(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115601
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】積層体及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240820BHJP
C09D 11/02 20140101ALI20240820BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240820BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20240820BHJP
B41M 3/00 20060101ALI20240820BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240820BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240820BHJP
【FI】
B32B27/00 E
C09D11/02
C09D201/00
C09D11/322
B41M3/00 Z
B41J2/01 501
B32B27/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021303
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】392007566
【氏名又は名称】ナトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】九澤 昌祥
【テーマコード(参考)】
2C056
2H113
4F100
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EA13
2C056EE18
2C056FC02
2H113AA04
2H113AA06
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2H113BC02
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2H113DA04
2H113EA07
2H113EA08
2H113FA10
4F100AB01
4F100AB01B
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4F100AB10B
4F100AB13
4F100AB13B
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4J039BA06
4J039BE01
4J039EA48
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】層間の密着性が改良された積層体等を提供する。
【解決手段】本発明の一態様によれば、積層体が提供される。この積層体は、基材と、基材上に設けられた印刷層と、印刷層上に設けられたオーバーコート層と、を備える。少なくとも印刷層と、オーバーコート層と、は互いに接するように設けられる。印刷層は、金属顔料と、カチオン重合性官能基を有する化合物と、を含む第1の組成物を硬化させてなる層である。オーバーコート層は、カチオン重合性官能基を有する化合物を含む第2の組成物を硬化させてなる層である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体であって、
基材と、前記基材上に設けられた印刷層と、前記印刷層上に設けられたオーバーコート層と、を備え、
少なくとも前記印刷層と、前記オーバーコート層と、は互いに接するように設けられ、
前記印刷層は、金属顔料と、カチオン重合性官能基を有する化合物と、を含む第1の組成物を硬化させてなる層であり、
前記オーバーコート層は、カチオン重合性官能基を有する化合物を含む第2の組成物を硬化させてなる層である、積層体。
【請求項2】
請求項1に記載の積層体において、
前記第1の組成物及び/又は前記第2の組成物は、さらに光酸発生剤を含む、積層体。
【請求項3】
請求項2に記載の積層体において、
前記第1の組成物及び/又は前記第2の組成物は、前記光酸発生剤を、固形分全体の10質量%以下の割合で含む、積層体。
【請求項4】
請求項1に記載の積層体において、
前記第1の組成物及び/又は前記第2の組成物に含まれる前記カチオン重合性官能基を有する化合物は、化学構造中に2以上のカチオン重合性基を含む化合物を含む、積層体。
【請求項5】
請求項4に記載の積層体において、
前記第1の組成物及び/又は前記第2の組成物は、前記化学構造中に2以上のカチオン重合性基を含む化合物を、固形分全体の50質量%以上の割合で含む、積層体。
【請求項6】
請求項1に記載の積層体において、
前記第1の組成物及び/又は前記第2の組成物に含まれる前記カチオン重合性官能基を有する化合物は、化学構造中に脂環構造を含む化合物を含む、積層体。
【請求項7】
請求項1に記載の積層体において、
前記第1の組成物及び/又は前記第2の組成物に含まれる前記カチオン重合性官能基を有する化合物は、化学構造中に加水分解性基を有する金属元素含有化合物を含む、積層体。
【請求項8】
請求項1に記載の積層体において、
前記金属顔料は、インジウム、アルミニウム又はクロムを含む、積層体。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の積層体を製造する製造方法であって、
前記第1の組成物を適用し、前記第1の組成物を硬化させることで、前記基材上に前記印刷層を設ける第1の工程と、
前記第2の組成物を適用し、前記第2の組成物を硬化させることで、前記印刷層上に、前記オーバーコート層を設ける第2の工程と、
を備える、製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の製造方法において、
前記第1の工程は、前記第1の組成物をインクジェット法により前記基材に適用する工程を備える、製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載の製造方法において、
前記第1の工程及び/又は前記第2の工程は、前記第1の組成物及び/又は前記第2の組成物を露光する工程を備える、製造方法。
【請求項12】
請求項9に記載の製造方法において、
前記第1の組成物の表面張力よりも前記第2の組成物の表面張力の方が小さい、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、優れた金属調を有する画像(画像記録物、記録物、印刷物と称してもよい。)を実現するため、金属顔料を用いたインク組成物の開発がなされてきた。たとえば、特許文献1には、インジウムにより構成される鱗片状金属粒子及び重合性化合物を含有する活性エネルギー線硬化型インクや、当該インクを用いた画像記録物が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2022/004361号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属顔料を用いて画像をインク等で形成する場合、描画したパターンの表層に金属顔料が偏析してしまう場合がある。また、このように金属顔料が偏析したパターンに対して衝撃が加わることで画像にキズ等が入りやすくなることが懸念される。
【0005】
このような問題を解消するために、描画したパターンの上部にオーバーコート(オーバーコート層と称してもよい。)を設けることが考えられる。しかしながら、本発明者らが検討した結果、このパターンと、オーバーコートの材料の選定の仕方によっては、密着性が不十分になる場合があることがわかってきた。
【0006】
本発明では上記事情に鑑み、層間の密着性が改良された積層体等を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、積層体が提供される。この積層体は、基材と、基材上に設けられた印刷層と、印刷層上に設けられたオーバーコート層と、を備える。少なくとも印刷層と、オーバーコート層と、は互いに接するように設けられる。印刷層は、金属顔料と、カチオン重合性官能基を有する化合物と、を含む第1の組成物を硬化させてなる層である。オーバーコート層は、カチオン重合性官能基を有する化合物を含む第2の組成物を硬化させてなる層である。
【0008】
上記態様によれば、層間の密着性が改良された積層体等が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態にかかる例示的な積層体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、本明細書中における「~」はとくに断りがなければ、以上から以下を表す。
【0011】
[積層体]
本実施形態の積層体は以下に示されるものである。
積層体であって、
基材と、前記基材上に設けられた印刷層と、前記印刷層上に設けられたオーバーコート層と、を備え、
少なくとも前記印刷層と、前記オーバーコート層と、は互いに接するように設けられ、
前記印刷層は、金属顔料と、カチオン重合性官能基を有する化合物と、を含む第1の組成物を硬化させてなる層であり、
前記オーバーコート層は、カチオン重合性官能基を有する化合物を含む第2の組成物を硬化させてなる層である、積層体。
【0012】
このような積層体の例について、図を示しながら説明する。
図1は、本実施形態にかかる例示的な積層体の断面図である。なお、以下では
図1における上部を「上」として示すが、本実施形態の積層体における「上」とは、基材の表面に対して垂直に離れる方向を指す。すなわち、積層体の配置の仕方によっては、積層体の上下の方向は変動するものであり、例えば、積層体の基材の面を鉛直方向に沿わせるのであれば、積層体の上下方向は水平面に対して平行の方向となる。
【0013】
図1に示される積層体1は、基材2と、印刷層3と、オーバーコート層4とを備える。ここで、この基材2は、積層体1のベースとなる材料であり、積層体1が適用される用途等に応じ、適宜設定されてよい。基材2は、例えば、紙、ガラス等のセラミック材料、樹脂材料、金属材料、布等であってよい。
【0014】
本実施形態の積層体1には、基材2の上に印刷層3が設けられている。この印刷層3は、後述する第1の組成物を硬化させてなる層である。ここで、当該第1の組成物は金属顔料を有するものであることから、典型的には、この印刷層3は金属顔料に起因する光沢に関する特性を備えていてもよい。また、このように金属顔料に起因する光沢を有し得ることから、この印刷層3を「金属光沢層」と称してもよい。
【0015】
本実施形態の積層体1には、印刷層3の上にオーバーコート層4が設けられている。このオーバーコート層4は、印刷層3と互いに接するように設けられている。このオーバーコート層4は、後述する第2の組成物を硬化させてなる層である。ここで、当該第2の組成物は第1の組成物と同様にカチオン重合性官能基を有する化合物を有するものであることから、印刷層3との密着性を発現しやすくなる。
【0016】
なお、本発明の目的に反さない範囲で、積層体1には、
図1に示されない構成が設けられていてもよい。例えば、基材2と、印刷層3との間に密着性を付与させる他の層が設けられてもよいし、オーバーコート層4のさらに上に、所定の機能を付与する層等が設けられてもよい。また、基材2の上には、上述のような所定の金属顔料等を含む印刷層3とは異なる他の印刷層が設けられてもよい。
【0017】
積層体1の用途は特に制限されないが、上述のように印刷層3が光沢を有し得ることから、意匠性を有する物品の一部になり得る。この物品は、車両等の輸送機器;機械部品;スポーツ用品;電化製品等であってもよい。
【0018】
以下、このような積層体1を作製するために用いられる組成物や、具体的な積層体の製造方法について説明を続ける。
【0019】
[第1の組成物]
第1の組成物は、印刷層3を形成するために用いられる組成物であり、金属顔料と、カチオン重合性官能基を有する化合物と、を含む。以下、第1の組成物に含まれ得る成分について説明する。
【0020】
(金属顔料)
第1の組成物に含まれる金属顔料は、金属元素(典型的には「0価の金属」)を含むものである。この金属元素は、顔料として用いられる公知の金属であってよいが、例えば、インジウム、アルミニウム、クロム、ニッケル、錫、銅、銀、白金、金等であってよい。これらのうち、本実施形態の金属顔料は、インジウム、アルミニウム又はクロムを含むことが好ましい。これらの金属は、粒子径を制御しやすいことから、組成物を作製した際の印刷性を向上させることができる。
【0021】
なお、金属顔料を構成する成分のうち、少なくとも90質量%以上が金属インジウム、金属アルミニウム又は金属クロムであることが好ましく、少なくとも95質量%以上が金属インジウム、金属アルミニウム又は金属クロムであることが好ましく、少なくとも99質量%以上が金属インジウム、金属アルミニウム又は金属クロムであることが好ましい。また、別の観点では、金属顔料は実質的に金属インジウム、金属アルミニウム又は金属クロムで構成されることが好ましい。このような構成を採用することにより、印刷層3として所望の光沢性を発現しやすくなる。
【0022】
本実施形態において、金属顔料の大きさは特に限定されない。所望の金属光沢や、適用のしやすさ等を考慮して適宜選択される。
金属顔料のZ平均粒子径は、好ましくは50~800nm、より好ましくは100~600nmである。Z平均粒子径がある程度大きいことにより、最終的な印刷層3の金属光沢を一層高めることができる。また、Z平均粒子径が大きすぎないことにより、適用のしやすさが向上する。
【0023】
金属顔料のZ平均粒子径は、ISO22142:2017の規定に基づき、光散乱法により測定することができる。より具体的には、キュムラント法に基づき、散乱光強度で重み付けされた調和平均粒子径をZ平均粒子径として採用することができる。
光散乱法による測定が可能な測定装置としては、例えば、マルバーン社製のゼータサイザーナノZSを挙げることができる。測定は、通常、湿式で行われる。つまり、金属顔料を溶剤で分散させたものを測定サンプルとすることができる。
【0024】
金属顔料は、鱗片状の形状であってもよい。
「鱗片状」とは、平板状、湾曲板状等の形状を含む概念を意味する。具体的には、ある1つの方向から観察した際(平面視した際)の面積が、その方向と直交する方向から観察した際の面積よりも大きい形状のことをいう。
別観点として、鱗片状の金属顔料において、平均長径÷平均厚みの計算で求められるアスペクト比は、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3以上、特に好ましくは3.5以上である。アスペクト比の上限は特にないが、例えば100以下、好ましくは75以下、より好ましくは50以下、特に好ましくは25以下である(平均長径と平均厚みの求め方については後述する)。
【0025】
金属顔料が、鱗片状の金属顔料である場合、その平均長径は、好ましくは80~800nm、より好ましくは100~700nmである。また、平均厚みは、好ましくは10~50nm、より好ましくは20~40nmである。適切な平均長径/平均厚みの鱗片状の金属顔料を用いることで、適用の際の取り扱い性などを維持しつつ、最終的な印刷物における金属光沢を一層高めることができる。
なお、上記において、「平均長径」とは、電子顕微鏡を用いて金属顔料を撮影し、撮影された画像中の任意の50個の金属顔料(鱗片状の粒子)の長径を平均した値である。「平均厚み」についても同様である。
【0026】
金属顔料の表面は、物理的/化学的処理により修飾されていてもよい。修飾により、例えば金属光沢がより失われにくくなることが期待できる場合がある。かつ/または、修飾により、硬化膜の上部に金属顔料を偏在させることができ、金属光沢をより高めることができる。
【0027】
より具体的には、金属顔料の表面は、下記一般式(1)で表される構造を含む基で修飾されていることが好ましい。
【0028】
【0029】
一般式(1)において、
2つのRは、互いに独立に、水素原子、1価の有機基または下記一般式(2)で表される基であり、かつ、2つのRのうち少なくとも1つは下記一般式(2)で表される基であり、
Lは、2価の連結基であり、
*は、他の化学構造との連結手である。
【0030】
【0031】
一般式(2)において、
R1は、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を含む基、ケイ素原子含有基またはフッ素原子含有基であり、
R2は、水素原子またはメチル基である。
【0032】
一般式(1)において、Rが、一般式(2)で表される基ではない場合、Rは、水素原子または1価の有機基である。ここでの1価の有機基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基などを挙げることができる。
1価の有機基の炭素数は特に限定されない。炭素数は例えば1~20、具体的には1~10である。
金属顔料の沈降をより抑える観点からは、Rは、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基を含む基であることが好ましく、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基であることがより好ましい。
【0033】
金属顔料の沈降をより抑える観点からは、一般式(1)における2つのRの両方が、一般式(2)で表される基であることが好ましい。
【0034】
一般式(1)において、Lの2価の連結基は、例えば、アルキレン基(直鎖状でも分岐状でもよい)、脂環式基(単環でも多環でもよい)、芳香族基、エーテル基、エステル基、チオエーテル基、スルフィド基、カルボニル基、アミド基(-CONH-)、-NH-基、および、これらのうち2つ以上が連結された基が挙げられる。
L全体としての炭素数は特に限定されない。例えば、Lがアルキレン基である場合、好ましい炭素数は1~12、より好ましい炭素数は1~6である。Lが脂環式基である場合、好ましい炭素数は3~12である。Lが芳香族基である場合、好ましい炭素数は6~20である。
【0035】
Lとしては、(i)アルキレン基、または、(ii)エーテル基、エステル基、チオエーテル基、スルフィド基、カルボニル基、-NH-基およびアミド基(-CONH-)からなる群から選ばれる少なくとも1つの基と、アルキレン基とが連結された基であることが好ましい。
【0036】
一般式(2)において、R1が直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基である場合のアルキル基としては、n-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、イソラウリル基、イソステアリル基、イソセチル基、オクチルドデシル基、ミリスチル基、2-エチルヘキシル基、2-ヘキシルデシル基、2-デシルミリスチル基、2,7-ジメチルヘキサデシル基、イソトリデシル基、2,2-ジメチルラウリル基、2,3-ジメチルラウリル基、2,2-ジメチルステアリル基、2,3-ジメチルステアリル基などを挙げることができる。もちろん、アルキル基は、これらのみに限定されない。
素材の入手性、製造の容易性などの観点から、R1は、直鎖または分岐の炭素数4以上のアルキル基である(R1が部分構造として左記アルキル基を含む基ではなく、R1がそれ全体として左記アルキル基である)ことが好ましい。
【0037】
一般式(2)において、R1がケイ素原子含有基である場合、R1としては、例えば、アルキルシリル基を含む基、ポリシロキサン構造を含む基、環状シロキサン構造を含む基、シルセスキオキサン(ラダー型、かご型)構造を含む基などを挙げることができる。
これらの中でも、原料の入手容易性などから、アルキルシリル基を含む基またはポリシロキサン構造を含む基が好ましい。ここで、ポリシロキサン構造としてより具体的には、ポリジメチルシロキサン構造(-Si(CH3)2-O-)などのポリジアルキルシロキサン構造、ポリジフェニルシロキサン構造(-Si(C6H5)2-O-)などを好ましく挙げることができる。
【0038】
一般式(2)において、R1がフッ素原子含有基である場合の具体例としては、フッ素置換アルキル基、フッ素置換シクロアルキル基、フッ素置換アルコキシ基、フッ素置換アリール基、フッ素置換アラルキル基、フッ素置換アルキルカルボニル基、フッ素置換アルコキシカルボニル基、フッ素置換アルキルカルボニルオキシ基などを挙げることができる。
R1のフッ素原子含有基は、水素原子の全てがフッ素原子で置換されたもの(パーフルオロ基)であってもよいし、水素原子の一部のみがフッ素原子で置換されたものであってもよい。金属顔料の沈降をより抑える観点からは、R1のフッ素原子含有基は、水素原子の50mol%以上がフッ素原子で置換されたものであることが好ましい。
【0039】
沈降しにくさや、第1の組成物を調製する際の他成分との相性などから、R1は、好ましくは、分岐アルキル基を含む基、または、ポリジメチルシロキサン構造を含む基である。
【0040】
なお、上述のような金属顔料の修飾については、例えば特開2021-66812号公報に開示された、手法を採用することができる。
【0041】
また、金属顔料(特定官能基によって表面修飾されていないもの)は、例えば、尾池工業株式会社から入手することができる。また、金属顔料の製法については、特開平11-323223号公報、特開平11-343436号公報、特開2011-52041号公報などを参考にすることもできる。
【0042】
第1の組成物中の金属顔料の含有量は、第1の組成物の固形分全体中、好ましくは1~8質量%、より好ましくは2~6質量%である。この比率が1質量%以上であることにより、印刷層3に十二分な金属光沢を与えることができる。また、この比率が8質量%以下であることにより、第1の組成物中に他の成分(硬化性成分)を十分な量含めることができる。このことは、第1の組成物のハンドリング性や、最終的な積層体1の耐久性向上などの点で好ましい。
【0043】
(カチオン重合性官能基を有する化合物)
第1の組成物等に含まれるカチオン重合性基官能基を有する化合物(以下、「カチオン重合性化合物」と称することもある)における、カチオン重合性官能基としては、エポキシ基やオキセタニル基等の環状エーテル基のほか、ビニルエーテル基等が挙げられる。また、本実施形態のカチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物のほか、オキソラン化合物(テトラヒドロフラン、置換テトラヒドロフランなど)等の化合物が包含される。なお、このカチオン重合性官能基を有する化合物は、カチオン重合性官能基以外に、ラジカル重合性官能基を備えていてもよい。
【0044】
エポキシ化合物は、エポキシ基を有する化合物であり、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ化合物や脂環式エポキシ化合物等が挙げられる。
なお、エポキシ化合物において、エポキシ基の数は1以上であればよいが、2以上のエポキシ基を有する化合物を含んでいてもよい。すなわち、本実施形態のカチオン重合性化合物におけるエポキシ化合物は単官能エポキシ化合物であっても多官能エポキシ化合物であってもよい。
【0045】
エポキシ化合物の具体例としては、フェニルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、3,3-ビス[(2-オキシラニルメトキシ)メチル]オキセタン、3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4,3',4'-ジエポキシビシクロヘキシル、1,2-エポキシ4-ビニルシクロヘキサン、ε-カプロラクトン変性3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、リモネンジオキサイド、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン、2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-([2,3-エポキシプロポキシ]フェニル)]エチル]フェニル]プロパンと1,3-ビス[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]-2-プロパノールとの混合物、2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-([2,3-エポキシプロポキシ]フェニル)]エチル]フェニル]プロパン等が挙げられる。
【0046】
また、エポキシ化合物としては、エポキシモノマー、エポキシオリゴマー及びエポキシ樹脂のいずれであってもよく、下記のような市販品を用いることもできる。
すなわち、セロキサイド(登録商標)CEL2021P、CEL2000、CEL8000(株式会社ダイセル製)等の多官能エポキシモノマーをエポキシ化合物として用いてもよい。
また、TECHMOREVG3101L(株式会社プリンテック製)、EPPN-501H、502H(日本化薬株式会社製)、JER1032H60(三菱ケミカル株式会社製)等のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;JER157S65、157S70(三菱ケミカル株式会社製)等のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂;EPPN-201(日本化薬株式会社製)、JER152、154(三菱化学株式会社製)等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂等の樹脂を本実施形態におけるエポキシ化合物として用いることもできる。
【0047】
オキセタン化合物としては、オキセタニル基の数は1以上であればよいが、2以上のオキセタニル基を有する化合物を含んでいてもよい。すなわち、本実施形態のカチオン重合性化合物におけるオキセタン化合物は単官能オキセタン化合物であっても多官能オキセタン化合物であってもよい。
【0048】
オキセタン化合物の例としては、2-エチルヘキシルオキセタン、3-エチル-3-エトキシメチルオキセタン、3-エチル-3-ブトキシメチルオキセタン、3-エチル-3-ヘキシルオキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、[(1-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]シクロヘキサン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-メトキシメチルオキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-(4-ヒドロキシブチルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3{[3-エチルオキセタンー3―イル]メトキシ}メチル)オキセタン、ビス[(1-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]シクロヘキサン、ビス[(1-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]ノルボルナン、1,4-ビス((1-エチル-3オキセタニル)メトキシ)ベンゼン、1,3-ビス((1-エチル-3オキセタニル)メトキシ)ベンゼン、4,4'-ビス((3-エチル-3オキセタニル)メトキシ)ビフェニル、キシリレンビスオキセタン等が挙げられる。
【0049】
ビニルエーテル化合物の例としては、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物;エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル-o-プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物が挙げられる。
【0050】
なお、上述の通り、カチオン重合性化合物は、その化学構造中にカチオン重合性基を1つ有するものであっても、2以上有するものであってもよい。一方、例示的な実施形態においては、第1の組成物に含まれるカチオン重合性官能基を有する化合物は、化学構造中に2以上のカチオン重合性基を含む化合物を含むことが好ましい。
このようにすることで、印刷層3の強度が上がり、オーバーコート層4を設けようとした際に、その物性を維持しやすくなる。典型的には、オーバーコート層4を設けるために、印刷層3に第2の組成物を接触させたとしても、形状を維持しやすくなり、結果、印刷層3の輝度の低下を抑制することができる。
【0051】
また、第1の組成物は、化学構造中に2以上のカチオン重合性基を含む化合物を、固形分全体の50質量%以上の割合で含むことが好ましく、60質量%以上の割合で含むことがより好ましく、65質量%以上の割合で含むことがさらに好ましく、70質量%以上の割合で含むことがいっそう好ましい。このような含有量を採用することにより、上述のような印刷層3の輝度の低下をより抑制することができる。
なお、この、第1の組成物中における、化学構造中に2以上のカチオン重合性基を含む化合物の含有割合の上限値はとくに制限されないが、たとえば98質量%以下であってもよく、95質量%以下であってもよく、90質量%以下であってもよい。
【0052】
また、上述した化合物の中でも、第1の組成物に含まれるカチオン重合性官能基を有する化合物は、化学構造中に脂環構造を含む化合物を含むことが好ましい。この脂環構造の例としては、例えばシクロペンタン環や、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、シクロノナン環等が挙げられる。代表的な成分としては、前述したセロキサイド(登録商標)CEL2021Pや、リモネンジオキサイド等が挙げられる。
このような化合物を用いることで、印刷層3の強度が上がり、オーバーコート層4を設けようとした際に、その物性を維持しやすくなる。典型的には、オーバーコート層4を設けるために、印刷層3に第2の組成物を接触させたとしても、形状を維持しやすくなり、結果、印刷層3の輝度の低下を抑制することができる。
【0053】
第1の組成物中に化学構造中に脂環構造を含む化合物が含まれる場合、その含有量は、たとえば第1の組成物の固形物全体に対して20~90質量%、好ましくは30~85質量%、より好ましくは35~80質量%の範囲で設定される。
【0054】
また、第1の組成物は、カチオン重合性化合物として、化学構造中に加水分解性基を有する金属元素含有化合物を含んでもよい。
【0055】
本実施形態における金属元素含有化合物は、その化学構造中に前述のカチオン重合性基と、金属元素とを含む。具体的には、この金属元素含有化合物は以下の構造式(3)で表すことができる。
M(R)x(X)y ・・・ (3)
ここで、構造式(3)中のMは金属元素であり、Rはその構造中にカチオン重合性基を含む有機基であり、かつ、Rの有する炭素原子とMとが結合するものである。Xは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、フェノキシ基からなる群から選択される基である。xとyは1以上の整数であり、xとyとの和はMの結合手数である。
【0056】
上述の金属元素としては、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、錫、鉛、ホウ素等が挙げられる。この中でも入手容易性が高く、取り扱い性に優れる観点から、上述の金属元素はケイ素であることが好ましく、すなわち、金属元素含有化合物はケイ素含有化合物であることが好ましい。また、上述の通り、金属元素含有化合物はRの構造中にカチオン重合性基を含むものである。この点に関して、その反応性の高さ等の観点から、Rの構造中にエポキシ基又はオキセタニル基を含むことが好ましく、すなわち、金属元素含有化合物の有するカチオン重合性基はエポキシ基又はオキセタニル基であることが好ましい。また、Xがアルコキシ基である場合、当該アルコキシ基の炭素数はたとえば1~8であり、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~4である。Xがフェノキシ基である場合、このフェノキシ基を構成するベンゼン環の水素原子は種々の置換基により置換されていてもよい。
なお、Mがケイ素である場合、xは1または2,yは2または3である態様が例示される。
【0057】
本実施形態の金属元素含有化合物は、その構造に備えられる金属元素が組成物を適用する基材2の表面部位や、オーバーコート層4との接触箇所で化学結合を形成しうる。このような寄与もあり、組成物に金属元素含有化合物を配合した場合は、一段と高い密着性を発現し得る。
【0058】
この金属元素含有化合物のとくに好ましい化合物としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]プロピル(トリメトキシ)シラン、3-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]プロピル(トリエトキシ)シラン、3-[(3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ]プロピル(トリメトキシ)シラン、3-[(3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ]プロピル(トリメトキシ)シラン等を挙げることができる。
【0059】
第1の組成物中に金属元素含有化合物が含まれる場合、その含有量は、たとえば第1の組成物の固形物全体に対して3~45質量%、好ましくは5~35質量%、より好ましくは10~30質量%の範囲で設定される。
【0060】
また、第1の組成物中のカチオン重合性官能基を有する化合物の含有量は、第1の組成物の固形分全体中、好ましくは90~99質量%、より好ましくは93~98質量%である。このような範囲に設定することによって、第1の組成物のハンドリング性を向上させるとともに、最終的な積層体1の耐久性の向上に寄与することができる。
【0061】
(光酸発生剤)
第1の組成物は光酸発生剤を含んでもよい。この場合、第1の組成物は露光された際に、この光酸発生剤が酸を発生し、前述のカチオン重合性化合物の重合反応を促進する。
この光酸発生剤は、公知の材料の中から適宜選択すればよいが、好ましくは光酸発生剤が、スルホニウム塩化合物を含む。このようにスルホニウム塩化合物を用いることで、効率よく光による組成物の硬化が進行する。
【0062】
このスルホニウム塩化合物は、スルホニウムカチオンとアニオンとの塩である。
【0063】
ここで、スルホニウムカチオンとしては、トリフェニルスルホニウム、(4-tert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(4-tert-ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)スルホニウム、(3-tert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3-tert-ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3-tert-ブトキシフェニル)スルホニウム、(3,4-ジtert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3,4-ジtert-ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4-ジtert-ブトキシフェニル)スルホニウム、ジフェニル(4-(フェニルチオ)フェニル)スルホニウム、(4-tert-ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリス(4-tert-ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)スルホニウム、(4-tert-ブトキシフェニル)ビス(4-ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、トリス(4-ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、2-ナフチルジフェニルスルホニウム、ジメチル2-ナフチルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、4-メトキシフェニルジメチルスルホニウム、トリメチルスルホニウム、2-オキソシクロヘキシルシクロヘキシルメチルスルホニウム、トリナフチルスルホニウム、トリベンジルスルホニウム等が挙げられる。
【0064】
また、アニオンとしては、BF4
-、PF6
-、SbF6
-、[BX4]-(Xは、少なくとも2つ以上のフッ素又はトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を表す。)、[PFnY6-n]-(Yは、炭素数1~9のフッ素化アルキル基又はフッ素化フェニル基を示し、nは1~6の整数である。)、スルホネート等のアニオンが挙げられる。
【0065】
その他、光酸発生剤として用いることのできる化合物(他の光酸発生剤とも称す。)としては、スルホニウム塩以外のイオン系光酸発生剤や、非イオン系光酸発生剤等が挙げられる。
具体的に、他の光酸発生剤としては、四フッ化ホウ素のフェニルジアゾニウム塩;六フッ化リンのジフェニルヨードニウム塩;六フッ化アンチモンのジフェニルヨードニウム塩;テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素のジフェニルヨードニウム塩;アセチルアセトンアルミニウム塩とオルトニトロベンジルシリルエーテル混合体;フェニルチオピリジウム塩;六フッ化リンアレン-鉄錯体;スルホニルジアゾメタン;フタル酸イミド型光酸発生剤やナフタルイミド型光酸発生剤等のN-スルホニルオキシイミド型光酸発生剤、オキシム-O-スルホネート型光酸発生剤等を挙げることができる。
【0066】
第1の組成物において、光酸発生剤はピーク波長を280nm以上に有する化合物を含むことが好ましい。このような化合物を用いることにより、工業的に優位に積層体1を形成しやすくなる。なお、このピーク波長を280nm以上に有する化合物は、前述のスルホニウム塩化合物に該当するものであっても、他の光酸発生剤に該当する化合物であってもよい。
【0067】
第1の組成物が光酸発生剤を含む場合、第1の組成物中の光酸発生剤の含有量は、第1の組成物の固形分全体中、好ましくは1~15質量%、より好ましくは2~12質量%である。このような範囲に設定することによって、第1の組成物のハンドリング性を向上させるとともに、第1の組成物の硬化性の向上に寄与することができる。なお、第1の組成物は、光酸発生剤を、固形分全体の10質量%以下の割合で含むことがさらに好ましい。このような数値範囲を設定することにより、積層体1の密着性のさらなる向上に資することができる。
【0068】
(その他の成分)
第1の組成物は、上述した各成分以外の添加成分を含んでもよい。この添加成分には、光ラジカル発生剤、熱酸発生剤、熱ラジカル発生剤、表面調整剤、増感剤、フィラー、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、粘度調整剤、保存安定化剤、分散剤等を含んでもよい。なお、第1の組成物における、これらの剤の量は特に限定されず、他の性能との兼ね合いにより適宜調整される。
【0069】
また、第1の組成物は、その表面張力が適切な範囲に設定されていてもよい。具体的に、第1の組成物の表面張力は、20~45mN/mの範囲であってよく、25~43mN/mの範囲の範囲であってよく、30~40mN/mの範囲の範囲であってよい。このような範囲に設定することにより、印刷層3の形成を行いやすくなる。なお、この表面張力の値は、第1の組成物を構成する材料比を調整することで、適宜設定することができる。
【0070】
なお、第1の組成物(及び第2の組成物)の表面張力は、典型的には以下のように測定することができる。すなわち、本明細書における表面張力は、Wilhelmy法による測定値であり、具体的には協和界面科学社製自動表面張力計CBVP-Z型を用い、白金プレートを使用して23℃で測定することができるものである。
【0071】
[第2の組成物]
続いて、第2の組成物について説明する。
第2の組成物は、オーバーコート層4を形成するために用いられる組成物であり、カチオン重合性官能基を有する化合物を含む。
【0072】
第2の組成物に含まれるカチオン重合性官能基を有する化合物としては、第1の組成物に含まれるカチオン重合性官能基を有する化合物と同様のものを採用することができる。
【0073】
前述の第1の組成物と同様に、第2の組成物に含まれるカチオン重合性官能基を有する化合物は、化学構造中に2以上のカチオン重合性基を含む化合物を含むことが好ましい。このようにすることでオーバーコート層4の強度を向上させることができ、印刷層3の保護をより確実に行うことができる。
【0074】
また、第1の組成物と同様に、第2の組成物は、化学構造中に2以上のカチオン重合性基を含む化合物を、固形分全体の50質量%以上の割合で含むことが好ましく、60質量%以上の割合で含むことがより好ましく、65質量%以上の割合で含むことがさらに好ましく、70質量%以上の割合で含むことがいっそう好ましい。このようにすることでオーバーコート層4の強度を向上させることができ、印刷層3の保護をより確実に行うことができる。なお、この、第2の組成物中における、化学構造中に2以上のカチオン重合性基を含む化合物の含有割合の上限値はとくに制限されないが、たとえば98質量%以下であってもよく、95質量%以下であってもよく、90質量%以下であってもよい。なお、第2の組成物を構成するバインダー成分の全体がこの化学構造中に2以上のカチオン重合性基を含む化合物であってもよい。
【0075】
また、第1の組成物と同様に、第2の組成物に含まれるカチオン重合性官能基を有する化合物は、化学構造中に脂環構造を含む化合物を含むことが好ましい。このようにすることでオーバーコート層4の強度を向上させることができ、印刷層3の保護をより確実に行うことができる。
【0076】
第2の組成物中に化学構造中に脂環構造を含む化合物が含まれる場合、その含有量は、たとえば第2の組成物の固形物全体に対して20~90質量%、好ましくは30~85質量%、より好ましくは35~80質量%の範囲で設定される。
【0077】
また、第1の組成物と同様に、第2の組成物は、このカチオン重合性化合物として、化学構造中に加水分解性基を有する金属元素含有化合物を含んでもよい。
【0078】
第2の組成物中に金属元素含有化合物が含まれる場合、その含有量は、たとえば第2の組成物の固形物全体に対して3~45質量%、好ましくは5~35質量%、より好ましくは10~30質量%の範囲で設定される。
【0079】
また、第2の組成物中のカチオン重合性官能基を有する化合物の含有量は、第2の組成物の固形分全体中、好ましくは90~99.8質量%、より好ましくは93~99質量%である。このような範囲に設定することによって、第2の組成物のハンドリング性を向上させるとともに、最終的な積層体1の耐久性の向上に寄与することができる。また、他の観点では、また、第2の組成物中のカチオン重合性官能基を有する化合物の含有量は、第2の組成物の固形分全体中、好ましくは40~99.8質量%、より好ましくは45~99質量%であってもよい。このような範囲に設定することでも、積層体1の耐久性の向上に寄与することができる。
【0080】
また、第2の組成物は、前述の第1の組成物と同様に、光酸発生剤や、その他の成分を含むことができる。
【0081】
第2の組成物が光酸発生剤を含む場合、第2の組成物中の光酸発生剤の含有量は、第2の組成物の固形分全体中、好ましくは1~15質量%、より好ましくは1.5~12質量%である。このような範囲に設定することによって、第2の組成物のハンドリング性を向上させるとともに、第2の組成物の硬化性の向上に寄与することができる。なお、第2の組成物は、光酸発生剤を、固形分全体の10質量%以下の割合で含むことがよりに好ましく、8質量%以下の割合で含むことがよりに好ましい。このような数値範囲を設定することにより、積層体1の密着性のさらなる向上に資することができる。
【0082】
また、第2の組成物は、その表面張力が適切な範囲に設定されていてもよい。具体的に、第2の組成物の表面張力は、15~40mN/mの範囲であってよく、18~35mN/mの範囲の範囲であってよく、20~30mN/mの範囲の範囲であってよい。このような範囲に設定することにより、オーバーコート層4の形成を行いやすくなる。なお、この表面張力の値は、第2の組成物を構成する材料比を調整することで、適宜設定することができる。
【0083】
[積層体の製造方法]
続いて、本実施形態にかかる積層体1の製造方法について説明する。すなわち、本実施形態の積層体1の製造方法は以下に示す第1の工程と、第2の工程とを備える。
・第1の組成物を適用し、第1の組成物を硬化させることで、基材2上に印刷層3を設ける第1の工程
・第2の組成物を適用し、第2の組成物を硬化させることで、印刷層3上に、オーバーコート層4を設ける第2の工程
【0084】
すなわち、第1の工程においては、基材2に第1の組成物を適用し、この第1の組成物を硬化させることにより印刷層3を形成する。なお、ここでの印刷層3は必ずしも完全硬化させる必要はなく、その硬化度合いは適宜設定することが可能である。
【0085】
ここで、第1の組成物の基材2への適用方法は種々選択することができる。典型的には、公知の印刷方法を採用することができ、例えば、インクジェット印刷(インクジェット法)、オフセット印刷(平板印刷)、フレキソ印刷(凸版印刷)、グラビア印刷(凹版印刷)、スクリーン印刷(孔版印刷)等の各種印刷方法を採用することができる。この中でも、印刷層3の造形のしやすさ、作製スピードの高さ等の観点から、第1の工程は、第1の組成物をインクジェット法により基材2に適用する工程を備えることが好ましい。
【0086】
また、適用した第1の組成物は、所定の方法により硬化させることとなるが、典型的には露光条件が採用される。すなわち、第1の工程は、第1の組成物を露光する工程を備えることが好ましく、これによって、硬化の度合いを制御しやすくなる。なお、このような露光条件を採用するにあたっては、第1の組成物に光酸発生剤が配合されていることが好ましい。これにより、発生した酸がカチオン重合性化合物を重合させることとなり、効率的に硬化が進行する。
【0087】
なお、硬化条件は上記の露光条件に限られず、基材2の種類によっては、加熱条件等も採用することができる。このような場合においてもカチオン重合性化合物(とくにエポキシ化合物等)の硬化を促進させる寄与をもたらすことができる。なお、加熱によってカチオン重合性化合物を硬化させるにあたっては、第1の組成物に熱酸発生剤を包含させるのも好ましい態様である。
【0088】
なお、本明細書において「硬化」は必ずしも完全硬化された場合のみを指すものではない。すなわち、作製された積層体1において、印刷層3と、オーバーコート層4と、の硬化の度合は、適用用途等に応じて適宜設定されてよい。例えば、印刷層3及び/又はオーバーコート層4の硬化度合は75%以上とすることができ、80%以上とすることができ、85%以上とすることができ、90%以上とすることができ、95%以上とすることができ、98%以上とすることができる。また、印刷層3及び/又はオーバーコート層4は完全硬化体であってもよい。なお、この硬化度合については、たとえば以下の通りに見積もることができる。すなわち、各々の層を作製するために用いられる未硬化の組成物と、当該組成物の完全硬化体と、を予め所定の分析機器(一例としては赤外吸収スペクトルや核磁気共鳴スペクトル等を測定する機器が挙げられるがこれらには制限されない)で分析しておき、積層体1内に存在する硬化物の分析結果との比較を行うことで、積層体1内に存在する層の硬化度合を見積もることができる。
【0089】
このようにして得られる印刷層3の厚さは、積層体1の用途に応じて適宜設定することができる。一例として、印刷層3の厚さは1μm以上50μm以下であってよく、3μm以上30μm以下であってよく、5μm以上20μm以下であってよい。このような範囲に設定することにより、印刷層3としての平坦性や密着性をより良好な水準とすることができる。なお、印刷層3の平坦性を高めることにより、印刷層3の輝度をいっそう高めることができる。
【0090】
前述の第1の工程によって、印刷層3を形成した後、第2の工程では、第2の組成物を適用し、第2の組成物を硬化させることで、印刷層3上に、オーバーコート層4を設ける。
【0091】
第2の組成物の適用方法は公知の手法の中から適宜選択することができる。この適用は、前述したような印刷方法でもよいし、以下に示されるような各種塗布方法でもよい。すなわち、第2の組成物を適用するに際して適用することのできる塗布方法としては、グラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布、ディップ塗布、スピンコート塗布、スプレー塗布等の手法を採用することができる。
【0092】
なお、本実施形態の製造方法では、第1の組成物の表面張力よりも第2の組成物の表面張力の方が小さいことが好ましい。このように第2の組成物の表面張力を設定することにより、第2の組成物をムラなく適用することができ、積層体1の製造プロセスを安定化させることができる。第1の組成物と、第2の組成物との表面張力の値は、例示的には前述した通りに設定される。
【0093】
このようにして第2の組成物を適用した後、第2の工程においても、この第2の組成物を硬化させることとなる。この硬化条件は、第1の工程と同様の条件を採用することができ、典型的には露光条件が採用される。すなわち、第2の工程は、第2の組成物を露光する工程を備えることが好ましく、これによって、硬化の度合いを制御しやすくなる。なお、第1の工程と同様に、第2の工程に、適宜、加熱条件を採用することもできる。このようにして第2の組成物を硬化させることによりオーバーコート層4を形成することができ、積層体1を得ることができる。
【0094】
このようにして得られるオーバーコート層4の厚さは、積層体1の用途に応じて適宜設定することができる。一例として、オーバーコート層4の厚さは5μm以上150μm以下であってよく、10μm以上100μm以下であってよく、20μm以上50μm以下であってよい。このような範囲に設定することにより、オーバーコート層4としての保護性能や密着性をより良好な水準とすることができる。また、オーバーコート層4の厚さが上記の範囲よりいくらか低い場合は、積層体1を表面から視認した場合に印刷層3に起因にレインボー調の模様が見える場合がある。これに対し、上記の範囲に設定することで、かかる問題の発生の抑制を図ることができる。なお、ここでのオーバーコート層4の厚さは、印刷層3とオーバーコート層4との界面から、積層体1の表層までの厚さ(オーバーコート層4上に他の層が設けられている場合は、印刷層3とオーバーコート層4との界面から、オーバーコート層4と他の層との界面までの厚さ)として定義される。すなわち、
図1における積層体1においては、T1部分の厚さがオーバーコート層4の厚さに相当する。
【0095】
また、印刷層3とオーバーコート層4との厚さの比は適宜設定することができる。たとえば、印刷層3とオーバーコート層4との厚さの比(印刷層3の厚さ:オーバーコート層4の厚さ)は、2:1~1:10の範囲であってよく、1.5:1~1:5の範囲であってよく、1:1~1:3の範囲であってよい。また、別の観点では、印刷層3の厚さよりもオーバーコート層4の厚さが厚いものとなるように設定してもよい。このような構成を採用することで、印刷層3を適切に保護しつつ、意匠性の高い積層体1を実現しやすくなる。
【0096】
以上のようにして得られた積層体1は、印刷層3とオーバーコート層4とのそれぞれがカチオン重合性化合物の硬化物として構成される。このことから、両者の層の間の密着性が向上される。
【0097】
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
【0098】
(1)積層体であって、基材と、前記基材上に設けられた印刷層と、前記印刷層上に設けられたオーバーコート層と、を備え、少なくとも前記印刷層と、前記オーバーコート層と、は互いに接するように設けられ、前記印刷層は、金属顔料と、カチオン重合性官能基を有する化合物と、を含む第1の組成物を硬化させてなる層であり、前記オーバーコート層は、カチオン重合性官能基を有する化合物を含む第2の組成物を硬化させてなる層である、積層体。
【0099】
(2)上記(1)に記載の積層体において、前記第1の組成物及び/又は前記第2の組成物は、さらに光酸発生剤を含む、積層体。
【0100】
(3)上記(2)に記載の積層体において、前記第1の組成物及び/又は前記第2の組成物は、前記光酸発生剤を、固形分全体の10質量%以下の割合で含む、積層体。
【0101】
(4)上記(1)ないし(3)のいずれか1つに記載の積層体において、前記第1の組成物及び/又は前記第2の組成物に含まれる前記カチオン重合性官能基を有する化合物は、化学構造中に2以上のカチオン重合性基を含む化合物を含む、積層体。
【0102】
(5)上記(4)に記載の積層体において、前記第1の組成物及び/又は前記第2の組成物は、前記化学構造中に2以上のカチオン重合性基を含む化合物を、固形分全体の50質量%以上の割合で含む、積層体。
【0103】
(6)上記(1)ないし(5)のいずれか1つに記載の積層体において、前記第1の組成物及び/又は前記第2の組成物に含まれる前記カチオン重合性官能基を有する化合物は、化学構造中に脂環構造を含む化合物を含む、積層体。
【0104】
(7)上記(1)ないし(6)のいずれか1つに記載の積層体において、前記第1の組成物及び/又は前記第2の組成物に含まれる前記カチオン重合性官能基を有する化合物は、化学構造中に加水分解性基を有する金属元素含有化合物を含む、積層体。
【0105】
(8)上記(1)ないし(7)のいずれか1つに記載の積層体において、前記金属顔料は、インジウム、アルミニウム又はクロムを含む、積層体。
【0106】
(9)上記(1)ないし(8)のいずれか1つに記載の積層体を製造する製造方法であって、前記第1の組成物を適用し、前記第1の組成物を硬化させることで、前記基材上に前記印刷層を設ける第1の工程と、前記第2の組成物を適用し、前記第2の組成物を硬化させることで、前記印刷層上に、前記オーバーコート層を設ける第2の工程と、を備える、製造方法。
【0107】
(10)上記(9)に記載の製造方法において、前記第1の工程は、前記第1の組成物をインクジェット法により前記基材に適用する工程を備える、製造方法。
【0108】
(11)上記(9)又は(10)に記載の製造方法において、前記第1の工程及び/又は前記第2の工程は、前記第1の組成物及び/又は前記第2の組成物を露光する工程を備える、製造方法。
【0109】
(12)上記(9)ないし(11)のいずれか1つに記載の製造方法において、前記第1の組成物の表面張力よりも前記第2の組成物の表面張力の方が小さい、製造方法。
もちろん、この限りではない。
【0110】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例0111】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。
【0112】
[金属顔料分散液の作製]
膜厚100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、セルロースアセテートブチレート(ブチル化度37%)を酢酸エチルに溶解した3.0質量%下引き液を均一に塗布し、PETフィルム上に下引き層を形成した。次いで、真空蒸着により、上記下引き層上に平均膜厚33nmのインジウム蒸着層またはクロム蒸着層またはアルミニウム蒸着層を形成し積層体を得た。得られた積層体を、プロピレングリコールモノメチルエーテル中で超音波分散機を用いて剥離・微細化・分散処理を同時に行い、鱗片状の金属顔料分散液を作製した。
得られた金属顔料分散液を、開き目5μmのSUSメッシュフィルターにてろ過処理を行い、粗大粒子を除去し、金属顔料分散液を得た。
なお、得られた金属顔料分散液について、粒径測定と、アスペクト比の測定を行っている。測定方法は以下に示す通りであり、測定結果について表1にまとめている。
【0113】
(粒径測定)
金属顔料分散液に含まれる金属顔料の粒径については、以下の条件下での光散乱により測定を行った。そして、散乱光強度で重み付けされた調和平均粒子径(Z平均粒子径)を算出した。
・測定装置:ゼータサイザーナノZS(マルバーン社製)
・測定温度:25℃
・使用セル:ガラスセル
・測定サンプルの調製:各金属顔料分散液を、プロピレングリコールモノメチルエーテルで1000倍に希釈したものを測定サンプルとした。
【0114】
(アスペクト比)
金属顔料分散液を、測定に使用する顕微鏡の試料台に滴下し、60℃に設定した金庫式オーブンで溶剤を乾燥させ、これを観察用の試料とした。走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、加速電圧25kVの条件下、適切な測定倍率で顔料の観察と画像の撮影を行った。撮影された画像中に写っている任意の50個の金属顔料(鱗片状の粒子)の長径と厚みを計測し、平均長径、平均厚みおよびアスペクト比を算出した。
【0115】
【0116】
[その他使用原料]
その他、本実施例で用いた原料は以下の通りである。
【0117】
(単官能カチオン重合性化合物)
・デナコールEX-141(化学名:フェニルグリシジルエーテル;ナガセケムテックス株式会社製;表中「EX-141」)
・アロンオキセタンOXT-101(化学名:3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン;東亞合成株式会社製;表中「OXT-101」)
(多官能カチオン重合性化合物)
・アロンオキセタンOXT-221(化学名:3-エチル-3{[3-エチルオキセタンー3―イル]メトキシ}メチル)オキセタン;東亞合成株式会社製;表中「OXT-221」)
・セロキサイド2021P(化学名:3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート;株式会社ダイセル製)
・リモネンジオキサイド(RENESSENZ,LLC.製)
・KBM-403(化学名:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;信越化学工業株式会社製)
(カチオン重合性官能基とラジカル重合性官能基を持つ化合物)
・OXE-10(化学名:(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルアクリレート;大阪有機化学工業株式会社製)
(単官能ラジカル重合性化合物)
・フェノキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)
(多官能ラジカル重合性化合物)
・トリメチロールプロパントリアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製)
(光酸発生剤)
・CPI-110P(化学名:ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロホスファート:サンアプロ株式会社製)
(光ラジカル発生剤)
・Omnirad184(BYK Additives & Instruments社製)
(表面調整剤)
・BYK―307(ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン;BYK社製)
【0118】
[インクジェットインク組成物の製造]
上記で得られた金属顔料分散液と、表2に記載の各成分を十分に混合して、金属光沢層(印刷層)用インクおよびオーバーコート層用インクを製造した。表2において、金属顔料の量は、固形分量で記載している。つまり、表2に記載のインクは、明記された成分のほか、金属顔料分散液から持ち越された有機溶剤(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を含んでいる。
なお、得られたインクについては、以下に示す方法でその表面張力を測定している。表2には各組成物についての表面張力の測定結果もあわせて記載している。表中で示される測定値の単位は[mN/m]である。
【0119】
(表面張力)
表面張力は、Wilhelmy法により測定された値であり、具体的には協和界面科学社製自動表面張力計CBVP-Z型を用い、白金プレートを使用して23℃で測定した。
【0120】
[評価]
得られたインク(組成物)を用いて、以下の評価を行った。結果は表2に示した通りである。
【0121】
(金属光沢性(60°グロス値))
インクジェットプリンタとして、ピエゾ型インクジェットヘッド(コニカミノルタ社製、KM1024iMHE、インク液滴量13pL)を搭載したインクジェットプリンタ(株式会社トライテック製、Stage JET)を準備した。
【0122】
表2の金属光沢層(印刷層)用インクを前記プリンタに充填し、ヘッド温度35℃、解像度720dpi、8分割マルチパスの条件で、PETフィルム(東洋紡株式会社製、コスモシャイン(登録商標)A4360)にインクジェット印刷(ベタ印刷)を行った。印刷完了後10分間室温でセッティングした後、メタルハライドランプにより照射強度900mW/cm2、積算照射量4000mJ/cm2の紫外線を照射することによってインクを硬化させた。ここで、得られる金属光沢層の厚さは15μmとなるように調整した。
【0123】
次いで、表2のオーバーコート層用インクを、ヘッド温度35℃、解像度720dpi、8分割マルチパスの条件で、前記金属光沢層上にインクジェット印刷(ベタ印刷)を行った。印刷完了後、メタルハライドランプにより照射強度900mW/cm2、積算照射量4000mJ/cm2の紫外線を照射した後、80℃に設定したオーブンで30分間加熱することでインクを硬化させ、印刷物を得た。ここで、得られるオーバーコート層の厚さは30μmとなるように調整した。
【0124】
得られた印刷物の金属光沢性は、60°グロス値を測定することにより行った。具体的には、得られた印刷物の裏側(印刷していない面)に、隠ぺい率測定紙(TP技研株式会社製、JISK5600-4-1に準拠したもの)の黒色部を貼り付け、光沢計(BYK-Gardner GmbH社製、マイクロ-グロス)を用いて測定を行った。
【0125】
なお、表2には、オーバーコート層を塗装する前のサンプルについて、同様の試験による60°グロス値の評価結果を記載している。また、これに加え、オーバーコート層の塗装前後で、どれだけ60°グロス値が変動したかの計算結果も記載している。
【0126】
(密着性)
上記金属光沢性評価基板と同様の方法で、密着性評価基板を作製し、金属光沢層とオーバーコート層の層間密着性を確認した。密着性は、JIS K5600-5-6:1999に従って1mm間隔に切れ目を入れてクロスカット試験を行い、硬化膜と基板との密着性を評価した。この評価に関して、0~4が実用できる範囲であるが、0~3に設定することがより好適である。
0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
1:カットの交差点における塗膜の小さなはがれ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は数か所の目が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に65%を上回ることはない。
5:分類4でも分類できないはがれ程度のいずれか。
【0127】
(鉛筆硬度)
上記金属光沢性評価基板と同様の方法で、鉛筆硬度評価基板を作製した。この評価基板を用い、JIS-K5600-5-4の試験方法に準拠し、鉛筆硬度評価を行った。鉛筆はMITSU-BISHI製を用い、試験機器は、(株)東洋精機製作所製鉛筆引っかき硬度試験機を用いて評価した。
【0128】
【0129】
本実施例項の結果から分かるように、実施例の積層体によれば、一段と層間の密着性が改良された積層体等を実現し得る。