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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011560
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】イヤーピース型電極
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/256 20210101AFI20240118BHJP
   H04R 1/10 20060101ALI20240118BHJP
   A61B 5/265 20210101ALI20240118BHJP
   A61B 5/263 20210101ALI20240118BHJP
【FI】
A61B5/256 130
H04R1/10 104Z
A61B5/265
A61B5/263
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113652
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(74)【代理人】
【識別番号】100125335
【弁理士】
【氏名又は名称】矢代 仁
(72)【発明者】
【氏名】久保 真之
(72)【発明者】
【氏名】黒子 剛規
(72)【発明者】
【氏名】林 泰成
(72)【発明者】
【氏名】林 隆浩
【テーマコード(参考)】
4C127
5D005
【Fターム(参考)】
4C127AA03
4C127LL13
4C127LL22
5D005BA14
(57)【要約】
【課題】生体に与える不快感を低減し、しかも外耳道の内面に広い面積にわたって、ある程度の接触圧で安定的に接触するイヤーピース型電極を提供する。
【解決手段】導電性ゴムから形成され、外耳道に挿入されるイヤーピース型電極は、外耳道の内面に接触させられる外周壁と、外周壁の内側に配置された内周壁と、外周壁と内周壁を隙間なく接続する先端壁とを備える。外周壁の外周面および内周面、ならびに内周壁の外周面および内周面の少なくとも1つには、イヤーピース型電極の中心軸線に沿って延び、壁を貫通しない複数のスリットが形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ゴムから形成され、外耳道に挿入されるイヤーピース型電極であって、
外耳道の内面に接触させられる外周壁と、
前記外周壁の内側に配置された内周壁と、
前記外周壁と前記内周壁を隙間なく接続する先端壁とを備え、
前記外周壁の外周面および内周面、ならびに前記内周壁の外周面および内周面の少なくとも1つには、イヤーピース型電極の中心軸線に沿って延び、壁を貫通しない複数のスリットが形成されている
イヤーピース型電極。
【請求項2】
前記外周壁部の外周面は、イヤーピース型電極の中心軸線を中心とするほぼ円錐台形状を有する
請求項1に記載のイヤーピース型電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人を含む哺乳類または鳥類の外耳道に挿入されるイヤーピース型電極に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、カナル型イヤホンのイヤーピースに類似するほぼ円筒形状を有する電極を開示する。この電極は、人間の外耳道に挿入され、頭蓋に電流を供給するため、または脳波を計測するために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-217986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
音楽を聴くために使用されるイヤホンのイヤーピースの材料は軟らかく、JIS K 6253(2012)に規定されたデュロメータ・タイプAで測定されたゴム硬度は一般的に30°以下である。したがって、イヤホンのイヤーピースは、個人差がある外耳道の形状および大きさに容易に追従することができる。
【0005】
他方、イヤーピース型電極の材料は、導電性を高める多量の導電性フィラーが配合されているために硬く、デュロメータ・タイプAで測定されたゴム硬度は一般的に60~70°である。その結果、イヤーピース型電極を長時間装着した場合、人によっては圧迫感または痛みといった不快感を持つことがありうる。
【0006】
生体との電気的接続を確保するため、イヤーピース型電極は、外耳道の内面に広い面積にわたって、ある程度の接触圧で安定的に接触することが好ましい。イヤーピース型電極の硬度を低下させると、外耳道に装着する際、イヤーピース型電極が座屈し、接触面積が低下したり、部分的に接触圧が低下したりするおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、生体に与える不快感を低減し、しかも外耳道の内面に広い面積にわたって、ある程度の接触圧で安定的に接触するイヤーピース型電極を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、導電性ゴムから形成され、外耳道に挿入されるイヤーピース型電極を提供する。イヤーピース型電極は、外耳道の内面に接触させられる外周壁と、前記外周壁の内側に配置された内周壁と、前記外周壁と前記内周壁を隙間なく接続する先端壁とを備える。前記外周壁の外周面および内周面、ならびに前記内周壁の外周面および内周面の少なくとも1つには、イヤーピース型電極の中心軸線に沿って延び、壁を貫通しない複数のスリットが形成されている。
【0009】
この態様においては、外周壁の外周面および内周面、ならびに内周壁の外周面および内周面の少なくとも1つには、イヤーピース型電極の中心軸線に沿って延びる複数のスリットが形成されている。したがって、外周壁および/または内周壁の剛性が部分的に弱められ、壁が弾性変形しやすくなる。外周壁にスリットが形成されている場合には、外周壁の剛性が部分的に弱められ、外周壁が弾性変形しやすくなる。内周壁にスリットが形成されている場合には、内周壁の剛性が部分的に弱められ、内周壁が弾性変形しやすくなり、内周壁に接続された外周壁も内周壁に引かれて大きく弾性変形する。こうして、外周壁は、イヤーピース型電極の径方向内側に向けて弾性変形して、外耳道の内面にフィットすることが可能である。スリットは、スリットが形成された壁を貫通しないので、壁が座屈しにくい。したがって、イヤーピース型電極は、外耳道の内面に広い面積にわたって、ある程度の接触圧で安定的に接触する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るイヤーピース型電極の使用例を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るイヤーピース型電極の正面図である。
図3図2のイヤーピース型電極の斜視図である。
図4図2のイヤーピース型電極の正面断面図である。
図5図2のイヤーピース型電極の側面断面図である。
図6図2のイヤーピース型電極の平面図である。
図7】実施形態の変形例に係るイヤーピース型電極の断面図である。
図8】実施形態の他の変形例に係るイヤーピース型電極の断面図である。
図9】実施形態の他の変形例に係るイヤーピース型電極の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施形態を説明する。図面の縮尺は必ずしも正確ではなく、一部の特徴は誇張または省略されることもある。
【0012】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るイヤーピース型電極1は、人間、他の哺乳類または鳥類の外耳道2に挿入される。イヤーピース型電極1は、導電性ゴムから形成されており、使用において、脳波または血流を測定する測定装置(図示せず)に電気的に接続される。
【0013】
図1に示す使用例では、イヤーピース型電極1は、連結部品3に機械的および電気的に接続されており、連結部品3は測定装置に機械的および電気的に接続されている。連結部品3は、金属製の円筒部品4を有し、円筒部品4はゴム製の保護チューブ5の先端に嵌め入れられている。
【0014】
円筒部品4の内部にはスピーカー6が固定されており、スピーカー6で音を発生させるための配線6aが保護チューブ5の内部を通じて延び、測定装置に電気的に接続されている。
【0015】
円筒部品4は小径円筒部4aを有しており、小径円筒部4aの端部には、径方向外側に向けて広がる円環状のフランジであるフック4bが形成されている。
【0016】
後述するように、イヤーピース型電極1は、内周壁8、先端壁9および外周壁10を有する。円筒部品4の小径円筒部4aは内周壁8に嵌め入れられている。先端壁9と反対側の内周壁8の端部には、径方向内側に向けて延びる円環状のフック8aが形成されており、フック8aは小径円筒部4aのフック4bに引っ掛けられている。したがって、イヤーピース型電極1は、円筒部品4に固定され、円筒部品4に電気的に接続されている。円筒部品4は、保護チューブ5の内部を通じて延びる導線4cを介して、測定装置に電気的に接続されている。フック4b,8aの引っ掛かりを解除すれば、イヤーピース型電極1は円筒部品4から取り外すことができる。
【0017】
この使用例では、イヤーピース型電極1はスピーカー6と共に使用される。すなわち、イヤーピース型電極1はカナル型イヤホンのイヤーピースとして使用される。スピーカー6は音を発生し、音は円筒部品4の小径円筒部4aの内部空間とイヤーピース型電極1の内周壁8の内部空間と外耳道2を通じて、中耳および内耳に届けられる。イヤーピース型電極1は、イヤーピース型電極1が接触する外耳道2の内面に電流を供給するとともに、外耳道2から得られる電気的性質の変化(例えば電位の変化、電流の変化)を測定するために使用される。測定装置は、外耳道2から得られる電気的性質の変化に基づいて、脳波または血流の変化を診断する。したがって、特定の音を聴いた時の被験者の精神状態を推定することが可能である。
【0018】
この使用例では、スピーカー6は配線6aを介して測定装置に接続されているが、スピーカー6は無線で測定装置に接続されていてもよい。
【0019】
スピーカー6は絶対必要というわけではない。イヤーピース型電極1は、音を発生させることなく、前庭電気刺激のために頭蓋に電流を供給するために使用してもよい。あるいは、イヤーピース型電極1は、音を発生させることなく、脳波または血流を計測するために使用してもよい。
【0020】
イヤーピース型電極1の材料である導電性ゴムは、導電性材料の粒子および/またはフレークを含有する。マトリックス材料であるゴムは、例えばシリコーンゴムである。導電性材料は、例えば、カーボンブラック、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)、ステンレス鋼、鉄(Fe)、銀-塩化銀(Ag/AgCl)のいずれかであってよく、これらの混合物であってもよい。
【0021】
図2から図6に示すように、本発明の実施形態に係るイヤーピース型電極1は、中心軸線Axを中心にして回転対称な三次元形状を有する。図4は、図2図5および図6のIV-IV線矢視断面図であり、図5は、図4のIV-IV線矢視断面図である。
【0022】
イヤーピース型電極1は、内周壁8、先端壁9および外周壁10を有する。図1に示すように、イヤーピース型電極1を生体に装着するとき、先端壁9は外耳道2の奥に向けられる。
【0023】
外周壁10は、外耳道2の内面に接触する部分であり、ほぼ円錐台形状を有する円錐台形壁部11と、ほぼ中空円筒形状を有する円筒形壁部12を有する。「ほぼ円錐台形状」とは、完全な円錐台形状を含み、図示の円錐台形壁部11のように、不正確な円錐台形状であっても、一見して円錐台と認識され、外耳道2への挿入に適した形状を含む意味である。すなわち、「ほぼ円錐台形状」は、径方向中央部分がない傘またはボウルの形状を含み、わずかな凹部および/または凸部を有していてもよい。
【0024】
「ほぼ中空円筒形状」とは、完全な中空円筒形状を含み、不正確な中空円筒形状であっても、一見して中空円筒形状と認識される形状を含む意味である。すなわち、円筒形壁部12の外周面と内周面は、中心軸線Axに対してわずかに傾斜していてもよいし、わずかな凹部および/または凸部を有していてもよい。
【0025】
円錐台形壁部11は、第1の軸線方向端部11aと、第1の軸線方向端部11aより大きい直径を有する第2の軸線方向端部11bを有する。第1の軸線方向端部11aは先端壁9に隙間なく滑らかに接続されている。第2の軸線方向端部11bは円筒形壁部12に隙間なく滑らかに接続されている。
【0026】
図2に示すように、中心軸線Axに対する円錐台形壁部11の第1の軸線方向端部11a側の部分11cの傾斜角(円錐台でいうところの頂角)θ1は、中心軸線Axに対する第2の軸線方向端部11b側の部分11dの傾斜角(円錐台でいうところの頂角)θ2より大きい。また、部分11cの傾斜角θ1は、第1の軸線方向端部11aに近いほど、大きくなる。このように、円錐台形壁部11は、第1の軸線方向端部11aに近いほど、中心軸線Axに対する傾斜角が大きくなる。したがって、外耳道2にイヤーピース型電極1を挿入する際、被験者に円錐台形壁部11が与える刺激が少ない。
【0027】
図4に示すように、内周壁8は、先端壁9側(図の上側)の断面積が反対側(図の下側)の断面積より大きいほぼ円錐台形状を有する。内周壁8は、外周壁10の内側に、外周壁10と同軸に配置されている。先端壁9と反対側の内周壁8の端部には、径方向内側に向けて延びる円環状の上記フック8aが形成されている。
【0028】
先端壁9は、中心軸線Axを含む断面においてほぼ円弧形状を有しており、内周壁8と外周壁10を滑らかに隙間なく接続する。
【0029】
内周壁8の内周面には、複数の(実施形態では6つの)スリット8sが形成されている。スリット8sは、先端壁9から中心軸線Axに沿ってフック8aに向けて延びているが、フック8aには到達しない。各スリット8sは、内周壁8を厚さ方向に貫通しない。
【0030】
スリット8sが形成されているため、内周壁8は、スリット8sに対応する複数の薄肉部分と、周方向において薄肉部分の間にある複数の厚肉部分8tを有する。
【0031】
複数のスリット8sは、互いに同形同大であり、中心軸線Axを中心とする周方向に間隔をおいて並べられている。絶対必要ではないが、好ましくは、スリット8sは、中心軸線Axを中心として等しい角間隔をおいて配置されている。
【0032】
スリット8sの数は2以上であればよい。但し、イヤーピース型電極1の弾性変形を促進するため、スリット8sの数は3以上であることが好ましい。
【0033】
図4を参照し、イヤーピース型電極1の寸法を説明する。イヤーピース型電極1の高さH1(先端壁9の反対側の円筒形壁部12の端部と先端壁9の先端面9aとの間の軸線方向に沿った距離)は、例えば6~11mmである。円筒形壁部12の高さH2(円筒形壁部12の両端部の間の軸線方向に沿った距離)は、例えば1~5mmである。
【0034】
イヤーピース型電極1の外径D1(円筒形壁部12の外径)は、例えば10~14mmである。
【0035】
内周壁8のフック8aの内径Dhは、例えば3~5mmである。フック8aの軸線方向長さLは、例えば1~3mmである。
【0036】
外周壁10の厚さt1は、例えば0.3~0.6mmである。内周壁8の厚さt2は、例えば0.5~0.8mmである。厚さt1は厚さt2より小さいことが好ましい。この場合、剛性が高い内周壁8がイヤーピース型電極1の座屈を防止し、剛性が低い外周壁10が外耳道2の形状および大きさに追従して変形し、被験者に与えられる刺激を低減する。
【0037】
スリット8sの幅W(図6参照)は、例えば0.6~1.5mmである。スリット8sの深さdは、例えば0.15~0.4mmである。
【0038】
この実施形態においては、内周壁8の内周面にイヤーピース型電極1の中心軸線Axに沿って延びる複数のスリットが形成されている。したがって、内周壁8の剛性が部分的に弱められ、内周壁8が弾性変形しやすくなり、内周壁8に接続された外周壁10も内周壁8に引かれて大きく弾性変形する。こうして、外周壁10は、イヤーピース型電極1の径方向内側に向けて弾性変形して、外耳道2の内面にフィットすることが可能である。スリット8sは、スリット8sが形成された内周壁8を貫通しないので、内周壁8が座屈しにくい。したがって、イヤーピース型電極1は、外耳道2の内面に広い面積にわたって、ある程度の接触圧で安定的に接触する。
【0039】
複数のスリット8sは、互いに同形同大である。スリット8sが中心軸線Axを中心として等しい角間隔をおいて配置されている場合には、スリット8sに対応する複数の薄肉部分は互いに等しい弾性変形可能量を持ち、複数の厚肉部分8tも互いに等しい弾性変形可能量を持つ。したがって、外耳道の軸線に対するイヤーピース型電極の各スリット8sの相対角度に関わらず、外周壁10は外耳道の内面にフィットすることが可能である。つまり、イヤーピース型電極を中心軸線Axの周りで回転させても、外周壁10は外耳道の内面にフィットすることが可能である。
【0040】
図7は、実施形態の変形例に係るイヤーピース型電極20を示す。イヤーピース型電極20では、内周壁8の外周面に、複数のスリット8uが形成されている。スリット8uは、先端壁9から中心軸線Axに沿ってフック8aまで延びているが、フック8aには到達しなくてもよい。各スリット8uは、内周壁8を厚さ方向に貫通しない。複数のスリット8uは、互いに同形同大であり、中心軸線Axを中心とする周方向に間隔をおいて並べられている。絶対必要ではないが、好ましくは、スリット8uは、中心軸線Axを中心として等しい角間隔をおいて配置されている。
【0041】
スリット8uの数は2以上であればよい。但し、イヤーピース型電極1の弾性変形を促進するため、スリット8uの数は3以上であることが好ましい。
【0042】
スリット8uによって内周壁8の剛性が部分的に弱められ、内周壁8が弾性変形しやすくなり、内周壁8に接続された外周壁10も内周壁8に引かれて大きく弾性変形する。こうして、外周壁10は、イヤーピース型電極1の径方向内側に向けて弾性変形して、外耳道2の内面にフィットすることが可能である。スリット8uは、スリット8uが形成された内周壁8を貫通しないので、内周壁8が座屈しにくい。したがって、イヤーピース型電極20は、外耳道2の内面に広い面積にわたって、ある程度の接触圧で安定的に接触する。
【0043】
図8は、実施形態の他の変形例に係るイヤーピース型電極21を示す。イヤーピース型電極21では、外周壁10の外周面に、複数のスリット10sが形成されている。スリット10sは、第1の軸線方向端部11aから中心軸線Axに沿って円筒形壁部12まで延びているが、スリット10sの長さは図示の例に限定されず、より短くてもよい。各スリット10sは、外周壁10を厚さ方向に貫通しない。複数のスリット10sは、互いに同形同大であり、中心軸線Axを中心とする周方向に間隔をおいて並べられている。絶対必要ではないが、好ましくは、スリット10sは、中心軸線Axを中心として等しい角間隔をおいて配置されている。
【0044】
スリット10sの数は2以上であればよい。但し、イヤーピース型電極1の弾性変形を促進するため、スリット10sの数は3以上であることが好ましい。
【0045】
スリット10sによって外周壁10の剛性が部分的に弱められ、外周壁10が弾性変形しやすくなる。こうして、外周壁10は、イヤーピース型電極1の径方向内側に向けて弾性変形して、外耳道2の内面にフィットすることが可能である。スリット10sは、スリット10sが形成された外周壁10を貫通しないので、外周壁10が座屈しにくい。したがって、イヤーピース型電極21は、外耳道2の内面に広い面積にわたって、ある程度の接触圧で安定的に接触する。
【0046】
図9は、実施形態の他の変形例に係るイヤーピース型電極22を示す。イヤーピース型電極22では、外周壁10の内周面に、複数のスリット10uが形成されている。スリット10uは、第1の軸線方向端部11aから中心軸線Axに沿って円筒形壁部12まで延びているが、スリット10uの長さは図示の例に限定されず、より短くてもよい。各スリット10uは、外周壁10を厚さ方向に貫通しない。複数のスリット10uは、互いに同形同大であり、中心軸線Axを中心とする周方向に間隔をおいて並べられている。絶対必要ではないが、好ましくは、スリット10uは、中心軸線Axを中心として等しい角間隔をおいて配置されている。
【0047】
スリット10uの数は2以上であればよい。但し、イヤーピース型電極1の弾性変形を促進するため、スリット10uの数は3以上であることが好ましい。
【0048】
スリット10uによって外周壁10の剛性が部分的に弱められ、外周壁10が弾性変形しやすくなる。こうして、外周壁10は、イヤーピース型電極1の径方向内側に向けて弾性変形して、外耳道2の内面にフィットすることが可能である。スリット10uは、スリット10uが形成された外周壁10を貫通しないので、外周壁10が座屈しにくい。したがって、イヤーピース型電極22は、外耳道2の内面に広い面積にわたって、ある程度の接触圧で安定的に接触する。
【0049】
上記の実施形態と変形例は組み合わせてもよい。変形例と他の変形例を組み合わせてもよい。すなわち、スリットは、外周壁10の外周面および内周面、ならびに内周壁8の外周面および内周面の少なくとも1つに設けることができる。
【0050】
内周壁8にスリット8sおよび/または8uが形成された場合および外周壁10の内周面にスリット10uが形成された場合には、外周壁10の外周面にスリット10sが形成された場合に比べて、外周壁10と外耳道2の内面との接触面積を広く確保することができる。外周壁10にスリット10sおよび/または10uが形成された場合には、内周壁8にスリット8sおよび/または8uが形成された場合に比べて、外周壁10の変形可能な量を大きくすることができる。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施形態を参照しながら本発明を図示して説明したが、当業者にとって特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく、形式および詳細の変更が可能であることが理解されるであろう。このような変更、改変および修正は本発明の範囲に包含されるはずである。
【0052】
内周壁8、先端壁9および外周壁10は、同じ材料から形成されていてもよいし、異なる材料から形成されていてもよい。例えば、生体と接触する先端壁9および外周壁10のゴム材料のマトリックス材料は、生体と接触しない内周壁8のマトリックス材料より軟らかくてもよい。この場合、剛性が高い内周壁8がイヤーピース型電極1の座屈を防止し、剛性が低い先端壁9および外周壁10が外耳道2の形状および大きさに追従して変形し、被験者に与えられる刺激を低減する。
【符号の説明】
【0053】
Ax 中心軸線
1,20,21,22 イヤーピース型電極
2 外耳道
8 内周壁
10 外周壁
8s,8u,10s,10u スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9