(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115605
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
A63B37/00 626
A63B37/00 538
A63B37/00 312
A63B37/00 654
A63B37/00 618
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021307
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児島 大二郎
(72)【発明者】
【氏名】佐嶌 隆弘
(57)【要約】
【課題】飛行性能に優れるゴルフボールの提供。
【解決手段】ゴルフボール2は、コア4と、中間層6と、カバー8と、を備えている。このゴルフボール2は、コア中心点の硬度Ho、コア表面硬度Hs、コア中心点からの距離がこのコアの半径の25%である点の硬度H1、コア中心点からの距離がこのコアの半径の75%である点の硬度H2、中間層の硬度Hm及びカバーの硬度Hcが、下記関係式を全て満たす。
Ho≦H1≦H2≦Hs (1)
Ho<Hs (2)
(Hm-Hc)≦(Hs-Ho) (3)
(Hs-Hc)≦(Hm-Hs) (4)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状のコアと、このコアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置するカバーとを備えており、
下記関係式(1)-(4)を満たすゴルフボール。
Ho≦H1≦H2≦Hs (1)
Ho<Hs (2)
(Hm-Hc)≦(Hs-Ho) (3)
(Hs-Hc)≦(Hm-Hs) (4)
Ho:コアの中心点のショアC硬度
Hs:コアの表面のショアC硬度
H1:コアの中心点からの距離がこのコアの半径の25%である点のショアC硬度
H2:コアの中心点からの距離がこのコアの半径の75%である点のショアC硬度
Hm:中間層のショアC硬度
Hc:カバーのショアC硬度
【請求項2】
下記関係式(5)をさらに満たす、請求項1に記載のゴルフボール。
Hc≦H2 (5)
【請求項3】
下記関係式(6)をさらに満たす、請求項1に記載のゴルフボール。
(Hm-H1)≧36 (6)
【請求項4】
下記関係式(7)をさらに満たす、請求項1に記載のゴルフボール。
Ho≦Hc (7)
【請求項5】
上記中間層の材質が樹脂組成物であり、この樹脂組成物の基材ポリマーがアイオノマー樹脂である、請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項6】
上記カバーの材質が樹脂組成物であり、この樹脂組成物の基材ポリマーがアイオノマー樹脂である、請求項1に記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ゴルフボールを開示する。詳細には、本明細書は、コア、中間層及びカバーを備えたゴルフボールを開示する。
【背景技術】
【0002】
熟練したゴルフプレーヤーは、ゴルフボールを打撃したときの打球感を重視する。特に、グリーン周辺のアプローチショットにおいて、ソフトな打球感を好むゴルフプレーヤーが存在する。ソフトな打球感が得られるとの観点から、軟質なカバーを備えたゴルフボールが提案されている。
【0003】
軟質なカバーを備えたゴルフボールは、アプローチショットにおけるコントロール性能にも優れている。しかし、軟質なカバーは、ゴルフボールの反発性能を阻害する。低反発のゴルフボールでは、ドライバーショット時に大きな飛距離が得られない。ドライバーショットでの飛距離向上のためには、打撃されたときにスピン速度の小さいゴルフボールが有利である。軟質なカバーを備えたゴルフボールにおいて、飛行性能とコントロール性能とを両立するために、コアの構造及び材質を改良する種々の試みがなされている。
【0004】
特開2013-31640号公報(特許文献1)には、コアの中心点から表面までをこのコアの半径の12.5%の間隔で区分して得られる9点の、中心点からの距離(%)とJIS-C硬度とがグラフにプロットされたとき、最小二乗法によって得られた線形近似曲線のR2が0.95以上であり、中間層のショアD硬度がカバーのショアD硬度より大きいゴルフボールが開示されている。特開2012-130524号公報(特許文献2)では、コアの中心点からの距離が5mmである点のJIS-C硬度H(5.0)と、この中心点におけるJIS-C硬度Hoとの差が6.0以上、中心点からの距離が12.5mmである点のJIS-C硬度H(12.5)と硬度Hoとの差が4.0以下、コア表面のJIS-C硬度Hsと硬度H(12.5)との差が10.0以上、硬度Hsと硬度Hoとの差が22.0以上であり、コア中心点から表面に向かって硬度が低下するゾーンが存在せず、中間層のショアD硬度がカバーのショアD硬度より大きいゴルフボールが提案されている。
【0005】
特開2013-248298号公報(特許文献3)には、少なくとも1層のゴム層を有する球状のコアにおいて、ゴム層の厚みをコアの半径方向に12.5%間隔で等分した9点で測定したJIS-C硬度を、ゴム層の最内点からの距離(%)に対してプロットしたときに、最小二乗法によって得られた線形近似曲線のR2が0.95以上であり、ゴム層の最外点の硬度が最内点の硬度より大きく、中間層のスラブ硬度がカバーのスラブ硬度より大きいゴルフボールが開示されている。特開2013-9895号公報(特許文献4)では、基材ゴム、共架橋剤、架橋開始剤及びカルボン酸塩を含むゴム組成物が架橋されることで得られたコアと、2以上のカバーとを備えており、カバーの最内層のJIS-C硬度がコアの表面のJIS-C硬度より大きいゴルフボールが提案されている。
【0006】
特開2015-77405公報(特許文献5)には、コアの半径をR(mm)、コア中心のJIS-C硬度をA、コア中心からR/3mm離れた位置のJIS-C硬度をB、コア中心からR/1.8mm離れた位置のJIS-C硬度をC、コア中心からR/1.3mm離れた位置のJIS-C硬度をD、コア表面のJIS-C硬度をEとする場合に、(1)D-C≧7、(2)C-B≦7、(3)(D-C)-(C-B)≧7及び(4)E-A≧16の関係式を満たすゴルフボールが開示されている。
【0007】
特開2017-77355号公報(特許文献6)では、コアの硬度分布において、コア中心のJIS-C硬度Hc、コア中心から12mm離れた位置のJIS-C硬度H12、コア表面のJIS-C硬度Hoが、(1)0≦H12-Hc≦15、(2)15≦Ho-H12≦30、(3)(Ho-H12)-(H12-Hc)≧10、(4)20≦Ho-Hc≦40を満足し、かつ、(Ho-H12)-(H12-Hc)とボールの動摩擦係数との積であるスピン指数が3.0以上のゴルフボールが提案されている。特開2019-198465号公報(特許文献7)には、コアの硬度分布において、コア中心のShore-C硬度Cc、コア表面のShore-C硬度Csとの差(Cs-Cc)が28以上であり、コア中心と表面との中点MのShore-C硬度、中点Mからコア表面側に2.5mm、5.0mm及び7.5mmの点におけるShore-C硬度、並びに、中点Mからコア中心側に2.5mm、5.0mm及び7.5mmの点におけるShore-C硬度について、各位置の硬度差と各特定距離の差から求めた面積A-Fが、特定の数式を満たすゴルフボールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013-31640号公報
【特許文献2】特開2012-130524号公報
【特許文献3】特開2013-248298号公報
【特許文献4】特開2013-9895号公報
【特許文献5】特開2015-77405号公報
【特許文献6】特開2017-77355号公報
【特許文献7】特開2019-198465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ゴルフボールに対するゴルフプレーヤーの要求は、ますますエスカレートしている。ゴルフボールの打球感、飛行性能及びコントロール性能には、未だ改善の余地がある。
【0010】
本出願人の意図するところは、軟質カバーを備えたゴルフボールにおいて、ドライバーショット時の飛行性能に優れるゴルフボールの提供にある。さらには、アプローチショット時のスピン性能にも優れるゴルフボールの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書が開示するゴルフボールは、球状のコアと、このコアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置するカバーとを備えている。このゴルフボールは、下記関係式(1)-(4)を満たす。
Ho≦H1≦H2≦Hs (1)
Ho<Hs (2)
(Hm-Hc)≦(Hs-Ho) (3)
(Hs-Hc)≦(Hm-Hs) (4)
Ho:コアの中心点のショアC硬度
Hs:コアの表面のショアC硬度
H1:コアの中心点からの距離がこのコアの半径の25%である点のショアC硬度
H2:コアの中心点からの距離がこのコアの半径の75%である点のショアC硬度
Hm:中間層のショアC硬度
Hc:カバーのショアC硬度
【発明の効果】
【0012】
このゴルフボールは、コア内部の硬度分布及びゴルフボール全体の硬度分布が適正である。適正な硬度分布によって、軟質なカバーによる反発性能への悪影響が補われる。このゴルフボールでは、ドライバーショット時の飛行性能に優れる。さらには、アプローチショット時のスピン性能にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るゴルフボールが示された一部切り欠き断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態が詳細に説明される。なお、本明細書において、特に言及しない限り、硬度はショアC硬度と読みかえられる。
【0015】
図1に示されたゴルフボール2は、球状のコア4と、このコア4の外側に位置する中間層6と、この中間層6の外側に位置するカバー8とを有している。このゴルフボール2は、その表面に複数のディンプル10を有している。ゴルフボール2の表面のうちディンプル10以外の部分は、ランド12である。このゴルフボール2は、カバー8の外側にペイント層及びマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
【0016】
このゴルフボール2の直径は、40mm以上45mm以下が好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。
【0017】
このゴルフボール2の質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
【0018】
ゴルフボール2の反発性能の観点から、コア4の直径は34.8mm以上が好ましく、35.6mm以上がより好ましく、36.8mm以上がさらに好ましい。中間層6及びカバー8が十分な厚みを有しうるとの観点から、コア4の直径は40.5mm以下が好ましく、40.0mm以下がより好ましく、39.5mm以下がさらに好ましい。このコア4の半径としては、17.4mm以上が好ましく、17.8mm以上がより好ましく、18.4mm以上がさらに好ましい。コア4の半径は20.25mm以下が好ましく、20.0mm以下がより好ましく、19.75mm以下がさらに好ましい。コア4の質量は、10g以上40g以下が好ましい。
【0019】
このゴルフボール2では、コア4が切断されて得られる半球の切断面において、コア4の中心点における硬度Ho、この中心点からの距離がコア4の半径の25%である点の硬度H1、及び、この中心点からの距離がコア4の半径の75%である点の硬度H2が測定される。また、コア4の表面において硬度Hsが測定される。各硬度の測定には、自動硬度計(H.バーレイス社の商品名「デジテストII」)に取り付けられたショアC型硬度計が用いられる。この硬度計が、コア4の切断面に押しつけられることにより、硬度Ho、硬度H1及び硬度H2が測定される。この硬度計が、コア4の表面に押しつけられることにより、硬度Hsが測定される。測定は、全て、23℃の環境下でなされる。
【0020】
また、このゴルフボール2では、中間層6及びカバー8のスラブ硬度が測定される。図示される通り、このゴルフボール2が有する中間層6及びカバー8は、いずれも単一層である。他の実施形態に係るゴルフボールにおいて、中間層6が複数の層から形成されてもよく、カバー8が複数の層から形成されてもよい。複数の層からなる中間層6を備えたゴルフボールでは、この中間層6をなす複数の層のうち、コア4に隣接する層のスラブ硬度が測定される。複数の層からなるカバー8を備えたゴルフボールでは、このカバー8をなす複数の層のうち、最外層に位置する層のスラブ硬度が測定される。
【0021】
中間層6及びカバー8のスラブ硬度は、「ASTM-D 2240-68」の規定に準拠して、測定される。測定には、熱プレスで成形された、中間層6又はカバー8の材料と同一の材料からなる、厚みが約2mmであるシートが用いられる。測定に先立ち、シートは23℃の温度下に2週間保管される。測定時には、3枚のシートが重ね合わされる。ショアC型硬度計が装着された自動硬度計(前述の「デジテストII」)により、中間層6のショアC硬度Hmと、カバー8のショアC硬度Hcとが得られる。
【0022】
このゴルフボール2では、硬度Ho、硬度H1、硬度H2、硬度Hs、硬度Hm及び硬度Hcが、下記関係式(1)-(4)を満たすことにより、ドライバーショットでの優れた飛行性能が達成される。
Ho≦H1≦H2≦Hs (1)
Ho<Hs (2)
(Hm-Hc)≦(Hs-Ho) (3)
(Hs-Hc)≦(Hm-Hs) (4)
【0023】
上記式(1)及び(2)を満たすゴルフボール2では、コア4内部に適正な硬度分布が形成されている。好ましくは、コア4は、全体として外剛内柔の硬度分布を有している。このコア4を備えたゴルフボール2がドライバーで打撃されるとき、スピン速度が抑制され、かつ大きな打ち出し角度が得られる。このゴルフボール2の飛距離は、大きい。さらに、このコア4は、ドライバーショット時のソフトな打球感にも寄与し得る。
【0024】
上記式(3)及び(4)を満たすゴルフボール2では、ゴルフボール全体の硬度分布が適正である。詳細には、硬度Hsと硬度Hoとの差Hs-HoがV3とされ、硬度Hmと硬度Hcとの差Hm-HcがV4とされるとき、V3がV4と同じかV4より大きい。換言すれば、V3とV4との差V3-V4は0以上である。このゴルフボール2では、中間層6とカバー8との硬度差V4(=Hm-Hc)と比較して、コア内部の硬度差V3(=Hs-Ho)が大きい。このゴルフボール2では、コア4の反発性能が十分に発揮されることにより、ドライバーショット時にスピン速度が低減され、大きな飛距離が得られうる。
【0025】
また、硬度Hsと硬度Hcとの差Hs-HcがV5とされ、硬度Hmと硬度Hsとの差Hm-HsがV6とされるとき、V6がV5と同じかV5より大きい。換言すれば、V6とV5との差V6-V5は0以上である。このゴルフボール2では、コア4の表面硬度Hsに対して、中間層6が硬質であり、かつ、カバー8が軟質である。このコア4及び中間層6からなる球体には、全体として外剛内柔の硬度分布が形成されうる。コア4及び中間層6によって形成される硬度分布により、ゴルフボール2がドライバーで打撃されるとき、大きなボール速度と小さなスピン速度とが達成されるとともに、比較的軟質なカバー8によりスピン速度の過剰な低下が回避され、アプローチショット時のスピン性能が維持される。
【0026】
このゴルフボール2では、硬度Ho、硬度H1、硬度H2、硬度Hs、硬度Hm及び硬度Hcは特に限定されず、関係式(1)-(4)を満たすように適宜設定することができる。例えば、コア4の中心の硬度Hoは、43以上57以下であってよい。硬度Hoが43以上であるゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、硬度Hoは44以上がより好ましく、45以上が特に好ましい。硬度Hoが57以下であるゴルフボール2は、打球感に優れる。この観点から、硬度Hoは56以下がより好ましく、55以下が特に好ましい。
【0027】
コア4の中心点からの距離がこのコア4の半径の25%である点の硬度H1は、53以上67以下であってよい。硬度H1が53以上であるゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、硬度H1は54以上がより好ましく、55以上が特に好ましい。硬度H1が67以下であるゴルフボール2は、打球感に優れる。この観点から、硬度H1は66以下がより好ましく、65以下が特に好ましい。
【0028】
このゴルフボール2において、コア4の中心点からの距離がこのコア4の半径の50%である点の硬度が測定されてもよい。この硬度は、56以上であってよく、57以上であってよく、58以上であってよく、また、70以下であってよく、69以下であってよく、68以下であってよい。
【0029】
コア4の中心点からの距離がこのコア4の半径の75%である点の硬度H2は、68以上82以下であってよい。硬度H2が68以上であるゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、硬度H2は69以上がより好ましく、70以上が特に好ましい。硬度H2が82以下であるゴルフボール2は、打球感に優れる。この観点から、硬度H2は81以下がより好ましく、80以下が特に好ましい。
【0030】
コア4の表面の硬度Hsは、78以上92以下であってよい。硬度Hsが78以上であるゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、硬度Hsは79以上がより好ましく、80以上が特に好ましい。硬度Hsが92以下であるゴルフボール2は、打球感に優れる。この観点から、硬度Hsは91以下がより好ましく、90以下が特に好ましい。
【0031】
中間層6のショアC硬度Hmは、86以上100以下であってよい。硬度Hmが86以上の中間層6は、スピン速度低減に寄与し得る。スピン抑制の観点から、硬度Hmは、90以上がより好ましく、94以上が特に好ましい。硬度Hmが100以下の中間層6を備えたゴルフボール2では、打撃時にスピン速度が過剰に抑制されない。アプローチ性能の観点から、硬度Hmは、99.5以下がより好ましく、99以下が特に好ましい。
【0032】
カバー8のショアC硬度Hcは、53以上79以下であってよい。硬度Hcが53以上のカバー8は、ゴルフボール2の飛行性能を阻害しない。この観点から、硬度Hcは61以上がより好ましく、67以上が特に好ましい。硬度Hcが79以下であるゴルフボール2は、打球感に優れる。この観点から、硬度Hcは76以下がより好ましく、75以下が特に好ましい。
【0033】
前述した通り、このコア4では、硬度Hsは硬度Hoより大きい。スピン性能の観点から、硬度Hsと硬度Hoとの差Hs-Hoは、ショアC硬度で20以上が好ましく、25以上がより好ましく、27以上がさらに好ましい。反発性能の観点から、差Hs-Hoは、40以下が好ましく、38以下がより好ましく、35以下がさらに好ましい。
【0034】
ソフトな打球感が得られるとの観点から、硬度Hcが硬度Hmより小さいゴルフボール2が好ましい。硬度Hmと硬度Hcとの差Hm-Hcは特に限定されないが、打球感及びスピン性能の観点から、差Hm-Hcは、ショアC硬度で15以上が好ましく、18以上がより好ましく、20以上がさらに好ましい。飛行性能及び耐久性の観点から、差Hm-Hcは38以下が好ましく、35以下がより好ましく、33以下がさらに好ましい。
【0035】
打球感及びスピン性能の観点から、硬度Hcが硬度Hsより小さいゴルフボール2が好ましい。硬度Hsと硬度Hcとの差Hs-Hcは特に限定されないが、スピン性能の観点から、差Hs-Hcは、ショアC硬度で4以上が好ましく、5以上がより好ましく、7以上がさらに好ましい。反発性能を阻害しないとの観点から、差Hs-Hcは18以下が好ましく、15以下がより好ましく、13以下がさらに好ましい。
【0036】
コア4及び中間層6からなる球体において外剛内柔の硬度分布が形成されるとの観点から、硬度Hmが硬度Hsより大きいゴルフボール2が好ましい。硬度Hmと硬度Hsとの差Hm-Hsは特に限定されないが、スピン抑制の観点から、差Hm-Hsは、ショアC硬度で10以上が好ましく、11以上がより好ましく、12以上がさらに好ましい。打球感の観点から、差Hm-Hsは20以下が好ましく、19以下がより好ましく、18以下がさらに好ましい。
【0037】
前述した通り、このゴルフボール2では、硬度Hsと硬度Hoとの差Hs-HoがV3とされ、硬度Hmと硬度Hcとの差Hm-HcがV4とされるとき、V3とV4との差V3-V4は0以上である。スピン抑制の観点から、この差V3-V4は2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましい。打球感の観点から、この差V3-V4は、20以下が好ましく、18以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。
【0038】
前述した通り、このゴルフボール2では、硬度Hsと硬度Hcとの差Hs-HcがV5とされ、硬度Hmと硬度Hsとの差Hm-HsがV6とされるとき、V6とV5との差V6-V5は0以上である。飛行性能の観点から、この差V6-V5は2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましい。打球感の観点から、この差V6-V5は、15以下が好ましく、14以下がより好ましく、13以下がさらに好ましい。
【0039】
好ましくは、このゴルフボール2では、硬度Hc及び硬度H2が下記関係式(5)をさらに満たす。
Hc≦H2 (5)
【0040】
上記式(5)を満たすゴルフボール2が備えるカバー8は、適度に軟質である。このゴルフボール2では、アプローチショットでのスピン性能(コントロール性能)が維持されうる。硬度Hcと硬度H2との差Hc-H2がV2とされるとき、スピン性能及び打球感の観点から、差V2は0以下が好ましく、-1以下がより好ましく、-3以下がさらに好ましい。飛行性能の観点から、差V2は-10以上が好ましく、-9以上がより好ましく、-8以上がさらに好ましい。
【0041】
好ましくは、このゴルフボール2では、硬度Hmと硬度H1とが下記関係式(6)をさらに満たす。
(Hm-H1)≧36 (6)
【0042】
上記式(6)を満たすゴルフボール2は、ドライバーで打撃された時のスピン速度が低減される。硬度Hmと硬度H1との差Hm-H1がV7とされるとき、飛行性能の観点から、差V7は37以上がより好ましく、38以上がさらに好ましい。打球感の観点から、差V7は42以下が好ましく、41以下がより好ましく、40以下がさらに好ましい。
【0043】
好ましくは、このゴルフボール2では、硬度Hoと硬度Hcとが下記関係式(7)をさらに満たす。
Ho≦Hc (7)
【0044】
上記式(7)を満たすゴルフボール2が備えるカバー8は、適度に硬質である。このゴルフボール2では、ドライバーショットにおいてスピン速度が抑制され、かつ、大きなボール速度が維持される。硬度Hcと硬度Hoとの差Hc-HoがV1とされるとき、飛行性能の観点から、差V1は18以上が好ましく、19以上がより好ましく、20以上がさらに好ましい。アプローチショットにおいてスピンが過剰に抑制されないとの観点から、差V1は30以下が好ましく、29以下がより好ましく、28以下がさらに好ましい。
【0045】
スピン抑制の観点から、中間層6の厚みTmは、0.5mm以上が好ましく、0.6mm以上がより好ましく、0.8mm以上がさらに好ましい。コア4の反発性能が発揮されうるとの観点から、厚みTmは、3.0mm以下が好ましく、2.5mm以下がより好ましく、2.0mm以下がさらに好ましい。中間層6が複数の層から形成される場合、各層の厚みの総和が厚みTmとされる。厚みTmは、ランド12の直下において測定される。
【0046】
スピン抑制の観点から、カバー8の厚みTcは、2.0mm以下が好ましく、1.8mm以下がより好ましく、1.5mm以下がさらに好ましい。アプローチ性能及び耐久性の観点から、厚みTcは、0.1mm以上が好ましく、0.2mm以上がより好ましく、0.5mm以上がさらに好ましい。
【0047】
ソフトな打球感が得られるとの観点から、コア4の圧縮変形量Dcは3.40mm以上が好ましく、3.60mm以上がより好ましく、3.80mm以上がさらに好ましい。耐久性の観点から、コア4の圧縮変形量Dcは5.40mm以下が好ましく、5.20mm以下がより好ましく、5.00mm以下がさらに好ましい。
【0048】
アプローチ性能及び打球感の観点から、ゴルフボール2の圧縮変形量Dbは、3.0mm以上が好ましく、3.05mm以上がより好ましく、3.10mm以上がさらに好ましい。反発性能の観点から、このゴルフボール2の圧縮変形量Dbは3.40mm以下が好ましく、3.35mm以下がより好ましく、3.30mm以下がさらに好ましい。
【0049】
圧縮変形量の測定には、YAMADA式コンプレッションテスター「SCH」が用いられる。このテスターでは、コア4、ゴルフボール2等の球体が金属製の剛板の上に置かれる。この球体に向かって金属製の円柱が徐々に降下する。この円柱の底面と剛板との間に挟まれた球体は、変形する。球体に98Nの初荷重がかかった状態から1274Nの終荷重がかかった状態までの円柱の移動距離が、圧縮変形量として測定される。初荷重がかかるまでの円柱の移動速度は、0.83mm/sである。初荷重がかかってから終荷重がかかるまでの円柱の移動速度は、1.67mm/sである。
【0050】
以下、この実施形態におけるコア4、中間層6及びカバー8の好ましい構成材料について、順次説明するが、本出願人が意図する目的が達成される範囲内で他の構成材料が用いられてもよい。
【0051】
コア4は、ゴム組成物が架橋されることで形成されている。好ましい基材ゴムとして、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。反発性能の観点から、ポリブタジエンが好ましい。ポリブタジエンと他のゴムとが併用される場合、ポリブタジエンが主成分であることが好ましい。具体的には、全基材ゴムに対するポリブタジエンの比率は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上が特に好ましい。シス-1,4結合の比率が80%以上であるポリブタジエンが、特に好ましい。ポリブタジエンと併用される他のゴムとしては、ポリイソプレンが好ましい。
【0052】
コア4のゴム組成物は、好ましくは、共架橋剤を含む。ゴルフボール2の耐久性及び反発性能の観点から好ましい共架橋剤は、炭素数が2から8であるα,β-不飽和カルボン酸の、1価又は2価の金属塩である。好ましい共架橋剤として、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムが例示される。アクリル酸亜鉛及びメタクリル酸亜鉛が好ましく、アクリル酸亜鉛がより好ましい。
【0053】
ゴム組成物が、炭素数が2から8であるα,β-不飽和カルボン酸と、酸化金属とを含んでもよい。両者はゴム組成物中で反応し、塩が得られる。この塩が、共架橋剤として機能する。好ましいα,β-不飽和カルボン酸として、アクリル酸及びメタクリル酸が挙げられる。好ましい酸化金属として、酸化亜鉛及び酸化マグネシウムが挙げられる。
【0054】
共架橋剤の量は、基材ゴム100質量部に対して10質量部以上45質量部以下が好ましい。この量が10質量部以上であるゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、この量は15質量部以上がより好ましく、20質量部以上が特に好ましい。この量が45質量部以下であるゴルフボール2は、打球感に優れる。この観点から、この量は40質量部以下がより好ましく、35質量部以下が特に好ましい。
【0055】
好ましくは、コア4のゴム組成物は、有機過酸化物を含む。有機過酸化物は、架橋開始剤として機能する。有機過酸化物は、ゴルフボール2の耐久性及び反発性能に寄与する。好適な有機過酸化物として、ジクミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ-t-ブチルパーオキサイドが例示される。特に汎用性の高い有機過酸化物は、ジクミルパーオキサイドである。
【0056】
有機過酸化物の量は、基材ゴム100質量部に対して0.1質量部以上3.0質量部以下が好ましい。この量が0.1質量部以上であるゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、この量は0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上が特に好ましい。この量が3.0質量部以下であるゴルフボール2は、打球感に優れる。この観点から、この量は2.5質量部以下がより好ましく、2.0質量部以下が特に好ましい。
【0057】
好ましくは、コア4のゴム組成物は、有機硫黄化合物を含む。有機硫黄化合物は、ドライバーショットでの飛距離に寄与する。有機硫黄化合物には、ナフタレンチオール系化合物、ベンゼンチオール系化合物及びジスルフィド系化合物が含まれる。
【0058】
ナフタレンチオール系化合物として、1-ナフタレンチオール、2-ナフタレンチオール、4-クロロ-1-ナフタレンチオール、4-ブロモ-1-ナフタレンチオール、1-クロロ-2-ナフタレンチオール、1-ブロモ-2-ナフタレンチオール、1-フルオロ-2-ナフタレンチオール、1-シアノ-2-ナフタレンチオール及び1-アセチル-2-ナフタレンチオール並びにこれらの金属塩が例示される。好ましい金属塩は、亜鉛塩である。
【0059】
ベンゼンチオール系化合物として、ベンゼンチオール、4-クロロベンゼンチオール、3-クロロベンゼンチオール、4-ブロモベンゼンチオール、3-ブロモベンゼンチオール、4-フルオロベンゼンチオール、4-ヨードベンゼンチオール、2,5-ジクロロベンゼンチオール、3,5-ジクロロベンゼンチオール、2,6-ジクロロベンゼンチオール、2,5-ジブロモベンゼンチオール、3,5-ジブロモベンゼンチオール、2-クロロ-5-ブロモベンゼンチオール、2,4,6-トリクロロベンゼンチオール、2,3,4,5,6-ペンタクロロベンゼンチオール、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンチオール、4-シアノベンゼンチオール、2-シアノベンゼンチオール、4-ニトロベンゼンチオール及び2-ニトロベンゼンチオール並びにこれらの金属塩が例示される。好ましい金属塩は、亜鉛塩である。
【0060】
ジスルフィド系化合物として、ジフェニルジスルフィド、ビス(4-クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3-クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4-ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3-ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4-フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4-ヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(4-シアノフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2-クロロ-5-ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2-シアノ-5-ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2-シアノ-4-クロロ-6-ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,3,5,6-テトラクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,3,4,5,6-ペンタクロロフェニル)ジスルフィド及びビス(2,3,4,5,6-ペンタブロモフェニル)ジスルフィドが例示される。
【0061】
有機硫黄化合物の量は、基材ゴム100質量部に対して0.1質量部以上1.5質量部以下が好ましい。この量が0.1質量部以上であるゴルフボール2は、反発性能に優れる。この観点から、この量は0.2質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上が特に好ましい。この量が1.5質量部以下であるゴルフボール2は、打球感に優れる。この観点から、この量は1.3質量部以下がより好ましく、1.1質量部以下が特に好ましい。2以上の有機硫黄化合物が、併用されてもよい。
【0062】
好ましくは、コア4のゴム組成物は、カルボン酸又はカルボン酸塩を含む。カルボン酸及びカルボン酸塩は、コア4の硬度分布の適正化に寄与しうる。適正な硬度分布は、ドライバーショットにおけるスピン速度を抑制しうる。好ましいカルボン酸として、安息香酸が挙げられる。好ましいカルボン酸塩として、オクタン酸亜鉛及びステアリン酸亜鉛が挙げられる。カルボン酸及びカルボン酸塩の量は、基材ゴム100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、0.8質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上が特に好ましい。この量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下が特に好ましい。
【0063】
コア4のゴム組成物が、比重調整等を目的とした充填剤を含んでもよい。好適な充填剤として、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及び炭酸マグネシウムが例示される。充填剤の量は、コア4の意図した比重が達成されるように適宜決定される。
【0064】
コア4のゴム組成物が、硫黄、老化防止剤、着色剤、可塑剤、分散剤等の各種添加剤を適量含んでもよい。このゴム組成物が、架橋ゴム粉末又は合成樹脂粉末を含んでもよい。
【0065】
コア4には、圧縮成形法が適している。圧縮成形法では、キャビティを有する金型に、ゴム組成物が投入される。このゴム組成物は、キャビティ内で加圧及び加熱される。加圧により、ゴム組成物がキャビティ内を流動する。加熱により、ゴムが架橋反応を起こす。この圧縮成形法において、比較的低い圧力でゴム組成物が加圧され、比較的高い温度でゴム組成物が加熱されることにより、硬度Ho、硬度H1、硬度H2及び硬度Hsが前述の式(1)及び(2)を満たすコア4が形成されうる。圧縮成形法が、複数のステージによって達成されてもよい。複数のステージにおいて、異なる成形条件が採用されてもよい。
【0066】
中間層6は、コア4の外側に位置している。中間層6の材質は、樹脂組成物である。好ましくは、中間層6は、熱可塑性樹脂組成物から成形されている。この樹脂組成物の基材ポリマーとして、アイオノマー樹脂、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー及び熱可塑性ポリスチレンエラストマーが例示される。特に、アイオノマー樹脂が好ましい。アイオノマー樹脂は、高弾性である。アイオノマー樹脂を含む中間層6を有するゴルフボール2は、反発性能に優れる。このゴルフボール2は、ドライバーショットでの飛行性能に優れる。
【0067】
アイオノマー樹脂と他の樹脂とが併用されてもよい。併用される場合は、反発性能の観点から、アイオノマー樹脂が基材ポリマーの主成分とされる。全基材ポリマーに対するアイオノマー樹脂の比率は、50質量%以上が好ましい。
【0068】
好ましいアイオノマー樹脂として、α-オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体が挙げられる。好ましい二元共重合体は、80質量%以上90質量%以下のα-オレフィンと、10質量%以上20質量%以下のα,β-不飽和カルボン酸とを含む。この二元共重合体は、反発性能に優れる。好ましい他のアイオノマー樹脂として、α-オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β-不飽和カルボン酸と炭素数が2以上22以下のα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体が挙げられる。好ましい三元共重合体は、70質量%以上85質量%以下のα-オレフィンと、5質量%以上30質量%以下のα,β-不飽和カルボン酸と、1質量%以上25質量%以下のα,β-不飽和カルボン酸エステルとを含む。この三元共重合体は、反発性能に優れる。二元共重合体及び三元共重合体において、好ましいα-オレフィンはエチレン及びプロピレンであり、好ましいα,β-不飽和カルボン酸はアクリル酸及びメタクリル酸である。特に好ましいアイオノマー樹脂は、エチレンとアクリル酸との共重合体である。特に好ましい他のアイオノマー樹脂は、エチレンとメタクリル酸との共重合体である。
【0069】
二元共重合体及び三元共重合体において、カルボキシル基の一部は金属イオンで中和されている。中和のための金属イオンとして、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及びネオジムイオンが例示される。中和が、2種以上の金属イオンでなされてもよい。ゴルフボール2の反発性能及び耐久性の観点から特に好適な金属イオンは、ナトリウムイオン、亜鉛イオン、リチウムイオン及びマグネシウムイオンである。
【0070】
アイオノマー樹脂の具体例として、三井・ダウポリケミカル社の商品名「ハイミラン1555」、「ハイミラン1557」、「ハイミラン1605」、「ハイミラン1706」、「ハイミラン1707」、「ハイミラン1855」、「ハイミラン1856」、「ハイミラン8150」、「ハイミランAM7311」、「ハイミランAM7315」、「ハイミランAM7317」、「ハイミランAM7329」及び「ハイミランAM7337」;デュポン社の商品名「サーリン6120」、「サーリン6910」、「サーリン7930」、「サーリン7940」、「サーリン8140」、「サーリン8150」、「サーリン8940」、「サーリン8945」、「サーリン9120」、「サーリン9150」、「サーリン9910」、「サーリン9945」、「サーリンAD8546」、「HPF1000」及び「HPF2000」;並びにエクソンモービル化学社の商品名「IOTEK7010」、「IOTEK7030」、「IOTEK7510」、「IOTEK7520」、「IOTEK8000」及び「IOTEK8030」が挙げられる。2種以上のアイオノマー樹脂が併用されてもよい。
【0071】
中間層6の樹脂組成物が、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の充填剤を含んでもよい。この樹脂組成物が、充填剤として、タングステン、モリブデン等の高比重金属からなる粉末を含んでもよい。充填剤の量は、中間層6の意図した比重が達成されるように適宜決定される。この樹脂組成物が、さらに、着色剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等を適量含んでもよい。ゴルフボール2の色相が白である場合、典型的な着色剤は二酸化チタンである。
【0072】
中間層6の形成には、射出成形法、圧縮成形法等の既知の手法が採用されうる。
【0073】
カバー8は、中間層6の外側に位置している。カバー8の材質は、樹脂組成物である。好ましくは、カバー8は、熱可塑性樹脂組成物から成形されている。この樹脂組成物の基材ポリマーとして、アイオノマー樹脂、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー及び熱可塑性ポリスチレンエラストマーが例示される。特に、アイオノマー樹脂が好ましい。アイオノマー樹脂は、高弾性である。アイオノマー樹脂を含むカバー8を有するゴルフボール2は、反発性能が阻害されない。このゴルフボール2では、アプローチ性能と飛行性能とが両立されうる。中間層6に関して前述されたアイオノマー樹脂が、カバー8に用いられうる。
【0074】
アイオノマー樹脂と他の樹脂とが併用されてもよい。併用される場合は、反発性能の観点から、アイオノマー樹脂が基材ポリマーの主成分とされる。全基材ポリマーに対するアイオノマー樹脂の比率は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が特に好ましい。
【0075】
アイオノマー樹脂と併用されうる好ましい樹脂は、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体である。この共重合体は、エチレンと(メタ)アクリル酸とを含有する単量体組成物の共重合反応によって得られる。この共重合体では、カルボキシル基の一部が金属イオンで中和されている。この共重合体は、3質量%以上25質量%以下の(メタ)アクリル酸成分を含有する。極性官能基を有するエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体が、特に好ましい。エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の具体例としては、三井・ダウポリケミカル社の商品名「ニュクレル」が挙げられる。
【0076】
カバー8の樹脂組成物が、着色剤、充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等を適量含んでもよい。ゴルフボール2の色相が白である場合、典型的な着色剤は二酸化チタンである。
【0077】
カバー8の形成には、射出成形法、圧縮成形法等の既知の手法が採用されうる。カバー8の成形時に、成形型のキャビティ面に形成されたピンプルにより、ディンプル1012が形成される。
【実施例0078】
以下、実施例に係るゴルフボールの効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本明細書で開示された範囲が限定的に解釈されるべきではない。
【0079】
[実施例1]
100質量部のハイシスポリブタジエン(JSR社の商品名「BR-730」)、28質量部のアクリル酸亜鉛、10質量部の酸化亜鉛、12.2質量部の硫酸バリウム、0.9質量部のジクミルパーオキサイド、1質量部のペンタクロロチオフェノール亜鉛塩及び3質量部の安息香酸を混練し、ゴム組成物Dを得た。このゴム組成物Dをそれぞれが半球状キャビティを有する上型及び下型からなる金型に、投入した。このゴム組成物Dを下記の条件で加圧及び加熱し、直径が38.7mmであるコアを得た。
第一ステージ
温度:120℃
圧力:35kgf/cm2
時間:5分
第二ステージ
温度:160℃
圧力:35kgf/cm2
時間:15分
【0080】
50質量部のアイオノマー樹脂(前述の「ハイミランAM7329」)、25質量部の他のアイオノマー樹脂(前述の「ハイミラン1605」)、25質量部のさらに他のアイオノマー樹脂(前述の「サーリン8150」)、6質量部の硫酸バリウム、4質量部の二酸化チタン及び0.2質量部の光安定剤(城北化学工業社の商品名「JF-90」)を二軸混練押出機で混練し、中間層用の樹脂組成物M1を得た。それぞれが半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に、コアを投入した。樹脂組成物M1を射出成形法にてコアの周りに被覆し、中間層を形成した。この中間層の厚さは、1.00mmであった。
【0081】
80質量部のアイオノマー樹脂(前述の「ハイミラン1855」)、20質量部のエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体(三井・ダウポリケミカル社の商品名「ニュクレルN1050H」)、4質量部の二酸化チタン及び0.2質量部の光安定剤(前述の「JF-90」)を二軸混練押出機で混練し、樹脂組成物C1を得た。それぞれが半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に、コア及び中間層からなる球を投入した。樹脂組成物C1を射出成形法にて球の周りに被覆し、カバーを形成した。このカバーの厚さは、1.00mmであった。
【0082】
このカバーの周りに二液硬化型ポリウレタンを基材とするクリアー塗料を塗装し、直径が約42.7mmであり質量が約45.6gである実施例1のゴルフボールを得た。
【0083】
[実施例2-8及び比較例1-6]
コア、中間層及びカバーの仕様並びにコアの加硫条件を下表4-6に示される通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2-8及び比較例1-6のゴルフボールを得た。コアの組成及び加硫条件の詳細が、下表1に示されている。中間層の組成の詳細が、下表2に示されている。カバーの組成の詳細が、下表3に示されている。
【0084】
[ドライバー(W#1)での飛距離]
ゴルフラボラトリー社のスイングマシンに、チタン合金製のヘッドを備えたドライバー(住友ゴム工業社の商品名「XXIO 12」、シャフト硬度:R、ロフト角:10.5度)を装着した。ゴルフボールを、ヘッド速度が35m/secである条件で打撃した。発射地点から静止地点までの飛距離(m)、打撃直後のボール速度(m/秒)及びスピン速度(rpm)を測定した。各ゴルフボールについて12回ずつ測定して得られたデータの平均値をそのゴルフボールの測定値とした。このようにして得られたボール速度、スピン速度及び飛距離が下記表4-6に示されている。
【0085】
[アプローチ性能:サンドウエッジ(SW)による打撃]
ゴルフラボラトリー社のスイングマシンに、ウェッジ(クリーブランド社の商品名「558RTX2.0ツアーサテンウェッジ」、シャフト硬度:S、ロフト角:52度)を装着した。このウェッジにてゴルフボールを、ヘッド速度が16m/secである条件で打撃して、スピン速度(rpm)を測定した。各ゴルフボールについて12回ずつ測定して得られたデータの平均値が、下記表4-6に示されている。
【0086】
【0087】
表1に記載された化合物の詳細は、以下の通りである。
ポリブタジエン:JSR社製のハイシスポリブタジエンゴム、商品名「BR730」(シス-1,4-結合含有量=96質量%、1,2-ビニル結合含有量=1.3質量%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))=55、分子量分布(Mw/Mn)=3)
ポリイソプレン:JSR社製の商品名「IR2200」
アクリル酸亜鉛:日触テクノファインケミカル社製の商品名「ZN-DA90S」(ステアリン酸亜鉛を10質量%含有)
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製、「銀嶺R」
硫酸バリウム:堺化学社製、「硫酸バリウムBD」
ジクミルパーオキサイド:東京化成工業社製
ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩:東京化成工業社製
安息香酸:東京化成工業社製
【0088】
【0089】
表2に記載された化合物の詳細は、以下の通りである。
ハイミランAM7329:三井・ダウポリケミカル社製のアイオノマー樹脂
ハイミラン1605:三井・ダウポリケミカル社製のアイオノマー樹脂
ハイミラン1555:三井・ダウポリケミカル社製のアイオノマー樹脂
サーリン8150:デュポン社製のアイオノマー樹脂
硫酸バリウム:堺化学社製、「硫酸バリウムBD」
二酸化チタン:石原産業社製、「A-220」
JF-90:城北化学社製の光安定剤
【0090】
【0091】
表3に記載された化合物の詳細は、以下の通りである。
ハイミラン1855:三井・ダウポリケミカル社製のアイオノマー樹脂
ハイミランAM7327:三井・ダウポリケミカル社製のアイオノマー樹脂
ニュクレルN1050H:三井・ダウポリケミカル社のエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体
エラストランNY88A:BASFジャパン社の熱可塑性ポリウレタンエラストマー
エラストランNY90A:BASFジャパン社の熱可塑性ポリウレタンエラストマー
二酸化チタン:石原産業社製、「A-220」
JF-90:城北化学社製の光安定剤
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
表4-6に示されるように、各実施例のゴルフボールは、特に、ドライバーショットにおける飛行性能に優れている。さらには、アプローチショットにおけるコントロール性能に優れている。この評価結果から、このゴルフボールの優位性は明らかである。
【0096】
本発明(1)は、
球状のコアと、このコアの外側に位置する中間層と、この中間層の外側に位置するカバーとを備えており、下記関係式(1)-(4)を満たすゴルフボールである。
Ho≦H1≦H2≦Hs (1)
Ho<Hs (2)
(Hm-Hc)≦(Hs-Ho) (3)
(Hs-Hc)≦(Hm-Hs) (4)
Ho:コアの中心点のショアC硬度
Hs:コアの表面のショアC硬度
H1:コアの中心点からの距離がこのコアの半径の25%である点のショアC硬度
H2:コアの中心点からの距離がこのコアの半径の75%である点のショアC硬度
Hm:中間層のショアC硬度
Hc:カバーのショアC硬度
【0097】
本発明(2)は、
下記関係式(5)をさらに満たす、本発明(1)に記載のゴルフボールである。
Hc≦H2 (5)
【0098】
本発明(3)は、
下記関係式(6)をさらに満たす、本発明(1)又は本発明(2)に記載のゴルフボールである。
(Hm-H1)≧36 (6)
【0099】
本発明(4)は、
下記関係式(7)をさらに満たす、本発明(1)から本発明(3)のいずれかに記載のゴルフボールである。
Ho≦Hc (7)
【0100】
本発明(5)は、
上記中間層の材質が樹脂組成物であり、この樹脂組成物の基材ポリマーがアイオノマー樹脂である、本発明(1)から本発明(4)のいずれかに記載のゴルフボールである。
【0101】
本発明(6)は、
上記カバーの材質が樹脂組成物であり、この樹脂組成物の基材ポリマーがアイオノマー樹脂である、本発明(1)から本発明(5)のいずれかに記載のゴルフボールである。