(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115603
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ソーラーパネルを備える空中栽培装置及び空中栽培方法
(51)【国際特許分類】
A01G 9/12 20060101AFI20240820BHJP
H02S 10/00 20140101ALI20240820BHJP
H02S 20/10 20140101ALI20240820BHJP
【FI】
A01G9/12 B
H02S10/00
H02S20/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021305
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】523053576
【氏名又は名称】富岳ファーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073210
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100173668
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 吉之助
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 公士
(72)【発明者】
【氏名】稲澤 伊知朗
【テーマコード(参考)】
2B023
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
2B023AA01
2B023AD01
2B023AE01
2B023AE03
2B023AE10
5F151JA13
5F151JA30
5F251JA13
5F251JA30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】農作物への日照の確保に加えて栽培に寄与する構成のソーラーパネルを備える空中栽培装置及び空中栽培方法を提供する。
【解決手段】農地の畝に沿って畝方向に一列状に立設する複数本の支柱と、一列状の支柱間に南北方向に架け渡される梁と、を一単位とし、この構造列の複数単位を、農地に整列する複数の畝に沿って各々配列し、複数単位の構造列の上部を構造列に直交する方向に横切るように複数枚のソーラーパネルを一列状に配設し、このソーラーパネル列を一単位とし、複数単位を前記構造列の上部において畝の長さ方向に間隔を開けて配列することによって太陽光発電構築物を構築し、誘引ネット又は誘引紐を、下端が畝内・畝側方・畝側方近傍位置のいずれかの位置に固定すると共に上端を梁に固定することにより複数枚又は複数本を畝に沿って一列状に張る構成である、ソーラーパネルを備える空中栽培装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農地で農作物の育成・収穫を行うと共に、該農地の上方でソーラーパネルを用いて太陽光発電を行う営農型太陽光発電であり、
農地の畝に沿って該畝の長さ方向に一列状に立設する複数本の支柱と、これらの一列状の各支柱間に架け渡される梁と、から成る構造列を一単位とし、この構造列の複数単位を、農地に整列する複数の畝に沿って各々配列し、
且つ、この複数単位の構造列の上部を該構造列に直交する方向に横切るように複数枚のソーラーパネルを一列状に配設し、この一列状に配設されたソーラーパネル列を一単位とし、このソーラーパネル列の複数単位を、前記複数単位の構造列の上部において畝の長さ方向に間隔を開けて配列することによって太陽光発電構築物を構築し、
更に、複数枚の誘引ネット又は複数本の誘引紐を、それらの下端が畝内・畝側方・畝側方近傍位置のいずれかの位置に固定すると共にそれらの上端を梁に固定することにより複数枚の誘引ネット又は複数本の誘引紐を畝に沿って一列状に張る構成であり、
栽培する農作物がその品種に応じてツル・枝・茎を前記誘引ネット又は誘引紐に誘引されて生育可能な構成であること、
を特徴とするソーラーパネルを備える空中栽培装置。
【請求項2】
畝と畝との間隔が農作業用車両が走行可能な幅を有し、この走行する位置におけるソーラーパネル下方部分の構築物の部材の最低高さが農作業用車両が走行可能な高さであることを特徴とする請求項1に記載のソーラーパネルを備える空中栽培装置。
【請求項3】
一列状の支柱列の一単位に対して、その支柱列の両側に一列ずつの畝が各々設けられていることを特徴とする請求項1に記載のソーラーパネルを備える空中栽培装置。
【請求項4】
畝の表面にマルチシートが張られている構成であることを特徴とする請求項1に記載のソーラーパネルを備える空中栽培装置。
【請求項5】
農作物を栽培する農地の面積に対する、該農地を覆うソーラーパネルの面積である、遮光率が40~55%の範囲であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のソーラーパネルを備える空中栽培装置。
【請求項6】
農地で農作物の育成・収穫を行うと共に、該農地の上方でソーラーパネルを用いて太陽光発電を行う営農型太陽光発電であり、
農地の畝に沿って該畝の長さ方向に一列状に立設する複数本の支柱と、これらの一列状の各支柱間に架け渡される梁と、から成る構造列を一単位とし、この構造列の複数単位を、農地に整列する複数の畝に沿って各々配列し、
且つ、この複数単位の構造列の上部を該構造列に直交する方向に横切るように複数枚のソーラーパネルを一列状に配設し、この一列状に配設されたソーラーパネル列を一単位とし、このソーラーパネル列の複数単位を、前記複数単位の構造列の上部において畝の長さ方向に間隔を開けて配列することによって太陽光発電構築物を構築し、
更に、複数枚の誘引ネット又は複数本の誘引紐を、それらの下端が畝内・畝側方・畝側方近傍位置のいずれかの位置に固定すると共にそれらの上端を梁に固定することにより複数枚の誘引ネット又は複数本の誘引紐を畝に沿って一列状に張る構成であり、
栽培する農作物がその品種に応じてツル・枝・茎を前記誘引ネット又は誘引紐に誘引されて生育すること、
を特徴とするソーラーパネルを備える空中栽培方法。
【請求項7】
畝と畝との間隔が農作業用車両が走行可能な幅を有し、この走行する位置におけるソーラーパネル下方部分の構築物の部材の最低高さが農作業用車両が走行可能な高さとすることを特徴とする請求項6に記載のソーラーパネルを備える空中栽培方法。
【請求項8】
一列状の支柱列の一単位に対して、その支柱列の両側に一列ずつの畝を各々設ける構成とすることを特徴とする請求項6に記載のソーラーパネルを備える空中栽培方法。
【請求項9】
畝の表面にマルチシートを張る構成とすることを特徴とする請求項6に記載のソーラーパネルを備える空中栽培方法。
【請求項10】
農作物を栽培する農地の面積に対する、該農地を覆うソーラーパネルの面積である、遮光率を40~55%の範囲とすることを特徴とする請求項6~9のいずれかに記載のソーラーパネルを備える空中栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はソーラーパネルを備える空中栽培装置及び空中栽培方法に関し、詳しくは、太陽光を農業生産と発電とで共有するソーラーシェアリングにおいて誘引ネット又は誘引紐を用いた空中栽培装置及び空中栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農地は、国民の食料の生産基盤であり、今後とも優良農地を確保していくことが重要である一方、再生可能エネルギー需要の増大による再生可能エネルギー発電設備の設置等の土地需要にも適切に対応することも必要であり、これらの要望を満たすことが急務となっている。
【0003】
そこで、営農型太陽光発電とも呼ばれるソーラーシェアリングが普及し始めている。
ソーラーシェアリングとは、農地に支柱を立てて上部空間に太陽光発電設備を設置し、太陽光を農業生産と発電とで共有する設備方式であり、農作物の収穫・販売による収入に加え、発電した電力の自家利用や売電による収入を得ることが期待できるものである。
【0004】
例えば、特許文献1に示す技術では、農地の上方に、東西に幅が狭く南北に長尺のソーラーパネル列を、南北に間隔を設けて複数列を配列し、この南北の間隔を設けた隙間から下方の日照を確保することにより、農地の上方では太陽光発電を行い、ソーラーパネルの下方の農地では日照を必要とする農作物の栽培を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術は、農作物の栽培を行う農地に、太陽光発電を行うソーラーパネル構造体とを任意の間隔を設けて配列させた状態で構築させたものであり、農地で栽培する農作物に対しては単に日照を確保するように構成されているだけであった。
【0007】
そこで本発明の課題は、農作物への日照の確保に加えて栽培に寄与する構成のソーラーパネルを備える空中栽培装置及び空中栽培方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は下記構成を有する。
【0009】
1.農地で農作物の育成・収穫を行うと共に、該農地の上方でソーラーパネルを用いて太陽光発電を行う営農型太陽光発電であり、
農地の畝に沿って該畝の長さ方向に一列状に立設する複数本の支柱と、これらの一列状の各支柱間に架け渡される梁と、から成る構造列を一単位とし、この構造列の複数単位を、農地に整列する複数の畝に沿って各々配列し、
且つ、この複数単位の構造列の上部を該構造列に直交する方向に横切るように複数枚のソーラーパネルを一列状に配設し、この一列状に配設されたソーラーパネル列を一単位とし、このソーラーパネル列の複数単位を、前記複数単位の構造列の上部において畝の長さ方向に間隔を開けて配列することによって太陽光発電構築物を構築し、
更に、複数枚の誘引ネット又は複数本の誘引紐を、それらの下端が畝内・畝側方・畝側方近傍位置のいずれかの位置に固定すると共にそれらの上端を梁に固定することにより複数枚の誘引ネット又は複数本の誘引紐を畝に沿って一列状に張る構成であり、
栽培する農作物がその品種に応じてツル・枝・茎を前記誘引ネット又は誘引紐に誘引されて生育可能な構成であること、
を特徴とするソーラーパネルを備える空中栽培装置。
【0010】
2.畝と畝との間隔が農作業用車両が走行可能な幅を有し、この走行する位置におけるソーラーパネル下方部分の構築物の部材の最低高さが農作業用車両が走行可能な高さであることを特徴とする上記1に記載のソーラーパネルを備える空中栽培装置。
【0011】
3.一列状の支柱列の一単位に対して、その支柱列の両側に一列ずつの畝が各々設けられていることを特徴とする上記1に記載のソーラーパネルを備える空中栽培装置。
【0012】
4.畝の表面にマルチシートが張られている構成であることを特徴とする上記1に記載のソーラーパネルを備える空中栽培装置。
【0013】
5.農作物を栽培する農地の面積に対する、該農地を覆うソーラーパネルの面積である、遮光率が40~55%の範囲であることを特徴とする上記1~4のいずれかに記載のソーラーパネルを備える空中栽培装置。
【0014】
6.農地で農作物の育成・収穫を行うと共に、該農地の上方でソーラーパネルを用いて太陽光発電を行う営農型太陽光発電であり、
農地の畝に沿って該畝の長さ方向に一列状に立設する複数本の支柱と、これらの一列状の各支柱間に架け渡される梁と、から成る構造列を一単位とし、この構造列の複数単位を、農地に整列する複数の畝に沿って各々配列し、
且つ、この複数単位の構造列の上部を該構造列に直交する方向に横切るように複数枚のソーラーパネルを一列状に配設し、この一列状に配設されたソーラーパネル列を一単位とし、このソーラーパネル列の複数単位を、前記複数単位の構造列の上部において畝の長さ方向に間隔を開けて配列することによって太陽光発電構築物を構築し、
更に、複数枚の誘引ネット又は複数本の誘引紐を、それらの下端が畝内・畝側方・畝側方近傍位置のいずれかの位置に固定すると共にそれらの上端を梁に固定することにより複数枚の誘引ネット又は複数本の誘引紐を畝に沿って一列状に張る構成であり、
栽培する農作物がその品種に応じてツル・枝・茎を前記誘引ネット又は誘引紐に誘引されて生育すること、
を特徴とするソーラーパネルを備える空中栽培方法。
【0015】
7.畝と畝との間隔が農作業用車両が走行可能な幅を有し、この走行する位置におけるソーラーパネル下方部分の構築物の部材の最低高さが農作業用車両が走行可能な高さとすることを特徴とする上記6に記載のソーラーパネルを備える空中栽培方法。
【0016】
8.一列状の支柱列の一単位に対して、その支柱列の両側に一列ずつの畝を各々設ける構成とすることを特徴とする上記6に記載のソーラーパネルを備える空中栽培方法。
【0017】
9.畝の表面にマルチシートを張る構成とすることを特徴とする上記6に記載のソーラーパネルを備える空中栽培方法。
【0018】
10.農作物を栽培する農地の面積に対する、該農地を覆うソーラーパネルの面積である、遮光率を40~55%の範囲とすることを特徴とする上記6~9のいずれかに記載のソーラーパネルを備える空中栽培方法。
【発明の効果】
【0019】
請求項1又は請求項6に示す発明によれば、農作物への日照の確保に加えて栽培に寄与する構成のソーラーパネルを備える空中栽培装置及び空中栽培方法を提供することができる。
【0020】
特に、支柱列が畝に沿って立設し、支柱列の各支柱間に梁が架け渡される構成により、梁と畝との間に架け渡されて張られる誘引ネット又は誘引紐についても畝に沿って張ることができる。従って、畝のどの位置においても誘引ネット又は誘引紐と常に近接してるので、畝内から生育する農作物のツル・枝・茎を極めて容易に誘引することができる。
【0021】
請求項2又は請求項7に示す発明によれば、農地の上方において太陽光発電を得ると共に、各畝間をトラクター・運搬車等の農作業用車両の走行が可能となるので、栽培した農作物の収穫時等の作業性が著しく向上する。
【0022】
請求項3又は請求項8に示す発明によれば、農地の上方において太陽光発電を得ると共に、各畝間において作業、例えば、植付作業、敷ワラ(マルチ)作業、摘芯・整枝・誘引作業、人工授粉・摘果作業、収穫作業等を行う際に、作業者の両側に畝が存在するので、畝間を移動しながら両側の畝の作業を同時に又は交互に行うことができるので作業性が高い。
【0023】
請求項4又は請求項9に示す発明によれば、農地の上方において太陽光発電を得ると共に、地温の調節(保温または地温上昇の抑制)、雑草の抑制、病害虫の防除、土壌水分の蒸発防止効果を得ることができる。
【0024】
請求項5又は請求項10に示す発明によれば、農地の上方において太陽光発電を得ると共に、ソーラーパネルの下方において栽培する農作物に必要充分な日照を得ることができる。遮光率55%以下、即ち、日照を45%以上得ることにより農作物の生育に必要な日照を確保することができると共に、遮光率40%以上、即ち、日照を60%以下とすることにより農作物の光合成の利用限界値である光飽和点以下となるので農作物にストレスを与えることのない生育環境とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係るソーラーパネルを備える空中栽培装置の一実施例を示す概略正面図(南方向から見た図)
【
図2】
図1に示す空中栽培装置の一部概略斜視図(東南方向から見た図)
【
図3】農作物(カボチャ)の栽培例を示す要部概略斜視図
【
図4】空中栽培装置の全体の一実施例を示す概略平面図(上空から見た図)
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、添付の図面に従って本発明を説明する。
【0027】
本発明に係るソーラーパネルを備える空中栽培装置及び空中栽培方法(以下、単に空中栽培装置、空中栽培方法と言う。)は、
図1~
図4に示すように、
農地で農作物の育成・収穫を行うと共に、該農地の上方でソーラーパネル1を用いて太陽光発電を行う営農型太陽光発電であり、
農地の畝2に沿って該畝2の長さ方向に一列状に立設する複数本の支柱3と、これらの一列状の各支柱3間に架け渡される梁4と、から成る構造列を一単位とし、この構造列の複数単位を、農地に整列する複数の畝2に沿って各々配列し、
且つ、この複数単位の構造列の上部を該構造列に直交する方向に横切るように複数枚のソーラーパネル1を一列状に配設し、この一列状に配設されたソーラーパネル列を一単位とし、このソーラーパネル列の複数単位を、前記複数単位の構造列の上部において畝2の長さ方向に間隔を開けて配列することによって太陽光発電構築物を構築し、
更に、複数枚の誘引ネット5を、それらの下端が畝2内・畝2側方・畝2側方近傍位置のいずれかの位置(本実施例では畝2の側方に沿った位置)に固定すると共にそれらの上端を梁4に固定することにより複数枚の誘引ネット5を畝2に沿って一列状に張る構成であり、
栽培する農作物6がその品種に応じてツル・枝・茎を前記誘引ネット5に誘引されて生育可能な構成であること、
を主構成とするものである。
【0028】
尚、
図1~
図4では構成を明瞭化するために各図において部分的に図示を省略している。
即ち、
図1では、ソーラーパネル1、畝2、支柱3、梁4、誘引ネット5、マルチシート7、作業用通路8の各構成を明瞭化するために農作物6の図示を省略している。
図2では、畝2及び梁4と誘引ネット5との関係を明瞭化するために農作物6の図示を省略すると共に、誘引ネット5を2本の支柱間の1箇所において対面する2枚のみを図示して他の箇所については図示を省略している。
図3では、畝2から梁4に張られた誘引ネット5に農作物6(本実施例ではカボチャ)のツルが誘引されて栽培されている状態を明瞭化するために2本の支柱間に張られる誘引ネット5と該誘引ネット5に農作物6が誘引状態で栽培されている1箇所を図示して他の箇所については図示を省略している。
図4では、農地において、ソーラーパネル1が東西方向に一列状に配設されて一単位のソーラーパネル列を構成し、このソーラーパネル列の複数単位が南北方向に間隔を開けて配列されて太陽光発電構築物を構築した状態を明瞭化するためにソーラーパネル1の列を図示して他の構成(畝2、支柱3、梁4、誘引ネット5、農作物6、マルチシート7、作業用通路8等)の図示を省略している。
【0029】
尚また、本実施例は
図2及び
図4に図示した方位記号から判るように、南北方向に畝2が作られた農地に本発明を適用した態様を示すものである。農地の条件(例えば、平地であるか、斜面であるか、起伏が有るか否か、周囲に日照に影響する山・森林・建物等が有るか否か、農作業用車両のための入口の位置、等の種々条件等)によって、畝2の作られる方向も様々であるため、本実施例の南北方向に限らず、東西方向等の他の方向に畝2が作られた農地にも本発明は適用される。
【0030】
本発明において用いられるソーラーパネル1は、農地・住宅地・山林地区等に配設される太陽光発電用のソーラーパネルとして公知公用のものを本発明の範囲内において特別の制限なく用いることができる。
【0031】
本発明において、支柱3、梁4はこの種のソーラーパネル構築物の支柱材や梁材として公知公用の素材(例えば、アルミニウム、ステンレス等)及び構造・構成を有するものを本発明の範囲内において特別の制限なく採ることができる。支柱3及び/又は梁4の上部にはソーラーパネル1を固定する固定手段が設けられている。
【0032】
支柱3及び梁4とを有して成る太陽光発電構築物としては、隣接する支柱列と支柱列との間隔は、各々の支柱列が沿う各々の畝2の幅、更に隣接する畝2と畝2との間に形成される作業用通路8の幅等を考慮して設定されることが好ましい。
【0033】
具体的な数値例としては、畝2にマルチシート7を敷設した場合、一般的に普及しているマルチシート7の幅が約0.9mであり、作業用通路8の幅をトラクター・運搬車等の農作業車両が走行可能な一般的な約1.8mとすると、隣接する支柱列と支柱列との間隔は約3.6mとなる。
【0034】
また、トラクター・運搬車等の農作業用車両を使用する場合、隣接する畝2と畝2との間を走行可能な間隔とするだけでなく、ソーラーパネル1下方部分の最低高さについてもトラクター・運搬車等の農作業用車両が走行可能な高さとすることが好ましい。この場合、農作業用車両の種類・車種等によって高さは異なるが、概ね、約2.0~3.5m、好ましくは3.0~3.5mの高さを確保すれば充分である。
【0035】
更に、東西方向に一列状に配設したソーラーパネル列の複数単位を南北方向に配列する際、南北方向における各ソーラーパネル列間の間隔は、適用する農地の緯度経度や日中の日照量(日照時間等)の環境と栽培する農作物の種類に応じて必要とされる日照量によって適宜決めることが好ましい。
【0036】
更に、一列状の支柱列の一単位に対して、その支柱列の両側に一列ずつの畝2が各々設けられていること、即ち、二列の畝2・2間に一列の支柱列が配列され、この二列の畝2と一列の支柱列を一単位として農地に配列された構成とすることが農地有効利用の点で効率的で好ましい。
【0037】
更にまた、栽培する農作物6の種類に応じて畝2の表面にマルチシート7を張る構成としてもよい。マルチシート2としては、一般的な黒色以外に、銀色や白色等の反射マルチシートを用いることもできる。
尚、マルチシート7として反射型マルチシートを用いた場合、ソーラーパネル1として受光面が裏面にもある両面受光型を用いることにより、表面側で受光して発電するだけでなく、畝2に張られた反射型のマルチシート7からの反射光を裏面側でも受光して発電することができる。
【0038】
本発明において栽培に適した農作物としては、好ましくは緑黄色野菜、具体的には、カボチャ、ナス、キュウリ、ヘチマ、ブドウ、イチゴ、キウイ、ピーマン等を挙げることができ、これらの農作物を誘引ネット5や誘引紐に誘引して空中栽培によって栽培することに適している。
【0039】
例えば、
図3に示すようにカボチャを農作物6とした場合、カボチャは日陰では生育が劣るおそれがあることから日射量を充分に確保するためには、ソーラーパネル1の下方において畝2内の南端側に沿って植え、カボチャの生育に伴って伸びるツルはソーラーパネル1の南側に伸びていくように誘引ネット5に誘引することが好ましい。
【0040】
本発明において、農作物を栽培する農地の面積に対する、該農地を覆うソーラーパネル1の面積である、遮光率が40~55%の範囲であることが好ましい。遮光率をかかる範囲内とすることによって、ソーラーシェアリングを行っていない周辺の農地の収穫量の平均水準と比べ8割以上の単収を確保しなければならないという規制をクリアできると共に、充分な発電量をも得ることができる。
【0041】
本発明において、遮光率40~55%の範囲とする一例として、
図4に示す実施例を挙げる。
図4に示す実施例では、1101m
2の農地に太陽光発電構築物を構築する例を示す。
ここでは、2.17m
2/1枚のソーラーパネルを東西方向に15枚一列状に配設したソーラーパネル列を一単位とし、この15枚から成るソーラーパネル列を16列、南北方向に配列している。即ち、合計240枚のソーラーパネルを用いて受光面積は520.8m
2となる。
従って、農地1101m
2に、受光面積520.8m
2のソーラーパネルを配設することから、農地の遮光率は47.3%となる。
【符号の説明】
【0042】
1 ソーラーパネル
2 畝
3 支柱
4 梁
5 誘引ネット
6 農作物
7 マルチシート
8 作業用通路