリング制御を実行すると、ステップS7に処理を進める。
【0036】
ステップS5において車両制御装置12が昇温モータリング制御を実行不可能と判断した場合(ステップS5 NO)、車両制御装置12は、ステップS7に処理を進め、昇温モータリング制御をスキップする。
【0037】
ステップS7では車両制御装置12は、モータリングを終了するか否か判断する。車両制御装置12は、例えば、モータリング可能時間を経過したと車両制御装置12が判断した場合、モータリングを終了すると判断してもよい。そのほか車両制御装置12は、内燃機関1の水温が、気筒50内の燃料が気化するのに十分な温度(例えば摂氏20度以上)になったと判断した場合、モータリングを終了すると判断してもよい。車両制御装置12は、モータリングを終了すると判断した場合(ステップS7 YES)、制御手順を終了する。なお、極冷態始動、冷態始動においては、車両制御装置12は、制御手順を終了後に内燃機関1を始動する。燃料カットにおいては、車両制御装置12は、制御手順を終了後に燃料噴射と点火を再開する。
【0038】
ステップS7において、車両制御装置12がモータリングを終了しないと判断した場合(ステップS7 NO)、ステップS2に処理を進める。
【0039】
ステップS2において車両制御装置12が極冷態始動でないと判断した場合(ステップS2 NO)、車両制御装置12は、ステップS8に処理を進める。ステップS8では車両制御装置12は、冷態始動か否か判断する。本実施形態では車両制御装置12は、ステップS1において取得した外気温が摂氏マイナス10度より大きく摂氏10度以下である場合、冷態始動であると判断する。また、車両制御装置12は、温度センサ44によって取得した触媒40の温度が触媒40の活性化温度以下の場合、冷態始動であると判断する。しかし、車両制御装置12は、水温などに基づいて冷態始動か否かを判断してもよい。車両制御装置12は、冷態始動であると判断した場合(ステップS8 YES)、ステップS9に処理を進める。
【0040】
ステップS9では車両制御装置12は、モータリング可能時間を取得する。モータリング可能時間は、例えば冷態始動時における昇温モータリング制御による発電機4の出力と、駆動用電池6の充電率SOCの関係、あるいは駆動用電池6の出力可能な電力に基づいて車両制御装置12が算出してもよい。このとき、加熱装置38で消費される電力も考慮してもよい。車両制御装置12は、モータリング可能時間を取得するとステップS10に処理を進める。
【0041】
ステップS10では車両制御装置12は、昇温モータリング制御を実行する。具体的には、車両制御装置12は、昇温モータリング制御を開始すると、発電機4を力行させる。また、車両制御装置12は、加熱装置38をオンにする。さらに、車両制御装置12は、エンジン制御装置14に昇温モータリングを実行するための信号を送信する。さらに、エンジン制御装置14は、吸気カム切り替え装置34aおよび排気カム切り替え装置36aを制御し、モータリングカムに切り替える。エンジン制御装置14は、モータリングカムを制御しモータリングカムに休筒を実行させる。車両制御装置12は、昇温モータリング制御を実行するとステップS11に処理を進める。
【0042】
ステップS11では車両制御装置12は、保温モータリング制御を実行可能か否か判断する。車両制御装置12は、保温モータリング制御が実行可能か否かを、発電機4に掛かる負荷によって判断してもよい。すなわち、駆動用電池6の充電率SOCが低下し、昇温モータリングによるエネルギ消費を抑制する場合、車両制御装置12は、保温モータリング制御を実行可能と判断してもよい。また、保温モータリング制御を実行することによって内燃機関1の燃料が気化するのに十分な温度(例えば摂氏20度以上)に到達可能と判断した場合、車両制御装置12は、保温モータリング制御を実行可能と判断してもよい。車両制御装置12は、保温モータリングを実行可能と判断した場合(ステップS11 YES)、ステップS12に処理を進める。
【0043】
ステップS12では車両制御装置12は、保温モータリング制御を実行する。具体的には、加熱装置38をオフにするとともにモータリングカムに休筒を停止させる。車両制御装置12は、保温モータリング制御を実行すると、ステップS7に処理を進める。
【0044】
ステップS11において車両制御装置12が保温モータリング制御を実行不可能と判断した場合(ステップS11 NO)、車両制御装置12は、ステップS7に処理を進め、昇温モータリング制御をスキップする。
【0045】
ステップS8において車両制御装置12が冷態始動でないと判断した場合(ステップS8 NO)、車両制御装置12は、ステップS13に処理を進める。ステップS13では車両制御装置12は、燃料カットを実行中か否か判断する。車両制御装置12は、燃料カットを実行中であると判断した場合(ステップS13 YES)、ステップS14に処理を進める。
【0046】
ステップS14では車両制御装置12は、モータリング可能時間を取得する。モータリング可能時間は、ステップS3と同様に車両制御装置12が算出してもよい。車両制御装置12は、モータリング可能時間を取得するとステップS15に処理を進める。
【0047】
ステップS15では車両制御装置12は、ステップS4と同様に保温モータリング制御を実行する。車両制御装置12は、保温モータリング制御を実行するとステップS7に処理を進める。
【0048】
このように車両制御装置12は、冷態始動、極冷態始動、燃料カットなのどの内燃機関1の運転状態に応じて保温モータリング制御と昇温モータリング制御とを切り替える。車両制御装置12は、極冷態状態では保温モータリング制御を優先する。極冷態状態では、内燃機関1のオイルの粘度の影響によってモータリングする際の内燃機関1のフリクションが大きい。保温モータリング制御では、第1気筒50aから第2気筒50bに気体が移動することによって、第2気筒50bのピストン48の押し下げ動作を補助できる。このため、保温モータリング制御は、昇温モータリング制御に比べてポンプロスを抑制することができる。また、加熱装置38をオンにしないため、電力消費量を抑制できる。保温モータリング制御では、第1気筒50aのピストン48の摺動による摩擦熱を受熱した気体が第2気筒50bに流入し、その気体が第2気筒50bのピストン48の摺動による摩擦熱を受熱する。また、各気筒50内で空気が圧縮されることで各気筒50の温度が上昇する。このような繰り返しによって、内燃機関1を温めることができる。これによって、内燃機関1に点火し燃料噴射する際に燃料の霧化が良くなる。この結果、内燃機関1の始動時のエミッションが良くなる。
【0049】
また、車両制御装置12は、冷態始動においては昇温モータリング制御を優先する。冷態始動では、極冷態始動に比べて内燃機関1のフリクションが低い。このため、発電機4に掛かる負荷も極冷態始動に比べ低い。さらに、極冷態始動に比べると駆動用電池6の出力可能な電力も大きい。このような場合、車両制御装置12は、昇温モータリング制御を優先することによって迅速に内燃機関1を暖機する。これによって、より早く燃料の霧化が良くなる温度状態まで到達する。また、昇温モータリング制御では、加熱装置38をオンにするため、触媒40が活性化温度に到達するまでの時間も短くなる。
【0050】
また、車両制御装置12は、燃料カット時においては保温モータリング制御を実行する。燃料カット時は内燃機関1が回転している状態のため始動時に比べて回転数が高い。このため、この状態においてモータリングする場合、発電機4に掛かる負荷も高い。このため、保温モータリング制御によって発電機4の負荷を抑える方が好ましい。さらに、保温モータリング制御によれば、排気が排気通路46にとどまり触媒40の温度低下を抑制できる。この結果、燃料カットから復帰した際の触媒40の浄化性能の低下を抑制できる。
【0051】
以上説明した通り、本開示によれば、新規のモータリングを実現できる内燃機関の制御システムを提供できる。
【0052】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0053】
(a)上記実施形態では、内燃機関1が4つの気筒50を有する例について説明したが本開示はこれに限定されない。内燃機関1は、少なくとも2つ以上の気筒50を有すればよい。
【0054】
(b)上記実施形態では、ファイアリングカムとモータリングカムを切り替えることによって保温モータリング制御および昇温モータリング制御を実行する例を説明したが本開示はこれに限定されない。吸気弁35および排気弁37は、保温モータリング制御および昇温モータリング制御が実行可能なように作動させることができれば、どのような方法によって作動させてもよい。
【0055】
(c)上記実施形態では、発電機4に掛かる負荷に応じて保温モータリング制御および昇温モータリング制御のいずれか一方を優先する例として、極冷態始動時、冷態始動時、燃料カット時を例として用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。発電機4の負荷に応じて保温モータリング制御および昇温モータリング制御のいずれか一方を優先すれば、この他の内燃機関1の運転状態であってもよい。
【0056】
(d)上記実施形態では、排気通路46に加熱装置38を設ける例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば図8に示すように、吸気通路49に加熱装置38を設けてもよい。この場合、第1気筒50aから第4気筒50dの各ポートに加熱装置38を設けてもよい。さらにこの場合、吸気モータリングカムは、排気モータリングカムと同様のカムとしてもよい。車両制御装置12は、保温モータリング制御をスロットル42が閉じた状態で、吸気モータリングカムによって実行させてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1:内燃機関,4:発電機(回転電機の一例)
38:加熱装置,40:触媒
50:気筒,50a:第1気筒,50b:第2気筒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8