(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011561
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】イヤーピース型電極
(51)【国際特許分類】
A61B 5/256 20210101AFI20240118BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20240118BHJP
A61B 5/265 20210101ALI20240118BHJP
【FI】
A61B5/256 130
H04R1/10 104Z
A61B5/265
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113653
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(74)【代理人】
【識別番号】100125335
【弁理士】
【氏名又は名称】矢代 仁
(72)【発明者】
【氏名】林 泰成
(72)【発明者】
【氏名】黒子 剛規
(72)【発明者】
【氏名】久保 真之
(72)【発明者】
【氏名】林 隆浩
【テーマコード(参考)】
4C127
5D005
【Fターム(参考)】
4C127AA03
4C127LL13
4C127LL22
5D005BA14
(57)【要約】
【課題】生体に与える不快感を低減し、しかも外耳道の内面に広い面積にわたって、ある程度の接触圧で安定的に接触するイヤーピース型電極を提供する。
【解決手段】導電性ゴムから形成され、外耳道に挿入されるイヤーピース型電極は、ほぼ中空円筒形状を有する外側円筒部と、外側円筒部の径方向内側に配置され、ほぼ中空円筒形状を有する内側円筒部と、外側円筒部と内側円筒部に接続され、周方向に間隔をおいて並べられた少なくとも3つのセグメントとを備える。各セグメントは、外側円筒部に接続された外周壁部と、外周壁部の径方向内側に配置され、内側円筒部に接続された内周壁部と、外側円筒部と内側円筒部の反対側にあって、外周壁部と内周壁部を接続する先端壁部とを有する。各セグメントの外周壁部の外周面は、先端壁部に近づくほど、外周壁部の外周面と中心軸線との間の距離が徐々に小さくなるようにテーパ状に形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ゴムから形成され、外耳道に挿入されるイヤーピース型電極であって、
ほぼ中空円筒形状を有する外側円筒部と、
前記外側円筒部の径方向内側に配置され、ほぼ中空円筒形状を有する内側円筒部と、
前記外側円筒部と前記内側円筒部に接続され、前記外側円筒部の中心軸線を中心とする周方向に間隔をおいて並べられた少なくとも3つのセグメントとを備え、
各セグメントは、前記中心軸線を中心とする周方向に延びて前記外側円筒部に接続された外周壁部と、前記外周壁部の径方向内側に配置され、前記中心軸線を中心とする周方向に延びて前記内側円筒部に接続された内周壁部と、前記外側円筒部と前記内側円筒部の反対側にあって、前記中心軸線を中心とする周方向に延びて前記外周壁部と前記内周壁部を接続する先端壁部とを有し、
各セグメントの前記外周壁部の外周面は、前記先端壁部に近づくほど、前記外周壁部の外周面と前記中心軸線との間の距離が徐々に小さくなるようにテーパ状に形成されている
イヤーピース型電極。
【請求項2】
前記少なくとも3つのセグメントの前記外周壁部の外周面は、前記中心軸線を中心とするほぼ円錐台形状を有する包絡面を形成する
請求項1に記載のイヤーピース型電極。
【請求項3】
前記セグメントは、前記中心軸線を中心として等しい角間隔をおいて配置されている
請求項1または2に記載のイヤーピース型電極。
【請求項4】
隣り合う前記セグメントに隙間なく接続され、前記外側円筒部と前記内側円筒部に隙間なく接続された少なくとも3つの接続壁をさらに備え、
各セグメントは、前記外周壁部と前記内周壁部を隙間なく接続する2つの側壁部をさらに有し、
各セグメントの前記先端壁部は、前記外周壁部と前記内周壁部を隙間なく接続し、
各セグメントの前記外周壁部と前記内周壁部と前記先端壁部と前記側壁部には、貫通孔が形成されておらず、
各セグメントの前記外周壁部と前記内周壁部と前記先端壁部と前記側壁部で画定される内部空間は、前記外側円筒部と前記内側円筒部で画定される内部空間と連通する
請求項1または2に記載のイヤーピース型電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人を含む哺乳類または鳥類の外耳道に挿入されるイヤーピース型電極に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、カナル型イヤホンのイヤーピースに類似するほぼ円筒形状を有する電極を開示する。この電極は、人間の外耳道に挿入され、頭蓋に電流を供給するため、または脳波を計測するために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
音楽を聴くために使用されるイヤホンのイヤーピースの材料は軟らかく、JIS K 6253(2012)に規定されたデュロメータ・タイプAで測定されたゴム硬度は一般的に30°以下である。したがって、イヤホンのイヤーピースは、個人差がある外耳道の形状および大きさに容易に追従することができる。
【0005】
他方、イヤーピース型電極の材料は、導電性を高める多量の導電性フィラーが配合されているために硬く、デュロメータ・タイプAで測定されたゴム硬度は一般的に60~70°である。その結果、イヤーピース型電極を長時間装着した場合、人によっては圧迫感または痛みといった不快感を持つことがありうる。
【0006】
生体との電気的接続を確保するため、イヤーピース型電極は、外耳道の内面に広い面積にわたって、ある程度の接触圧で安定的に接触することが好ましい。イヤーピース型電極の硬度を低下させると、外耳道に装着する際、イヤーピース型電極が座屈し、接触面積が低下したり、部分的に接触圧が低下したりするおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、生体に与える不快感を低減し、しかも外耳道の内面に広い面積にわたって、ある程度の接触圧で安定的に接触するイヤーピース型電極を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、導電性ゴムから形成され、外耳道に挿入されるイヤーピース型電極を提供する。イヤーピース型電極は、ほぼ中空円筒形状を有する外側円筒部と、前記外側円筒部の径方向内側に配置され、ほぼ中空円筒形状を有する内側円筒部と、前記外側円筒部と前記内側円筒部に接続され、前記外側円筒部の中心軸線を中心とする周方向に間隔をおいて並べられた少なくとも3つのセグメントとを備える。各セグメントは、前記中心軸線を中心とする周方向に延びて前記外側円筒部に接続された外周壁部と、前記外周壁部の径方向内側に配置され、前記中心軸線を中心とする周方向に延びて前記内側円筒部に接続された内周壁部と、前記外側円筒部と前記内側円筒部の反対側にあって、前記中心軸線を中心とする周方向に延びて前記外周壁部と前記内周壁部を接続する先端壁部とを有する。各セグメントの前記外周壁部の外周面は、前記先端壁部に近づくほど、前記外周壁部の外周面と前記中心軸線との間の距離が徐々に小さくなるようにテーパ状に形成されている。
【0009】
この態様においては、外周壁部の外周面がテーパ状に形成された少なくとも3つのセグメントが外耳道に挿入される。周方向に間隔をおいて並べられたセグメントの各々は、イヤーピース型電極の径方向内側に向けて個別に弾性変形して、外耳道の内面にフィットすることが可能である。したがって、イヤーピース型電極は、外耳道の内面に広い面積にわたって、ある程度の接触圧で安定的に接触する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るイヤーピース型電極の使用例を示す断面図である。
【
図2】実施形態に係るイヤーピース型電極の正面図である。
【
図4】
図2のイヤーピース型電極の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施形態を説明する。図面の縮尺は必ずしも正確ではなく、一部の特徴は誇張または省略されることもある。
【0012】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るイヤーピース型電極1は、人間、他の哺乳類または鳥類の外耳道2に挿入される。イヤーピース型電極1は、導電性ゴムから形成されており、使用において、脳波または血流を測定する測定装置(図示せず)に電気的に接続される。
【0013】
図1に示す使用例では、イヤーピース型電極1は、連結部品3に機械的および電気的に接続されており、連結部品3は測定装置に機械的および電気的に接続されている。連結部品3は、金属製の円筒部品4を有し、円筒部品4はゴム製の保護チューブ5の先端に嵌め入れられている。
【0014】
円筒部品4の内部にはスピーカー6が固定されており、スピーカー6で音を発生させるための配線6aが保護チューブ5の内部を通じて延び、測定装置に電気的に接続されている。
【0015】
円筒部品4は小径円筒部4aを有しており、小径円筒部4aの端部には、径方向外側に向けて広がる円環状のフランジであるフック4bが形成されている。
【0016】
後述するように、イヤーピース型電極1は、外側円筒部10、内側円筒部12および少なくとも3つのセグメント14を有する。円筒部品4の小径円筒部4aは内側円筒部12に嵌め入れられている。小径円筒部4aのフック4bは、内側円筒部12の周縁に引っ掛けられている。したがって、イヤーピース型電極1は、円筒部品4に固定され、円筒部品4に電気的に接続されている。円筒部品4は、保護チューブ5の内部を通じて延びる導線4cを介して、測定装置に電気的に接続されている。内側円筒部12へのフック4bの引っ掛かりを解除すれば、イヤーピース型電極1は円筒部品4から取り外すことができる。
【0017】
この使用例では、イヤーピース型電極1はスピーカー6と共に使用される。すなわち、イヤーピース型電極1はカナル型イヤホンのイヤーピースとして使用される。スピーカー6は音を発生し、音は円筒部品4の小径円筒部4aの内部空間とイヤーピース型電極1の内側円筒部12の内部空間と外耳道2を通じて、中耳および内耳に届けられる。イヤーピース型電極1は、イヤーピース型電極1が接触する外耳道2の内面に電流を供給するとともに、外耳道2から得られる電気的性質の変化(例えば電位の変化、電流の変化)を測定するために使用される。測定装置は、外耳道2から得られる電気的性質の変化に基づいて、脳波または血流の変化を診断する。したがって、特定の音を聴いた時の被験者の精神状態を推定することが可能である。
【0018】
この使用例では、スピーカー6は配線6aを介して測定装置に接続されているが、スピーカー6は無線で測定装置に接続されていてもよい。
【0019】
スピーカー6は絶対必要というわけではない。イヤーピース型電極1は、音を発生させることなく、前庭電気刺激のために頭蓋に電流を供給するために使用してもよい。あるいは、イヤーピース型電極1は、音を発生させることなく、脳波または血流を計測するために使用してもよい。
【0020】
イヤーピース型電極1の材料である導電性ゴムは、導電性材料の粒子および/またはフレークを含有する。マトリックス材料であるゴムは、例えばシリコーンゴムである。導電性材料は、例えば、カーボンブラック、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)、ステンレス鋼、鉄(Fe)、銀-塩化銀(Ag/AgCl)のいずれかであってよく、これらの混合物であってもよい。
【0021】
図2から
図5に示すように、本発明の実施形態に係るイヤーピース型電極1は、中心軸線Axを中心にして回転対称な三次元形状を有する。
図4は、
図2および
図5のIV-IV線矢視断面図である。
【0022】
イヤーピース型電極1は、外側円筒部10、内側円筒部12および少なくとも3つの(実施形態では5つの)セグメント14を有する。
【0023】
外側円筒部10はほぼ中空円筒形状を有する。内側円筒部12もほぼ中空円筒形状を有し、外側円筒部10の径方向内側に外側円筒部10と同軸に配置されている。したがって、外側円筒部10と内側円筒部12は、
図4に示すように、円環状の内部空間20を画定する。
【0024】
「ほぼ中空円筒形状」とは、完全な中空円筒形状を含み、不正確な中空円筒形状であっても、一見して中空円筒形状と認識される形状を含む意味である。すなわち、外側円筒部10の外周面と内周面ならびに内側円筒部12の外周面と内周面は、中心軸線Axに対してわずかに傾斜していてもよいし、わずかな凹部および/または凸部を有していてもよい。
【0025】
図1に示すように、イヤーピース型電極1を生体に装着するとき、セグメント14は外耳道2の奥に向けられる。セグメント14は外耳道2の内面に接触する部分である。但し、セグメント14に加えて、外側円筒部10が外耳道2の内面に接触してもよい。
【0026】
図3および
図5に示すように、複数のセグメント14は、互いに同形同大であり、中心軸線Axを中心とする周方向に間隔をおいて並べられている。絶対必要ではないが、好ましくは、セグメント14は、中心軸線Axを中心として等しい角間隔をおいて配置されている。
【0027】
図4に示すように、各セグメント14は、外側円筒部10と内側円筒部12に接続されている。具体的には、各セグメント14は、外周壁部15、内周壁部16、先端壁部17、および2つの側壁部18a,18bを有する。
【0028】
外周壁部15は、中心軸線Axを中心とする周方向に延びており、外側円筒部10に接続されている。外周壁部15は外側円筒部10の厚さと同じ厚さt1を有し、外周壁部15の外周面は外側円筒部10の外周面から滑らかに延び、外周壁部15の内周面は外側円筒部10の内周面から滑らかに延びる。
【0029】
内周壁部16は、外周壁部15の径方向内側に外周壁部15と同軸に配置され、中心軸線Axを中心とする周方向に延びており、内側円筒部12に接続されている。内周壁部16は内側円筒部12の厚さより小さい厚さt2を有する。内周壁部16の外周面は内側円筒部12の外周面から滑らかに延びるが、内周壁部16の内周面は内側円筒部12の内周面の径方向外側にあり、内周壁部16の内周面と内側円筒部12の内周面の間に段差12aが設けられている。
【0030】
図5に示すように、段差12aは内側円筒部12の内部空間の周囲に連続して円環状に延びている。上記の円筒部品4の小径円筒部4aのフック4bは、円環状の段差12aに引っ掛けられる(
図1参照)。すなわち、段差12aはフック4bが引っ掛けられるフックとして機能する。
【0031】
図3および
図5に示すように、先端壁部17は中心軸線Axを中心とする周方向に延びている。
図4に示すように、先端壁部17は、外側円筒部10と内側円筒部12の反対側に配置されている。先端壁部17は、中心軸線Axを含む断面においてほぼ円弧形状を有しており、外周壁部15と内周壁部16を隙間なく、かつ滑らかに接続する。
【0032】
側壁部18a,18bは、外周壁部15と内周壁部16の側部に配置されて、外周壁部15と内周壁部16を隙間なく、かつ滑らかに接続する。
【0033】
各セグメント14において、外周壁部15は、先端壁部17および2つの側壁部18a,18bによって内周壁部16に隙間なく接続されている。各セグメント14の外周壁部15と内周壁部16と先端壁部17と側壁部18a,18bには、貫通孔が形成されていない。したがって、各セグメント14において、外周壁部15と内周壁部16と先端壁部17と側壁部18a,18bによって、外部空間から隔離された閉鎖した内部空間21が画定される。すなわち、各セグメント14は、外部空間から隔離された閉鎖した内部空間21を有する。
【0034】
但し、内部空間21の
図4中の下部は開口しており、開口を通じて内部空間21は、外側円筒部10と内側円筒部12で画定される内部空間20と連通する。
【0035】
各セグメント14の外周壁部15の外周面は、先端壁部17に近づくほど、外周壁部15の外周面と中心軸線Axとの間の距離が徐々に(滑らかに)小さくなるようにテーパ状に形成されている。より具体的には、複数のセグメント14の外周壁部15の外周面は、中心軸線Axを中心とするほぼ円錐台形状を有する包絡面を形成する。「ほぼ円錐台形状」とは、完全な円錐台形状を含み、不正確な円錐台形状であっても、一見して円錐台と認識される形状を含む意味である。すなわち、「ほぼ円錐台形状」は、径方向中央部分がない傘またはボウルの形状を含み、外周壁部15の外周面はわずかな凹部および/または凸部を有していてもよい。
【0036】
各セグメント14の外周壁部15の外周面がほぼ円錐台形状の一部の形状を有するようにテーパ状に形成されているので、外周壁部15は外耳道2への挿入に適しており、外耳道2の内面にフィットしやすい。
【0037】
各外周壁部15は、第1の軸線方向端部15aと第2の軸線方向端部15bを有する。第2の軸線方向端部15bと中心軸線Axとの間の距離は、第1の軸線方向端部15aと中心軸線Axとの間の距離より大きい。第1の軸線方向端部15aは先端壁部17に滑らかに接続されている。第2の軸線方向端部15bは外側円筒部10に滑らかに接続されている。
【0038】
図2に示すように、中心軸線Axに対する外周壁部15の第1の軸線方向端部15a側の部分15cの傾斜角(円錐台でいうところの頂角)θ1は、中心軸線Axに対する第2の軸線方向端部15b側の部分15dの傾斜角(円錐台でいうところの頂角)θ2より大きい。また、部分15cの傾斜角θ1は、第1の軸線方向端部15aに近いほど、大きくなる。このように、外周壁部15は、第1の軸線方向端部15aに近いほど、中心軸線Axに対する傾斜角が大きくなる。したがって、外耳道2にイヤーピース型電極1を挿入する際、被験者に外周壁部15が与える刺激が少ない。
【0039】
この実施形態では、各々が複数の壁によって形成された複数のセグメント14がイヤーピース型電極1に設けられているため、外耳道2へのイヤーピース型電極1の挿入時に、外耳道2の内面から反力が与えられても各セグメント14が径方向において座屈しにくく、各セグメント14の外周壁部15の外周面が外耳道2の内面にフィットしやすい。一方、例えば、特許文献1の
図9に開示された外壁と内壁と先端壁から構成された電極においては、外耳道への電極の挿入時に、外耳道の内面から反力が与えられると、外壁が径方向内側に座屈して外壁の外周面が外耳道の内面にフィットしないことがありうる。この実施形態では、各セグメント14の外周壁部15の外周面が外耳道2の内面に広い面積にわたって安定的に接触する。
【0040】
図4に示すように、複数のセグメント14の内周壁部16の内周面は、中心軸線Axを中心とするほぼ円錐台形状を有する包絡面を形成する。図示の実施形態では、この包絡面は、先端壁部17側(図の上側)の断面積が反対側(図の下側)の断面積より大きいほぼ円錐台形状を有するが、中心軸線Axを中心とするほぼ円柱形状を有していてもよい。内周壁部16の内周面が形成する包絡面は、外周壁部15の外周面が形成する包絡面と同軸である。
【0041】
イヤーピース型電極1は、少なくとも3つの(実施形態では5つの)接続壁19をさらに有する。各接続壁19は、隣り合うセグメント14の間に配置され、周方向に延びて、隣り合うセグメント14の側壁部18a,18bに隙間なく接続されている。各接続壁19は、径方向にも延びており、外側円筒部10の端部と内側円筒部12の端部に隙間なく接続され、外側円筒部10と内部空間20で画定された内部空間20を閉鎖する。
【0042】
図4を参照し、イヤーピース型電極1の寸法を説明する。イヤーピース型電極1の高さH1(セグメント14の反対側の外側円筒部10の端部とセグメント14の先端壁部17の先端面との間の軸線方向に沿った距離)は、例えば6~11mmである。外側円筒部10の高さH2(外側円筒部10の両端部の間の軸線方向に沿った距離)は、例えば2~5mmである。
【0043】
イヤーピース型電極1の外径D1(外側円筒部10の外径)は、例えば10~14mmである。
【0044】
内側円筒部12の内径Dhは、例えば3~5mmである。内側円筒部12の軸線方向長さLは、例えば1~3mmである。
【0045】
外側円筒部10および外周壁部15の厚さt1は、例えば0.3~0.6mmである。内周壁部16の厚さt2は、例えば0.5~0.8mmである。厚さt1は厚さt2より小さいことが好ましい。この場合、剛性が高い内周壁部16がイヤーピース型電極1、特にセグメント14の座屈を防止し、剛性が低い外周壁部15および外側円筒部10が外耳道2の形状および大きさに追従して変形し、被験者に与えられる刺激を低減する。
【0046】
この実施形態においては、外周壁部15の外周面がテーパ状に形成された複数のセグメント14が外耳道2に挿入される。周方向に間隔をおいて並べられたセグメント14の各々は、イヤーピース型電極1の径方向内側に向けて個別に弾性変形して、外耳道2の内面にフィットすることが可能である。したがって、イヤーピース型電極1は、外耳道2の内面に広い面積にわたって、ある程度の接触圧で安定的に接触する。
【0047】
特に、セグメント14の外周壁部15の外周面は、中心軸線Axを中心とするほぼ円錐台形状を有する包絡面を形成するので、各セグメント14の外周壁部15の外周面が外耳道2の内面にフィットしやすい。
【0048】
セグメント14は、中心軸線Axを中心として等しい角間隔をおいて配置されているのが好ましい。この場合、各セグメント14は、等しい弾性変形可能量を持つ。したがって、外耳道2の軸線に対するイヤーピース型電極1の各セグメント14の相対角度に関わらず、各セグメント14は外耳道2の内面にフィットすることが可能である。つまり、イヤーピース型電極1を中心軸線Axの周りで回転させても、各セグメント14は外耳道2の内面にフィットすることが可能である。
【0049】
この実施形態では、上記の通り、各セグメント14に隙間または貫通孔が設けられず、各セグメント14は、外部空間から隔離された閉鎖した内部空間21を有する。すなわち、各セグメント14の内部空間21は、外周壁部15と内周壁部16と先端壁部17と側壁部18a,18bで隙間なく包囲されている。隣り合うセグメント14は接続壁19に隙間なく接続され、外側円筒部10と内側円筒部12も接続壁19に隙間なく接続されている。内部空間21は、外側円筒部10と内側円筒部12で画定された内部空間20と連通し、内部空間20は接続壁19で閉鎖されている。したがって、イヤーピース型電極1がカナル型イヤホンのイヤーピースとして使用される場合、イヤーピース型電極1から外部へ音が漏れにくい。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態を参照しながら本発明を図示して説明したが、当業者にとって特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく、形式および詳細の変更が可能であることが理解されるであろう。このような変更、改変および修正は本発明の範囲に包含されるはずである。
【0051】
例えば、セグメント14の数は5に限定されず、3,4または6以上であってよい。
【0052】
外側円筒部10、内側円筒部12およびセグメント14は、同じ材料から形成されていてもよいし、異なる材料から形成されていてもよい。例えば、生体と接触しうる外側円筒部10とセグメント14のゴム材料のマトリックス材料は、生体と接触しない内側円筒部12のマトリックス材料より軟らかくてもよい。この場合、剛性が高い内側円筒部12がイヤーピース型電極1の座屈を防止し、剛性が低い外側円筒部10およびセグメント14が外耳道2の形状および大きさに追従して変形し、被験者に与えられる刺激を低減する。
【0053】
各セグメント14において、外周壁部15と先端壁部17と側壁部18a,18bのゴム材料のマトリックス材料は、内周壁部16のマトリックス材料より軟らかくてもよい。この場合、剛性が高い内周壁部16がセグメント14の座屈を防止し、剛性が低い外周壁部15と先端壁部17と側壁部18a,18bが外耳道2の形状および大きさに追従して変形し、被験者に与えられる刺激を低減する。
【0054】
本発明の態様は、下記の番号付けされた条項にも記載される。
【0055】
条項1. 導電性ゴムから形成され、外耳道に挿入されるイヤーピース型電極であって、
ほぼ中空円筒形状を有する外側円筒部と、
前記外側円筒部の径方向内側に配置され、ほぼ中空円筒形状を有する内側円筒部と、
前記外側円筒部と前記内側円筒部に接続され、前記外側円筒部の中心軸線を中心とする周方向に間隔をおいて並べられた少なくとも3つのセグメントとを備え、
各セグメントは、前記中心軸線を中心とする周方向に延びて前記外側円筒部に接続された外周壁部と、前記外周壁部の径方向内側に配置され、前記中心軸線を中心とする周方向に延びて前記内側円筒部に接続された内周壁部と、前記外側円筒部と前記内側円筒部の反対側にあって、前記中心軸線を中心とする周方向に延びて前記外周壁部と前記内周壁部を接続する先端壁部とを有し、
各セグメントの前記外周壁部の外周面は、前記先端壁部に近づくほど、前記外周壁部の外周面と前記中心軸線との間の距離が徐々に小さくなるようにテーパ状に形成されている
イヤーピース型電極。
【0056】
条項2. 前記少なくとも3つのセグメントの前記外周壁部の外周面は、前記中心軸線を中心とするほぼ円錐台形状を有する包絡面を形成する
条項1に記載のイヤーピース型電極。
この条項によれば、各セグメントの外周壁部の外周面が外耳道の内面にフィットしやすい。
【0057】
条項3. 前記セグメントは、前記中心軸線を中心として等しい角間隔をおいて配置されている
条項1または2に記載のイヤーピース型電極。
この条項によれば、各セグメントは、等しい弾性変形可能量を持つ。したがって、外耳道の軸線に対するイヤーピース型電極の各セグメントの相対角度に関わらず、各セグメントは外耳道の内面にフィットすることが可能である。つまり、イヤーピース型電極を中心軸線の周りで回転させても、各セグメントは外耳道の内面にフィットすることが可能である。
【0058】
条項4. 隣り合う前記セグメントに隙間なく接続され、前記外側円筒部と前記内側円筒部に隙間なく接続された少なくとも3つの接続壁をさらに備え、
各セグメントは、前記外周壁部と前記内周壁部を隙間なく接続する2つの側壁部をさらに有し、
各セグメントの前記先端壁部は、前記外周壁部と前記内周壁部を隙間なく接続し、
各セグメントの前記外周壁部と前記内周壁部と前記先端壁部と前記側壁部には、貫通孔が形成されておらず、
各セグメントの前記外周壁部と前記内周壁部と前記先端壁部と前記側壁部で画定される内部空間は、前記外側円筒部と前記内側円筒部で画定される内部空間と連通する
条項1から3のいずれか1項に記載のイヤーピース型電極。
この条項によれば、各セグメントに隙間または貫通孔が設けられていない。また、隣り合うセグメントは接続壁に隙間なく接続され、外側円筒部と内側円筒部も接続壁に隙間なく接続されている。各セグメントの内部空間は、外側円筒部と内側円筒部で画定された内部空間と連通し、その内部空間は接続壁で閉鎖されている。したがって、イヤーピース型電極がカナル型イヤホンのイヤーピースとして使用される場合、イヤーピース型電極から外部へ音が漏れにくい。
【符号の説明】
【0059】
Ax 中心軸線
1 イヤーピース型電極
2 外耳道
10 外側円筒部
12 内側円筒部
14 セグメント
15 外周壁部
16 内周壁部
17 先端壁部
18a,18b 側壁部
19 接続壁
20 内部空間
21 内部空間