(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024115606
(43)【公開日】2024-08-27
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20240820BHJP
【FI】
B60H1/00 102J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021314
(22)【出願日】2023-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】荒木 大助
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸央
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA21
3L211DA12
(57)【要約】
【課題】より小さな力でドアを回転させつつ、バイレベルモード時におけるデフロスタ開口部からの冷風の漏れを抑制することができる車両用空調装置を提供すること。
【解決手段】車両用空調装置(10)は、複数の開口部(21~23)が形成されているケース(20)と、このケース(20)の内部に回転可能に設けられ開口部(21~23)を開閉可能なロータリー式のドア(30)と、を有している。ケース(20)は、デフロスタ開口部(21)の近傍でドア(30)の軌道に向かって突出するケース側第1突出部(27)を有している。ドア側第1膨出部(43)は、バイレベルモードにおいて、ケース側第1突出部(27)に当接する位置に形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開口部(21~23)が形成されているケース(20)と、このケース(20)の内部に回転可能に設けられ前記開口部(21~23)を開閉可能なドア(30)と、を有し、
前記開口部(21~23)は、フロントガラスに向かう送風空気が通過するデフロスタ開口部(21)と、乗員の上半身に向かう送風空気が通過するベント開口部(22)と、乗員の脚部に向かう送風空気が通過するフット開口部(23)と、を有し、
前記ドア(30)は、回転軸(31)と、この回転軸(31)から径方向に延びる一対の側壁部(32)と、これらの一対の側壁部(32)の径方向の外側に設けられ前記回転軸(31)を中心とした略円弧状の外周壁部(40)と、この外周壁部(40)の一部に開けられ送風空気が通過可能なドア開口部(34)と、を有するロータリードアである車両用空調装置において、
前記ケース(20)は、前記デフロスタ開口部(21)の近傍で前記ドア(30)の軌道に向かって突出するケース側第1突出部(27)を有し、
前記外周壁部(40)は、径方向に膨出しているドア側第1膨出部(43)を含み、
前記ベント開口部(22)と前記フット開口部(23)とからの送風が許容されると共に前記デフロスタ開口部(21)からの送風が規制されるバイレベルモードにおいて、前記ドア側第1膨出部(43)は、前記ケース側第1突出部(27)に当接する位置に形成されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記ドア側第1膨出部(43)は、第1膨出部本体(43a)と、この第1膨出部本体(43a)から径方向に突出する第1リブ(43b)と、を含む、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記ドア側第1膨出部(43)の周方向に沿った幅の寸法は、前記ドア(30)の回転軸の軸方向に沿って連続的に変化している、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記ドア側第1膨出部(43)は弾性部材で構成されている、請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の温度を調節するための車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの車両には、車室内の温度を調節するために車両用空調装置が搭載されている。車両用空調装置に関する従来技術として、特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に開示された車両用空調装置は、回転することにより通風可能な開口部を切り替え可能なロータリー式のドアを有している。ドアの外周面の一部には、若干のたるみを持たせてフィルムが設けられている。風圧によってフィルムが外周側に膨らむことにより、ケースに形成された開口部に密着し、意図しない開口部からの送風空気の漏れを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された車両用空調装置によれば、意図しない開口部からの送風空気の漏れを防ぐことができる。特にベント開口部とフット開口部とから送風を行うバイレベルモードでは、冷風と温風とを混合流路に流して温度調和させ、ベント開口部とフット開口部から吹き出させることが多い。このとき、デフロスタ開口部がしっかりと閉じられていないと、デフロスタ開口部から冷風の一部の空気がフロントガラスに向かって吹き出され、フロントガラスの曇りの原因となる虞がある。このため、特にバイレベルモードにおいて、デフロスタ開口部への送風空気の漏れを防ぐことは重要である。
【0006】
一方、特許文献1に開示された車両用空調装置によれば、塞がれる開口部にフィルムが密着するため、ドアを回転させるのに大きな力が必要となる。
【0007】
本発明は、より小さな力でドアを回転させつつ、バイレベルモード時におけるデフロスタ開口部からの冷風の漏れを抑制することのできる空調装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下の説明では、本発明の理解を容易にするために添付図面中の参照符号を括弧書きで付記するが、それによって本発明は図示の形態に限定されるものではない。
【0009】
本開示によれば、複数の開口部(21~23)が形成されているケース(20)と、このケース(20)の内部に回転可能に設けられ前記開口部(21~23)を開閉可能なドア(30)と、を有し、
前記開口部(21~23)は、フロントガラスに向かう送風空気が通過するデフロスタ開口部(21)と、乗員の上半身に向かう送風空気が通過するベント開口部(22)と、乗員の脚部に向かう送風空気が通過するフット開口部(23)と、を有し、
前記ドア(30)は、回転軸(31)と、この回転軸(31)から径方向に延びる一対の側壁部(32)と、これらの一対の側壁部(32)の径方向の外側に設けられ前記回転軸(31)を中心とした略円弧状の外周壁部(40)と、この外周壁部(40)の一部に開けられ送風空気が通過可能なドア開口部(34)と、を有するロータリードアである車両用空調装置において、
前記ケース(20)は、前記デフロスタ開口部(21)の近傍で前記ドア(30)の軌道に向かって突出するケース側第1突出部(27)を有し、
前記外周壁部(40)は、径方向に膨出しているドア側第1膨出部(43)を含み、
前記ベント開口部(22)と前記フット開口部(23)とからの送風が許容されると共に前記デフロスタ開口部(21)からの送風が規制されるバイレベルモードにおいて、前記ドア側第1膨出部(43)は、前記ケース側第1突出部(27)に当接する位置に形成されていることを特徴とする車両用空調装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より小さな力でドアを回転させつつ、デフロスタ開口部からの冷風の漏れを抑制することができる車両用空調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例による車両用空調装置を側方から見た状態の断面図である。
【
図5】5Aは
図3の5A部拡大図、5Bは
図3の5B部拡大図である。
【
図6】6Aはベントモードについて説明する図、6Bはフットモードについて説明する図である。
【
図7】7Aはデフフットモードについて説明する図、7Bはデフモードについて説明する図である。
【
図8】第1の変更例によるドア側第1膨出部の斜視図である。
【
図9】9Aは第2の変更例によるドア側第1膨出部の平面図、9Bは9Aの9B-9B線断面図である。
【
図10】第3の変更例によるドア側第1膨出部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。説明中、前後とは車両用空調装置の搭載されている車両の進行方向を基準として前後、左右とは車両の乗員を基準として左右をいう。図中Frは車両進行方向を基準として前、Rrは車両進行方向を基準として後、Leは乗員から見て左、Riは乗員から見て右、Upは上、Dnは下を示している。
【0013】
<実施例>
図1を参照する。
図1には、車両用空調装置10(以下、「空調装置10」という。)が示されている。空調装置10は、例えば、乗用車の車室前部に設けられる。
【0014】
空調装置10は、複数の開口部21~23が形成されているケース20と、このケース20の内部空間ISに設けられ送風空気を冷却可能な冷却用熱交換器12と、この冷却用熱交換器12を通過した空気を加熱可能な加熱用熱交換器13と、これらの冷却用熱交換器12と加熱用熱交換器13との間に設けられ加熱用熱交換器13を通過する送風空気の割合を調節するエアミックスドア14と、送風空気の流れ方向を基準として冷却用熱交換器12及び加熱用熱交換器13の下流側に設けられ開口部21~23を開閉可能なドア30と、を有する。
【0015】
ケース20は、図示しない送風ユニットに接続されている。送風ユニットからの送風空気は、前部からケース20の内部に導入され、後方に向かって流れる。
【0016】
開口部21~23は、車室の前上部に固定されているフロントガラスに送られる送風空気が通過するデフロスタ開口部21と、乗員の上半身に向かって送られる送風空気が通過するベント開口部22と、乗員の脚部に向かって送られる送風空気が通過するフット開口部23と、を含む。
【0017】
なお、ベント開口部22は、車幅中央に送風を行なうためのセンターベント開口部と、車幅外側に送風を行なうためのサイドベント開口部と、が形成されていても良い。また、ケース20には、上記の開口部21~23の他に、後席へ送られる送風空気が通過するための開口部が形成されていても良い。
【0018】
ケース20の内部空間ISには、冷却用熱交換器12のみを通過した冷たい送風空気が流れる冷風流路CPと、加熱用熱交換器13を通過した温かい送風空気が流れる温風流路HPと、冷風流路CPを通過した送風空気と温風流路HPを通過した送風空気が混合され温度が調節される混合流路MPと、が含まれる。
【0019】
図2を参照する。ケース20は、ドア30の軌道T2(以下、「第2の軌跡T2」という。)の外周に沿って形成され、混合流路MPに面しているケース側一般面部25と、ケース側一般面部25の端部からドア30の軌道上まで突出しドア30の移動端を規定しているストッパ部26と、このケース側一般面部25からドア30に向かって突出しているケース側第1突出部27及びケース側第2突出部28と、を有している。
【0020】
ケース側第1突出部27は、デフロスタ開口部21の縁のうち、ストッパ部26に近い方の縁に沿って形成されている。換言すれば、ケース側第1突出部27は、デフロスタ開口部21の前端の縁に沿って形成されている。
【0021】
ケース側第2突出部28は、デフロスタ開口部21とベント開口部22との間に形成されている。換言すれば、ケース側第2突出部28は、デフロスタ開口部21の後端の縁に沿って形成されている。
【0022】
図1を参照する。冷却用熱交換器12は、例えば、内部に冷媒が流されている。この冷媒との熱交換により、送風空気が冷却される。
【0023】
加熱用熱交換器13は、例えば、エンジンの冷却水を利用して送風空気を温める温水ヒータや、電気を利用して送風空気を温める電気ヒータを用いることができる。加えて、温水ヒータと電気ヒータ等の複数種類のヒータを用いることとしても良い。加熱用熱交換器13には、送風空気の温度を温めることのできるものであれば、温水ヒータや電気ヒータ以外のヒータを用いることも可能である。
【0024】
エアミックスドア14は、例えば、図示しないモータが作動することにより回転する。エアミックスドア14は、冷風流路CPを全閉にする位置P1から温風流路HPを全閉にする位置P2までスイング可能である。エアミックスドア14の位置によって温風流路HPを通過する送風空気の割合が決まり、混合流路MPで混ぜられる送風空気の温度が決まる。
【0025】
なお、エアミックスドア14は、車室内の温度調節レバーにワイヤー等を介して接続される構成としても良い。この場合には、操作者が温度調節レバーを操作するのに合わせて、エアミックスドア14がワイヤー等によって引っ張られ、スイングする。
【0026】
図2及び
図3を参照する。ドア30は、回転軸31と、この回転軸31から径方向に延びる共に扇形状を呈する一対の側壁部32、32と、これらの一対の側壁部32、32の径方向の外側に設けられ回転軸31を中心とした略円弧状の外周壁部40と、この外周壁部40の一部に開けられ送風空気が通過可能なドア開口部34と、外周壁部40の左右の端部に形成されケース20に当接可能な側方シール部35、35と、を有する。
【0027】
図2及び
図4を参照する。外周壁部40は、側壁部32の間に掛けられるように左右に延びている外周壁本体部41と、外周壁本体部41の前端から外周且つ前方に向かって延びストッパ部26に当接可能な第1シール部42と、第1シール部42に隣接して設けられ径方向に膨出しているドア側第1膨出部43と、このドア側第1膨出部43の後方において径方向に膨出しているドア側第2膨出部44と、ドア側第2膨出部44に隣接して設けられ径方向外方に延びている第2シール部45と、を有する。
【0028】
外周壁本体部41は、略円弧状に形成された、例えば、ポリプロピレンやABS等の樹脂によって構成される。外周壁本体部41には、ドア開口部34の他に、ドア側第1膨出部43に対応した部位に第1開口部41aが開けられ、ドア側第2膨出部44に対応した部位に第2開口部41bが開けられている。第1開口部41aは、ドア側第1膨出部43によって外周側が覆われ、第2開口部41bは、ドア側第2膨出部44によって外周側が覆われている。
【0029】
ドア側第1膨出部43は弾性部材によって構成されている。弾性部材とは、ここでは外周壁本体部41よりも柔らかい素材(容易に弾性変形する素材)で構成される部材と定義する。具体的には、EPDM、NBR、H-NBR、あるいはシリコンゴム等である。送風空気によって内部空間ISの内圧が上昇すると、ドア側第1膨出部43はドア径外方向に膨出し、ドア側第1膨出部43をケース側第1突出部27により確実に当接させることができる。このとき、送風空気が第1開口部41aを介してドア側第1膨出部43を膨出させることが好ましい。内部空間ISに空気が送風されていないときは、ドア側第1膨出部43はドア径外方向への膨出が抑制される。
【0030】
なお、外周壁本体部41をドア側第1膨出部43よりも柔らかい素材(容易に弾性変形する素材)によって構成することも可能である。この場合には、送風空気によってドア側第1膨出部43の内圧が上昇すると、外周壁本体部41が膨出し、ドア側第1膨出部43をケース側第1突出部27により確実に当接させることができる。
【0031】
さらに、外周壁本体部41とドア側第1膨出部43とに同じ素材を用いて、例えば、ドア側第1膨出部43の厚みを薄くすることも可能である。これにより、ドア側第1膨出部43を外周壁本体部41よりも弾性力を上げることができる。
【0032】
第1シール部42は、ドア側第1膨出部43と一体的に一部材で形成されている。第1シール部42は、ストッパ部26に当接することにより、ストッパ部26と第1シール部42との間からデフロスタ開口部21への送風空気の漏れを抑制することができる。
【0033】
図4参照する。ドア側第1膨出部43は、第1開口部41aを覆うように略U字状に形成されている第1膨出部本体43aと、この第1膨出部本体43aの外周面径方向に突出している第1リブ43bと、を有している。第1膨出部本体43aと、第1リブ43bとは、一体的に形成されている。
【0034】
図5Aを参照する。第1リブ43bは、外周側から見て格子状に形成されている。
【0035】
図3を参照する。ドア側第2膨出部44もドア側第1膨出部43と同じ構成とされている。つまり、ドア側第2膨出部44は弾性部材によって構成されている。送風空気によって内部空間ISの内圧が上昇すると、ドア側第2膨出部44はドア径外方向に膨出する。このとき、送風空気が第2開口部41b(
図2参照)を介してドア側第2膨出部44を膨出させることが好ましい。内部空間ISに空気が送風されていないときは、ドア側第2膨出部44はドア径外方向への膨出が抑制される。また、ドア側第2膨出部44は、第2開口部41bを覆うように略U字状に形成されている第2膨出部本体44aと、この第2膨出部本体44aの外周面径方向に突出している第2リブ44bと、を有している。第2膨出部本体44aと、第2リブ44bとは、一体的に形成されている。
【0036】
第2リブ44bは、外周側から見て格子状に形成されている。
【0037】
なお、
図8に示されるように、ドア側第1膨出部43A及びドア側第2膨出部44Aは、アーチ状に形成されていても良い。このとき、どちらか一方が略U字状、他方がアーチ状、のようにそれぞれに形状を変えることも可能である。
【0038】
また、
図9Aに示されるように、ドア側第1膨出部43Bは、変位する方向(図左右方向)の幅が、連続的に変化し、中央が最も太くされている。ここで変位する方向をドア30の周方向としてもよい。また、ドア側第2膨出部44Bは、変位する方向(図左右方向)の幅が、連続的に変化し、中央が最も太くされている。また、
図9Bに示されるように、ドア側第1膨出部43B及びドア側第2膨出部44Bは、中央が最も突出するよう中央に向かって連続的にテーパ状に形成されている。
【0039】
また、
図10に示されるように、ドア側第1膨出部43Cは、変位する方向(図左右方向)の幅が、連続的に変化し、細い部位と太い部位とが繰り返されている。ドア側第2膨出部44Cも、変位する方向(図左右方向)の幅が、連続的に変化し、細い部位と太い部位とが繰り返されている。
【0040】
なお、ドア側第1膨出部43B、43Cにリブを設けることも可能である。
【0041】
図2を参照する。第2シール部45は、略Y字状に形成され径方向に延びている。第2シール部45の先端は、ケース側一般面部25、ケース側第1突出部27及びケース側第2突出部28の何れにも当接可能である。
【0042】
図5Bを参照する。側方シール部35は、径方向に延びる基部35aと、この基部35aの外周側の先端から周方向に延びる周方向シール部35bと、を有する。周方向シール部35bは、略円弧状を呈し、ケース側一般面部25(
図2参照)に当接可能である。
【0043】
第1シール部42、第2シール部45及び側方シール部35は、ドア側第1膨出部43、ドア側第2膨出部44と同様に、弾性部材で構成されている。
【0044】
ドア側第1膨出部43、ドア側第2膨出部44、第1シール部42、第2シール部45及び側方シール部35のうち、少なくとも1つが外周壁本体部41と一体的に成形される。より具体的には、二色成形によって外周壁本体部41に一体的に形成されている。ドア側第1膨出部43、ドア側第2膨出部44、第1シール部42、第2シール部45及び側方シール部35の全てが外周壁本体部41と一体に成形されていてもよい。外周壁本体部41から各膨出部、各シール部がはがれにくくなり、製品寿命の長期化に寄与する。
【0045】
以上に説明した空調装置10の作用について、以下説明する。
【0046】
図6Aを参照する。
図6Aには、ベントモードにおける空調装置10が示されている。ベントモードにおいては、比較的温度の低い送風空気がドア開口部34を通過し、ベント開口部22から吹き出される。ベント開口部22から吹出された送風空気は、乗員の上半身に送られる。
【0047】
このとき、第1シール部42は、ストッパ部26に当接し、ドア側第2膨出部44は、ケース側第2突出部28に当接している。これにより、デフロスタ開口部21から冷風が漏れ出ることを抑制している。デフロスタ開口部21から冷風が漏れ出た場合にこの冷風がフロントガラスに当たると、フロントガラスが曇ることがある。デフロスタ開口部21から冷風が漏れ出ることを抑制することにより、フロントガラスの曇りを抑制することができる。
【0048】
この状態からドア30を時計回り方向に回転させると、ドア開口部34は、ベント開口部22及びフット開口部23(
図1参照)の両方を開放する位置まで移動する。
【0049】
ドア30が回転する際、第2シール部45の先端は、第1の軌跡T1上を移動する。第1の軌跡T1は、回転軸31を中心とした円状の軌跡であり、この第1の軌跡T1上には、ケース側一般面部25が配置されている。
【0050】
また、ドアが回転する際、ドア側第1膨出部43の上面及びドア側第2膨出部44の上面は、第2の軌跡T2上を移動する。第2の軌跡T2も回転軸31を中心とした円状の軌跡であり、第1の軌跡T1と同心円を描く。ケース側第1突出部27及びケース側第2突出部28は、ケース側一般面部25から第2の軌跡T2上まで突出している。
【0051】
図1及び
図2を参照する。
図1及び
図2には、バイレベルモードにおける空調装置10が示されている。バイレベルモードにおいては、冷風と温風とを混合流路MPに流して温度調和させ、ドア開口部34を介してベント開口部22及びフット開口部23から吹き出す。フット開口部23から吹き出された送風空気は、乗員の脚部に送られる。
【0052】
バイレベルモードにおいて、ドア側第1膨出部43は、ケース側第1突出部27に当接し、ドア側第2膨出部44は、ケース側第2突出部28に当接している。これにより、デフロスタ開口部21から冷風が漏れ出ることを抑制している。
【0053】
この状態からドア30を時計回りに回転させると、ドア開口部34は、フット開口部23のみを開放する位置まで移動する。
【0054】
図6Bを参照する。
図6Bには、フットモードにおける空調装置10が示されている。フットモードにおいては、比較的温度の高い送風空気がドア開口部34を介してフット開口部23(
図1参照)から吹き出される。
【0055】
フットモードにおいて、第2シール部45は、ベント開口部22の近傍においてケース側一般面部25に当接している。第1シール部42は、ケース側第1突出部27に当接していてもいなくても良い。第1シール部42がケース側第1突出部27から離間している場合、温風がデフロスタ開口部21から漏れることがある。しかし、この場合には漏れ出た送風空気は温かいため、フロントガラスに当たったとしても、フロントガラスの曇りの原因とはなりにくい。
【0056】
フットモードからドア30を時計回りに回転させると、ドア開口部34は、フット開口部23を一部閉じる位置まで移動する。また、この位置まで移動することにより、ドア30の一部のみがデフロスタ開口部21に重なることとなる。
【0057】
図7Aを参照する。
図7Aには、フットデフロスタモードにおける空調装置10が示されている。フットデフロスタモードにおいては、比較的温度の高い送風空気がドア開口部34を介してフット開口部23(
図1参照)を介してフット開口部23から吹き出される。また、デフロスタ開口部21の一部にはドア30が重なっていないため、混合流路MPからデフロスタ開口部21へ送風空気が流れる。デフロスタ開口部21から吹出された送風空気は、フロントガラスに導かれる。
【0058】
この状態からドア30を時計回りに回転させると、ドア30は、ベント開口部22及びフット開口部23を閉じる一方、デフロスタ開口部21からは外れる。
【0059】
図7Bを参照する。
図7Bには、デフロスタモードにおける空調装置10が示されている。デフロスタモードにおいては、比較的温度の高い送風空気が混合流路MPからデフロスタ開口部21へ流れる。
【0060】
以上に説明した、ベントモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフロスタモード、デフロスタモードの切り替えは、図示しないモータによってドア30を回転させることによって行なっても良いし、乗員のレバー操作によってワイヤー等によってドア30を回転させても良い。
【0061】
以下、本発明について纏める。
【0062】
図2及び
図3を参照する。第1に、空調装置10は、複数の開口部21~23が形成されているケース20と、このケース20の内部に回転可能に設けられ前記開口部21~23を開閉可能なドア30と、を有している。開口部21~23は、フロントガラスに向かう送風空気が通過するデフロスタ開口部21と、乗員の上半身に向かう送風空気が通過するベント開口部22と、乗員の脚部に向かう送風空気が通過するフット開口部23(
図1参照)と、を有する。ドア30は、回転軸31と、この回転軸31から径方向に延びる一対の側壁部32と、これらの一対の側壁部32の径方向の外側に設けられ回転軸31を中心とした略円弧状の外周壁部40と、この外周壁部40の一部に開けられ送風空気が通過可能なドア開口部34と、を有するロータリードアである。ケース20は、デフロスタ開口部21の近傍でドア30の軌道に向かって突出するケース側第1突出部27を有している。外周壁部40は、径方向に膨出しているドア側第1膨出部43、43A、43B、43C(符号43Aについては
図8、符号43Bについては
図9、符号43Cについては
図10を参照。以下同じ。)を含む。ベント開口部22とフット開口部23とからの送風が許容されると共にデフロスタ開口部21からの送風が規制されるバイレベルモードにおいて、ドア側第1膨出部43、43A、43B、43Cは、ケース側第1突出部27に当接する位置に形成されている。
【0063】
バイレベルモードにおいて、ドア側第1膨出部43、43A、43B、43Cは、ケース側第1突出部27に当接する。バイレベルモードにおいて、ベント開口部22からは、冷風が吹き出される。ドア30がベント開口部22を開放している際に、ドア側第1膨出部43、43A、43B、43Cをケース側第1突出部27に当接させることにより、デフロスタ開口部21から冷風が漏れることを抑制することができる。そして、モードを変更するためにドア30を回転させると、ドア側第1膨出部43、43A、43B、43Cは、ケース側第1突出部27から離間する。バイレベルモードにおいてドア側第1膨出部43、43A、43B、43Cをケース側第1突出部27に当接させる構成とすることにより、より小さな力でドア30を回転させつつ、バイレベルモード時におけるデフロスタ開口部21からの冷風の漏れを抑制することのできる空調装置を提供することができる。
【0064】
第2に、第1の空調装置10であって、ドア側第1膨出部43、43Aは、第1膨出部本体43aと、この第1膨出部本体43aから径方向に突出する第1リブ43bと、を含む。ドア側第1膨出部43の第1膨出部本体43aに第1リブ43bが形成されることによって、第1リブ43bのみがケース側第1突出部27に接触するから、ドア側第1膨出部43とケース20との接触面積を減少できる。デフロスタ開口部21からの冷風の漏れを抑制しつつ、ドア30を回転させるために必要な力を小さくし、円滑に回転させることができる。
【0065】
第3に、第1又は第2の空調装置10であって、ドア側第1膨出部43の周方向に沿った幅の寸法は、ドア30の回転軸31の軸方向に沿って連続的に変化している。ケース側第1突出部27に当接する面積を徐々に変化させることができ、ドア30を回転させる際に加わる負荷が急激に変化することを抑制することができる。
【0066】
第4に、第1から第3のいずれかに記載の空調装置10であって、ドア側第1膨出部43は弾性部材で構成されている。内部空間ISに空気が送風されているとき、送風空気によって内部空間ISの内圧が上昇することにより、ドア側第1膨出部43はドア径外方向に膨出し、ケース側第1突出部27により確実に当接することができる。即ち、ケース側第1突出部27に対するドア側第1膨出部43の押し付け力は相対的に強くなる。このため、バイレベルモードにおいてデフロスタ開口部21から冷風が漏れることを抑制することができる。また、内部空間ISに空気が送風されていないとき、送風空気による内部空間ISでの内圧の上昇は起こらない。よってドア側第1膨出部43がドア径外方向へ膨出することは抑制されるため、ドア側第1膨出部43は、ケース側第1突出部27に当接しにくくなる。即ち、ケース側第1突出部27に対するドア側第1膨出部43の押し付け力は相対的に弱いままとなる。このため、より小さな力でドア30を回転させることができる。
【0067】
尚、本発明による空調装置は、後席に送風可能なものにも適用可能である。
【0068】
本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の空調装置は、乗用車に搭載するのに好適である。
【符号の説明】
【0070】
10…車両用空調装置
20…ケース
21…デフロスタ開口部
22…ベント開口部
23…フット開口部
27…ケース側第1突出部
30…ドア
31…回転軸
32…側壁部
34…ドア開口部
40…外周壁部
43、43A、43B、43C…ドア側第1膨出部、43a…第1膨出部本体、43b…第1リブ